説明

トラックボール装置

【課題】ボールの回転方向のずれを規制することを可能としたトラックボール装置を提供する。
【解決手段】トラックボール装置1は、ボール3の第1の回転軸線上の両側に配置された一対の第1の回転支持体50と、第1の回転軸線50上とは異なる第2の回転軸線上の両側に配置された一対の第2の回転支持体60と、ボール3を第1の回転軸線に一致する軸回り又は第2の回転軸線に一致する軸回りの一方向に回転操作させたとき、ボール3の回転方向を一方向に規制する回転方向規制機構とを備えている。回転方向規制機構は、隣り合う2つの第1の回転支持体50及び第2の回転支持体60のうちの一方の部材に対してボール3が押し付ける力を、第1の回転支持体50及び第2の回転支持体60のうちの他方の部材に与える付勢部材40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカーナビゲーション等の表示画面上におけるポインタの移動や画像のスクロール操作などを行うためのトラックボール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力操作用のトラックボールが各種の電子機器の入力操作部に搭載されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1記載の従来のトラックボールは、天板に穿設された円孔から突出するボールを手動で回転させると、ボール回転量のX軸方向成分とY軸方向成分とが互いに直交する2つのローラに伝達され、これらのローラの回転量が検出部により検出される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−49549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来のトラックボールは、上下左右及び斜め自在に回転操作できる。そのため、上方向、下方向、左方向、又は右方向の一方向へカーソルポインタ移動やスクロールを行う際には、意図しない斜め方向へ移動してしまうので、表示画面上におけるカーソルポインタの移動方向や画像のスクロール方向が定まらない。その結果、一定方向を保持した状態でボールを回転操作することが困難であるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、ボールの回転方向のずれを規制することを可能としたトラックボール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、自由な方向に回転操作可能なボールと、前記ボールの第1の回転軸線上の両側に配置され、前記ボールの回転を伝達可能な一対の第1の回転支持体と、前記第1の回転軸線上とは異なる第2の回転軸線上の両側に配置され、前記ボールの回転を伝達可能な一対の第2の回転支持体と、前記ボールを前記第1の回転軸線に一致する軸回り又は前記第2の回転軸線に一致する軸回りの一方向に回転操作させたとき、前記ボールの回転方向を前記一方向に規制する回転方向規制機構とを備えてなり、前記回転方向規制機構は、隣り合う2つの前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体のうちの一方の部材に対して前記ボールが押し付ける力を、前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体のうちの他方の部材に与える付勢部材を備えてなることを特徴とするトラックボール装置にある。
【0007】
[2]上記[1]記載の発明にあって、前記回転方向規制機構は、前記ボールに追従して回転する側の前記第1の回転支持体又は前記第2の回転支持体に対して前記ボールが押し付ける力を、前記ボールに追従して回転する側の前記第1の回転支持体又は前記第2の回転支持体とは隣り合う前記一対の第2の回転支持体、又は前記一対の第1の回転支持体に与えることを特徴とする。
【0008】
[3]上記[1]又は[2]記載の発明にあって、前記付勢部材は、前記第1の回転支持体と前記第2の回転支持体とが交差する部位に対応して折り曲げられた屈曲部を有しており、前記屈曲部を支点として前記ボールの押付力を隣り合う2つの前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体に加えることを特徴とする。
【0009】
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の発明にあって、前記第1の回転支持体と前記第2の回転支持体とは、前記ボールの球面上に90°の位相差をもって配置されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極めて簡単な操作で、確実にかつ円滑にボールの回転方向を一方向に規制するとともに、操作性の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な第1の実施の形態であるトラックボール装置を概略的に示す分解斜視図である。
