説明

ディスク検査装置

【課題】ディスクの傷による劣化と、研磨によるジッタ劣化とを識別する。
【解決手段】ディスク検査装置1は、ECC制御部18と比較部20を有する。ECC制御部18は、ディスク10の所定区間におけるエラー訂正数PIEとエラー訂正不能数PIFを測定する。比較部20は、PIEの最小値または平均値が第1しきい値を超える場合にジッタ劣化ディスク、PIFの最大値が第2しきい値以下でPIEの最小値あるいは平均値が第1しきい値以下の場合に正常ディスク、PIEの最小値または平均値が第1しきい値以下であってPIFの最大値を超える場合に傷ディスクと識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク検査装置、特にディスク劣化の識別に関する。
【背景技術】
【0002】
レンタルCDやDVD、あるいはディスクの生産工程において、ディスクの使用により傷や汚れのついたディスクを研磨して回復させることが一般に行われている。例えば、レンタル店においては、ユーザが使用して大きな傷がついたり、あるいは傷等の理由により再生できないとの苦情が寄せられたディスクは、専用の研磨機でディスク表面を研磨し、傷を消去して再利用している。傷を消去するには5μm〜10μm程度の研磨が必要となるため、例えばDVDの場合には1回〜5回の程度の研磨で、ディスク厚が仕様(スペック)の下限に達してしまう。
【0003】
一方、CDドライブやDVDドライブに搭載されているピックアップでは、屈折率の高いディスク基板を通過する際に、基板厚さが所定の厚さにおいて正確に合焦するように対物レンズが設計・補正されており、ディスク基板の厚さが薄くなることにより、球面収差が発生して正確に合焦しなくなるため、研磨を重ねる毎にジッタが劣化していく。
【0004】
下記の特許文献1には、再生したデータのエラー訂正の可否判定、または、訂正を実行したシンボル個数を算出し、エラー訂正不能系列数またはNシンボル以上の訂正を実行した系列数を計数した結果をしきい値と比較することで、光ディスクの情報記録面の状態を判定し、状態に応じて警告を発することが開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、光ディスクから読み出されるデータをモニタしながら、データが不連続となるトラックの検出位置を傷の存在する位置として認識するとともに、光ディスク上の傷の部分でピックアップをフォーカシングさせながら傷の深さを推定し、傷の存在するトラック範囲において傷の深さに応じて光ディスクを研磨することが開示されている。
【0006】
下記の特許文献3には、光ディスク表面の傷の深さ及び大きさを判定し、判定結果に応じた最適な研磨を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−134527号公報
【特許文献2】実用新案登録第3093865号
【特許文献3】特開2004−330375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスクに傷が存在する場合、ディスク表面を研磨すれば傷を除去できる可能性があるが、その一方で、ディスク表面の研磨が進むと球面収差が発生してジッタが劣化してしまう。したがって、再生に支障があるディスクが存在する場合、このディスクの劣化原因は傷であって研磨すれば回復し得るディスクなのか、あるいは過剰な研磨が行われた結果ジッタが劣化しているためたとえこれ以上研磨しても回復し得ないディスクなのかを確実かつ短時間に識別することが望まれる。さもなければ、本来的に過剰研磨であってこれ以上研磨しても意味がないディスクをさらに研磨してしまう、あるいは本来的に傷が劣化の原因であるため研磨すれば回復するにもかかわらずそのまま廃棄してしまう等の無駄な処理が生じてしまうことになる。
【0009】
本発明の目的は、ディスクの劣化原因が傷であるのか否か、言い換えれば研磨により回復可能であるか否かを識別し、もって劣化原因に応じた適切な処理を実行することが可能なディスク検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ディスク検査装置であって、ディスクから再生したデータの所定区間におけるエラー訂正数PIE及びエラー訂正不能数PIFを検出する手段と、前記エラー訂正数PIE及び前記エラー訂正不能数PIFをそれぞれ所定のしきい値と大小比較することで、前記ディスクを正常なディスク、傷のあるディスク、ジッタ劣化したディスクのいずれかに識別する手段と、識別結果を出力する手段とを有する。
【0011】
