説明

テトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法

【課題】酸性不純物および水分の含有量が低減されたリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法を提供すること。
【解決手段】溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた反応溶液を得る、反応工程、
前記反応溶液に水分除去剤を添加する、水分除去工程、
前記水分除去工程後の反応溶液を濃縮して酸性不純物を除去する、酸性不純物除去工程、前記酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈する、希釈工程
を有し、得られた溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm以下かつ水分濃度が15質量ppm以下であることを特徴とする、リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用電解質として有用なテトラフルオロホウ酸リチウムの溶液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)の公知の合成方法としては、湿式法とエーテル法の二種類が報告されている。湿式法では、ホウ弗酸と炭酸リチウムとの反応により、含水塩(LiBF・HO)が生成する。この含水塩を脱水するために200℃程度の加熱が必要であるため、テトラフルオロホウ酸リチウムの分解(LiBF→LiF+BF)が起こり、純度が低下するばかりでなく、水分が残留するためリチウム電池用には使用できない。エーテル法では、三フッ化ホウ素とメチルエーテルあるいはエチルエーテルとの錯化合物とフッ化リチウムの反応により無水塩が得られるが、エーテルに対してテトラフルオロホウ酸リチウムが難溶性であるため、リチウム電池用の品質を満足するものが得にくい、また危険なエーテルを使用することなどの欠点がある。
【0003】
特許文献1には、溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させることを特徴とするテトラフルオロホウ酸リチウムの製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、テトラフルオロホウ酸リチウムを含有するリチウム電池用電解液に含まれる種々の酸性不純物を、ハロゲン化物を添加することによってハロゲン化水素に変換した後、発生したハロゲン化水素を電解液中から除去することにより酸性不純物の少ない電解液を得る、テトラフルオロホウ酸リチウムを含有するリチウム電池用電解液の精製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3375049号公報
【特許文献2】特許第3369937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テトラフルオロホウ酸リチウムなどの電解質をリチウム電池用電解液として用いる場合、該液中に含まれる水分により、容易に加水分解して、フッ化水素等の酸性不純物を生成するという問題を有し、このような酸性不純物を含有した電解液をリチウム電池に使用すると正極、負極、溶媒と反応し、電池の放電容量の低下、内部抵抗の増大、サイクル寿命の低下等種々の問題を引き起こす。従って、リチウム電池用電解液中に含まれる水分や酸性不純物の低減が望まれている。
【0007】
湿式法やエーテル法は固体状のテトラフルオロホウ酸リチウムを得る方法であり、得られた固体状のテトラフルオロホウ酸リチウムは、溶媒に溶解させてリチウム電池用電解液とされる。溶媒によって希釈されるため、固体状のテトラフルオロホウ酸リチウム中の水分濃度は30〜50質量ppm程度でよい反面、結晶性の固体であるため、結晶内部に噛み込んだ酸性不純物を除くことは困難である。また、リチウム電池用電解液は予め成分比が決まっているため、前記固体状のテトラフルオロホウ酸リチウムを溶媒に溶解させてから脱気等により酸性不純物を除去しようとすると、当初の成分比から変化してしまう恐れがあるため、後から酸性不純物を除去することはできない。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、テトラフルオロホウ酸リチウムを含有するリチウム電池用電解液の製造方法および該液中に含まれる種々の酸性不純物を除去する方法に関して記載されているが、電解液中に含まれる水分の除去方法に関して記載されておらず、原料のフッ化リチウムや溶媒の脱水が不十分な場合、得られるテトラフルオロホウ酸リチウムを含有するリチウム電池用電解液には水分が残存する影響でリチウム塩の加水分解が起こり、酸性不純物が生成してリチウム電池に悪影響を及ぼす恐れがあり、水分の除去に関して改善の余地がある。
【0009】
本発明は、酸性不純物および水分の含有量が低減されたリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる問題に鑑み鋭意検討の結果、酸性不純物が少なく、かつ水分が少ないリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法を見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の第1の態様は、
溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた反応溶液を得る、反応工程、
前記反応溶液に水分除去剤を添加する、水分除去工程、
前記水分除去工程後の反応溶液を濃縮して酸性不純物を除去する、酸性不純物除去工程、
前記酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈する、希釈工程
を有し、得られた溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm以下かつ水分濃度が15質量ppm以下であることを特徴とする、リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法である。
【0012】
前記リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm超の場合、電池性能に悪影響を及ぼすため好ましくない。より好ましくは40質量ppm以下であり、さらに好ましくは30質量ppm以下である。なお、前記酸性不純物濃度は、上記範囲内であれば20質量ppm以上であってもよい。
【0013】
前記リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液中の水分濃度が15質量ppm超の場合、種々の電解液製造時に酸性不純物が増加するため好ましくない。より好ましくは10質量ppm以下であり、さらに好ましくは5質量ppm以下である。なお、前記水分濃度は、上記範囲内であれば1質量ppm以上であってもよい。
【0014】
前記水分除去剤が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの水分除去剤はそれ自身が電池電解液用電解質となるため、除去する水分量よりも過剰でもよい。また、水分除去剤が水と反応して生成した酸性不純物は酸性不純物除去工程において除去することが可能である。
【0015】
また、前記水分除去工程において添加される水分除去剤の添加量が、前記反応溶液中の水分量に対してモル比で2.5〜500倍であることが好ましい。前記添加量がモル比で2.5倍未満の場合、水分濃度を低減し難いため好ましくない。前記添加量がモル比で500倍超の場合、テトラフルオロホウ酸リチウムが析出する恐れがあるため好ましくない。より好ましくはモル比で5〜35倍であり、さらに好ましくはモル比で12.5〜17.5倍である。
【0016】
また、前記水分除去工程において、反応溶液の温度を15〜50℃に保持することが好ましい。反応溶液の温度が15℃未満の場合、水分濃度を低減し難いため好ましくない。反応溶液の温度が50℃超の場合、水分除去剤が分解する恐れがあり、その結果、着色が発生したり酸性不純物濃度を低減し難くなったりするため好ましくない。より好ましい反応溶液の温度は30〜45℃であり、さらに好ましくは40〜45℃である。
