トリグリセリド減少治療薬を同定するステアロイルCoAデサチュラーゼを使用する方法と組成物
【課題】トリグリセリドの血清水準、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、または粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他に関連するヒトの疾病、疾患または異常に基づくトリグリセリド減少治療薬を同定するステアロイルCoAデサチュラーゼを使用する方法と組成物を提供する。
【解決手段】ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(「hSCD1」)の役割に基づくスクリーニング検定の使用。更に、このような疾病の予防およびまたは処置に有用な通常飼育動物である。
【解決手段】ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(「hSCD1」)の役割に基づくスクリーニング検定の使用。更に、このような疾病の予防およびまたは処置に有用な通常飼育動物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2000年2月24日受理された合衆国暫定特許出願第60/184,526号、2000年7月31日受理された合衆国暫定特許出願第60/221,697号、および2000年12月15日受理された合衆国暫定特許出願第60/255,771号の優先権を主張し、その開示はここでその全体を引用例として組み込まれている。
【0002】
本発明は一般にステアロイルCoAデサチュラーゼおよびそれと各種のヒト疾病との連係の分野に関する。ステアロイルCoAデサチュラーゼとそれをコードする遺伝子はそのような疾病の処置のための治療薬の同定と開発のために有用である。
【0003】
[発明の背景]
アシルデサチュラーゼ酵素は肝臓での規定食源またはデノボ合成のいずれかより誘導される脂肪酸で二重結合の形成を触媒作用する。哺乳類はΔ9、Δ6、Δ5およびΔ4の位置で二重結合の追加を触媒作用する異なる鎖長特異性の4個のデサチュラーゼを合成する。ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCDs)は飽和脂肪酸のΔ9位置に二重結合を導入する。望ましい基質はパルミトイルCoA(16:0)とステアロイルCoA(18:0)で、それらはそれぞれパルミトレオイルCoA(16:1)とオレオイルCoA(18:1)に転換される。生成する一価脂肪酸はリン脂質、トリグリセリド、およびコレステロールエステルに組み込むための基質となる。
【0004】
数多くの哺乳類SCD遺伝子がクローン化されてきている。例えば2個の遺伝子がラットからクローン化され(SCD1、SCD2)または4個のSCD遺伝子がマウスから単離された(SCD1、2、3、および4)。単一SCD遺伝子、SCD1がヒトで特徴付けられた。
【0005】
SCDの基本的な生化学的役割が1970年代にラットとマウスで明らかにされた(R.ジェフコートおよびA.T.ジェームズ.1984年,エルスビエ・サイエンス,4巻:85−112ページ;R.J.デアントゥエノ.1993年,脂質,28巻(4号)285−290ページ)。一方、本発明以前ではそれがヒト疾病の進行に直接関係することはなかった。非ヒト動物での研究は、異なる種での生化学プロセスで十分に実験された差異の故で、ヒトでのSCDの役割に対する我々の理解をわかりにくくさせた。例えば齧歯目では、脂質とコレステロール代謝はとりわけコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)の不在によりあいまいである(B.フォジャー.他,1999年,生物化学ジャーナル,274巻(52号)36912ページ)。
【0006】
更にマウスとラットの多重SCD遺伝子の存在が疾病進行におけるこれらの遺伝子それぞれの特異的役割を決定するのに更なる複雑さを加える。組織発現プロファイル、基質の特異性、遺伝子調節および酵素の安定性は、SCD遺伝子がそれぞれの疾患で際立った役割を果すことを明らかにする際に重要である。従来の大抵のSCD研究はmRNA水準を測定することにより、またSCD酵素活性の間接測定法として一価不飽和脂肪酸の水準を測定することによりSCD遺伝子の機能を評価する。これら両方の場合、この分析は誤解を招きかねない。後者の方法では、それは特に紛らわしく、血漿脱飽和指数(特異鎖長の飽和脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比)へのSCD1の相対的な寄与を認識することは困難であった。その理由は多重SCD酵素が一価不飽和脂肪酸の産生に貢献するという事実にあった。本発明に先立ち、脱飽和指数に対する多重SCDアイソフォームの相対的寄与は未知であった。要約すると、従来の研究は脱飽和指数で測定されるようにSCDアイソフォームが全デサチュラーゼ活性で主要な役割を演じるようには分化しなかった。
【0007】
試験管内ニワトリ肝細胞細胞培養での最近の業績は正常に機能しないトリグリセロール分泌に対するデルタ−9デサチュラーゼ活性に関する(P.ルグランおよびD.エルミエ(1992年)インターナショナル・ジャーナル・オブ・オビーシティ,16巻,289−294ページ;P.ルグラン,J.マラール,M.A.ベルナルド−グリフイット,M.ドゥエール,P.ルマルシャル.,Comp.Biochem.Physiol.87B,789−792ページ;P.ルグラン,D.カテリーヌ,M−C.フィシュ,P.ルマルシャル(1997年)J.Nutr.127巻,249−256号)。この業績はニワトリ内で存在するデルタ−9デサチュラーゼのアイソフォーム間を区別せず、特定の生物学的作用、この場合は正常に機能しないトリグリセリド分泌を説明するのに特異的なSCD酵素を直接結びつけることに再び失敗した。
【0008】
更に、この試験管内作業は、ニワトリとヒトの生体内リポタンパク質代謝の間にかなりの差異が存在したためにヒトと十分に相関付けることできなかった。このような差異はニワトリで全く異なるリポタンパク質、例えば卵黄の前駆タンパク質の存在、および異なるプロセス、例えば排卵時の肝トリグリセリド合成の大量導入などを含む。コレステロール輸送とカイロミクロンでの規定食トリグリセリドの分泌のプロセスは十分に実証されている。これらの鳥類と哺乳類の間の主要な差は、トリグリセリド代謝の領域で鳥類から哺乳類への外挿がヒトにおける暫定的なペンディングとなっている確証を検討しなければならないことを意味する。
【0009】
発明の背景技術の二つの領域が本発明の重要な基礎を形成する。まず本発明はコレステロールと脂質代謝に関し、それはヒトで強力に研究された。コレステロールは高度に無極であるため、主としてリン脂質である両親媒性脂質のエンベロープで囲まれたコレステロールエステルおよびトリグリセリドなどの無極分子のコアから基本的に成るリポタンパク質の形態で血清を通じて輸送される。ヒトでは約66%のコレステロールが低密度リポタンパク質(LDL)粒子で輸送され、約20%は高密度リポタンパク質(HDL)粒子で、また、残りは超低密度リポタンパク質(VLDL)粒子で輸送された。ヒトと他の生体でのコレステロール代謝の基礎生化学に関する優れた引用例はコレステロールの生物学,P.イーグル編.CRCプレス,ボカレイトン,フロリダ,1998年で見出される。
【0010】
第2に、本発明はアセビア(無脂腺)マウスからの新しい発見を利用する(ゲーツ他,(1965年),サイエンス,148巻:1471−3ページ)。このマウスは自然発生の遺伝子変異体マウスで皮脂腺欠損で有名であり、その結果無毛で鱗状皮膚になる。アセビアマウスはSCD1遺伝子のエキソン3の初期終結部位の形成の結果SCD1の欠損を持つと最近報告された。この変異のホモ接合型動物、あるいはエキソン1−4を取り囲む、異なる欠失対立遺伝子は野生型SCD1 mRNA転写物の検出可能量を発現しない(1999年11月号,ネイチャー・ジェネティクス,23巻:268ページ以下参照,およびPCT特許出願WO 00/09754)。この自然発生欠失の全内容については未知であるため、もし他のSCD1隣接遺伝子、あるいはゲノムの他の部分がアセビア表現型に関係していたかどうかについても未知である。これらの疾病過程でSCD1の活性を特異的に研究するためには、特異的SCD1ノックアウトマウスが必要とされる。この変異体に関するこれまでの研究は、皮膚疾患でのこの変異の役割に焦点をあててきたが、トリグリセリドまたはVLDL代謝に対してはそうではなかった。
【0011】
本発明の目的は、ヒトでのSCD1生物活性に特異的に結合される疾病と疾患、および望ましい実施例においてトリグリセリド代謝の疾病と疾患を同定することである。更なる目的はこれらの疾病、疾患および関連する異常を処置するための薬剤を同定し、開発するスクリーニング検定法を開発することである。更に本発明の目的はこれらの疾病、疾患および関連する異常を処置するために使用される組成物を提供することである。
【0012】
[発明の簡単な説明]
本発明は広い範囲でのヒト疾病と疾患のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(「hSCD1」)の役割を初めて開示する。とりわけヒトでのSCD1生物活性はトリグリセリドおよびVLDLの血清水準に直接関係する。加えてSCD1生物活性は、更にHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、コレステロール逆輸送、また粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、およびまたは類似のものの血清水準に影響する。
【0013】
本発明の目的は、前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)の生物活性を調節し、トリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連するヒト疾患または異常を処置するのに有用な治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスまたはスクリーニング検定を提供することである。望ましくは、スクリーニング検定は血清のトリグリセリド水準を低下させヒトに重要な心臓保護の私益を提供するhSCD1の阻害薬を同定する。
【0014】
本発明の更なる目的は、前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)の生物活性を調節し、またHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関連するヒト疾患または異常を処置するのに有用である治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスまたはスクリーニング検定を提供することにある。
【0015】
一つの見地において、本発明はヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)遺伝子とプロモーター配列を含むベクターに関し、また組換え真核細胞、および細胞系、およびもっとも望ましくはヒト細胞、および細胞系、そのようなベクターおよびまたは前記ポリヌクレオチドを含むように形質移入された細胞、およびここで前記細胞がhSCD1を発現するヒト細胞および細胞系に関する。
【0016】
更に本発明の目的は、ここで開示されたようにヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(hSCD1)の活性およびまたは発現を調節できる薬剤を提供することであり、ここで前記調節能力はhSCD1生物活性または遺伝子コード化hSCD1を含む検定を使用して初めて決定された。このような薬剤を含む薬理組成物は特に考察される。
【0017】
本発明の更なる目的は、薬剤を提供することであり、ここで前記薬剤はhSCD1生物活性に関連する疾病または異常を処置し、予防しおよびまたは診断するのに有用な薬剤である。
【0018】
また更なる本発明の目的は、疾病または異常に悩む患者にそれらを予防または処置するプロセスを提供し、それは前記患者にここで開示された組成物の治療または予防有効量を投与することを含む。
【0019】
本発明の薬事ゲノム適用において、ヒト疾病プロセスまたは投薬に対する応答と関連する個体のhSCD1でのcSNPs(コーディング領域単一ヌクレオチド多形性)を同定する検定が提供される。
【0020】
他の見地において、本発明は更に疾病または異常に悩むと思われまたはそれらに悩むようになる危険のある一般にはヒトである患者でのその疾病または異常を診断するプロセスを提供し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞でhSCD1の活性水準を決定し、前記疾病または異常に悩むと思われずまたそれに悩むようになる危険のない患者からの等量の対応する組織の活性を前記活性と比較することを含む。
【0021】
他の見地において、本発明は更に疾病または異常に悩むと思われまたはそれらに悩むようになる危険のある一般にはヒトである患者を診断するプロセスを提供し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞のhSCD1遺伝子の変異を同定し、また前記疾病に悩むと思われずまたそれに悩むようになる危険のない患者からの対応する組織の遺伝子と前記遺伝子を比較することを含む。
【0022】
[定義]
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本発明の前後関係での「単離された」は、物質がもとの環境(例えばもしそれが自然発生であるならば自然環境)から移動されることを意味する。例えば生きた生体に存在する自然発生ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然系での共存物質のあるものまたはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離される。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であることができ、およびまたはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であることができ、しかもなおこのようなベクターまたは組成物が自然環境の部分ではないということで単離されている。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは望ましくは単離された形態で提供され、また望ましくは均質性にするため精製される。
【0023】
本発明に基づき開示された核酸およびポリペプチド発現産物、並びにこのような核酸およびまたはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは「富化された形態」にある。ここで使用されるように、「富化された」という用語は、物質の濃度が(例えば)重量で0.01%有利に、望ましくは重量で少なくとも約0.1%で、その自然濃度の少なくとも約2倍、5倍、10倍、100倍、または1000倍であることを意味する。重量で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化された調製物も考えられる。本発明を含む配列、構築物、ベクター、クローンおよび他の物質は有利に富化されまたは単離された形態にあることができる。
【0024】
本発明に基づき開示されたポリヌクレオチドおよび組換えまたは免疫性ポリペプチドも同じく「精製された」形態にある。「精製された」という用語は絶対的な純度を必要とはしない。むしろそれは相対的な定義を意図したものであり、これらの用語が関連技術に習熟した人により理解されるように、高度に精製された調製物または僅か部分的に精製された調製物を含む。例えば、cDNAライブラリーから単離された個別クローンは従来の方法で電気泳動均質性を得るため精製された。少なくとも1桁、望ましくは2桁または3桁、またより望ましくは4桁または5桁の大きさまでの出発物資または自然物質の精製が特に考慮される。更に望ましくは重量で0.001%、または少なくとも0.01%または0.1%、またはより望ましくは1%またはそれ以上の純度を持つ請求されたポリペプチドが特に考慮される。
【0025】
「コーディング領域」という用語は、遺伝子の発現産物をその自然ゲノム環境で自然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち遺伝子の自然発現産物を生体内でコードする領域を引用する。コーディング領域は正常、変異または変更遺伝子からのものであり得るし、またはDNA合成の従来の技術に習熟した人に公知の方法を使用して実験室で合成されたDNA配列、または遺伝子からのものでさえあることができる。
【0026】
本発明に従って、「ヌクレオチド」という用語は(DNAに対する)デオキシリボヌクレオチドまたは(RNAに対する)リボヌクレオチドのヘテロポリマーを引用する。一般に本発明で提供されるタンパク質をコードするDNAセグメントはcDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または微生物あるいはウイルスオペロンから誘導される調節要素(応答配列)を含む組換え転写ユニットで発現できる合成遺伝子を提供するために一連のオリゴヌクレオチドから組立てられる。
【0027】
「発現産物」という用語は、遺伝子の自然翻訳産物であり、また遺伝子コード縮重から生じる等価物をコードしかくして同じアミノ酸をコードするいずれかの核酸配列であるポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0028】
コーディング領域を引用した場合の「断片」という用語は、その発現産物が完全コーディング領域の発現産物と同じ生物機能または活性を基本的に保持する完全コーディング領域以下の領域を含むDNAの部分を意味する。
【0029】
「プライマー」という用語は、DNAの1鎖と対にされ、DNAポリメラーゼがデオキシリボヌクレオチド鎖の合成を開始する遊離3′OH末端を提供する短い核酸配列を意味する。
【0030】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するRNAポリメラーゼの結合に含まれるDNAの領域を意味し、転写開始部位のすべてのヌクレオチド上流(5′)を含む。
【0031】
ここで使用されるように、DNA配列の引用は一本鎖および二本鎖DNA両方を含む。かくして前後関係が他を示さない限りにおいて、特異的配列はこのような配列の一本鎖DNA、このような配列の複式およびその補体(二本鎖DNA)、ならびにこのような配列の補体を引用する。
【0032】
本発明は更にこのようなポリペプチドの推定アミノ酸配列、同じく断片、類似体およびその誘導体を持つポリペプチドに関する。
【0033】
ポリペプチドを引用した際の「断片」、「誘導体」および「類似体」という用語は、このようなポリペプチドと同じ生物機能または活性を基本的に保持するポリペプチドを意味する。従って、類似体は活性成熟ポリペプチドを産生するプロタンパク質部分の切断により活性化できるプロタンパク質を含む。このような断片、誘導体および類似体は生のポリペプチドの活性が保持されるようにSCD1ポリペプチドへの十分な類似性を持たねばならない。
【0034】
本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、自然ポリペプチドまたは合成ポリペプチドであってもよく、また望ましくは組換えポリペプチドである。
【0035】
SCD1ポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、(i)1個またはそれ以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(望ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、またそのような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードされたかコードされないもの、または(ii)1個またはそれ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熱ポリペプチドがも一つの化合物、例えばポリペプチドの半減期を増加する化合物など(例えばポリエチレングリコール)と融合されるもの、または(iv)追加のアミノ酸が成熱ポリペプチド、例えばリーダー配列あるいは分泌配列、もしくは成熱ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製に採用される配列などに融合されるものである。このような断片、誘導体または類似体はここでの教示から従来の技術に習熟した人の範囲内にあるものと見做される。
【0036】
従来の技術で公知のように、2個のポリペプチドの間の「類似性」は1個のポリペプチドのアミノ酸配列とその保存アミノ酸置換基を第2のポリペプチドの配列と比較することにより設定される。
【0037】
前記に基づいて、本発明は更に本発明の単離ポリヌクレオチドによりコードされる単離ステアロイルCoAデサチュラーゼに関する。
【0038】
本発明のポリペプチドの断片または部分はペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを産生すために採用される。従って断片は、全長ポリペプチドを産生するための中間体として採用される。本発明のポリヌクレオチドの断片または部分は本発明の全長ポリヌクレオチドを合成するために使用される。
【0039】
ここで使用されるように、「部分」、「セグメント」、および「断片」という用語は、ポリペプチドとの関連で使用される時には、その配列がより大きな配列のサブセットを形成するアミノ酸残基などの連続した残基の配列を引用する。例えば、もしポリペプチドが例えばトリプシンまたはキモトリプシンなどのいずれかの一般的なエンドペプチターゼで処置を受けたなら、このような処置から生じるオリゴペプチドは出発ポリペプチドの部分、セグメントまたは断片を表すであろう。ポリヌクレオチドに関連して使用された場合には、このような用語は前記ポリヌクレオチドのいずれかの一般のエンドスクレアーゼでの処置により産生された産物を引用する。
【0040】
[発明の詳細な概要]
本発明はヒト疾病におけるヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1の活性に関する。これに基づいて、ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1活性または発現水準を特異的に調節する化合物は、トリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関するヒト疾患または異常の処置に有用であり、ヒトに投与された時には重要な心臓保護の利益を提供する。hSDC1活性または発現を調節する化合物は、更にHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、およびコレステロール逆転送の血清水準を調節するのに有用である。最終にhSCD1活性または発現は粘膜、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の分泌の産生を調節するのに有用である。
【0041】
SCD1遺伝子とタンパク質
ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ−1(SCD1、hSCDおよびhSCD1とも呼ばれるもの)は1997年6月6日付けでジェンバンク・アクセッションY13647(同じくNM005063)としてジェンバンクに初めて公開された全cDNA配列で同定された。部分的プロモーター配列を含む、更なるSCD1の詳細は、下記のアクセッション番号でジェンバンクで見出すことができる:gb|AF097514.1|AF095514; dbj|AB032261.1|AB032261; gb|AF116616.1|AF11616; ref|XM_005719.1|; gb|AF113690.1|AF113690; およびgb|S70284.1|S70284。
【0042】
一つの見地において、本発明はとりわけ配列が同じで前記のいずれかの補体のいずれかを含む場合にヒトステアロイルCoAレダクターゼ−1の配列に少なくとも90%の同一性、望ましくはは95%の同一性、もっとも望ましくはは少なくとも98%の同一性を持つ非ゲノムポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチドの使用に関する。
【0043】
hSCD1の完全プロモーター配列は配列識別番号1であり、図14はマウスとヒトSCD1プロモーター領域の間に保存された機能エレメントを説明する。
【0044】
一つの見地において、本発明はとりわけ配列が同じである場合にヒトステアロイルCoAレダクターゼ−1に少なくとも90%の同一性、望ましくは95%の同一性、もっとも望ましくは少なくとも98%の同一性を持つ単離されたポリペプチドの使用に関する。ポリペプチド配列は、これまでに開示され、下記のスイスタンパク質データベース・アクセッションシリーズで見つけることができる:アクセッション番号O00767;PID g3023241;バージョンO00767 GI:3023241;DBSOURCE:スイスプロット:遺伝子座ACOD_ヒューマン,アクセッションO00767.選択肢としてポリペプチド配列はここで用意されたcDNA配列引用例から決定することができる。
【0045】
ヒト疾病過程におけるSCD1
ここで開示されたように、数多くのヒト疾病および疾患は異常なSCD1生物活性の結果であり、治療薬を用いるSCD1生物活性の調節により改善することができる。
【0046】
本開示のもっとも著しい教示は、ヒトにおける血清トリグリセリドとVLDL水準を調節する際のSCD1の役割に関する。2件の主要な発見がここで立証される。まず以下の実施例1はSCD1ノックアウトマウスのリポタンパク質プロファイルが血清トリグリセリドとVLDL水準での65%の減少を実証したことを示している。これらはここに更に含まれるアセビアマウスのリポタンパク質プロファイルと一致する。アセビアマウスとSCD1ノックアウトマウス両方のリポタンパク質プロファイルは、これまで知られていなかったが、遺伝子操作変異の標的化された特異的性格の故でSCD1活性と血清トリグリセリド水準の相関を確実に引き出すことができる。他のSCDアイソフォームがトリグリセリド水準で役割を果たす一方、このデータはSCD1が特異的にこのプロセスで主要な役割を果たすことを示している。
【0047】
マウスとヒトの間でリポタンパク質代謝に著しい差があり、前記のデータがトリグリセリド水準の調節でSCD1への主要で特異的な役割を確信させる一方、これはヒトでの確証実験をまだ必要とした。従って第2の主要な発見は以下の実施例2で提示され、それはヒトでのSCD活性と血清トリグリセリド水準との間に著しい相関があることを実証する。かくしてヒトでのSCD1生物活性が血清トリグリセリドの水準に直接関係することが発見された。
【0048】
本発明に従って、アセビアマウス表現型(ゲーツ,他.(1965年)サイエンス,148巻:1471−3ページで最初に記載されたもの)は、トリグリセリドとVLDL水準での著しい減少を含む血清リポタンパク質プロファイルでの主要な著しい変更を示す。加えてこれらの動物ではコレステロールエステルの肝臓容量での大きな減少が見られた。これに従って、SCD1活性の有効な阻害が一価不飽和脂肪酸利用可能性の減少により、トリグリセリド水準の減少に導くことになるであろう。一価不飽和脂肪酸は、脂肪酸とリン酸グリセロール(すなわちグリセロールとリン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)からのトリグリセリド(TG)合成の原因となる酵素への望ましい基質である。
【0049】
更にここでの開示に従って、コレステロールのエステル化の増加は肝臓での遊離コレステロールの有毒である累積を予防し、またコレステロールエステルとトリグリセリドの利用可能性の増加はVLDLの形態での分泌を容易にする。マクロファージでのコレステロールエステル化の増加は更に泡沫細胞の形成を高め、これによりアテローム硬化外傷の発達に貢献する。かくしてSCD活性の阻害は血流でのVLDL粒子の水準を減少しアテローム硬化を阻害する付加的効果を持つことになる。
【0050】
更に本発明に従って、SCD1の阻害はまた末梢組織でのHDLの形成増加のために有利である。健康な個体においては、細胞コレステロールは遊離コレステロールが低水準のエステル化形態であることが多い。アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)は一価不飽和脂肪アシルCoAを望ましい基質として使用するエステル化コレステロールの原因となる酵素である。SCDは一価不飽和産物を生成し、それは次いでACATによるコレステロールエステル化のために利用可能となる。細胞からHDL経由での遊離コレステロールの流出増加は治療的に有益であると考えられるが、それは高められた「コレステロール逆輸送」(RCT)を示すからである。
【0051】
SCD1の阻害は血清HDL水準を必ずしも上昇させることなくコレステロール逆輸送を増加するのに有用である。血清HDL水準はRCTのプロセスの代理マーカーであり、それは実際に末梢組織から肝臓へのコレステロールの全体としての流出により優先的に測定される。本発明はRCTを増加する有効な治療薬としてSCD1生物活性のモジュレーターを同定する。RCTは例えばHDL粒子に組み込まれた放射線標識コレステロールエテルを血液に直接注入し、クリアランス率(それが生体の肝臓に取上げられる率)を測定することにより直接測定することができる。
【0052】
本発明に従って、肝臓および他の組織でのSCD1活性の調節が肝臓受容体でSR−R1の増加を生じ、この受容体はHDLを循環から除去し、その結果RCTを増加して血液内のHDL水準の明らかな影響を少なくなる。SCD1生物活性とSR−B1 mRNA発現の間の連鎖はこれまでの所同定されていない。これまでの作業はSR−B1過剰発現マウスが心臓保護をされ、アテローム硬化発生と心臓血管病を減少させたことを立証した。これらの理解は更に、SCD1生物活性の阻害薬などある種の治療薬がHDL水準での何らかの明らかな変化なしでRCTを増加させる。ということを初めて示唆している。これは末梢組織でのHDL形成および肝臓によるHDLの除去の両方で均衡のとれた増加を得ることで達成される。
【0053】
SCD1マウスの+/+対−/−(下記の実施例に記載された菌株)の肝臓でのSR−B1 mRNA発現を比較した実験が行われた。食事療法での+/+動物(を標準としたもの)に対比して発現された場合に、その結果はABCA1とSR−B1 mRNA水準での変化を以下の通り示している。
【0054】
遺伝子型 規 定 食 ABC1 SR−B1
+/+ 普 通 食 1 1
−/− 普 通 食 0.7 11
+/+ 高コレステロール食 1.1 27
−/− 高コレステロール食 0.4 27
【0055】
ABC1での変化は、それらが普通食のSR−B1で示されている間は有意ではない。SR−B1発現での増加は肝臓へのコレステロールの流入、またはRCTの増加を示し、−/−SCD1マウスの血漿でHDL−Cの上昇についての観察が何故見られないかを説明するであろう。RCTの増加は更に高コレステロール療法の−/−動物が+/+動物の約10倍の大きさ胆嚢を有しており、それは胆汁で満たされている。これらの観察は肝臓によるコレステロール除去の増加、従ってRCTの増加と一致している。更に、+/+および−/−マウスでのSR−B1の明らかに同一の増加は、これら動物での表現型または生物的過程を反映するものではない。
【0056】
SCD発現の阻害はトリグリセリドおよびコレステロールエステルと同様に膜脂質の脂肪酸組成物に影響する。リン脂質の脂肪酸組成物は結局膜流動性を決定し、一方トリグリセリドとコレステロールエステルの組成物に与える影響はリポタンパク質代謝と脂肪変性に影響を与え得る。
【0057】
本発明は更にHDL、LDL、および全コレステロールの血清水準に関連する他のヒト疾患または異常へのSCD1の関係、同じく粘膜、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他からの分泌の産生に関連する他のヒト疾患または異常でのSCD1の役割に関する。本発明はこれらの疾患を処置するのに有用であるSCD1のモジュレーターを包含する。
【0058】
ヒト被験者を用いない従来の作業は、これらの生体での異常SCD生物活性が(SCDのどのアイソフォームに責任があるかを特定することなく)各種の皮膚疾患、同じく癌および多重硬化症、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、神経症、皮膚疾患、眼炎、免疫患者、および癌などの異なる疾患を含んでいることを示している。本発明のプロセスを使用するために発見されたモジュレーターは従って同じようにヒト被験者でのこれらの疾病の処置に使用されるであろう。
【0059】
実施例4ではSCD1の転写調節タンパク質が同定される。これらのタンパク質は、細胞でSCD1発現を増加または減少させ、これにより積極的または消極的に細胞のSCD1生物活性に影響を与える化合物を標的とする。PPARガンマおよびSREBPがその例である。このような転写調節因子を経由して作用するものとして公知の化合物は、現在ヒトで同定されたSCD1関連疾病および疾患を処置するもの関連するとして同定されている。
【0060】
スクリーニング検定
本発明はトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送、粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関する疾病または異常を処置するのに使用される治療薬を同定するのに使用されるhSCD1遺伝子およびまたはタンパク質を採用するスクリーニング検定を提供する。
【0061】
「SCD1生物活性」
ここで使用され、とりわけスクリーニング検定に関する「SCD1生物活性」は広く解釈され、またSCD1遺伝子およびタンパク質の直接および間接的に測定可能で同定できるすべての生物活性を考慮する。精製SCD1タンパク質に関して、SCD1生物活性は必ずしもそれに限定されないが、タンパク質のすべての生物過程、相互作用、結合行動、結合活性関係、pKa、pD、酵素動態、安定性、および機能評価を含む。細胞分画、再構築細胞分画または全細胞でのSCD1生物活性に関して、これらの活性は必ずしもそれに限定されないが、SCDがシス二重結合をその基質パルミトイルCoA(16:0)およびステアロイルCoA(18:0)に導入し、これがそれぞれパルミトオレオイルCoA(16:1)とオレオイルCoA(18:1)にそれぞれ転換される率、およびSCD1活性のすべてのこの主旨での測定可能な結果、例えばトリグリセリド、コレステロール、または他の脂質合成、膜組成物と行動、細胞成長、発展または行動および他の直接間接の作用を含む。SCD1遺伝子および転写に関して、SCD1生物活性はRNAを生成するゲノムDNAの転写の率、スケールまたは範囲、そのような転写に対する調節タンパク質の作用、そのような転写に対するそのような調節タンパク質のモジュレーターの作用、プラスmRNA転写物の安定性と行動、転写後の処理、mRNA量と収量、およびmRNAのポリペプチド配列への転写についてのすべての測定を含む。生体内でのSCD1生物活性に関して、これは必ずしもそれに限定されないが、これらの生体での異常なSCD1生物活性により起こる疾病または疾患過程でのそれらの存在または欠損により同定される生物活性を含む。大まかに言うと、SCD1生物活性は従来の技術で公知であるタンパク質と遺伝子の生物学的性質を分析するすべてのこれらおよび他の手段により決定することができる。
【0062】
本発明で考慮されるスクリーニング検定は更にヒトからのSCD、またはヒト疾病の治療薬を同定するのに成功する限りにおいて、hSCD1として類似の生物活性を示す他の生体からのSCDのアイソフォームを採用する。脊椎動物からのデルタ−9デサチュラーゼの機能的等価性は従来の技術に習熟した人により認識されてきた。従って本発明の特異的実施例は、ヒトに有用な治療薬を同定するためにも一つの脊椎動物種からの1個またはそれ以上の機能的に等価のデルタ−9デサチュラーゼ酵素を採用する。機能的等価のデサチュラーゼは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ(デルタ−9デサチュラーゼ)としてユニジーン・クラスターHs.119597 SCDで同定された遺伝子に加え、前に同定されたすべてのマウス、ラット、ウシ、ブタまたはニワトリを含む。ローカスリンク:6319;OMIM:604031またはホモロジーン:Hs.119597も参照されたい。他の公知のデルタ−9デサチュラーゼはブタ:O02858(スイス−プロット)およびウシ:AF188710(NCBI、(6651449;ジェンバンク))を含む。
【0063】
選択されたモデル生体タンパク質の類似性
(整列アミノ酸(aa)領域の生体、タンパク質引用およびパーセント同一性ならびに長さ)
H.sapiens: SP:O00767- 100%/358aa
M.musculus: PIR:A32115- 83%/357aa
R.norvegicus: SP:P07308- 84%/357aa
D.melanogaster: PID:g1621653- 57%/301aa
C.elegans: PID:g3881877- 52%/284aa
S.cerevisiae: PID:e243949- 36%/291aa
B.Taurus O02858 85%/359aa
S.Scrofa 6651449 86%/334aa
【0064】
SCDスクリーニング検定の設計と開発
本開示は細胞ベイスト、細胞抽出(すなわちミクロソーム検定)、無細胞(すなわち転写)検定、および事実上精製されたタンパク質活性の検定などであるスクリーニング検定の開発を促進する。このような検定は典型的には放射能または蛍光ベイスト(すなわち蛍光偏光または蛍光共鳴エネルギー移転すなわちFRET)のものであり、またはそれらは細胞行動(生存、成長、活性、形状、膜流動性、温度感受性等)を測定するものである。選択肢として、スクリーニングはノックアウトまたはノックインマウスなどの遺伝子修飾生体を含む多細胞生体、または自然発生遺伝子変異体を採用する。スクリーニング検定はマニュアルまたは低処理量検定であり、またはそれは機械的/ロボット工学的に高められた高処理量選別である。
【0065】
前記のプロセスは、ここに記載された疾病、望ましくは増加または減少したステアロイルCoAデサチュラーゼ(本発明のhSCD)の活性または発現がそのような疾病を仲介するのに主要な役割を果たす疾病を処置するために潜在的な治療薬および診断薬の効能を決定するための高処理量スクリーニングプロセスを含むスクリーニングの基礎を供給する。
【0066】
このように、本発明はトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロールまたは粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関する疾患、または異常の処置にヒトで有用である治療薬を試験化合物のライブラリーなどから同定する方法に関し、それは
a)SCD1生物活性を持つスクリーニング検定を提供し、
b)前記スクリーニング検定を試験化合物と接触させ、また
c)続いて前記生物活性を測定する
ことを含み、ここで前記生物活性を調節する試験化合物は前記治療薬またはその類似体である方法に関する。
【0067】
一つの見地において、本発明はトリグリセリドまたは超低密度リポタンパク質(VLDL)の血清水準に関する疾患または異常の処置にヒトで有用である治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスに関し、それは
a)ステアロイル補酵素Aデサチュラーゼタイプ1(SCD1)生物活性をその成分として持つスクリーニング検定を提供し、
b)前記SCD1活性を試験化合物と接触させ、
c)前記b)での活性を調節するために発見された化合物をヒトに投与し、また
d)前記投与に続き前記ヒトでのトリグリセリドまたはVLDLの血清水準での変化を検出する
ことを含み、これによりトリグリセリドまたは超低密度リポタンパク質(VLDL)の血清水準に関する疾患または異常の処置に有用である薬剤を同定するプロセスに関する。
【0068】
一つの実施例において、前記薬剤はSCD1生物活性の拮抗薬または阻害薬である。そのも一つの特異的な実施例において、前記薬剤はSCD1生物活性の作用薬である。
【0069】
も一つの実施例において、前記モジュレーターが阻害薬である場合は、前記阻害薬はデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼのヒトでの生物活性を実質的に阻害しない。
【0070】
本発明の一つの実施例において、検定プロセスは更にデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼのヒトでの生物活性を実質的に阻害しない化合物を更に選択する前記治療薬を検定するステップを更に含む。
【0071】
特異的実施例において、本発明は更に一つのプロセスを包含し、ここで前記SCD1生物活性が
a)SCD1ポリペプチド結合親和性
b)ミクロソームでのSCD1デサチュラーゼ活性
c)全細胞検定でのSCD1デサチュラーゼ活性
d)SCD1遺伝子発現水準の定量化、および
e)SCD1タンパク質水準の定量化
の中から選択された検定される。
