説明

テストプリントの作成方法

テストプリントを作成するための方法を大幅に改良し、狭いスペクトル差で再現可能なテストプリントを高精度で、できるだけ大きい印刷柔軟性をもって作成する方法を提案する。本発明は、工業用印刷機で印刷することを想定した印刷データのテストプリントをデジタルプリンタで作成するための方法を提案する。この場合、印刷データを、変換表に基づいた所定の状態に関係して、所定の工業用印刷機のための色空間から、所定のデジタルプリンタのための色空間におけるデジタルプルーフ用印刷データに変換する。紙タイプ、インク、印刷モードなどのパラメータを所定の状態に含み、色空間に互換性の在るデータに基づいて、テスト画像またはテストストリップの印刷、テストストリップの測定、およびプリンタ固有の目標画像との比較によって、較正データのための変換データをプリンタのために決定し、印刷プロセスで考慮する。補正データを決定する場合に、テスト画像の測定時に使用する測定器に関係したパラメータを考慮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストプリント、いわゆる「プルーフ」の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用印刷機は、一般に標準化された紙および印刷色を使用してカラーおよびブラックの所定のスペクトルを印刷することができる。この一般的に表示できる印刷範囲は「色空間」と呼ばれる。あらかじめ規定された印刷色を、それぞれブラックを含む0%〜100%のスペクトルで組み合わせ、印刷可能な色点を生成する。
【0003】
デジタル印刷データは、色空間における印刷すべき色点をそれぞれ解像度に応じて規定する。色空間は、例えばオフセット印刷(例えばISO 39)のためのISO 色空間、グラビア印刷分野で使用されるPSR 色空間、または例えばウェブ・オフセット印刷で使用されるウェブ被覆用色空間などである。
【0004】
レイアウトにおける質を試すことができるように、通常、結果確認のための適宜な画像を印刷するためには、適宜な印刷機を設定し、作動させる必要がある。このような高い費用を低減するために、比較的安価なデジタルプリンタでテストプリントを実施する方法が既知である。
【0005】
各デジタルプリンタは、工業用印刷機とは異なる色スペクトルを生成することができる。
【0006】
デジタルプリンタの色空間は、このデジタルプリンタで使用可能なカラーおよびブラックを全体的な組み合わせとして印刷した場合にも生じる。この場合にも、このプリンタおよびプリンタタイプに汎用の標準色およびデジタルプリンタ用の標準紙から出発する。
【0007】
両方の色空間の比較により変換表が得られ、工業用印刷機の色空間における所定の色をデジタルプリンタの色空間における所定の点で明確に表示可能である。
【0008】
このような方法は既知であり、例えば特許文献1(国際公開第2007/093411号)に記載されている。
【0009】
一方の色空間から他方の色空間への印刷データの変換後、デジタルプリンタでテスト画像を生成することができる。
【0010】
しかしながら、標準条件を変更する既知のパラメータがあり、これにより、具体的なデジタルプリンタに関係していわゆる「較正」が必要となる。このような変更は、例えば色および紙の製造許容差に起因して変化する色位置に関する。紙の色吸収特性も様々であり、プリンタの機構およびプリンタヘッドは摩耗現象の影響を受ける。
【0011】
変換表を適合させる代わりに較正表を使用する場合、いわゆる「プロフィール」が問題となる。プロフィールは色空間変換されたデータに使用され、これにより、提供されているデジタルプリンタの具体的な状態にデータを適合させる。
【0012】
較正は、一般に特定の色彩を表示するテスト画像またはテストストリップを印刷することによって行われる。具体的な印刷結果は、プリンタに特有の目標画像と比較される。このために、印刷されたテストストリップの正確な寸法測定を行い、取得データを目標データと比較する。対応した差から較正データが生じ、較正データは、次いでそれぞれの較正表に補足するか、または重ねて使用される。
【0013】
従来技術について記載した方法を使用した場合、依然として差が生じ、結果として著しいばらつきが生じることが実際に明らかとなった。結果は必ずしも任意に再現可能ではなく、較正データ作成における精度が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/093411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術から出発した本発明の課題は、テストプリントを作成するための方法を大幅に改良し、狭いスペクトル差で再現可能なテストプリントを高精度で、できるだけ大きい印刷柔軟性をもって作成する方法を提案することである。同時にこの方法ソフトウェアを使用した場合、ソフトウェアにおける論理リンクで使用者のエラーを捕捉することにより、確実性を著しく向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を技術的に解決するために、本発明は、請求項1の特徴部に記載の方法を提案するものである。本発明の他の利点および特徴は、従属請求項に記載したとおりである。