【0017】
酸性不純物除去工程は、密閉容器内で反応溶液を、圧力が絶対圧で100kPa未満である減圧下で保持して行うことが好ましい。100kPa以上である場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。10kPa以下の減圧下で濃縮を行うことがより好ましく、1kPa以下の減圧下で濃縮を行うことがさらに好ましい。なお、酸性不純物除去工程は上記圧力範囲内であれば、圧力が100Pa以上である減圧下で行ってもよい。
【0018】
また、酸性不純物除去工程は、反応溶液の温度を25〜50℃に保持して行うことが好ましい。減圧下での反応溶液の温度が25℃未満の場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。減圧下での反応溶液の温度が50℃超の場合、反応溶液中の水分除去剤が分解してしまう恐れがあるため好ましくない。より好ましい反応溶液の温度は30〜45℃であり、さらに好ましくは40〜45℃である。
【0019】
また、前記酸性不純物除去工程の濃縮によって水分がさらに除去されてもよい。
【0020】
また、濃縮後の濃縮液中に存在するテトラフルオロホウ酸リチウム及び水分除去剤の総量濃度は18〜25質量%が好ましい。該濃度が18質量%未満である場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。また、該濃度が25質量%超である場合、テトラフルオロホウ酸リチウムの結晶が析出する恐れがあるため好ましくない。より好ましい濃縮後の濃縮液中の前記濃度は20〜23質量%で、さらに好ましくは21〜22質量%である。
【0021】
前記希釈工程は、酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈することにより、テトラフルオロホウ酸リチウム溶液の成分濃度を適切なものとする工程である。希釈後の溶液中に存在するテトラフルオロホウ酸リチウム及び水分除去剤の総量濃度は21質量%未満が好ましい。該濃度が21質量%以上である場合、低温において溶液中のテトラフルオロホウ酸リチウムの結晶が析出する場合があるため好ましくない。より好ましい希釈後の溶液中の前記濃度は20質量%未満で、さらに好ましくは19質量%未満である。
【0022】
本発明の第2の態様は、
溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、水分除去剤存在下、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた反応溶液を得る、反応・水分除去工程、
前記反応・水分除去工程後の反応溶液を濃縮して酸性不純物を除去する、酸性不純物除去工程、
前記酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈する、希釈工程
を有し、得られた溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm以下かつ水分濃度が15質量ppm以下であることを特徴とする、リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法である。
【0023】
前記リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm超の場合、電池性能に悪影響を及ぼすため好ましくない。より好ましくは40質量ppm以下であり、さらに好ましくは30質量ppm以下である。なお、前記酸性不純物濃度は、上記範囲内であれば20質量ppm以上であってもよい。
【0024】
前記リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液中の水分濃度が15質量ppm超の場合、種々の電解液製造時に酸性不純物が増加するため好ましくない。より好ましくは10質量ppm以下であり、さらに好ましくは5質量ppm以下である。なお、前記水分濃度は、上記範囲内であれば1質量ppm以上であってもよい。
【0025】
前記水分除去剤が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの水分除去剤はそれ自身が電池電解液用電解質となるため、除去する水分量よりも過剰でもよい。また、水分除去剤が水と反応して生成した酸性不純物は酸性不純物除去工程において除去することが可能である。
【0026】
また、前記反応・水分除去工程において鎖状の炭酸エステル中に含有される水分除去剤の含有量が、前記反応溶液の原料である鎖状の炭酸エステル溶媒、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量に対してモル比で2.5〜500倍であることが好ましい。前記添加量がモル比で2.5倍未満の場合、水分濃度を低減し難いため好ましくない。前記添加量がモル比で500倍超の場合、三フッ化ホウ素導入中にテトラフルオロホウ酸リチウムが析出する恐れがあるため好ましくない。より好ましくはモル比で5〜35倍であり、さらに好ましくはモル比で12.5〜17.5倍である。
【0027】
また、前記反応・水分除去工程において、反応溶液の温度を−40〜50℃に保持することが好ましい。反応溶液の温度が−40℃未満の場合、溶媒が凝固し反応が進行しない恐れがあるため好ましくない。反応溶液の温度が50℃超の場合、水分除去剤の分解が起こる恐れがあり、その結果、着色が発生したり酸性不純物濃度を低減し難くなったりするため好ましくない。より好ましい反応溶液の温度は0〜20℃である。
【0028】
酸性不純物除去工程は、密閉容器内で反応溶液を、圧力が絶対圧で100kPa未満である減圧下で保持して行うことが好ましい。100kPa以上である場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。10kPa以下の減圧下で濃縮を行うことがより好ましく、1kPa以下の減圧下で濃縮を行うことがさらに好ましい。なお、酸性不純物除去工程は上記圧力範囲内であれば、圧力が100Pa以上である減圧下で行ってもよい。
【0029】
また、酸性不純物除去工程は、反応溶液の温度を25〜50℃に保持して行うことが好ましい。減圧下での反応溶液の温度が25℃未満の場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。減圧下での反応溶液の温度が50℃超の場合、反応溶液中の水分除去剤が分解してしまう恐れがあるため好ましくない。より好ましい反応溶液の温度は30〜45℃であり、さらに好ましくは40〜45℃である。
【0030】
また、前記酸性不純物除去工程の濃縮によって水分がさらに除去されてもよい。
【0031】
また、濃縮後の濃縮液中に存在するテトラフルオロホウ酸リチウム及び水分除去剤の総量濃度は18〜25質量%が好ましい。該濃度が18質量%未満である場合、酸性不純物濃度を低減し難いため好ましくない。また、該濃度が25質量%超である場合、テトラフルオロホウ酸リチウムの結晶が析出する恐れがあるため好ましくない。より好ましい濃縮後の濃縮液中の前記濃度は20〜23質量%で、さらに好ましくは21〜22質量%である。
【0032】
