説明

ディスク装置及びこれを有する情報処理システム

【課題】ディスクの回転速度を適正値に制御する。
【解決手段】システムコントローラ32は、光ディスク10から読み出したデータ及び先読みしたデータをバッファメモリ38に格納する。バッファメモリ38がフル状態となる時間間隔tiを計測し、時間間隔tiを所定の下限値t1及び所定の上限値t2と比較する。ti>t2であれば回転速度を増加させ、ti<t1であれば回転速度を減少させることでt1≦ti≦t2となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク装置及びこれを有する情報処理システムに関し、特にディスクの回転数制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスクの回転数を最適な回転数に制御する技術が提案されている。例えば、下記に示す特許文献1には、キャッシュ使用率を上下2つのしきい値と比較し、その結果に基づいてディスクの回転数を制御することが開示されている。また、コマンド間隔に基づいて回転数を制御することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、キャッシュメモリからホストに転送されているデータの平均転送レートを計測し、平均転送レートをしきい値と比較し、その結果に基づいてディスクの回転数を制御することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、書き込み/読み出しデータの転送速度がしきい値Rthを超え、かつしきい値Rthを超えた状態の継続時間がしきい値Tth以上継続した場合に、ディスクを回転させるモータの回転速度を上げ、書き込み/読み出しデータの転送速度がしきい値Rthを下回り、かつしきい値Rthを下回った状態の継続時間がしきい値Tth以上継続した場合に、ディスクを回転させるモータの回転速度を下げることが開示されている。
【0005】
特許文献4には、転送レートの測定なしに、発行されるコマンドパターンの構成に基づいてオーディオ再生かリッピング(CDやDVDのデータをそのまま、あるいはイメージファイル、あるいは他のファイル形式に変換してパソコンに取り込むこと)かを判別してディスクの回転速度を決定することが開示されている。
【0006】
特許文献5には、ファイルサイズに基づき回転速度を制御することが開示されている。さらに、特許文献6には、ドライブのアイドル時間(コマンド実行終了時から次のコマンドの実行開始までの時間)に基づいてディスクの回転速度を制御することが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−362733号公報
【特許文献2】特開2002−8316号公報
【特許文献3】特開2007−48366号公報
【特許文献4】特開2006−147119号公報
【特許文献5】特開2000−132901号公報
【特許文献6】特開2003−242711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、転送レートの測定やコマンドパターンの構成を検出することなく、より簡易にディスクの回転速度を増減制御できる技術が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、簡易にディスクの回転速度を調整できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ディスクからデータを再生するディスク装置であって、前記ディスクから読み出したデータを一時保持するメモリと、前記メモリがフル状態となる時間間隔に応じて前記ディスクの回転速度を増減制御する制御手段であって、前記時間間隔が所定の下限値より小さい場合に前記回転速度を減少させ、前記時間間隔が所定の上限値より大きい場合に前記回転速度を増加させるように制御することで前記時間間隔が前記下限値と前記上限値の間となるように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、前記回転速度を増加させる場合の増加割合を、前記回転速度を減少させる場合の減少割合よりも大きくなるように制御する。
【0012】
本発明の他の実施形態では、前記制御手段は、一定時間内にホスト装置からコマンドを受信しない場合に、前記時間間隔によらずに前記回転速度を減少させるように制御する。
【0013】
本発明のディスク装置はパーソナルコンピュータ等のホスト装置に組み込まれあるいはホスト装置とデータ送受可能に接続され、情報処理システムを構成し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メモリ(バッファメモリ)がフル状態となる時間間隔を用いて簡易に回転速度を適正に増減制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、ディスク装置として光ディスク装置を例にとり説明する。本実施形態の光ディスク装置はドライブ単体の他、パーソナルコンピュータ等に組み込まれてパーソナルコンピュータからのリードコマンドを受信してデータを読み出しパーソナルコンピュータに供給する情報処理システムの一部として機能し得る。
【0016】
図1に、光ディスク装置を含む情報処理システムの全体構成図を示す。CDやDVD、HD−DVD、BD等の光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により回転駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0017】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、レーザパワーが所望の値となるように駆動電流が制御される。APC24及びドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりLDの発光量を制御する。図ではドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、ドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。