【0072】
このような検定の特異的な実施例は、ここで開示されるように組換え細胞を採用する。
【0073】
本発明は更に一つのプロセスに関し、ここで同定された化合物は更にデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性をヒトで実質的に阻害しない化合物の中から選択される。
【0074】
他の特異的実施例において、本発明はトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関する疾患または異常の処置に有用な化合物を同定する際に使用される。ここで開示されたSCD1核酸およびまたはここで開示されたSCD1ポリペプチドを採用することを考慮する。
【0075】
ここで開示された検定は直接的または間接的に、SCD1生物活性の測定を基本的に必要とする。従来の技術に習熟した人は十分に公知のモデルに基づきこのような検定を展開することができ、また多くの潜在的検定が存在する。SCD1の全細胞活性を直接測定するために、SCD活性を定量的に測定するために使用され得る方法は、例えば時間をかけてSCD反応産物の薄属クロマトグラフを測定することを含む。SCD活性を測定するのに適したこの方法および他の方法は公知である(RJヘンダーソン ヘンダーソン他1992年。脂質分析:実用的アプローチ。S.ハミルトン編.ニューヨーク・アンド・東京、オクスフォード・ユニバーシティ・プレス,65−111ページ)。ガスクロマトグラフィーも飽和脂肪酸から一価不飽和脂肪酸を識別するのに有用であり、例えばオレイン酸エステル(18:1)とステアリン酸エステル(18:0)はこの方法を用いて識別することができる。この方法を記述したものが以下の実施例に存在する。これらの手法は試験化合物がSCD1の生物活性に、またはパルミトオレオイルCoA(16:1)あるいはオレオイルCoA(18:1)それぞれ産生するためにSCDがそのパルミチン酸基質(16:0)あるいはステアリン酸基質(18:0)にシス二重結合を導入する比率に影響を与えたかどうかを決定するために利用することができる。
【0076】
望ましい実施例において、本発明は測定可能SCD1生物活性を持つミクロソーム検定を採用する。適切な検定は下村他(I.下村,H.島野,B.S.コーン,Y.バシュマコフ,J.D.ホートン(1988年))により記載されたように、基本的にラット肝臓ミクロソーム検定を修飾しスケールアップして取り上げられる。組織は緩衝液A(0.1Mのカリウム緩衝液、pH7.4)の10量で均質化処理される。ミクロソーム膜分画(100,000×gペレット)が連続遠心分離で単離される。反応は37℃5分で、100μgのタンパク質ホモジェネートと60μMの〔1−14C〕ステアロイルCoA(60,000dpm)、2mMのNADH、0.1Mのトリス/塩酸緩衝液(pH7.2)で行われた。反応の後、脂肪酸は抽出され、次いで10%酢酸塩化物/メタノールでメチル化される。一価不飽和脂肪酸メチルエステルがヘキサン/ジエチルエーテル(9:1)を現象液として使用する10%AgNO3含浸TLCにより分離される。平板は95%エタノール内で0.2%2′,7′−ジクロロフルオレセインでスプレーされ、脂質は紫外線光の下で同定される。分画は平板からこすり取られ、放射能は液体シンチレーションカウンターを用いて測定される。
【0077】
このようなSCD1生物活性検定の特異的実施例は、SCD反応が一価不飽和脂肪アシルCoA産物に加えて水を産生するという事実を活用する。もし3Hが脂肪アシルCoA基質のC−9とC−10の位置に導入されるなら、この反応からのいくつかの放射性陽子は水の中で終わりに達するであろう。かくして活性の測定は放射性水の測定を伴うであろう。標識された水をステアリン酸エステルから分離するために、研究者は活性炭、疎水性ビートなどの基質、または単なる流行遅れの溶媒を酸性pHで使用する。
【0078】
望ましい実施例において、スクリーニング検定はSCD1生物活性を間接的に測定する。標準高処理量スクリーニング検定はリガンド受容体検定に集中する。これらは蛍光ベイストまたはルミネセンスベイストあるいは放射線標識化検出である。酵素免疫測定法はSCD1タンパク質と相互作用する化合物を同定するために各種のフォーマットで作動することができる。これらの検定は公知のものである敏速蛍光および時間分離蛍光免疫測定法を採用する。P32標識ATPはプロティンキナーゼ検定に典型的に使用される。リン酸化産物は各種の方法で計数のために分離される。シンチレーション近接検定技術は放射線標識を高めた方法である。これらすべての型の検定は精製または半精製SCD1タンパク質と相互作用する化合物の検定に特に適している。
【0079】
望ましい実施例において、検定はSCD1の基質である(9および10の炭素原子に3Hを持つ)3HステアロイルCoAを使用する。SCD1による脱飽和はオレオイルCoAと3H水分子を産生する。反応は室温で行われ、酸で含浸され、次いで活性炭が放射線水産物から未反応基質を分離するために使用される。活性炭は溶融され上澄みの放射能の量は液体シンチレーション計数で測定される。この検定は野生型とSCD1ノックアウト組織での活性を比較した時に見られる差で判断されるように、SCD1依存性脱飽和に特異的である。更にこの方法はそれが無細胞で室温で行われ、比較的短い(これまでの2日の期間に対して1時間の反応速度である)ために、高処理量にたやすく反応される。
【0080】
本開示が本発明の有効な作業実施例を設定する一方、従来の技術を習熟した人は各種の方法で本検定を最適化することができ、そのすべては本発明により包含される。例えば活性炭はステアロイルCoA複合体の未使用部分を除去する際に非常に効率的(>98%)であるが汚くなりある条件下ではピペットで移すのが難しいという不利益がある。もしステアロイルCoA複合体が酸性化され適度の慣性力で回転される時に十分凝集するならば、炭の使用は必要でなくなる。これは脱飽和反応に続き活性炭ありまたはなしでの信号雑音比を測定することにより測定することができる。また溶降ステアロイルCoAを3H水産物から有効に分離する他の試薬もある。
【0081】
図20(パネルA)で示されるように、ステアロイルCoAの量はSCD1依存性脱飽和活性で監視される3H−DPM信号の動態と大きさを制限する。しかしすべてのステアロイルCoAがSCD1で消費されたのではなかった。>90%がSCD1に利用されずに残ったが、それはミクロソーム(例えばアシルトランスフェラーゼ反応物)に存在する他の酵素がそれを基質として利用しまたSCD1と競合するか、およびまたはステアロイルCoAが実験の条件下で不安定であるためである。これらの可能性は標識のリン脂質への取り込みを監視することにより、またはステアリン酸エステルとCoAからステアロイルCoAを再生する緩衝液混合物(Mg++,ATPおよびCoA)を含むことにより試験される。
【0082】
図20(パネルB)で示されるように、検定は高処理量スクリーニングに適した小さな量で行うことができる。望ましい実施例は96ウエル平板に十分な微小遠心を採用する。
【0083】
以下の検定は更に潜在的治療薬の存在下でのSCD1生物活性を測定するのに適している。これらの検定は更に潜在的治療薬のライブラリーからSCD1特異的モジュレーター、阻害薬または拮抗薬を選択するための2次スクリーンとして価値がある。
【0084】
細胞ベース脱飽和検定も使用することができる。細胞内でのステアリン酸エステルからオレイン酸エステルへの転換を追跡(3T3L1脂肪細胞は高SCD1発現を持ちBSAに複合された時には容易にステアリン酸エステルを取上げる)することにより、我々は化合物が細胞浸透であるか、細胞に致死性であるか、およびまたは細胞でのSCD1活性を阻害する能力があるかどうかなどの追加の性質または特性のための1次スクリーンで化合物が阻害性であることを発見できる。この細胞ベース検定はデルタ−9デサチュラーゼ、望ましくはhSCD1(ヒトSCD1)を含む組換え細胞系を採用する。組換え遺伝子は選択的に誘導プロモーターの制御の下にあり、また細胞系は望ましくはSCD1タンパク質を過発現する。
【0085】
他のSCDアイソフォームを追跡する他の検定も開発することができた。例えばラットとマウスSCD2は脳で発現される。望ましい実施例において、ミクロソーム調製物が肝臓からのSCD1でこれまでに行われたように脳から作られる。被験者はSCD1に特異的な化合物を発見されるであろう。このスクリーンはSCD1対SCD2の化合物の阻害効果を比較するであろう。
【0086】
類似してはいないけれども、SCD1検定で「的中した」化合物は、SCD1依存性脱飽和に利用できるものを犠牲にしてステアロイルCoAを競合的に利用するミクロソーム調製物に存在する酵素の刺激から生じる。これはSCD1阻害であると誤って解釈されることがある。この問題を検討する一つの可能性は不飽和脂質(ステアリン酸エステル)のリン脂質への取り込みとなるであろう。ステアリン酸エステルの脂質への取り込みの刺激に対する化合物の作用を決定することにより、研究者はこの可能性を評価することができる。
【0087】
細胞ベース検定が望ましいのは、それがSCD1遺伝子をその自然のままの形態に残しているからである。検定のこれらの型でSCD1分析のとりわけ有望なものは蛍光偏光検定である。偏光されたままの光の範囲は、標識が励起と放出の間の時間間隔で回転する度合に依存する。測定は分子の回転率に対し感受性が高いために、SCD1活性−すなわち細胞のデルタ−9脱飽和活性により誘導される膜流動性特性における変化の測定にそれを利用することができる。SCD1の別の検定はFRET検定を含む。FRET検定は蛍光分子供与体および受容体または消光体の間で起こる蛍光共鳴エネルギー移転を測定する。このような検定はSCD1生物活性により誘導される膜流動性または温度感受性特性での変化を測定するのに適している。
【0088】
本発明のスクリーニング検定は高処理ロボット利用システムを用いて行われる。将来には、望ましい検定は、とりわけキャリパー,インコーポレイテッド,アクラーラ・バイオサイエンシス,セロミクス・インコーポレイテッド,オーローラ・バイオサイエンシス・インコーポレイテッド他により発展せしめられたチップ装置を含むことになるであろう。
【0089】
本発明の他の実施例において、SCD1活性は更にコレステロールを細胞外受容体分子に移動させまたABCA1機能に依存性である細胞の能力を測定するコレステロール流出検定を通して測定することができる。標準コレステロール流出検定はマーシル他.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19巻:159−169ページ,1999年に設定され、すべての目的のために引用例としてここで組込まれている。
【0090】
望ましい検定は薬剤スクリーニングに使用される形態に容易に適応され、それは複数ウエル(例えば96ウエル、384ウエルまたは1536ウエルもしくはそれ以上の)形態より成る。薬剤スクリーニングにそれを最適化する検定の修飾は処理を一定率で下げまた簡素化し、標識法を修飾し、保温時間を変更し、またSCD1生物活性等を計算する方法を変えるなどを含む。これらすべての場合において、SCD1活性は実験上の修飾は行われるにせよ概念的には同じままである。
【0091】
も一つの望ましい細胞ベース検定はSCD1阻害薬の単離のための細胞生死判別検定である。SCDの過発現は細胞の生存可能性を減少させる。この表現型は阻害性化合物を同定するために役立てることができる。この細胞毒性は血漿膜の脂肪酸組成物の変更に起因するものであろう。望ましい実施例において、ヒトSCD1 cDNAはテートオン・テートオフ誘導遺伝子発現システム(クロンテック)などのような誘導プロモーターの制御下にある。このシステムは二重安定細胞系の作成を含む。最初の形質移入は調節プラスミドを導入し、第2のものは誘導SCD発現構築物を導入する。両構築物の宿主ゲノムへの染色体組み込みは適切な抗生物質の存在下で選択的圧力の下に形質移入細胞を置くことで促進されるであろう。一度二重安定細胞系が確立されると、SCD1発現はテトラサイクリンまたはテトラサイクリン誘導体(例えばドキシサイクリン)を用いて誘導されるであろう。一度SCD1発現が誘導されると、細胞は潜在的阻害薬のHTSのための化学化合物のライブラリーに露出されるであろう。ある一定期間の後、細胞生存性は次いで蛍光染色または他のアプローチ(例えば、組織培養培地の濁り度)により測定されるであろう。SCD1活性を阻害するように作用する化合物に露出されたこれらの細胞はバックグラウンド生存物以上に生存可能性の増加を示すであろう。かくしてこのような検定は、誘導可能SCD1発現および細胞生存可能性測定に基づくSCD1活性の阻害薬の性の選択となるであろう。
【0092】
代替的なアプローチはデサチュラーゼシステムへの干渉である。デサチュラーゼシステムは3個の主要なタンパク質、すなわちシトクロムb5、NADH(P)−シトクロムb5レダクターゼ、およびターミナルシアン感受性デサチュラーゼを持つ。ターミナルシアン感受性デサチュラーゼはSCD遺伝子の産物である。SCD活性は前記3個の成分の間の安定した複合体の形成に依存する。かくしてこの複合体の形成に干渉するいずれかの薬剤、または複合体の3個の成分のいずれかの適切な機能に干渉するいずれかの薬剤はSCD活性を有効に阻害するであろう。
【0093】
SCD1活性のモジュレーターのも一つの型はプレSCD1タンパク質のアミノ末端に位置する33アミノ酸不安定化ドメインを伴う(ムジオー他,全米科学アカデミー紀要,2000年,97巻:8883−8888ページ)。このドメインがまだ未知のプロテアーゼでSCD1タンパク質から切断されることは可能である。この推定上のタンパク質分解活性は従ってSCD1の安定性と半減期を増加するように作用するであろう。一方推定上のプロテアーゼの阻害はSCD1の安定性と半減期の減少を起こすであろう。不安定化ドメインの除去を遮断しまたは調節する化合物は従って細胞内でのSCD1タンパク質水準の減少に導くであろう。従って本発明のある実施例において、スクリーニング検定はSCD1プロテアーゼ活性のモジュレーターを同定するためにプロテアーゼ活性の尺度を採用するであろう。第1段階はSCD1の切断の原因となる特異的なプロテアーゼを同定することである。このプロテアーゼは次いでスクリーニング検定に組み込むことができる。古典的なプロテアーゼ検定は切断に際して不活性化されるタンパク質に対しプロテアーゼが切断部位(すなわち問題となるプロテアーゼに関連する切断可能配列を含むペプチド)をスプライシングすることにしばしば依存する。テトラサイクリン流出タンパク質はこの目的のために使用される。挿入配列を含むキメラが大腸菌で発現される。タンパク質が切断されるとテトラサイクリン耐性は細菌に対して失われる。試験管内検定が開発され、ここで適切な切断部位を含むペプチドは固相の一端部で固定される。他の端部は放射性同位体、フルオロフォア、または他の標識で標識される。固相からの信号の酵素仲介損失はプロテアーゼ活性に匹敵する。これらの技術は成熟SCD1タンパク質を生成する原因となるプロテアーゼを同定するのに使用でき、また細胞内でのSCD1を減少させるために使用されるこのプロテアーゼのモジュレーターを同定するための両方で使用することができる。
【0094】
も一つの見地において、本発明はヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの活性を調節する薬剤の能力を決定するプロセスに関し、それは以下の段階すなわち
(a)薬剤の予め定められた水準で本発明のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼと適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの活性が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記活性を調節したかどうかを決定する段階を含む。
【0095】
このような検定はもっとも一般的には超遠心法により分化細胞分画化の従来の方法により獲得されたミクロソーム分画などのような細胞分別を採用する無細胞検定として実行される。特異的実施例において、このような調節はデサチュラーゼの活性の増加または減少となる。
【0096】
これらの結果は、ヒトにおけるhSCD1などのSCD生物活性の阻害薬がトリグリセリド水準を減少させおよびまたはHDL水準を増加する有益な効果をもたらすことを示唆している。加えて増加したSCD活性は更に増加した体重指標と関連している。この結果はhSCD1を、肥満および関連する異常を調節する薬剤を同定するための有用な標的として同定する。これらのヒトデータの結果において、SCD生物活性は全血漿脂質分画で18:1対18:0の脂肪酸の比率の代理マーカーを経由して測定された。このマーカーは間接的にhSCD1生物活性を測定する。
【0097】
更なる見地において、本発明は本発明の人ステアロイルCoAデサチュラーゼと発言する細胞でのヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの活性を調節する薬剤の能力を決定するプロセスに関し、
(a)薬剤の予め定められた水準でまた前記薬剤がヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの発現水準を調節しまたは調節しない条件の下で、ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する真核細胞と適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの活性が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記発現水準を調節したかどうかを決定する
ステップを含む。
【0098】
前記プロセスの特異的な実施例において、調節はデサチュラーゼの活性の増加または減少であり、これらのプロセスに有用な細胞は望ましくは哺乳類細胞であり、もっとも望ましくはヒト細胞であり、またここで開示された組換え細胞のいずれかを含む。
【0099】
SCD1組変え細胞系
ある実施例においては、本発明は組換え細胞系でのSCD1遺伝子またはタンパク質の使用を考える。SCD1組変え細胞系は従来の知識で公知の技術を用いて生成され、またそれは以下で特異的に設定される。
【0100】
本発明は更に本発明のポリペプチドを含むベクター、および本発明のベクターで遺伝子操作される宿主細胞、とりわけそのような細胞がhSCD1活性の検定に使用できる細胞系に帰着する場合の宿主細胞、および組換え技術によるSCD1ポリペプチドの産生に関する。
【0101】
宿主細胞は望ましくは真核細胞であり、望ましくはスポドプテラ種の昆虫の細胞であり、もっとも特殊にはSF9細胞である。宿主細胞は本発明のベクター、例えばクローニングベクターまたは発現ベクター(とりわけバキュロウイルス)で遺伝子操作(形質導入または形質転換あるいは形質移入)される。このようなベクターはプラスミドウイルスおよびその他を含む。遺伝子操作宿主細胞は本発明のプロモーターを活性化し、形質転換細胞を選択し、または遺伝子を増幅するのに適したように修飾された従来の栄養培地で培養される。温度、pHその他のような培養条件は発現のために選択された宿主細胞でこれまでに用いられたものであり、当業者にとっては明らかであろう。
【0102】
本発明のポリヌクレオチドは組換え技術によりポリペプチドを産生するために採用される。かくして例えばポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現するための各種の発現ベクターのいずれか一つを含む。このようなベクターは染色体、非染色体および合成DNA配列、例えばSV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNA、痘疹などのウイルスDNA、アデノウイルス鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病などの組合せから誘導されるベクターを含む。
【0103】
適切なDNA配列は各種の手順によりベクターに挿入される。一般にDNA配列は従来の公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順その他は当業者の範囲内にあるものと見做される。
【0104】
発現ベクター内のDNA配列はmRNA合成に指向するため適切な発現制御配列(プロモーター)に遺伝子操作で結合される。このようなプロモーターの代表的な例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌coli,lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーターおよび原核または真核細胞あるいはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御するものとして知られる他のプロモーターの名があげられる。発現ベクターは更に翻訳開始のためのリボソーム結合部位と転写ターミネーターを含む。ベクターは更に発現を増幅する適切な配列も含む。
【0105】
加えて発現ベクターは、真核細胞培養のための例えばジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性など、または例えば大腸菌でテトラサイクリンあるいはアンピシリン耐性などの形質転換宿主細胞の選択のために表現型特性を提供する好ましくは1個またはそれ以上の選択マーカーを含有する。
【0106】
前に記載の適切なDNA配列、同じく適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターは適切な宿主がタンパク質を発現できるように宿主を形質転換するために採用される。このような形質転換は永続的であり、かくして更なる試験に使用できる細胞系を生じさせるであろう。試験に使用されるこのような細胞系は一般に哺乳類であり、とりわけヒト細胞である。
【0107】
適切な宿主の代表的な例としては、スポドプテラSf9(および他の昆虫発現システム)ならびに例えばCHO、COSまたはボーエス黒色腫などの動物細胞;アデノウイルス;植物細胞および細菌細胞でさえも名があげられ、これらすべてはここで開示されるポリヌクレオチドを発現することができる。適切な宿主の選択はここでの教示に基づき当業者の知識の範囲内にあるものと見做される。ここで開示された検定方法で使用するためには、哺乳類、とりわけヒトの細胞が望ましい。
【0108】
より詳細には、本発明は更に前に広般に記載された1個またはそれ以上の配列を含む組換え構築物を含む。この構築物は例えばプラスミドまたはウイルスベクターなど、とりわけバキュロウイルス/SF9ベクター/発現システムが使用される場合のベクターを含み、そこに本発明の配列が前進または復帰配向で挿入されている。本実施例の望ましい見地において、この構築物は更に例えば配列に遺伝子操作で結合されたプロモーターを含む調節配列を含んでいる。数多くの適切なベクターとプロモーターが当業者に公知であり、商業的に利用されている。下記のベクターが例として提供される。細胞系:pQE70,pQE60,pQE−9(キアーゲン),pBS,pD10,ファージスクリプト,psiX174,PブルースクリプトSK,pBSKS,pNH8A,pNH16a,pNH18A,pNH46A(ストラータジーン);pTRC99a,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(ファーマシア);真核系:pWLNEO,pSV2CAT,pOG44,pXT1,pSG(ストラータジーン)pSVK3,pBPV,pMSG,pSVL(ファーマシア)。しかしいずれか他のプラスミドまたはベクターもそれらが宿主で複製可能で生存可能である限り使用することができる。
【0109】
プロモーター領域は選択マーカーでCAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは他のベクターを用いるいずれかの望ましい遺伝子から選択することができる。2個の適切なベクターはpKK232−8とpCM7である。とりわけ指名される細菌プロモーターはlacI,lacZ,T3,T7,gpt,ラムダPR,PLおよびtrpである。真核プロモーターはCMV即時初期,HSVチミジンキナーゼ,初期および後期SV40,レトロウイルスからのLTRs,およびマウスメタロチオネイン−Iを含む。適切なベクターとプロモーターの選択は従来の通常の技術の水準内にある。
【0110】
更なる実施例において、本発明は前記の構築物を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は高次の真核細胞、たとえば哺乳類細胞、または低次の真核細胞、例えば酵母細胞であってもよく、あるいは宿主細胞は原核細胞、たとえば細菌細胞であってもよい。構築物の宿主細胞への導入はリン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン仲介形質移入、またはエレクトロポレーション法で実施することができる(L.デービス,M.ディブナー,I.バッティ.分子生物学における基本的方法(1986年))。望ましい実施例は昆虫細胞、とりわけスポドプテラ・フルジペルダからのSF9細胞からの発現を利用する。
【0111】
宿主細胞の構築物は組換え配列によりコードされた遺伝子産物を従来の方法で産生するために利用することができる。選択肢として、本発明のポリペプチドは従来のペプチド合成機で合成により産生することができる。
【0112】
成熟タンパク質は適切なプロモーターの制御の下で哺乳類細胞、酵母、細菌、または他の細胞で発現することができる。無細胞翻訳システムもまた本発明のDNA構築物から誘導されるRNAsを使用するこのようなタンパク質を産生するために採用することができる。原核および真核宿主を用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、サムブルック他,分子クローニング:研究室マニュアル第2版,コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク(1989年);ウー他,遺伝子バイオテクノロジーにおける方法(CRCプレス,ニューヨーク,ニューヨーク(1997年)),組換え遺伝子発現プロトコル,分子生物学における方法所収,62巻(チュアン編、フマーナプレス,トトワ,ニュージャージー,1997年),および分子生物学における現在のプロトコル(オーサベル他編),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,ニューヨーク(1994−1999年)などに記載されており、これらの開示はすべてその全体を引用例として、ここに組込まれている。
【0113】
真核細胞、とりわけ哺乳類細胞、もっとも特別にはヒト細胞による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写はエンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加される。エンハンサーはその転写を増加するためプロモーターに作用する通常約10乃至300塩基対のシス作用性エレメントである。その例は複製起点の後期側塩基対100乃至210のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。
【0114】
一般に組換え発現ベクターは、例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子およびビール酵母菌Trp1遺伝子などの宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点と選択マーカー、および下流構造配列の転写に指向する高度に発現された遺伝子から誘導されるプロモーターを含むであろう。このようなプロモーターは他のものの中でも3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質、などのような解糖酵素をコードするオペロンから誘導することができる。異種構造配列は適当な相で翻訳開始および終結配列、ならびに望ましくは翻訳されたタンパク質の分泌を周辺腔または細胞外培地に向けることのできるリーダー配列を用いて組立てられる。選択肢として、異種配列は、たとえば発現された組換え産物の安定化または単純精製などの望ましい特性を与えるN末端またはC末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。
【0115】
バキュロウイルスベースの発現システムの使用は、ここで開示される組換え体を形成するのに望ましく便利な方法である。バキュロウイルスは大抵昆虫に感染するDNAウイルスの大きな科を代表する。その原型葉オートグラファ・カリフォルニカからの核多角体病ウイルス(AcMNPV)であり、これは数多くの鱗翅目種に感染する。バキュロウイルスの一つの利点は、組換えバキュロウイルスを生体内で産生できることである。伝達性プラスミドでの同時形質移入に続き、大抵の子孫は野生型になる傾向があり、またかなりの量の続く処理はスクリーニングを伴う。プラークの同定を助けるために、欠失変異体を利用する特別なシステムが利用できる。限定されない実施例により、組換えAcMNPV誘導体(BacPAK6と呼ばれるもの)が文献で報告され、それは(ウイルスの生存率に必須である)キャプシド遺伝子をコードする多角体遺伝子の上流で(またORF1629内で)制限ヌクレアーゼBsu361の標的部位を含んでいる。Bsf361はゲノム内のどこも切断されず、またBacPAK6の消化はORF1629の部分を欠失し、それによりウイルスを生存できなくする。かくしてSsu361−切断BacPAK6 DNAなどのシステムを伴うプロトコルで大抵の子孫は生存できなくなり、そのため伝達性プラスミドの同時形質移入後に得られBacPAK6消化の子孫のみが組換え体となり、何故なら外因性DNAを含む伝達性プラスミドがBsu361部位に挿入され、それにより組換え体を酵素に耐性であるようにするためである(キッツおよびポッシー,高頻度でバキュロウイルス発現ベクターを産生する方法.バイオテクニークス,14巻.810−817ページ(1993年)参照のこと。一般的手順については、キングおよびポッシー,バキュロウイルス発現システム:研究室ガイド,チャップマン・アンド・ホール,ニューヨーク(1992年)。および組換え遺伝子発現プロトコル,分子生物学における方法所収,62巻(トゥアン編,ファーマプレス,トトワ,ニュージャージー,1997年)第19章,235−246ページを参照のこと)。
【0116】
前記の内容に従って、本発明は更に本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する組換え真核細胞に関し、望ましくはここで前記細胞が哺乳類細胞でありもっとも望ましくはそれがヒト細胞である場合である。
【0117】
本発明は更に本発明の前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する細胞内で前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの発現を調節する薬剤の能力を決定するプロセスでここで開示されたポリヌクレオチド、酵素、および細胞を使用するプロセスに関し、
(a)薬剤の予め定められた水準で本発明のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する真核細胞に適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの発現水準が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記発現水準を調節したかどうかを決定する:
ステップを含むプロセスに関する。
【0118】
選択肢として、スクリーニング検定はレポーター遺伝子に遺伝子操作で結合された配列識別番号3のhSCD1プロモーター配列を含むベクター構築物を採用することもある。このようなベクターは潜在的転写調節タンパク質の作用、およびSCD1の転写に対するこれらの調節タンパク質の作用を調節する化合物の作用を研究するのに使用することができる。この型のベクターの例は下記の実施例に記載されたpSCD−500プラスミドである。このようなレポーター遺伝子構築物は、試験化合物が特定のプロモーターの制御の下で遺伝子の転写を活性化するのに成功したかどうかを示すのに一般に使用されている。
【0119】
特異的な実施例において、本発明は一つのプロセスを考慮し、ここで前記調節は前記発現水準の増加または減少であり、また前記細胞は哺乳類細胞、とりわけヒト細胞であり、ここで開示された組替え細胞のいずれかのものを含む。ひとつの実施例では、発現水準は前記細胞を前記薬剤に接触させた後に産生されるメッセンジャーRNAの水準を決定することにより決定される。
【0120】
遺伝子発現を調節する因子は必ずしもそれに限定されないが、レチノイドX受容体(RXRs)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)転写因子、ステロイド反応要素結合タンパク質(SREBP−1およびSREBP−2)、REV−ERBα、ADD−1、EBPα、CREB結合タンパク質、P300、HNF4、RAR、LXR、およびPOPα、NF−Y、C/EBPα、PUFA−REおよび関連タンパク質と転写調節因子を含む。SCD1を転写するこれらの転写因子の能力を調節する試験化合物の能力を評価するために設計されたスクリーニング検定は同じく本発明で考察される。
【0121】
hSCD1の活性または発現の増加または減少の生理学的利益は、必ずしもそれに限定されないが、心臓防御の利益につながる血漿トリグリセリドの減少およびまたは血漿HDLの増加、II型糖尿病での治療利益、体重減少、腺分泌の改良、および悪性疾患の機会の減少を含む。かくしてこのような活性または発現を調節する薬剤の能力の決定は、このような作用を生み出す有用な治療薬を発見する機会を提供する。
【0122】
更にhSCD1遺伝子発現、安定性、触媒活性およびその他の特性における変形は、このような酵素をコードするポリヌクレオチドでの対立遺伝子変形に帰因する。本発明に基づき開示されたプロセスは同じようにhSCD1の発現に対するこのようなゲノム作用を決定するのに使用される。本発明のプロセスを使用して、このような変形はhSCD1遺伝子およびまたはプロモーター配列内でDNA多形性の水準で決定される。このような作用は癌、神経性疾患、皮膚病、肥満症、糖尿病、免疫機能および脂質代謝に対するこのような多形性と素因の間の関連を母集団および家族ベースの遺伝子分析両方を通じて解明することに導く。
【0123】
最後に当業者はhSCD1のヒトの健康との関連性を動物モデルとの類似性により確認することができる。周知の動物疾病モデルがhSCD1モジュレーターのこれら動物における成長、発展または疾病のプロセスに対する作用を確かめるために使用される。更にモデルは(以下の実施例で詳細が示されるように)例えばノックアウトまたはノックインマウスなどのように遺伝子修飾多細胞動物を含む。
【0124】
一般的な見地において、本発明はSCD1調節薬を同定するためのプロセスに関し、それは
a)生理学的条件の下で化学薬剤とSCD1活性を持つまたは誘導する分子とを接触させ、
b)前記接触に続きSCD1活性を持つまたは誘導する前記分子の活性の変化を検出し、
それによりSCD1調節薬を同定する
ことを含む。
【0125】
本発明の特異的実施例において、SCD1活性を持つまたは誘導する前記分子は、そのような活性を持つポリペプチド、またはそのような活性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはそのような活性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの活性を調節するポリペプチドである。
【0126】
特異的な実施例において、活性における前記変化は活性の増加または活性の減少である。
【0127】
加えて前記接触は生体内で達成される。このような一つの実施例において、ステップ(a)での前記接触は前記化学薬剤をトリグリセリド(TG)または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連疾患に悩む動物に投与し、続いて前記動物における血漿トリグリセリド水準の変化を検出し、これによりトリグリセリド(TG)または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連疾患を処置するのに有用な治療薬を同定することにより達成される。このような実施例において、動物はこのような疾患に悩み前記疾患の処置を必要とするヒト患者などのようなヒトである。
【0128】
このような生体内プロセスの特異的な実施例において、前記動物におけるSCD1活性の前記変化は活性の減少であり、望ましくはここで前記SCD1調節薬がデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性を事実上阻害しないことである。
【0129】
直前で開示されたこのようなプロセスにおいて、SCD1活性の検出された変化は以下のいずれか、いくつかまたはすべてを検出することにより検出される。
【0130】
a)SCD1ポリペプチド結合親和性、
b)ミクロソーム内でのSCD1デサチュラーゼ活性、
c)全細胞内でのSCD1デサチュラーゼ活性、
d)SCD1遺伝子発現、または
e)SCD1タンパク質水準。
【0131】
前記の記載に従って、本発明は更にここで開示された組換えSCDタンパク質を含む組換え細胞系に指向される。このような一つの実施例において前記(c)の全細胞はこのような細胞系から誘導され、望ましくはここで前記SCD1調節薬がデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性をヒトで事実上阻害しないことである。本発明の組換え細胞系は更にレポーター遺伝子構築物に遺伝子操作で結合された配列組織番号1のSCD1プロモーター核酸配列を含む。その特異的な実施例において、前記(c)の全細胞はこのような細胞系の組換え細胞から誘導される。
【0132】
ここでの開示に従って、本発明は更にSCD1 cDNAを含むポリヌクレオチド配列によりコードされる単離されたステアロイルCoAデサチュラーゼ、並びにこのような核酸とその構築物を含む使用可能ベクターを有利に含有するレポーター遺伝子に遺伝子操作で結合された配列識別番号1のSCD1プロモーター核酸配列を含むレポーター遺伝子構築物に指向される。同じように本発明は更にステアロイルCoAレダクターゼ活性を持つ単離されたポリペプチド、およびそのようなポリペプチドと結合しまたはそれと相互作用する化学薬剤を成功裡に同定するここで開示されたプロセスを考慮し、そのプロセスは
a)そのようなポリペプチド、またはそのようなポリペプチドを発現する細胞を化学薬剤と接触させ、また
b)化学薬剤と前記ポリペプチドとの競合または相互作用を検出する。
このより成る。
【0133】
直前に記載されたプロセスの特異的実施例において、化学薬剤のポリペプチドへの結合は、
a)化学薬剤/ポリペプチド結合の直接検出、
b)競合結合測定による結合の検出、および
c)SCD1生物活性の測定による結合の検出
より成るグループから選択される方法により検出される。
【0134】
このようなプロセスでは、このようなポリペプチドの活性の調節はポリペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞を、ポリペプチドの活性を調節するのに十分な量でポリペプチドと結合する化合物に接触させることを含むプロセスにより検出される。このプロセスの特異的実施例において、SCD1活性を持つまたは誘導する分子は、ここで開示されるSCD1核酸およびまたはSCD1ポリペプチドより成るグループから選択される。
【0135】
前述の事項に従って、望ましい調節活性を持つ化学薬剤の同定に続き、本発明は更にヒトにおけるSCD1活性を阻害することを含むトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する疾病または異常に悩む動物、とりわけヒト患者のようなヒトを処置するプロセスに関する。望ましい実施例において、前記SCD1活性の阻害は、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの活性の事実上の阻害を伴わない。特異的な実施例において、本発明はその治療活性が本発明のプロセスにより初めて同定された薬剤の治療有効量をヒト患者に投与することを含むトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する患者または異常に悩むヒト患者を処置するプロセスに関する。
【0136】
前述の事項に従って、本発明は更にトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する疾患または異常の処置のためにヒトで有用であるSCD1活性のモジュレーターに関し、ここで前記活性はSCD1活性を調節するその能力により初めて同定され、とりわけこのような調節は本発明に基づきここで開示されたプロセスを使用して初めて検出された。その望ましい実施例では、このような調節薬はヒトの脂肪酸シンテターゼ、デルタ−5デサチュラーゼまたはデルタ−6デサチュラーゼを事実上阻害しない。
【0137】
かくして本発明は更に脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ調節薬を同定するプロセスに関し、それは
a)生理学的条件の下で化学薬剤と、脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する分子とを接触させ、
