説明

デッキ材用小口キャップ

【課題】デッキ材の中空部を閉塞し、外気、雨水、埃及び虫などの中空部への侵入を確実に防ぐとともに小口の美観を損なわないようにすることができるデッキ材用小口キャップを提供する。
【解決手段】天板部20と、天板部20に平行配置された底板部21との間に形成されている中空部22と、中空部22の開口部23が形成されている側面部24とを備えるデッキ材2の開口部23を閉塞するデッキ材用小口キャップにおいて、側面部24と対向する当接面100を有するフランジ10と、当接面100から突き出て、開口部23を介して中空部22に嵌り込む嵌合部11と、嵌合部11と開口部23との間を水密にする止水部材12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキ材が備える中空部の開口を閉塞するデッキ材用小口キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デッキ材は、テラス及び屋上などの床材として用いられ、軽量化と材料コストの軽減とを図るため、長手方向に沿って中空部が形成され、この中空部の開口部がデッキ材の横断面(以下「小口」という。)に形成されている。また、中空部の開口部は、中空部への雨水や埃の侵入を防ぐとともに小口を装飾するため、小口キャップにより塞がれるようになっている。
【0003】
ところで、従来の小口キャップは、デッキ材の撓みなどにより変形しやすく、小口との間に隙間が生じるおそれがあり、外気や雨水が浸透して排水されることなく中空部内に留まり、中空部内に水苔を生じさせたり、湿気がこもる状態が続くことでデッキ材本体を劣化させるおそれがある。
【0004】
そこで、従来、中空部内に溜まる外気や雨水を排水する水抜き孔を備えた小口キャップが提案された(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−91717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先に提案された小口キャップにあっては、水抜き孔の開口がデッキ材の小口の美観を損ね、埃や虫の侵入を許すおそれがある。そのため、先に提案された小口キャップは、中空部への雨水や埃の侵入を防ぐとともに、小口を装飾するという本来の機能を確実に果たすことができていない。
【0007】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、天板部と、天板部に平行配置された底板部との間に形成されている中空部と、中空部の開口部が形成されている側面部とを備えるデッキ材の開口部を閉塞するデッキ材用小口キャップにおいて、側面部と対向する当接面を有するフランジ部と、当接面から突き出て、開口部を介して中空部に嵌り込む嵌合部と、嵌合部と開口部との間を水密にする止水部材とを備えることにより、デッキ材の中空部を閉塞し、外気、雨水、埃及び虫などの中空部への侵入を確実に防ぐとともに小口の美観を損なわないようにすることができるデッキ材用小口キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデッキ材用小口キャップは、天板部と、該天板部に平行配置された底板部との間に形成されている中空部と、該中空部の開口部が形成されている側面部とを備えるデッキ材の前記開口部を閉塞するデッキ材用小口キャップにおいて、前記側面部と対向する当接面を有するフランジ部と、前記当接面から突き出て、前記開口部を介して前記中空部に嵌り込む嵌合部と、該嵌合部と前記開口部との間を水密にする止水部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、デッキ材の側面部と対向する当接面から嵌合部が突き出ることにより、この当接面をデッキ材の側面部に接触させることで嵌合部が側面部に形成された開口部を介して中空部に嵌り込み、開口部が塞がる。また、止水部材を備えることにより、嵌合部と開口部との間が水密となり、外気や雨水が浸透するおそれがなくなる。更にまた、小口キャップに水抜き孔が形成されていないことにより、埃や虫が侵入するおそれがなく、小口の美観が損なわれることもない。
【0010】
また、本発明に係るデッキ材用小口キャップは、前記止水部材は、前記嵌合部の外周面に取り付けられ、前記嵌合部が嵌り込むことにより前記中空部の内周壁を押圧するように構成してもよい。その結果、嵌合部と開口部との間の水密が確実となる。