【図2】トラックボール装置の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】第2の実施の形態であるトラックボール装置の内部構造を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
(トラックボール装置の外観構成)
図1において、全体を示す符号1は、この第1の実施の形態に係る典型的なトラックボール装置の外観構成を模式的に示している。図示例によるトラックボール装置1は、特に限定されるものではないが、例えば自動車の運転席周辺に操作デバイスとして装備されており、カーナビゲーションなどの表示画面上に表示されるポインタの移動や画像のスクロール操作などを行うのに好適に用いられる。
【0014】
このトラックボール装置1は、図1に示すように、例えば合成樹脂材により形成されたハウジング2を備えている。このハウジング2は、上方が開口した四角箱形状のベース部10と、ベース部10を着脱可能に覆う蓋部20とにより構成されている。その蓋部20は、ベース部10の外周壁を囲む四角筒状の周囲壁部21と、その周囲壁部21の上端縁から外方に向けて膨出した円形状の操作部22とにより形成されている。
【0015】
この操作部22の表面中央部には、図1に示すように、90°の位相差をもって十字状の操作案内溝23が形成されている。その操作案内溝23の交差部分には、ボール3の直径よりも小さい円形の開口24が形成されており、その開口24を介してボール3の一部が露出される。このボール3は、特に限定されるものではないが、例えば鋼材、合成樹脂材、又は鋼材をインサート成形した合成樹脂材等からなる。
【0016】
十字状の操作案内溝23に向けてボール3を回転操作することで、ボール3を四方向に確実に操作させることができる。操作案内溝23としては、90°間隔の四方向の十字状に限定されず、ボール3を多方向に案内させるため、任意の角度の間隔で形成したものでもよい。ボール3の回転方向や回転速度を検出する手段にあっても、特に限定されるものではないが、ボール3を支持する回転支持体50,60の回転に連動する磁気式、光学式、電気式、又は機械式のエンコーダSWなどが用いられる。
【0017】
(ベース部の構成)
このベース部10の最下部には、図3に示すように、上側に向けて窪んだ中空状の凹部11が形成されており、この凹部11の開口端部によって脚部12が形成されている。この凹部11の底部上面には、ボール収容空間を形成する円形のボール収容壁部13によりボール収容部14が形成されている。
【0018】
このボール収容部14の底壁中央部には、図3に示すように、凹部11の底部上面から底部下面に向かって凹陥部15が形成されており、その凹陥部15の底部には通孔16が形成されている。この凹陥部15内には、ボール回転動作を助成する小球4がボール3の中心を通る垂直軸線上に配されている。この小球4により、ボール3の球面とボール収容壁部13との間には所定の間隙が空けられている。小球4の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼等の硬質材料が用いられる。
【0019】
このベース部10の内部には、図1〜図3に示すように、ボール3の回転を伝達可能な一対の第1の回転支持体50,50と一対の第2の回転支持体60,60とを回転可能に保持する4つの軸受支柱30,…,30が備えられている。この軸受支柱30のそれぞれは、ベース部10のボール収容壁部13の外周にあって、ベース部10の4つの隅角部に対向する部位に形成されている。この軸受支柱30とベース部10の内壁面との間には、ボール3の回転方向を規定するための付勢部材40を収容する収容溝17が四角枠形状に形成されている。
【0020】
(軸受支柱の構成)
4つの軸受支柱30は、図1、図2及び図4に示すように、同一の形状及び構造を有している。この軸受支柱30の上面には、互いに直交する2つの軸受部31,31と、この軸受部31が互いに交差する部位からベース部10の隅角部に向けて先細り状に突出した突起部32とがそれぞれ形成されている。
【0021】
この軸受支柱30の軸受部31は、図1、図2及び図4に示すように、水平壁と垂直壁との間の角部が円弧面形状に切欠して形成された段部からなる。この2つの軸受部31には、隣り合う2つの回転支持体50,60の軸部がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、水平方向に移動可能に支持されている。
【0022】
この軸受支柱30の突起部32は、図1及び図2に示すように、ベース部10の収容溝17内に収容された付勢部材40を保持する保持部として形成されており、付勢部材40とベース部10の内壁面との間に所定の間隔をもって付勢部材40の屈曲部41を接触した状態で保持している。この突起部32の先端としては、付勢部材40に対して点接触又は線接触となる形状とすることが好適である。
【0023】
(付勢部材の構成)
この付勢部材40は、図1及び図2に示すように、フィルム状又は帯状の矩形板材からなる板バネ形状を有している。図示例による付勢部材40は、ベース部10の収容溝17内に収容可能な四角枠形状を有しており、ベース部10の4つの隅角部に対応する部位を所定の角度をもって折り曲げた屈曲部41を形成するとともに、両側自由端を外方に鉤状に折曲させた左右に対称な一対の折曲片42,42を形成している。