【0017】
本発明によれば、所定の色空間に提供された印刷データは、変換表を使用してデジタルプリンタの色空間に変換される。この場合、デジタルプリンタの所定の標準状態から出発する。したがって、例えば、所定の紙タイプにより、異なった基本状態、ひいては異なった色空間変換表または色空間転換表が得られる。
【0018】
測定のために、従来技術では種々異なった測定器を使用することができる。測定器のそれぞれの選択は、較正結果に影響を及ぼす。
【0019】
したがって、本発明によれば、どの測定機を使用するかを較正時にも考慮し、これにより、データの精度が著しく向上する。これは自動的に行われる。
【0020】
この補足的な状態定義によって結果の著しい改善がもたらされることが示された。
【0021】
この場合、種々の測定器のための較正が単一の設定にまとめられ、この設定に許容差を設けることができることが重要である。これは「較正設定」に関する。
【0022】
現在の測定値では、それぞれ較正のために使用されるコンピュータが測定器タイプを直接に問い合わせることが可能である。これにより、この点で方法は大幅に自動化される。
【0023】
本発明の有利な提案によれば、較正のために印刷されるテストストリップ、テスト画像などとも呼ばれるカラーストリップは、既にそれぞれの測定器を考慮したものである。このように、測定器に応じて使用すべきテストストリップをあらかじめ規定することができる。したがって、印刷すべきテストデータセットが、測定結果と比較すべき目標データセットと同様に一義的に規定される。これらのデータの選択は、提供されている測定器に問い合わせた後に自動的に行うことができる。これは、異なった測定器のための目標値は異なっているが、全て同一の較正結果が得られることを意味する。
【0024】
較正時に生じる差から、システムは簡単に調整の正確さをまず確認することができる。
【0025】
一般に、システムはどの測定器が接続されているのかを自動的に認識し、プリンタもまた、使用されたインクセットなどに関する情報を伝達する。システムは、例えば誤った紙がプリンタに挿入されていることを検出することができる。または、システムは、印刷結果が目標値−測定値比較後に較正を必要とするような形で異なっていることを簡単に認識することができる。較正は自動的に行うか、または報告によって準備することができる。
【0026】
有利には、本発明は、較正データに関して有効性チェックを実施することを可能にする。これは、例えば、「印刷ジョブ毎」、「X個の印刷ジョブ毎」、「X時間毎」、「X日毎」などで調節可能である。
【0027】
この場合、有効性チェックの2つの可能性が生じる:
(1)較正のためにも使用される全てのテストチャートをテストする。
(2)較正テストチャートから適宜に選択したテストチャート分野を含むテストチャートによってテストする。これにより、「クィックテスト」を行うことができる。
【0028】
較正結果についての許容差は目標値に関連している。許容差および有効性チェックは、較正セット毎に規定可能である。したがって、例えば高価な紙の場合、質の低い紙の場合よりも狭い許容差を規定することができる。特に、較正結果について一種の有効期間を設定することもでき、これにより、例えば、所定時間後、例えば一週間後に、較正データが自動的に無効となる。
【0029】
本発明による補足により極めて高い作成確実性が得られる。なぜなら、有効基準により、較正データが実測状態に極めて現実的に対応することが確保されるからである。プリンタヘッドの摩耗、機構、ガイドなどの摩耗、紙の色吸収特性の変化、色位置の変化なども、もはやほとんど効力を有していない。さらにシステムはジョブが較正されずに出力されることを許可せず、これにより、使用者にとって確実性が著しく向上する。
【0030】
本発明によれば、目標値・実測値比較により生じる差を決定することができる許容差スペクトルを規定することができる。したがって、それぞれのジョブのために許容範囲を超える大きい差を許可すること使用者にゆだねることができる。またはスペクトルをソフトウェアによって自動的に確認することができる。
【0031】