b)前記接触に続き脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する前記分子の活性の変化を検出し、
これにより脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ調節薬を同定する
ことを含む。
【0138】
このようなプロセスの特異的な実施例において、ステップ(a)での接触は、トリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の産生あるいは分泌、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他のパラメーターの血清水準に関連する疾患または異常に悩む動物に前記化学薬剤を投与し、前記接触に続き脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する分子の活性の変化を検出し、これによりトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の酸性または分泌、一家不飽和脂肪酸、ワックスエステル、および類似の疾病関連疾患を処置するのに有用な治療薬を同定することにより達成される。
【0139】
前述の事項に従って、本発明は更にトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の産生あるいは分泌、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、および類似のパラメーターなどの血清水準に関連する疾病または異常に悩むヒト患者を処置するプロセスに関し、それはこのような治療活性が本発明に従って開示されたプロセスにより同定された薬剤の治療有効量を前記ヒト患者に投与することを含む。
【0140】
このようなプロセスの望ましい実施例において、調節薬はヒトの脂肪酸シンテターゼ、デルタ−5デサチュラーゼまたはデルタ−6デサチュラーゼを事実上阻害しない。
【0141】
試験化合物/モジュレーター/ライブラリー源
前述の事項に従って、本発明は更に分子の大きさと分子量に関係なく、ここで開示されたいずれかの疾病を処置しおよびまたは診断しおよびまたは予防するのに有効で、望ましくはそのような薬剤がここで開示されたhSCD1の活性または発現を調節する能力を持ち、またもっとも望ましくは前記薬剤が本発明に従って開示された少なくとも1個のスクリーニング検定を通じてそのような活性を持つと決定された治療薬およびまたは診断薬に関する。
【0142】
試験化合物は一般にこのような化合物のライブラリーに編集され、また本発明のスクリーニング検定の主要な目的は化合物が未知の治療効力を持つ数百、数千または数百万の化合物を持つライブラリーから関係があると選択することである。
【0143】
薬剤発見と開発の分野での当業者は試験抽出物または化合物の明確な源が本発明のスクリーニング手順にとって重要ではないということを理解するであろう。従って、実際上どのような数の化学抽出物または化合物でもここに記載された例示的方法を用いてスクリーニングすることができる。このような抽出物または化合物の例は、必ずしもそれに限定されないが、植物、真菌、原核または動物をベースにした抽出物、発酵肉汁、および合成化合物、ならびに現存化合物の修飾物を含む。必ずしもそれに限定されないが、糖類、脂質、ペプチドおよび核酸ベースの化合物を含むいずれの数の化学化合物を含む任意のまたはそれに指向された合成(例えば半合成または全合成)を生成するために、数多くの方法が利用できる。合成化合物ライブラリーはブランドン・アンソシエーツ(メリマック,ニューハンプシャー)およびオルドリッチ・ケミカル(ミリウォーキー,ウイスコンシン)から商業的に利用できる。選択肢として、細菌、真菌、植物、および動物抽出物での形態の天然化合物のライブラリーは、バイオティクス(サセックス,英国)、ゼノーバ(スラウ、英国)、ハーバー・ブランチ・オーシャングラフィクス・インスティチュート(フォート・ピアス,フロリダ)、およびファルママー、ユー、エス、エイ(ケンブリッジ,マサチューセッツ)を含む数多くの源から商業的に利用できる。加えて、天然および合成産生ライブラリーが望ましければ従来の公知の方法に基づき、例えば標準抽出方法または分留方法により産生される。更にもし望ましければ、いずれのライブラリーまたは化合物でも、標準の化学的、物理的または生化学的方法を用いて容易に修飾される。
【0144】
かくして一つの見地において、本発明はここで開示されたヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(hSCD1)の活性およびまたは発現を調節できる薬剤に関し、とりわけ前記調節能力がhSCD1、またはhSCD1をコードする遺伝子を含む検定、またはhSCD1活性を測定する検定を使用して初めて決定された場合の活性または発現を調節できる薬剤に関する。ここで使用されるように、「調節できる」という用語は、そのような調節が定性的にか定量的にかのいずれかで検出できる点まで促進し、ここでまたはこのような調節が試験管内または生体内のいずれかで起こるように温度、圧力、pHその他の適切な条件下で前記活性を増加または減少させることにより、前記薬剤がhSCD1の全体としての生物活性を変化させる作用を持つこのような薬剤の特性を引用する。加えて「調節」という用語が、活性の変化、より特異的にはこのような活性の増加または減少のいずれかを意味するために、ここで使用されているのに対し、一方「活性」という用語は(例えばミリグラム当り単位または何か他の比重の適切な単位で測定されるように)特異的な酵素活性にのみ限定されるものではなくて、特異的酵素活性での変化によらず、前記hSCD1酵素をコードし発現するポリヌクレオチドの発現の変化(すなわち調節)に起因して酵素活性を増加させることを含むタンパク質の他の直接的および間接的作用を含む。ヒトSCD1活性は更にhSCD1の基質に特異的に結合する薬剤により影響される。かくしてここに使用される「調節」という用語は、前記調節の分子遺伝子水準に拘らず、それがそれ自身酵素に対する作用であるか、酵素をコードする遺伝子かまたは前記酵素をコードする遺伝子の発現を伴うRNA、とりわけmRNAに対する作用であるかというhSCD1活性での変化を意味する。かくして、このような薬剤による調節はDNA、RNAまたは酵素タンパク質の水準で起こり得るし、また生体内または生体外のいずれかで決定することができる。
【0145】
この特異的な実施例において、前記検定は本発明に基づきここで開示されたいずれかの検定である。加えて本開示により考慮される薬剤は抗体、RNAまたはDNAのいずれかの核酸などのタンパク質を含む高分子または低分子のものおよび低有機分子などの低化学構造のものなどのいずれかのサイズまたは化学的性質の薬剤を含む。
【0146】
他の見地において、本発明は薬剤を熟考し、ここで前記薬剤は本発明に従ってSCD1に関連するものと同定される疾病または異常を処置し、予防しおよびまたは診断するのに有用なものである。特異的な実施例は、疾病または異常が必ずしもそれに限定されないが、トリグリセリドの血清水準、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他コレステロール疾患、脂血症、心臓血管病、糖尿病、肥満症、禿頭症、皮膚病、癌、および多発性硬化、とりわけ疾病が心臓血管病または皮膚病、あるいは異常が禿頭症である場合を含む状況に向けられる。望ましい実施例において、このような薬剤は患者のHDL水準を増加し、およびまたは患者のトリグリセリド水準を低下させるであろう。どちらか一つまたは両方の作用は心臓血管病および冠状動脈症のリスクの低下と直接関係する。
【0147】
SCD1活性の既知のモジュレーターのいくつかは複合リノール酸、とりわけトランス10、シス12異性体およびチアゾールアジネジオン化合物、例えばトログリタゾンなどを含む。
【0148】
SCD1活性の阻害または調節のためのいずれかの適切なメカニズムを使用できることが予見される一方、3個の阻害薬のクラスの特異的な例が想像される。一つのクラスはSCD1発現を効果的に阻害する阻害薬を含み、例えばチアゾールアジネジオン化合物および多価不飽和脂肪酸がそれである。第二のクラスはSCD1の酵素活性を効果的に阻害する阻害薬を含み、例えばチア脂肪酸、シクロプロペノイド脂肪酸、およびある種の共役リノール酸異性体がそれである。最後に第三クラスの阻害薬はデサチュラーゼシステムに必須のタンパク質に干渉することができる薬剤を含み、それは例えばシトクロームb5、NADH(P)−シトクロームb5レダクターゼ、および末端シアン感受性デサチュラーゼに干渉する薬剤である。
【0149】
SCD1遺伝子の発現を効果的に阻害するために、SCD1遺伝子の転写を中断できるいずれの薬剤も利用できることが想定される。SCD1はいくつか既知の転写因子(例えばPPAR−γ、SREBP)により調節されるために、このような転写因子の活性に影響するいずれかの薬剤がSCD1遺伝子の発現を変更するのに使用できる。このような薬剤の一つのグループはチアゾールアジン化合物を含みそれはPPAR−γを活性化しSCD1転写を阻害するものとして知られている。これらの化合物はピオグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、トログリタゾン、およびBRL49653を含む。他の阻害薬は例えばリノール酸、アラキドン酸およびドデカヘキサノン酸などの多価不飽和脂肪酸を含み、それはまたはSCD1転写を阻害する。
【0150】
SCD1タンパク質の酵素活性を有効に阻害するために、SCD1タンパク質の活性を中断できるいずれかの薬剤を利用できることが予見される。例えばある種の共役リノール酸異性体はSCD1活性の有効な阻害薬である。特異的にはシス−12、トランス−10共役リノール酸がSCD酵素活性を効果的に阻害し、SCD1 mRNAの多くの量を減少させ、一方シス−9、トランス−11共役リノール酸はそのように作用しないことが知られている。ステルクラおよび綿実に見出されるもののようなシクロプロペノイド脂肪酸もまたSCD活性を阻害するものとして知られている。たとえばステルクリア酸(8−(2−オクチル−シクロプロペニル)オクタノール酸)とマルバリック酸(Malvalic acid)(7−(2−オクチル−シクロプロペニル)ヘプタノール酸)はそれぞれステアロイル−およびマルバロイル脂肪酸のC18およびC16誘導体であり、そのΔ9位置でシクロプロペン環を持っている。これらの薬剤はΔ9脱飽和を阻害することによりSCD活性を阻害する。他の薬剤はチアステアリン酸(8−ノニルチオオクタノール酸とも呼ばれるもの)などのチア脂肪酸およびスルホキシ成分を持つ他の脂肪酸を含む。
【0151】
デルタ−9デサチュラーゼ活性の既知のモジュレーターは、本発明で請求されたSCD1生物活性に結合する疾病および疾患を処置するのに有用であるとは知られていないが、あるいは代りにそれらが別の不満足な治療薬かのいずれかである。チア脂肪酸、共役リノール酸およびシクロプロペン脂肪酸(マルバリック酸およびステルクリア酸)は妥当な生理学的用量で有用でもなく、またそれらはSCD1生物活性の特異的阻害薬でもなく、むしろ他のデサチュラーゼ、とりわけシクロプロペン脂肪酸によるデルタ−5およびデルタ−6デサチュラーゼの交差阻害を示している。これらの化合物は本発明のスクリーニング検定の制御または試験モジュレーターを確立するのに有用ではあるが、本発明の請求項の対象とはなり得ない。本発明の望ましいSCD1モジュレーターは無関係のクラスのタンパク質に対し有意または事実上に衝撃を与えない。ある場合には、他のタンパク質、例えばデルタ−5およびデルタ−6活性などに特異的な検定は、同定された本発明の化合物が有意なまたは事実上の交差阻害を示さないことを確実にするために更に試験されねばならないであろう。
【0152】
SCD1の公知の非特異的阻害薬はSCD1の阻害に適した治療薬の合理的な設計に有用であることができる。3個の阻害薬のすべては炭素#9と#10の間に各種の置換基を持つ。更にかれらはCoAが有効であるために共役を必要とするし、また相対的に疎水性活性部位に多分位置を占める。植物(可溶)SCDの活性部位の耕地のX線座標軸と組合されたこの常法は、SCD1に特異的な治療許容阻害薬の合理的な薬剤設計のための「シリコンコンピュータチップ(in silico)」プロセスを補助する。
【0153】
本発明は更に前に表記したスイスプロットアクセッション番号に示されたアミノ酸配列を持ち、ヒトSCD1に特異的に結合し、また従ってSCD1の活性を阻害する抗体を提供する。この抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはそのSCD結合断片である。一つの実施例において、抗体は単離され、すなわちいずれかの他の抗体から遊離した抗体である。抗体を作成し単離する方法は従来の技術で公知である(ハーロー,他,1988年,抗体:研究室マニュアル:コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー)。
【0154】
本発明は更にヒトSCD1 mRNAに特異的に結合し、それによりSCD1遺伝子転写の水準を下げるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。公知の標的遺伝子に対してこれを作成し使用する方法は従来の技術で公知である(アガーワル,S.(1966年)アンチセンス治療法.トトワ,ニュージャージー,フマーナ・プレス,インコーポレイテッド)。
【0155】
組合せおよび医薬品化学
典型的には、高処理スクリーニング検定などのスクリーニング検定は、検定タンパク質の活性を調節するいくつかの場合により多くの化合物を同定するであろう。スクリーニング検定で同定される化合物は、更にそれがヒトに治療薬として使用される前に修飾される。典型的には、組合せ化学は改良された吸収、生分配、退社およびまたは排出、あるいは他の重要な治療見地を持つ可能な変異体を同定するためにモジュレーターに対し実施される。必須の不変量は、改良された化合物が標的タンパク質の望ましい調節に必要である特定の活性基または複数の基を共有するということである。多くの組合せ化学と医薬品化学技術は従来の技術で公知である。各人は修飾類似体を生成するために化合物の1個またはそれ以上の構成成分を加えまたは削除し、その類似体は本発明の化合物を同定するため再び検定される。かくして本発明で使用されるように、本発明のSCD1スクリーニング検定を用いて同定された治療化合物はそのように同定された実際の化合物を含み、またそのように同定されまたここで請求される疾患の処置に有用である化合物として作られたいずれかの類似体または組合せ修飾物を含む。
【0156】
薬剤調製と投薬
も一つの見地において、本発明は本発明に従ってここで開示された小さい有機分子などの治療薬、予防薬または診断用薬を含むポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の化学薬剤を含む組成物に指向され、ここで前記ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の薬剤は薬理許容担体に懸濁され、この担体はいずれかの薬理許容希釈剤または賦形剤を含む。薬理許容担体は必ずしもそれに限定されないか、水、食塩水、グリセロールおよびエタノール、その他を含み、鼻および呼吸気道輸送または眼科系の輸送のためのスプレーを形成するのに有用である担体を含む液体である。薬理許容担体、希釈剤および他の賦形剤についての十分な議論はレミントン・ファーマシューティカル・サイエンス(マック・パブリッシング・カンパニー,ニュージャージー,最新版)で提示されている。
【0157】
前記で利用される阻害薬は、選ばれた阻害薬に適したものとして、従来の知識で一般に使用される公知の送達システムのいずれかを使用して被験者に送達される。望ましい送達システムは消化気道で吸収される選択された阻害薬の能力に依存して静脈内注射または経口送達を含む。
【0158】
も一つの見地において、本発明は更にここで開示された組成物の治療または予防有効量を患者に投与することを含む疾病または異常に悩む患者で治療または異常を予防しまたは処置するプロセスに関する。
【0159】
診断と薬理ゲノミクス
追加の見地において、本発明は更に、疾病または異常に悩んでいるものと推測され、またはそれに悩む危険にさらされている患者、一般にはヒト患者の疾病または異常を診断するプロセスに関し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞のhSCD1の活性水準を決定し、前記疾病または異常に悩んでいるとは推測されずまたはそれに悩む危険にさらされていない患者からの対応する組織の等量の活性と前記活性とを比較することより成る。その特殊な実施例において、前記疾病または以上は必ずしもそれに限定されないが、コレステロール疾患、脂血症、心臓血管病、糖尿病、肥満症、禿頭症、皮膚病、癌および多発性硬化、とりわけここで前記疾病が心臓血管病または皮膚病であるか、あるいは前記異常が禿頭症である場合を含む。
【0160】
追加の見地において本発明はhSCD1が薬理ゲノミクス的重要性を有することを教示する。SNPs(単一ヌクレオチド多形性)、cSNPs(cDNAコーディング領域にあるSNPs)多形性およびその他を含む変異体は、予防薬または治療薬の投与に対する被験者の応答に劇的な結果を持つことになる。ある種の変異体は多かれ少なかれある種の薬剤に応答する。も一つの見地において、治療薬のいずれかまたはすべては被験者に存在するhSCD1変異体に依存するより多くまたはより少ない有毒な副作用を持つことができる。
【0161】
一般に本発明は、それを必要とする被験者に投与される予防薬およびまたは治療薬を選択するプロセスを開示し、それは
(a)前記被験者のhSCD1核酸配列の少なくとも一部を決定し、また
(b)前記hSCD1核酸配列をhSCD核酸の既知の変異体と比較する、
ことを含み、ここで前記既知の変異体は前記薬剤に対する応答性と相関し、また前記薬剤は望ましい相関を基礎にして前記被験者のために選択される。この方法では、相関は予防作用およびまたは治療作用であり、あるいはそれは有毒副作用の回避であり、もしくはいずれか他の望ましい相関である。
【0162】
本発明の薬理ゲノミクスの適用において、薬物適用に対するヒト疾病プロセスまたは応答と相関する個体のhSCD1において、cSNPs(コーディング領域小ヌクレオチド多形性)を同定するために一つの検定が提供される。発明者はこれまでにhSCD1の2個の推定上のcSNPsを同定した。エキソン1では位置8でのD/Eアミノ酸変化に対応するnt 259でのC/A cSNP;およびエキソン5では位置224でのL/Mアミノ酸変化は対応するnt 905でのC/A cSNPがそれである(ジェンバンク・アクセッションに基づく配列ナンバリング:AF097514)。これらの推定上のcSNPは、対照集団に対しこれらのcSNPsを含む個体のヒト疾病プロセスと薬物適用に対する応答に相関することができることが予見される。当業者はどの疾病プロセスとどの薬物応答に対する応答がそのように相関するかを決定することができる。
【0163】
本発明の手順を実行するに当り、特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件その他の引用が限定されるものではなくて、当業者が議論の提示される特別な前後関係で関心を持ちまたは価値があると認識するようなすべての関連する物質を含むように読み取られるべきであることは当然理解されるべきである。例えば、1個の緩衝液系または培養培地をも一つのものに置換して、同一ではないにしても類似の結果を達成することはしばしば可能である。当業者はここで開示された方法と手順を用いる際に彼等の目的に最適に役立つように過度の実験をすることなくそのような置換を行い得るようなこのようなシステムと方法論についての十分な知識を持つであろう。
【0164】
この開示を適用する際には、本発明に従って開示される方法で他の異なった実施例が関連する技術の当業者に間違いなくそれらを示唆するであろうことは十分に考慮されねばならない。
【0165】
[発明の実施の形態]
(実施例1)
マウスのステアロイルCoAデサチュラーゼ遺伝子の分裂は血漿トリグリセリド水準ならびに脂質代謝の他の欠陥を減少させる
この実施例はSCD1遺伝子特異的ノックアウトマウスを特徴付けることにより、マウスでの特異的SCD1生物活性を、初めて、同定する。
【0166】
SCDの生理学的機能を調べるために、我々はSCD1ヌル(SCD1−/−)マウスを生成した。SCD1ヌル(ノックアウト)マウスのリポタンパク質プロファイルはトリグリセリド(すなわちVLDL)水準の目覚しい減少を示し、一方ほぼ正常なHDLとLDL水準は維持された。この結果は、SCD1での突然変異がマウスでの低トリグリセリド(TG)リポタンパク質プロファイルの原因となる変異であり、またこの点に関しては他のSCDアイソフォームとは異なっていることを確認する。この表現型の発病原により、他のSCDアイソフォームがそのような大きな範囲までTG水準に影響を及ぼさないことは明らかである。
【0167】
SCD1遺伝子の標的化分裂
図1AはSCD1遺伝子をノックアウトするために用いられた戦略を示す。マウスSCD1遺伝子は6個のエキソンを含む。遺伝子の最初の6個のエキソンは相同的組換えによりネオマイシン耐性カセットで置換され、SCD1遺伝子の完全コーディング領域の置換を来たした(図1A)。ベクターは胚幹細胞内に電気穿孔され、ネオカセットを組込んだクローンはジェネティシンでの成長により選択された。標的ESクローンはC57BI/6芽細胞に注入され、生殖細胞系列を通じて分裂された対立遺伝子を伝達した4系列のキメラマウスを産出した。変異体マウスは生存可能でまた生殖能があり予想されたメンデルの分布で子孫を設けた。SCD1遺伝子座の成功する遺伝子標的を検定するPCRベースのスクリーニングが図1Bで示される。SCD1遺伝子の発現が消散されたかどうかを測定するために、我々はノーザンブロット分析を行った(図1C)。SCD1 mRNAはSCD1−/−マウスの肝臓では検出できず、またSCD+/−マウスではほぼ50%減少した。SCD2 mRNAはSCD1−/−マウスと野生型マウスの両方で低水準で発現された。ノーザンブロットでの結果と一致して、ウェスタンブロット分析はSCD−/−マウスからの肝臓で免疫反応性SCDタンパク質は示されず、一方SCD1タンパク質は遺伝子用量に依存するやり方でヘテロ接合性および野生型の肝臓組織両方で見出可能であった。肝臓でのSCD酵素活性は〔1−14C〕ステアロイルCoAから〔1−14C〕オレイン酸エステルへの転換率(図1E)により測定されるように、野生型マウスでは高かったがSCD1−/−マウスの肝臓の全抽出物では検出できなかった。
【0168】
脂質分析
肝臓コレステロールエステル(0.8±0.1対0.3±0.1mg/g肝臓)および肝臓トリグリセリド(12.6±0.3対7.5±0.6mg/g肝臓)の分析はSCD1ノックアウト動物が野生型対照よりもコレステロールエステルとトリグリセリド両方で低い量であることを示した。血漿リポタンパク質分析は、正常な対照と比較してSCD−/−マウスで血漿トリグリセリドの減少(12.6±6.8対45.4±3.8)を示した。これらの発見はアセビアマウスでの発見と類似している。図2は高速性能液体クロマトグラフィーを用いて得られた血漿リポタンパク質プロファイルを記録する。SCD1ノックアウトマウスはVLDL分画でトリグリセリドの65%の減少を示したがLDLまたはHDL水準では殆んどまたは何ら有意の差は示されなかった。
【0169】
アセビアマウスは図2でSCD1ノックアウトマウスと比較される。これらの発見は著しく類似している。アセビアマウス血漿リポタンパク質は高速性能液体クロマトグラフィーにより分離され、マウス(n=3)の各種濃度分画内のリポタンパク質の間のトリグリセリド分布が示される。図3はアセビアマウスリポタンパク質プロファイルの追加の例を示す。これらのプロファイルはSCD−/−とSCD−/+マウスのVLDL分画でのトリグリセリド分布の主要な差を示した。SCD−/+のトリグリセリド水準はVLDLで25mg/dlで、LDLとHDL分画では極めて低水準であった。これとは逆に、SCD−/−は3個のリポタンパク質分画で非常に低い水準のトリグリセリドを有していた。
【0170】
脂肪酸分析
我々は更に各種の組織で一価不飽和脂肪酸の水準を測定した。表1は野生型およびSCD−/−マウスのいくつかの組織の脂肪酸組成物を示す。SCD−/−マウスからの肝臓と血漿でのパルミトレイン酸エステル(16:1n−7)の相対量はそれぞれ55%と47%減少し、一方オレイン酸エステル(18:1n−9)のそれはそれぞれ35%と32%減少した。SCD−/−マウスの白脂肪組織と皮膚のパルミトレイン酸エステルの相対量は70%以上減少し、一方減少それ自身は統計的に有意ではあるがこれら組織でのオレイン酸エステルの減少は20%以下であった。一価不飽和脂肪酸の水準のこれらの変化は脱飽和指標の減少をもたらしこれはデサチュラーゼ活性の減少を示唆する。これらの組織とは逆に、SCD2アイソフォームを優先して発現する脳は、野生型とSCD−/−マウスの両方で類似の脂肪酸組成物と変更されない脱飽和指標を有していた。我々は、SCD1が肝臓での一価不飽和脂肪酸の産生に大きな役割を果すものと結論する。
【0171】
【表1】
【0172】
図4(表2で計量されている)は、SCD1がSCD1ノックアウトマウスとアセビアマウスの両方の血漿脂肪酸分析で判定されるように血漿脱飽和指標(全脂質分画で血漿比18:1/18:0または16:1/16:0)への主たる貢献者であることを示している。両動物モデルで、約50%またはそれ以上の減少が血漿脱飽和指標で観察される。これは血漿脱飽和指標がSCD1の機能に大きく依存していることを示している。
【0173】
【表2】
【0174】
ノックアウトマウスの実験手順
SCD1ノックアウトマウスの生成
標的ベクターのマウスゲノムDNAが129/SVゲノムライブラリーからクローンされた。標的ベクター構築物は短縮部として3′相同を持つ1.8キロベースXba I/Sac I断片とネオ発現カセットに隣接してクローンされた5′相同を持つ4.4キロベースCla I/Hind III断片の挿入により生成された。構築物は更に1.8キロベース相同腕部に対するHSVチミジンキナーゼカセット3′を含み、正/負の選択を可能にする。標的ベクターはNot Iにより線型化され胚幹細胞に電気穿孔された。ジェネティシンとガンシクロビルでの選択が行われた。ジェネティシンとガンシクロビル両方に耐性のクローンはEcoRI制限酵素消化後にサザンブロットにより分析され、ベクター配列の下流に位置する0.4キロベースプローブでハイブリッド形成された。PCR遺伝子型化のために、ゲノムDNAは、プライマーA
5′−GGGTGAGCATGGTGCTCAGTCCCT-3′ (配列識別番号2)
これはエキソン6に位置し、プライマーB
5′-ATAGCAGGCATGCTGGGGAT-3′ (配列識別番号3)
これはネオ遺伝子(425塩基対産物、標的化対立遺伝子)に位置し、またプライマーC
5′-CACACCATATCTGTCCCCGACAAATGTC-3′ (配列識別番号4)
【0175】
これは標的遺伝子(600塩基対産物、野生型対立遺伝子)の下流に位置し、これらのプライマーにより増幅された。PCR条件は35サイクルで、各94℃で45秒、62℃で30秒、72℃で1分であった。標的化細胞はC57BI/6芽細胞に微小注入され、キメラマウスはC57BL/6または129/SvEvタコニック雌と交配され、それらは生殖系列遺伝を提供した。マウスは12時間ずつの明暗サイクルで維持され、正常な規定食(ダイエット)、半精製規定食、またはトリオレイン、トリパルミトレインまたはトリエイコセノイン50%(全脂肪酸の%)を含む規定食の食物を与えられた。半精製規定食はハーラン・テクラッド(マジソン,ウイスコンシン)から購入され、ビタミン無しカゼイン20%、ダイズ油5%、Lシスチン0.3%、マルトデキストリン13.2%、蔗糖51.7%、セルロース5%、ミネラル混合物(AIN−93G−MX)3.5%、ビタミン混合物(AIN−93−VX)1.0%、酒石酸水素コリン0.3%を含んでいた。実験用規定食の脂肪酸組成物は気液クロマトグラフィーで測定された。対象規定食はパルミチン酸11%(16:0)、オレイン酸23%(18:1n−9)、リノール酸53%(18:2n−6)およびリノレン酸8%(18:3n−3)を含んでいた。高トリオレイン規定食は16:0、7%、18:1n−9、50%、18:2n−6、35%および18:3n−3、5%を含んでいた。
【0176】
材料
放射性〔α−32P〕dCTP(3000Ci/mmol)はデュポン・コーポレーション(ウイルミントン,デラウェア)から入手した。薄層クロマトグラフィー平板(TLCシリカゲルG60)はメルク(ダルムシュタット,ドイツ)から得た。〔1−14C〕ステアロイルCoAはアメリカン・レイディオラベルド・ケミカルズ,インコーポレイテッド(セントルイス,ミズーリ)から購入された。インモビロン−P透過膜はミリポア(ダンバーズ,マサチューセッツ)からのものであった。ECLウェスタンブロット検出キットはエイマシャム−ファーマシア・バイオテック,インコーポレイテッド(ピスケータウェー,ニュージャージー)からであった。他のすべての化学品はシグマ(セントルイス,ミズーリ)から購入された。
【0177】
脂質分析
全脂質はブライとダイアー(ブライとダイア−,1959年)の方法に基づいて肝臓と血漿から抽出され、リン脂質、ワックスエステル、遊離コレステロール、トリグリセリドおよびコレステロールエステルはシリカゲル高速性能TLCにより分解された。石油ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:30:1)またはベンゼン/ヘキサン(65:35)は現象溶媒として使用された(ニコレーズとサントス,1985年)。スポットはエタノール95%の0.2%、2′,7′−ジクロロフルオレセイン、またはリン酸8%の10%硫酸銅により視覚化された。ワックストリエステル、コレステロールエステルおよびトリグリセリドのスポットはかき落され、1mlの5%塩酸メタノールが加えられ、1時間100℃で加熱された(宮崎他,2000年)。メチルエステルは内標準としてヘプタデカン酸コレステロール、トリヘプタデカン酸およびヘプタデカン酸を用いる気液クロマトグラフィーで分析された。目瞼と血漿の遊離コレステロール、コレステロールエステルおよびトリグリセリド容量は酵素検定で測定された(シグマ、セントルイス、ミズーリおよびワコー・ケミカル、日本)。
【0178】
RNAの単離と分析
全RNAは酸グアニジウム・フェノール・クロロホルム抽出液(バーンロア他,1985年)を用いて肝臓から単離された。全RNAの20マイクログラムがアガロース1.0%/ホルムアルデヒドゲル2.2M電気泳動により分離され、ナイロン膜に移された。膜は32P−標識SCD1およびSCD2プローブでハイブリッド形成された。pAL15プローブが等量負荷の対照として使用された(M.宮崎,Y.C.キム,M.P.グレー−ケラー,A.D.アッティー,J.M.ヌタンビ(2000年)。肝コレステロールエステルとトリグリセリドの生合成はステアロイルCoAデサチュラーゼの遺伝子の分裂によりマウスで弱められる。生物化学ジャーナル,275巻,30132−8ページ)。
【0179】
SCD活性検定
ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性は下村他により記載されたように本質的には肝臓ミクロソームで測定された(I.下村,H.島野,B.S.コーン,Y.バシュマコフ,J.D.ホートン(1998年)。核ステロール調節エレメント結合タンパク質は遺伝子導入マウス肝臓での不飽和脂肪酸生合成の全プログラムの原因となる遺伝子を活性化する。生物化学ジャーナル,273巻,35299−306ページ)。組織は緩衝液A(0.1Mのカリウム緩衝液、pH7.4の10量で均質化された。ミクロソーム膜分画(100,000×gペレット)は連続遠心分離により単離された。反応は37℃で5分、100μgのタンパク質ホモジェネートおよび60μMの〔1−14C〕−ステアロイルCoA(60,000dpm)、2mMのNADH、0.1Mのトリス/塩酸緩衝液(pH7.2)で行われた。反応後に脂肪酸は抽出され、次いで10%の酢酸塩化物/メタノールでメチル化された。飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸メチルエステルは現象液としてヘキサン/ジエチルエーテル(9:1)を用いる10%AgNO3含浸TLCで分離された。平板は95%エタノールでの0.2%2′,7′−ジクロロフルオレセインでスプレーされ、また脂質は紫外線光の下で同定された。分画は平板からかき落され、放射能は液体シンチレーションカウンターを用いて測定された。酵素活性はnモル分−1mg−1タンパク質で表された。
【0180】
イムノブロッティング
各グループの3匹のマウスからプールされた肝臓膜がハイネマン他(ハイネマンとオツォールス,1998年)により記述されたように準備された。各分画からの同量のタンパク質(25μg)が10%のSCDポリアクリルアミドゲル電気泳動を受け、4℃でインモビロン−P移動膜に移された。TBS緩衝液(pH8.0)プラストゥイーン内で10%脱脂乳で遮断の後、膜は洗浄され、ウサギ抗ラットSCDを一次抗体、またヤギ抗ウサギIgG−HRP接合体を二次抗体として保温された。SCDタンパク質の視覚化はECLウエスタンブロット検出キットで行われた。
【0181】
組織構造
組織は中性緩衝ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋され、切断されヘマトキシリンとエオシンで染色された。
【0182】
この作業はアメリカン・ハート・アソシエーション,ウイスコンシン支部の助成金で、また一部は国防省からの#DAMD17−99−9451補助金により支援された。
【0183】
アセビアマウスの実験手順
アセビアホモ接合マウス(ab J/ab Jまたは−/−)およびヘテロ接合体マウス(+/ab Jまたは+/−)がジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー,メーン)から獲得され,ユニバーシティ・オブ・ウイスコンシン,アニマル・ケア・ファシリティで飼育された。この研究ではホモ接合体(−/−)マウスとヘテロ接合体(+/−)マウスの間で比較がなされたが,それは後者が正常マウスと区別できないためである。マウスは12時間明、12時間暗のサイクルで作動する無病原体バリア設備で飼育された。3週齢時にこれらのマウスは任意に2週または2ヶ月間実験室規定食または50%(全脂肪酸の%)のトリオレインまたはトリパルミトレインを含む半精製規定食を共餌された。半精製規定食はハーロン・テクラッド(マジソン,ウイスコンシン)から購入されたもので、これは18%の無ビタミンカゼイン、5%のダイズ油、33.55%のコーンスターチ、33.55%の蔗糖、5%のセルロース、0.3%のLメチオニン、0.1%のコリン塩化物、塩混合物(AIN−76A)とビタミン混合物(AIN−76A)を含んでいた。実験用規定食の脂肪酸組成物は気液クロマトグラフィーにより測定された。対照規定食は11%のパルミチン酸、(16:0)、23%のオレイン酸(18:1n−9)、53%のリノール酸(18:2n−6)および8%のリノレン酸(18:3n−3)を含んでいた。高トリオレイン規定食は7%の16:0、50%の18:1n−9、35%の18:2n−6および5%の18:3n−3を含んでいた。高トリパルミトレイン規定食は6%の16:0、49%のパルミトレイン酸(16:1n−7)、12%の18:1n−9、27%の18:2n−6および4%の18:3n−3を含んでいた。
【0184】
動物はペントバルビタールナトリウム(体重0.08mg/g)(ネンブタール,アボット,ノースシカゴ,イリノイ)の腹膜内注射により午前10時ごろ麻酔された。肝臓は即時に単離され、重量測定し、液体窒素で保持された。血液サンプルは腹静脈から獲得された。
【0185】
材料
放射性α32P〕dCTP(3000Ci/mmol)はデュポン・コーポレイション(ウイルミントン,デラウェア)から得られた。薄層クロマトグラフィー平板(TLCシリカゲルG60)はメルク(ダルムシュタット,ドイツ)からのものであった。〔1−14C〕−ステアロイルCoA、〔3H〕コレステロール、及び〔1−14C〕オレオイルCoAはアメリカン・レイディオラベルド・ケミカルズ,インコーポレイテッド(セントルイス,ミズーリ)から購入された。インモビロン−Pトランスファー膜はミリポア(ダンドース,マサチューセッツ)からであった。EDLウエスタンブロット検出キットはエイマシャム−ファーマシア・バイオテック,インコーポレイテッド(ピスケータウェイ,ニュージャージー)からであった。LT−1形質移入試薬はパンベラ(マジソン,ウイスコンシン)からであった。他のすべての化学品はシグマ(セントルイス,ミズーリ)から購入された。ラット肝臓ミクロソームSCDはユニバーシティ・オブ・コネティカット・ヘルスセンターのジュリス・オゾールス博士から提供された。pcDNA3−1発現ベクターSCD1はアイオワ・ステート・ユニバーシティのトラビス・ナイト博士により提供された。
【0186】
脂質分析
全脂質はブライおよびダイア−(E.G.ブライおよびW.J.ダイア−,(1959年)カナディアン・ジャーナル・オブ・バイオケミカルズ・アンド・フィジオロジー,37巻,911−917ページ)の方法に基づいて肝臓と血漿から抽出され、リン脂質、遊離コレステロール、トリグリセリドおよびコレステロールエステルはシリカゲルTLCで分離された。石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸(80:30:1)は現象液として使用された。スポットは95%エタノール内での0.2%、2′、7′−ジクロロフルオレセインで、または、8%リン酸内での10%硫酸銅により視覚化された。リン脂質、コレステロールエステルおよびトリグリセリドスポットはかき落され、1mlの5%塩酸メタノールが加えられ、100℃で1時間加熱された。メチルエステルは内標準としてヘプタデカン酸コレステロールを用いて気液クロマトグラフィーにより分析された(K.N.リー,M.W.パリザ,J.M.ヌタンビ(1998年)バイオケミカルズ,バイオフィジックス,リサーチ・コミュニケーション,248巻,817−821ページ;M.宮崎,M.Z.ファン,N.竹村,S.渡辺,H.奥山(1998年)脂質33巻,655−661ページ)。肝臓と血漿の遊離コレステロール・コレステロールエステルおよびトリグリセリド容量は酵素検定で測定された。(シグマ,セントルイス,ミズーリ)およびワコー・ケミカルズ,日本)。
【0187】
血漿リポタンパク質分析
マウスは最小4時間餌を与えられず炭酸ガス窒息または頸部脱臼で犠牲にされた。血液が直接心臓穿刺で無菌で収集され、血漿を集めるために遠心(13,000×g、5分、4℃)された。リポタンパク質はスーパーロズ6HR 10/30 FPLCカラム(ファーマシア)上で分画された。血漿はPBSで1:1に希釈され、(カメオ 3AS 注射器フィルターで)濾過され、1mMのEDTAおよび0.02%のNaN3を含むPBSで平衡化されたカラムに注入された。100μlの血漿の等量がカラムに注入された。流速は0.3ml/分で一定に設定された。500μlの分画が収集され、全グリセリド測定(シグマ)に使用された。報告された値は分画当りの全トリグリセリド質量であると報告された。リポタンパク質の同定はLDLに対しては抗ApoB免疫反応を、またHDLには抗ApoA1免疫反応を利用して確認された。
【0188】
(実施例2)
ヒトにおける18:1/18:0FFA比とTG/HDL水準の間の有意な相関の立証
本実施例はヒトにおけるデルタ−9デサチュラーゼ活性がトリグリセリド(VLDL)の血清水準と直接、または血清HDL水準および全血清コレステロールとは逆に相関することを、初めて立証する。
【0189】
実験のデザイン
全体で97個体からの血漿が脂肪酸容量をガスクロマトグラフィー(GC)で分析された。全遊離脂肪酸容量(FFA)は測定され、オレイン酸エステルとステアリン酸エステルとの比(18:1/18:0)とパルミトレイン酸エステルとパルミチン酸エステルとの比(16:1/16:0)が計算され、前記の通り脱飽和指標として定義された。我々はこれらの比と、3個の臨床インジケータ:血漿TG(トリグリセリド)水準、血漿HDL(高密度リポタンパク質)水準および全血漿コレステロールとの間の関係を見出するように求めた。
【0190】
患者のサンプル
患者のサンプルはHDLによる表現型多様性を最大にするように選択された。我々のコホート内では21個の個体が高HDL表現型(年齢と性で>第90百分位数)を示し、一方6個はABCA1遺伝子での突然変異により低HDL表現型を示した。33個体は正常HDLパラメーター(年齢と性で<第90および>第5百分位数)の範囲内にある。
【0191】
我々は更に、高TGおよびまたは高コレステロールを持つ家族性混合型高脂血症(FCHL)の9個体、ならびに正常TG水準の16対照個体を含めてTG水準による我々のサンプルを多様化するように努めた。
【0192】
ある場合には、同一家族からの複数個体が試験された。ABCA1突然変異を持つ6個体の内5個体が同一家族(NL−020)の一部であった。複数個体は更にABCA1に遺伝子結合されない低HDL表現型を分離している他の系統から試験された。このカテゴリーでは、影響された2個の個体がNL−008から試験され、一方4個の影響された個体はNL−001から試験された。低HDL表現型を持つ残り6個体は相互に無関係であり、異なった系統から選ばれた。高HDLを持つこれらの個体の内、7個体は相互に無関係であった。これら個体で観察された高HDLが家族の構成員で明白な遺伝子的基礎を持つかどうかについては未だ明らかではない。残る高HDL表現型の14個体の内、6個体は家族HA−1からのものであり、8個体は別の家族HA−3からである。低HDLと高HDL両方のものに関連する未影響個体も試験された。
