説明

トイレの消臭方法

【課題】消費者の清潔志向を満足すべく、既存のトイレにおいても、使いやすく且つ安価に消臭効果を高めることができるトイレの消臭方法を提供することにある。
【解決手段】光触媒を処理した樹脂成形品10をトイレ内に配置し、光照射なしに消臭する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレの消臭方法に関し、特に樹脂成形品に光触媒処理するものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば消臭剤や消臭洗浄剤などのトイレ用品に対する消費者の購入動機として、清潔志向が最も重要な要素であり、その傾向は顕著である。また、近年、超高齢社会を目前にして使いやすさも重要となっており、さらに消費者の環境への配慮および経済的メリットから、トイレ用品は使い捨てタイプのものから、例えば活性剤のみを詰め替え可能なものが好まれるようになった。
【0003】
また、トイレ便器においても、便器本体の表面に、雑菌や悪臭に対して吸着力あるいは不活化・除去性能などの抗菌効果を有する光触媒を付着させて抗菌、防臭、浄化を図るものがある(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、光触媒で抗菌効果が高いものとして光触媒チタンアパタイトが知られている。光触媒チタンアパタイトは光触媒機能を有するチタンとアパタイトとを原子レベルで結合させた物質であり、優れた吸着力を有するアパタイトで捕獲した雑菌や悪臭をチタン原子で均等接触させ、紫外線により付着したすべての微生物や悪臭をすばやく分解することができるものである。そして、この光触媒チタンアパタイトを樹脂に練りこんで携帯電話あるいはキーボードに利用するものがある(例えば特許文献2)。
【特許文献1】実用新案第2558923号公報
【特許文献2】特開2005−29671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2は、使用者に日常的に直接触れるものを対象としたものであり、最も汚れやすく、また消臭効果とともに使いやすさなどが過度に要望されるトイレ用品への適用を考慮したものではない。
【0006】
また、特許文献1はトイレの消臭効果を有するもトイレ便器本体への設置をもってはじめて効果を奏するものであり、トイレ便器本体の交換を行うのは家屋を新しく建築する場合あるいは増改築を行う場合が一般的であるので、適用が大掛かりでコストがかかる上、実用性に欠けるものであった。
【0007】
本発明は上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、消費者の清潔志向を満足すべく、既存のトイレにおいても、使いやすく且つ安価に消臭効果を高めることができるトイレの消臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光触媒を処理した樹脂成形品をトイレ内に配置し、光照射なしに消臭することを特徴とするトイレの消臭方法。
(2) 前記(1)に記載のトイレの消臭方法において、
前記光触媒がシリカでコートされている酸化チタンであることを特徴とするトイレの消臭方法。
(3) 前記(1)または(2)に記載のトイレの消臭方法において、
前記樹脂成形品が、芳香剤供給装置または芳香洗浄剤供給装置の少なくとも一部を構成することを特徴とするトイレの消臭方法。
【0009】
本発明の上記(1)〜(3)の構成では、トイレ便器本体などに光触媒の処理を施すのではなく、樹脂が光触媒の処理を容易に実施されやすいことに着目して、光触媒を処理した樹脂成形品をトイレ内に配置することにより、容易に消臭効果を得ることができる。また、本発明者は、光触媒を処理した樹脂成形品に光を照射しなくとも充分な消臭効果を得ることができることを見出した。
なお、光触媒を樹脂成形品に処理する方法としては、種々の方法が採用することができるが、例えば練り込み、付着、塗布などを施すことができ、特に練り込みによる樹脂成形品の成形が製造コストを抑制する観点で好適である。前記樹脂成形品を形成する樹脂組成物としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの単一または複合の樹脂が利用できる。
【0010】
