説明

トラクタの作業機連結装置

【課題】2Pリンク装置にオートヒッチを構成する際、トラクタ側PTO軸と作業機側入力軸とを伝動する伝動軸の着脱等メンテナンス性を向上する。
【解決手段】トラクタの作業機連結装置において、トラクタ1に対して上下回動するヒッチフレーム10,10を設けこのヒッチフレーム10,10に作業機連結枠26を一体的に設け、該作業機連結枠26に対して着脱自在で上下回動自在に係止するジョイントカバー45に、トラクタ1後部のPTO軸20に着脱自在に連結する自在継手22と作業機2側の入力軸21に着脱自在に連結する中間軸部23とからなる着脱伝動部24を支持して設け、前記ジョイントカバー45を前記ヒッチフレーム10又は作業機連結枠26に対して上下回動自在で且つ上向きに付勢された保持機構30によって自在継手22側を上方に付勢支持した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの後部に装着する作業機の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、例えば、特許文献1に示すように、2Pリンク装置にオートヒッチを構成し、作業機の装着を容易化した技術が公知である(特許文献1)。
この特許文献1には、トラクタ側のPTO軸と作業機側の入力軸との間を着脱自在に連結する伝動軸と、オートヒッチを構成する作業機連結体との間に、伝動軸のヨークジョイントとの連結側を上向きに持上げて支持することにより伝動軸の自動接続を容易とする構成が開示されている。
【特許文献1】特開2006−109738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の構成では、固定部材側から吊下げ状に設けるばね部材を直接伝動軸の支持カバー部材に連結する構成であるから、該伝動軸を支持カバー部材と共に着脱する場合にはばね部材の着脱を行なわねばならないなどメンテナンス性に難点がある。
【0004】
本発明の課題は、2Pリンク装置にオートヒッチを構成する際、トラクタ側PTO軸と作業機側入力軸とを伝動する伝動軸の着脱等メンテナンス性を向上し、従来の問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、トラクタ1の後部に作業機2を着脱自在に装着するトラクタの作業機連結装置において、トラクタ1に対して上下回動するヒッチフレーム10,10を設けこのヒッチフレーム10,10に作業機連結枠26を一体的に設け、該作業機連結枠26に対して着脱自在で上下回動自在に係止するジョイントカバー45に、トラクタ1後部のPTO軸20に着脱自在に連結する自在継手22と作業機2側の入力軸21に着脱自在に連結する中間軸部23とからなる着脱伝動部24を支持して設け、前記ジョイントカバー45を前記ヒッチフレーム10又は作業機連結枠26に対して上下回動自在で且つ上向きに付勢された保持機構30によって自在継手22側を上方に付勢支持したことを特徴とするトラクタの作業機連結装置の構成とする。
【0006】
上記のように構成すると、作業機2の非連結状態の際、ジョイントカバー45は保持機構30によって保持されるものであるから、このジョイントカバー45を自在継手22や中間軸部23と共に作業機連結枠26との係止状態から外して前後方向に引き出す。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、中間軸部23に外周に嵌合するベアリング44を介して保持環46を設け、この保持環46の外側左右に係止体47,47を設け、該保持環46をヒッチフレーム10,10又は作業機連結枠26の内側に向けて突出した係止ピン48,48に上方向に着脱自在でかつ揺動自在に装着し、前記保持環46に前方に向けてジョイントカバー45を固着し、該ジョイントカバー45を保持機構30によって保持する構成とし、該保持機構30を、ジョイントカバー45の側面から水平方向に突出させた保持ピン51,51と、ヒッチフレーム10,10又は作業機連結枠26に対して水平軸芯回りに回動可能に設けられ前記保持ピン51,51を側面視く型を呈した中間部53aで保持しうる保持枠53と、保持枠53を上方に向けて付勢すべく該保持枠53の左右連結部53bに係合させた引張ばね54とからなる構成とした。
【0008】
このように構成すると、ジョイントカバー45は側面視く型の解放側に向け保持枠53を残したままで取り外しできる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、作業機2の非連結状態の際、ジョイントカバー45は保持機構30によって保持されるものであるから、このジョイントカバー45を自在継手22や中間軸部23と共に作業機連結枠26との係止状態から外して前後方向に引き出すことができ、該保持機構30や付勢手段としてのばね54を取り外す必要がなくなって自在継手22や中間軸部23のメンテナンス作業が迅速となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて保持機構30の構成を簡単化でき安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1はトラクタ1に作業機の一例としてのロータリ作業機2を装着した状態を示したものである。該トラクタ1の前部のボンネット3内にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース4内の変速装置に伝え、この変速装置で変速された回転動力を後輪5及び前輪6に伝達するよう構成している。該ミッションケース4の後部上方に油圧シリンダケース7を設け、該油圧シリンダケース7の左右外側にリフトアーム8,8が回動自在に枢着され、機体後部に設けるブラケット9,9に取り付けられた一対のヒッチフレーム10,10とリフトアーム8,8の間にはリフトロッド11,11が介装され、ロータリ作業機2は前記リフトアーム8,8の昇降駆動によって上下動する構成としている。