【0193】
我々のコホートはTGおよびHDL水準で広い変化を示す。一般に低HDLの個体は高TG水準を持ち、また高TG水準のものは低HDL水準を持つ傾向がある。TGとHDLの間のこの関係はこれまでに文献で記載されている(デービス他,1980年)。
【0194】
脂肪酸エステルの分析は以下のように測定された。患者のサンプルからの細胞は冷却食塩加リン酸緩衝液で2度洗浄され、全細胞脂質は3回CHCl3/MeOH(2:1容量/容量)で抽出された。3個の脂質抽出物はスクリューキャップ付きガラス管で混合され、熱ブロックで40℃でN2ガスの下で乾燥され、トルエンで再懸濁された。脂肪酸メチルにエステルはBCl3/MeOH(オールテック,ディアフィールド,イリノイ)から産生され、ヘキサンで抽出され、乾燥され、またヘキサンで再懸濁された。脂肪酸メチルエステルは7683オートインジェクターと275℃に設定された水素炎イオン化検出器に接続されたHP−5カラム(30′ 0.25mm、0.25μmフィルム厚)とを備えたヒューレットパッカード6890ガスクロマトグラフを用いて同定された。インジェクターは250℃で維持された。カラム温度は注入後180℃で2分維持され、200℃まで8℃/分で上昇され、200℃で15分維持され、次いで250℃まで8℃/分で上昇された。これらの条件の下で、Δ9−16:1、16:0、Δ9−18:1および18:0メチルエステルがそれぞれ9.2分、9.7分、15.3分および16.4分に溶離した。リー他(1998年),Biochem,Biophys,Res,Commun.248巻:817−821ページ,宮崎他,(1998年)脂質,33巻,655−661ページ;M.宮崎,Y.C.キム,M.P.グレー−ケラー,A.D.アッティー,J.M.ヌタンビ(2000年),生物化学ジャーナル,275巻(39号):30132−8ページ参照。
【0195】
結果
線形退縮分析が全ヒトデータセットを用いて行われた。18:1/18:0の比はTG水準(r2=0.39、p<0.0001)に有意の関係を示し(図5a)、同じくHDL水準(r2=0.12、p=0.0006)に有意の相関を示した(図5b)。
【0196】
16:1/16:0血漿脂肪酸比は同じ方法で測定されたが、その結果は目覚ましいものではなかった。16:1/16:0の相対水準の血漿TG水準との間の弱い関係が観察されたが(r2=0.05、p=0.03)(図6)、一方16:1/16:0比とHDL水準との関係は有意に達しなかった(図示していない)。18:1/18:0比とは逆に、16:1/16:0比は全コレステロール水準において分散の部分を説明するものではなかった(r2=0.06、p=0.02)(図示していない)。
【0197】
18:1/18:0比全体は全血漿脂肪酸容量(p=0.005)の分散の18%の割合を占めるが、16:1/16:0比はFCHLを持つ個体とその関連する対照が分析から除外された時にはこの値(p=0.02)での分散の8%の割合を占めていた(図示していない)。
【0198】
最終に体重量指数(Body Mass Index,BMI)が利用できる我々のサンプルの部分については、我々は18:1/18:0比とBMIの正の相関を測定した(r2=0.13、p=0.00)(データは図示していない)。
【0199】
SCD活性(18:1/18:0比で測定されるもの)とTG水準の間の関係が観察された異常脂血症の主たる原因とは独立していたかどうかを決定するために、HDL水準に基づいてサンプルが層に配列された。
【0200】
高HDLのヒトで18:1/18:0とTGの間に正の相関が観察された。
【0201】
高HDL表現型(>第90百分位数)を持つ個体の分析は18:1/18:0比とTG水準の間で有意の関係を示した(r2=0.40、p<0.005)(図7)。このグループでの18:1/18:0比とHDL水準の間の関係は有意に達しなかった(データは示されていない)。16:1/16:0比は我々のコホートのサブセットにおいて全コレステロールTGあるいはHDL水準での分散の有意の割合を占めることはなかった。
【0202】
18:1/18:0指数をTG水準の間のより強い関係が遺伝子的に均質なバックグラウンドで明らかであるかどうかを決定するために、HA−1とHA−3家族は別個に分析された。影響されるのと影響されない家族構成員両方が分析に含まれていた。両家族で18:1/18:0とTG水準の間の類似の関係が観察された(HA−1:r2=0.36、p=0.005(図8a)、HA−3:r2=0.32、p=0.009(図示されていない))。これらの関係の強さは全コホートで観察したものと類似していた。18:1/18:0比は更にHA−1のHDL水準と相関していたが、この関係はHA−3での有意水準には到達しなかった(HA−1:r2=0.32、p=0.009(図8b)、HA−3:r2=0.10、p=0.22(図示されていない))。
【0203】
正の相関はまた低HDLのヒトで18:1/18:0とTGの間で観察された。低HDLの個体すべて(<第5百分位数)がグループとして分析された時、18:1/18:0比とTG水準の間で有意の関係が観察された(r2=0.49、p=0.0009)(図9)。高HDL患者サブセットの我々の分析で観察されたように、18:1/18:0比とHDLの間の関係は低HDLグループでは有意に出会うことはなかった(データは示されていない)。加えて、16:1/16:0比がHDL,TGおよび全コレステロール値で退縮した時には、有意の結果は認められなかった。
【0204】
未知の遺伝子病因の低HDL表現型を分離した家族NL−001、およびABCA1突然変異を分離した家族NL−0020の分析は、各家族での影響を受ける個体が考察された時に脂肪酸比と脂質パラメーターの間で前記の認められた関係に向う傾向があった。しかしこれらの結果は、各場合で分析された個体の数が少なかったために(NL−001:図10a,bおよびNL0020:図11a,b)、統計的有意水準には到達しなかった。一般的な傾向としては年配のタンジーa疾患者でより高い18:1/18:0比に向かうことが認められた。これは18:1/18:0比に対する年齢依存性作用がHA−1およびHA−3家族のいずれにも、また全コホートに対しても認められなかったけれども(図11では示されていない)、疾病とは無関係の作用でそうなったであろう。
【0205】
図12は家族性混合型高脂血症を持つヒトでの18:1/18:0比とTG水準(r2=0.56、p=0.03)(図12a)、HDL水準(r2=0.64、p=0.009)(図12b)および全コレステロール水準(r2=0.50、p=0.03)の間の関係を示す。
【0206】
我々の分析は、16:1/16:0および18:1/18:0脱飽和指数で測定されたように、SCD機能が血漿TG水準と正に、また血漿HDL水準とは逆に相関することを初めてヒトで立証したことである。重要なことは、高または低トリグリセリド症に横たわる原因とは無関係にこの相関を観察することであり、これはSCD活性とTG水準の間の関係が一般化した作用であることを示唆している。従ってヒトにおけるSCD活性の阻害は、TG上昇の主たる原因とは独立して、減少した血清TG(またはVLDL)水準、増加した全コレステロール水準、増加したHDL水準、および減少した体重量指数と結合している。重要なことに、SCD1阻害薬は患者で組合せ治療として使用でき、またFCHLを処置するのにも使用することができた。
【0207】
要約すると、一緒に取り上げた場合、実施例1と2は哺乳類でのSCD1活性とTG水準の間の正の相関、同じくヒトにおけるSCD1活性とHDLの間の逆の相関を初めて確立する。アセビアマウスとSCD1ノックアウトマウスについての我々の分析はSCD1の脱飽和指数への主たる貢献者としての密接な関係が決定的であることを示す。我々はこの指数を我々のヒト研究でのSCD1活性の代理役として使用してきた。かくしてヒトを含む哺乳類でのSCD1機能の阻害薬はTG水準を低下させHDL水準を高めるものと考えられる。
【0208】
(実施例3)
異常脂血症のマウスモデルでの血漿脂肪酸分析
18:1/18:0過飽和指数とTG水準の間のヒトで観察された前に記載の関係を確認するために、我々はヒト疾病FCHLのマウスモデルで血漿脂肪酸分析を行った。マウス高脂血系統(「ハイリップ」)では、TG水準は野生型に比べて高められる。
【0209】
高脂血症マウスHcB−19は18:1/18:0脱飽和指数の上昇を示した。家族性混合型高脂血症のこのマウスモデルはTGコレステロールの上昇水準、ならびにVLDLとapoBの分泌の増加も示す(カステラーニ他,突然変異マウス系統での混合型高脂血症の遺伝子のマッピング:Nat Genet:18巻(4号)374−377ページ(1998年))。
【0210】
血漿脂肪酸分析は、これらの動物が親系統の影響されない対照と比較した時に、18:1/18:0比を著しく上昇させたことを示した(図13)。しかしHcB−19動物は対照と比較した時に16:1/16:0の著しい上昇を示さなかった。従って我々はFCHLのこの動物モデルで18:1/18:0脱飽和指数とTG水準の間での正の相関を観察する。
【0211】
(実施例4)
薬剤スクリーニング標的としてのSCD1の転写調節遺伝子とその用途
本実施例はヒトSCD1の完全なゲノムプロモーター配列を初めて報告する。このプロモーターはヒトでのSCD1発現を調節し制御する調節エレメントを同定するためにここで使用され、またヒトでのSCD1の発現を調節するために小分子介入の適切な標的である調節タンパク質を同定する。
【0212】
ヒトSCD1プロモーター配列は配列識別番号1で設定される。この配列はジェンバンクに的確に注釈を付されていないので、数多くの記録で5′UTRとして報告されている。
【0213】
図14はマウスSCD1とヒトSCD1のプロモーターおよび5′−フランキング領域の相同領域で調節配列と結合部位の位置を図示する。上部目盛りは転写開始部位を示す。重要なプロモーター配列エレメントが示される。
【0214】
ヒトSCD1プロモーター構造はマウスSCD1アイソフォームのそれに類似しており、いくつかの転写因子の結合のための保存調節配列を含み、この転写因子はマウスSCD遺伝子の転写をトランス活性化することを示してきたステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、CCAATエンハンサー結合タンパク質アルファ(C/EBPa)および核因子1(NF−1)を含む。コレステロールおよび多価不飽和脂肪酸(PUFAs)はHepG2細胞内に遷移的に形質移入された時にSCDプロモーター−ルシフェラーゼ活性を減少させた。レポーター構築物でのプロモーター活性の減少は内因性SCD mRNAおよびタンパク質水準での減少を相関した。SREBPの発現ベクターと共にヒトSCDプロモーター−ルシフェラーゼ遺伝子のHepG2細胞への遷移的同時形質移入は、SREBPがヒトSCDプロモーターをトランス活性化することを明らかにした。我々の研究は、マウスSCD1遺伝子と同じように、ヒトSCD遺伝子が遺伝子転写水準で多価不飽和脂肪酸とコレステロールにより調節され、またSREBPがこの遺伝子の転写活性化で役割を果すことを示している。
【0215】
キメラプロモータールシフェラーゼプラスミドの構築
放射性プローブと7個のプラークが単離されたので、バクテリオファージ1 EMBL3でのヒト胎盤ゲノムライブラリーがマウスpC3 cDNAの2.0キロベースPstI挿入片でスクリーニングされた(J.M.ヌタンビ,S.A.バーロー,K.H.ケストナー,R.J.クリスティー,E.シブリー,T.J.ケリー,ジュニア,M.D.レーン,1988年,3T3−L1前駆脂肪細胞での分化誘導遺伝子発現:分化的に発現された遺伝子エンコーディングステアロイルCoAデサチュラーゼの特徴付け,J.Biol.Chem.263巻:17291−17300ページ)。これらのプラークの2個は同質性に精製され、DNAが単離され、HSCD1とHSCD3と命名された。公開されたヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ遺伝子のcDNAの第1エキソンに一致する配列に基づくDNAプライマー(L.ザン,G.E.ラン,S.パリムー,K.ステン,S.M.プルーティー,1999年,ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ:タンデムポリアデニル化部位の使用による単一遺伝子から生成される代替転写物。Biochem.J.340巻:255−264ページ)は合成され、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター法により、2個のファージクローンを配列するために使用された。予備配列が生成されプライマー上流
5′NNNNGGTACCTTNNGAAAAGAACAGCGCCC3′ 配列識別番号5
および下流
5′NNNNAGATCTGTGCGTGGAGGTCCCCG3′ 配列識別番号6
が転写開始部位のプロモーター領域上流の約540塩基を増幅するために設計された。これらのプライマーは挿入制限酵素部位(下線部)、上流にはKpnI、下流にはBgIIIを、制限酵素消化を可能にする4個の張出し領域と共に含んでいた。PCRは次いでファージクローンで行われ増幅500塩基対断片は1%アガロースゲルから単離された。
【0216】
増幅断片はKpnIとBgIIIで消化され、次いでルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むpGL3塩基性ベクター(プロメガ)のKpnIとBgIII部位にクローンされ、DH5コンピテント大腸菌細胞内に形質転換された。プラスミドDNAはキアージェンカラムで精製され、多重クローニング部位内で但し挿入DNAに隣接するDNA配列に一致するプライマーとして使用するジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター法により配列された。生成されたSCDプロモータールシフェラーゼ遺伝子構築物はpSCD−500と名付けられた。
【0217】
RNAの単離と分析
全RNAは酸グアニジニウム−フェノール−クロロホルム抽出法を用いてHepG2細胞から単離された。全RNAの20マイクログラムが0.8%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲル電気泳動で分離されナイロン膜に移された。膜は以下のPCRにより生成された32P標識ヒトSCD cDNAプローブでハイブリッド形成された。pAL15プローブは等量負荷の対照として使用された。
【0218】
イムノブロッティング
細胞抽出物はハイネマン他(17)により記載されたように、各種の脂肪酸またはコレステロールで処置されたHepG2細胞から調製された。各分画からの同量のタンパク質(60μg)は10%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を受け、4℃でインモビロン−P移動膜に移された。TBS緩衝液(pH8.0)の10%の脂肪ミルクと0.5%トゥイーンで4℃で一晩遮断の後、膜は洗浄され1次抗体としてのラビット抗ラットSCDおよび2次抗体としてのヤギ抗ラビットIgG−HRP複合体で保温された。SCDタンパク質の視覚化はECLウエスタンブロット検出キットで行われた。
【0219】
hSCD1の発現に対するコレステロール、多価不飽和脂肪酸とマラキドン酸の作用
細胞培養とDNA形質移入
HepG2細胞は10%胎仔ウシ血清と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充された低グルコースDMEMで成長し、37℃、5%炭酸ガスの加熱培養器で維持された。細胞は約12−16時間で40−70%密集を生じるように6cm皿に継代指種された。細胞は次いでLT−1形質移入試薬(パンベラ)を用いてpSCD−500の平板当り5μGのプラスミドDNAまたはベーシックPGL3レポーター同じくpRL−TK内部対照(プロメガ)で形質移入された。48時間後、細胞はPBSで洗浄され、次いで図と記号一覧で示されたように、インスリン、デキサメタゾン、および適当な濃度のアルブミン接合脂肪酸を含む脂肪酸培地のウイリアムズ・イー培地で処理された。細胞は更に(対照として)エタノールのみ、またはコレステロール(10μg/mL)およびエタノールに溶解された25−OHコレステロール(1μg/mL)で処理された。追加の24時間後、抽出物が調製されルシフェラーゼ活性を検定された。非形質移入細胞はブランクとして使用され、レニラルシフェラーゼが内部対照として使用された。細胞抽出物はローリーに従ってタンパク質を検定され、すべての結果はタンパク質濃度とレニラルシフェラーゼで標準化された。各実験は少なくとも3回繰返され、すべてのデータは平均値±SEMで表された。
【0220】
結果
SCD1遺伝子の増幅プロモーター領域の配列は配列識別番号1で示される。
【0221】
マウスSCD1プロモーター配列と比較した時、マウスSCD1プロモーターで同定されたいくつかの機能的調節配列がヌクレオチド水準で完全に、またその間隔あけとの関連で2個の遺伝子の近位プロモーター内で保存されることが発見された(図14)。いずれもTTAATA相同体であるC/EBPaとNF−1はマウスSCD1とヒトプロモーター両方で同じ位置にある。更に上流にはステロール調節エレメント(SRE)と、マウスSCD1およびSCD2プロモーターの多価不飽和脂肪酸応答エレメント(PUFA−RE)に見出される2個のCCAATボックスモティーフがある。これらエレメントの間隔あけは3個のプロモーターで保存される。
【0222】
我々はヒト遺伝子発現が更にコレステロールと多価不飽和脂肪酸により退縮されたかどうかを試験した。我々がこれまでに記載したように、ヒトHepG2細胞は培養され、100μMアラキドン酸、DHAあるいは10μg/mlのコレステロールおよび1μg/nlの25−ヒドロキシコレステロール・コレステロールで処置された。全mRNAは単離され、ヒトcDNAに一致し公開ヒトSCD cDNA配列に基づくプライマーを用いるPCR法で生成されたプローブを用いたノーザンブロット分析を受けた。図15は、AA、DHAおよびコレステロールが用量依存洋式でヒトSCD mRNA発現を減少させたことを示す。PUFAsとコレステロールで処置されたタンパク質抽出物のウエスタンブロットは、PUFAsとコレステロールが同じくSCDタンパク質の水準を減少させたことを示した(データは示されていない)。
【0223】
ヒトSCDプロモーターの活性と続いてSREBPの可能な作用を評価するためにヒトルシフェラーゼプロモーター構築物がSREBP1aを含む発現ベクターと共にHepG2細胞に同時形質移入された。72時間後、形質移入細胞の抽出物はルシフェラーゼ活性を検定された。データは内部対照としてレニラルシフェラーゼを発現する細胞抽出物に標準化された。図で示されるように、SREBPは40倍までの増加を生じる用量依存様式でプロモーターにトランス作用する。この実験はSREBPがヒトSCD遺伝子を調節する役割を調節することを示している。
【0224】
公開された報告は、SREBPの成熟形態が脂質生合成遺伝子を活性化することに加えて、マウスSCD1を含む脂質生合成遺伝子のPUFAとコレステロール抑制を仲介することを示した。SCDプロモーターの活性に対する成熟SREBP−1aとPUFAsの調節作用を観察するために、HepG2肝細胞は前に記載のとおりヒトSCDプロモーターを含む20ng(6cm皿当り)のプラスミドDNAで遷移的に同時形質移入されたが、今回は形質移入は内因性SREBPの成熟を阻害し、かくして細胞内に存在する内因性SREBPの成熟形態が殆んどなかったようにするコレステロールの存在下で行われた。形質移入の後、細胞は次いでアラキドン酸、アルブミン複合体としてのEPAとDHAで処置され、次いでルシフェラーゼ活性がルミノメーターを用いて検定された。もしSREBPがヒトSCD遺伝子のPUFA抑制を仲介するならば、SCDプロモーター活性は形質移入細胞のPUFAでの処置に対し減少しないであろう。しかしAA、EPAまたはDHAの追加はほんの僅かばかりの弱毒化でSCDプロモーター活性を抑制し続けた(データは示されていない)。かくしてSREBP成熟化はSCD遺伝子転写のPUFA制御を説明するのに必要な選択性を示してはいないように見え、それはPUFAがヒト遺伝子転写を抑制するのにSREBPに加えて異なるタンパク質を利用していることを示唆している。
【0225】
これらの結果は、hSCD1がSREBP、NF−Y、C/EBPアルファ、PUFA−REおよび代替タンパク質ならびに転写調節物質により転写調節されることを立証している。これらのタンパク質それぞれ一つは従って細胞でのSCD1発現を調節する化合物を同定するのに魅力的な薬剤スクリーニング標的となり、これにより本発明で教示される疾病、疾患および異常を処置するのに有用なものとなる。
【0226】
(実施例5)
SCDノックアウトは皮膚と眼の異常を示す
SCDの生理学的機能を調べるために、我々はSCD1ノックアウト(SCD1−/−)マウスを創り出した。C16:1の水準はSCD1−/−マウスの組織で劇的に減少したが、SCD1のみが正常に発現されSCD2は発現されない場合には、C18:1での劇的な減少が肝臓のみで認められたことを我々は発見した。SCD1とSCD2の両方が発現される眼瞼、脂肪、および皮膚などの組織において、18:1はほんの僅かばかり減少した。SCD1を発現しない脳と眼球の一価不飽和脂肪酸水準は変化しなかった。SCD−/−マウスの肝臓と皮膚はコレステロールエステルとトリグリセリドを欠いており、一方更に眼瞼は主としてC20:1の長領一価不飽和脂肪酸の眼瞼特異的ワックスエステルを欠いていた。加えてSCD−/−マウスの眼瞼は高い水準の遊離コレステロールを有していた。SCDマウスは萎縮性皮脂腺の皮膚異常萎縮性マイボーム腺の狭眼裂を示し、後者はヒトでの眼乾燥症候群に類似していた。これらの結果は、SCD1の欠損が、組織コレステロールエステルとトリグリセリドの成分としての一価不飽和脂肪酸の合成たけでなく、眼瞼のワックスエステルなどのような他の脂質の合成にも影響を与えることを示している。
【0227】
SCD−/−ノックアウトマウスの肉眼病理学と組織検査
SCDマウスは健康で繁殖力もあったが皮膚異常を呈した。これらの異常はほぼ離乳齢(3−4週)に乾燥皮膚、細かい表皮のはがれ、また脱毛となって開始し、成長するにつれてよりひどくなった。加えて、マウスは狭眼裂を呈示した。皮膚と眼瞼の病理学的検査は、野生型マウスが著しくまた十分に分化した皮膚腺とマイボーム腺を持つことを示した(データは示されていない)。一方SCD−/−の皮膚と眼瞼は皮脂腺とマイボーム腺で萎縮生腺 細胞を見せた(データは示されていない)。角膜と網膜では異常は見られなかった(データは示されていない)。
【0228】
SCD−/−マウスは眼瞼と皮膚の自然脂質が低い水準にある
我々は眼瞼にある遊離コレステロール(FC)とコレステロールエステル(CE)、トリグリセリドとワックスエステルの容量を測定した。SCD1−/−マウスの眼瞼から抽出された脂質の薄層クロマトグラフィーは、野生型マウスの眼瞼から抽出された脂質と比べると、コレステロールエステルとトリグリセリドおよびワックスエステルの水準が著しく減少したことを示した(図16A)。表3はSCD−/−マウスと野生型マウスの間の眼瞼脂質容量を比較する。
【0229】
【表3】
【0230】
表の各値は平均値±標準偏差を示す(n=4)。すべてのマウスは6週齢で標準規定食を与えられた。−/−欄の太字の値は野生型マウスとSCD−/−マウスの間の統計的有意性(P<0.01)を示している。
【0231】
表3で示されるように、また表3は、SCD1−/−マウスの眼瞼と皮膚のコレステロール容量が74%減少したが、一方遊離コレステロールは1.75倍に増加したことを示している。同じようにSCD−/−の肝臓ではCEとトリグリセリドの減少があったが、肝臓での遊離コレステロールでは差は見られなかった(データは示されていない)。SCD−/−マウスの眼瞼でのトリグリセリドとワックスエステル量はそれぞれ60%と75%減少した。
【0232】
図16Bは、ヘキサン/ベンゼン(45:65)が異なったワックスエステルを溶解するのに使用されたがトリエステルが主要なワックスエステルであることを示すということにより成るニコレーズ他に基づく異なる溶媒の使用を示す(N.ニコレーズおよびE.C.サントス(1985年)。去勢雄牛とヒトのマイボーム腺の脂質のジエステルとトリエステル。脂質.20巻.454−467ページ)。これらのトリエステルおよびジエステルはSCD−/−マウスで72%減少した。眼瞼のワックストリエステル量はSCD−/−マウスで72%減少した。眼瞼と同じように、SCD−/−マウスの皮膚のコレステロールエステルとトリグリセリド量はそれぞれ43%と53%減少した一方、遊離コレステロールは、1.9倍増加した(表3および図16AとB)。最後に、各分画での一価不飽和脂肪酸量は飽和脂肪酸での対応する増加と共にSCD1−/−マウスで劇的に減少した(データは示されていない)。
【0233】
規定食18:1はSCD−/−マウスの皮膚と眼瞼の異常を回復しなかった
オレイン酸エステルは規定食でもっとも豊富な脂肪酸の一つである。コレステロールエステルとトリグリセリドに使用される細胞一価不飽和脂肪酸は新規に脂肪酸シンターゼとSCDによるか、または規定食から間接的に外因性オレイン酸エステルの取り込みにより合成することができる。規定食オレイン酸エステルが外因性合成オレイン酸エステルを置換できまた毛、皮膚および眼の異常を修復できるかどうかを決定するために、我々はトリオレインとして高水準の18:1n−9(全脂肪の50%)で半精製マウス規定食を補充し、次いでこれらの規定食を2週間SCD−/−マウスに与えた。しかし高一価不飽和脂肪酸を含むこの規定食でもこれらの異常は修復されなかった。これは、SCD1特異的阻害薬が規定食にも拘らずTG水準を減少するように作用したことを示唆している。代わりに高18:1n:−9を与えられたSCD−/−マウスの目瞼でのコレステロールエステル、ワックスエステルおよびトリグリセリドの水準はSCD+/+マウスのそれよりもいまだに低かった(データは示されていない)が、これは外因的に合成された一価不飽和脂肪酸がマイボーム腺分泌脂質(mebum)のコレステロールエステル、トリグリセリドおよびワックスエステルの合成に必要とされることを示唆している。
【0234】
本研究では、我々はSCD1ヌルマウスを立証し、SCD欠損が基質選択性および組織選択性発現を起こしたことを示した。SCD−/−マウスのパルミトオレイン酸エステルの水準は、野生型マウスでSCD1を発現した肝臓を含むすべての組織で50%以上減少する。一方オレイン酸エステル水準の交替は組織特異的であった。
【0235】
SCD1の自然突然変異を持つアセビアマウスに類似して、SCD−/−マウスは完全浸透度で毛髪成長、皮膚および眼の異常を示した。これらの表現型は離乳齢から顕著であった。皮膚と眼瞼の組織検査は、SCD1が豊富に発現される皮膚の萎縮性皮脂腺および眼瞼の端のマイボーム腺が皮膚分泌脂質およびマイボーム分離脂質、それぞれ所謂セーバム(sebum)およびメーバム(mebum)を欠いていたことを示した。実際に我々はトリグリセリド、セーバムおよびメーバムの成分として知られるいくつかの種類のワックスエステルとコレステロールエステルを含む中性脂質がSCD−/−マウスの眼瞼でまた表皮から著しく減少したことを発見した(データは示されていない)。
【0236】
我々がSCD−/−マウスで記載した眼瞼の異常に類似した慢性眼瞼炎は、ヒトにおけるもっとも一般的な失望させる疾病の一つである。シャインとマッカレー(W.E.シャインおよびJ.P.マッカレー(1998年),マイボーム分泌極性脂質異常に関連する乾性角結膜炎、Arch Ophthalmol.116巻849−852ページ)は、慢性眼瞼炎がメーバムの脂質異常に帰因することを報告している。しかしこれら脂質異常の性質は詳細には特徴付けられなかった。しかし彼等はマイボーム角結膜炎の患者からのメーバムがSCDの主要産物であるオレイン酸の水準を減少させ、一方マイボーム脂漏症の患者からのものは18:1の水準を増加させたことを発見した。我々の今回の研究と共にこれらの観察は、SCD活性の交替が慢性眼瞼炎に関係し得ることを示唆している。かくしてSCDは眼の疾病の処置のための治療薬および予防薬の開発のために潜在的な目標となる。
【0237】
【0238】
引用文献一覧
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【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】SCD1ヌルマウス生成を示す図。(A)SCD1の標的化戦略。Scd1遺伝子座を取り巻くゲノム遺伝子座の部分地図が示される。相関的組換えはneo7遺伝子によりエキソン1−6の置換に帰着した。遺伝子標的事象はプローブAまたはBを用いるサザンブロット分析によりもしくはPCR分析により実証された。(B)SCD−/−マウスを論証するPCR分析のヘテロ接合体をつくる際に、野生型、ヘテロ接合体およびホモ接合体がメンデル方式で生まれた(+/+:+/−:−/−=21:43:20 X2=0.395)。(C)ノーザンブロット分析。20μgの全RNAが肝臓から単離されたノーザンブロット分析を受けた。ブロットはマウスSCD1と2個のcDNA断片でプローブされた。(D)肝臓のイムノブロット分析はSCD1−/−マウスで負疫反応性SCDの不在を示したが、SCD1タンパク質は遺伝子用量に依存する様式で野生型およびヘテロ接合体マウス両方からの肝臓組織で検出された。(E)肝臓SCD活性はSCD−/−マウスで廃止された。前に記載のとおり、ヘテロ接合体は野生型およびヌル一腹子と比較した時中間表現型を提示する。酵素活性は分当りタンパク質のミリグラム当り脱飽和された基質のナノモルで表される。データは平均値±標準偏差で示される(n=3)。
【図2】SCD1ノックアウト雄マウスとアセビア雄マウスでの血漿リポタンパク質プロファイルを示す図。上部の2個のパネルはリポタンパク質分画のトリグリセリド量を示し、下部の2個のパネルはリボタンパク質分画のコレステロール量を示す。
【図3】アセビア(SCD1−/−)およびSCD1+/−マウスでのVLDL−トリグリセリド水準を示す図。血漿リポタンパク質は高性能液体クロマトグラフィーで分離され、マウス(n=3)の各種濃度の分画内でリポタンパク質の間のトリグリセリドの分布が測定された。SCD−/−(白円部)、SCD1+/1(黒円部)。VLDL、LDLおよびHDLのリポタンパク質の最大量が示される。
【図4】マウス血漿での飽和脂質酸に対する一価不飽和脂肪酸の比(脱飽和指数)はSCD活性1の水準に直接比例する方式で減少することを示す図。SCD1ノックアウトマウスとアセビアマウスのそれらの関連する対照との比較。
【図5】ヒトデータセットを使用する線形退縮分析を示す図。18:1/18:0の比はTG水準との有意な関係(r2=0.39、p<0.0001)(パネルA)、同じくHDL水準との有意な相関(r2=0.12、p=0.0006)(パネルB)を示した。実験の詳細は更に実施例2で記載される。
【図6】血漿TG水準に対する16:1/16:0の相対水準の間の弱い関係指示する線形退縮分析を示す図(r2=0.05、p=0.03)。実験の詳細は実施例2で示される。
【図7】高HDL表現型(>第90百分位数)を持つ個体の線形退縮分析を示す図。これらの個体は18:1/18:0比とTG水準(r2=0.40、p<0.005)の間の有意な関係を示した。
【図8】18:1/18:0とTG水準の間の関係が高HDL表現型を分離する実験(HA−1)で観察されたことを示す図。線形退縮分析を用いて、18:1/18:0とTGの間の有意な関係が観察された(r2=0.36、p=0.005(パネルA))。パネルBはこの家族で18:1/18:0比とHDL水準の間の有意な関係を示す(r2=0.32、p=0.009)。
【図9】低HDL(<第5百分位数)の人達のみが考慮される18:1/18:0比とTG水準(r2=0.49、p=0.0009)の間で観察された関係を示す図。
【図10】未知の遺伝子病因の低HDL表現型を分離し図5−9で観察される関係に向う傾向のある家族(NL−001)の分析を示す図。
【図11】ABCA1突然変異を分離し図5−9で認められた関係に向う傾向のある家族NL−0020の分析を示す図。
【図12】家族性混合型高脂血症(FCHL)を持つ9人での18:1/18:0比とTG水準(r2=0.56、p=0.02)(パネルA)、HDL水準(r2=0.64、p=0.0095)(パネルB)および全コレステロール水準、(r2=0.50、p=0.03)(パネルC)の間の関係を示す血漿脂肪酸分析を示す図。
【図13】親系統(C3H)の影響されない対照と比較した時の高脂血症マウス(HcB−19)の有意に上昇した18:1/18:0比を示す血漿脂肪酸分析を示す図。
【図14】マウスSCD1とヒトSCD1プロモーターおよび5′フランキング領域の相同領域での調節配列と結合部位の位置を示す図。上部のスケールは転写開始部位に関連する位置を示す。重要なプロモーター配列のエレメントが指示される。
【図15】指示されたようにある範囲の用量のアラキドン酸、DHAまたは10μg/mlコレステロールあるいはEPAで培養され処置されたヒトHepG2細胞を示す図。
【図16】野生型、ヘテロ接合体およびSCD−/−マウスの皮膚(AとB)および眼瞼(CとD)からの脂質抽出物のTLCを示す図。全脂質は野生型、ヘテロ接合体およびSCD−/−マウスから抽出された。脂質抽出物はプールされ高性能TLC(HPTLC、AおよびC;ヘキサンエーテル/エーテル/酢酸=90:25:1、BおよびD;ベンゼン:ヘキサン;65:35)で分析された。同量の脂質抽出物(眼瞼の0.5mgのもの)は各レーンで提示された。各レーンは2匹のマウスの眼瞼からの脂質を表す。
【図17】ステアリン酸エステルから水への3Hの移動を計量することでのSCD1デサチュラーゼ活性の検定を示す図。図は3H水の室温での産生の時間コースを示す。野生型肝臓からのミクロソームがこの実験で使用された。これらの条件の下でのSCD1活性の代謝回転数は2nモル/分/タンパク質mgと推定され、これは37℃で観察されたものの約半分である。
【図18】検定がステアロイルCoAのSCD1依存脱飽和を特異的に監視する証拠を示す図。均質化されその部分がミクロソーム精製に使用される高炭水化物無脂肪規定食(これは50倍ものSCD1活性を肝臓に誘導する)を3日続けた後の野生型とSCD1ノックアウトマウスから肝臓が集められた。3H水産生は15分RT(室温)でホモジェネートおよびミクロソーム調製物の両方で同じタンパク質濃度で決定され、次いで反応物を酸で急冷し、産物から基質を分離するために炭が使用された。基質の追加の前に酸での試料の急冷は、ブランク、すなわち何らの脱飽和反応なしでバックグラウンド放射能を含む対照を提供する。図はミクロソーム内の脱飽和活性が野生型肝臓のホモジェナートに比べて大いに富化されており、一方−/−SCD1ノックアウトマウスからのミクロソームは殆んど活性を持たないことを示している。「ウインドー」、すなわち本検定でのSCD1依存脱飽和は高度に可視であり、野生型とSCD1ノックアウトミクロソームの間には実に160倍もの差がある。
【図19】3個の既知の脂肪酸でのSCD1の阻害を示す図。野生型マウスからのミクロソームが3個既知のSCD1阻害薬すなわちリノール酸(CLA)、9−チアステアリン酸(9−チア)およびステルクリア酸(SA)の有効性を試験するために使用された。パネルAは遊離脂肪酸として加えられた時に、いずれもSCD1活性を有効に抑制しなかったことを示す。しかしパネルBはもしCoAに予め複合化された場合には(3HステアロイルCoAの追加の前にCoAとATPでミクロソームを保温により行われた場合には)、3個の阻害薬はSCD1の段階的阻害を示し、ステルクリア酸では予備保温条件の活性をほぼ100%抑制した。この実験は、SCD1活性が既知の阻害薬で阻害することができるがそれはCoAとの複合を必要とするように見える。このスクリーニング検定の一つの重要な用途は、CoAとの複合なしでSCD1生物活性の有力な阻害薬である小分子を発見することにある。
【図20】(A)ステアロイルCoA質量がSCD1依存性脱飽和の手段として我々が取り上げようとする3H産生シグナルの反応速度と大きさを限定する実例を示す図。この実験は図17で示されたものを基本的に繰返したものであり、ただ異なる所は30分で追加のステアロイルCoA量/放射性が加えられ、3Hシグナルの第2の指数的産生にしたことであった。これはある量のステアロイルCoAがSCD1触媒化脱飽和で期待される反応を制限するということである。(B)実験が高処理量に適合できる実例を示す図。これまでのすべての実験は全反応量が1.1mlである場合に行われた(ミクロソームを含む反応緩衝液0.2ml、反応を急冷する6%PCA、0.2ml、および未反応基質を沈殿させる10%の活性炭溶液0.7%)。Bで示された実験は全反応量0.31mlで行われた(ミクロソームを持つ反応緩衝液0.1ml、急冷のための60%PCA、0.01mlおよび沈殿のための10%活性炭0.2ml)。
【技術分野】
【0001】
本出願は2000年2月24日受理された合衆国暫定特許出願第60/184,526号、2000年7月31日受理された合衆国暫定特許出願第60/221,697号、および2000年12月15日受理された合衆国暫定特許出願第60/255,771号の優先権を主張し、その開示はここでその全体を引用例として組み込まれている。
【0002】
本発明は一般にステアロイルCoAデサチュラーゼおよびそれと各種のヒト疾病との連係の分野に関する。ステアロイルCoAデサチュラーゼとそれをコードする遺伝子はそのような疾病の処置のための治療薬の同定と開発のために有用である。
【0003】
[発明の背景]
アシルデサチュラーゼ酵素は肝臓での規定食源またはデノボ合成のいずれかより誘導される脂肪酸で二重結合の形成を触媒作用する。哺乳類はΔ9、Δ6、Δ5およびΔ4の位置で二重結合の追加を触媒作用する異なる鎖長特異性の4個のデサチュラーゼを合成する。ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCDs)は飽和脂肪酸のΔ9位置に二重結合を導入する。望ましい基質はパルミトイルCoA(16:0)とステアロイルCoA(18:0)で、それらはそれぞれパルミトレオイルCoA(16:1)とオレオイルCoA(18:1)に転換される。生成する一価脂肪酸はリン脂質、トリグリセリド、およびコレステロールエステルに組み込むための基質となる。
【0004】
数多くの哺乳類SCD遺伝子がクローン化されてきている。例えば2個の遺伝子がラットからクローン化され(SCD1、SCD2)または4個のSCD遺伝子がマウスから単離された(SCD1、2、3、および4)。単一SCD遺伝子、SCD1がヒトで特徴付けられた。
【0005】
SCDの基本的な生化学的役割が1970年代にラットとマウスで明らかにされた(R.ジェフコートおよびA.T.ジェームズ.1984年,エルスビエ・サイエンス,4巻:85−112ページ;R.J.デアントゥエノ.1993年,脂質,28巻(4号)285−290ページ)。一方、本発明以前ではそれがヒト疾病の進行に直接関係することはなかった。非ヒト動物での研究は、異なる種での生化学プロセスで十分に実験された差異の故で、ヒトでのSCDの役割に対する我々の理解をわかりにくくさせた。例えば齧歯目では、脂質とコレステロール代謝はとりわけコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)の不在によりあいまいである(B.フォジャー.他,1999年,生物化学ジャーナル,274巻(52号)36912ページ)。
【0006】
更にマウスとラットの多重SCD遺伝子の存在が疾病進行におけるこれらの遺伝子それぞれの特異的役割を決定するのに更なる複雑さを加える。組織発現プロファイル、基質の特異性、遺伝子調節および酵素の安定性は、SCD遺伝子がそれぞれの疾患で際立った役割を果すことを明らかにする際に重要である。従来の大抵のSCD研究はmRNA水準を測定することにより、またSCD酵素活性の間接測定法として一価不飽和脂肪酸の水準を測定することによりSCD遺伝子の機能を評価する。これら両方の場合、この分析は誤解を招きかねない。後者の方法では、それは特に紛らわしく、血漿脱飽和指数(特異鎖長の飽和脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比)へのSCD1の相対的な寄与を認識することは困難であった。その理由は多重SCD酵素が一価不飽和脂肪酸の産生に貢献するという事実にあった。本発明に先立ち、脱飽和指数に対する多重SCDアイソフォームの相対的寄与は未知であった。要約すると、従来の研究は脱飽和指数で測定されるようにSCDアイソフォームが全デサチュラーゼ活性で主要な役割を演じるようには分化しなかった。
【0007】
試験管内ニワトリ肝細胞細胞培養での最近の業績は正常に機能しないトリグリセロール分泌に対するデルタ−9デサチュラーゼ活性に関する(P.ルグランおよびD.エルミエ(1992年)インターナショナル・ジャーナル・オブ・オビーシティ,16巻,289−294ページ;P.ルグラン,J.マラール,M.A.ベルナルド−グリフイット,M.ドゥエール,P.ルマルシャル.,Comp.Biochem.Physiol.87B,789−792ページ;P.ルグラン,D.カテリーヌ,M−C.フィシュ,P.ルマルシャル(1997年)J.Nutr.127巻,249−256号)。この業績はニワトリ内で存在するデルタ−9デサチュラーゼのアイソフォーム間を区別せず、特定の生物学的作用、この場合は正常に機能しないトリグリセリド分泌を説明するのに特異的なSCD酵素を直接結びつけることに再び失敗した。
【0008】