また、光触媒としては、酸化チタン、光触媒チタンアパタイトを用いることにより、消臭効果を高めることができる。さらには、光触媒として、悪臭の主な原因であるアンモニア臭に対し非常に高い消臭効果を得ることができる、TKP−101(シリカ吸着TiO)などのシリカでコートされた酸化チタンも好適である。特にTKP−101では、静電気的な吸着が働くため、暗条件下でも明条件下と変わらない消臭効果を発揮する。なお、この場合、光触媒として使用する酸化チタンはアナターゼ型の結晶構造を持つものがよく、またこの酸化チタンに対して物理的または化学的にシリカがコートされることが望ましい。
【0011】
光触媒を処理した樹脂成形品としては、トイレ内で使用されるもの、即ち芳香剤供給装置、消臭剤供給装置、殺虫剤供給装置、忌避剤供給装置、防虫剤供給装置など、あるいはトイレ用貯水タンクの上面に載置される芳香剤供給装置、便器周辺に取り付けられる芳香洗浄剤供給装置などの少なくとも一部を構成するものが好適であり、これらのうち便器に近い位置に配置された方が、より消臭効果をより高めることができる。
【0012】
さらに、これら上記供給装置において、例えば活性剤を収納する活性剤収納部と当該活性剤を支持する支持部とから構成され、且つ前記活性剤収納部は詰め替え用として交換されるか、あるいは充填されるのが最近では一般的となっている。したがって、詰め替えを定期的に行う場合、前記活性剤供給装置の少なくとも一部は長期間利用されることとなるので、そのままの状態では衛生を維持するのが難しい状況であった。このため、樹脂成形品であり長期間利用される部分に光触媒の処理を施すのが衛生上好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既存のトイレにおいても、使いやすく且つ安価に消臭効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について説明する。本発明に係る芳香洗浄剤供給装置について、図面に従って説明する。ただし、本実施形態は本発明を実施する一形態について例示して説明するものであり、なんら制限を受けるものではない。
【0015】
本実施形態に係る芳香洗浄剤供給装置10は、図1および図2に示すように、トイレ内に配置される水洗トイレ1の貯水タンク2の上面に設けられた凹状の水受部3に載置されて使用されるものである。水受部3には貯水タンク内に連通された注水孔4が設けられている。
【0016】
当該芳香洗浄剤供給装置10は、芳香洗浄剤Lを収容した活性剤収容部11と、活性剤収容部11を支持する有底円筒状の支持部15とを備えている。活性剤収容部11は、支持部15にセットされた状態で上部が中空半球状(球面部12)になっており、下部が上部より小径の円筒状になっている。活性剤収容部11の下部は、支持部15内に収まっている。活性剤収容部11の最下部には開口が設けられ、当該開口は、プラスチックやゴムなどの弾性体より形成される中栓17によって塞がれている。なお、中栓17にかえて、後述する保持担体18に栓機能を持たせてもよい。また、開口を出来るだけ小さくして活性剤収容部11を先細りにする等、実施を妨げない程度に変形させてもよい。
【0017】
活性剤収容部11は、透明化されている。活性剤収容部11は、透明ないし半透明な樹脂やガラスから構成される。なお、活性剤収容部11に収容された芳香洗浄剤Lが完全に消耗された場合などには、活性剤収容部11が詰め替え用として定期的に交換される。
【0018】
支持部15は、底壁15aと周壁15bとを有している。周壁15bの下部には、周方向に間隔をあけて複数の通水口16bが設けられている。底壁15aにも、複数の通水口16aが設けられている。底壁15aの上面には、通水口16aを塞ぐように保持担体18が敷かれる。また、前記支持部15は、内部に、前記底壁15aと接合されて、前記活性剤収容部11を直接支持する支持片25を備え、支持片25の下部にも、同じく複数の通水口16cが設けられている。
【0019】
支持部15の底壁15aの中央部上面には、支持部15にセットされた際に上方へ立ち上がって中栓17を貫通する、中空柱状(ここでは円筒状)の活性剤伝達部材20が設けられている。活性剤伝達部材20の上端は、活性剤収容部11内の芳香洗浄剤Lの液面より上方に突出している。活性剤伝達部材20の下端は、その外周面が保持担体18に接している。一方、底壁15aの中央部下面には、水受け部3の注水孔4に挿通されて、芳香洗浄剤供給装置10を水受け部3上で位置決めするための、位置決め部材19が設けられている。
【0020】
活性剤伝達部材20の内部は連通路21になっている。連通路21の上端は、芳香洗浄剤Lの液面より上方の、活性剤収容部11の内部空間に開口し、連通路21の下端は、底壁15aに設けられた中央開口を介して支持部15の外部へと連通している。
【0021】
