説明

デジタル通信システムの監視情報伝送方式

【課題】デジタル通信システムにおける故障データ等の監視情報の伝送システムに関する。
【解決手段】デジタル通信システムの信号伝送で用いられているリードソロモン符号の同期コードを活用し、伝送する監視情報のビット情報を該同期コードと同じビット数で拡散コード化する。拡散コード化した情報を、伝送されているリードソロモン符号の同期コードフレーム位置にnフレーム間隔で入れ替えて送信することを特徴とする監視情報伝送方式。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル通信システムにおける故障データ等の監視情報伝送方式に関し、特にメタルケーブルを用いたデジタル通信システムの中継装置等を監視し、故障データ等の監視情報を監視局となる事業所へ伝送する監視情報伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力線や通信線等のメタルケーブルを用いる搬送通信システムによりデジタル通信システムが構成されている。このような、電力線/通信線搬送デジタル通信システム(以下デジタル通信線搬送システムと記す)の中継装置は、図9に示すように柱上など屋外に設置されている。この中継装置を構成している搬送装置、電源装置、および端末装置は、通信回線の安定運用のため24時間連続監視され、装置の運用状態に変化があった場合や、故障が発生した場合は、保守方法を決定するために装置の状態や故障データ等を監視情報伝送装置によりメタルケーブル伝送路を介して、又は搬送装置に重畳させて監視局となる事業所へ伝送する。
【0003】
つまり、図9に示す中継装置の監視情報伝送方式は、何らかの伝送媒体と伝送手段を用いて故障データ等の監視情報を伝送する。デジタル通信線搬送システムを構成している伝送路のメタルケーブルを使用できる場合、従来技術の方式では、図10に示すようにデジタル通信線搬送システムで使用する芯線とは異なる芯線や介在線を用いて監視情報を監視情報伝送装置に入力させ、その情報を符号器とアナログモデム、又はデジタルモデムなどを介して監視局となる端局へ伝送する。(特許文献1)
【0004】
また、監視情報を伝送するための伝送媒体が、デジタル通信線搬送システムが使用しているメタルケーブルと同一の心線を用いなければならない場合は、図11に示すように、デジタル通信線搬送システムが使用している周波数帯域の下側の帯域を監視情報伝送装置用モデムの周波数帯域に割当て、図12に示すような構成ブロックで通信データ(信号)と監視情報データを搬送周波数帯でバンドパスフィルタおよびローパスフィルタを用いて結合・分離させ、同一のメタルケーブルに重畳させて監視局となる事業所へ伝送する方式がある。(非特許文献1、特許文献2)
【0005】
さらに、図13に示すようにデジタル通信線搬送システムの通信データフレームの前方に監視情報データを付加させる方式がある。これは、図13に示すような構成ブロックであり、通信データと監視情報データを結合させ、デジタル通信線搬送システムを介して監視局へ伝送させる方式である。(非特許文献2)
【特許文献1】特開昭58−184835号公報
【特許文献2】特開昭59−107654号公報
【非特許文献1】「有線伝送工学」電子情報通信学会、379〜381頁
【非特許文献2】「有線伝送工学」電子情報通信学会、438頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10に示すようにデジタル通信線搬送システムとは異なるメタルケーブルの心線や介在線を用いて監視情報を伝送する方式においては、専用のメタルケーブルの心線や介在線を確保し新たに伝送路を構成する必要があるため、山間地など末端系の事業所へ伝送する場合、メタルケーブルの心線は小容量であるなどから、空き線の確保が出来ないことがある。
【0007】
さらに、監視情報を伝送するための伝送装置が必要となるため、フィルタやモデム、および符号器が通信データ伝送系に加えもう1系統必要となり、監視情報のような数ビットから数十ビットのわずかな伝送容量の要求に対しても、伝送系の設備構成は通信信号を伝送するものと近い機能が要求され、設備費が高価になるという問題が生じる。
【0008】
また、図12に示すデジタル通信線搬送システムが使用しているメタルケーブルと同一の心線を使用して伝送する方式においては、前述した方式と同様、フィルタやモデム、および符号器などの伝送系がもう1系統必要となる問題に加え、使用帯域範囲が制限されている場合、図11に示したように、デジタル通信線搬送システムの通信データ用伝送帯域を減少させて監視情報用伝送帯域を確保しなければならない。この場合、通信データ用伝送帯域幅が減少するため、自ずとデジタル通信線搬送システムの伝送容量を低下させることとなる。
