説明

トイレユニット

【課題】非常時に使用される仮設トイレの準備作業をより簡易に行うことを可能にし、もって利用者の利便性を向上させ得るトイレユニットを提供する。
【解決手段】トイレユニット10は、地下に埋設された収容空間を備える地下貯蔵槽と、予め組み立てられた状態で地下貯蔵槽に収容されており、使用に際し地下貯蔵槽から地面に取り出されて大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30を使用可能な状態にするトイレ組立品70と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部において発生した震災により建物の崩壊や生活基盤を支えるライフラインの破壊が招かれると、被災者の生活は著しく不便なものとなる。特に、水道の断水や、下水道の破壊に伴い水洗トイレが使用不可能な状態に陥ると、復旧までの間における被災者の生活は極めて困窮したものとなる。このため、簡易式の仮設トイレを避難場所や公園等に設置するなどして迅速な対応を行うことが望まれる。しかしながら、現在用いられている一般的な仮設トイレには、搬送面や運用面において以下のような課題がある。
【0003】
第一に、建設現場やイベント会場等に設置される一般的な仮設トイレは、予め組み立てられた状態で車両等を利用して搬送される。このため、震災によって交通インフラが破壊されるような場合、避難場所への搬送に多大な労力および時間を費やすことになる。第二に、被災状況下ではその設置場所が左右されるため、設置箇所を予め計画的に選定しておくことができない。このため、設置場所に関する被災者への情報伝達性が悪い。第三に、一般的な仮設トイレは男女共有のものを1個単位で設置するものであるため、便槽の容積が比較的小さい。より多くの被災者に対応するためには、設置数を増加させることが必要であり、仮設トイレを設置する地上部分に広大な設置面積を確保することが必要になる。また、便槽の容積が小さいため、排泄物を汲み出す回数や排泄物の搬送回数が増加し、多大な手間を費やすことになる。
【0004】
これらの問題の解決にあたり、地下に埋設させた便槽、および便槽内に折り畳んだ状態で収容させることが可能なトイレ壁組立体を備えるトイレ設備が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたトイレ設備にあっては、仮設トイレや排泄物を搬送させるための搬送作業に伴う利便性の低下や、設置場所に関する情報伝達性の低下は抑制し得る。しかしながら、仮設トイレを使用可能な状態にするためには、折り畳まれた状態のトイレ壁組立体を利用者自らが地下の便槽から取り出して組み立て作業を行わなければならない。仮設トイレを準備するための作業が煩雑なものとなるため、非常時に迅速に対応することが困難である。
【0007】
本発明は、非常時に使用される仮設トイレの準備作業をより簡易に行うことを可能にし、もって利用者の利便性を向上させ得るトイレユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のトイレユニットは、非常時に使用される仮設トイレを備えるトイレユニットであって、地下に埋設された収容空間を備える地下貯蔵槽と、予め組み立てられた状態で地下貯蔵槽に収容されており、使用に際し地下貯蔵槽から地面に取り出されて仮設トイレを使用可能な状態にするトイレ組立品と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトイレユニットによれば、予め組み立てられた状態のトイレ組立品を地下に埋設させた地下貯蔵槽から地上に取り出して組み付けるだけの簡易な作業によって仮設トイレを使用可能な状態にすることができる。震災時などの非常時においても短時間で仮設トイレを提供することができるため、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るトイレユニットの全体構成を簡略化して示す図であり、仮設トイレの使用状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るトイレユニットの全体構成を簡略化して示す図であり、仮設トイレの使用状態を示す平面図である。
【図3】実施形態に係るトイレユニットの全体構成を簡略化して示す図であり、図2の矢印3A方向から見た矢視図である。
【図4】実施形態に係るトイレユニットの全体構成を簡略化して示す図であり、仮設トイレの不使用時の状態を示す斜視図である。
【図5】地下貯蔵槽を説明するための図であり、図4の矢印5A−5A線に沿う部分断面図である。
【図6】図6は、トイレ組立品を説明するための図であり、(A)は、トイレボックスの外観斜視図、(B)は、補助正面パネル部材および補助背面パネル部材の外観斜視図である。
【図7】大便用仮設トイレの使用状態を示す図であり、図2の矢印7A−7A線に沿う部分断面図である。
【図8】図8は、大便用仮設トイレを説明するための図であり、(A)は、大便用便器を隠蔽するための隠蔽部材が備える側壁部材にトイレボックスを組み付けた状態を示す平面図、(B)は、隠蔽部材が備える屋根部材の裏面を示す平面図、(C)は、側壁部材とトイレボックスとの固定方法を説明するための図であり、(A)の矢印8C−8C線に沿う断面を拡大して示す図である。
【図9】小便用仮設トイレの使用状態を示す図であり、図2の矢印9A−9A線に沿う部分断面図である。
【図10】図10は、小便用仮設トイレの組み付け方法を説明するための図であり、(A)は、小便トイレ用収容槽の排尿口を示す平面図、(B)は、図2の矢印10A−10A線に沿う部分断面図である。
【図11】実施形態に係る拡散器の外観斜視図である。
【図12】防水シートと防水シートを支持するパイプ材との固定方法を説明するための図であり、図3の破線部12Aで示す部分の拡大断面図である。
【図13】変形例に係る大便用仮設トイレを説明するための図であって、大便用仮設トイレの使用状態を示す部分断面図である。
【図14】図14は、変形例に係る大便仮設用トイレを説明するための図であって、図14(A)は、図13の矢印14A−14A線に沿う断面図であり、図14(B)は、図14(A)の矢印14B−14B線に沿う断面図である。
【図15】図15は、変形例に係る大便用仮設トイレの天井部分を説明するための図であって、図15(A)は、大便用仮設トイレの天井部分の断面図であり、図15(B)は、図15(A)の破線部15Bで示す部分の拡大断面図である。
【図16】図16は、変形例に係る小便用仮設トイレを説明するための図であって、図16(A)は、不使用時の小便用仮設トイレを示す部分断面図、図16(B)は、小便用便器の平面図である。