【0011】
また、本発明に係るデッキ材用小口キャップは、前記止水部材は、前記嵌合部の先端寄りの厚みより基端寄りの厚みの方が厚くなるように形成される構成であってもよい。その結果、嵌合部が中空部に抵抗なく嵌り込み、続けて嵌合部の外周面に取り付けられた止水部材が徐々に中空部の内周壁を押し付け、最終的に嵌合部と開口部との間の水密が確実となる。
【0012】
また、本発明に係るデッキ材用小口キャップは、前記止水部材は、前記中空部の内周壁との摩擦が高くなるように該内周壁との接触面に凹凸部が形成されるように構成してもよい。その結果、中空部に嵌り込んだ嵌合部の嵌り込みが緩まることがない。
【0013】
また、本発明に係るデッキ材用小口キャップは、前記止水部材は、可撓性を有するように内部が中空にされるように構成してもよい。その結果、小口キャップの装着後、デッキ材の撓みにより止水部材に無理な力がかかるようになってもこれを中空空間が吸収し、止水部材を含む嵌合部とデッキ材との間に隙間が生じない。
【0014】
また、本発明に係るデッキ材用小口キャップは、前記側面部にリブで仕切られるように複数形成されている開口部を閉塞する場合、前記嵌合部は、複数の前記開口部のいずれかに対向する位置から突き出るように形成される構成であってもよい。その結果、複数の開口部を有するデッキ材についても水密を確実にする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、デッキ材の中空部を閉塞し、小口キャップに水抜き孔などを設けることなく、外気、雨水、埃及び虫などの中空部への侵入を確実に防ぐことができ、デッキ材本体の品質の低下を防ぐことができる。また、デッキ材の小口の美観が損なわれないように一定の意匠性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るデッキ材用小口キャップの構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係るデッキ材用小口キャップの構成を示す正面図である。
【図3】本発明に係るデッキ材用小口キャップの構成を示す右側面図である。
【図4】本発明に係るデッキ材用小口キャップをデッキ材に装着する状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係るデッキ材用小口キャップをデッキ材に装着する状態を示す右側面図である。
【図6】本発明に係るデッキ材用小口キャップをデッキ材の側面部に装着した状態を示す図である。
【図7】図1乃至図6とは異なる、デッキ材用小口キャップが備える止水部材の一例を示す右側面図であり、(a)は嵌合部の先端寄りの厚みより基端寄りの厚みの方が厚くなるように形成されている止水部材の一例を示す図、(b)は中空部の内周壁との接触面に凹凸が形成されている止水部材の一例を示す図、(c)は内部が中空にされている止水部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
本発明に係るデッキ材用小口キャップについて、実施の形態を示す図に基づいて以下説明する。図1乃至図5において、1は、小口キャップである。小口キャップ1は、フランジ10と、嵌合部11と、止水部材12とを備える。
【0018】
フランジ10は、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート樹脂(ASA樹脂)又はアクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂(AES樹脂)などの合成樹脂により形成されている。また、フランジ10は、正面視横長方形状の薄板であり、後述するデッキ材2への装着時に、デッキ材2の側面部24と対向する当接面100と、当接面100の裏面となる装飾面101とを備える。装飾面101は、装飾のない無地であるか、デッキ材2の外面に合わせた意匠となるように装飾されている。
【0019】
なお、本実施の形態にあって、正面とは当接面100であり、背面とは装飾面101であり、右側面とは正面視右側の面であり、左側面とは正面視左側の面であり、平面とは上を向いた面であり、下面とは下を向いた面である。
【0020】