【0024】
この付勢部材40の折曲片42は、図1及び図2に示すように、ベース部10の上端開口端縁をスリット状に切り欠いた切欠部18に嵌め込み固定されており、付勢部材40の枠部分を押圧すると、自然状態から弾性的に撓み変形するようになっている。付勢部材40は、バネやバネ性を有する部材であることが好適であり、付勢部材40の素材としては、弾性力を発生させることができるものであればよく、各種の金属材料や樹脂材料などが利用できる。
【0025】
(回転支持体の構成)
一対の第1の回転支持体50と一対の第2の回転支持体60とは、同一の形状及び構造を有している。そのため、一対の第2の回転支持体60については、10の位の番号を変えた符号を付しており、この部材に関する詳細な説明は省略する。
【0026】
一対の第1の回転支持体50は、図1〜図3に示すように、ボール3の中心を通る二次元平面上のX軸と直交してベース部10の内壁対向面に配されている。一対の第2の回転支持体60は、ボール3の中心を通る二次元平面上のY軸と直交してベース部10の内壁対向面に配されている。
【0027】
この第1の回転支持体50と第2の回転支持体60とは、図1及び図2に示すように、平面からみて、X軸(0°)方向、Y軸(正負90°)方向、X軸方向及びY軸方向の双方に交差する斜め方向(正負45°など)の自由な方向へ回転可能にボール3を支持する。第1の回転支持体50の回転方向は、蓋部20の操作案内溝23のY方向と一致したY軸回りにあり、第2の回転支持体60の回転方向は、操作案内溝23のX方向と一致したX軸回りにある。
【0028】
この第1の回転支持体50は、図1及び図2に示すように、円柱状の第1ローラ51と、第1ローラ51の両側に一体形成された一対の第2ローラ52,52とを有している。その両側一対の第2ローラ52は、第1ローラ51の直径よりも大径の八角形状に形成されている。この第1ローラ51は、ボール3を回転させるための部材である。一方の第2ローラ52は、ボール3の押付力を隣り合う2つの回転支持体50,60に加えるための部材である。
【0029】
この第1ローラ51と付勢部材40の内面との間は、図1及び図2に示すように、所定の間隙をもって配されている。第1ローラ51としては、ボール3との接触が点接触となるローラ状又はボール状に形成することが好適である。第1ローラ51にゴム材などの摩擦部材を被覆することで、第1ローラ51がボール3との摩擦で回転する構造でも構わない。
【0030】
一方の第2ローラ52は、図1及び図2に示すように、円形、三角形、四角形、又は多角形等の各種の形状を有するローラ状又はボール状に形成される。この第2ローラ52と付勢部材40の内面とは接触した状態で配されている。図示例による第2ローラ52は、八角形の頂点が回転に間欠的な回転抵抗を与えることでクリック感付与部として設けられており、回転支持体50にクリック感を与えることで、ボール3の回転操作感が明確に得られるようになっている。
【0031】
(回転方向規制機構の構成)
ところで、例えばカーナビゲーションのメニュー選択画面等の画像が横方向(X軸方向)にしか並んでいない表示画面では、第1の回転支持体50がY軸回りの回転方向にしか回転できないように規制することが好適であり、縦方向(Y軸方向)にしか並んでいない表示画面では、第2の回転支持体60がX軸回りの回転方向にしか回転できないように規制することが好適である。
【0032】
この第1の実施の形態にあっては、一方向へ回転するボール3の球面上を回転支持体50,60の第1ローラ51,61が追従回転すると、ボール3の回転軸線に一致する軸回りを支持することで、ボール3を一方向に優先的に回転させる回転方向規制機構が形成されている。この回転方向規制機構は、図示例によるトラックボール装置1の主要な構造の一つであり、第1の回転支持体50、第2の回転支持体60、軸受支柱30、及び付勢部材40により主に構成される。
【0033】
この回転方向規制機構は、図2に示すように、ボール3のX軸回りの回転を優先し、X軸と直交するY軸回りの回転を規制する第1の回転方向規制機構と、ボール3のX軸回りの回転を規制し、Y軸回りの回転を優先する第2の回転方向規制機構とを備える。これにより、X軸回りとY軸回りとの二つの回転方向に対して、ボール3の回転方向規制を行うことができる。
【0034】
図2において、いま、ボール3を手動でX軸回りに回転させると、ボール3が回転支持体60の第1ローラ61を押し付けながら回転し、回転支持体60の一対の第2ローラ62が付勢部材40を矢印F1方向へ押し付ける。この付勢部材40は、軸受支柱30の突起部32に接触した屈曲部41を支点として、ボール3によるボール押付方向側ではベース部10の外方に向けて弾性的に撓み変形し、その撓み変形による力を付勢部材40の屈曲部41に伝える。
【0035】
同時に付勢部材40のボール押付方向両側では、付勢部材40の屈曲部41の角度を維持しようとする力がボール押付方向両側の一対の回転支持体50をベース10の内方(矢印F2方向)に向けて押し付ける。ボール押付方向側とは反対側に対向して配された付勢部材40は、バネの撓みに追従しない。ボール3は、ボール押付方向両側の一対の回転支持体50を支持部としてX軸回りの一回転方向に回転する。ボール3の回転が止まると、回転方向規制が解除される。