【図17】小便用仮設トイレの使用状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1〜図3および図5に示すように、実施形態に係るトイレユニット10は、地下に埋設された収容空間55、65を備える地下貯蔵槽40と、予め組み立てられた状態で地下貯蔵槽40に収容されており、使用に際し地下貯蔵槽40から地面に取り出されて大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30を使用可能な状態にするトイレ組立品70とを有している。
【0013】
トイレユニット10は、震災時等の非常時に備えて、区画された所定の土地に予め設置されている。図示例では、幅(W)3000mm(図1中の矢印a方向)、奥行き(D)4000mm(図1中の矢印b方向)に区画された12m程度の面積の土地にトイレユニット10一式を設置させている。トイレユニット10を設置させる土地としては、例えば、災害時の指定非難場所や、公園、空き地などが挙げられる。
【0014】
図4に示すように、大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30は不使用時には、地下貯蔵槽40の開口部を覆うハッチ57、67や、トイレ用備品などを収容させる隠蔽部材120を地上に露出させた状態で配置される。
【0015】
トイレユニット10は、地下に埋設された大便用便槽100と、大便用便槽100に連通させて地上に設置された大便用便器110とを有している(図7をも参照)。大便用便器110は、3つを1セットとして並設される。大便用仮設トイレ20の不使用時は、それぞれの大便用便器111、112、113を隠蔽部材120によって覆わせる。これにより、大便用便器111、112、113を外部から隠蔽させた状態で保持できる。
【0016】
図5に示すように、大便用便槽100は、コンクリート製の内壁によって区画された収容空間105を備える。大便用便槽100の大きさは、例えば、幅(W)3000mm、奥行き(D)1400mm、深さ(H)1800mm程度に形成される。大便用便槽100の大きさは、要求される排泄物の収容能力に応じて適宜変更することが可能なものであり、上記の寸法例に限定されるものではない。
【0017】
大便用便槽100は、開口部106と、開口部106を覆うように取り付けられるハッチ107とを有している。大便用便槽100内に収容した排泄物は、開口部106を介して地上に汲み上げることが可能になっている。
【0018】
開口部106の周囲には、開口部106とハッチ107との間から大便用便槽100内へ雨水が流入することを防止するための雨水止め金具109を設けている。雨水止め金具109は、開口部106の周囲を囲ませるように配置される。ハッチ107は、雨水止め金具109に引っ掛け自在なL字金具108を有している。ハッチ107には、トイレボックス収容槽50の内部を覗き見ることを可能にするための覗き窓などを適宜設けることが可能である。
【0019】
図4、図8(A)に示すように、隠蔽部材120は、大便用便器111、112、113の周囲を囲む側壁部材121と、側壁部材121に着脱自在に取り付けられる屋根部材126とを有している。
【0020】
側壁部材121は、プレキャストコンクリート(PCコンクリート)によって製作している。側壁部材121は、高さ450mm程度に形成している。
【0021】
屋根部材126は、鉄板によって製作している。側壁部材121と屋根部材126とによって区画された内部空間125内には、大便用便槽100以外にもトイレ用備品等を収納させておくことが可能である。この内部空間125は、大便用仮設トイレ20の使用時にはトイレ空間75の一部を構成する(図8(A)をも参照)。
【0022】
大便用仮設トイレ20の不使用時は、屋根部材126をベンチなどして利用することが可能である。また、通行人等が誤ってつまずくようなことがないように、屋根部材126とともに側壁部材121を所定の高さだけ地上に露出させて配置している。
【0023】
隠蔽部材120の内部空間125は、側壁部材121によって大便用便器111、112、113ごとに区画されている。1つの大便用便器の周囲には、例えば、幅900mm、奥行き800mm程度の空間が形成される。大便用便器111、112、113は、例えば、内部空間125内においてボルト締めによって固定して設置される。
【0024】
隠蔽部材120の内部空間125内には、各大便用便器111、112、113をそれぞれ識別させるための識別プレート129を取り付けている。識別プレート129には、アルファベットや数字などが表示されており、使用者がどの大便用便器111、112、113を使用しているのかということなどを外部から確認することが可能になっている(図1を参照)。
【0025】
屋根部材126には、簡易式の鍵(図中省略)を備え付けさせることができる。大便用仮設トイレ20の不使用時に屋根部材126が取り外されることを防止するためである。これにより、内部空間125内に収納させたトイレ用備品の盗難などを防止することが可能になる。
【0026】
図6、図10(B)に示すように、トイレ組立品70は、外壁部材73および外壁部材73に開閉自在に取り付けられたドア部材80を備えたトイレボックス71と、地上に設置された2つのトイレボックス71間にトイレ空間75を区画するために用いられる補助正面パネル部材91および補助背面パネル部材93と、小便用仮設トイレ30に用いられる小便用便器をなす尿壁板130とを備える。
【0027】
外壁部材73は、平板状のパネル部材によって構成される。1つのトイレボックスにつき、両側面用、および背面用の3枚のパネル部材が用いられる。
【0028】
トイレボックス71のドア部材80は、トイレボックス71の正面側に配置される(図6を参照)。トイレボックス71の背面側に位置する背面パネル部材74がドア部材80に向かい合わせるように配置される。また、トイレボックス71の両側面に位置する側面パネル部材73は互いに向かい合わせて配置される。
【0029】
ドア部材80は、ヒンジ81を介してパネル部材73に開閉自在に取り付けられる。図6(A)中の左側に示すトイレボックス71は、図7中の左側に配置された他の大便用便器112の周囲を覆うように配置される。このトイレボックス71には、補助正面パネル部材91の軸部材92を連結させるための連結ヒンジ82を設けている。一方、図6(A)中の右側に示すトイレボックス71は、図7中の右側に配置された他の大便用便器113の周囲を覆うように配置される。
【0030】
パネル部材73を構成する材料にはポリエチレンを利用している。ドア部材80を構成する材料にもポリエチレンを利用している。トイレボックス71は、高さ1600mm程度に形成している。
【0031】