【0012】
ヒッチフレーム10,10は、フレーム本体10aの前端にL型取付部10bを一体化し、該フレーム本体10aとL型取付部10bとの間に設ける連結筒軸12を前記ブラケット9に設けるU型連結部9aに係合して係止ピン9bで上下回動可能に連結される構成である。
【0013】
ステアリングハンドル15は、左右の旋回操作で左右の前輪6,6を左右操向する構成であり、ステアリングハンドル15の後方には運転席16が配備される。
トラクタ1の機体後部から後方に向けてPTO軸20を突出させて設け、このPTO軸20とロータリ作業機2の入力軸21との間には後述する自在継手22・中間軸部23等からなる着脱伝動部24を設ける。
【0014】
前記ヒッチフレーム10,10には作業機連結枠26を構成し、該作業機連結枠26に前記着脱伝動部24を保持して、該作業機連結枠26の上下動に連動して着脱伝動部24がPTO軸20と入力軸21とを伝動状態に連結する所謂オートヒッチを構成する。
【0015】
前記作業機連結枠26について、上部フック27、下部フック28,28、ロック爪29,29、前記着脱伝動部24を保持する保持機構30などから構成される。詳細には、前記ヒッチフレーム10,10の主フレーム10a,10aとの間に、上部中央の上部フック27を設け、この上部フック27にはロータリ耕耘装置2のトップマスト31の上端部を連結ピン32により係合できるようになっている。また下部左右の筒フレーム33,33の外側端には下部フック28,28を設け、該フック28,28の後側を開口させて、ロータリ耕耘装置2の左右中央に配置された伝動ケース33の両側に設けられた係止ピン34,34が係合できるように構成すると共に、回動可能に設けられロック方向に付勢されたロック爪29,29によってその係合係止状態をロックできる構成としている。ロック爪29を付勢して常時は下部フック28の開口28aを塞ぐ構成とし、レバー35の切替えによって図外のばねを支点越えさせて開口28aを解放状態におく構成としている。
【0016】
36は、左右のヒッチフレーム10,10の後端側を左右連結する逆Y型の連結補強枠、37は左右ヒッチフレーム10,10の後下端を接続すると共に左右に延長して前記下部フック28,28部に接続されて補強構造とする補強パイプで、中央を下方に湾曲して形成している。そして、前記左右のヒッチフレーム10,10、連結補強枠36、補強パイプ37で囲われる空間部38を形成している。
【0017】
次いで、PTO軸20と入力軸21との間を伝動可能に着脱する前記着脱伝動部24について、図に基づき詳細に説明する。着脱伝動部24は、共に雌スプラインを形成した前後のヨーク40f,40rとこれらを屈曲自在に連結するヨークジョイント40jとからなる前記自在継手22と、該自在継手22の後側ヨーク40rに雄スプラインを備えて嵌合する連結軸42及びこの連結軸42の後部にあって軸芯を一致させた雌スプライン43a形成の筒軸43による中間軸部23と、該中間軸部23の外周に設けるベアリング44を介して保持される円筒状のジョイントカバー45等からなる。ベアリング44の保持環46の外周左右に係止体47,47を設け、該係止体47,47は下方側が解放した逆U字状を呈し、前記ヒッチフレーム10,10の後部内側に向けて突出した短軸の係止ピン48,48をもって上方から落としこんで該係止ピン48,48に上下揺動自在に装着する構成である。保持環46には前方に向けてジョイントカバー45を固着し、一体的に係止ピン48部における水平軸芯周りに上下揺動可能に設けられる。
【0018】
また、ジョイントカバー45を上方に持上げて一定以下にならないよう保持する前記保持機構30は、補強部材50から水平方向に突出させた保持ピン51,51、前記短軸の係止ピン48,48の下方においてヒッチフレーム10,10に開口した左右支持孔52,52に係止されて水平軸芯回りに回動可能に設けられ前記保持ピン51,51をく型を呈した中間部53aで保持しうる保持枠53、保持枠53を上方に向けて付勢すべく左右連結部53bに係合させた引張ばね54とからなる。
【0019】
55は保持枠53から前方に向けて突出させて設けるストッパ板で、適宜ヒッチフレーム10,10に固着されたストッパ部材56に接触して保持枠53の上動を規制する構成としている。なお、57はストッパ板55の接触位置を上下微調整できる調整ボルトである。
【0020】
上記のように構成された作業機連結枠26や中間軸部23は、以下のように作用しながら作業機としてのロータリ耕耘装置2をトラクタ後部に装着する。即ち、レバー39を操作して開口28aを開口状態に維持させておき、トラクタ1を接地固定姿勢のロータリ耕耘装置2に前側から接近する。所定に接近した後、リフトアーム8を操作することにより、上部フック27を下方から作業機連結枠の連結ピン32が掬い上げるようになし、上部フック27に係止後もリフトアーム8で作業機2を引き上げると下部フック28,28に連結ピン32が嵌入し同時にロック爪29を支点越えして開口姿勢に保持する図外のばねを復帰動してロック状態に切り替える。
【0021】