【0036】
一方、ボール3を手動でY軸回りに回転させると、上記操作と同様に、ボール3は、ボール押付方向両側の一対の回転支持体60を支持部としてY軸回りの一回転方向に回転する。そして、ボール3を手動でX軸方向及びY軸方向の双方に交差する斜め方向に回転させると、互いに隣り合う2つの回転支持体50,60を同時に回転させることができる。この場合は、ボール3の回転操作荷重がX軸回りの回転操作荷重、又はY軸周りの回転操作荷重よりも重くなるが、表示画面上におけるポインタを斜め方向に移動させたり、あるいは画像を斜め方向にスクロールさせたりすることが可能である。
【0037】
(第1の実施の形態の効果)
以上のように構成されたトラックボール装置1によると、上記効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0038】
(1)ボール3の自由方向への回転操作と、互いに直交する二方向のみに許容される回転方向規制操作とを極めて簡単な操作で行うことができる。
(2)付勢部材40の撓み変形による力をボール3の回転方向を規制させるための力として利用することで、確実にかつ円滑にボール3の回転方向を一方向に規制するとともに、操作性の向上を達成することができる。
(3)十字状の操作案内溝23に沿ってボール3を回転操作することで、ボール3を四方向に操作させることができるため、付勢部材40に対して回転支持体50,60の第2ローラ52,62を確実に押し付けることができる。
(4)上記実施の形態、変形例、及び図示例では、カーナビゲーションのメニュー選択画面や地図画面などの表示画面上におけるポインタの移動や画像のスクロール操作などを行うのに好適なトラックボール装置1を例示したが、このトラックボール装置1の適用対象としては、例えば自動車の運転席周辺に装備される各種の入力操作装置にも好適に用いるとともに、ノートパソコン等に装備されたトラックボール装置に効果的に用いることができる。
【0039】
[第2の実施の形態]
図5を参照すると、同図には回転方向規制機構の他の一例が示されている。上記第1の実施の形態では、ベース部10の収容溝17内に収容可能な四角枠形状の付勢部材40を備えた回転方向規制機構であったものを、この第2の実施の形態にあっては、ベース部10の収容溝17内の4つの隅角部内に対応して収容される4分割構成の付勢部材40,…,40を備えた回転方向規制機構である点で、上記第1の実施の形態とは異なっている。
【0040】
なお、同図において上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0041】
この第2の実施の形態に係る回転方向規制機構は、図5に示すように、一対の第1の回転支持体50と一対の第2の回転支持体60とが互いに交差する部位に対応して、所定の角度をもって折り曲げられた屈曲部41を有する4つの付勢部材40,…,40を備えている。この4つの付勢部材40は同一の形状及び構造を有している。
【0042】
この回転方向規制機構の一部を構成する軸受支柱30の突起部32には、図5に示すように、ベース部10の収容溝17内に収容された付勢部材40を保持する保持孔33が形成されている。この保持孔33内には、ベース部10の内壁面との間に所定の間隙をもって付勢部材40の屈曲部41が嵌め込まれて支持されている。保持孔33については、ボール3の押付力を隣り合う2つの回転支持体50,60に加える場合において付勢部材40の屈曲部41の角度を維持することができるような形状や構造であればよく、特に限定されるものではない。
【0043】
これらの付勢部材40の両側先端部のそれぞれは、図5に示すように、互いに隣り合う2つの回転支持体50,60の第2ローラ52,62に接触した状態で配されている。この2つの回転支持体50,60のうちの一方がボール3に追従して回転することで、互いに隣り合う2つの付勢部材40のそれぞれは、軸受支柱30の突起部32に接触した屈曲部41を支点として、隣り合う2つの付勢部材40が同時に連動する。その動きに伴って、互いに隣り合う2つの回転支持体50,60のうちの他方を移動させようとする力が作用する。この力によって、X軸回りの回転方向、又はY軸回りの回転方向に対して、ボール3の回転方向規制を行うことができる。
【0044】
この4つの付勢部材40の板厚や屈曲部41の弾性変形する部分の厚さ寸法を適宜に設定することで、各付勢部材40の弾力を変更することができる。そのため、各付勢部材40の弾力の違いを利用することで、各付勢部材40の動きを調整することができる。
【0045】
(第2の実施の形態の効果)
この第2の実施の形態であるトラックボール装置1の回転方向規制機構にあっても、上記効果に加えて、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0046】
[変形例]
以上より、本発明におけるトラックボール装置1の代表的な構成例を実施の形態、変形例、及び図示例を挙げて説明したが、上記実施の形態、変形例、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であり、次に示すような変形例も可能である。
【0047】