トイレボックス71のドア部材80の上端側およびトイレボックス71の背面パネル部材74にはトイレボックス71内の空気を換気させるための換気口83を設けている。換気口83は、例えば、高さ50mm、幅600mm程度に形成することが可能である。換気口83は、トイレボックス71を使用する際に、トイレボックス71の内部とトイレボックス71の外部とにおいて空気を循環させるために用いられる。
【0032】
トイレボックス71は、隠蔽部材120の側壁部材121に連結可能に設けられる。図8(A)、図8(C)に示すように、トイレボックス71の側壁に設置した固定プレート86によって隠蔽部材120の側壁部材121に対してトイレボックス71を固定させることが可能である。
【0033】
側壁部材121から取り外した屋根部材126は、トイレボックス71の天井部分74に連結される。屋根部材126の裏面に設けられた枠材127に、トイレボックス71の上端部をはめ込むことによって、トイレボックス71と屋根部材126とを連結させることができる(図8(B)を参照)。図7に示すように、トイレボックス71の天井部分74に屋根部材126を取り付けることによって、大便用便器111、112、113が外部から隠蔽される。
【0034】
大便用仮設トイレ20の使用時、使用者を外部から隠蔽させために、例えば、地上からトイレボックス71の天井部分74までの高さを2000mm程度に設定することが望ましい。ただし、トイレボックス71自体の高さを2000mmとすると、地下貯蔵槽40からのトイレボックス71の取り出し作業や、地上におけるトイレボックス71の組み付け作業が煩雑なものとなる虞がある。そこで、側壁部材121の高さを450mm程度とし、側壁部材121に連結されるトイレボックス71の高さを1600mm程度とし、側壁部材121とトイレボックス71とを連結させることによって、約2000mm程度の高さのトイレ空間75を区画させている。トイレボックス71の大型化を抑制することによって、トイレボックス71の取り扱いが煩雑になることが防止される。
【0035】
トイレボックス71は、側壁部材121に連結させた状態で側壁部材121に対して固定させられる。固定は、トイレボックス71の側面に位置するパネル部材73に溶接された固定プレート86を側壁部材121に対してネジ止めして行っている(図8(C)を参照)。側壁部材121には、固定プレート86を固定させるためのネジ穴が予め設けられる。
【0036】
補助正面パネル部材91および補助背面パネル部材93は、3つの大便用便器を1セットにして並設させて使用する際に、使用するトイレボックス71の個数を減らすために用いられるものである。図8(A)に示すように、トイレユニット10にあっては、一の大便用便器111を設置し、一の大便用便器111の両隣に他の大便用便器112、113を並設させている。トイレボックス71を他の大便用便器112、113のそれぞれに配置することによって、他の大便用便器112、113の周囲にトイレ空間75が区画される。また、一の大便用便器111の側方において、トイレボックス71の側壁が向かい合わせて配置される。したがって、一の大便用便器111の正面側に補助正面パネル部材91を配置し、一の大便用便器111の背面側に補助背面パネル部材93を配置することによって、一の大便用便器111の周囲を覆うトイレ空間75を区画することができる。
【0037】
補助正面パネル部材91を構成する材料にはポリエチレンを利用している。補助正面パネル部材91は、トイレボックス71に組み付けられるドアとして構成されている。補助正面パネル部材91の軸部材92をトイレボックス71の連結ヒンジ82にはめ込むことによって、トイレボックス71に連結させられる(図6を参照)。
【0038】
補助背面パネル部材93を構成する材料にはポリエチレンを利用している。補助背面パネル部材93は、トイレボックス71の背面側に予め取り付けられた連結部材72に連結可能に構成されている。また、補助背面パネル部材93は、屋根部材126の裏面に設けられた枠部材127を介して屋根部材126に連結させることが可能になっている。
【0039】
図10(B)に示すように、尿壁板130は、排泄された尿を受ける斜壁部131と、鉛直方向に伸びる背面部133と、上端側に配置された平板部135とを有している。尿壁板130は、内部に空洞部分が形成されるように鉄骨を組み付けて構成している。このように構成することによって、尿壁板130の軽量化を図っている。
【0040】
尿壁板130の平板部135は、尿壁板130を収容する小便トイレ用収容槽60の排尿口61の周囲に設けた枠材64に引っ掛け自在な引っ掛け部138を有している(図5を参照)。尿壁板130の背面部133には、排尿口61の近傍に設けられた棒形状の支持部材63を挿通させるための筒部材139を取り付けている(図10(A)を参照)。
【0041】
図5に示すように、地下貯蔵槽40は、トイレボックス71を収容するトイレボックス収容槽50と、尿壁板130を収容する小便トイレ用収容槽60とを有している。トイレボックス収容槽50内には、トイレボックス71以外にも、トイレユニット10に用いられるトイレ用備品を収容させている。
【0042】
トイレボックス収容槽50は、コンクリート製の内壁によって区画された収容空間55を備えている。トイレボックス収容槽50は、例えば、幅(W)3000mm、奥行き(D)1200mm、深さ(H)1600mm程度に形成される。トイレボックス収容槽50の大きさは、収容させるトイレ組立品70やトイレ用備品の大きさ、外形形状などに応じて適宜変更することが可能なものであり、上記の寸法例に特に限定されるものではない。
【0043】
トイレボックス収容槽50は、開口部56と、開口部56を覆うように取り付けられるハッチ57とを有している。トイレボックス収容槽50内からトイレボックス71を取り出す際に、ハッチ57が取り外される。平常時は、開口部56を覆わせた状態でハッチ57を地上に配置させている(図4を参照)。
【0044】
開口部56の周囲には、開口部56とハッチ57との間からトイレボックス収容槽50内へ雨水が流入することを防止するための雨水止め金具59を設けている。雨水止め金具59は、開口部56の周囲を囲むように配置している。ハッチ57は、雨水止め金具59に引っ掛け自在なL字金具58を有している。
【0045】
ハッチ57には、簡易に開け閉めを行うことが可能な小型の小蓋部53を設置している。小蓋部53は、例えば、作業者が開け閉めを容易に行うことが可能となるように、20cm×30cm程度の大きさのものを準備することが好ましい。また、ハッチ57には、トイレボックス収容槽50の内部を覗き見ることを可能にするための覗き窓などを適宜設けることが可能である。
【0046】