また、本発明は、ディスク検査装置であって、ディスクから再生したデータの所定区間におけるエラー訂正数PIE及びエラー訂正不能数PIFを検出する手段と、前記エラー訂正数PIE及び前記エラー訂正不能数PIFをそれぞれ第1しきい値、第2しきい値と大小比較することで、前記ディスクを正常なディスク、研磨可能ディスク、研磨不能ディスクのいずれかに識別する手段と、識別結果を出力する手段とを有する。
【0012】
本発明において、前記識別する手段は、前記所定区間における前記エラー訂正数PIEの最小値あるいは平均値と前記第1しきい値とを比較するとともに、前記エラー訂正不能数PIFの最大値と前記第2しきい値とを大小比較することで識別してもよい。
【0013】
また、本発明において、前記識別する手段は、前記エラー訂正数PIEの最小値または平均値が前記第1しきい値を超える場合に前記ディスクはジッタ劣化ディスクあるいは研磨不能ディスクと識別し、前記エラー訂正不能数PIFの最大値が前記第2しきい値以下であって前記エラー訂正数PIEの最小値あるいは平均値が前記第1しきい値以下である場合に前記ディスクは正常なディスクと識別し、前記エラー訂正数PIEの最小値または平均値が前記第1しきい値以下であって前記エラー訂正不能数PIFの最大値が前記第2しきい値を超える場合に前記ディスクは傷のあるディスクあるいは研磨可能ディスクと識別する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディスクの劣化原因が傷であるのか否か、言い換えれば研磨により回復可能であるか否かを識別し、もって劣化原因に応じた適切な処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の構成ブロック図である。
【図2】実施形態の他の構成ブロック図である。
【図3】実施形態の処理フローチャートである。
【図4】PIFの測定説明図である。
【図5】PIEの測定説明図である。
【図6】実施形態の他の処理フローチャートである。
【図7】実施形態のさらに他の処理フローチャートである。
【図8】内外周均一に研磨される場合のPIF変化説明図である。
【図9】内周より外周が深く研磨される場合のPIF変化説明図である。
【図10】内外周均一に研磨される場合のPIE変化説明図である。
【図11】内周より外周が深く研磨される場合のPIE変化説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、光ディスクの検査を例にとり説明する。
【0017】
図1に、本実施形態におけるディスク検査装置1の構成ブロック図を示す。CDやDVD等の検査対象であるディスク10はディスクトレイに装着され、スピンドルモータ(SPM)12により回転駆動される。
【0018】
ピックアップ(PU)14は、半導体レーザから射出したレーザ光をディスク10の記録面に集光する対物レンズと、ディスク10から反射した光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタとを備える。ピックアップ(PU)14は、再生パワーのレーザ光をディスク10に照射し、その反射光を受光して再生信号として取り出す。ピックアップ(PU)14におけるフォーカスサーボやトラッキングサーボは周知である。また、ピックアップ(PU)14は、ステッピングモータで構成されるスレッドモータによりディスク10の半径方向に駆動されることも周知である。ピックアップ(PU)14は、ディスク10から読み出した再生信号をデコード部16に供給する。
【0019】
デコード部16は、再生信号を2値化して復調し、ECC(エラー訂正)制御部18に供給する。なお、再生信号から生成されるフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号はそれぞれフォーカスサーボ部やトラッキングサーボ部に供給され、再生信号に含まれるアドレス信号はアドレス検出部に供給される。
【0020】