上記第2の実施の形態では、隣り合う2つの付勢部材40の両側先端部が、互いに離間した状態で回転支持体50,60の第2ローラ52,62に接触して配された一例を例示したが、これに限定されるものではない。本発明では、例えば隣り合う2つの付勢部材40の両側先端部同士を互いに重ね合わせた状態で、回転支持体50,60の第2ローラ52,62に接触して配された構成を採用することができる。隣り合う2つの付勢部材40の両側先端部が回転支持体50,60の第1ローラ51,61に接触して配された構成であってもよい。
【0048】
上記実施の形態、及び図示例では、付勢部材40の撓み変形による力をボール3の回転方向を規制させるための力として利用した回転方向規制機構を例示したが、これに限定されるものではない。本発明に係る回転方向規制機構の他の一例としては、例えば図5に示すような4つの付勢部材40の回転モーメントを、ボール回転方向を規制させるための力として利用した回転方向規制機構を採用することができる。付勢部材の屈曲部を板バネとして利用することも可能である。
【0049】
上記実施の形態、及び図示例では、ボール3を回転させる第1ローラ51,61と、ボール3の押付力を隣り合う2つの回転支持体50,60に加える第2ローラ52,62を例示したが、本発明はこれに限定されるものでない。本発明は、ボール3を回転させる機能と、ボール3の押付力を隣り合う2つの回転支持体50,60に加える機能とを単一のローラ又はボールにより行う構成であっても構わない。
【0050】
上記実施の形態、及び図示例では、X軸回りとY軸回りとの2つの回転方向に対して、ボール3の回転方向規制を行う回転方向規制機構を例示したが、これに限定されるものではない。本発明にあっては、特に頻度が高い回転方向に対応した方向に回転方向規制機構を採用することができることは勿論であり、使用対称物や使用目的などに応じて回転方向規制機構の配置個数、配置位置や配置形状などを適宜に選択すればよく、本発明の初期の目的を達成することができる。
【0051】
以上の説明からも明らかなように、上記実施の形態、変形例、及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0052】
1…トラックボール装置、2…ハウジング、3…ボール、4…小球、10…ベース部、11…凹部、12…脚部、13…ボール収容壁部、14…ボール収容部、15…凹陥部、16…通孔、17…収容溝、18…切欠部、20…蓋部、21…周囲壁部、22…操作部、23…操作案内溝、24…開口、30…軸受支柱、31…軸受部、32…突起部、33…保持孔、40…付勢部材、41…屈曲部、42…折曲片、50…第1の回転支持体、51,61…第1ローラ、52,62…第2ローラ、60…第2の回転支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由な方向に回転操作可能なボールと、
前記ボールの第1の回転軸線上の両側に配置され、前記ボールの回転を伝達可能な一対の第1の回転支持体と、
前記第1の回転軸線上とは異なる第2の回転軸線上の両側に配置され、前記ボールの回転を伝達可能な一対の第2の回転支持体と、
前記ボールを前記第1の回転軸線に一致する軸回り又は前記第2の回転軸線に一致する軸回りの一方向に回転操作させたとき、前記ボールの回転方向を前記一方向に規制する回転方向規制機構とを備えてなり、
前記回転方向規制機構は、隣り合う2つの前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体のうちの一方の部材に対して前記ボールが押し付ける力を、前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体のうちの他方の部材に与える付勢部材を備えてなることを特徴とするトラックボール装置。
【請求項2】
前記回転方向規制機構は、前記ボールに追従して回転する側の前記第1の回転支持体又は前記第2の回転支持体に対して前記ボールが押し付ける力を、前記ボールに追従して回転する側の前記第1の回転支持体又は前記第2の回転支持体とは隣り合う前記一対の第2の回転支持体、又は前記一対の第1の回転支持体に与えることを特徴とする請求項1記載のトラックボール装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記第1の回転支持体と前記第2の回転支持体とが交差する部位に対応して折り曲げられた屈曲部を有しており、前記屈曲部を支点として前記ボールの押付力を隣り合う2つの前記第1の回転支持体及び前記第2の回転支持体に加えることを特徴とする請求項1又は2記載のトラックボール装置。
【請求項4】
前記第1の回転支持体と前記第2の回転支持体とは、前記ボールの球面上に90°の位相差をもって配置されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61855(P2013−61855A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200602(P2011−200602)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】