トイレボックス71を使用する際、すなわち、大便用仮設トイレ20の使用時は、トイレボックス収容槽50の内部が空の状態となるため、トイレボックス収容槽50を廃棄物を収容させるためのゴミ箱として利用することが可能である。震災時などの非常時においては、高齢者や身体障害者などが排出する廃棄物が多量に排出されることが予測される。例えば、このような廃棄物を収容するためのごみ箱としてトイレボックス収容槽50を活用することができる。トイレボックス収容槽50をゴミ箱として利用する際、比較的小型の小蓋部53を開け閉めすることにより、開口部56を介したゴミの投下を安全かつ円滑に行うことが可能になる。
【0047】
トイレボックス収容槽50には、ゴミ捕集用のネット182を装着させるためのガイドレール181を取り付けている。トイレボックス収容槽50をゴミ箱として使用する際、ゴミ捕集用のネット182をトイレボックス収容槽50の収容空間55内に設置し、開口部56から投げ込まれるゴミを捕集させることを可能にしている。ゴミ捕集用のネット182は、ナイロン材質の紐を網目状に結んで構成された公知のものである。ゴミ捕集用のネット182の両端には、ガイドレール181に対してゴミ捕集用のネット182を移動可能に取り付けるためのローラー183を設置している。ゴミ捕集用のネット182は、未使用時は、折り畳んだ状態でトイレボックス収容槽50内に収容させておくことが可能である。
【0048】
ゴミ捕集用のネット182をトイレボックス収容槽50の長手方向に設置したガイドレール181に沿ってスライド移動可能に取り付けることによって、捕集させたゴミを開口部56の側に手繰り寄せることを可能にしている。これにより、開口部56からのゴミの取り出し作業の作業性の向上を図ることができる(図2を参照)。
【0049】
小便トイレ用収容槽60は、コンクリート製の内壁によって区画された収容空間65を備えている。小便トイレ用収容槽60は、例えば、幅(W)3000mm、奥行き(D)1000mm、深さ(H)1100mm程度に形成される。小便トイレ用収容槽60の大きさは、収容させるトイレ組立品70やトイレ用備品の大きさ、外形形状などに応じて適宜変更することが可能なものであり、上記の寸法例に特に限定されるものではない。
【0050】
図5、図9に示すように、小便トイレ用収容槽60は、尿壁板130を収容および取り出し可能に設けられた排尿口61と、地上に連通する開口部66と、開口部66を覆うように取り付けられるハッチ67とを有している。ハッチ67には、雨水を貯水させるための貯水タンク150を配置させる台座151を取り付けている。
【0051】
小便トイレ用収容槽60の排尿口61の周囲には、排尿口61から小便トイレ用収容槽60内へ雨水が流入することを防止するための枠材64を設けている(図10(B)を参照)。
【0052】
小便トイレ用収容槽60の開口部66の周囲には、開口部66から小便トイレ用収容槽60内へ雨水が流入することを防止するための雨水止め金具69を設けている。ハッチ67は、雨水止め金具69に引っ掛け自在なL字金具68を有している。ハッチ67には、小便トイレ用収容槽60の内部を覗き見ることを可能にするための覗き窓などを適宜設けることが可能である。
【0053】
尿壁板130の不使用時には、尿壁板130の平板部135が、排尿口61を覆う覆い蓋として機能する(図4を参照)。尿壁板130の平板部135に設けた引っ掛け部138を排尿口61の周囲に設けられた枠材64に引っ掛けさせることにより、尿壁板130に位置ずれが生じることを防止することが可能になっている。
【0054】
図10(A)に示すように、排尿口61の近傍には、回転可能に設けられた受け板62と、棒形状の支持部材63とを設置している。尿壁板130を使用する際は、小便トイレ用収容槽60の排尿口61に向けて直上に尿壁板130を持ち上げて地上に取り出す。取り出した尿壁板130は、受け板62の上に配置させる。また、尿壁板130の背面部133に設けた筒部材139内に支持部材63を挿入させることにより、尿壁板130を固定させることが可能になっている(図10(B)を参照)。尿壁板130を使用する際、すなわち、小便用仮設トイレ30の使用時は、小便トイレ用収容槽60の内部が空の状態となる。このため、小便トイレ用収容槽60を尿壁板130に対して排泄された排泄物を収容するための小便用便槽として利用することができる。
【0055】
図10(B)に示すように、トイレユニット10は、小便用仮設トイレ30に組み付けて用いられるガイド板140を有している。ガイド板140には、傾斜面141が設けられており、使用者が排泄した排泄物を排尿口61へ導くことができる。
【0056】
ガイド板140の下端部は、排尿口61の周囲に設置させた枠材64にはめ込んで連結させることが可能になっている(図10(A)を参照)。ガイド板140の背面部には、棒形状の支持部材143を取り付けている。トイレユニット10が設置された地上部分には、支持部材143が挿入可能な筒部材144を予め設置している。ガイド板140の使用時は、ガイド板140の下端部を枠材64にはめ込んで連結させるとともに、支持部材143を筒部材144内に挿入して固定させている。固定させる際、ガイド板140の下端部と排尿口61との間に所定の間隔を設けることによって、ガイド板140に排泄された排泄物をガイド板140の傾斜面141を伝わらせて小便トイレ用収容槽60内に流れ込ませることを可能にしている。
【0057】
図5に示すように、小便用仮設トイレ30の不使用時には、ガイド板140をトイレボックス収容槽50に収容させることができる。
【0058】
図7、図11に示すように、トイレユニット10は、トイレボックス71のドア部材80に取り付けられるとともに大便用便槽100内に伸び、ドア部材80の開閉に伴い大便用便槽100内に収容された排泄物を拡散させてならす拡散器145を有している。
【0059】
拡散器145は、トイレボックス71のドア部材80に取り付けられる棒状部147と、大便用便槽100内に配置される先端部149とを有している。先端部149は、波状に形成されており、ドア部材80の開閉に伴って排泄物を引っ掛けて拡散させる。拡散に伴い大便用便槽100内の排泄物の貯留高さが全体的に均一にならされる。
【0060】
大便用仮設トイレ20の不使用時は、隠蔽部材120の床に設けた穴部128に拡散器145の棒状部147を挿通させて配置し、拡散器145の先端部149を大便用便槽100内に収容させた状態で配置しておく(図8(A)を参照)。大便用仮設トイレ20の使用に際し、トイレボックス71を設置させた後、トイレボックス71のドア部材80の内側に拡散器145の棒状部147を固定させることによって、拡散器145を使用することが可能になる。固定方法は、ネジ止めなどを適宜採用することが可能である。
【0061】