【0009】
さらに、メタルケーブルでこのデジタル通信線搬送システムの伝送速度を低下させず伝送することが要求される場合、伝送帯域の上限値を高い周波数領域へ移行させて対応させることになる。この場合、周波数帯域が高域側へシフトしたことによりメタルケーブルの減衰量が増大し、結果デジタル通信線搬送システムの受信電力が減少することにより伝送距離が短くなるという問題が生じる。
【0010】
また、デジタル通信線搬送システムの通信データフレームの前方に監視情報データを付加させる方式においては、図13に示すように単位時間Tsec内に監視情報がnビット付加させるため、(n/m)×100%で伝送効率が低下するという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、搬送通信システムに限らず、デジタル通信システムにおける中継装置等の監視情報の伝送において、新たにメタルケーブルの確保や伝送設備を構成することなく、かつ、伝送されているデジタル通信システムの伝送機能や伝送効率に影響を与えることなく、デジタル通信システムの監視情報を伝送することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明はデジタル通信システムで信号の伝送に用いられているリードソロモン符号の同期コードを拡散コードとして活用し監視情報を伝送するもので、次のような特徴を有する。
【0013】
第1の特徴は、伝送する監視情報の各ビット情報を、通信信号の伝送におけるリードソロモン符号で用いられている同期コードと同じビット数で拡散コード化し、当該拡散コード化した情報を、前記リードソロモン符号の同期コードフレーム位置にnフレーム間隔で入れ替えて送信することを特徴とする。
【0014】
第2の特徴は、前記監視情報のビット情報の“1”を伝送する場合及び“0”を伝送する場合、一方をリードソロモン符号の同期コードと同じコードを使用し、他方は該同期コードと逆相関のコードを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の監視情報伝送方式によれば、伝送されている通信信号用リードソロモン符号の同期コードを活用し、nフレーム間隔で監視情報伝送用拡散コードとして用いることから、新たにメタルケーブルの確保や伝送設備を構成することなく、かつ、伝送機能や伝送効率に影響を与えることなく、デジタル通信システムにおける中継装置等の監視情報を伝送することが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の監視情報伝送方式によれば、リードソロモン符号の同期コードを拡散コードとして用いて監視情報を伝送することから、拡散ビット数を(C)、伝送路の1Hzあたりの雑音電力を(N)、監視情報を伝送する符号の1ビットエネルギ量をEbとすると、拡散コード化による信号対雑音電力比S/Nは、
S/N=(Eb×C)/N
となり、拡散ビット数(C)に応じてS/N比が向上されるので、誤り訂正符号などの機能を付加することなく耐雑音性の高い監視情報の伝送が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るデジタル通信システムの監視情報伝送方式は、例えば、前述の図9に示したようなメタルケーブルを用いたデジタル通信線搬送システムの中継装置の故障データ等の監視情報の伝送に適用することにより、特に、山間地など末端事業所などの伝送区間で多くの設備費を必要とせずに監視情報を伝送することができる。
【0018】
以下、本発明に係るデジタル通信システムの監視情報伝送方式をデジタル通信線搬送システムに適用した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図2はデジタル通信線搬送システムなどにおいて誤り訂正符号として用いられているリードソロモン符号の1フレームの構成例を示し、図3は図2に示した1フレームの構成が複数フレームからなるリードソロモン符号化データの流れを示したものである。
【0020】
図2に示すリードソロモン符号(RS255、239)の1フレームは、同期コード部、データ部、FEC(Forward Error Correction)部の合計256バイトで構成されている。このリードソロモン符号の同期コード部のビット長は8ビット(1バイト)で、符号語は[01101010]が用いられている。
【0021】