更に、この試験管内作業は、ニワトリとヒトの生体内リポタンパク質代謝の間にかなりの差異が存在したためにヒトと十分に相関付けることできなかった。このような差異はニワトリで全く異なるリポタンパク質、例えば卵黄の前駆タンパク質の存在、および異なるプロセス、例えば排卵時の肝トリグリセリド合成の大量導入などを含む。コレステロール輸送とカイロミクロンでの規定食トリグリセリドの分泌のプロセスは十分に実証されている。これらの鳥類と哺乳類の間の主要な差は、トリグリセリド代謝の領域で鳥類から哺乳類への外挿がヒトにおける暫定的なペンディングとなっている確証を検討しなければならないことを意味する。
【0009】
発明の背景技術の二つの領域が本発明の重要な基礎を形成する。まず本発明はコレステロールと脂質代謝に関し、それはヒトで強力に研究された。コレステロールは高度に無極であるため、主としてリン脂質である両親媒性脂質のエンベロープで囲まれたコレステロールエステルおよびトリグリセリドなどの無極分子のコアから基本的に成るリポタンパク質の形態で血清を通じて輸送される。ヒトでは約66%のコレステロールが低密度リポタンパク質(LDL)粒子で輸送され、約20%は高密度リポタンパク質(HDL)粒子で、また、残りは超低密度リポタンパク質(VLDL)粒子で輸送された。ヒトと他の生体でのコレステロール代謝の基礎生化学に関する優れた引用例はコレステロールの生物学,P.イーグル編.CRCプレス,ボカレイトン,フロリダ,1998年で見出される。
【0010】
第2に、本発明はアセビア(無脂腺)マウスからの新しい発見を利用する(ゲーツ他,(1965年),サイエンス,148巻:1471−3ページ)。このマウスは自然発生の遺伝子変異体マウスで皮脂腺欠損で有名であり、その結果無毛で鱗状皮膚になる。アセビアマウスはSCD1遺伝子のエキソン3の初期終結部位の形成の結果SCD1の欠損を持つと最近報告された。この変異のホモ接合型動物、あるいはエキソン1−4を取り囲む、異なる欠失対立遺伝子は野生型SCD1 mRNA転写物の検出可能量を発現しない(1999年11月号,ネイチャー・ジェネティクス,23巻:268ページ以下参照,およびPCT特許出願WO 00/09754)。この自然発生欠失の全内容については未知であるため、もし他のSCD1隣接遺伝子、あるいはゲノムの他の部分がアセビア表現型に関係していたかどうかについても未知である。これらの疾病過程でSCD1の活性を特異的に研究するためには、特異的SCD1ノックアウトマウスが必要とされる。この変異体に関するこれまでの研究は、皮膚疾患でのこの変異の役割に焦点をあててきたが、トリグリセリドまたはVLDL代謝に対してはそうではなかった。
【0011】
本発明の目的は、ヒトでのSCD1生物活性に特異的に結合される疾病と疾患、および望ましい実施例においてトリグリセリド代謝の疾病と疾患を同定することである。更なる目的はこれらの疾病、疾患および関連する異常を処置するための薬剤を同定し、開発するスクリーニング検定法を開発することである。更に本発明の目的はこれらの疾病、疾患および関連する異常を処置するために使用される組成物を提供することである。
【0012】
[発明の簡単な説明]
本発明は広い範囲でのヒト疾病と疾患のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(「hSCD1」)の役割を初めて開示する。とりわけヒトでのSCD1生物活性はトリグリセリドおよびVLDLの血清水準に直接関係する。加えてSCD1生物活性は、更にHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、コレステロール逆輸送、また粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、およびまたは類似のものの血清水準に影響する。
【0013】
本発明の目的は、前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)の生物活性を調節し、トリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連するヒト疾患または異常を処置するのに有用な治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスまたはスクリーニング検定を提供することである。望ましくは、スクリーニング検定は血清のトリグリセリド水準を低下させヒトに重要な心臓保護の私益を提供するhSCD1の阻害薬を同定する。
【0014】
本発明の更なる目的は、前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)の生物活性を調節し、またHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関連するヒト疾患または異常を処置するのに有用である治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスまたはスクリーニング検定を提供することにある。
【0015】
一つの見地において、本発明はヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ(hSCD1)遺伝子とプロモーター配列を含むベクターに関し、また組換え真核細胞、および細胞系、およびもっとも望ましくはヒト細胞、および細胞系、そのようなベクターおよびまたは前記ポリヌクレオチドを含むように形質移入された細胞、およびここで前記細胞がhSCD1を発現するヒト細胞および細胞系に関する。
【0016】
更に本発明の目的は、ここで開示されたようにヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(hSCD1)の活性およびまたは発現を調節できる薬剤を提供することであり、ここで前記調節能力はhSCD1生物活性または遺伝子コード化hSCD1を含む検定を使用して初めて決定された。このような薬剤を含む薬理組成物は特に考察される。
【0017】
本発明の更なる目的は、薬剤を提供することであり、ここで前記薬剤はhSCD1生物活性に関連する疾病または異常を処置し、予防しおよびまたは診断するのに有用な薬剤である。
【0018】
また更なる本発明の目的は、疾病または異常に悩む患者にそれらを予防または処置するプロセスを提供し、それは前記患者にここで開示された組成物の治療または予防有効量を投与することを含む。
【0019】
本発明の薬事ゲノム適用において、ヒト疾病プロセスまたは投薬に対する応答と関連する個体のhSCD1でのcSNPs(コーディング領域単一ヌクレオチド多形性)を同定する検定が提供される。
【0020】
他の見地において、本発明は更に疾病または異常に悩むと思われまたはそれらに悩むようになる危険のある一般にはヒトである患者でのその疾病または異常を診断するプロセスを提供し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞でhSCD1の活性水準を決定し、前記疾病または異常に悩むと思われずまたそれに悩むようになる危険のない患者からの等量の対応する組織の活性を前記活性と比較することを含む。
【0021】
他の見地において、本発明は更に疾病または異常に悩むと思われまたはそれらに悩むようになる危険のある一般にはヒトである患者を診断するプロセスを提供し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞のhSCD1遺伝子の変異を同定し、また前記疾病に悩むと思われずまたそれに悩むようになる危険のない患者からの対応する組織の遺伝子と前記遺伝子を比較することを含む。
【0022】
[定義]
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本発明の前後関係での「単離された」は、物質がもとの環境(例えばもしそれが自然発生であるならば自然環境)から移動されることを意味する。例えば生きた生体に存在する自然発生ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然系での共存物質のあるものまたはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離される。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であることができ、およびまたはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であることができ、しかもなおこのようなベクターまたは組成物が自然環境の部分ではないということで単離されている。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは望ましくは単離された形態で提供され、また望ましくは均質性にするため精製される。
【0023】
本発明に基づき開示された核酸およびポリペプチド発現産物、並びにこのような核酸およびまたはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは「富化された形態」にある。ここで使用されるように、「富化された」という用語は、物質の濃度が(例えば)重量で0.01%有利に、望ましくは重量で少なくとも約0.1%で、その自然濃度の少なくとも約2倍、5倍、10倍、100倍、または1000倍であることを意味する。重量で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化された調製物も考えられる。本発明を含む配列、構築物、ベクター、クローンおよび他の物質は有利に富化されまたは単離された形態にあることができる。
【0024】
本発明に基づき開示されたポリヌクレオチドおよび組換えまたは免疫性ポリペプチドも同じく「精製された」形態にある。「精製された」という用語は絶対的な純度を必要とはしない。むしろそれは相対的な定義を意図したものであり、これらの用語が関連技術に習熟した人により理解されるように、高度に精製された調製物または僅か部分的に精製された調製物を含む。例えば、cDNAライブラリーから単離された個別クローンは従来の方法で電気泳動均質性を得るため精製された。少なくとも1桁、望ましくは2桁または3桁、またより望ましくは4桁または5桁の大きさまでの出発物資または自然物質の精製が特に考慮される。更に望ましくは重量で0.001%、または少なくとも0.01%または0.1%、またはより望ましくは1%またはそれ以上の純度を持つ請求されたポリペプチドが特に考慮される。
【0025】
「コーディング領域」という用語は、遺伝子の発現産物をその自然ゲノム環境で自然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち遺伝子の自然発現産物を生体内でコードする領域を引用する。コーディング領域は正常、変異または変更遺伝子からのものであり得るし、またはDNA合成の従来の技術に習熟した人に公知の方法を使用して実験室で合成されたDNA配列、または遺伝子からのものでさえあることができる。
【0026】
本発明に従って、「ヌクレオチド」という用語は(DNAに対する)デオキシリボヌクレオチドまたは(RNAに対する)リボヌクレオチドのヘテロポリマーを引用する。一般に本発明で提供されるタンパク質をコードするDNAセグメントはcDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または微生物あるいはウイルスオペロンから誘導される調節要素(応答配列)を含む組換え転写ユニットで発現できる合成遺伝子を提供するために一連のオリゴヌクレオチドから組立てられる。
【0027】
「発現産物」という用語は、遺伝子の自然翻訳産物であり、また遺伝子コード縮重から生じる等価物をコードしかくして同じアミノ酸をコードするいずれかの核酸配列であるポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0028】
コーディング領域を引用した場合の「断片」という用語は、その発現産物が完全コーディング領域の発現産物と同じ生物機能または活性を基本的に保持する完全コーディング領域以下の領域を含むDNAの部分を意味する。
【0029】
「プライマー」という用語は、DNAの1鎖と対にされ、DNAポリメラーゼがデオキシリボヌクレオチド鎖の合成を開始する遊離3′OH末端を提供する短い核酸配列を意味する。
【0030】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するRNAポリメラーゼの結合に含まれるDNAの領域を意味し、転写開始部位のすべてのヌクレオチド上流(5′)を含む。
【0031】
ここで使用されるように、DNA配列の引用は一本鎖および二本鎖DNA両方を含む。かくして前後関係が他を示さない限りにおいて、特異的配列はこのような配列の一本鎖DNA、このような配列の複式およびその補体(二本鎖DNA)、ならびにこのような配列の補体を引用する。
【0032】
本発明は更にこのようなポリペプチドの推定アミノ酸配列、同じく断片、類似体およびその誘導体を持つポリペプチドに関する。
【0033】
ポリペプチドを引用した際の「断片」、「誘導体」および「類似体」という用語は、このようなポリペプチドと同じ生物機能または活性を基本的に保持するポリペプチドを意味する。従って、類似体は活性成熟ポリペプチドを産生するプロタンパク質部分の切断により活性化できるプロタンパク質を含む。このような断片、誘導体および類似体は生のポリペプチドの活性が保持されるようにSCD1ポリペプチドへの十分な類似性を持たねばならない。
【0034】
本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、自然ポリペプチドまたは合成ポリペプチドであってもよく、また望ましくは組換えポリペプチドである。
【0035】
SCD1ポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、(i)1個またはそれ以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(望ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、またそのような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードされたかコードされないもの、または(ii)1個またはそれ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熱ポリペプチドがも一つの化合物、例えばポリペプチドの半減期を増加する化合物など(例えばポリエチレングリコール)と融合されるもの、または(iv)追加のアミノ酸が成熱ポリペプチド、例えばリーダー配列あるいは分泌配列、もしくは成熱ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製に採用される配列などに融合されるものである。このような断片、誘導体または類似体はここでの教示から従来の技術に習熟した人の範囲内にあるものと見做される。
【0036】
従来の技術で公知のように、2個のポリペプチドの間の「類似性」は1個のポリペプチドのアミノ酸配列とその保存アミノ酸置換基を第2のポリペプチドの配列と比較することにより設定される。
【0037】
前記に基づいて、本発明は更に本発明の単離ポリヌクレオチドによりコードされる単離ステアロイルCoAデサチュラーゼに関する。
【0038】
本発明のポリペプチドの断片または部分はペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを産生すために採用される。従って断片は、全長ポリペプチドを産生するための中間体として採用される。本発明のポリヌクレオチドの断片または部分は本発明の全長ポリヌクレオチドを合成するために使用される。
【0039】
ここで使用されるように、「部分」、「セグメント」、および「断片」という用語は、ポリペプチドとの関連で使用される時には、その配列がより大きな配列のサブセットを形成するアミノ酸残基などの連続した残基の配列を引用する。例えば、もしポリペプチドが例えばトリプシンまたはキモトリプシンなどのいずれかの一般的なエンドペプチターゼで処置を受けたなら、このような処置から生じるオリゴペプチドは出発ポリペプチドの部分、セグメントまたは断片を表すであろう。ポリヌクレオチドに関連して使用された場合には、このような用語は前記ポリヌクレオチドのいずれかの一般のエンドスクレアーゼでの処置により産生された産物を引用する。
【0040】
[発明の詳細な概要]
本発明はヒト疾病におけるヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1の活性に関する。これに基づいて、ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1活性または発現水準を特異的に調節する化合物は、トリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関するヒト疾患または異常の処置に有用であり、ヒトに投与された時には重要な心臓保護の利益を提供する。hSDC1活性または発現を調節する化合物は、更にHDL、LDL、およびまたは全コレステロール、およびコレステロール逆転送の血清水準を調節するのに有用である。最終にhSCD1活性または発現は粘膜、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の分泌の産生を調節するのに有用である。
【0041】
SCD1遺伝子とタンパク質
ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ−1(SCD1、hSCDおよびhSCD1とも呼ばれるもの)は1997年6月6日付けでジェンバンク・アクセッションY13647(同じくNM005063)としてジェンバンクに初めて公開された全cDNA配列で同定された。部分的プロモーター配列を含む、更なるSCD1の詳細は、下記のアクセッション番号でジェンバンクで見出すことができる:gb|AF097514.1|AF095514; dbj|AB032261.1|AB032261; gb|AF116616.1|AF11616; ref|XM_005719.1|; gb|AF113690.1|AF113690; およびgb|S70284.1|S70284。
【0042】
一つの見地において、本発明はとりわけ配列が同じで前記のいずれかの補体のいずれかを含む場合にヒトステアロイルCoAレダクターゼ−1の配列に少なくとも90%の同一性、望ましくはは95%の同一性、もっとも望ましくはは少なくとも98%の同一性を持つ非ゲノムポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチドの使用に関する。
【0043】
hSCD1の完全プロモーター配列は配列識別番号1であり、図14はマウスとヒトSCD1プロモーター領域の間に保存された機能エレメントを説明する。
【0044】
一つの見地において、本発明はとりわけ配列が同じである場合にヒトステアロイルCoAレダクターゼ−1に少なくとも90%の同一性、望ましくは95%の同一性、もっとも望ましくは少なくとも98%の同一性を持つ単離されたポリペプチドの使用に関する。ポリペプチド配列は、これまでに開示され、下記のスイスタンパク質データベース・アクセッションシリーズで見つけることができる:アクセッション番号O00767;PID g3023241;バージョンO00767 GI:3023241;DBSOURCE:スイスプロット:遺伝子座ACOD_ヒューマン,アクセッションO00767.選択肢としてポリペプチド配列はここで用意されたcDNA配列引用例から決定することができる。
【0045】
ヒト疾病過程におけるSCD1
ここで開示されたように、数多くのヒト疾病および疾患は異常なSCD1生物活性の結果であり、治療薬を用いるSCD1生物活性の調節により改善することができる。
【0046】
本開示のもっとも著しい教示は、ヒトにおける血清トリグリセリドとVLDL水準を調節する際のSCD1の役割に関する。2件の主要な発見がここで立証される。まず以下の実施例1はSCD1ノックアウトマウスのリポタンパク質プロファイルが血清トリグリセリドとVLDL水準での65%の減少を実証したことを示している。これらはここに更に含まれるアセビアマウスのリポタンパク質プロファイルと一致する。アセビアマウスとSCD1ノックアウトマウス両方のリポタンパク質プロファイルは、これまで知られていなかったが、遺伝子操作変異の標的化された特異的性格の故でSCD1活性と血清トリグリセリド水準の相関を確実に引き出すことができる。他のSCDアイソフォームがトリグリセリド水準で役割を果たす一方、このデータはSCD1が特異的にこのプロセスで主要な役割を果たすことを示している。
【0047】
マウスとヒトの間でリポタンパク質代謝に著しい差があり、前記のデータがトリグリセリド水準の調節でSCD1への主要で特異的な役割を確信させる一方、これはヒトでの確証実験をまだ必要とした。従って第2の主要な発見は以下の実施例2で提示され、それはヒトでのSCD活性と血清トリグリセリド水準との間に著しい相関があることを実証する。かくしてヒトでのSCD1生物活性が血清トリグリセリドの水準に直接関係することが発見された。
【0048】
本発明に従って、アセビアマウス表現型(ゲーツ,他.(1965年)サイエンス,148巻:1471−3ページで最初に記載されたもの)は、トリグリセリドとVLDL水準での著しい減少を含む血清リポタンパク質プロファイルでの主要な著しい変更を示す。加えてこれらの動物ではコレステロールエステルの肝臓容量での大きな減少が見られた。これに従って、SCD1活性の有効な阻害が一価不飽和脂肪酸利用可能性の減少により、トリグリセリド水準の減少に導くことになるであろう。一価不飽和脂肪酸は、脂肪酸とリン酸グリセロール(すなわちグリセロールとリン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)からのトリグリセリド(TG)合成の原因となる酵素への望ましい基質である。
【0049】
更にここでの開示に従って、コレステロールのエステル化の増加は肝臓での遊離コレステロールの有毒である累積を予防し、またコレステロールエステルとトリグリセリドの利用可能性の増加はVLDLの形態での分泌を容易にする。マクロファージでのコレステロールエステル化の増加は更に泡沫細胞の形成を高め、これによりアテローム硬化外傷の発達に貢献する。かくしてSCD活性の阻害は血流でのVLDL粒子の水準を減少しアテローム硬化を阻害する付加的効果を持つことになる。
【0050】
更に本発明に従って、SCD1の阻害はまた末梢組織でのHDLの形成増加のために有利である。健康な個体においては、細胞コレステロールは遊離コレステロールが低水準のエステル化形態であることが多い。アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)は一価不飽和脂肪アシルCoAを望ましい基質として使用するエステル化コレステロールの原因となる酵素である。SCDは一価不飽和産物を生成し、それは次いでACATによるコレステロールエステル化のために利用可能となる。細胞からHDL経由での遊離コレステロールの流出増加は治療的に有益であると考えられるが、それは高められた「コレステロール逆輸送」(RCT)を示すからである。
【0051】
SCD1の阻害は血清HDL水準を必ずしも上昇させることなくコレステロール逆輸送を増加するのに有用である。血清HDL水準はRCTのプロセスの代理マーカーであり、それは実際に末梢組織から肝臓へのコレステロールの全体としての流出により優先的に測定される。本発明はRCTを増加する有効な治療薬としてSCD1生物活性のモジュレーターを同定する。RCTは例えばHDL粒子に組み込まれた放射線標識コレステロールエテルを血液に直接注入し、クリアランス率(それが生体の肝臓に取上げられる率)を測定することにより直接測定することができる。
【0052】
本発明に従って、肝臓および他の組織でのSCD1活性の調節が肝臓受容体でSR−R1の増加を生じ、この受容体はHDLを循環から除去し、その結果RCTを増加して血液内のHDL水準の明らかな影響を少なくなる。SCD1生物活性とSR−B1 mRNA発現の間の連鎖はこれまでの所同定されていない。これまでの作業はSR−B1過剰発現マウスが心臓保護をされ、アテローム硬化発生と心臓血管病を減少させたことを立証した。これらの理解は更に、SCD1生物活性の阻害薬などある種の治療薬がHDL水準での何らかの明らかな変化なしでRCTを増加させる。ということを初めて示唆している。これは末梢組織でのHDL形成および肝臓によるHDLの除去の両方で均衡のとれた増加を得ることで達成される。
【0053】
SCD1マウスの+/+対−/−(下記の実施例に記載された菌株)の肝臓でのSR−B1 mRNA発現を比較した実験が行われた。食事療法での+/+動物(を標準としたもの)に対比して発現された場合に、その結果はABCA1とSR−B1 mRNA水準での変化を以下の通り示している。
【0054】
遺伝子型 規 定 食 ABC1 SR−B1
+/+ 普 通 食 1 1
−/− 普 通 食 0.7 11
+/+ 高コレステロール食 1.1 27
−/− 高コレステロール食 0.4 27
【0055】
ABC1での変化は、それらが普通食のSR−B1で示されている間は有意ではない。SR−B1発現での増加は肝臓へのコレステロールの流入、またはRCTの増加を示し、−/−SCD1マウスの血漿でHDL−Cの上昇についての観察が何故見られないかを説明するであろう。RCTの増加は更に高コレステロール療法の−/−動物が+/+動物の約10倍の大きさ胆嚢を有しており、それは胆汁で満たされている。これらの観察は肝臓によるコレステロール除去の増加、従ってRCTの増加と一致している。更に、+/+および−/−マウスでのSR−B1の明らかに同一の増加は、これら動物での表現型または生物的過程を反映するものではない。
【0056】
SCD発現の阻害はトリグリセリドおよびコレステロールエステルと同様に膜脂質の脂肪酸組成物に影響する。リン脂質の脂肪酸組成物は結局膜流動性を決定し、一方トリグリセリドとコレステロールエステルの組成物に与える影響はリポタンパク質代謝と脂肪変性に影響を与え得る。
【0057】
本発明は更にHDL、LDL、および全コレステロールの血清水準に関連する他のヒト疾患または異常へのSCD1の関係、同じく粘膜、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他からの分泌の産生に関連する他のヒト疾患または異常でのSCD1の役割に関する。本発明はこれらの疾患を処置するのに有用であるSCD1のモジュレーターを包含する。
【0058】
ヒト被験者を用いない従来の作業は、これらの生体での異常SCD生物活性が(SCDのどのアイソフォームに責任があるかを特定することなく)各種の皮膚疾患、同じく癌および多重硬化症、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、神経症、皮膚疾患、眼炎、免疫患者、および癌などの異なる疾患を含んでいることを示している。本発明のプロセスを使用するために発見されたモジュレーターは従って同じようにヒト被験者でのこれらの疾病の処置に使用されるであろう。
【0059】
実施例4ではSCD1の転写調節タンパク質が同定される。これらのタンパク質は、細胞でSCD1発現を増加または減少させ、これにより積極的または消極的に細胞のSCD1生物活性に影響を与える化合物を標的とする。PPARガンマおよびSREBPがその例である。このような転写調節因子を経由して作用するものとして公知の化合物は、現在ヒトで同定されたSCD1関連疾病および疾患を処置するもの関連するとして同定されている。
【0060】
スクリーニング検定
本発明はトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送、粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関する疾病または異常を処置するのに使用される治療薬を同定するのに使用されるhSCD1遺伝子およびまたはタンパク質を採用するスクリーニング検定を提供する。
【0061】
「SCD1生物活性」
ここで使用され、とりわけスクリーニング検定に関する「SCD1生物活性」は広く解釈され、またSCD1遺伝子およびタンパク質の直接および間接的に測定可能で同定できるすべての生物活性を考慮する。精製SCD1タンパク質に関して、SCD1生物活性は必ずしもそれに限定されないが、タンパク質のすべての生物過程、相互作用、結合行動、結合活性関係、pKa、pD、酵素動態、安定性、および機能評価を含む。細胞分画、再構築細胞分画または全細胞でのSCD1生物活性に関して、これらの活性は必ずしもそれに限定されないが、SCDがシス二重結合をその基質パルミトイルCoA(16:0)およびステアロイルCoA(18:0)に導入し、これがそれぞれパルミトオレオイルCoA(16:1)とオレオイルCoA(18:1)にそれぞれ転換される率、およびSCD1活性のすべてのこの主旨での測定可能な結果、例えばトリグリセリド、コレステロール、または他の脂質合成、膜組成物と行動、細胞成長、発展または行動および他の直接間接の作用を含む。SCD1遺伝子および転写に関して、SCD1生物活性はRNAを生成するゲノムDNAの転写の率、スケールまたは範囲、そのような転写に対する調節タンパク質の作用、そのような転写に対するそのような調節タンパク質のモジュレーターの作用、プラスmRNA転写物の安定性と行動、転写後の処理、mRNA量と収量、およびmRNAのポリペプチド配列への転写についてのすべての測定を含む。生体内でのSCD1生物活性に関して、これは必ずしもそれに限定されないが、これらの生体での異常なSCD1生物活性により起こる疾病または疾患過程でのそれらの存在または欠損により同定される生物活性を含む。大まかに言うと、SCD1生物活性は従来の技術で公知であるタンパク質と遺伝子の生物学的性質を分析するすべてのこれらおよび他の手段により決定することができる。
【0062】
本発明で考慮されるスクリーニング検定は更にヒトからのSCD、またはヒト疾病の治療薬を同定するのに成功する限りにおいて、hSCD1として類似の生物活性を示す他の生体からのSCDのアイソフォームを採用する。脊椎動物からのデルタ−9デサチュラーゼの機能的等価性は従来の技術に習熟した人により認識されてきた。従って本発明の特異的実施例は、ヒトに有用な治療薬を同定するためにも一つの脊椎動物種からの1個またはそれ以上の機能的に等価のデルタ−9デサチュラーゼ酵素を採用する。機能的等価のデサチュラーゼは、ステアロイルCoAデサチュラーゼ(デルタ−9デサチュラーゼ)としてユニジーン・クラスターHs.119597 SCDで同定された遺伝子に加え、前に同定されたすべてのマウス、ラット、ウシ、ブタまたはニワトリを含む。ローカスリンク:6319;OMIM:604031またはホモロジーン:Hs.119597も参照されたい。他の公知のデルタ−9デサチュラーゼはブタ:O02858(スイス−プロット)およびウシ:AF188710(NCBI、(6651449;ジェンバンク))を含む。
【0063】
選択されたモデル生体タンパク質の類似性
(整列アミノ酸(aa)領域の生体、タンパク質引用およびパーセント同一性ならびに長さ)
H.sapiens: SP:O00767- 100%/358aa
M.musculus: PIR:A32115- 83%/357aa
R.norvegicus: SP:P07308- 84%/357aa
D.melanogaster: PID:g1621653- 57%/301aa
C.elegans: PID:g3881877- 52%/284aa
S.cerevisiae: PID:e243949- 36%/291aa
B.Taurus O02858 85%/359aa
S.Scrofa 6651449 86%/334aa
【0064】
SCDスクリーニング検定の設計と開発
本開示は細胞ベイスト、細胞抽出(すなわちミクロソーム検定)、無細胞(すなわち転写)検定、および事実上精製されたタンパク質活性の検定などであるスクリーニング検定の開発を促進する。このような検定は典型的には放射能または蛍光ベイスト(すなわち蛍光偏光または蛍光共鳴エネルギー移転すなわちFRET)のものであり、またはそれらは細胞行動(生存、成長、活性、形状、膜流動性、温度感受性等)を測定するものである。選択肢として、スクリーニングはノックアウトまたはノックインマウスなどの遺伝子修飾生体を含む多細胞生体、または自然発生遺伝子変異体を採用する。スクリーニング検定はマニュアルまたは低処理量検定であり、またはそれは機械的/ロボット工学的に高められた高処理量選別である。
【0065】
前記のプロセスは、ここに記載された疾病、望ましくは増加または減少したステアロイルCoAデサチュラーゼ(本発明のhSCD)の活性または発現がそのような疾病を仲介するのに主要な役割を果たす疾病を処置するために潜在的な治療薬および診断薬の効能を決定するための高処理量スクリーニングプロセスを含むスクリーニングの基礎を供給する。
【0066】
このように、本発明はトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロールまたは粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他の血清水準に関する疾患、または異常の処置にヒトで有用である治療薬を試験化合物のライブラリーなどから同定する方法に関し、それは
a)SCD1生物活性を持つスクリーニング検定を提供し、
b)前記スクリーニング検定を試験化合物と接触させ、また
c)続いて前記生物活性を測定する
ことを含み、ここで前記生物活性を調節する試験化合物は前記治療薬またはその類似体である方法に関する。
【0067】
一つの見地において、本発明はトリグリセリドまたは超低密度リポタンパク質(VLDL)の血清水準に関する疾患または異常の処置にヒトで有用である治療薬を試験化合物のライブラリーから同定するプロセスに関し、それは
a)ステアロイル補酵素Aデサチュラーゼタイプ1(SCD1)生物活性をその成分として持つスクリーニング検定を提供し、
b)前記SCD1活性を試験化合物と接触させ、
c)前記b)での活性を調節するために発見された化合物をヒトに投与し、また
d)前記投与に続き前記ヒトでのトリグリセリドまたはVLDLの血清水準での変化を検出する
ことを含み、これによりトリグリセリドまたは超低密度リポタンパク質(VLDL)の血清水準に関する疾患または異常の処置に有用である薬剤を同定するプロセスに関する。
【0068】
一つの実施例において、前記薬剤はSCD1生物活性の拮抗薬または阻害薬である。そのも一つの特異的な実施例において、前記薬剤はSCD1生物活性の作用薬である。
【0069】
も一つの実施例において、前記モジュレーターが阻害薬である場合は、前記阻害薬はデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼのヒトでの生物活性を実質的に阻害しない。
【0070】
本発明の一つの実施例において、検定プロセスは更にデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼのヒトでの生物活性を実質的に阻害しない化合物を更に選択する前記治療薬を検定するステップを更に含む。
【0071】
特異的実施例において、本発明は更に一つのプロセスを包含し、ここで前記SCD1生物活性が
a)SCD1ポリペプチド結合親和性
b)ミクロソームでのSCD1デサチュラーゼ活性
c)全細胞検定でのSCD1デサチュラーゼ活性
d)SCD1遺伝子発現水準の定量化、および
e)SCD1タンパク質水準の定量化
の中から選択された検定される。
【0072】
このような検定の特異的な実施例は、ここで開示されるように組換え細胞を採用する。
【0073】
本発明は更に一つのプロセスに関し、ここで同定された化合物は更にデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性をヒトで実質的に阻害しない化合物の中から選択される。
【0074】
他の特異的実施例において、本発明はトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関する疾患または異常の処置に有用な化合物を同定する際に使用される。ここで開示されたSCD1核酸およびまたはここで開示されたSCD1ポリペプチドを採用することを考慮する。
【0075】
ここで開示された検定は直接的または間接的に、SCD1生物活性の測定を基本的に必要とする。従来の技術に習熟した人は十分に公知のモデルに基づきこのような検定を展開することができ、また多くの潜在的検定が存在する。SCD1の全細胞活性を直接測定するために、SCD活性を定量的に測定するために使用され得る方法は、例えば時間をかけてSCD反応産物の薄属クロマトグラフを測定することを含む。SCD活性を測定するのに適したこの方法および他の方法は公知である(RJヘンダーソン ヘンダーソン他1992年。脂質分析:実用的アプローチ。S.ハミルトン編.ニューヨーク・アンド・東京、オクスフォード・ユニバーシティ・プレス,65−111ページ)。ガスクロマトグラフィーも飽和脂肪酸から一価不飽和脂肪酸を識別するのに有用であり、例えばオレイン酸エステル(18:1)とステアリン酸エステル(18:0)はこの方法を用いて識別することができる。この方法を記述したものが以下の実施例に存在する。これらの手法は試験化合物がSCD1の生物活性に、またはパルミトオレオイルCoA(16:1)あるいはオレオイルCoA(18:1)それぞれ産生するためにSCDがそのパルミチン酸基質(16:0)あるいはステアリン酸基質(18:0)にシス二重結合を導入する比率に影響を与えたかどうかを決定するために利用することができる。
【0076】
望ましい実施例において、本発明は測定可能SCD1生物活性を持つミクロソーム検定を採用する。適切な検定は下村他(I.下村,H.島野,B.S.コーン,Y.バシュマコフ,J.D.ホートン(1988年))により記載されたように、基本的にラット肝臓ミクロソーム検定を修飾しスケールアップして取り上げられる。組織は緩衝液A(0.1Mのカリウム緩衝液、pH7.4)の10量で均質化処理される。ミクロソーム膜分画(100,000×gペレット)が連続遠心分離で単離される。反応は37℃5分で、100μgのタンパク質ホモジェネートと60μMの〔1−14C〕ステアロイルCoA(60,000dpm)、2mMのNADH、0.1Mのトリス/塩酸緩衝液(pH7.2)で行われた。反応の後、脂肪酸は抽出され、次いで10%酢酸塩化物/メタノールでメチル化される。一価不飽和脂肪酸メチルエステルがヘキサン/ジエチルエーテル(9:1)を現象液として使用する10%AgNO3含浸TLCにより分離される。平板は95%エタノール内で0.2%2′,7′−ジクロロフルオレセインでスプレーされ、脂質は紫外線光の下で同定される。分画は平板からこすり取られ、放射能は液体シンチレーションカウンターを用いて測定される。
【0077】
このようなSCD1生物活性検定の特異的実施例は、SCD反応が一価不飽和脂肪アシルCoA産物に加えて水を産生するという事実を活用する。もし3Hが脂肪アシルCoA基質のC−9とC−10の位置に導入されるなら、この反応からのいくつかの放射性陽子は水の中で終わりに達するであろう。かくして活性の測定は放射性水の測定を伴うであろう。標識された水をステアリン酸エステルから分離するために、研究者は活性炭、疎水性ビートなどの基質、または単なる流行遅れの溶媒を酸性pHで使用する。
【0078】
望ましい実施例において、スクリーニング検定はSCD1生物活性を間接的に測定する。標準高処理量スクリーニング検定はリガンド受容体検定に集中する。これらは蛍光ベイストまたはルミネセンスベイストあるいは放射線標識化検出である。酵素免疫測定法はSCD1タンパク質と相互作用する化合物を同定するために各種のフォーマットで作動することができる。これらの検定は公知のものである敏速蛍光および時間分離蛍光免疫測定法を採用する。P32標識ATPはプロティンキナーゼ検定に典型的に使用される。リン酸化産物は各種の方法で計数のために分離される。シンチレーション近接検定技術は放射線標識を高めた方法である。これらすべての型の検定は精製または半精製SCD1タンパク質と相互作用する化合物の検定に特に適している。
【0079】
望ましい実施例において、検定はSCD1の基質である(9および10の炭素原子に3Hを持つ)3HステアロイルCoAを使用する。SCD1による脱飽和はオレオイルCoAと3H水分子を産生する。反応は室温で行われ、酸で含浸され、次いで活性炭が放射線水産物から未反応基質を分離するために使用される。活性炭は溶融され上澄みの放射能の量は液体シンチレーション計数で測定される。この検定は野生型とSCD1ノックアウト組織での活性を比較した時に見られる差で判断されるように、SCD1依存性脱飽和に特異的である。更にこの方法はそれが無細胞で室温で行われ、比較的短い(これまでの2日の期間に対して1時間の反応速度である)ために、高処理量にたやすく反応される。
【0080】
本開示が本発明の有効な作業実施例を設定する一方、従来の技術を習熟した人は各種の方法で本検定を最適化することができ、そのすべては本発明により包含される。例えば活性炭はステアロイルCoA複合体の未使用部分を除去する際に非常に効率的(>98%)であるが汚くなりある条件下ではピペットで移すのが難しいという不利益がある。もしステアロイルCoA複合体が酸性化され適度の慣性力で回転される時に十分凝集するならば、炭の使用は必要でなくなる。これは脱飽和反応に続き活性炭ありまたはなしでの信号雑音比を測定することにより測定することができる。また溶降ステアロイルCoAを3H水産物から有効に分離する他の試薬もある。
【0081】