前記希釈工程は、酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈することにより、テトラフルオロホウ酸リチウム溶液の成分濃度を適切なものとする工程である。希釈後の溶液中に存在するテトラフルオロホウ酸リチウム及び水分除去剤の総量濃度は21質量%未満が好ましい。該濃度が21質量%以上である場合、低温において溶液中のテトラフルオロホウ酸リチウムの結晶が析出する場合があるため好ましくない。より好ましい希釈後の溶液中の前記濃度は20質量%未満で、さらに好ましくは19質量%未満である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の製造方法は、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させた反応溶液に水分除去剤を添加する場合であっても、生成したテトラフルオロホウ酸リチウムと該水分除去剤が副反応を起こすことはなく、また、水分除去剤を含有させた溶媒中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させる場合であっても、フッ化リチウムや三フッ化ホウ素と該水分除去剤が副反応を起こすことはないため、反応収率が高く、反応の制御も容易である。また、水分除去剤により、得られる溶液中の酸性不純物濃度を50質量ppm以下かつ水分濃度を15質量ppm以下に低減できる。さらに、水分除去剤がリチウム電池用電解質であるため、また溶媒にリチウム電池用のものを使用しているため、得られる溶液を直接電解液として使用することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法において、テトラフルオロホウ酸リチウムの生成反応、すなわち、前記第1の態様の反応工程または前記第2の態様の反応・水分除去工程は、鎖状の炭酸エステル中で実施される。これらの溶媒に対して、原料であるフッ化リチウムの溶解度は極めて小さいため、溶媒に分散した状態で三フッ化ホウ素のガスを吹き込み、反応を行う。ここで生成したテトラフルオロホウ酸リチウムは非常に溶解度が大きいので、溶媒中に溶解して、フッ化リチウムの表面に被膜として残ることがないために、反応は完全に進行する。
【0035】
テトラフルオロホウ酸リチウムの生成反応で使用される鎖状の炭酸エステルは、化学的な安定性が高く、しかもテトラフルオロホウ酸リチウムの溶解度が高い、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
【0036】
この反応を行う際の温度は、前記第1の態様の反応工程の場合、−40〜100℃の範囲が好ましく、さらに0〜60℃の範囲が最適である。反応温度が−40℃未満では、溶媒が凝固し反応が進行しない恐れがあり、また、100℃を超える場合は、溶媒と三フッ化ホウ素との反応が起こる恐れがあり、着色や粘度増加の原因となる恐れがあるため好ましくない。また、前記第2の態様の反応・水分除去工程の場合、−40〜50℃の範囲が好ましく、さらに0〜20℃の範囲が最適である。反応温度が−40℃未満では、溶媒が凝固し反応が進行しない恐れがあり、また、50℃を超える場合は、水分除去剤の分解が起こる恐れがあり、着色や酸性不純物の増加の原因となる恐れがあるため好ましくない。
【0037】
フッ化リチウムの量は、溶媒1Lに対して、200g以下が好ましく、100g以下がより好ましい。フッ化リチウムの量が溶媒1Lに対して、200gより多い場合は生成物が飽和になり、フッ化リチウム表面に被膜が生成し、未反応のフッ化リチウムが残存する上、さらに溶媒の粘度が上昇するため、濾過等の分離操作が困難になる恐れがある。
【0038】
三フッ化ホウ素を導入する際は、窒素等の不活性ガスで希釈して行うのが好ましい。不活性ガスで希釈しない場合、三フッ化ホウ素のバブリングの際に溶媒が導入管を逆流してしまう恐れがあるため好ましくない。また三フッ化ホウ素の量は、フッ化リチウムに対して当量以下であればよい。当量より多い場合は、過剰分の三フッ化ホウ素が溶媒に吸収され、酸性不純物濃度が高くなる傾向があるため好ましくない。ただし、フッ化リチウムの総添加量が三フッ化ホウ素の総添加量の1〜1.1倍モル量にすることができれば、酸性不純物の濃度を低く抑えることができる。
【0039】
前記第1の態様の反応工程または前記第2の態様の反応・水分除去工程で得られる反応溶液中に不溶物が存在する場合、該不溶物を濾過により除去してもよい。例えば、前記第1の態様の反応工程または前記第2の態様の反応・水分除去工程において、フッ化リチウムの総添加量(モル量)が三フッ化ホウ素の総添加量(モル量)よりも多い場合、前記濾過を行って、反応溶液中に過剰に存在するフッ化リチウムを除去してもよい。前記濾過は、第1の態様の場合、例えば、反応工程の後、水分除去工程の後、酸性不純物除去工程の後、または、希釈工程の後に行ってもよい。また、前記第2の態様の場合、例えば、反応・水分除去工程の後、酸性不純物除去工程の後、または、希釈工程の後に行ってもよい。前記濾過は、濾布やカートリッジフィルターを用いた、加圧濾過器、減圧濾過器、フィルタープレス機や、遠心分離による沈降分離機、濾過分離機、さらには限外濾過膜を用いたクロスフロー濾過器などを用いて行うことができる。
【0040】
前記第1の態様および前記第2の態様のいずれにおいても、水分除去剤であるリチウム電池用電解質の添加量は、溶媒に対して0.01〜20質量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜2質量%の範囲が最適である。水分除去剤が溶媒に対して0.01質量%未満である場合は水分濃度を低減し難く、20質量%超の場合はリチウム塩濃度が上昇し、テトラフルオロホウ酸リチウムが析出する恐れがあり、濾過等の分離作業が困難になる恐れがある。
【0041】
前記第1の態様の反応工程および前記第2の態様の反応・水分除去工程において、原料の三フッ化ホウ素、および生成物のテトラフルオロホウ酸リチウムは、水分により容易に加水分解を受けるので、水分を含まない雰囲気で実施することが好ましい。すなわち、真空に近い状態や窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0042】
このようにして得られた溶液は、そのまま、またはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等を混合してリチウム電池用電解液として使用できる。また、他のリチウム電池用電解液や電解質と混合することによって、リチウム電池用電解液として使用してもよい。
【0043】
以上のような操作により従来の方法に比べて酸性不純物および水分濃度が低いテトラフルオロホウ酸リチウム溶液が得られる。また、本発明では溶媒としてリチウム電池用溶媒を使用しているため、得られた溶液を直接リチウム電池用電解液として使用することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.028g(水分濃度:68質量ppm)すなわち1.56mmolに対してモル比で17倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は78質量ppm、水分濃度は6質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は29質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.0質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に73.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は23質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は353.2gであった。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのエチルメチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより63vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.8g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はエチルメチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.029g(水分濃度:70質量ppm)すなわち1.61mmolに対してモル比で17倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は84質量ppm、水分濃度は7質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は39質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.8質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に73.0gのエチルメチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は31質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は352.1gであった。