図1〜図3に示すように、トイレユニット10は、雨水を貯水させるための貯水タンク150と、仮設トイレの設置箇所周辺の地面を覆うように張設される防水シート160と、防水シート160を地面に対して支持するとともに防水シート160上に滞留させた雨水を貯水タンク150へ導流するパイプ材170とを有している。
【0062】
図5に示すように、貯水タンク150や防水シート160、パイプ材170は、不使用時には、トイレボックス収容槽50内に収容させている。
【0063】
貯水タンク150は、ドラム缶に簡易式の蛇口を取り付けたものである。簡素な構成のものを用いることによって、トイレユニット10のコストの削減を図っている。
【0064】
貯水タンク150を使用する際は、小便トイレ用収容槽60の開口部66を覆うハッチ67を裏返して配置し、ハッチ67に取り付けた台座151上に貯水タンク150を配置させている。貯水タンク150の底部が地面よりも高い位置にかさ上げされた状態で貯水タンク150に貯水させた雨水を使用することを可能にし、使用者の利便性を向上させている。
【0065】
防水シート160は、撥水加工が施された公知のビニールシートである。大便用仮設トイレ20の空きを待つ待機者や、小便用仮設トイレ30の使用者を雨水や日射から保護する機能を発揮する。
【0066】
パイプ材170は、防水シート160の略中央位置に配置される主支柱パイプ181と、主支柱パイプ181に連結され防水シート160に滞留した雨水を貯水タンク150へ導流するための雨水パイプ191と、防水シート160を四隅において支持する補助支柱パイプ193と、補助支柱パイプ193同士を地面と略平行な方向において連結する補助連結パイプ195とを有している。各パイプは、鉄を材料とする公知のものである。
【0067】
主支柱パイプ181および補助支柱パイプ193は、地面に予め埋設させたパイプ材(図中省略)内に下端部を挿入させることによって建て付けられる。補助支柱パイプ193と補助連結パイプ195との連結は、はめ込み式の簡素な連結具196を利用して連結させられる。
【0068】
主支柱パイプ181は、それぞれの補助支柱パイプ193に連結された梁部材198を備えている。梁部材198は、金属製のワイヤで構成されている。
【0069】
防水シート160は、梁部材198上に載置させることができる。防水シート160は、強風時などに備えて紐部材(図中省略)を利用して補助連結パイプ195に結び付けることができる。
【0070】
図12に示すように、雨水パイプ191は、主支柱パイプ181に一部を内挿させた状態で組み付けられる。雨水パイプ191は、貯水タンク160へ雨水を流すことが可能となるように、所定の角度の勾配を付けて設置される。防水シート160は、主支柱パイプ181に取り付けた受け皿183と押さえ蓋185との間に挟み込ませている。防水シート160は、取り付け用のボルト187によって主支柱パイプ181に固定される。
【0071】
各パイプの内径寸法等は、特に限定されないが、防水シート160上に滞留させた雨水を貯水タンク150へ良好に導流させるためには、例えば、主支柱パイプ181の内径を60mm程度とし、雨水パイプ191の内径を50mm程度とすることが好ましい。
【0072】
図1、図8(A)に示すように、トイレユニット10は、大便用仮設トイレ20の使用時にトイレボックス71の背面側に設置される補強用パイプ材210を有している。補強用パイプ材210は、連結金具211を介してトイレボックス71の背面に連結される。補強用パイプ材210によってトイレボックス71の剛性が高められる。補強用パイプ材210は、鉄を材料とする公知のものである。
【0073】
図1、図9に示すように、トイレユニット10は、小便用仮設トイレ30の使用時に小便用仮設トイレ30の背面側に設置される支持パイプ材220を有している。支持パイプ材220は、尿壁板130を支持し、尿壁板130が背面側へ倒れ込むことを防止する。支持パイプ材220は、鉄を材料とする公知のものである。
【0074】
支持パイプ材220には布材221を吊るしている。布材221は、小便用仮設トイレ30の背面側から小便用仮設トイレ30の使用者が視認されることを防止するための目隠しとして利用される。
【0075】
実施形態に係るトイレユニットの作用について説明する。
【0076】
予め組み立てられた状態のトイレ組立品70を地下に埋設させた地下貯蔵槽40内に収容させておくことができる。使用時には、地下貯蔵槽40からトイレ組立品70を地上に取り出して組み付けるだけの簡易な作業によって、大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30を使用可能な状態にすることができる。地上においてトイレ組立品70の煩雑な組み立て作業を行う必要がないため、短時間で大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30を提供することができ、非常時における利便性の向上を図ることができる。
【0077】
震災時等に避難場所への搬送を行う手間が省かれるため、搬送に要する労力を軽減することができる。さらに、トイレユニット70の設置箇所を予め選定して設置箇所を周知させておくことにより、被災者への設置場所に関する情報伝達性を高めることができる。くわえて、便槽を地下に埋設する方式を採用しているため、便槽の容積を比較的大きく設計することができ、より多くの被災者に対応することができる。便槽の容積が大きくなるため、排泄物の汲み出し、および排泄物の搬送に費やす手間を軽減することができる。
【0078】
大便用便器112の周囲にトイレ空間75を区画するためのトイレボックス71を、予め組み立てた状態でトイレボックス収容槽50内に収容させている。トイレボックス収容槽50から地上に取り出したトイレボックス71を大便用便器110の周囲に配置させる簡単な作業によって大便用仮設トイレ20を使用可能な状態にすることができる。さらに、トイレボックス71を取り出した後は、トイレボックス収容槽50を廃棄物を収容させるためのゴミ箱として利用することができるため、地下に埋設させた収容空間55を有効に活用することができる。
【0079】
大便用仮設トイレ30の不使用時は、側壁部材121と屋根部材126とによって、大便用便器110を覆わせて外部から隠蔽させておくことができる。大便用便器110の破損などを防止することができ、長期間にわたって保管することが可能になる。大便用仮設トイレ30の使用時は、屋根部材126をトイレボックス71の天井部分74に取り付けることによって、トイレボックス71の屋根として転用することができる。トイレユニット10の部品点数を減らすことによって、コストの削減を図ることができる。
【0080】