ECC制御部18は、デコード部16で復調されたデータに対して、エラー訂正処理を実行する。エラー訂正処理は、リードソロモン符号を用いたエラー訂正である。復調データはECCブロック単位でエラー訂正され、ECCブロックは、内符号(PI)系列と外符号(PO)系列の積符号となっており、それぞれパリティが付加される。ECC制御部18は、PI系列毎に復調データを読み出し、復調データからエラーバイトを検出して訂正する。ECC制御部18は、エラー訂正した数(これをPIEとする)、及びエラー訂正できなかった数(これをPIF)をそれぞれ計数してメモリ19に格納しておく。全PI系列の処理が完了したら、PO系列の処理に移行する。ECC制御部18は、ディスク10の任意のトラックについて上記のようなエラー訂正処理を実行し、ECCブロック毎にPIE(Parity Inner Error)及びPIF(Parity Inner Failure)を計数して順次メモリ19に格納していく。そして、複数ECCブロックにおけるPIEの最小値あるいは平均値を算出するとともに、複数ECCブロックにおけるPIFの最大値を算出し、比較部20に供給する。複数ECCブロックは、例えば1トラックにおける16ブロックとすることができる。
【0021】
比較部20は、ECC制御部18からのPIEの最小値あるいは平均値と、PIFの最大値を、それぞれ所定のしきい値と大小比較する。2つの所定しきい値は、予めメモリ22に格納しておく。比較部20は、PIEの最小値あるいは平均値としきい値との比較結果、及びPIFの最大値としきい値との比較結果に応じて、検査対象であるディスク10が傷のあるディスクであるか、あるいは研磨によりジッタが劣化したディスクであるか、あるいは正常なディスクであるかを判定し、判定結果を出力する。
【0022】
比較部20からの判定結果は、例えば図示しないディスプレイに表示され、ディスク10を取り扱うユーザに報知することができるが、この他に、判定結果をローダに供給し、ローダが判定結果に応じてディスク10を自動的に仕分けすることもできる。
【0023】
図2に、判定結果に応じてディスクを自動仕分けする機能を有するディスク検査装置の構成ブロック図を示す。
【0024】
図1に示すディスク検査装置1からの判定結果は、ローダ30に供給される。ローダ30は、例えば鉛直軸回りに回転する回転軸と、この軸に設けられた把持アームを備え、判定結果に応じてディスクトレイに装着された検査対象のディスク10を取り出し、ディスク10を搬送してストッカ101,102,103のいずれかに収容する。ストッカ101は正常ディスク用のストッカ、ストッカ102は傷ディスク用のストッカ、ストッカ103は過剰研磨によるジッタ劣化ディスク用のストッカである。ローダ30は、ディスク10をディスクトレイから取り出してストッカ101〜103のいずれかに収容した後、検査待ちのストッカ104から新たにディスク10を取り出してディスクトレイに装着する。ディスク検査装置1は、新たに装着されたディスク10について検査し、判定結果をローダ30に供給する。
【0025】
以上の処理により、複数枚のディスク10を短時間で大量に仕分けることができる。例えばレンタル店の場合、ストッカ101に仕分けされたディスク10はそのまま店舗に陳列し、ストッカ102に仕分けされたディスク10は専用の研磨機で研磨した後に陳列し、ストッカ103に仕分けされたディスク10は廃棄処分とする。
【0026】
さらに、ストッカ102に仕分けされたディスク10を研磨する研磨機を組み込んでも良い。ローダ30は、ストッカ102に仕分けられたディスク10を順次取り出して研磨機に供給し、研磨機でディスク表面を研磨して傷を除去する。ローダ30は、研磨後のディスク10をストッカ101に収容する。もちろん、研磨後のディスク10をディスク検査装置1に搬送して再度検査してもよい。研磨後の再検査で正常なディスク10と判定された場合に、ローダ30は当該ディスク10をストッカ101に収容する。
【0027】
図3に、ディスク検査装置1における検査処理のフローチャートを示す。検査対象のディスク10をディスクトレイに装着し、ピックアップ14で任意のトラックのデータを再生してECC制御部18でPIE及びPIFを測定する(S101)。
【0028】
PIE及びPIFを測定した後、比較部20でPIEの最小値あるいは平均値を所定のしきい値と大小比較する(S102)。ここでは、例えばPIEの16ECCブロックにおける最小値を所定のしきい値と比較する。PIEは、既述したようにPI系列のエラー訂正数である。ディスク10が研磨されてディスク基板の厚さが薄くなると、その分だけ球面収差が生じて再生信号のジッタが劣化する。ジッタが劣化するとエラーが生じ易くなるからPIEも増大する。すなわち、PIEは、ディスク10がどの程度研磨されているかを示す指標として機能し得る。そこで、比較部20は、PIEの最小値と所定のしきい値とを大小比較した結果、PIEの最小値がしきい値以下でない、つまりしきい値よりも大きい場合には、当該ディスク10を研磨によりジッタが劣化したディスクであると判定する(S104)。一方、PIEの最小値がしきい値以下である場合には、比較部20でPIFの最大値としきい値とを大小比較する(S103)。PIFは、既述したようにPI系列のエラー訂正不能数である。ディスク10に傷があるとエラー訂正できない可能性が高いからPIFも増大する。すなわち、PIFは、ディスク10にどの程度重大な傷があるかを示す指標として機能し得る。そこで、比較部20は、PIFの最大値と所定のしきい値とを大小比較した結果、PIFの最大値が所定のしきい値以下である場合、当該ディスク10を正常なディスクであると判定する(S105)。また、PIFの最大値が所定のしきい値より大きい場合には、当該ディスク10を傷のあるディスクであると判定する(S106)。