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジメチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジメチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.033g(水分濃度:80質量ppm)すなわち1.84mmolに対してモル比で15倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は69質量ppm、水分濃度は9質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は35質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に60.0gのジメチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は23質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は345.0gであった。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例4]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより61vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.031g(水分濃度:75質量ppm)すなわち1.72mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で16倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は82質量ppm、水分濃度は17質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は25質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に65.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は20質量ppm、水分濃度は5質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.8質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は347.2gであった。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例5]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジメチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより63vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が45.0g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.030g(水分濃度:72質量ppm)すなわち1.66mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で16倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は94質量ppm、水分濃度は18質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は33質量ppm、水分濃度は8質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.7質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に61.0gのジメチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は27質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は347.6gであった。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例6]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのエチルメチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより64vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.6g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.028g(水分濃度:68質量ppm)すなわち1.56mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で17倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は101質量ppm、水分濃度は16質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は30質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に65.0gのエチルメチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は24質量ppm、水分濃度は5質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は350.4gであった。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例7]
500mL三口ガラスフラスコ中で336.7gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に2.0g(13.2mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.028g(水分濃度:70質量ppm)すなわち1.56mmolに対してモル比で8倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は106質量ppm、水分濃度は13質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は15.4質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.5質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は37質量ppm、水分濃度は5質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.0質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.7質量%であった。この濃縮液に68.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は30質量ppm、水分濃度は4質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.7質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.6質量%、溶液の重量は349.1gであった。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例8]