【0018】
光ディスク装置が組み込まれるパーソナルコンピュータ等のホスト100からリードコマンドが発行され、このリードコマンドに応じて光ディスク10に記録されたデータを読み出す際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号を復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト100に出力する。なお、再生データをホスト100に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0019】
バッファメモリ38には、リードコマンドで指定されたデータブロックが蓄積される他、先読みしたデータブロックがキャッシュデータとして蓄積される。これにより、次にシーケンシャルリードコマンドが発行されてこれを実行する場合、光ディスク10から読み出す必要がなくバッファメモリ38から読み出せば済むので読み出し速度が高速化する。バッファメモリ38を用いたキャッシュ方法は以下の通りである。
(1)リードコマンド実行後も先読み動作してバッファメモリ38内にデータをキャッシュしておく。
(2)リードコマンドによりホスト100に転送したデータブロックはバッファメモリ38から破棄する。
(3)リードコマンドが発行された時に、リードコマンドで指定されたデータブロックがバッファメモリ38内に存在しない場合に、キャッシュデータをクリアしてリードコマンドの実行を開始する。
【0020】
光ディスク装置が組み込まれるパーソナルコンピュータ等のホスト100からライトコマンドが発行され、このライトコマンドに応じて光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト100からの記録すべきデータはインターフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは記録品質に影響することから、通常はある最適ストラテジに固定される。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化されたデータはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、変調データをデコードし、バッファメモリ38に記憶されている記録データと照合する。照合の結果はシステムコントローラ32に供給される。システムコントローラ32は照合の結果に応じて引き続きデータを記録するか、あるいは交替処理を実行するかを決定する。
【0021】
このような構成において、最適なディスク回転速度、つまり最適な再生速度は、バッファメモリ38が常にフル状態となっているために必要な最小の速度と定義できる。理想的には、ホスト100への平均転送レートと光ディスク10からデータを読み出す転送レートが等しくなることであり、これはバッファメモリ38がフル状態となる時間間隔(バッファメモリ38があるタイミングでフル状態となってから次にフル状態となるまでの時間間隔)が適正か否かで評価できる。すなわち、バッファメモリ38がフル状態となる時間間隔をti、所定の下限値をt1、所定の上限値をt2として、
t1≦ti≦t2
であれば上記の条件に近い状況となる。所定の下限値t1は例えば1秒、所定の上限値t2は1.5秒である。ti<t1であればフル状態となる時間間隔が短い、つまり回転速度が速すぎてデータ読み出し速度がホストへの平均転送レートよりも大きくなっていることを示し、ti>t2であればフル状態となる時間間隔が長い、つまり回転速度が遅すぎることを示す。もちろん、回転速度が遅すぎてデータ転送速度よりも遅くなると時間間隔は無限大となる(いつまでもフル状態とならない)。そこで、ti<t1であれば回転速度を減少させ、ti>t2であれば回転速度を増加させて、t1≦ti≦t2となるように制御することで適当な時間間隔を実現し、ディスク回転速度をホスト100への平均転送レートに応じた最適な値に調整できる。
【0022】
図2に、本実施形態の処理フローチャートを示す。まず、システムコントローラ32は、ホスト100から一定時間内にコマンドを受信しているか否かを判定する(S101)。ホスト100からリードコマンド等を受信している状態では、ホスト100の転送速度に応じた回転速度を実現すべく、以下の処理を行う。すなわち、バッファメモリ38がフル状態となる時間間隔tiを計測する(S102)。システムコントローラ32は、バッファメモリ38がフル状態となるまで先読み制御し、フル状態となったタイミングで先読みを停止する(光ディスク10からデータを読み出すもののそのデコードを停止する、あるいはデコードしたデータをバッファメモリ38に格納することなく破棄する)ので、フル状態となったタイミングでタイマをスタートさせ、次にフル状態となったタイミングでタイマをストップさせることでフル状態となる時間間隔tiを計測できる。時間間隔tiは1回の計測の結果でもよく、複数回の計測結果の平均値でもよい。
【0023】
時間間隔tiを計測した後、tiをまず上限値t2と比較し、ti>T2であるか否かを判定する(S103)。tiをまずt2と比較するのは、回転速度が遅い場合には音飛びや画像飛び等の顕著な異常が生じることとなるため早期に判定する必要があるからであり、回転速度を増大させる場合には回転速度を減少させる場合よりもより多くの時間を要するからでもある。そして、ti>t2の場合には、現在の回転速度は遅いと判定し、回転速度を現在値から10%増加するように制御する。すなわち、システムコントローラ32はサーボプロセッサ30を介してドライバ14を制御しスピンドルモータ12の回転速度を10%だけ増加するように制御する。
【0024】