図20(パネルA)で示されるように、ステアロイルCoAの量はSCD1依存性脱飽和活性で監視される3H−DPM信号の動態と大きさを制限する。しかしすべてのステアロイルCoAがSCD1で消費されたのではなかった。>90%がSCD1に利用されずに残ったが、それはミクロソーム(例えばアシルトランスフェラーゼ反応物)に存在する他の酵素がそれを基質として利用しまたSCD1と競合するか、およびまたはステアロイルCoAが実験の条件下で不安定であるためである。これらの可能性は標識のリン脂質への取り込みを監視することにより、またはステアリン酸エステルとCoAからステアロイルCoAを再生する緩衝液混合物(Mg++,ATPおよびCoA)を含むことにより試験される。
【0082】
図20(パネルB)で示されるように、検定は高処理量スクリーニングに適した小さな量で行うことができる。望ましい実施例は96ウエル平板に十分な微小遠心を採用する。
【0083】
以下の検定は更に潜在的治療薬の存在下でのSCD1生物活性を測定するのに適している。これらの検定は更に潜在的治療薬のライブラリーからSCD1特異的モジュレーター、阻害薬または拮抗薬を選択するための2次スクリーンとして価値がある。
【0084】
細胞ベース脱飽和検定も使用することができる。細胞内でのステアリン酸エステルからオレイン酸エステルへの転換を追跡(3T3L1脂肪細胞は高SCD1発現を持ちBSAに複合された時には容易にステアリン酸エステルを取上げる)することにより、我々は化合物が細胞浸透であるか、細胞に致死性であるか、およびまたは細胞でのSCD1活性を阻害する能力があるかどうかなどの追加の性質または特性のための1次スクリーンで化合物が阻害性であることを発見できる。この細胞ベース検定はデルタ−9デサチュラーゼ、望ましくはhSCD1(ヒトSCD1)を含む組換え細胞系を採用する。組換え遺伝子は選択的に誘導プロモーターの制御の下にあり、また細胞系は望ましくはSCD1タンパク質を過発現する。
【0085】
他のSCDアイソフォームを追跡する他の検定も開発することができた。例えばラットとマウスSCD2は脳で発現される。望ましい実施例において、ミクロソーム調製物が肝臓からのSCD1でこれまでに行われたように脳から作られる。被験者はSCD1に特異的な化合物を発見されるであろう。このスクリーンはSCD1対SCD2の化合物の阻害効果を比較するであろう。
【0086】
類似してはいないけれども、SCD1検定で「的中した」化合物は、SCD1依存性脱飽和に利用できるものを犠牲にしてステアロイルCoAを競合的に利用するミクロソーム調製物に存在する酵素の刺激から生じる。これはSCD1阻害であると誤って解釈されることがある。この問題を検討する一つの可能性は不飽和脂質(ステアリン酸エステル)のリン脂質への取り込みとなるであろう。ステアリン酸エステルの脂質への取り込みの刺激に対する化合物の作用を決定することにより、研究者はこの可能性を評価することができる。
【0087】
細胞ベース検定が望ましいのは、それがSCD1遺伝子をその自然のままの形態に残しているからである。検定のこれらの型でSCD1分析のとりわけ有望なものは蛍光偏光検定である。偏光されたままの光の範囲は、標識が励起と放出の間の時間間隔で回転する度合に依存する。測定は分子の回転率に対し感受性が高いために、SCD1活性−すなわち細胞のデルタ−9脱飽和活性により誘導される膜流動性特性における変化の測定にそれを利用することができる。SCD1の別の検定はFRET検定を含む。FRET検定は蛍光分子供与体および受容体または消光体の間で起こる蛍光共鳴エネルギー移転を測定する。このような検定はSCD1生物活性により誘導される膜流動性または温度感受性特性での変化を測定するのに適している。
【0088】
本発明のスクリーニング検定は高処理ロボット利用システムを用いて行われる。将来には、望ましい検定は、とりわけキャリパー,インコーポレイテッド,アクラーラ・バイオサイエンシス,セロミクス・インコーポレイテッド,オーローラ・バイオサイエンシス・インコーポレイテッド他により発展せしめられたチップ装置を含むことになるであろう。
【0089】
本発明の他の実施例において、SCD1活性は更にコレステロールを細胞外受容体分子に移動させまたABCA1機能に依存性である細胞の能力を測定するコレステロール流出検定を通して測定することができる。標準コレステロール流出検定はマーシル他.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19巻:159−169ページ,1999年に設定され、すべての目的のために引用例としてここで組込まれている。
【0090】
望ましい検定は薬剤スクリーニングに使用される形態に容易に適応され、それは複数ウエル(例えば96ウエル、384ウエルまたは1536ウエルもしくはそれ以上の)形態より成る。薬剤スクリーニングにそれを最適化する検定の修飾は処理を一定率で下げまた簡素化し、標識法を修飾し、保温時間を変更し、またSCD1生物活性等を計算する方法を変えるなどを含む。これらすべての場合において、SCD1活性は実験上の修飾は行われるにせよ概念的には同じままである。
【0091】
も一つの望ましい細胞ベース検定はSCD1阻害薬の単離のための細胞生死判別検定である。SCDの過発現は細胞の生存可能性を減少させる。この表現型は阻害性化合物を同定するために役立てることができる。この細胞毒性は血漿膜の脂肪酸組成物の変更に起因するものであろう。望ましい実施例において、ヒトSCD1 cDNAはテートオン・テートオフ誘導遺伝子発現システム(クロンテック)などのような誘導プロモーターの制御下にある。このシステムは二重安定細胞系の作成を含む。最初の形質移入は調節プラスミドを導入し、第2のものは誘導SCD発現構築物を導入する。両構築物の宿主ゲノムへの染色体組み込みは適切な抗生物質の存在下で選択的圧力の下に形質移入細胞を置くことで促進されるであろう。一度二重安定細胞系が確立されると、SCD1発現はテトラサイクリンまたはテトラサイクリン誘導体(例えばドキシサイクリン)を用いて誘導されるであろう。一度SCD1発現が誘導されると、細胞は潜在的阻害薬のHTSのための化学化合物のライブラリーに露出されるであろう。ある一定期間の後、細胞生存性は次いで蛍光染色または他のアプローチ(例えば、組織培養培地の濁り度)により測定されるであろう。SCD1活性を阻害するように作用する化合物に露出されたこれらの細胞はバックグラウンド生存物以上に生存可能性の増加を示すであろう。かくしてこのような検定は、誘導可能SCD1発現および細胞生存可能性測定に基づくSCD1活性の阻害薬の性の選択となるであろう。
【0092】
代替的なアプローチはデサチュラーゼシステムへの干渉である。デサチュラーゼシステムは3個の主要なタンパク質、すなわちシトクロムb5、NADH(P)−シトクロムb5レダクターゼ、およびターミナルシアン感受性デサチュラーゼを持つ。ターミナルシアン感受性デサチュラーゼはSCD遺伝子の産物である。SCD活性は前記3個の成分の間の安定した複合体の形成に依存する。かくしてこの複合体の形成に干渉するいずれかの薬剤、または複合体の3個の成分のいずれかの適切な機能に干渉するいずれかの薬剤はSCD活性を有効に阻害するであろう。
【0093】
SCD1活性のモジュレーターのも一つの型はプレSCD1タンパク質のアミノ末端に位置する33アミノ酸不安定化ドメインを伴う(ムジオー他,全米科学アカデミー紀要,2000年,97巻:8883−8888ページ)。このドメインがまだ未知のプロテアーゼでSCD1タンパク質から切断されることは可能である。この推定上のタンパク質分解活性は従ってSCD1の安定性と半減期を増加するように作用するであろう。一方推定上のプロテアーゼの阻害はSCD1の安定性と半減期の減少を起こすであろう。不安定化ドメインの除去を遮断しまたは調節する化合物は従って細胞内でのSCD1タンパク質水準の減少に導くであろう。従って本発明のある実施例において、スクリーニング検定はSCD1プロテアーゼ活性のモジュレーターを同定するためにプロテアーゼ活性の尺度を採用するであろう。第1段階はSCD1の切断の原因となる特異的なプロテアーゼを同定することである。このプロテアーゼは次いでスクリーニング検定に組み込むことができる。古典的なプロテアーゼ検定は切断に際して不活性化されるタンパク質に対しプロテアーゼが切断部位(すなわち問題となるプロテアーゼに関連する切断可能配列を含むペプチド)をスプライシングすることにしばしば依存する。テトラサイクリン流出タンパク質はこの目的のために使用される。挿入配列を含むキメラが大腸菌で発現される。タンパク質が切断されるとテトラサイクリン耐性は細菌に対して失われる。試験管内検定が開発され、ここで適切な切断部位を含むペプチドは固相の一端部で固定される。他の端部は放射性同位体、フルオロフォア、または他の標識で標識される。固相からの信号の酵素仲介損失はプロテアーゼ活性に匹敵する。これらの技術は成熟SCD1タンパク質を生成する原因となるプロテアーゼを同定するのに使用でき、また細胞内でのSCD1を減少させるために使用されるこのプロテアーゼのモジュレーターを同定するための両方で使用することができる。
【0094】
も一つの見地において、本発明はヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの活性を調節する薬剤の能力を決定するプロセスに関し、それは以下の段階すなわち
(a)薬剤の予め定められた水準で本発明のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼと適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの活性が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記活性を調節したかどうかを決定する段階を含む。
【0095】
このような検定はもっとも一般的には超遠心法により分化細胞分画化の従来の方法により獲得されたミクロソーム分画などのような細胞分別を採用する無細胞検定として実行される。特異的実施例において、このような調節はデサチュラーゼの活性の増加または減少となる。
【0096】
これらの結果は、ヒトにおけるhSCD1などのSCD生物活性の阻害薬がトリグリセリド水準を減少させおよびまたはHDL水準を増加する有益な効果をもたらすことを示唆している。加えて増加したSCD活性は更に増加した体重指標と関連している。この結果はhSCD1を、肥満および関連する異常を調節する薬剤を同定するための有用な標的として同定する。これらのヒトデータの結果において、SCD生物活性は全血漿脂質分画で18:1対18:0の脂肪酸の比率の代理マーカーを経由して測定された。このマーカーは間接的にhSCD1生物活性を測定する。
【0097】
更なる見地において、本発明は本発明の人ステアロイルCoAデサチュラーゼと発言する細胞でのヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの活性を調節する薬剤の能力を決定するプロセスに関し、
(a)薬剤の予め定められた水準でまた前記薬剤がヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの発現水準を調節しまたは調節しない条件の下で、ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する真核細胞と適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの活性が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記発現水準を調節したかどうかを決定する
ステップを含む。
【0098】
前記プロセスの特異的な実施例において、調節はデサチュラーゼの活性の増加または減少であり、これらのプロセスに有用な細胞は望ましくは哺乳類細胞であり、もっとも望ましくはヒト細胞であり、またここで開示された組換え細胞のいずれかを含む。
【0099】
SCD1組変え細胞系
ある実施例においては、本発明は組換え細胞系でのSCD1遺伝子またはタンパク質の使用を考える。SCD1組変え細胞系は従来の知識で公知の技術を用いて生成され、またそれは以下で特異的に設定される。
【0100】
本発明は更に本発明のポリペプチドを含むベクター、および本発明のベクターで遺伝子操作される宿主細胞、とりわけそのような細胞がhSCD1活性の検定に使用できる細胞系に帰着する場合の宿主細胞、および組換え技術によるSCD1ポリペプチドの産生に関する。
【0101】
宿主細胞は望ましくは真核細胞であり、望ましくはスポドプテラ種の昆虫の細胞であり、もっとも特殊にはSF9細胞である。宿主細胞は本発明のベクター、例えばクローニングベクターまたは発現ベクター(とりわけバキュロウイルス)で遺伝子操作(形質導入または形質転換あるいは形質移入)される。このようなベクターはプラスミドウイルスおよびその他を含む。遺伝子操作宿主細胞は本発明のプロモーターを活性化し、形質転換細胞を選択し、または遺伝子を増幅するのに適したように修飾された従来の栄養培地で培養される。温度、pHその他のような培養条件は発現のために選択された宿主細胞でこれまでに用いられたものであり、当業者にとっては明らかであろう。
【0102】
本発明のポリヌクレオチドは組換え技術によりポリペプチドを産生するために採用される。かくして例えばポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現するための各種の発現ベクターのいずれか一つを含む。このようなベクターは染色体、非染色体および合成DNA配列、例えばSV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNA、痘疹などのウイルスDNA、アデノウイルス鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病などの組合せから誘導されるベクターを含む。
【0103】
適切なDNA配列は各種の手順によりベクターに挿入される。一般にDNA配列は従来の公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順その他は当業者の範囲内にあるものと見做される。
【0104】
発現ベクター内のDNA配列はmRNA合成に指向するため適切な発現制御配列(プロモーター)に遺伝子操作で結合される。このようなプロモーターの代表的な例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌coli,lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーターおよび原核または真核細胞あるいはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御するものとして知られる他のプロモーターの名があげられる。発現ベクターは更に翻訳開始のためのリボソーム結合部位と転写ターミネーターを含む。ベクターは更に発現を増幅する適切な配列も含む。
【0105】
加えて発現ベクターは、真核細胞培養のための例えばジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性など、または例えば大腸菌でテトラサイクリンあるいはアンピシリン耐性などの形質転換宿主細胞の選択のために表現型特性を提供する好ましくは1個またはそれ以上の選択マーカーを含有する。
【0106】
前に記載の適切なDNA配列、同じく適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターは適切な宿主がタンパク質を発現できるように宿主を形質転換するために採用される。このような形質転換は永続的であり、かくして更なる試験に使用できる細胞系を生じさせるであろう。試験に使用されるこのような細胞系は一般に哺乳類であり、とりわけヒト細胞である。
【0107】
適切な宿主の代表的な例としては、スポドプテラSf9(および他の昆虫発現システム)ならびに例えばCHO、COSまたはボーエス黒色腫などの動物細胞;アデノウイルス;植物細胞および細菌細胞でさえも名があげられ、これらすべてはここで開示されるポリヌクレオチドを発現することができる。適切な宿主の選択はここでの教示に基づき当業者の知識の範囲内にあるものと見做される。ここで開示された検定方法で使用するためには、哺乳類、とりわけヒトの細胞が望ましい。
【0108】
より詳細には、本発明は更に前に広般に記載された1個またはそれ以上の配列を含む組換え構築物を含む。この構築物は例えばプラスミドまたはウイルスベクターなど、とりわけバキュロウイルス/SF9ベクター/発現システムが使用される場合のベクターを含み、そこに本発明の配列が前進または復帰配向で挿入されている。本実施例の望ましい見地において、この構築物は更に例えば配列に遺伝子操作で結合されたプロモーターを含む調節配列を含んでいる。数多くの適切なベクターとプロモーターが当業者に公知であり、商業的に利用されている。下記のベクターが例として提供される。細胞系:pQE70,pQE60,pQE−9(キアーゲン),pBS,pD10,ファージスクリプト,psiX174,PブルースクリプトSK,pBSKS,pNH8A,pNH16a,pNH18A,pNH46A(ストラータジーン);pTRC99a,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(ファーマシア);真核系:pWLNEO,pSV2CAT,pOG44,pXT1,pSG(ストラータジーン)pSVK3,pBPV,pMSG,pSVL(ファーマシア)。しかしいずれか他のプラスミドまたはベクターもそれらが宿主で複製可能で生存可能である限り使用することができる。
【0109】
プロモーター領域は選択マーカーでCAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは他のベクターを用いるいずれかの望ましい遺伝子から選択することができる。2個の適切なベクターはpKK232−8とpCM7である。とりわけ指名される細菌プロモーターはlacI,lacZ,T3,T7,gpt,ラムダPR,PLおよびtrpである。真核プロモーターはCMV即時初期,HSVチミジンキナーゼ,初期および後期SV40,レトロウイルスからのLTRs,およびマウスメタロチオネイン−Iを含む。適切なベクターとプロモーターの選択は従来の通常の技術の水準内にある。
【0110】
更なる実施例において、本発明は前記の構築物を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は高次の真核細胞、たとえば哺乳類細胞、または低次の真核細胞、例えば酵母細胞であってもよく、あるいは宿主細胞は原核細胞、たとえば細菌細胞であってもよい。構築物の宿主細胞への導入はリン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン仲介形質移入、またはエレクトロポレーション法で実施することができる(L.デービス,M.ディブナー,I.バッティ.分子生物学における基本的方法(1986年))。望ましい実施例は昆虫細胞、とりわけスポドプテラ・フルジペルダからのSF9細胞からの発現を利用する。
【0111】
宿主細胞の構築物は組換え配列によりコードされた遺伝子産物を従来の方法で産生するために利用することができる。選択肢として、本発明のポリペプチドは従来のペプチド合成機で合成により産生することができる。
【0112】
成熟タンパク質は適切なプロモーターの制御の下で哺乳類細胞、酵母、細菌、または他の細胞で発現することができる。無細胞翻訳システムもまた本発明のDNA構築物から誘導されるRNAsを使用するこのようなタンパク質を産生するために採用することができる。原核および真核宿主を用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、サムブルック他,分子クローニング:研究室マニュアル第2版,コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク(1989年);ウー他,遺伝子バイオテクノロジーにおける方法(CRCプレス,ニューヨーク,ニューヨーク(1997年)),組換え遺伝子発現プロトコル,分子生物学における方法所収,62巻(チュアン編、フマーナプレス,トトワ,ニュージャージー,1997年),および分子生物学における現在のプロトコル(オーサベル他編),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,ニューヨーク(1994−1999年)などに記載されており、これらの開示はすべてその全体を引用例として、ここに組込まれている。
【0113】
真核細胞、とりわけ哺乳類細胞、もっとも特別にはヒト細胞による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写はエンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加される。エンハンサーはその転写を増加するためプロモーターに作用する通常約10乃至300塩基対のシス作用性エレメントである。その例は複製起点の後期側塩基対100乃至210のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。
【0114】
一般に組換え発現ベクターは、例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子およびビール酵母菌Trp1遺伝子などの宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点と選択マーカー、および下流構造配列の転写に指向する高度に発現された遺伝子から誘導されるプロモーターを含むであろう。このようなプロモーターは他のものの中でも3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質、などのような解糖酵素をコードするオペロンから誘導することができる。異種構造配列は適当な相で翻訳開始および終結配列、ならびに望ましくは翻訳されたタンパク質の分泌を周辺腔または細胞外培地に向けることのできるリーダー配列を用いて組立てられる。選択肢として、異種配列は、たとえば発現された組換え産物の安定化または単純精製などの望ましい特性を与えるN末端またはC末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。
【0115】
バキュロウイルスベースの発現システムの使用は、ここで開示される組換え体を形成するのに望ましく便利な方法である。バキュロウイルスは大抵昆虫に感染するDNAウイルスの大きな科を代表する。その原型葉オートグラファ・カリフォルニカからの核多角体病ウイルス(AcMNPV)であり、これは数多くの鱗翅目種に感染する。バキュロウイルスの一つの利点は、組換えバキュロウイルスを生体内で産生できることである。伝達性プラスミドでの同時形質移入に続き、大抵の子孫は野生型になる傾向があり、またかなりの量の続く処理はスクリーニングを伴う。プラークの同定を助けるために、欠失変異体を利用する特別なシステムが利用できる。限定されない実施例により、組換えAcMNPV誘導体(BacPAK6と呼ばれるもの)が文献で報告され、それは(ウイルスの生存率に必須である)キャプシド遺伝子をコードする多角体遺伝子の上流で(またORF1629内で)制限ヌクレアーゼBsu361の標的部位を含んでいる。Bsf361はゲノム内のどこも切断されず、またBacPAK6の消化はORF1629の部分を欠失し、それによりウイルスを生存できなくする。かくしてSsu361−切断BacPAK6 DNAなどのシステムを伴うプロトコルで大抵の子孫は生存できなくなり、そのため伝達性プラスミドの同時形質移入後に得られBacPAK6消化の子孫のみが組換え体となり、何故なら外因性DNAを含む伝達性プラスミドがBsu361部位に挿入され、それにより組換え体を酵素に耐性であるようにするためである(キッツおよびポッシー,高頻度でバキュロウイルス発現ベクターを産生する方法.バイオテクニークス,14巻.810−817ページ(1993年)参照のこと。一般的手順については、キングおよびポッシー,バキュロウイルス発現システム:研究室ガイド,チャップマン・アンド・ホール,ニューヨーク(1992年)。および組換え遺伝子発現プロトコル,分子生物学における方法所収,62巻(トゥアン編,ファーマプレス,トトワ,ニュージャージー,1997年)第19章,235−246ページを参照のこと)。
【0116】
前記の内容に従って、本発明は更に本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する組換え真核細胞に関し、望ましくはここで前記細胞が哺乳類細胞でありもっとも望ましくはそれがヒト細胞である場合である。
【0117】
本発明は更に本発明の前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する細胞内で前記ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼの発現を調節する薬剤の能力を決定するプロセスでここで開示されたポリヌクレオチド、酵素、および細胞を使用するプロセスに関し、
(a)薬剤の予め定められた水準で本発明のヒトステアロイルCoAデサチュラーゼを発現する真核細胞に適切な条件の下で前記薬剤を接触させ、
(b)前記ステアロイルCoAデサチュラーゼの発現水準が前記接触後に変化するかどうかを決定し、
これにより前記薬剤が前記発現水準を調節したかどうかを決定する:
ステップを含むプロセスに関する。
【0118】
選択肢として、スクリーニング検定はレポーター遺伝子に遺伝子操作で結合された配列識別番号3のhSCD1プロモーター配列を含むベクター構築物を採用することもある。このようなベクターは潜在的転写調節タンパク質の作用、およびSCD1の転写に対するこれらの調節タンパク質の作用を調節する化合物の作用を研究するのに使用することができる。この型のベクターの例は下記の実施例に記載されたpSCD−500プラスミドである。このようなレポーター遺伝子構築物は、試験化合物が特定のプロモーターの制御の下で遺伝子の転写を活性化するのに成功したかどうかを示すのに一般に使用されている。
【0119】
特異的な実施例において、本発明は一つのプロセスを考慮し、ここで前記調節は前記発現水準の増加または減少であり、また前記細胞は哺乳類細胞、とりわけヒト細胞であり、ここで開示された組替え細胞のいずれかのものを含む。ひとつの実施例では、発現水準は前記細胞を前記薬剤に接触させた後に産生されるメッセンジャーRNAの水準を決定することにより決定される。
【0120】
遺伝子発現を調節する因子は必ずしもそれに限定されないが、レチノイドX受容体(RXRs)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)転写因子、ステロイド反応要素結合タンパク質(SREBP−1およびSREBP−2)、REV−ERBα、ADD−1、EBPα、CREB結合タンパク質、P300、HNF4、RAR、LXR、およびPOPα、NF−Y、C/EBPα、PUFA−REおよび関連タンパク質と転写調節因子を含む。SCD1を転写するこれらの転写因子の能力を調節する試験化合物の能力を評価するために設計されたスクリーニング検定は同じく本発明で考察される。
【0121】
hSCD1の活性または発現の増加または減少の生理学的利益は、必ずしもそれに限定されないが、心臓防御の利益につながる血漿トリグリセリドの減少およびまたは血漿HDLの増加、II型糖尿病での治療利益、体重減少、腺分泌の改良、および悪性疾患の機会の減少を含む。かくしてこのような活性または発現を調節する薬剤の能力の決定は、このような作用を生み出す有用な治療薬を発見する機会を提供する。
【0122】
更にhSCD1遺伝子発現、安定性、触媒活性およびその他の特性における変形は、このような酵素をコードするポリヌクレオチドでの対立遺伝子変形に帰因する。本発明に基づき開示されたプロセスは同じようにhSCD1の発現に対するこのようなゲノム作用を決定するのに使用される。本発明のプロセスを使用して、このような変形はhSCD1遺伝子およびまたはプロモーター配列内でDNA多形性の水準で決定される。このような作用は癌、神経性疾患、皮膚病、肥満症、糖尿病、免疫機能および脂質代謝に対するこのような多形性と素因の間の関連を母集団および家族ベースの遺伝子分析両方を通じて解明することに導く。
【0123】
最後に当業者はhSCD1のヒトの健康との関連性を動物モデルとの類似性により確認することができる。周知の動物疾病モデルがhSCD1モジュレーターのこれら動物における成長、発展または疾病のプロセスに対する作用を確かめるために使用される。更にモデルは(以下の実施例で詳細が示されるように)例えばノックアウトまたはノックインマウスなどのように遺伝子修飾多細胞動物を含む。
【0124】
一般的な見地において、本発明はSCD1調節薬を同定するためのプロセスに関し、それは
a)生理学的条件の下で化学薬剤とSCD1活性を持つまたは誘導する分子とを接触させ、
b)前記接触に続きSCD1活性を持つまたは誘導する前記分子の活性の変化を検出し、
それによりSCD1調節薬を同定する
ことを含む。
【0125】
本発明の特異的実施例において、SCD1活性を持つまたは誘導する前記分子は、そのような活性を持つポリペプチド、またはそのような活性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはそのような活性を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの活性を調節するポリペプチドである。
【0126】
特異的な実施例において、活性における前記変化は活性の増加または活性の減少である。
【0127】
加えて前記接触は生体内で達成される。このような一つの実施例において、ステップ(a)での前記接触は前記化学薬剤をトリグリセリド(TG)または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連疾患に悩む動物に投与し、続いて前記動物における血漿トリグリセリド水準の変化を検出し、これによりトリグリセリド(TG)または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連疾患を処置するのに有用な治療薬を同定することにより達成される。このような実施例において、動物はこのような疾患に悩み前記疾患の処置を必要とするヒト患者などのようなヒトである。
【0128】
このような生体内プロセスの特異的な実施例において、前記動物におけるSCD1活性の前記変化は活性の減少であり、望ましくはここで前記SCD1調節薬がデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性を事実上阻害しないことである。
【0129】
直前で開示されたこのようなプロセスにおいて、SCD1活性の検出された変化は以下のいずれか、いくつかまたはすべてを検出することにより検出される。
【0130】
a)SCD1ポリペプチド結合親和性、
b)ミクロソーム内でのSCD1デサチュラーゼ活性、
c)全細胞内でのSCD1デサチュラーゼ活性、
d)SCD1遺伝子発現、または
e)SCD1タンパク質水準。
【0131】
前記の記載に従って、本発明は更にここで開示された組換えSCDタンパク質を含む組換え細胞系に指向される。このような一つの実施例において前記(c)の全細胞はこのような細胞系から誘導され、望ましくはここで前記SCD1調節薬がデルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの生物活性をヒトで事実上阻害しないことである。本発明の組換え細胞系は更にレポーター遺伝子構築物に遺伝子操作で結合された配列組織番号1のSCD1プロモーター核酸配列を含む。その特異的な実施例において、前記(c)の全細胞はこのような細胞系の組換え細胞から誘導される。
【0132】
ここでの開示に従って、本発明は更にSCD1 cDNAを含むポリヌクレオチド配列によりコードされる単離されたステアロイルCoAデサチュラーゼ、並びにこのような核酸とその構築物を含む使用可能ベクターを有利に含有するレポーター遺伝子に遺伝子操作で結合された配列識別番号1のSCD1プロモーター核酸配列を含むレポーター遺伝子構築物に指向される。同じように本発明は更にステアロイルCoAレダクターゼ活性を持つ単離されたポリペプチド、およびそのようなポリペプチドと結合しまたはそれと相互作用する化学薬剤を成功裡に同定するここで開示されたプロセスを考慮し、そのプロセスは
a)そのようなポリペプチド、またはそのようなポリペプチドを発現する細胞を化学薬剤と接触させ、また
b)化学薬剤と前記ポリペプチドとの競合または相互作用を検出する。
このより成る。
【0133】
直前に記載されたプロセスの特異的実施例において、化学薬剤のポリペプチドへの結合は、
a)化学薬剤/ポリペプチド結合の直接検出、
b)競合結合測定による結合の検出、および
c)SCD1生物活性の測定による結合の検出
より成るグループから選択される方法により検出される。
【0134】
このようなプロセスでは、このようなポリペプチドの活性の調節はポリペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞を、ポリペプチドの活性を調節するのに十分な量でポリペプチドと結合する化合物に接触させることを含むプロセスにより検出される。このプロセスの特異的実施例において、SCD1活性を持つまたは誘導する分子は、ここで開示されるSCD1核酸およびまたはSCD1ポリペプチドより成るグループから選択される。
【0135】
前述の事項に従って、望ましい調節活性を持つ化学薬剤の同定に続き、本発明は更にヒトにおけるSCD1活性を阻害することを含むトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する疾病または異常に悩む動物、とりわけヒト患者のようなヒトを処置するプロセスに関する。望ましい実施例において、前記SCD1活性の阻害は、デルタ−5デサチュラーゼ、デルタ−6デサチュラーゼまたは脂肪酸シンテターゼの活性の事実上の阻害を伴わない。特異的な実施例において、本発明はその治療活性が本発明のプロセスにより初めて同定された薬剤の治療有効量をヒト患者に投与することを含むトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する患者または異常に悩むヒト患者を処置するプロセスに関する。
【0136】
前述の事項に従って、本発明は更にトリグリセリドまたはVLDLの血清水準に関連する疾患または異常の処置のためにヒトで有用であるSCD1活性のモジュレーターに関し、ここで前記活性はSCD1活性を調節するその能力により初めて同定され、とりわけこのような調節は本発明に基づきここで開示されたプロセスを使用して初めて検出された。その望ましい実施例では、このような調節薬はヒトの脂肪酸シンテターゼ、デルタ−5デサチュラーゼまたはデルタ−6デサチュラーゼを事実上阻害しない。
【0137】
かくして本発明は更に脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ調節薬を同定するプロセスに関し、それは
a)生理学的条件の下で化学薬剤と、脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する分子とを接触させ、
b)前記接触に続き脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する前記分子の活性の変化を検出し、
これにより脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ調節薬を同定する
ことを含む。
【0138】
このようなプロセスの特異的な実施例において、ステップ(a)での接触は、トリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の産生あるいは分泌、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他のパラメーターの血清水準に関連する疾患または異常に悩む動物に前記化学薬剤を投与し、前記接触に続き脊椎動物デルタ−9ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性を持つか誘導する分子の活性の変化を検出し、これによりトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の酸性または分泌、一家不飽和脂肪酸、ワックスエステル、および類似の疾病関連疾患を処置するのに有用な治療薬を同定することにより達成される。
【0139】
前述の事項に従って、本発明は更にトリグリセリド、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜の産生あるいは分泌、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、および類似のパラメーターなどの血清水準に関連する疾病または異常に悩むヒト患者を処置するプロセスに関し、それはこのような治療活性が本発明に従って開示されたプロセスにより同定された薬剤の治療有効量を前記ヒト患者に投与することを含む。
【0140】
このようなプロセスの望ましい実施例において、調節薬はヒトの脂肪酸シンテターゼ、デルタ−5デサチュラーゼまたはデルタ−6デサチュラーゼを事実上阻害しない。
【0141】
試験化合物/モジュレーター/ライブラリー源
前述の事項に従って、本発明は更に分子の大きさと分子量に関係なく、ここで開示されたいずれかの疾病を処置しおよびまたは診断しおよびまたは予防するのに有効で、望ましくはそのような薬剤がここで開示されたhSCD1の活性または発現を調節する能力を持ち、またもっとも望ましくは前記薬剤が本発明に従って開示された少なくとも1個のスクリーニング検定を通じてそのような活性を持つと決定された治療薬およびまたは診断薬に関する。
【0142】
試験化合物は一般にこのような化合物のライブラリーに編集され、また本発明のスクリーニング検定の主要な目的は化合物が未知の治療効力を持つ数百、数千または数百万の化合物を持つライブラリーから関係があると選択することである。
【0143】
薬剤発見と開発の分野での当業者は試験抽出物または化合物の明確な源が本発明のスクリーニング手順にとって重要ではないということを理解するであろう。従って、実際上どのような数の化学抽出物または化合物でもここに記載された例示的方法を用いてスクリーニングすることができる。このような抽出物または化合物の例は、必ずしもそれに限定されないが、植物、真菌、原核または動物をベースにした抽出物、発酵肉汁、および合成化合物、ならびに現存化合物の修飾物を含む。必ずしもそれに限定されないが、糖類、脂質、ペプチドおよび核酸ベースの化合物を含むいずれの数の化学化合物を含む任意のまたはそれに指向された合成(例えば半合成または全合成)を生成するために、数多くの方法が利用できる。合成化合物ライブラリーはブランドン・アンソシエーツ(メリマック,ニューハンプシャー)およびオルドリッチ・ケミカル(ミリウォーキー,ウイスコンシン)から商業的に利用できる。選択肢として、細菌、真菌、植物、および動物抽出物での形態の天然化合物のライブラリーは、バイオティクス(サセックス,英国)、ゼノーバ(スラウ、英国)、ハーバー・ブランチ・オーシャングラフィクス・インスティチュート(フォート・ピアス,フロリダ)、およびファルママー、ユー、エス、エイ(ケンブリッジ,マサチューセッツ)を含む数多くの源から商業的に利用できる。加えて、天然および合成産生ライブラリーが望ましければ従来の公知の方法に基づき、例えば標準抽出方法または分留方法により産生される。更にもし望ましければ、いずれのライブラリーまたは化合物でも、標準の化学的、物理的または生化学的方法を用いて容易に修飾される。
【0144】
かくして一つの見地において、本発明はここで開示されたヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ1(hSCD1)の活性およびまたは発現を調節できる薬剤に関し、とりわけ前記調節能力がhSCD1、またはhSCD1をコードする遺伝子を含む検定、またはhSCD1活性を測定する検定を使用して初めて決定された場合の活性または発現を調節できる薬剤に関する。ここで使用されるように、「調節できる」という用語は、そのような調節が定性的にか定量的にかのいずれかで検出できる点まで促進し、ここでまたはこのような調節が試験管内または生体内のいずれかで起こるように温度、圧力、pHその他の適切な条件下で前記活性を増加または減少させることにより、前記薬剤がhSCD1の全体としての生物活性を変化させる作用を持つこのような薬剤の特性を引用する。加えて「調節」という用語が、活性の変化、より特異的にはこのような活性の増加または減少のいずれかを意味するために、ここで使用されているのに対し、一方「活性」という用語は(例えばミリグラム当り単位または何か他の比重の適切な単位で測定されるように)特異的な酵素活性にのみ限定されるものではなくて、特異的酵素活性での変化によらず、前記hSCD1酵素をコードし発現するポリヌクレオチドの発現の変化(すなわち調節)に起因して酵素活性を増加させることを含むタンパク質の他の直接的および間接的作用を含む。ヒトSCD1活性は更にhSCD1の基質に特異的に結合する薬剤により影響される。かくしてここに使用される「調節」という用語は、前記調節の分子遺伝子水準に拘らず、それがそれ自身酵素に対する作用であるか、酵素をコードする遺伝子かまたは前記酵素をコードする遺伝子の発現を伴うRNA、とりわけmRNAに対する作用であるかというhSCD1活性での変化を意味する。かくして、このような薬剤による調節はDNA、RNAまたは酵素タンパク質の水準で起こり得るし、また生体内または生体外のいずれかで決定することができる。