この間、着脱伝動部24のジョイントカバー45は保持機構30によって所定に付勢された状態で支持されていて、その状態は例えば、連結軸42の軸芯延長線が、側面視において、ヒッチフレーム10とブラケット9との枢着部であって上下回動軸芯を通過する方向にジョイントカバー45の前側がやや高い状態に保持している。このため、ロータリ耕耘作業機2の接近に伴い、前側ヨーク40fには前側のPTO軸20が嵌入し、連結軸42には後側の入力軸21が嵌入することとなり、軸芯方向の角度のずれはジョイントカバー45を支持する係止体47と係止ピン48の回動によって吸収しながら徐々に正規の状態に嵌合しあうものである。
【0022】
上記のジョイントカバー45と共に自在継手22及び中間軸部23は、保持機構30によって保持される構成であるが、保持機構30の保持枠53は、ジョイントカバー49の保持ピン51,51をく型を呈した保持枠53の中間部53aで保持するものであるため、係止ピン48から前後の一方、図例では空間部38に向け、保持枠53や引張ばね54を残したままで、後方に引き出すことができ、メンテナンス性を向上できる。
【0023】
前記引張ばねの代わりに板ばねを利用してもよい。また、ジョイントカバー45の前側に樹脂製カバーを装着してヨーク40やヨークジョイント41をカバーする構成としてもよい。
【0024】
図9は、上部フックの代替改良構成を示すものである。作業機連結枠60の上部中央にブラケット61を設け、該ブラケット61に対して回動中心62をもって上下振り替えて装着できる振替部材63を設け、この振替部材63の上下に前記回動中心62からの距離を異ならせたフック63A及びフック63Bを形成している。また、リフトアーム64とヒッチフレーム65との間を連結すべきリフトロッド連結ピン66には、補助連結具67を設け、振替部材63の上下振替に連動してロッド68を介してリフトロッド連結ピン66の高さを変更できる構成としている。
【0025】
このように構成すると、上部フック63Aを用いると作業機側トップマストの高さが高い標準機種に対応でき(図9(ハ))、上部フック63Bを用いるとこの高さが低い特殊2Pリンク機構付き作業機に対応できる(同(ロ))。また、この変更に合わせてリフトロッドの有効長さを変更し、更に作業機上昇高さの制限を設けることによって各種作業機仕様に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】トラクタ要部の側面図
【図2】作業機連結装置の要部斜視図
【図3】同上要部の一部断面図
【図4】作業機連結装置の要部平面図
【図5】同上要部の一部断面図
【図6】作業機連結装置の要部の一部側断面図
【図7】作業機連結装置の背面図
【図8】着脱伝動部の側断面図
【図9】上部フックの別例を示す平面図(イ)、第1姿勢の側面図(ロ)、第2姿勢の側面図(ハ)
【符号の説明】
【0027】
1 トラクタ
2 ロータリ耕耘作業機(作業機)
10 ヒッチフレーム
20 PTO軸
21 入力軸
22 自在継手
23 中間軸部
24 着脱伝動部
26 作業機連結枠
30 保持機構
44 ベアリング
45 ジョイントカバー
46 保持環
47 係止体
48 係止ピン
51 保持ピン
53 保持枠
54 引張ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ(1)の後部に作業機(2)を着脱自在に装着するトラクタの作業機連結装置において、トラクタ(1)に対して上下回動するヒッチフレーム(10,10)を設け、このヒッチフレーム(10,10)に作業機連結枠(26)を一体的に設け、該作業機連結枠(26)に対して着脱自在で上下回動自在に係止するジョイントカバー(45)に、トラクタ(1)後部のPTO軸(20)に着脱自在に連結する自在継手(22)と作業機(2)側の入力軸(21)に着脱自在に連結する中間軸部(23)とからなる着脱伝動部(24)を支持して設け、前記ジョイントカバー(45)を前記ヒッチフレーム(10,10)又は作業機連結枠(26)に対して上下回動自在で且つ上向きに付勢された保持機構(30)によって自在継手(22)側を上方に付勢支持したことを特徴とするトラクタの作業機連結装置。
【請求項2】
中間軸部(23)に外周に嵌合するベアリング(44)を介して保持環(46)を設け、この保持環(46)の外側左右に係止体(47,47)を設け、該保持環(46)をヒッチフレーム(10,10)又は作業機連結枠(26)の内側に向けて突出した係止ピン(48,48)に上方向に着脱自在でかつ揺動自在に装着し、前記保持環(46)に前方に向けてジョイントカバー(45)を固着し、該ジョイントカバー(45)を保持機構(30)によって保持する構成とし、該保持機構(30)を、ジョイントカバー(45)の側面から水平方向に突出させた保持ピン(51,51)と、ヒッチフレーム(10,10)又は作業機連結枠(26)に対して水平軸芯回りに回動可能に設けられ前記保持ピン(51,51)を側面視く型を呈した中間部(53a)で保持しうる保持枠(53)と、保持枠(53)を上方に向けて付勢すべく該保持枠(53)の左右連結部(53b)に係合させた引張ばね(54)とからなる構成とした請求項1記載のトラクタの作業機連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−124785(P2010−124785A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304659(P2008−304659)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】