嵌合部11は、フランジ10と同様に合成樹脂により形成されている。また、嵌合部11は、フランジ10の当接面100から正面に向かって略四角柱状に突き出し、突き出した先端寄りの部分が先端に向かって僅かなテーパとなるように形成されている。また、嵌合部11は、当接面100から複数突き出ている。複数の嵌合部11は、後述するデッキ材2の側面部24に開口する複数の開口部23のいずれかを介して中空部22に嵌り込むよう、所定の位置から突き出ている。また、複数の嵌合部11は、垂直方向の切断面積(以下同じ。)がそれぞれ異なっており、中央付近から突き出ている嵌合部11の切断面積より両側付近から突き出ている嵌合部11の切断面積の方が大きくなるように形成されている。
【0021】
止水部材12は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により形成されている。また、止水部材12は、嵌合部11の外周面を囲むように取り付けられ、嵌合部11の径方向に厚みを有する。この厚みは、嵌合部11の先端寄りの厚みより基端寄りの厚みの方が厚くなるように、且つ、先端側から基端側に向けて徐々に厚みが増すように形成されている。なお、この厚みにより、止水部材12を含む嵌合部11の切断面積は、先端寄りの切断面積が開口部23の開口面積より僅かに小さく、基端寄りの切断面積が開口部23の開口面積より僅かに大きくなっている。
【0022】
図4乃至図6において、2は、デッキ材である。デッキ材2は、軽量及び耐候性並びに錆や腐食に強いことが考慮され、硬質塩化ビニルにより形成されている。デッキ材2は、天板部20と、底板部21と、中空部22と、開口部23と、側面部24と、脚部25と、連結雌部26と、連結雄部27とを備える。
【0023】
天板部20は、平面視略矩形状に形成され、その表面が耐候性に優れた高耐候樹脂によりコーティングされている。また、天板部20と平行する位置には、底板部21が形成されている。底板部21は、その表面が高耐候樹脂によりコーティングされている。
【0024】
また、天板部20と底板部21との間には、軽量化及び材料コストの軽減が考慮された中空部22が形成されている。中空部22は、デッキ材2の長手方向に沿って貫通しており、その内部がデッキ材2の長手方向に沿って立ち上がる中空リブ220により仕切られ、断面視略四角形状の中空孔が複数形成されている。
【0025】
また、側面部24は、デッキ材2の短手辺から垂れ下がる側面であってデッキ材2の小口に該当し、図6に示すよう、開口部23の開口縁が中空部22の内周壁221に連なるように形成されている。また、側面部24には、開口部23が中空リブ220で仕切られるようにして複数開口している。複数の開口部23は、それぞれの開口面積が異なっており、中央付近に開口する開口部23の開口面積より両側付近に開口する開口部23の開口面積の方が大きくなるように形成されている。
【0026】
脚部25は、底板部21から下方に複数突き出ている。脚部25は、デッキ材2がテラスや屋上の床面に敷かれた場合、この床面とデッキ材2との間に隙間ができるようにしてデッキ材を支える。
【0027】
連結雌部26は、いずれか一方の側面部24とこれに隣接する長手辺から垂れ下がる側面との計2面から、水平方向に突き出ている。連結雌部26は、デッキ材2がテラスや屋上の床面に複数敷かれた場合、隣接するデッキ材2の連結雄部27が嵌り込む。
【0028】
連結雄部27は、連結雌部26が設けられた側面以外の計2つの側面から水平方向に突き出て、デッキ材2がテラスや屋上の床面に複数敷かれた場合に隣接するデッキ材2の連結雌部26に嵌り込む。
【0029】
このように、小口キャップ1及びデッキ材2は、複数の要素により構成されている。以下、小口キャップ1をデッキ材2に装着する方法について説明する。
【0030】
小口キャップ1は、図4乃至図6に示すよう、フランジ10の装飾面101が外側を向くとともにフランジ10の当接面100がデッキ材2の側面部24と向かい合わせとなるように配置され、且つ、各嵌合部11が対応するデッキ材2の側面部24の開口部23と向き合う位置に配置される。そして、小口キャップ1は、当接面100がデッキ材2の側面部24に接近するに応じて、嵌合部11の先端部分が開口部23に嵌り込み、次に嵌合部11が先端部分のテーパにより案内されながら抵抗なく開口部23を介して中空部22に嵌り込んでいく。小口キャップ1は、止水部材12が中空部22の内周壁221を徐々に押し付けていき、嵌合部11と開口部23との水密を高めていく。そして、小口キャップ1は、当接面100がデッキ材2の側面部24に到達したとき、止水部材12を含む嵌合部11が開口部23を介して中空部22に完全に嵌り込み、嵌合部11と開口部23とを水密に塞ぐ。