【0029】
以上のように、ディスク検査装置1は、検査対象のディスク10を、正常なディスク、傷のあるディスク、ジッタ劣化ディスクの3種類のいずれかに識別する。傷のあるディスクについては、研磨機で研磨することで傷を除去し得る。ジッタ劣化ディスクについては、既に過剰な研磨がなされているため、さらに研磨しても無意味であるため研磨しない。
【0030】
図4に、1トラック分のECCブロック(合計16ブロック)毎に算出されるPIFの一例を示す。図4に示す測定区間では、ブロック番号10のECCブロックに対応するディスク位置に傷が存在し、このためPIFが最大値を示し、この最大値が所定のしきい値(図では傷判断閾値)を超えている。
【0031】
図5に、1トラック部のECCブロック(合計16ブロック)毎に算出されるPIEの一例を示す。図5に示す測定区間では、ブロック番号3及びブロック番号14のECCブロックにおいてPIEの最小値が所定のしきい値(図ではジッターエラー判断閾値)を超えている。また、図5には16ECCブロックにわたるPIEの平均値も同時に示されており、この平均値もしきい値を超えている。PIEの最小値と比較すべきしきい値と、PIEの平均値と比較すべきしきい値は異なっていてもよい。
【0032】
図6に、ディスク検査装置1における検査処理の他のフローチャートを示す。まず、ECC制御部18でPIE及びPIFを測定する(S201)。次に、比較部20でPIEの最小値あるいは平均値としきい値とを大小比較する(S202)。例えば、PIEの最小値をしきい値と比較するものとし、PIEの最小値がしきい値を超える場合には、検査対象のディスク10は研磨不可能なジッタ劣化ディスクと判定する(S204)。
【0033】
一方、PIEの最小値がしきい値以下である場合、基本的には当該ディスク10は研磨可能なディスクであると判定し、比較部20はさらにPIFの最大値をしきい値と大小比較する(S203)。そして、PIFの最大値がしきい値以下の場合には、検査対象ディスク10は正常なディスクと判定し、研磨はせずに再使用に供する(S205)。また、PIFの最大値がしきい値を超える場合、当該ディスクには傷があって研磨が必要であると判定し、研磨機にて1回の研磨を実施する(S206)。研磨後、再びS201以降の処理を繰り返し、PIEの最小値あるいは平均値がしきい値以下であってPIFの最大値もしきい値以下であれば、正常なディスクと判定される。もし、PIEの最小値あるいは平均値がしきい値以下であっても、PIFの最大値がしきい値を超える場合、S206で再度、研磨を実行する(2回目の研磨)。すなわち、PIFの最大値がしきい値以下となるまで繰り返し研磨が実行される。
【0034】
PIFは、ディスク10を研磨していくと、傷が浅くなっていく(消えていく)ため減少していく。但し、研磨許容量を超えるような深い傷の場合は、PIFはあまり変化しない。ディスク10を研磨していくとPIEが増大していき、研磨しすぎるとPIEが増大してやがてジッタエラーとして認識される。すなわち、図6の処理フローチャートで、S206の研磨処理を複数回実行してもなおPIFの最大値がしきい値以下とならない場合、やがてPIEの最小値あるいは平均値がしきい値を超えることとなり、S202でNOと判定されてジッタ劣化ディスクと判定される。
【0035】
図7に、ディスク検査装置1における検査処理のさらに他のフローチャートを示す。まず、ECC制御部18でPIE及びPIFを測定する(S301)。次に、比較部20でPIEの最小値あるいは平均値をしきい値と大小比較する(S302)。例えばPIEの最小値をしきい値と比較するものとし、PIEの最小値がしきい値を超える場合には、検査対象ディスク10は研磨不可能なジッタ劣化ディスクと判定する(S307)。
【0036】