一方、ti>t2でない場合には、次にtiをt1と比較し、ti<t1であるか否かを判定する(S105)。そして、ti<t1の場合には、現在の回転速度は速いと判定し、回転速度を現在値から1%減少するように制御する。すなわち、システムコントローラ32はサーボプロセッサ30を介してドライバ14を制御しスピンドルモータ12の回転速度を1%だけ減少するように制御する(S106)。回転速度を増大させる場合には10%増加させ、回転速度を減少させる場合には1%減少させるように非対称に制御するのは、上記のように回転速度が遅い場合には音飛びや画像切れが生じないように回転速度を迅速に増加させる必要があるからである。回転速度の増減制御についてはさらに後述する。
【0025】
ti>t2でなく、かつ、ti<t1でない場合、すなわちt1≦ti≦t2である場合には、システムコントローラ32はホスト100への平均転送レートに対して現在の回転速度が適当であると判定し、現在の回転速度をそのまま維持する。
【0026】
また、S101でNOの場合、すなわち一定時間内にホスト100からコマンドを受信しない場合、例えば、アプリケーションソフトのインストール時にはディスクからのデータ読み出しとユーザのキーボードやマウスによる選択操作が交互に行われるためホスト100からコマンドを受信しない期間が存在するような場合には、時間間隔tiに基づく回転速度制御は適当ではないので、システムコントローラ32はtiによらずに現在の回転速度を10%減少させて消費電力の低減を図る(S107)。
【0027】
図3に、時間間隔tiに基づく回転速度の増減制御の詳細フローチャートを示す。図2におけるS104及びS106の処理である。S103でYESあるいはS105でYESと判定された場合にそれぞれフラグを設定した上でこのサブルーチンに移行する。
【0028】
まず、回転速度を増加させるのか減少させるのかを判定する(S201)。この判定は、S103及びS105でYESと判定されたときに設定されたフラグの種類で行う。回転速度を増加させる場合、すなわちti>t2であるためS103でYESと判定された場合には、次に現在の回転速度が既にサーボ系から定まる所定の上限回転速度に達しているか否かを判定する(S202)。上限速度に達していない場合に回転速度の変更を許容し、S104で述べたように回転速度を10%だけ増加させる(S204)。一方、回転速度を減少させる場合、すなわちti<t1であるためS105でYESと判定された場合には、次に現在の回転速度が下限転送レートに達しているか否かを判定する(S203)。下限転送レートに達していない場合に回転速度の変更を許容し、S106で述べたように回転速度を1%だけ減少させる(S204)。なお、S107で回転速度を10%減少させる場合には、下限転送レートとは無関係に回転速度を減少させることができ、サーボ系から定まる所定の下限回転速度に達するまで減少させてもよい。
【0029】
本実施形態では、回転速度を増加させる場合に10%ずつ増加させ、回転速度を減少させる場合には1%ずつ減少させているが、これらの数値は例示であって他の制御も可能である。例えば、回転速度を増加させる場合には200rpmずつ増加させ、回転速度を減少させる場合には100rpmずつ減少させる等である。いずれの場合も、回転速度の増加割合は、回転速度の減少割合よりも大きくすることが望ましい。回転速度を増加させる場合、現在の回転速度があるしきい値以下であれば200rpmずつ増加させ、あるしきい値を超えた場合には100rpmずつ増加させてもよい。
【0030】
本実施形態では、下限値t1を1秒、上限値t2を1.5秒に設定しているが、他の値に設定してもよく、バッファメモリ38の容量に応じて設定してもよい。本実施形態は、バッファメモリ38がフル状態となる時間間隔tiをディスク回転速度が適正か否かの指標として用いており、バッファメモリ38の容量が比較的小さく、回転速度の適正値からのずれがバッファメモリ38の状態に敏感に反映される場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態の全体構成図である。
【図2】実施形態の処理フローチャートである。
【図3】実施形態の回転速度制御の詳細フローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
10 光ディスク、32 システムコントローラ、38 バッファメモリ、100 ホスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクからデータを再生するディスク装置であって、
前記ディスクから読み出したデータを一時保持するメモリと、
前記メモリがフル状態となる時間間隔に応じて前記ディスクの回転速度を増減制御する制御手段であって、前記時間間隔が設定下限値より小さい場合に前記回転速度を減少させ、前記時間間隔が設定上限値より大きい場合に前記回転速度を増加させるように制御することで前記時間間隔が前記下限値と前記上限値の間になるように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記制御手段は、前記回転速度を増加させる場合の増加割合を、前記回転速度を減少させる場合の減少割合よりも大きくなるように制御することを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記制御手段は、一定時間内にホスト装置からコマンドを受信しない場合に、前記時間間隔によらずに前記回転速度を減少させるように制御することを特徴とするディスク装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたディスク装置と、
前記ディスク装置に対して少なくともリードコマンドを含むコマンドを送信し、前記リードコマンドに応じて前記ディスクから読み出されたデータを受信するホスト装置と、
を有することを特徴とする情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−76145(P2009−76145A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244735(P2007−244735)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】