500mL三口ガラスフラスコ中で364.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に8.5g(56.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより63vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.032g(水分濃度:75質量ppm)すなわち1.78mmolに対してモル比で31倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は101質量ppm、水分濃度は5質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.4質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は2.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は27質量ppm、水分濃度は5質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は2.4質量%であった。この濃縮液に70.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は22質量ppm、水分濃度は4質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.3質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は2.2質量%、溶液の重量は357.2gであった。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例9]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に0.5g(3.3mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.031g(水分濃度:75質量ppm)すなわち1.72mmolに対してモル比で2倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は84質量ppm、水分濃度は20質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は15.0質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.1質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は34質量ppm、水分濃度は19質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.1質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.2質量%であった。この濃縮液に71.5gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は25質量ppm、水分濃度は14質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.1質量%、溶液の重量は351.1gであった。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例10]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.034g(水分濃度:82質量ppm)すなわち1.88mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に0.5g(3.3mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で2倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は112質量ppm、水分濃度は20質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は15.0質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.1質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は40質量ppm、水分濃度は17質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は21.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.2質量%であった。この濃縮液に65.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は38質量ppm、水分濃度は15質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.8質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.1質量%、溶液の重量は347.2gであった。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例11]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.033g(水分濃度:80質量ppm)すなわち1.84mmolに対してモル比で15倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は94質量ppm、水分濃度は9質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を20℃に保ち、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は58質量ppm、水分濃度は9質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.3質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に78.0gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は48質量ppm、水分濃度は8質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.4質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は355.2gであった。結果を表2に示す。
【0056】
[実施例12]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、加熱して55℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.031g(水分濃度:75質量ppm)すなわち1.72mmolに対してモル比で16倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は125質量ppm、水分濃度は9質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は59質量ppm、水分濃度は8質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.2質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に74.8gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は50質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は353.1gであった。結果を表2に示す。
【0057】