一方、PIEの最小値あるいは平均値がしきい値以下である場合、基本的に研磨可能なディスクであると判定し、比較部20でさらにPIFの最大値をしきい値と大小比較する(S303)。PIFの最大値がしきい値以下の場合、検査対象ディスク10は正常なディスクと判定する(S308)。また、PIFの最大値がしきい値を超える場合、比較部20内の演算部が研磨可能数を算出するとともに(S304)、傷が消える研磨数を算出する(S305)。
【0037】
ここで、傷が消える研磨数と研磨可能数について説明する。
【0038】
傷が消える研磨数とは、PIFがしきい値以下となるために必要な研磨数である。予め複数のディスクをサンプルとして1回の研磨とPIF減少量との関係を実測して求めておくことで研磨数を算出する。なお、一般に、1回の研磨における研磨深さはディスク半径方向によって異なり、ディスク半径方向の研磨深さの違いは研磨機の特性に依存する。また、現在のPIF値によってもPIF減少量は異なる。すなわち、1回の研磨によるPIF減少量は、一般に、ディスク半径位置とPIF現在値との関数として規定される。
【0039】
図8に、ディスク10の内外周が均一に研磨される場合の、研磨に伴うPIFの変化を示す。研磨が1回目、2回目、3回目と進むにつれ、内外周ともに同じような減少率でPIFが減少していく。2回目の研磨によりPIFがしきい値以下になるとすると、傷が消える研磨回数は2回である。
【0040】
図9に、ディスク10の内周より外周の方が深く研磨される場合の、研磨に伴うPIFの変化を示す。研磨が1回目、2回目、3回目と進むにつれ、PIFは減少するが、その減少率は内周よりも外周で大きい。内周では2回目の研磨でPIFはしきい値以下となるが、外周では1回目の研磨でPIFはしきい値以下となる。ディスク10は内周外周ともに再生できる必要があることから、この場合において傷が消える研磨回数は2回である。
各ディスク半径においてそれぞれのPIFを関数に入力して傷が消える研磨回数を算出し、その中で最大値を傷が消える研磨回数として設定すればよい。
【0041】
また、研磨可能数とは、PIEの最小値あるいは平均値がしきい値を超えない研磨数である。予め複数のディスクをサンプルとして1回の研磨とPIE増加量との関係を実測して求めておくことで研磨可能数を算出する。PIFと同様に、現在のPIE値によってもPIE増加量は異なる。すなわち、1回の研磨によるPIE増加量は、ディスク半径位置とPIE現在値との関数として規定される。
【0042】
図10に、ディスク10の内外周が均一に研磨される場合の、研磨に伴うPIEの変化を示す。研磨が1回目、2回目、3回目と進むにつれ、内外周ともに同じような増加率でPIEが増加していく。4回目の研磨によりPIEがしきい値を超えるとする、研磨可能数は3回である。
【0043】
図11に、ディスク10の内周より外周の方が深く研磨される場合の、研磨に伴うPIEの変化を示す。研磨が1回目、2回目、3回目と進むにつれ、PIEは減少するが、その増加率は内周よりも外周で大きい。内周では4回目の研磨でもPIEはしきい値以下に留まっているが、外周では4回目の研磨でPIEはしきい値を超える。ディスク10は内周外周ともに再生できる必要があることから、研磨可能数は3回である。各ディスク半径においてそれぞれのPIEを関数に入力して研磨可能数を算出し、その中で最小値を研磨可能数として設定すればよい。
【0044】
再び図7に戻り、以上のようにして研磨可能数と傷が消える研磨数を算出すると、比較部20で研磨可能数と傷が消える研磨数とを大小比較する(S306)。そして、(研磨可能数)<(傷が消える研磨数)の場合には、研磨しても傷改善の見込みがないディスクと判定する(S309)。また、(研磨可能数)≧(傷が消える研磨数)の場合には、研磨可能であって研磨により傷が消えることを意味するから、研磨を実行する(S310)。但し、この研磨は、傷が消える研磨数以下の回数で実行する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態ではPIEとPIFの2つの物理量を用い、これらをそれぞれしきい値と大小比較することで、検査対象ディスク10が正常であるか、あるいは、傷があって研磨が必要か、あるいはジッタ劣化で研磨不可能であるかを互いに識別することができる。
【0046】
本実施形態において、ディスク10の検査は基本的に内周〜外周の全周にわたって行うことが望ましいが、内周の1トラック〜数トラック、中周の1トラック〜数トラック、外周の1トラック〜数トラックに限定して行ってもよい。例えば、内周の1トラック分のデータを再生してPIE及びPIFを測定して判定し、次に中周の1トラック分のデータを再生してPIE及びPIFを測定して判定する等である。図7の処理に示すように、検査対象のトラックをまとめて再生してPIE及びPIFを測定し、これらのデータに基づいて判定してもよい。