一の大便用便器111を設置し、一の大便用便器111の両隣に他の大便用便器112、113を並設させることができる。トイレボックス71を他の大便用便器112、113にそれぞれ配置させ、それぞれのトイレボックス71の側壁によって一の大便用便器111の側方を囲ませている。このため、一の大便用便器111の正面側に補助正面パネル部材91を配置し、一の大便用便器111の背面側に補助背面パネル部材93を配置することによって、一の大便用便器111の周囲にトイレ空間75を区画することができる。トイレボックス71の側壁を一の大便用便器111と他の大便用便器112、113とにおいて共用化させているため、トイレボックス71の使用数を減らすことができ、コストの削減を図ることができる。さらに、大便用便器110を増設させているため、被災時などにはより多くの被災者に大便用仮設トイレ20を提供することができる。
【0081】
トイレボックス71のドア部材80に取り付けられた拡散器145が、ドア部材80を開閉させるたびに大便用便槽100内に収容させた排泄物を拡散させてならす。排泄物の貯留高さが全体的に均一になるため、より多くの排泄物を大便用便槽100内に収容させることができる。
【0082】
尿壁板130を収容する小便トイレ用収容槽60を、尿壁板130に対して排泄された排泄物を収容するための小便用便槽として利用することができる。トイレユニット10に小便用仮設トイレ30を備えさせることができ、大便用仮設トイレ20および小便用仮設トイレ30を備える男性用のトイレ設備を提供することができる。
【0083】
防水シート160によって、大便用仮設トイレ20の空きを待つ待機者や小便用仮設トイレ30の使用者を雨水や日射から保護することができる。さらに、防水シート160に滞留させた雨水を貯水タンク150において貯水させることによって、雨水の再利用を行うことができる。震災時などのように水が不足する場合においても、トイレユニット10の清掃などに必要な水を確保することができる。
【0084】
(他の改変例)
小便用仮設トイレ30に用いられる小便トイレ用収容槽60や尿壁板130が備えられていない形態のトイレユニット10を女性専用のトイレ設備として提供することが可能である。
【0085】
女性専用のトイレ設備には、小便用仮設トイレ30に用いられる設備等が不要である。不要な設備を設けないことにより、トイレユニット10を女性専用のトイレ設備として提供することができる。
【0086】
上述した実施形態は、適宜改変することが可能である。
【0087】
隠蔽部材120の屋根部材126をトイレボックス71の屋根として転用させる実施形態を説明したが、例えば、トイレボックス71の天井部分74に通気性を有するすだれなどを配置し、これを屋根部材126の代わりに用いることも可能である。トイレ空間内に直接的に太陽光が照射されることを防止しつつ、トイレボックス内部の熱を効率的に逃がすことができ、使用者の快適性をより向上させることが可能になる。
【0088】
大便用便槽105内の臭気を低減させる対策として、例えば、大便用便槽100と地上とを連通する換気口などを適宜設置することが可能である。
【0089】
大便用便器の設置数などは、使用予定者の人数に合わせて適宜変更することが可能である。例えば、3つの大便用便器を1セットとして増設することも可能であるし、大便用便器を1つずつ増設させることも可能である。
【0090】
(大便用仮設トイレの変形例)
本変形例においては、大便用仮設トイレを使用可能な状態にするトイレボックスには、高さ方向に伸びる円筒形状の外形形状に形成された外壁部材を備えるトイレボックスが使用される。このような点において、平板状のパネル部材によって構成された外壁部材を備えるトイレボックスが使用される上述の実施形態と相違する。以下、図面を参照して本変形例について説明する。なお、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を一部省略する。
【0091】
図13、図14を参照して、トイレボックス271が備える外壁部材273は、高さが約1600mm程度に形成された円筒形状に形成されている。隠蔽部材120の側壁部材121にトイレボックス271を取り付けた状態では、トイレボックス271の天井部分までの高さは、地面から約2000mm程度の高さとなる。大便用便器210の設置数は特に限定されないが、本変形例においては、大便用便器は1つのみ設置している。
【0092】
外壁部材273の内部には、トイレボックス271の高さ方向に伸びる所定の内部空間が形成されている。上述した実施形態に係るトイレボックス71と同様に、隠蔽部材120の側壁部材121に外壁部材273を組み付けることによって大便用便器210の周囲にトイレ空間275を区画させることができる。トイレ空間275を区画させることによって、大便用仮設トイレ220が使用可能な状態になる。使用時には、トイレ空間275の下側に位置するように換気口83が設けられる。
【0093】
トイレボックス271の外壁部材273には、断熱材292を取り付けることができる(図14(B)を参照)。断熱材には、例えば、家屋などに一般的に用いられるシート状の断熱材を使用できる。
【0094】
トイレボックス271の外壁部材273は、例えば、アルミ等の比較的軽量な部材によって構成することが好ましい。
【0095】
側壁部材121への外壁部材273の取り付けは、外壁部材273に設けられた支持部291を利用して行われる(図14(B)を参照)。図中省略するが、支持部291および側壁部材121には、ねじ穴が予め設けられており、支持部291を側壁部材121に載せた状態でねじを使用して固定を行うことが可能になっている。なお、側壁部材121への外壁部材273の取り付けは、このような形態に限定されず、両部材を強固に固定し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0096】
トイレボックス271に取り付けられる屋根部材226は、トイレボックス271の天井側へトイレ空間275内の空気の流れが誘導されるように、半円形の内面形状を有している。後述する脱臭部材293による臭気の吸着を効率的に行うことを可能にするためである。なお、上述した実施形態と同様に、屋根部材226を、隠蔽部材120の屋根部材として共用する構成を採用することも可能である。このような構成における屋根部材の着脱、および外壁部材への屋根部材の取付け方法は、上述した実施形態において説明した方法と同様の方法を採用することができるため、説明は省略する。
【0097】
屋根部材226の材質は、特に限定されないが、採光性を向上させるために、硬質の比較的薄肉な樹脂製パネル材などによって構成されることが好ましい。
【0098】
トイレボックス271が備えるドア部材280には、外壁部材273の周方向に沿うスライド移動(図14(A)中の矢印で示す)によって開閉されるスライド開閉式のドア部材が用いられる。外壁部材273へのドア部材280の取り付けは、例えば、外壁部材273にスライド用のレールを設け、このレールに沿ってドアを移動させることを可能にする公知の取り付け方法を採用することができる。