[実施例13]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.033g(水分濃度:79質量ppm)すなわち1.81mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で15倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は82質量ppm、水分濃度は17質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を20℃に維持し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は55質量ppm、水分濃度は16質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に75.7gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は48質量ppm、水分濃度は14質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.7質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は349.2gであった。結果を表2に示す。
【0058】
[実施例14]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.036g(水分濃度:89質量ppm)すなわち2.04mmolに対してモル比で13倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は84質量ppm、水分濃度は8質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を20℃に維持し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は59質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に78.5gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は50質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は353.1gであった。結果を表2に示す。
【0059】
[実施例15]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより61vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.029g(水分濃度:71質量ppm)すなわち1.63mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で17倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は92質量ppm、水分濃度は17質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で100〜200kPaの圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は53質量ppm、水分濃度は11質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.6質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に81.7gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は47質量ppm、水分濃度は9質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.4質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は355.2gであった。結果を表2に示す。
【0060】
[実施例16]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液に4.1g(27.0mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウムを添加し、冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量はジエチルカーボネート、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量0.034g(水分濃度:83質量ppm)すなわち1.91mmolに対してモル比で14倍である。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させるとともに水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は98質量ppm、水分濃度は6質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は14.9質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で100〜200kPaの圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は59質量ppm、水分濃度は7質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.7質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.4質量%であった。この濃縮液に74.9gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は50質量ppm、水分濃度は6質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.8質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.1質量%、溶液の重量は347.2gであった。結果を表2に示す。
【0061】
[比較例1]
500mL三口ガラスフラスコ中で247.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより61vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は90質量ppm、水分濃度は80質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は15.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に40.4gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は85質量ppm、水分濃度は75質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.7質量%、溶液の重量は349.4gであり、酸性不純物濃度は50質量ppm以下にならず、水分濃度も15質量ppm以下とならなかった。結果を表3に示す。
【0062】
[比較例2]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより61vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.7g消費した時点で反応を終了した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は81質量ppm、水分濃度は81質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は15.0質量%であった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、密閉容器内でこの反応溶液を45℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は34質量ppm、水分濃度は77質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は22.9質量%であった。この濃縮液に79.3gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は30質量ppm、水分濃度は70質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.7質量%、溶液の重量は349.2gであり、水分濃度は15質量ppm以下とならなかった。結果を表3に示す。