そこで、この同期コードの符号語を拡散コードとして用い、図4に示すように、例えば、情報ビット“0”を伝送する場合は、同期コードと同じ符号語の[01101010]で拡散を行い、情報ビット“1”を伝送する場合は、同期コードの符号語とは逆相関になる符号語、つまりハミング距離が最大となる符号語[10010101]で拡散を行う。
【0022】
そして、監視している機器に故障等が発生し、監視情報を伝送する場合、一例として図5に示しているプリアンブル4ビット、ユニークワード2ビット、監視情報データ8ビットの合計14ビットの監視情報伝送フレームを伝送する場合、このフレームの情報ビットの1ビットずつを、前述した符号語で拡散コード化して(例えばプリアンブル4ビット“1010”を拡散コード化すると、1=“10010101”、0=“01101010”、1=“10010101”、0=“01101010”となる)、図6に示すようにリードソロモン符号の同期コード部の位置に、例えば、3フレーム周期で拡散コード化したフレームデータが挿入され監視情報が伝送される。
これにより、図7に示しているように、リードソロモン符号の復号処理においては同期コード[01101010]を1フレームごとに位置検出してデータ部のスタート位置のタイミングクロックを抽出し復号処理を行っているが、監視情報を伝送する際にリードソロモン符号の復号処理に与える影響を最小限にするため、同期コード部を連続して占有させず、タイミングクロックが自走する時間が連続とならないようにしている。
【0023】
さらに、情報ビット“0”の拡散コードに[01101010]を用いたことにより、図5に示したフレームのプリアンブルビット[1010]の4ビットを伝送する場合を例にとると、図1に示しているように、3フレーム周期で同期コード部が監視情報伝送用として占有されているが、情報ビット“0”を伝送しているフレームに関しては同期コードと同一なので、リードソロモン符号の復号処理では監視情報を伝送しているにも係わらず同期コードを検出できる。このことにより、情報ビット“0”と“1”の出現率を50%とすると、監視情報伝送時の同期コードの占有率と不検出率を約1/2に低減するので、さらにタイミングクロックの自走する時間を低減することを可能としている。
なお、情報ビット“0”と“1”に対する拡散コードの対応関係は反対であってもよいことは明らかである。
また、同期コード部の位置に、例えば、3フレーム周期(2フレーム間隔)で拡散コード化した監視情報のビットを挿入する旨説明したが、2フレーム周期(1フレーム間隔)以上であれば、同期コード部を連続して占有することはなく、タイミングクロックが自走する時間が連続となることはない。
【0024】
図8は、本発明の一実施形態を示すブロック図であり、図5に示した監視情報伝送フレームを使用して監視情報を伝送する場合の構成例である。
【0025】
監視情報送信ユニット20は、監視情報格納部22と、同期コード格納部23と、逆相関同期コード格納部24と、同期タイミング1/n分周部21と、同期コード選択付加部25を備える。また、伝送しているデジタル通信線搬送装置のRS(リードソロモン)符号ユニット10には、RS符号化部11と、同期タイミング生成部12を備える。
【0026】
監視情報格納部22では、図5に示した監視情報伝送フレームビットが格納された条件で、同期タイミング1/n分周部21へ分周クロック受け渡しの要求を行い、その要求を受けてから同期タイミング1/n分周部21では監視情報格納部22と同期コード選択付加部25へ、1/n分周部クロックでタイミング信号を送出する。
【0027】
監視情報格納部22では、前述したクロックタイミングで1ビットずつ監視情報格納部22内のビット情報を同期コード選択付加部25にデータを送出する。
【0028】
同期コード選択付加部25では、監視情報格納部22からのビット信号が、同期タイミング信号の1/n分周に同期して入力されるので、この1/n分周タイミング信号と、RS符号ユニット10の同期タイミング生成部12からのタイミング信号のアンド条件でビット信号を判定し、“0”であれば同期コート格納部23のコードが選択され、“1”であれば逆相関同期コード格納部24のコードが選択され、RS符号ユニット10のRS符号化部11から入力されているリードソロモン符号データの先頭に、その選択された同期コードが付加されリードソロモン符号のフレーム形式で変調部へとデータが送出され、結果図8に示すように、プリアンブル部、UW部、データ部のデータが拡散コード化されリードソロモン符号の同期コードとして、nフレーム間隔で監視情報を伝送することが可能となる。
【0029】