【0099】
ドア部材280には、大便用便槽300へ伸びる拡散器140が取り付けられる。取り付け方法は、例えば、拡散器140の棒状部147をねじや接着材などによってドア部材280に固定させる方法が採用できる。なお、本変形例のように、ドア部材280にスライド開閉式のドア部材を利用する場合、押し引きして開閉が行われるドア部材を採用する場合と比較して、開閉時における大便用便槽300内の汚物の拡散を効率的に行うことができる。
【0100】
図15(A)、(B)を参照して、トイレボックス271は、トイレ空間275内の臭気を脱臭するための脱臭部材293を有している。脱臭部材293は、トイレ空間275の外部へ空気を流出し、空気を流出する際に臭気を脱臭することを可能にするものである。
【0101】
トイレボックス271にあっては、屋根部材226に脱臭部材293を取り付けている。これは、臭気の脱臭を効率的に行わせるためである。換気口63から取り入れられた空気aは、トイレボックス271内に滞留する空気a’とともにトイレボックス271の天井側へ上昇する。このため、トイレボックス271の天井側において効率的な脱臭を行うことが可能になる。
【0102】
脱臭部材293は、網目を備える樹脂材質の筒部材によって構成されている。トイレ空間275内の空気が筒部材を通過する際、空気に含まれる臭気の要因となる微粒子が筒部材に吸着される。図示するように、脱臭部材293による吸着性を向上させるために、3つの筒部材を利用している。
【0103】
外側に位置する筒部材の網目の間隔を、内側に位置する筒部材の網目の間隔よりも粗くすることにより、脱臭部材293全体における微粒子の吸着性を向上させている。脱臭部材293の上部には、着脱可能な蓋294を設置している。雨水がトイレ空間275内に流入することを防止するためである。
【0104】
脱臭部材293として網目を備える筒部材を利用した形態を図示しているが、脱臭部材293は、空気が流通可能に設けられ、かつ臭気の要因となる微粒子を吸着可能な限りにおいて限定されず、例えば、多孔構造を備える金属プレートや樹脂プレートなどによって構成することも可能である。また、屋根部材226への脱臭部材293の取り付け方法は、特に限定されず、ねじ止めや接着、はめ込み式などの取り付け方法を適宜採用することが可能である。
【0105】
上述した本変形例に係る大便用仮設トイレ220を備えるトイレユニットによれば、トイレボックス271の外壁部材273の外形形状が円筒形状に形成されているため、強風などに対する耐久性を向上させることができ、使用時に倒壊などが発生することをより確実に防止することができる。また、トイレボックス271に設けた脱臭部材293によってトイレ空間275内の臭気を脱臭することができるため、使い心地の良い大便用仮設トイレ220を提供することができる。
【0106】
(小便用仮設トイレの変形例)
本変形例においては、小便用仮設トイレを使用可能な状態にする尿壁板には、小便用便器を使用する一の使用者が向い合せられる一の尿壁側面と、一の尿壁側面に連なり一の使用者と異なる他の使用者が向い合せられる他の尿壁側面とを少なくとも有する尿壁板が使用される。このような点において、1つの尿壁側面を備える尿壁板が使用される上述の実施形態と相違する。以下、図面を参照して本変形例について説明する。なお、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を一部省略する。
【0107】
図16、図17を参照して、尿壁板230は、高さ方向に伸びる本体部231を有している。本体部231の軸回りの外周面には、4つの尿壁側面233が設けられている。各尿壁側面233は、尿壁板230の内側に凹状に湾曲した面形状を有している。小便用仮設トイレ330を使用する使用者は、各尿壁側面233の正面に立って排泄を行うことが可能になっている。したがって、図示される尿壁板230を使用する場合には、最大で4人が同時に排泄を行うことができる。また、尿壁板230の本体部231が高さ方向に伸びる柱形状に形成されているため、板状の尿壁板に比べて安定した状態で地上に設置することができ、使用時に倒壊等が生じることを効果的に防止することが可能になっている。
【0108】
尿壁板230の上端面235の上方には、小便用仮設トイレ330を使用する使用者の視線を隠すための目隠し部材236が設けられている。各目隠し部材236は、環状の補強部材237および補強部材237を支える支持部材238に取り付けている。目隠し部材236、補強部材237、および支持部材238をそれぞれ組み付けることによって、これらの部材の全体の剛性を高められる。
【0109】
尿壁板230には、尿壁板230内に収容保持することが可能な袖壁241を設置している。小便用仮設トイレ330を使用するときには、尿壁板230から取り出された袖壁241によって各尿壁側面233の周囲を仕切ることができ、袖壁241を目隠しとして用いることができる。
【0110】
袖壁241には、袖壁241を地面に対して支持させるための柱状部材242を設けている。小便用仮設トイレ330の使用時には、柱状部材242によって袖壁241を地面に対して支持させるとともに、尿壁板230全体を地面に対して支持させることが可能になっている。
【0111】
図16(A)に示すように、小便用仮設トイレ330の不使用時には、尿壁板230は小便トレイ用収容槽260内に収容される。収容時には、尿壁板230の支持穴243内に小便トレイ用収容槽260に予め設けられた支持棒244を挿通させた状態で収容が行われる。小便トレイ用収容槽260内での尿壁板230の不用意な位置ずれを防止するとともに、小便トレイ用収容槽260内からの尿壁板230の取り出しを円滑に行うことを可能にするためである。なお、収容時には、地面に設けられた雨水止め金具259に取り付け可能な蓋253で小便トレイ用収容槽260の開口部分261が覆われる。
【0112】
図17に示すように、小便トレイ用収容槽260の開口部分261の形状は、尿壁板230の上端面235の形状に近似した形状に形成されている。また、開口部分261は、尿壁板230の上端面235よりも僅かに大きく形成されている。このため、尿壁板230を地上に取り出すと、尿壁板230の周囲には小便トレイ用収容槽260内へ排泄物を流し込むことを可能にするための排尿口としての隙間262が形成される。
【0113】
小便用仮設トイレ330を使用する際は、尿壁板230を地上に取り出した後、袖壁241を尿壁板230内から取り出し、尿壁板230の柱状部材242の下端を雨水止め金具259に引っ掛けさせる(図16(B)を参照)。これにより、尿壁板230を地上においてしっかりと支持させることができ、小便用仮設トイレ330を使用可能な状態にすることができる。尿壁板230には、小便トレイ用収容槽260の開口部分261を覆うために使用される蓋253がかぶせられる。これにより、使用者を雨等から防ぐことができる。