有利には、目標値との差がテキストラベルとしてプルーフに印刷される。したがって、使用者は、それぞれの印刷について、どのような規定に基づいて印刷を行うかを正確に決定することができる。さらに、最後の較正データがプルーフに書き込まれる。さらに、目標値、許容差および有効性パラメータを一義的に規定するために使用された較正セットが書き込まれる。使用者は、これらの表示により、較正を含むプルーフの技術パラメータが正常であるかどうかを極めて簡単に認識することができる。おおまかな使用者エラーまたは不注意(使用者はプリンタを長い間較正していなかった)をラベルによってすぐに認識することができる。
【0032】
本発明の別の特別な利点によれば、同じ結果を有する変換表および較正データの組み合わせが標準選択に割り当てられる。このようにして、複数の異なるプリンタが提供されている場合には負荷を調整することが可能である。
【0033】
テストプリントまたはプルーフを作成するための出発点は常に、どの工業用印刷機タイプのどの色空間で最終的に印刷を行うべきかが操作員には当然わかっているということである。さらに、どのデジタルプリンタがどのような状態およびモードで利用可能となっているのかが使用者またはシステムには当然わかっている。
【0034】
さらに、有効性に関係した較正により、とのような結果がそれぞれ得られるのかがシステムにわかっている。
【0035】
このように、システムは、変換表および較正データの組み合わせについてそれぞれの結果を評価し、同じ結果の組み合わせを見つけ出すことができる。
【0036】
したがって、あるプリンタが標準選択の別のプリンタと同じ結果をもたらす場合には、使用者に自動的に、または選択的に、このプリンタを提供することができる。このように、高い柔軟性をもって印刷することができ、自動的にいわゆる「負荷調整」(ロード・バランシング)が行われる。すなわち、使用可能なプリンタはほぼ等しく負荷される。したがって、較正されたプリンタのみを負荷調整のために使用される。
【0037】
本発明によれば、有利には、さらに完全性情報がプルーフによって印刷される。有利には、この場合にロゴが使用される。全てのパラメータが有効な場合、すなわち、データの色空間変換に必要な変換データおよび較正データが使用され、この較正データが有効であり、全ての確認可能なパラメータが規定範囲にある場合、完全なロゴが印刷される。本発明によれば、所定の規定が満たされていない場合には、ロゴの所定領域が印刷されないようにすることができる。これは、他の色、例えば赤が支配的となるように所定の色領域を除去してもよい。部分を除去する代わりに、色をずらし、対応してロゴを印刷することも可能である。例えば赤いロゴのみが、この印刷が規定に基づいて許可されるべきではないことを示す。
【0038】
いわゆる「ICC スタンダード」を使用することも専門家には既知である。これは、CieL*a*b値に基づいた国際的に規定されたスタンダードである。したがって、印刷機に関連する色空間、例えばISO39 では、ISO 色空間をICC 色空間のCieL*a*b値に変換する変換表がある。同様に、ICC- CieL*a*b値をデジタルプリンタの色空間における値に変換する対応した参照表または変換表がある。したがって、ISO からデジタルプリンタ色空間に直接に変換されるのではなく、値はICC スタンダードのCieL*a*b色空間を介して変換される。従来技術では、差が生じた場合、変換表ICC をデジタルプリンタで新たに作成するという手順をとる。本発明では、較正表または較正セットにより補足される基本表を作成することが可能である。これにより、国際ICC スタンダードのプロフィールにも本発明の利点を利用することが可能となる。
【0039】
本発明によれば、テストプリント、いわゆる「カラープルーフ」を作成するための方法が著しく改良され、作成確実性を大幅に高め、遙かに確実にプリントを再現する方法が提供され、これにより、プルーフにおける再現精度が著しく向上し、さらに印刷プロセスに関してより柔軟性が改善される。
【0040】
本発明のさらなる利点および特徴が図面に基づく以下の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】出発色空間を目標色空間に割り当てた表である。
【図2】所定のプリンタ状態を測定器に割り当てた表である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
出発点は、工業用印刷機における印刷結果を作成するためのデジタル印刷データを含むデータセットである。これらデータは、印刷機の出発色空間におけるデータ点を標的とする。このような出発色空間は、例えばISO 39である。
【0043】
使用者は、提供されているデジタルプリンタでカラープルーフを作成することを意図して、プリンタとして例えばEPSON 4800を選択する。
【0044】