また、監視情報格納部22では格納しているデータが送出し終わると、同期タイミング1/n分周部21へ終了信号を送出すると、同期タイミング1/n分周部21では監視情報22と、同期コード選択付加部25へのタイミング信号送出を停止し、監視情報格納部22では次の監視情報の待ち受け状態となる。
【0030】
なお、同期コード選択付加部25では、同期タイミング1/n分周部21からのタイミング信号が停止し、RS符号ユニット10の同期タイミング生成部12からのタイミング信号のみの入力となった場合、つまり監視情報が伝送されていない時の同期コードは、同期コード格納部23のみのコードが使用されてリードソロモン符号が形成される。
【0031】
以上のように、デジタル通信線搬送システムで用いられているリードソロモン符号の同期コードを利用することで、新たに変復調器などの装置を付加することなく、通信信号の伝送レートや伝送フレーム構成を変更することなく、例えば中継装置等の故障データ等の監視情報を伝送することができる。
なお、実施形態では、デジタル通信線搬送通信システムへの適用例について説明したが、搬送通信システムに限らず、リードソロモン符号を用いてデジタルデータ伝送を行う通信システムに適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の監視情報伝送のデータ構成を示す図である。
【図2】リードソロモン符号のフレーム構成を示す図である。
【図3】リードソロモン符号化データ構成を示す図である。
【図4】リードソロモン符号の同期コードを用いた拡散コード化を示す図である。
【図5】監視情報伝送用フレームの1例を示す図である。
【図6】監視情報のデータの流れを示す図である。
【図7】リードソロモン符号の同期検出を示す図である。
【図8】本発明の実施形態を示す図である。
【図9】デジタル通信線搬送システムの従来例を示す図である。
【図10】監視情報を介在線等を用いて伝送する従来例を示す図である。
【図11】搬送通信における周波数帯域の制約を示す図である。
【図12】監視情報を通信線に重畳して伝送する従来例を示す図である。
【図13】監視情報を通信データ(信号)に付加して伝送する従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10…RS(リードソロモン)符号ユニット、11…RS符号化部、12…同期タイミング生成部、20…監視情報送信ユニット、21…同期タイミング1/n分周部、22…監視情報格納部、23…同期コード格納部、24…逆相関同期コード格納部、25…同期コード選択付加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードソロモン符号を用いて信号を伝送するデジタル通信システムにおけるシステム状態の監視に伴う監視情報の伝送において、
伝送する監視情報の各ビット情報を、前記信号の伝送におけるリードソロモン符号で用いられている同期コードと同じビット数で拡散コード化し、
当該拡散コード化した情報を、前記リードソロモン符号の同期コードフレーム位置にnフレーム間隔で入れ替えて送信することを特徴とする監視情報伝送方法。
【請求項2】
前記監視情報のビット情報の“1”を伝送する場合及び“0”を伝送する場合、一方をリードソロモン符号の同期コードと同じコードを使用し、他方は該同期コードと逆相関のコードを使用することを特徴とする請求項1に記載の監視情報伝送方法。
【請求項3】
リードソロモン符号を用いて信号を伝送するデジタル通信システムの状態を監視する監視装置において、
監視に伴って送信する監視情報のビット情報を前記信号の伝送におけるリードソロモン符号で用いられている同期コードと同じビット数で拡散コード化し、
当該拡散コード化した情報を、前記リードソロモン符号の同期コードフレーム位置にnフレーム間隔で入れ替えて挿入することにより前記監視情報を伝送することを特徴とする監視装置。
【請求項4】
前記監視情報のビット情報の“1”を伝送する場合及び“0”を伝送する場合、一方をリードソロモン符号の同期コードと同じコードを使用し、他方は該同期コードと逆相関のコードを使用することを特徴とする請求項3に記載の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−177631(P2008−177631A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6543(P2007−6543)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000215202)通研電気工業株式会社 (9)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】