【0031】
本発明に係るデッキ材用小口キャップは、以上のようにデッキ材2に装着されることにより、以下の作用を奏する。止水部材12は、先端寄りの部分が先端に向かって僅かなテーパとなるように形成されている。その結果、止水部材12を含む嵌合部11が、開口部23に抵抗なく嵌り込む。
【0032】
また、複数の嵌合部11は、後述するデッキ材2の側面部24に開口する複数の開口部23のいずれかを介して中空部22に嵌り込むよう、所定の位置から突き出ている。その結果、後述するような複数の開口部23を有するデッキ材2についても水密を確実にする。
【0033】
また、止水部材12を含む嵌合部11は、先端寄りの切断面積が開口部23の開口面積より僅かに小さく、基端寄りの切断面積が開口部23の開口面積より僅かに大きくなっている。その結果、嵌合部11が中空部22に抵抗なく嵌り込み、続いて止水部材12が中空部22の内周壁221を徐々に押し付け、最終的に嵌合部11と開口部23との間の水密が確実となる。
【0034】
また、中空部22は、デッキ材2の長手方向に沿って貫通しており、その内部がデッキ材2の長手方向に沿って立ち上がる中空リブ220により仕切られ、断面視略四角形状の中空孔が複数形成されている。その結果、デッキ材2は、軽量化と材料コストの軽減とが図られるとともに、中空リブ220によりデッキ材2の撓みが極力抑えられ、強度が確保される。また、装着された小口キャップ1に極力無理な力がかかることがない。
【0035】
実施の形態2.
上述した実施の形態1において、止水部材12は、その厚みが嵌合部11の先端寄りから基端寄りに向けて徐々に厚みが増すように形成されている一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、図7(a)に示すよう、止水部材12の厚みが先端寄りから中間付近まで徐々に厚みが増し、この中間付近から基端まで同じ厚みとなるように形成される構成であってもよい。
【0036】
また、止水部材12は、図7(b)に示すよう、中空部22の内周壁221と接触する外周面に凹凸部120が形成される構成であってもよい。その結果、装着後、嵌合部11の中空部22への嵌り込みが甘くなることがない。
【0037】
更にまた、止水部材12は、図7(c)に示すよう、内部に中空空間121が形成される構成であってもよい。その結果、小口キャップ1の装着後、デッキ材2の撓みにより止水部材12に無理な力がかかる場合であっても、これを中空空間121で吸収し、止水部材12を含む嵌合部11が中空部22から抜け落ちることがない。
【0038】
また、上述した実施の形態において、止水部材12は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により形成されている一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム又は軟質塩化ビニルなどの素材により形成する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 小口キャップ
10 フランジ
100 当接面
101 装飾面
11 嵌合部
12 止水部材
2 デッキ材
20 天板部
21 底板部
22 中空部
220 中空リブ
221 内周壁
23 開口部
24 側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部に平行配置された底板部との間に形成されている中空部と、該中空部の開口部が形成されている側面部とを備えるデッキ材の前記開口部を閉塞するデッキ材用小口キャップにおいて、
前記側面部と対向する当接面を有するフランジ部と、
前記当接面から突き出て、前記開口部を介して前記中空部に嵌り込む嵌合部と、
該嵌合部と前記開口部との間を水密にする止水部材と
を備えることを特徴とするデッキ材用小口キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77459(P2012−77459A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221083(P2010−221083)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】