このEPSON 4800型プリンタは、種々異なった状況で使用することができ、したがって、MX4 と呼ばれる種々異なった割り当て表が生じる。
【0045】
すなわち、使用者は初期色空間および所望の状態のそれぞれのプリンタを選択する。次いで、それぞれ割り当てられたMX4 表を使用して出発色空間から目標色空間へのデジタル印刷データの変換が行われる。
【0046】
プリンタとして選択したEPSON 4800は、例えば、紙1およびインクタイプ1を装着された状態1で較正される。使用される測定器に応じて、図2にMX3 で示した較正データが生成された。
【0047】
MX3 表がそれぞれ有効であるとした場合、使用者は、簡単にMX4/MX3 の組み合わせを選択し、極めて正確な再現可能な結果を印刷することができる。
【0048】
同一の出力結果をもたらすMX4/MX3 の組み合わせはシステムによって認識され、使用者は、場合によっては、同じ目標結果を別のプリンタでも達成することができる。このようにして、負荷調整を行うことができる。
【0049】
上記実施形態は、説明を行うためのものにすぎず、限定的なものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用印刷機で印刷することを想定した印刷データのテストプリント(プルーフ)をデジタルプリンタで作成するための方法であって、前記印刷データを、変換表に基づいた所定の状態に関係して、所定の工業用印刷機のための色空間から、所定のデジタルプリンタのための色空間におけるデジタルプルーフ印刷データに変換するテストプリント作成方法において、
紙タイプ、インク、印刷モードなどのパラメータを所定の状態に含み、色空間に互換性のあるデータに基づいて、テスト画像またはテストストリップの印刷、これらの測定、およびプリンタ固有の目標画像との比較によって、較正データのための変換データをプリンタのために決定し、印刷プロセスで考慮し、
補正データを決定する場合に、テスト画像の測定時に使用する測定器に関係したパラメータを考慮することを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
使用する前記測定器に関係して、印刷すべきテスト画像および目標値を選択することを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
補正データの有効性チェックを行うことを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
有効性チェックを行う周期を規定可能とすることを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、
前記補正データの有効期間を規定可能とすることを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法において、
前記補正データの許容差スペクトルを設定可能とすることを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法において、
プリンタにより、目標値との差を含むテキストをプルーフに印刷することを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法において、
テストプリントに、クオリティロゴを印刷することを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法において、
同じ結果を有する換算表と較正データとの組み合わせを標準選択に割り当てることを特徴とするテストプリント作成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
負荷調整のために、1つの標準選択により異なるプリンタを選択するように設定すること特徴とするテストプリント作成方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523249(P2011−523249A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505425(P2011−505425)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002927
【国際公開番号】WO2009/130013
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510280671)ゲーエムゲー ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】GMG GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】