【0047】
また、一般的に、内周より外周の方が深く研磨されることから、ディスク10の検査を内周から外周に向けて実行するのではなく、その逆に、外周から内周に向けて実行してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、1トラック分(合計16ECCブロック)においてPIE及びPIFを測定しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、2トラック分、あるいは所定ECCブロック分においてPIE及びPIFを測定して判定することもできる。要するに、所定区間におけるPIE及びPIFに基づいて正常なディスク、傷のあるディスク、ジッタ劣化ディスクのいずれかに識別してその結果を出力すればよい。
【0049】
また、本実施形態では、ディスク10を正常なディスク、傷のあるディスク、ジッタ劣化ディスクのいずれかに識別しているが、傷のあるディスクを研磨可能(研磨による回復可能)ディスク、ジッタ劣化ディスクを研磨不能(既に過剰研磨されていてこれ以上の研磨が無意味)ディスクと読み替えて、ディスク10を正常なディスク、研磨可能ディスク、研磨不能ディスクのいずれかに識別してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ディスク検査装置、10 ディスク、12 スピンドルモータ、14 ピックアップ、16 デコード部、18 ECC制御部、19 メモリ、20 比較部、22 メモリ、30 ローダ、101〜104 ストッカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク検査装置であって、
ディスクから再生したデータの所定区間におけるエラー訂正数PIE及びエラー訂正不能数PIFを検出する手段と、
前記エラー訂正数PIE及び前記エラー訂正不能数PIFをそれぞれ所定のしきい値と大小比較することで、前記ディスクを正常なディスク、傷のあるディスク、ジッタ劣化したディスクのいずれかに識別する手段と、
識別結果を出力する手段と、
を有することを特徴とするディスク検査装置。
【請求項2】
ディスク検査装置であって、
ディスクから再生したデータの所定区間におけるエラー訂正数PIE及びエラー訂正不能数PIFを検出する手段と、
前記エラー訂正数PIE及び前記エラー訂正不能数PIFをそれぞれ第1しきい値、第2しきい値と大小比較することで、前記ディスクを正常なディスク、研磨可能ディスク、研磨不能ディスクのいずれかに識別する手段と、
識別結果を出力する手段と、
を有することを特徴とするディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の装置において、
前記識別する手段は、
前記所定区間における前記エラー訂正数PIEの最小値あるいは平均値と前記第1しきい値とを比較するとともに、前記エラー訂正不能数PIFの最大値と前記第2しきい値とを大小比較することで識別する
ことを特徴とするディスク検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記識別する手段は、前記エラー訂正数PIEの最小値または平均値が前記第1しきい値を超える場合に前記ディスクはジッタ劣化ディスクあるいは研磨不能ディスクと識別し、前記エラー訂正不能数PIFの最大値が前記第2しきい値以下であって前記エラー訂正数PIEの最小値あるいは平均値が前記第1しきい値以下である場合に前記ディスクは正常なディスクと識別し、前記エラー訂正数PIEの最小値または平均値が前記第1しきい値以下であって前記エラー訂正不能数PIFの最大値が前記第2しきい値を超える場合に前記ディスクは傷のあるディスクあるいは研磨可能ディスクと識別する
ことを特徴とするディスク検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の装置において、さらに、
出力された前記識別結果に応じて、前記ディスクを複数のストッカのいずれかに仕分けするローダと、
を有することを特徴とするディスク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−8891(P2011−8891A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153648(P2009−153648)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】