【0145】
この特異的な実施例において、前記検定は本発明に基づきここで開示されたいずれかの検定である。加えて本開示により考慮される薬剤は抗体、RNAまたはDNAのいずれかの核酸などのタンパク質を含む高分子または低分子のものおよび低有機分子などの低化学構造のものなどのいずれかのサイズまたは化学的性質の薬剤を含む。
【0146】
他の見地において、本発明は薬剤を熟考し、ここで前記薬剤は本発明に従ってSCD1に関連するものと同定される疾病または異常を処置し、予防しおよびまたは診断するのに有用なものである。特異的な実施例は、疾病または異常が必ずしもそれに限定されないが、トリグリセリドの血清水準、VLDL、HDL、LDL、全コレステロール、コレステロール逆輸送または粘膜からの分泌の産生、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステル、その他コレステロール疾患、脂血症、心臓血管病、糖尿病、肥満症、禿頭症、皮膚病、癌、および多発性硬化、とりわけ疾病が心臓血管病または皮膚病、あるいは異常が禿頭症である場合を含む状況に向けられる。望ましい実施例において、このような薬剤は患者のHDL水準を増加し、およびまたは患者のトリグリセリド水準を低下させるであろう。どちらか一つまたは両方の作用は心臓血管病および冠状動脈症のリスクの低下と直接関係する。
【0147】
SCD1活性の既知のモジュレーターのいくつかは複合リノール酸、とりわけトランス10、シス12異性体およびチアゾールアジネジオン化合物、例えばトログリタゾンなどを含む。
【0148】
SCD1活性の阻害または調節のためのいずれかの適切なメカニズムを使用できることが予見される一方、3個の阻害薬のクラスの特異的な例が想像される。一つのクラスはSCD1発現を効果的に阻害する阻害薬を含み、例えばチアゾールアジネジオン化合物および多価不飽和脂肪酸がそれである。第二のクラスはSCD1の酵素活性を効果的に阻害する阻害薬を含み、例えばチア脂肪酸、シクロプロペノイド脂肪酸、およびある種の共役リノール酸異性体がそれである。最後に第三クラスの阻害薬はデサチュラーゼシステムに必須のタンパク質に干渉することができる薬剤を含み、それは例えばシトクロームb5、NADH(P)−シトクロームb5レダクターゼ、および末端シアン感受性デサチュラーゼに干渉する薬剤である。
【0149】
SCD1遺伝子の発現を効果的に阻害するために、SCD1遺伝子の転写を中断できるいずれの薬剤も利用できることが想定される。SCD1はいくつか既知の転写因子(例えばPPAR−γ、SREBP)により調節されるために、このような転写因子の活性に影響するいずれかの薬剤がSCD1遺伝子の発現を変更するのに使用できる。このような薬剤の一つのグループはチアゾールアジン化合物を含みそれはPPAR−γを活性化しSCD1転写を阻害するものとして知られている。これらの化合物はピオグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、トログリタゾン、およびBRL49653を含む。他の阻害薬は例えばリノール酸、アラキドン酸およびドデカヘキサノン酸などの多価不飽和脂肪酸を含み、それはまたはSCD1転写を阻害する。
【0150】
SCD1タンパク質の酵素活性を有効に阻害するために、SCD1タンパク質の活性を中断できるいずれかの薬剤を利用できることが予見される。例えばある種の共役リノール酸異性体はSCD1活性の有効な阻害薬である。特異的にはシス−12、トランス−10共役リノール酸がSCD酵素活性を効果的に阻害し、SCD1 mRNAの多くの量を減少させ、一方シス−9、トランス−11共役リノール酸はそのように作用しないことが知られている。ステルクラおよび綿実に見出されるもののようなシクロプロペノイド脂肪酸もまたSCD活性を阻害するものとして知られている。たとえばステルクリア酸(8−(2−オクチル−シクロプロペニル)オクタノール酸)とマルバリック酸(Malvalic acid)(7−(2−オクチル−シクロプロペニル)ヘプタノール酸)はそれぞれステアロイル−およびマルバロイル脂肪酸のC18およびC16誘導体であり、そのΔ9位置でシクロプロペン環を持っている。これらの薬剤はΔ9脱飽和を阻害することによりSCD活性を阻害する。他の薬剤はチアステアリン酸(8−ノニルチオオクタノール酸とも呼ばれるもの)などのチア脂肪酸およびスルホキシ成分を持つ他の脂肪酸を含む。
【0151】
デルタ−9デサチュラーゼ活性の既知のモジュレーターは、本発明で請求されたSCD1生物活性に結合する疾病および疾患を処置するのに有用であるとは知られていないが、あるいは代りにそれらが別の不満足な治療薬かのいずれかである。チア脂肪酸、共役リノール酸およびシクロプロペン脂肪酸(マルバリック酸およびステルクリア酸)は妥当な生理学的用量で有用でもなく、またそれらはSCD1生物活性の特異的阻害薬でもなく、むしろ他のデサチュラーゼ、とりわけシクロプロペン脂肪酸によるデルタ−5およびデルタ−6デサチュラーゼの交差阻害を示している。これらの化合物は本発明のスクリーニング検定の制御または試験モジュレーターを確立するのに有用ではあるが、本発明の請求項の対象とはなり得ない。本発明の望ましいSCD1モジュレーターは無関係のクラスのタンパク質に対し有意または事実上に衝撃を与えない。ある場合には、他のタンパク質、例えばデルタ−5およびデルタ−6活性などに特異的な検定は、同定された本発明の化合物が有意なまたは事実上の交差阻害を示さないことを確実にするために更に試験されねばならないであろう。
【0152】
SCD1の公知の非特異的阻害薬はSCD1の阻害に適した治療薬の合理的な設計に有用であることができる。3個の阻害薬のすべては炭素#9と#10の間に各種の置換基を持つ。更にかれらはCoAが有効であるために共役を必要とするし、また相対的に疎水性活性部位に多分位置を占める。植物(可溶)SCDの活性部位の耕地のX線座標軸と組合されたこの常法は、SCD1に特異的な治療許容阻害薬の合理的な薬剤設計のための「シリコンコンピュータチップ(in silico)」プロセスを補助する。
【0153】
本発明は更に前に表記したスイスプロットアクセッション番号に示されたアミノ酸配列を持ち、ヒトSCD1に特異的に結合し、また従ってSCD1の活性を阻害する抗体を提供する。この抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはそのSCD結合断片である。一つの実施例において、抗体は単離され、すなわちいずれかの他の抗体から遊離した抗体である。抗体を作成し単離する方法は従来の技術で公知である(ハーロー,他,1988年,抗体:研究室マニュアル:コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー)。
【0154】
本発明は更にヒトSCD1 mRNAに特異的に結合し、それによりSCD1遺伝子転写の水準を下げるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。公知の標的遺伝子に対してこれを作成し使用する方法は従来の技術で公知である(アガーワル,S.(1966年)アンチセンス治療法.トトワ,ニュージャージー,フマーナ・プレス,インコーポレイテッド)。
【0155】
組合せおよび医薬品化学
典型的には、高処理スクリーニング検定などのスクリーニング検定は、検定タンパク質の活性を調節するいくつかの場合により多くの化合物を同定するであろう。スクリーニング検定で同定される化合物は、更にそれがヒトに治療薬として使用される前に修飾される。典型的には、組合せ化学は改良された吸収、生分配、退社およびまたは排出、あるいは他の重要な治療見地を持つ可能な変異体を同定するためにモジュレーターに対し実施される。必須の不変量は、改良された化合物が標的タンパク質の望ましい調節に必要である特定の活性基または複数の基を共有するということである。多くの組合せ化学と医薬品化学技術は従来の技術で公知である。各人は修飾類似体を生成するために化合物の1個またはそれ以上の構成成分を加えまたは削除し、その類似体は本発明の化合物を同定するため再び検定される。かくして本発明で使用されるように、本発明のSCD1スクリーニング検定を用いて同定された治療化合物はそのように同定された実際の化合物を含み、またそのように同定されまたここで請求される疾患の処置に有用である化合物として作られたいずれかの類似体または組合せ修飾物を含む。
【0156】
薬剤調製と投薬
も一つの見地において、本発明は本発明に従ってここで開示された小さい有機分子などの治療薬、予防薬または診断用薬を含むポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の化学薬剤を含む組成物に指向され、ここで前記ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の薬剤は薬理許容担体に懸濁され、この担体はいずれかの薬理許容希釈剤または賦形剤を含む。薬理許容担体は必ずしもそれに限定されないか、水、食塩水、グリセロールおよびエタノール、その他を含み、鼻および呼吸気道輸送または眼科系の輸送のためのスプレーを形成するのに有用である担体を含む液体である。薬理許容担体、希釈剤および他の賦形剤についての十分な議論はレミントン・ファーマシューティカル・サイエンス(マック・パブリッシング・カンパニー,ニュージャージー,最新版)で提示されている。
【0157】
前記で利用される阻害薬は、選ばれた阻害薬に適したものとして、従来の知識で一般に使用される公知の送達システムのいずれかを使用して被験者に送達される。望ましい送達システムは消化気道で吸収される選択された阻害薬の能力に依存して静脈内注射または経口送達を含む。
【0158】
も一つの見地において、本発明は更にここで開示された組成物の治療または予防有効量を患者に投与することを含む疾病または異常に悩む患者で治療または異常を予防しまたは処置するプロセスに関する。
【0159】
診断と薬理ゲノミクス
追加の見地において、本発明は更に、疾病または異常に悩んでいるものと推測され、またはそれに悩む危険にさらされている患者、一般にはヒト患者の疾病または異常を診断するプロセスに関し、それは前記患者から組織サンプルを獲得し、前記組織サンプルの細胞のhSCD1の活性水準を決定し、前記疾病または異常に悩んでいるとは推測されずまたはそれに悩む危険にさらされていない患者からの対応する組織の等量の活性と前記活性とを比較することより成る。その特殊な実施例において、前記疾病または以上は必ずしもそれに限定されないが、コレステロール疾患、脂血症、心臓血管病、糖尿病、肥満症、禿頭症、皮膚病、癌および多発性硬化、とりわけここで前記疾病が心臓血管病または皮膚病であるか、あるいは前記異常が禿頭症である場合を含む。
【0160】
追加の見地において本発明はhSCD1が薬理ゲノミクス的重要性を有することを教示する。SNPs(単一ヌクレオチド多形性)、cSNPs(cDNAコーディング領域にあるSNPs)多形性およびその他を含む変異体は、予防薬または治療薬の投与に対する被験者の応答に劇的な結果を持つことになる。ある種の変異体は多かれ少なかれある種の薬剤に応答する。も一つの見地において、治療薬のいずれかまたはすべては被験者に存在するhSCD1変異体に依存するより多くまたはより少ない有毒な副作用を持つことができる。
【0161】
一般に本発明は、それを必要とする被験者に投与される予防薬およびまたは治療薬を選択するプロセスを開示し、それは
(a)前記被験者のhSCD1核酸配列の少なくとも一部を決定し、また
(b)前記hSCD1核酸配列をhSCD核酸の既知の変異体と比較する、
ことを含み、ここで前記既知の変異体は前記薬剤に対する応答性と相関し、また前記薬剤は望ましい相関を基礎にして前記被験者のために選択される。この方法では、相関は予防作用およびまたは治療作用であり、あるいはそれは有毒副作用の回避であり、もしくはいずれか他の望ましい相関である。
【0162】
本発明の薬理ゲノミクスの適用において、薬物適用に対するヒト疾病プロセスまたは応答と相関する個体のhSCD1において、cSNPs(コーディング領域小ヌクレオチド多形性)を同定するために一つの検定が提供される。発明者はこれまでにhSCD1の2個の推定上のcSNPsを同定した。エキソン1では位置8でのD/Eアミノ酸変化に対応するnt 259でのC/A cSNP;およびエキソン5では位置224でのL/Mアミノ酸変化は対応するnt 905でのC/A cSNPがそれである(ジェンバンク・アクセッションに基づく配列ナンバリング:AF097514)。これらの推定上のcSNPは、対照集団に対しこれらのcSNPsを含む個体のヒト疾病プロセスと薬物適用に対する応答に相関することができることが予見される。当業者はどの疾病プロセスとどの薬物応答に対する応答がそのように相関するかを決定することができる。
【0163】
本発明の手順を実行するに当り、特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件その他の引用が限定されるものではなくて、当業者が議論の提示される特別な前後関係で関心を持ちまたは価値があると認識するようなすべての関連する物質を含むように読み取られるべきであることは当然理解されるべきである。例えば、1個の緩衝液系または培養培地をも一つのものに置換して、同一ではないにしても類似の結果を達成することはしばしば可能である。当業者はここで開示された方法と手順を用いる際に彼等の目的に最適に役立つように過度の実験をすることなくそのような置換を行い得るようなこのようなシステムと方法論についての十分な知識を持つであろう。
【0164】
この開示を適用する際には、本発明に従って開示される方法で他の異なった実施例が関連する技術の当業者に間違いなくそれらを示唆するであろうことは十分に考慮されねばならない。
【0165】
[発明の実施の形態]
(実施例1)
マウスのステアロイルCoAデサチュラーゼ遺伝子の分裂は血漿トリグリセリド水準ならびに脂質代謝の他の欠陥を減少させる
この実施例はSCD1遺伝子特異的ノックアウトマウスを特徴付けることにより、マウスでの特異的SCD1生物活性を、初めて、同定する。
【0166】
SCDの生理学的機能を調べるために、我々はSCD1ヌル(SCD1−/−)マウスを生成した。SCD1ヌル(ノックアウト)マウスのリポタンパク質プロファイルはトリグリセリド(すなわちVLDL)水準の目覚しい減少を示し、一方ほぼ正常なHDLとLDL水準は維持された。この結果は、SCD1での突然変異がマウスでの低トリグリセリド(TG)リポタンパク質プロファイルの原因となる変異であり、またこの点に関しては他のSCDアイソフォームとは異なっていることを確認する。この表現型の発病原により、他のSCDアイソフォームがそのような大きな範囲までTG水準に影響を及ぼさないことは明らかである。
【0167】
SCD1遺伝子の標的化分裂
図1AはSCD1遺伝子をノックアウトするために用いられた戦略を示す。マウスSCD1遺伝子は6個のエキソンを含む。遺伝子の最初の6個のエキソンは相同的組換えによりネオマイシン耐性カセットで置換され、SCD1遺伝子の完全コーディング領域の置換を来たした(図1A)。ベクターは胚幹細胞内に電気穿孔され、ネオカセットを組込んだクローンはジェネティシンでの成長により選択された。標的ESクローンはC57BI/6芽細胞に注入され、生殖細胞系列を通じて分裂された対立遺伝子を伝達した4系列のキメラマウスを産出した。変異体マウスは生存可能でまた生殖能があり予想されたメンデルの分布で子孫を設けた。SCD1遺伝子座の成功する遺伝子標的を検定するPCRベースのスクリーニングが図1Bで示される。SCD1遺伝子の発現が消散されたかどうかを測定するために、我々はノーザンブロット分析を行った(図1C)。SCD1 mRNAはSCD1−/−マウスの肝臓では検出できず、またSCD+/−マウスではほぼ50%減少した。SCD2 mRNAはSCD1−/−マウスと野生型マウスの両方で低水準で発現された。ノーザンブロットでの結果と一致して、ウェスタンブロット分析はSCD−/−マウスからの肝臓で免疫反応性SCDタンパク質は示されず、一方SCD1タンパク質は遺伝子用量に依存するやり方でヘテロ接合性および野生型の肝臓組織両方で見出可能であった。肝臓でのSCD酵素活性は〔1−14C〕ステアロイルCoAから〔1−14C〕オレイン酸エステルへの転換率(図1E)により測定されるように、野生型マウスでは高かったがSCD1−/−マウスの肝臓の全抽出物では検出できなかった。
【0168】
脂質分析
肝臓コレステロールエステル(0.8±0.1対0.3±0.1mg/g肝臓)および肝臓トリグリセリド(12.6±0.3対7.5±0.6mg/g肝臓)の分析はSCD1ノックアウト動物が野生型対照よりもコレステロールエステルとトリグリセリド両方で低い量であることを示した。血漿リポタンパク質分析は、正常な対照と比較してSCD−/−マウスで血漿トリグリセリドの減少(12.6±6.8対45.4±3.8)を示した。これらの発見はアセビアマウスでの発見と類似している。図2は高速性能液体クロマトグラフィーを用いて得られた血漿リポタンパク質プロファイルを記録する。SCD1ノックアウトマウスはVLDL分画でトリグリセリドの65%の減少を示したがLDLまたはHDL水準では殆んどまたは何ら有意の差は示されなかった。
【0169】
アセビアマウスは図2でSCD1ノックアウトマウスと比較される。これらの発見は著しく類似している。アセビアマウス血漿リポタンパク質は高速性能液体クロマトグラフィーにより分離され、マウス(n=3)の各種濃度分画内のリポタンパク質の間のトリグリセリド分布が示される。図3はアセビアマウスリポタンパク質プロファイルの追加の例を示す。これらのプロファイルはSCD−/−とSCD−/+マウスのVLDL分画でのトリグリセリド分布の主要な差を示した。SCD−/+のトリグリセリド水準はVLDLで25mg/dlで、LDLとHDL分画では極めて低水準であった。これとは逆に、SCD−/−は3個のリポタンパク質分画で非常に低い水準のトリグリセリドを有していた。
【0170】
脂肪酸分析
我々は更に各種の組織で一価不飽和脂肪酸の水準を測定した。表1は野生型およびSCD−/−マウスのいくつかの組織の脂肪酸組成物を示す。SCD−/−マウスからの肝臓と血漿でのパルミトレイン酸エステル(16:1n−7)の相対量はそれぞれ55%と47%減少し、一方オレイン酸エステル(18:1n−9)のそれはそれぞれ35%と32%減少した。SCD−/−マウスの白脂肪組織と皮膚のパルミトレイン酸エステルの相対量は70%以上減少し、一方減少それ自身は統計的に有意ではあるがこれら組織でのオレイン酸エステルの減少は20%以下であった。一価不飽和脂肪酸の水準のこれらの変化は脱飽和指標の減少をもたらしこれはデサチュラーゼ活性の減少を示唆する。これらの組織とは逆に、SCD2アイソフォームを優先して発現する脳は、野生型とSCD−/−マウスの両方で類似の脂肪酸組成物と変更されない脱飽和指標を有していた。我々は、SCD1が肝臓での一価不飽和脂肪酸の産生に大きな役割を果すものと結論する。
【0171】
【表1】
【0172】
図4(表2で計量されている)は、SCD1がSCD1ノックアウトマウスとアセビアマウスの両方の血漿脂肪酸分析で判定されるように血漿脱飽和指標(全脂質分画で血漿比18:1/18:0または16:1/16:0)への主たる貢献者であることを示している。両動物モデルで、約50%またはそれ以上の減少が血漿脱飽和指標で観察される。これは血漿脱飽和指標がSCD1の機能に大きく依存していることを示している。
【0173】
【表2】
【0174】
ノックアウトマウスの実験手順
SCD1ノックアウトマウスの生成
標的ベクターのマウスゲノムDNAが129/SVゲノムライブラリーからクローンされた。標的ベクター構築物は短縮部として3′相同を持つ1.8キロベースXba I/Sac I断片とネオ発現カセットに隣接してクローンされた5′相同を持つ4.4キロベースCla I/Hind III断片の挿入により生成された。構築物は更に1.8キロベース相同腕部に対するHSVチミジンキナーゼカセット3′を含み、正/負の選択を可能にする。標的ベクターはNot Iにより線型化され胚幹細胞に電気穿孔された。ジェネティシンとガンシクロビルでの選択が行われた。ジェネティシンとガンシクロビル両方に耐性のクローンはEcoRI制限酵素消化後にサザンブロットにより分析され、ベクター配列の下流に位置する0.4キロベースプローブでハイブリッド形成された。PCR遺伝子型化のために、ゲノムDNAは、プライマーA
5′−GGGTGAGCATGGTGCTCAGTCCCT-3′ (配列識別番号2)
これはエキソン6に位置し、プライマーB
5′-ATAGCAGGCATGCTGGGGAT-3′ (配列識別番号3)
これはネオ遺伝子(425塩基対産物、標的化対立遺伝子)に位置し、またプライマーC
5′-CACACCATATCTGTCCCCGACAAATGTC-3′ (配列識別番号4)
【0175】
これは標的遺伝子(600塩基対産物、野生型対立遺伝子)の下流に位置し、これらのプライマーにより増幅された。PCR条件は35サイクルで、各94℃で45秒、62℃で30秒、72℃で1分であった。標的化細胞はC57BI/6芽細胞に微小注入され、キメラマウスはC57BL/6または129/SvEvタコニック雌と交配され、それらは生殖系列遺伝を提供した。マウスは12時間ずつの明暗サイクルで維持され、正常な規定食(ダイエット)、半精製規定食、またはトリオレイン、トリパルミトレインまたはトリエイコセノイン50%(全脂肪酸の%)を含む規定食の食物を与えられた。半精製規定食はハーラン・テクラッド(マジソン,ウイスコンシン)から購入され、ビタミン無しカゼイン20%、ダイズ油5%、Lシスチン0.3%、マルトデキストリン13.2%、蔗糖51.7%、セルロース5%、ミネラル混合物(AIN−93G−MX)3.5%、ビタミン混合物(AIN−93−VX)1.0%、酒石酸水素コリン0.3%を含んでいた。実験用規定食の脂肪酸組成物は気液クロマトグラフィーで測定された。対象規定食はパルミチン酸11%(16:0)、オレイン酸23%(18:1n−9)、リノール酸53%(18:2n−6)およびリノレン酸8%(18:3n−3)を含んでいた。高トリオレイン規定食は16:0、7%、18:1n−9、50%、18:2n−6、35%および18:3n−3、5%を含んでいた。
【0176】
材料
放射性〔α−32P〕dCTP(3000Ci/mmol)はデュポン・コーポレーション(ウイルミントン,デラウェア)から入手した。薄層クロマトグラフィー平板(TLCシリカゲルG60)はメルク(ダルムシュタット,ドイツ)から得た。〔1−14C〕ステアロイルCoAはアメリカン・レイディオラベルド・ケミカルズ,インコーポレイテッド(セントルイス,ミズーリ)から購入された。インモビロン−P透過膜はミリポア(ダンバーズ,マサチューセッツ)からのものであった。ECLウェスタンブロット検出キットはエイマシャム−ファーマシア・バイオテック,インコーポレイテッド(ピスケータウェー,ニュージャージー)からであった。他のすべての化学品はシグマ(セントルイス,ミズーリ)から購入された。
【0177】
脂質分析
全脂質はブライとダイアー(ブライとダイア−,1959年)の方法に基づいて肝臓と血漿から抽出され、リン脂質、ワックスエステル、遊離コレステロール、トリグリセリドおよびコレステロールエステルはシリカゲル高速性能TLCにより分解された。石油ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:30:1)またはベンゼン/ヘキサン(65:35)は現象溶媒として使用された(ニコレーズとサントス,1985年)。スポットはエタノール95%の0.2%、2′,7′−ジクロロフルオレセイン、またはリン酸8%の10%硫酸銅により視覚化された。ワックストリエステル、コレステロールエステルおよびトリグリセリドのスポットはかき落され、1mlの5%塩酸メタノールが加えられ、1時間100℃で加熱された(宮崎他,2000年)。メチルエステルは内標準としてヘプタデカン酸コレステロール、トリヘプタデカン酸およびヘプタデカン酸を用いる気液クロマトグラフィーで分析された。目瞼と血漿の遊離コレステロール、コレステロールエステルおよびトリグリセリド容量は酵素検定で測定された(シグマ、セントルイス、ミズーリおよびワコー・ケミカル、日本)。
【0178】
RNAの単離と分析
全RNAは酸グアニジウム・フェノール・クロロホルム抽出液(バーンロア他,1985年)を用いて肝臓から単離された。全RNAの20マイクログラムがアガロース1.0%/ホルムアルデヒドゲル2.2M電気泳動により分離され、ナイロン膜に移された。膜は32P−標識SCD1およびSCD2プローブでハイブリッド形成された。pAL15プローブが等量負荷の対照として使用された(M.宮崎,Y.C.キム,M.P.グレー−ケラー,A.D.アッティー,J.M.ヌタンビ(2000年)。肝コレステロールエステルとトリグリセリドの生合成はステアロイルCoAデサチュラーゼの遺伝子の分裂によりマウスで弱められる。生物化学ジャーナル,275巻,30132−8ページ)。
【0179】
SCD活性検定
ステアロイルCoAデサチュラーゼ活性は下村他により記載されたように本質的には肝臓ミクロソームで測定された(I.下村,H.島野,B.S.コーン,Y.バシュマコフ,J.D.ホートン(1998年)。核ステロール調節エレメント結合タンパク質は遺伝子導入マウス肝臓での不飽和脂肪酸生合成の全プログラムの原因となる遺伝子を活性化する。生物化学ジャーナル,273巻,35299−306ページ)。組織は緩衝液A(0.1Mのカリウム緩衝液、pH7.4の10量で均質化された。ミクロソーム膜分画(100,000×gペレット)は連続遠心分離により単離された。反応は37℃で5分、100μgのタンパク質ホモジェネートおよび60μMの〔1−14C〕−ステアロイルCoA(60,000dpm)、2mMのNADH、0.1Mのトリス/塩酸緩衝液(pH7.2)で行われた。反応後に脂肪酸は抽出され、次いで10%の酢酸塩化物/メタノールでメチル化された。飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸メチルエステルは現象液としてヘキサン/ジエチルエーテル(9:1)を用いる10%AgNO3含浸TLCで分離された。平板は95%エタノールでの0.2%2′,7′−ジクロロフルオレセインでスプレーされ、また脂質は紫外線光の下で同定された。分画は平板からかき落され、放射能は液体シンチレーションカウンターを用いて測定された。酵素活性はnモル分−1mg−1タンパク質で表された。
【0180】
イムノブロッティング
各グループの3匹のマウスからプールされた肝臓膜がハイネマン他(ハイネマンとオツォールス,1998年)により記述されたように準備された。各分画からの同量のタンパク質(25μg)が10%のSCDポリアクリルアミドゲル電気泳動を受け、4℃でインモビロン−P移動膜に移された。TBS緩衝液(pH8.0)プラストゥイーン内で10%脱脂乳で遮断の後、膜は洗浄され、ウサギ抗ラットSCDを一次抗体、またヤギ抗ウサギIgG−HRP接合体を二次抗体として保温された。SCDタンパク質の視覚化はECLウエスタンブロット検出キットで行われた。
【0181】
組織構造
組織は中性緩衝ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋され、切断されヘマトキシリンとエオシンで染色された。
【0182】
この作業はアメリカン・ハート・アソシエーション,ウイスコンシン支部の助成金で、また一部は国防省からの#DAMD17−99−9451補助金により支援された。
【0183】
アセビアマウスの実験手順
アセビアホモ接合マウス(ab J/ab Jまたは−/−)およびヘテロ接合体マウス(+/ab Jまたは+/−)がジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー,メーン)から獲得され,ユニバーシティ・オブ・ウイスコンシン,アニマル・ケア・ファシリティで飼育された。この研究ではホモ接合体(−/−)マウスとヘテロ接合体(+/−)マウスの間で比較がなされたが,それは後者が正常マウスと区別できないためである。マウスは12時間明、12時間暗のサイクルで作動する無病原体バリア設備で飼育された。3週齢時にこれらのマウスは任意に2週または2ヶ月間実験室規定食または50%(全脂肪酸の%)のトリオレインまたはトリパルミトレインを含む半精製規定食を共餌された。半精製規定食はハーロン・テクラッド(マジソン,ウイスコンシン)から購入されたもので、これは18%の無ビタミンカゼイン、5%のダイズ油、33.55%のコーンスターチ、33.55%の蔗糖、5%のセルロース、0.3%のLメチオニン、0.1%のコリン塩化物、塩混合物(AIN−76A)とビタミン混合物(AIN−76A)を含んでいた。実験用規定食の脂肪酸組成物は気液クロマトグラフィーにより測定された。対照規定食は11%のパルミチン酸、(16:0)、23%のオレイン酸(18:1n−9)、53%のリノール酸(18:2n−6)および8%のリノレン酸(18:3n−3)を含んでいた。高トリオレイン規定食は7%の16:0、50%の18:1n−9、35%の18:2n−6および5%の18:3n−3を含んでいた。高トリパルミトレイン規定食は6%の16:0、49%のパルミトレイン酸(16:1n−7)、12%の18:1n−9、27%の18:2n−6および4%の18:3n−3を含んでいた。
【0184】
動物はペントバルビタールナトリウム(体重0.08mg/g)(ネンブタール,アボット,ノースシカゴ,イリノイ)の腹膜内注射により午前10時ごろ麻酔された。肝臓は即時に単離され、重量測定し、液体窒素で保持された。血液サンプルは腹静脈から獲得された。
【0185】
材料
放射性α32P〕dCTP(3000Ci/mmol)はデュポン・コーポレイション(ウイルミントン,デラウェア)から得られた。薄層クロマトグラフィー平板(TLCシリカゲルG60)はメルク(ダルムシュタット,ドイツ)からのものであった。〔1−14C〕−ステアロイルCoA、〔3H〕コレステロール、及び〔1−14C〕オレオイルCoAはアメリカン・レイディオラベルド・ケミカルズ,インコーポレイテッド(セントルイス,ミズーリ)から購入された。インモビロン−Pトランスファー膜はミリポア(ダンドース,マサチューセッツ)からであった。EDLウエスタンブロット検出キットはエイマシャム−ファーマシア・バイオテック,インコーポレイテッド(ピスケータウェイ,ニュージャージー)からであった。LT−1形質移入試薬はパンベラ(マジソン,ウイスコンシン)からであった。他のすべての化学品はシグマ(セントルイス,ミズーリ)から購入された。ラット肝臓ミクロソームSCDはユニバーシティ・オブ・コネティカット・ヘルスセンターのジュリス・オゾールス博士から提供された。pcDNA3−1発現ベクターSCD1はアイオワ・ステート・ユニバーシティのトラビス・ナイト博士により提供された。
【0186】
脂質分析
全脂質はブライおよびダイア−(E.G.ブライおよびW.J.ダイア−,(1959年)カナディアン・ジャーナル・オブ・バイオケミカルズ・アンド・フィジオロジー,37巻,911−917ページ)の方法に基づいて肝臓と血漿から抽出され、リン脂質、遊離コレステロール、トリグリセリドおよびコレステロールエステルはシリカゲルTLCで分離された。石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸(80:30:1)は現象液として使用された。スポットは95%エタノール内での0.2%、2′、7′−ジクロロフルオレセインで、または、8%リン酸内での10%硫酸銅により視覚化された。リン脂質、コレステロールエステルおよびトリグリセリドスポットはかき落され、1mlの5%塩酸メタノールが加えられ、100℃で1時間加熱された。メチルエステルは内標準としてヘプタデカン酸コレステロールを用いて気液クロマトグラフィーにより分析された(K.N.リー,M.W.パリザ,J.M.ヌタンビ(1998年)バイオケミカルズ,バイオフィジックス,リサーチ・コミュニケーション,248巻,817−821ページ;M.宮崎,M.Z.ファン,N.竹村,S.渡辺,H.奥山(1998年)脂質33巻,655−661ページ)。肝臓と血漿の遊離コレステロール・コレステロールエステルおよびトリグリセリド容量は酵素検定で測定された。(シグマ,セントルイス,ミズーリ)およびワコー・ケミカルズ,日本)。
【0187】
血漿リポタンパク質分析
マウスは最小4時間餌を与えられず炭酸ガス窒息または頸部脱臼で犠牲にされた。血液が直接心臓穿刺で無菌で収集され、血漿を集めるために遠心(13,000×g、5分、4℃)された。リポタンパク質はスーパーロズ6HR 10/30 FPLCカラム(ファーマシア)上で分画された。血漿はPBSで1:1に希釈され、(カメオ 3AS 注射器フィルターで)濾過され、1mMのEDTAおよび0.02%のNaN3を含むPBSで平衡化されたカラムに注入された。100μlの血漿の等量がカラムに注入された。流速は0.3ml/分で一定に設定された。500μlの分画が収集され、全グリセリド測定(シグマ)に使用された。報告された値は分画当りの全トリグリセリド質量であると報告された。リポタンパク質の同定はLDLに対しては抗ApoB免疫反応を、またHDLには抗ApoA1免疫反応を利用して確認された。
【0188】
(実施例2)
ヒトにおける18:1/18:0FFA比とTG/HDL水準の間の有意な相関の立証
本実施例はヒトにおけるデルタ−9デサチュラーゼ活性がトリグリセリド(VLDL)の血清水準と直接、または血清HDL水準および全血清コレステロールとは逆に相関することを、初めて立証する。
【0189】
実験のデザイン
全体で97個体からの血漿が脂肪酸容量をガスクロマトグラフィー(GC)で分析された。全遊離脂肪酸容量(FFA)は測定され、オレイン酸エステルとステアリン酸エステルとの比(18:1/18:0)とパルミトレイン酸エステルとパルミチン酸エステルとの比(16:1/16:0)が計算され、前記の通り脱飽和指標として定義された。我々はこれらの比と、3個の臨床インジケータ:血漿TG(トリグリセリド)水準、血漿HDL(高密度リポタンパク質)水準および全血漿コレステロールとの間の関係を見出するように求めた。
【0190】
患者のサンプル
患者のサンプルはHDLによる表現型多様性を最大にするように選択された。我々のコホート内では21個の個体が高HDL表現型(年齢と性で>第90百分位数)を示し、一方6個はABCA1遺伝子での突然変異により低HDL表現型を示した。33個体は正常HDLパラメーター(年齢と性で<第90および>第5百分位数)の範囲内にある。
【0191】
我々は更に、高TGおよびまたは高コレステロールを持つ家族性混合型高脂血症(FCHL)の9個体、ならびに正常TG水準の16対照個体を含めてTG水準による我々のサンプルを多様化するように努めた。
【0192】
ある場合には、同一家族からの複数個体が試験された。ABCA1突然変異を持つ6個体の内5個体が同一家族(NL−020)の一部であった。複数個体は更にABCA1に遺伝子結合されない低HDL表現型を分離している他の系統から試験された。このカテゴリーでは、影響された2個の個体がNL−008から試験され、一方4個の影響された個体はNL−001から試験された。低HDL表現型を持つ残り6個体は相互に無関係であり、異なった系統から選ばれた。高HDLを持つこれらの個体の内、7個体は相互に無関係であった。これら個体で観察された高HDLが家族の構成員で明白な遺伝子的基礎を持つかどうかについては未だ明らかではない。残る高HDL表現型の14個体の内、6個体は家族HA−1からのものであり、8個体は別の家族HA−3からである。低HDLと高HDL両方のものに関連する未影響個体も試験された。
【0193】
我々のコホートはTGおよびHDL水準で広い変化を示す。一般に低HDLの個体は高TG水準を持ち、また高TG水準のものは低HDL水準を持つ傾向がある。TGとHDLの間のこの関係はこれまでに文献で記載されている(デービス他,1980年)。
【0194】
脂肪酸エステルの分析は以下のように測定された。患者のサンプルからの細胞は冷却食塩加リン酸緩衝液で2度洗浄され、全細胞脂質は3回CHCl3/MeOH(2:1容量/容量)で抽出された。3個の脂質抽出物はスクリューキャップ付きガラス管で混合され、熱ブロックで40℃でN2ガスの下で乾燥され、トルエンで再懸濁された。脂肪酸メチルにエステルはBCl3/MeOH(オールテック,ディアフィールド,イリノイ)から産生され、ヘキサンで抽出され、乾燥され、またヘキサンで再懸濁された。脂肪酸メチルエステルは7683オートインジェクターと275℃に設定された水素炎イオン化検出器に接続されたHP−5カラム(30′ 0.25mm、0.25μmフィルム厚)とを備えたヒューレットパッカード6890ガスクロマトグラフを用いて同定された。インジェクターは250℃で維持された。カラム温度は注入後180℃で2分維持され、200℃まで8℃/分で上昇され、200℃で15分維持され、次いで250℃まで8℃/分で上昇された。これらの条件の下で、Δ9−16:1、16:0、Δ9−18:1および18:0メチルエステルがそれぞれ9.2分、9.7分、15.3分および16.4分に溶離した。リー他(1998年),Biochem,Biophys,Res,Commun.248巻:817−821ページ,宮崎他,(1998年)脂質,33巻,655−661ページ;M.宮崎,Y.C.キム,M.P.グレー−ケラー,A.D.アッティー,J.M.ヌタンビ(2000年),生物化学ジャーナル,275巻(39号):30132−8ページ参照。
【0195】
結果
線形退縮分析が全ヒトデータセットを用いて行われた。18:1/18:0の比はTG水準(r2=0.39、p<0.0001)に有意の関係を示し(図5a)、同じくHDL水準(r2=0.12、p=0.0006)に有意の相関を示した(図5b)。
【0196】
16:1/16:0血漿脂肪酸比は同じ方法で測定されたが、その結果は目覚ましいものではなかった。16:1/16:0の相対水準の血漿TG水準との間の弱い関係が観察されたが(r2=0.05、p=0.03)(図6)、一方16:1/16:0比とHDL水準との関係は有意に達しなかった(図示していない)。18:1/18:0比とは逆に、16:1/16:0比は全コレステロール水準において分散の部分を説明するものではなかった(r2=0.06、p=0.02)(図示していない)。
【0197】
18:1/18:0比全体は全血漿脂肪酸容量(p=0.005)の分散の18%の割合を占めるが、16:1/16:0比はFCHLを持つ個体とその関連する対照が分析から除外された時にはこの値(p=0.02)での分散の8%の割合を占めていた(図示していない)。
【0198】
最終に体重量指数(Body Mass Index,BMI)が利用できる我々のサンプルの部分については、我々は18:1/18:0比とBMIの正の相関を測定した(r2=0.13、p=0.00)(データは図示していない)。
【0199】
SCD活性(18:1/18:0比で測定されるもの)とTG水準の間の関係が観察された異常脂血症の主たる原因とは独立していたかどうかを決定するために、HDL水準に基づいてサンプルが層に配列された。
【0200】
高HDLのヒトで18:1/18:0とTGの間に正の相関が観察された。
【0201】
高HDL表現型(>第90百分位数)を持つ個体の分析は18:1/18:0比とTG水準の間で有意の関係を示した(r2=0.40、p<0.005)(図7)。このグループでの18:1/18:0比とHDL水準の間の関係は有意に達しなかった(データは示されていない)。16:1/16:0比は我々のコホートのサブセットにおいて全コレステロールTGあるいはHDL水準での分散の有意の割合を占めることはなかった。
【0202】
18:1/18:0指数をTG水準の間のより強い関係が遺伝子的に均質なバックグラウンドで明らかであるかどうかを決定するために、HA−1とHA−3家族は別個に分析された。影響されるのと影響されない家族構成員両方が分析に含まれていた。両家族で18:1/18:0とTG水準の間の類似の関係が観察された(HA−1:r2=0.36、p=0.005(図8a)、HA−3:r2=0.32、p=0.009(図示されていない))。これらの関係の強さは全コホートで観察したものと類似していた。18:1/18:0比は更にHA−1のHDL水準と相関していたが、この関係はHA−3での有意水準には到達しなかった(HA−1:r2=0.32、p=0.009(図8b)、HA−3:r2=0.10、p=0.22(図示されていない))。
【0203】
正の相関はまた低HDLのヒトで18:1/18:0とTGの間で観察された。低HDLの個体すべて(<第5百分位数)がグループとして分析された時、18:1/18:0比とTG水準の間で有意の関係が観察された(r2=0.49、p=0.0009)(図9)。高HDL患者サブセットの我々の分析で観察されたように、18:1/18:0比とHDLの間の関係は低HDLグループでは有意に出会うことはなかった(データは示されていない)。加えて、16:1/16:0比がHDL,TGおよび全コレステロール値で退縮した時には、有意の結果は認められなかった。
【0204】
未知の遺伝子病因の低HDL表現型を分離した家族NL−001、およびABCA1突然変異を分離した家族NL−0020の分析は、各家族での影響を受ける個体が考察された時に脂肪酸比と脂質パラメーターの間で前記の認められた関係に向う傾向があった。しかしこれらの結果は、各場合で分析された個体の数が少なかったために(NL−001:図10a,bおよびNL0020:図11a,b)、統計的有意水準には到達しなかった。一般的な傾向としては年配のタンジーa疾患者でより高い18:1/18:0比に向かうことが認められた。これは18:1/18:0比に対する年齢依存性作用がHA−1およびHA−3家族のいずれにも、また全コホートに対しても認められなかったけれども(図11では示されていない)、疾病とは無関係の作用でそうなったであろう。