【0063】
[比較例3]
500mL三口ガラスフラスコ中で247.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。三フッ化ホウ素が44.8g消費した時点で反応を終了した。上記工程によってフッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させた。この反応溶液中の水分量は0.025g(水分濃度:80質量ppm)すなわち1.38mmolであった。前記反応溶液を、加圧濾過器を用いて濾過し、過剰に存在したフッ化リチウムを除去した。その後、この反応溶液に3.1g(20.4mmol)のヘキサフルオロリン酸リチウム(反応溶液中の水分量に対するモル比で15倍)を添加し、45℃で3時間攪拌することにより水分を除去した。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は88質量ppm、水分濃度は15質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は20.0質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1.0質量%であった。この反応溶液に44.3gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は80質量ppm、水分濃度は13質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.5質量%、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.9質量%、溶液の重量は353.3gであり、酸性不純物濃度は50質量ppm以下とならなかった。結果を表3に示す。
【0064】
[比較例4]
500mL三口ガラスフラスコ中で350.0gのジエチルカーボネートに18.8gのフッ化リチウムを添加して、混合分散した。この混合分散液を冷却して15℃に維持しながら、マスフローコントローラーを設置したガス導入管を通して窒素ガスにより62vol%に希釈した三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。ジエチルカーボネート中に分散されたフッ化リチウムが消失した時点で、反応を終了した。このとき、三フッ化ホウ素の消費量は49.3gであった。このとき得られた反応溶液の酸性不純物濃度は424質量ppm、水分濃度は76質量ppmであり、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は16.3質量%であった。密閉容器内でこの反応溶液を50℃に加熱し、絶対圧で10kPa以下の圧力に減圧することにより該反応溶液を濃縮し、酸性不純物を除去した。このようにして得られた濃縮液の酸性不純物濃度は35質量ppm、水分濃度は38質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は23.3質量%であった。この濃縮液に92.2gのジエチルカーボネートを加えて希釈した。このようにして得られた溶液の酸性不純物濃度は30質量ppm、水分濃度は32質量ppm、テトラフルオロホウ酸リチウムの濃度は17.7質量%、溶液の重量は383.6gであり、水分濃度は15質量ppm以下とならなかった。結果を表3に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた反応溶液を得る、反応工程、
前記反応溶液に水分除去剤を添加する、水分除去工程、
前記水分除去工程後の反応溶液を濃縮して酸性不純物を除去する、酸性不純物除去工程、
前記酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈する、希釈工程
を有し、得られた溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm以下かつ水分濃度が15質量ppm以下であることを特徴とする、リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項2】
前記水分除去剤が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項3】
前記水分除去工程において添加される水分除去剤の添加量が、前記反応溶液中の水分量に対してモル比で2.5〜500倍であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項4】
前記水分除去工程において、反応溶液の温度を15〜50℃に保持することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項5】
前記水分除去工程後の酸性不純物除去工程において、密閉容器内で反応溶液を、圧力が絶対圧で100Pa〜100kPaである減圧下、該反応溶液の温度を25〜50℃に保持することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリチウム電池電解液用テトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項6】
溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、水分除去剤存在下、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた反応溶液を得る、反応・水分除去工程、
前記反応・水分除去工程後の反応溶液を濃縮して酸性不純物を除去する、酸性不純物除去工程、
前記酸性不純物除去工程後の濃縮液を希釈する、希釈工程
を有し、得られた溶液中の酸性不純物濃度が50質量ppm以下かつ水分濃度が15質量ppm以下であることを特徴とする、リチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項7】
前記水分除去剤が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項8】
前記反応・水分除去工程において鎖状の炭酸エステル中に含有される水分除去剤の含有量が、前記反応溶液の原料である鎖状の炭酸エステル溶媒、フッ化リチウム、および三フッ化ホウ素中に含まれる水分総量に対してモル比で2.5〜500倍であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項9】
前記反応・水分除去工程において、反応溶液の温度を−40〜50℃に保持することを特徴とする、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載のリチウム電池電解液用のテトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。
【請求項10】
前記反応・水分除去工程後の酸性不純物除去工程において、密閉容器内で反応溶液を、圧力が絶対圧で100Pa〜100kPaである減圧下、該反応溶液の温度を25〜50℃に保持することを特徴とする、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載のリチウム電池電解液用テトラフルオロホウ酸リチウム溶液の製造方法。

【公開番号】特開2013−35695(P2013−35695A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170432(P2011−170432)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】