このように構成された芳香洗浄剤供給容器10において、手洗い用の水が水受け部3に供給されると、水は、周壁15bの通水口16bを通り、更に支持片25の通水口16cを順に通過して、保持担体18に伝わる。一方、保持担体18には、芳香洗浄剤Lが含浸されており、その含浸された芳香洗浄剤Lが水と混合される。そして保持担体18には、活性剤収容部11から活性剤伝達部材20を介して、芳香洗浄剤Lが順次供給される。保持担体を経由した水は、支持部15の底壁15aの開口16aを通って排出され、貯水タンクの注水孔4へと流れていく。
【0022】
ここで、支持部15は、TKP−101(シリカ吸着TiO)または光触媒チタンアパタイトを含有した、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの樹脂をベース樹脂(素地)とする樹脂成形物で形成される。
【0023】
そして樹脂には、TKP−101(シリカ吸着TiO)または光触媒チタンアパタイトが添加されるが、TKP−101を採用した場合には、含有量は樹脂組成物全量に対して0.0001〜10%、より好ましくは0.01〜0.1%とするのが好適である。
一方、光触媒チタンアパタイトを採用した場合には、含有量は樹脂組成物全量に対して光触媒チタンアパタイトが0.1〜1.0質量%であることが好ましい。
【0024】
したがって、本実施形態によれば、TKP−101または光触媒チタンアパタイトの処理が施された支持部材15を構成に含む芳香剤供給装置10をトイレ内に配置することになるので、従来の消臭効果に加え、これら光触媒の消臭効果によりより消臭効果を高めることができ、特に光触媒としてTKP−101を採用することで悪臭の主な原因となるアンモニア臭を効果的に消臭することができる。さらに、加工しやすく且つ製造コストが安価である樹脂成形品に光触媒の処理を施すので、安価に消臭効果を高めることができる。
【0025】
また、活性剤収容部11が詰め替え用として定期的に交換されるが、支持部15はそのまま長期間に亙って使用される。ここで、本実施形態によれば、支持部15にTKP−101または光触媒チタンアパタイトが処理されているため、雑菌が繁殖しやすいトイレ内においても清潔を維持することができる。
【0026】
また、後述する実験により、発明者は、光触媒を処理した樹脂成形品に光を照射しなくとも充分な消臭効果を得ることができることを見出した。したがって、未使用時にはトイレを消灯する場合が多いが、TKP−101または光触媒チタンアパタイトの処理が施された樹脂成形品をトイレ内に配置することにより、光照射なしでも消臭することができる。
【0027】
なお、芳香洗浄剤Lとしては、例えば、界面活性剤及び増粘剤、着香料、活性剤(アルコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、濃グリセリン)、着色剤等を含み、更に洗浄、防汚、漂白、撥水、撥油、消臭、除菌、防黴、殺菌、忌避、防虫、殺虫等の成分を配合する。前記界面活性剤としては、代表的にはアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤の少なくとも一方を挙げることができるが、実施可能な限りこれらに限定されない。
【0028】
より具体的には、表1に示すように、芳香洗浄剤Lは、着香剤として調合香料、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、アニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、溶剤として3−メチル−3−メトキシブタノール、増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、抗菌消臭剤として銀化合物、フッ素系界面活性剤としてフッ素化ポリオキシエチレンエーテル、防腐剤として有機窒素硫黄ハロゲン系化合物、他にイオン交換水が適量配合されて組成されることが好ましいが、使用する界面活性剤は、他の成分の溶解性に応じて適宜変更できる。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例1)
ここで、本発明に関して消臭効果を確認するため、ポリプロピレンに光触媒としてTKP−101(シリカ吸着TiO)を添加して成形した樹脂成形品(容器)を用いて、消臭効果の実験を行った。
【0031】
本実験では、TKP−101を0.1%配合したポリプロピレン容器(6g)を0.5%アンモニア水溶液100μLを濾紙に含浸させたものとともに、容量4Lのデシケータ内に設置して、蛍光灯下における経時的なアンモニア濃度を計測し、その低下率から消臭倍率を算出した。そして、蛍光灯下の実験の次に、デシケータ全体を被って光の遮光を行い、同様な試験を行った。この実験結果を表2に示す。