【0114】
上述した本変形例に係る小便用仮設トイレ330を備えるトイレユニットによれば、尿壁板230に各使用者が排泄を行うことが可能な複数の尿壁側面233が設けられているため、尿壁板230を同時に使用する使用者の数を増加させることができる。これにより、利便性がより向上された小便用仮設トイレ330を提供することができる。また、各尿壁側面233の面形状が、尿壁板230の内側に凹状に湾曲した面形状を備えるため、尿壁板230に対して排泄した排泄物の跳ね返りを効果的に防止することができ、より衛生的に使用できる小便用仮設トイレ330を提供することができる。
【0115】
なお、尿壁板230に少なくとも2つの尿壁側面233が設けられていることにより、1つ尿壁板230を同時に2人の使用者が使用することが可能になる。このため、尿壁板230に形成される尿壁側面233の数は、少なくとも2つ以上設けられていればよく、そのような限りにおいて適宜変更させることが可能である。
【符号の説明】
【0116】
10 トイレユニット、
20、220 大便用仮設トイレ(仮設トイレ)、
30、330 小便用仮設トイレ(仮設トイレ)、
40 地下貯蔵槽、
50 トイレボックス収容槽、
55 収容空間、
60、260 小便トイレ用収容槽、
61 排尿口、
70 トイレ組立品、
71、271 トイレボックス、
73、273 外壁部材、
74 天井部分、
75、275 トイレ空間、
80、280 ドア部材、
91 補助正面パネル部材、
93 補助背面パネル部材、
100、300 大便用便槽、
105 収容空間、
110 大便用便器、
111 一の大便用便器、
112、113 他の大便用便器、
120 隠蔽部材、
121 側壁部材、
126、226 屋根部材、
130、230 尿壁板、
140 ガイド板、
145 拡散器、
150 貯水タンク、
160 防水シート、
170 パイプ材、
233 尿壁側面、
293 脱臭部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常時に使用される仮設トイレを備えるトイレユニットであって、
地下に埋設された収容空間を備える地下貯蔵槽と、
予め組み立てられた状態で前記地下貯蔵槽に収容されており、使用に際し前記地下貯蔵槽から地面に取り出されて仮設トイレを使用可能な状態にするトイレ組立品と、を有するトイレユニット。
【請求項2】
地下に埋設された大便用便槽と、前記大便用便槽に連通させて地上に設置された大便用便器と、を有し、
前記トイレ組立品は、大便用仮設トイレの外壁をなす外壁部材および前記外壁部材に開閉自在に取り付けられたドア部材を備え前記大便用便器の周囲にトイレ空間を区画することによって前記大便用仮設トイレを使用可能な状態にするトイレボックスを含み、
前記地下貯蔵槽は、前記トイレボックスが収容可能に設けられ前記トイレボックスを取り出して使用するときには非常時に排出された廃棄物を収容するトイレボックス収容槽を有する請求項1に記載のトイレユニット。
【請求項3】
前記大便用便器の周囲を囲む側壁部材と、
前記側壁部材に着脱自在に取り付けられ、前記大便用仮設トイレを使用するときは前記トイレボックスの天井部分に取り付けられる屋根部材と、をさらに有し、
前記外壁部材は、平板状のパネル部材によって構成されており、
前記大便用仮設トイレを使用するときは、前記側壁部材に前記トイレボックスを連結させるとともに前記トイレボックスの天井部分に前記屋根部材を取り付けることによって前記大便用便器を外部から隠蔽させる、請求項2に記載のトイレユニット。
【請求項4】
一の前記大便用便器と、当該一の大便用便器の両隣にそれぞれ並設された他の前記大便用便器とが1セットになって前記大便用便器が設置されており、
前記トイレボックスは、前記他の大便用便器にそれぞれ設置され、
前記トイレ組立品は、前記トイレボックス間にトイレ空間を区画するための補助正面パネル部材および補助背面パネル部材を備える、請求項2または請求項3に記載のトイレユニット。
【請求項5】
前記外壁部材は、前記トイレボックスの高さ方向に伸びる円筒形状の外形形状を有する請求項2に記載のトイレユニット。
【請求項6】
前記トイレボックスは、前記トイレ空間内の空気を前記トイレ空間の外部へ流出可能に設けられるとともに前記空気を流出する際に前記空気に含まれる臭気を脱臭する脱臭部材を有する請求項5に記載のトイレユニット。
【請求項7】
前記ドア部材に取り付けられるとともに前記大便用便槽内に伸び、前記ドア部材の開閉に伴い前記大便用便槽に収容された排泄物を拡散させてならす拡散器をさらに有する請求項2〜6のいずれか1項に記載のトイレユニット。
【請求項8】
前記トイレ組立品は、小便用仮設トイレに用いられる小便用便器をなす尿壁板を含み、
前記地下貯蔵槽は、前記尿壁板が収容可能に設けられ前記尿壁板を取り出して使用するときには前記尿壁板に対して排泄される排泄物を収容する小便トイレ用収容槽を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のトイレユニット。
【請求項9】
前記尿壁板は、前記小便用便器を使用する一の使用者が向い合せられる一の尿壁側面と、前記一の尿壁側面に連なり前記一の使用者と異なる他の使用者が向い合せられる他の尿壁側面とを少なくとも有する請求項8に記載のトイレユニット。
【請求項10】
前記一の尿壁側面および前記他の尿壁側面は、前記尿壁板の内側に凹状に湾曲した面形状を有する請求項9に記載のトイレユニット。
【請求項11】
雨水を貯水させる貯水タンクと、
使用しないときは前記地下貯蔵槽に収容されており、使用されるときは前記仮設トイレの設置箇所周辺の地面を覆うように張設される防水シートと、
使用しないときは前記地下貯蔵槽に収容されており、使用されるときは前記防水シートを地面に対して支持するとともに前記防水シート上に滞留させた雨水を前記貯水タンクへ導流するパイプ材と、をさらに有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のトイレユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−105974(P2012−105974A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235350(P2011−235350)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(510286396)
【Fターム(参考)】