【0205】
図12は家族性混合型高脂血症を持つヒトでの18:1/18:0比とTG水準(r2=0.56、p=0.03)(図12a)、HDL水準(r2=0.64、p=0.009)(図12b)および全コレステロール水準(r2=0.50、p=0.03)の間の関係を示す。
【0206】
我々の分析は、16:1/16:0および18:1/18:0脱飽和指数で測定されたように、SCD機能が血漿TG水準と正に、また血漿HDL水準とは逆に相関することを初めてヒトで立証したことである。重要なことは、高または低トリグリセリド症に横たわる原因とは無関係にこの相関を観察することであり、これはSCD活性とTG水準の間の関係が一般化した作用であることを示唆している。従ってヒトにおけるSCD活性の阻害は、TG上昇の主たる原因とは独立して、減少した血清TG(またはVLDL)水準、増加した全コレステロール水準、増加したHDL水準、および減少した体重量指数と結合している。重要なことに、SCD1阻害薬は患者で組合せ治療として使用でき、またFCHLを処置するのにも使用することができた。
【0207】
要約すると、一緒に取り上げた場合、実施例1と2は哺乳類でのSCD1活性とTG水準の間の正の相関、同じくヒトにおけるSCD1活性とHDLの間の逆の相関を初めて確立する。アセビアマウスとSCD1ノックアウトマウスについての我々の分析はSCD1の脱飽和指数への主たる貢献者としての密接な関係が決定的であることを示す。我々はこの指数を我々のヒト研究でのSCD1活性の代理役として使用してきた。かくしてヒトを含む哺乳類でのSCD1機能の阻害薬はTG水準を低下させHDL水準を高めるものと考えられる。
【0208】
(実施例3)
異常脂血症のマウスモデルでの血漿脂肪酸分析
18:1/18:0過飽和指数とTG水準の間のヒトで観察された前に記載の関係を確認するために、我々はヒト疾病FCHLのマウスモデルで血漿脂肪酸分析を行った。マウス高脂血系統(「ハイリップ」)では、TG水準は野生型に比べて高められる。
【0209】
高脂血症マウスHcB−19は18:1/18:0脱飽和指数の上昇を示した。家族性混合型高脂血症のこのマウスモデルはTGコレステロールの上昇水準、ならびにVLDLとapoBの分泌の増加も示す(カステラーニ他,突然変異マウス系統での混合型高脂血症の遺伝子のマッピング:Nat Genet:18巻(4号)374−377ページ(1998年))。
【0210】
血漿脂肪酸分析は、これらの動物が親系統の影響されない対照と比較した時に、18:1/18:0比を著しく上昇させたことを示した(図13)。しかしHcB−19動物は対照と比較した時に16:1/16:0の著しい上昇を示さなかった。従って我々はFCHLのこの動物モデルで18:1/18:0脱飽和指数とTG水準の間での正の相関を観察する。
【0211】
(実施例4)
薬剤スクリーニング標的としてのSCD1の転写調節遺伝子とその用途
本実施例はヒトSCD1の完全なゲノムプロモーター配列を初めて報告する。このプロモーターはヒトでのSCD1発現を調節し制御する調節エレメントを同定するためにここで使用され、またヒトでのSCD1の発現を調節するために小分子介入の適切な標的である調節タンパク質を同定する。
【0212】
ヒトSCD1プロモーター配列は配列識別番号1で設定される。この配列はジェンバンクに的確に注釈を付されていないので、数多くの記録で5′UTRとして報告されている。
【0213】
図14はマウスSCD1とヒトSCD1のプロモーターおよび5′−フランキング領域の相同領域で調節配列と結合部位の位置を図示する。上部目盛りは転写開始部位を示す。重要なプロモーター配列エレメントが示される。
【0214】
ヒトSCD1プロモーター構造はマウスSCD1アイソフォームのそれに類似しており、いくつかの転写因子の結合のための保存調節配列を含み、この転写因子はマウスSCD遺伝子の転写をトランス活性化することを示してきたステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、CCAATエンハンサー結合タンパク質アルファ(C/EBPa)および核因子1(NF−1)を含む。コレステロールおよび多価不飽和脂肪酸(PUFAs)はHepG2細胞内に遷移的に形質移入された時にSCDプロモーター−ルシフェラーゼ活性を減少させた。レポーター構築物でのプロモーター活性の減少は内因性SCD mRNAおよびタンパク質水準での減少を相関した。SREBPの発現ベクターと共にヒトSCDプロモーター−ルシフェラーゼ遺伝子のHepG2細胞への遷移的同時形質移入は、SREBPがヒトSCDプロモーターをトランス活性化することを明らかにした。我々の研究は、マウスSCD1遺伝子と同じように、ヒトSCD遺伝子が遺伝子転写水準で多価不飽和脂肪酸とコレステロールにより調節され、またSREBPがこの遺伝子の転写活性化で役割を果すことを示している。
【0215】
キメラプロモータールシフェラーゼプラスミドの構築
放射性プローブと7個のプラークが単離されたので、バクテリオファージ1 EMBL3でのヒト胎盤ゲノムライブラリーがマウスpC3 cDNAの2.0キロベースPstI挿入片でスクリーニングされた(J.M.ヌタンビ,S.A.バーロー,K.H.ケストナー,R.J.クリスティー,E.シブリー,T.J.ケリー,ジュニア,M.D.レーン,1988年,3T3−L1前駆脂肪細胞での分化誘導遺伝子発現:分化的に発現された遺伝子エンコーディングステアロイルCoAデサチュラーゼの特徴付け,J.Biol.Chem.263巻:17291−17300ページ)。これらのプラークの2個は同質性に精製され、DNAが単離され、HSCD1とHSCD3と命名された。公開されたヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ遺伝子のcDNAの第1エキソンに一致する配列に基づくDNAプライマー(L.ザン,G.E.ラン,S.パリムー,K.ステン,S.M.プルーティー,1999年,ヒトステアロイルCoAデサチュラーゼ:タンデムポリアデニル化部位の使用による単一遺伝子から生成される代替転写物。Biochem.J.340巻:255−264ページ)は合成され、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター法により、2個のファージクローンを配列するために使用された。予備配列が生成されプライマー上流
5′NNNNGGTACCTTNNGAAAAGAACAGCGCCC3′ 配列識別番号5
および下流
5′NNNNAGATCTGTGCGTGGAGGTCCCCG3′ 配列識別番号6
が転写開始部位のプロモーター領域上流の約540塩基を増幅するために設計された。これらのプライマーは挿入制限酵素部位(下線部)、上流にはKpnI、下流にはBgIIIを、制限酵素消化を可能にする4個の張出し領域と共に含んでいた。PCRは次いでファージクローンで行われ増幅500塩基対断片は1%アガロースゲルから単離された。
【0216】
増幅断片はKpnIとBgIIIで消化され、次いでルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むpGL3塩基性ベクター(プロメガ)のKpnIとBgIII部位にクローンされ、DH5コンピテント大腸菌細胞内に形質転換された。プラスミドDNAはキアージェンカラムで精製され、多重クローニング部位内で但し挿入DNAに隣接するDNA配列に一致するプライマーとして使用するジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター法により配列された。生成されたSCDプロモータールシフェラーゼ遺伝子構築物はpSCD−500と名付けられた。
【0217】
RNAの単離と分析
全RNAは酸グアニジニウム−フェノール−クロロホルム抽出法を用いてHepG2細胞から単離された。全RNAの20マイクログラムが0.8%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲル電気泳動で分離されナイロン膜に移された。膜は以下のPCRにより生成された32P標識ヒトSCD cDNAプローブでハイブリッド形成された。pAL15プローブは等量負荷の対照として使用された。
【0218】
イムノブロッティング
細胞抽出物はハイネマン他(17)により記載されたように、各種の脂肪酸またはコレステロールで処置されたHepG2細胞から調製された。各分画からの同量のタンパク質(60μg)は10%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を受け、4℃でインモビロン−P移動膜に移された。TBS緩衝液(pH8.0)の10%の脂肪ミルクと0.5%トゥイーンで4℃で一晩遮断の後、膜は洗浄され1次抗体としてのラビット抗ラットSCDおよび2次抗体としてのヤギ抗ラビットIgG−HRP複合体で保温された。SCDタンパク質の視覚化はECLウエスタンブロット検出キットで行われた。
【0219】
hSCD1の発現に対するコレステロール、多価不飽和脂肪酸とマラキドン酸の作用
細胞培養とDNA形質移入
HepG2細胞は10%胎仔ウシ血清と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充された低グルコースDMEMで成長し、37℃、5%炭酸ガスの加熱培養器で維持された。細胞は約12−16時間で40−70%密集を生じるように6cm皿に継代指種された。細胞は次いでLT−1形質移入試薬(パンベラ)を用いてpSCD−500の平板当り5μGのプラスミドDNAまたはベーシックPGL3レポーター同じくpRL−TK内部対照(プロメガ)で形質移入された。48時間後、細胞はPBSで洗浄され、次いで図と記号一覧で示されたように、インスリン、デキサメタゾン、および適当な濃度のアルブミン接合脂肪酸を含む脂肪酸培地のウイリアムズ・イー培地で処理された。細胞は更に(対照として)エタノールのみ、またはコレステロール(10μg/mL)およびエタノールに溶解された25−OHコレステロール(1μg/mL)で処理された。追加の24時間後、抽出物が調製されルシフェラーゼ活性を検定された。非形質移入細胞はブランクとして使用され、レニラルシフェラーゼが内部対照として使用された。細胞抽出物はローリーに従ってタンパク質を検定され、すべての結果はタンパク質濃度とレニラルシフェラーゼで標準化された。各実験は少なくとも3回繰返され、すべてのデータは平均値±SEMで表された。
【0220】
結果
SCD1遺伝子の増幅プロモーター領域の配列は配列識別番号1で示される。
【0221】
マウスSCD1プロモーター配列と比較した時、マウスSCD1プロモーターで同定されたいくつかの機能的調節配列がヌクレオチド水準で完全に、またその間隔あけとの関連で2個の遺伝子の近位プロモーター内で保存されることが発見された(図14)。いずれもTTAATA相同体であるC/EBPaとNF−1はマウスSCD1とヒトプロモーター両方で同じ位置にある。更に上流にはステロール調節エレメント(SRE)と、マウスSCD1およびSCD2プロモーターの多価不飽和脂肪酸応答エレメント(PUFA−RE)に見出される2個のCCAATボックスモティーフがある。これらエレメントの間隔あけは3個のプロモーターで保存される。
【0222】
我々はヒト遺伝子発現が更にコレステロールと多価不飽和脂肪酸により退縮されたかどうかを試験した。我々がこれまでに記載したように、ヒトHepG2細胞は培養され、100μMアラキドン酸、DHAあるいは10μg/mlのコレステロールおよび1μg/nlの25−ヒドロキシコレステロール・コレステロールで処置された。全mRNAは単離され、ヒトcDNAに一致し公開ヒトSCD cDNA配列に基づくプライマーを用いるPCR法で生成されたプローブを用いたノーザンブロット分析を受けた。図15は、AA、DHAおよびコレステロールが用量依存洋式でヒトSCD mRNA発現を減少させたことを示す。PUFAsとコレステロールで処置されたタンパク質抽出物のウエスタンブロットは、PUFAsとコレステロールが同じくSCDタンパク質の水準を減少させたことを示した(データは示されていない)。
【0223】
ヒトSCDプロモーターの活性と続いてSREBPの可能な作用を評価するためにヒトルシフェラーゼプロモーター構築物がSREBP1aを含む発現ベクターと共にHepG2細胞に同時形質移入された。72時間後、形質移入細胞の抽出物はルシフェラーゼ活性を検定された。データは内部対照としてレニラルシフェラーゼを発現する細胞抽出物に標準化された。図で示されるように、SREBPは40倍までの増加を生じる用量依存様式でプロモーターにトランス作用する。この実験はSREBPがヒトSCD遺伝子を調節する役割を調節することを示している。
【0224】
公開された報告は、SREBPの成熟形態が脂質生合成遺伝子を活性化することに加えて、マウスSCD1を含む脂質生合成遺伝子のPUFAとコレステロール抑制を仲介することを示した。SCDプロモーターの活性に対する成熟SREBP−1aとPUFAsの調節作用を観察するために、HepG2肝細胞は前に記載のとおりヒトSCDプロモーターを含む20ng(6cm皿当り)のプラスミドDNAで遷移的に同時形質移入されたが、今回は形質移入は内因性SREBPの成熟を阻害し、かくして細胞内に存在する内因性SREBPの成熟形態が殆んどなかったようにするコレステロールの存在下で行われた。形質移入の後、細胞は次いでアラキドン酸、アルブミン複合体としてのEPAとDHAで処置され、次いでルシフェラーゼ活性がルミノメーターを用いて検定された。もしSREBPがヒトSCD遺伝子のPUFA抑制を仲介するならば、SCDプロモーター活性は形質移入細胞のPUFAでの処置に対し減少しないであろう。しかしAA、EPAまたはDHAの追加はほんの僅かばかりの弱毒化でSCDプロモーター活性を抑制し続けた(データは示されていない)。かくしてSREBP成熟化はSCD遺伝子転写のPUFA制御を説明するのに必要な選択性を示してはいないように見え、それはPUFAがヒト遺伝子転写を抑制するのにSREBPに加えて異なるタンパク質を利用していることを示唆している。
【0225】
これらの結果は、hSCD1がSREBP、NF−Y、C/EBPアルファ、PUFA−REおよび代替タンパク質ならびに転写調節物質により転写調節されることを立証している。これらのタンパク質それぞれ一つは従って細胞でのSCD1発現を調節する化合物を同定するのに魅力的な薬剤スクリーニング標的となり、これにより本発明で教示される疾病、疾患および異常を処置するのに有用なものとなる。
【0226】
(実施例5)
SCDノックアウトは皮膚と眼の異常を示す
SCDの生理学的機能を調べるために、我々はSCD1ノックアウト(SCD1−/−)マウスを創り出した。C16:1の水準はSCD1−/−マウスの組織で劇的に減少したが、SCD1のみが正常に発現されSCD2は発現されない場合には、C18:1での劇的な減少が肝臓のみで認められたことを我々は発見した。SCD1とSCD2の両方が発現される眼瞼、脂肪、および皮膚などの組織において、18:1はほんの僅かばかり減少した。SCD1を発現しない脳と眼球の一価不飽和脂肪酸水準は変化しなかった。SCD−/−マウスの肝臓と皮膚はコレステロールエステルとトリグリセリドを欠いており、一方更に眼瞼は主としてC20:1の長領一価不飽和脂肪酸の眼瞼特異的ワックスエステルを欠いていた。加えてSCD−/−マウスの眼瞼は高い水準の遊離コレステロールを有していた。SCDマウスは萎縮性皮脂腺の皮膚異常萎縮性マイボーム腺の狭眼裂を示し、後者はヒトでの眼乾燥症候群に類似していた。これらの結果は、SCD1の欠損が、組織コレステロールエステルとトリグリセリドの成分としての一価不飽和脂肪酸の合成たけでなく、眼瞼のワックスエステルなどのような他の脂質の合成にも影響を与えることを示している。
【0227】
SCD−/−ノックアウトマウスの肉眼病理学と組織検査
SCDマウスは健康で繁殖力もあったが皮膚異常を呈した。これらの異常はほぼ離乳齢(3−4週)に乾燥皮膚、細かい表皮のはがれ、また脱毛となって開始し、成長するにつれてよりひどくなった。加えて、マウスは狭眼裂を呈示した。皮膚と眼瞼の病理学的検査は、野生型マウスが著しくまた十分に分化した皮膚腺とマイボーム腺を持つことを示した(データは示されていない)。一方SCD−/−の皮膚と眼瞼は皮脂腺とマイボーム腺で萎縮生腺 細胞を見せた(データは示されていない)。角膜と網膜では異常は見られなかった(データは示されていない)。
【0228】
SCD−/−マウスは眼瞼と皮膚の自然脂質が低い水準にある
我々は眼瞼にある遊離コレステロール(FC)とコレステロールエステル(CE)、トリグリセリドとワックスエステルの容量を測定した。SCD1−/−マウスの眼瞼から抽出された脂質の薄層クロマトグラフィーは、野生型マウスの眼瞼から抽出された脂質と比べると、コレステロールエステルとトリグリセリドおよびワックスエステルの水準が著しく減少したことを示した(図16A)。表3はSCD−/−マウスと野生型マウスの間の眼瞼脂質容量を比較する。
【0229】
【表3】
【0230】
表の各値は平均値±標準偏差を示す(n=4)。すべてのマウスは6週齢で標準規定食を与えられた。−/−欄の太字の値は野生型マウスとSCD−/−マウスの間の統計的有意性(P<0.01)を示している。
【0231】
表3で示されるように、また表3は、SCD1−/−マウスの眼瞼と皮膚のコレステロール容量が74%減少したが、一方遊離コレステロールは1.75倍に増加したことを示している。同じようにSCD−/−の肝臓ではCEとトリグリセリドの減少があったが、肝臓での遊離コレステロールでは差は見られなかった(データは示されていない)。SCD−/−マウスの眼瞼でのトリグリセリドとワックスエステル量はそれぞれ60%と75%減少した。
【0232】
図16Bは、ヘキサン/ベンゼン(45:65)が異なったワックスエステルを溶解するのに使用されたがトリエステルが主要なワックスエステルであることを示すということにより成るニコレーズ他に基づく異なる溶媒の使用を示す(N.ニコレーズおよびE.C.サントス(1985年)。去勢雄牛とヒトのマイボーム腺の脂質のジエステルとトリエステル。脂質.20巻.454−467ページ)。これらのトリエステルおよびジエステルはSCD−/−マウスで72%減少した。眼瞼のワックストリエステル量はSCD−/−マウスで72%減少した。眼瞼と同じように、SCD−/−マウスの皮膚のコレステロールエステルとトリグリセリド量はそれぞれ43%と53%減少した一方、遊離コレステロールは、1.9倍増加した(表3および図16AとB)。最後に、各分画での一価不飽和脂肪酸量は飽和脂肪酸での対応する増加と共にSCD1−/−マウスで劇的に減少した(データは示されていない)。
【0233】
規定食18:1はSCD−/−マウスの皮膚と眼瞼の異常を回復しなかった
オレイン酸エステルは規定食でもっとも豊富な脂肪酸の一つである。コレステロールエステルとトリグリセリドに使用される細胞一価不飽和脂肪酸は新規に脂肪酸シンターゼとSCDによるか、または規定食から間接的に外因性オレイン酸エステルの取り込みにより合成することができる。規定食オレイン酸エステルが外因性合成オレイン酸エステルを置換できまた毛、皮膚および眼の異常を修復できるかどうかを決定するために、我々はトリオレインとして高水準の18:1n−9(全脂肪の50%)で半精製マウス規定食を補充し、次いでこれらの規定食を2週間SCD−/−マウスに与えた。しかし高一価不飽和脂肪酸を含むこの規定食でもこれらの異常は修復されなかった。これは、SCD1特異的阻害薬が規定食にも拘らずTG水準を減少するように作用したことを示唆している。代わりに高18:1n:−9を与えられたSCD−/−マウスの目瞼でのコレステロールエステル、ワックスエステルおよびトリグリセリドの水準はSCD+/+マウスのそれよりもいまだに低かった(データは示されていない)が、これは外因的に合成された一価不飽和脂肪酸がマイボーム腺分泌脂質(mebum)のコレステロールエステル、トリグリセリドおよびワックスエステルの合成に必要とされることを示唆している。
【0234】
本研究では、我々はSCD1ヌルマウスを立証し、SCD欠損が基質選択性および組織選択性発現を起こしたことを示した。SCD−/−マウスのパルミトオレイン酸エステルの水準は、野生型マウスでSCD1を発現した肝臓を含むすべての組織で50%以上減少する。一方オレイン酸エステル水準の交替は組織特異的であった。
【0235】
SCD1の自然突然変異を持つアセビアマウスに類似して、SCD−/−マウスは完全浸透度で毛髪成長、皮膚および眼の異常を示した。これらの表現型は離乳齢から顕著であった。皮膚と眼瞼の組織検査は、SCD1が豊富に発現される皮膚の萎縮性皮脂腺および眼瞼の端のマイボーム腺が皮膚分泌脂質およびマイボーム分離脂質、それぞれ所謂セーバム(sebum)およびメーバム(mebum)を欠いていたことを示した。実際に我々はトリグリセリド、セーバムおよびメーバムの成分として知られるいくつかの種類のワックスエステルとコレステロールエステルを含む中性脂質がSCD−/−マウスの眼瞼でまた表皮から著しく減少したことを発見した(データは示されていない)。
【0236】
我々がSCD−/−マウスで記載した眼瞼の異常に類似した慢性眼瞼炎は、ヒトにおけるもっとも一般的な失望させる疾病の一つである。シャインとマッカレー(W.E.シャインおよびJ.P.マッカレー(1998年),マイボーム分泌極性脂質異常に関連する乾性角結膜炎、Arch Ophthalmol.116巻849−852ページ)は、慢性眼瞼炎がメーバムの脂質異常に帰因することを報告している。しかしこれら脂質異常の性質は詳細には特徴付けられなかった。しかし彼等はマイボーム角結膜炎の患者からのメーバムがSCDの主要産物であるオレイン酸の水準を減少させ、一方マイボーム脂漏症の患者からのものは18:1の水準を増加させたことを発見した。我々の今回の研究と共にこれらの観察は、SCD活性の交替が慢性眼瞼炎に関係し得ることを示唆している。かくしてSCDは眼の疾病の処置のための治療薬および予防薬の開発のために潜在的な目標となる。
【0237】
【0238】
引用文献一覧
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【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】SCD1ヌルマウス生成を示す図。(A)SCD1の標的化戦略。Scd1遺伝子座を取り巻くゲノム遺伝子座の部分地図が示される。相関的組換えはneo7遺伝子によりエキソン1−6の置換に帰着した。遺伝子標的事象はプローブAまたはBを用いるサザンブロット分析によりもしくはPCR分析により実証された。(B)SCD−/−マウスを論証するPCR分析のヘテロ接合体をつくる際に、野生型、ヘテロ接合体およびホモ接合体がメンデル方式で生まれた(+/+:+/−:−/−=21:43:20 X2=0.395)。(C)ノーザンブロット分析。20μgの全RNAが肝臓から単離されたノーザンブロット分析を受けた。ブロットはマウスSCD1と2個のcDNA断片でプローブされた。(D)肝臓のイムノブロット分析はSCD1−/−マウスで負疫反応性SCDの不在を示したが、SCD1タンパク質は遺伝子用量に依存する様式で野生型およびヘテロ接合体マウス両方からの肝臓組織で検出された。(E)肝臓SCD活性はSCD−/−マウスで廃止された。前に記載のとおり、ヘテロ接合体は野生型およびヌル一腹子と比較した時中間表現型を提示する。酵素活性は分当りタンパク質のミリグラム当り脱飽和された基質のナノモルで表される。データは平均値±標準偏差で示される(n=3)。
【図2】SCD1ノックアウト雄マウスとアセビア雄マウスでの血漿リポタンパク質プロファイルを示す図。上部の2個のパネルはリポタンパク質分画のトリグリセリド量を示し、下部の2個のパネルはリボタンパク質分画のコレステロール量を示す。
【図3】アセビア(SCD1−/−)およびSCD1+/−マウスでのVLDL−トリグリセリド水準を示す図。血漿リポタンパク質は高性能液体クロマトグラフィーで分離され、マウス(n=3)の各種濃度の分画内でリポタンパク質の間のトリグリセリドの分布が測定された。SCD−/−(白円部)、SCD1+/1(黒円部)。VLDL、LDLおよびHDLのリポタンパク質の最大量が示される。
【図4】マウス血漿での飽和脂質酸に対する一価不飽和脂肪酸の比(脱飽和指数)はSCD活性1の水準に直接比例する方式で減少することを示す図。SCD1ノックアウトマウスとアセビアマウスのそれらの関連する対照との比較。
【図5】ヒトデータセットを使用する線形退縮分析を示す図。18:1/18:0の比はTG水準との有意な関係(r2=0.39、p<0.0001)(パネルA)、同じくHDL水準との有意な相関(r2=0.12、p=0.0006)(パネルB)を示した。実験の詳細は更に実施例2で記載される。
【図6】血漿TG水準に対する16:1/16:0の相対水準の間の弱い関係指示する線形退縮分析を示す図(r2=0.05、p=0.03)。実験の詳細は実施例2で示される。
【図7】高HDL表現型(>第90百分位数)を持つ個体の線形退縮分析を示す図。これらの個体は18:1/18:0比とTG水準(r2=0.40、p<0.005)の間の有意な関係を示した。
【図8】18:1/18:0とTG水準の間の関係が高HDL表現型を分離する実験(HA−1)で観察されたことを示す図。線形退縮分析を用いて、18:1/18:0とTGの間の有意な関係が観察された(r2=0.36、p=0.005(パネルA))。パネルBはこの家族で18:1/18:0比とHDL水準の間の有意な関係を示す(r2=0.32、p=0.009)。
【図9】低HDL(<第5百分位数)の人達のみが考慮される18:1/18:0比とTG水準(r2=0.49、p=0.0009)の間で観察された関係を示す図。
【図10】未知の遺伝子病因の低HDL表現型を分離し図5−9で観察される関係に向う傾向のある家族(NL−001)の分析を示す図。
【図11】ABCA1突然変異を分離し図5−9で認められた関係に向う傾向のある家族NL−0020の分析を示す図。
【図12】家族性混合型高脂血症(FCHL)を持つ9人での18:1/18:0比とTG水準(r2=0.56、p=0.02)(パネルA)、HDL水準(r2=0.64、p=0.0095)(パネルB)および全コレステロール水準、(r2=0.50、p=0.03)(パネルC)の間の関係を示す血漿脂肪酸分析を示す図。
【図13】親系統(C3H)の影響されない対照と比較した時の高脂血症マウス(HcB−19)の有意に上昇した18:1/18:0比を示す血漿脂肪酸分析を示す図。
【図14】マウスSCD1とヒトSCD1プロモーターおよび5′フランキング領域の相同領域での調節配列と結合部位の位置を示す図。上部のスケールは転写開始部位に関連する位置を示す。重要なプロモーター配列のエレメントが指示される。
【図15】指示されたようにある範囲の用量のアラキドン酸、DHAまたは10μg/mlコレステロールあるいはEPAで培養され処置されたヒトHepG2細胞を示す図。
【図16】野生型、ヘテロ接合体およびSCD−/−マウスの皮膚(AとB)および眼瞼(CとD)からの脂質抽出物のTLCを示す図。全脂質は野生型、ヘテロ接合体およびSCD−/−マウスから抽出された。脂質抽出物はプールされ高性能TLC(HPTLC、AおよびC;ヘキサンエーテル/エーテル/酢酸=90:25:1、BおよびD;ベンゼン:ヘキサン;65:35)で分析された。同量の脂質抽出物(眼瞼の0.5mgのもの)は各レーンで提示された。各レーンは2匹のマウスの眼瞼からの脂質を表す。
【図17】ステアリン酸エステルから水への3Hの移動を計量することでのSCD1デサチュラーゼ活性の検定を示す図。図は3H水の室温での産生の時間コースを示す。野生型肝臓からのミクロソームがこの実験で使用された。これらの条件の下でのSCD1活性の代謝回転数は2nモル/分/タンパク質mgと推定され、これは37℃で観察されたものの約半分である。
【図18】検定がステアロイルCoAのSCD1依存脱飽和を特異的に監視する証拠を示す図。均質化されその部分がミクロソーム精製に使用される高炭水化物無脂肪規定食(これは50倍ものSCD1活性を肝臓に誘導する)を3日続けた後の野生型とSCD1ノックアウトマウスから肝臓が集められた。3H水産生は15分RT(室温)でホモジェネートおよびミクロソーム調製物の両方で同じタンパク質濃度で決定され、次いで反応物を酸で急冷し、産物から基質を分離するために炭が使用された。基質の追加の前に酸での試料の急冷は、ブランク、すなわち何らの脱飽和反応なしでバックグラウンド放射能を含む対照を提供する。図はミクロソーム内の脱飽和活性が野生型肝臓のホモジェナートに比べて大いに富化されており、一方−/−SCD1ノックアウトマウスからのミクロソームは殆んど活性を持たないことを示している。「ウインドー」、すなわち本検定でのSCD1依存脱飽和は高度に可視であり、野生型とSCD1ノックアウトミクロソームの間には実に160倍もの差がある。
【図19】3個の既知の脂肪酸でのSCD1の阻害を示す図。野生型マウスからのミクロソームが3個既知のSCD1阻害薬すなわちリノール酸(CLA)、9−チアステアリン酸(9−チア)およびステルクリア酸(SA)の有効性を試験するために使用された。パネルAは遊離脂肪酸として加えられた時に、いずれもSCD1活性を有効に抑制しなかったことを示す。しかしパネルBはもしCoAに予め複合化された場合には(3HステアロイルCoAの追加の前にCoAとATPでミクロソームを保温により行われた場合には)、3個の阻害薬はSCD1の段階的阻害を示し、ステルクリア酸では予備保温条件の活性をほぼ100%抑制した。この実験は、SCD1活性が既知の阻害薬で阻害することができるがそれはCoAとの複合を必要とするように見える。このスクリーニング検定の一つの重要な用途は、CoAとの複合なしでSCD1生物活性の有力な阻害薬である小分子を発見することにある。
【図20】(A)ステアロイルCoA質量がSCD1依存性脱飽和の手段として我々が取り上げようとする3H産生シグナルの反応速度と大きさを限定する実例を示す図。この実験は図17で示されたものを基本的に繰返したものであり、ただ異なる所は30分で追加のステアロイルCoA量/放射性が加えられ、3Hシグナルの第2の指数的産生にしたことであった。これはある量のステアロイルCoAがSCD1触媒化脱飽和で期待される反応を制限するということである。(B)実験が高処理量に適合できる実例を示す図。これまでのすべての実験は全反応量が1.1mlである場合に行われた(ミクロソームを含む反応緩衝液0.2ml、反応を急冷する6%PCA、0.2ml、および未反応基質を沈殿させる10%の活性炭溶液0.7%)。Bで示された実験は全反応量0.31mlで行われた(ミクロソームを持つ反応緩衝液0.1ml、急冷のための60%PCA、0.01mlおよび沈殿のための10%活性炭0.2ml)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD1)遺伝子の発現を調節する薬剤を同定する方法であって、
a)レポーター遺伝子に操作可能に結合され、また前記レポーター遺伝子が発現される条件下で、配列識別番号1のSCD1プロモーターを含むポリヌクレオチド構成体に化学薬剤をin vitroで接触させ、および
b)前記接触に起因する前記レポーター遺伝子発現の変化を検出する、
ことを含み、これにより前記化学薬剤をSCD1遺伝子発現調節剤として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(b)での前記検出された変化が発現の減少であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド構成体が細胞内に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)での発現における前記検出された変化が転写での変化であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が前記構成体を発現するために遺伝子操作されたことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が前記遺伝子操作されない前記レポーター遺伝子を発現しないことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳類細胞がヒト細胞であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
哺乳類の血清トリグリセリド水準を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸の減少は前記哺乳類の血清トリグリセリド水準を減少させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
哺乳類の血清HDL水準を増加させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸の減少は前記哺乳類の血清HDL水準を増加させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記試験化合物は請求項11のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
測定ステップ(b)は前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】
測定ステップ(b)は前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
哺乳類のbody−mass index(BMI)を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸組成物の減少は前記哺乳類のBMIを減少させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
哺乳類での血清VLDL水準を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く脂肪酸組成物の減少は前記哺乳類の血清VLDL水準を減少させる薬剤として前記化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させたことを以前に示したことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項24】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1:18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項1】
ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD1)遺伝子の発現を調節する薬剤を同定する方法であって、
a)レポーター遺伝子に操作可能に結合され、また前記レポーター遺伝子が発現される条件下で、配列識別番号1のSCD1プロモーターを含むポリヌクレオチド構成体に化学薬剤をin vitroで接触させ、および
b)前記接触に起因する前記レポーター遺伝子発現の変化を検出する、
ことを含み、これにより前記化学薬剤をSCD1遺伝子発現調節剤として同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(b)での前記検出された変化が発現の減少であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド構成体が細胞内に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)での発現における前記検出された変化が転写での変化であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が前記構成体を発現するために遺伝子操作されたことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が前記遺伝子操作されない前記レポーター遺伝子を発現しないことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が哺乳類細胞であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳類細胞がヒト細胞であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
哺乳類の血清トリグリセリド水準を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸の減少は前記哺乳類の血清トリグリセリド水準を減少させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
哺乳類の血清HDL水準を増加させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸の減少は前記哺乳類の血清HDL水準を増加させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記試験化合物は請求項11のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
測定ステップ(b)は前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】
測定ステップ(b)は前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
哺乳類のbody−mass index(BMI)を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く前記脂肪酸組成物の減少は前記哺乳類のBMIを減少させる薬剤として前記試験化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させることを以前に示したことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1/18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
哺乳類での血清VLDL水準を減少させる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験化合物を非ヒト哺乳類に投与し、および
(b)前記接触に続き前記哺乳類の血清内の脂肪酸組成物を測定する、
ことを含み、前記投与に続く脂肪酸組成物の減少は前記哺乳類の血清VLDL水準を減少させる薬剤として前記化合物を同定することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記試験化合物が請求項1のアッセイでSCD1活性を減少させたことを以前に示したことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項24】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での16:1/16:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記16:1/16:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
測定ステップ(b)が前記接触に続き前記哺乳類の血清での18:1/18:0デサチュレーション指数を決定することを含み、前記18:1:18:0デサチュレーション指数の減少もまた観察されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−131939(P2008−131939A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280542(P2007−280542)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【分割の表示】特願2001−561763(P2001−561763)の分割
【原出願日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【出願人】(303036142)ゼノン ファーマスーティカルス,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(500484146)ウィスコンシン・アラムナイ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(303033152)ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア ユニバーシティ インダストリー リエーゾン オフィス (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【分割の表示】特願2001−561763(P2001−561763)の分割
【原出願日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【出願人】(303036142)ゼノン ファーマスーティカルス,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(500484146)ウィスコンシン・アラムナイ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(303033152)ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア ユニバーシティ インダストリー リエーゾン オフィス (1)
【Fターム(参考)】
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