なお、光の遮蔽を、デシケータ全体を被うことにより行い、消臭倍率の算出は基準品(ポリプロピレンのみの場合)を1としてその比で行った。
【0032】
【表2】

【0033】
表2では、ポリプロピレンのみの場合と比較して、光の有無を問わず、TKP−101を配合したものがポリプロピレンのみに比べ高い消臭効果を示していることがわかる。
【0034】
したがって、この実験結果により、TKP−101を配合することで消臭効果を向上させ得ることが確かめられた。また、光を遮断した状態においても、この消臭効果が光照射された状態と略同等に得られることがわかった。
【0035】
(実施例2)
さらに本発明に関し、光触媒として光触媒チタンアパタイトを採用した場合の消臭効果を確認するため、別の消臭効果の実験を行った。
【0036】
本実験では、ポリプロピレン10gを溶解させて、光触媒チタンアパタイトを0.1gと0.5gとを添加して成形した容器を、0.5%のアンモニア水溶液150μLを濾紙に含浸させたものとともに、容量4Lのデシケータ内に設置して、実施例1と同様にアンモニア濃度の低下率から消臭倍率を算出した。この結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3では、ポリプロピレンのみの場合と比較して、光の有無を問わず、光触媒チタンアパタイトを0.1gと0.5gとを添加して成形した容器いずれも、消臭倍率が高いことが示されている。
【0039】
したがって、この実験結果により、実施例1の実験と同じく、光触媒チタンアパタイトを配合することにおいても消臭効果を向上させ得ることが確認できた。
【0040】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の様態はこれら実施形態に限られるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。例えば、本実施形態ではトイレ用貯水タンクの上面に載置される芳香剤供給装置を例示して説明したが、これに限らず、トイレ内に配置されるものであればよく、例えば、芳香剤供給装置、消臭剤供給装置、殺虫剤供給装置、忌避剤供給装置、防虫剤供給装置など、あるいは便器周辺に取り付けられる芳香洗浄剤供給装置などにも適用することができる。また、本実施形態では、樹脂成形品として芳香洗浄剤供給容器の支持部を例示して説明したが、これに限らず、例えば活性剤収容部あるいは全体にも適用してもよく、種々の態様の容器の一部分または全体に採用することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、樹脂に光触媒を添加して練り込み射出成形を施して樹脂成形品を形成することを例示したが、これに限らず、光触媒を処理する方法として、例えば出来上がった樹脂成形品に光触媒を付着あるいは塗布するなど、種々の方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る、水洗トイレに載置された芳香洗浄剤容器を示す説明図である。
【図2】図1に示した芳香洗浄剤容器の要部断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 水洗トイレ
10 芳香洗浄剤供給装置
11 容器収容部
15 支持部
L 芳香洗浄剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を処理した樹脂成形品をトイレ内に配置し、光照射なしに消臭することを特徴とするトイレの消臭方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトイレの消臭方法において、
前記光触媒がシリカでコートされている酸化チタンであることを特徴とするトイレの消臭方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトイレの消臭方法において、
前記樹脂成形品が、芳香剤供給装置または芳香洗浄剤供給装置の少なくとも一部を構成することを特徴とするトイレの消臭方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−163593(P2008−163593A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352317(P2006−352317)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】