説明

トリマ

【課題】木材の端縁加工等を行う際に用いられるトリマは、通常工具本体を片手で持って移動操作する主として軽作業用の回転工具であるが、作業内容によっては両手で把持してより安定的に移動操作した場合もある。本発明では、トリマを両手で把持して安定した端縁加工を迅速に行えるようにする。
【解決手段】工具本体のスピンドルに直接刃具を取り付けて行う通常加工用のベースアッセンブリ20に、標準ベースに代えてオフセット加工用のオフセットベース41を取り付け、このオフセットベース41にハンマードリル等の他の手持ち工具に用いるサイドハンドルを取り付けて当該トリマを両手で保持できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリマと称される電動工具であって、工具本体を片手で把持して木材等の加工材の端縁に沿って移動させることによりその縁取り加工や溝切り加工等の比較的加工負荷の小さな軽作業を行う場合に用いられるトリマに関する。
【背景技術】
【0002】
このトリマに類似するルーターは、工具本体を支持するプランジベースに設けた左右一対のグリップを両手で把持して主として溝切り加工等の比較的加工負荷の大きな重作業に用いられる。従って、作業時に使用者が工具本体を把持するか否かによって、把持するトリマと把持しないルーターを明確に区別することができる。
トリマは、加工材の上面に当接させるベースと円筒形状の本体支持部を有するベースアッセンブリと、このベースアッセンブリの本体支持部に取り外し可能に保持される円柱体形の工具本体を備えている。
ベースアッセンブリは、本体支持部の下部にベース取り付け座部を一体に備えており、このベース取り付け座部にベースを貼り付け状態で取り付けた構成を有している。工具本体はモータユニットとも称されるもので、駆動源としての電動モータを内装しており、この電動モータにより回転するスピンドルを下面から突き出した状態に備えている。このスピンドルにビットとも称される刃具が装着される。
ベースアッセンブリの本体支持部には、工具本体を本体支持部に対して固定するためのクランプ装置が備え付けられている。このクランプ装置をアンクランプすると工具本体を上下に移動させて、刃具をベース部の下面側へ突き出した状態と下面よりも上方へ退避させた状態とに切り換えることができ、また工具本体を本体支持部から上方へ抜き出して取り外すことができる。
さらに、多くの場合本体支持部には、工具本体の上下位置を調整するための調整機構が設けられている。上記クランプ装置をアンクランプした状態でこの調整機構を操作することにより、工具本体の上下位置を調整して加工材に対する刃具の上下位置を調整することができる。
このトリマを実際の加工作業に用いる場合には、使用者は一方の手でベースアッセンブリの本体支持部を介して工具本体を把持し、若しくはこれに加えて他方の手でベース部を加工材に押し付けて当該トリマを保持し、また加工材の上面に沿って移動させる。このため、従来よりトリマの各部位について使用者が把持する際の便宜を図り、あるいは把持した際の操作性及び作業性を高めるための様々な工夫がなされている。例えば、下記の特許文献1には、ベースアッセンブリのベース取り付け座部の上面及び本体支持部の表面に滑り止め用の凹凸部を設けた構成が開示されている。また、特許文献2には、釘打ち機等の手持ち式の作業工具において、グリップ部の表面に滑り止め用の突条を指が掛かりやすい向きに傾斜して設ける技術が開示されている。
このように、使用者が手に持って加工作業を行う手持ち式の作業工具について上記のような主として使用者が把持する部位(ハンドル部)の把持性を高めて当該作業工具の操作性及び作業性を高める工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公報第7552749号
【特許文献2】特開2010−58211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トリマについては、作業内容によっては把持した状態での安定性をより一層高める必要があった。上記したように実際の加工作業では、ベースアッセンブリの本体支持部を介して工具本体を片手で把持して用いるか、場合によってはこれに加えて他方の手でベース部を加工材に押し付けて当該トリマの姿勢を保持し、また加工方向に移動させる操作がなされる。こうして一方の手で工具本体を把持し、他方の手でベース部を加工材に押さえ付けることにより当該トリマの姿勢を安定させ、また当該トリマを正確に移動させることができる。ところが、一般にベースアッセンブリにおいてベース取り付け座部の本体支持部からの張り出し量が小さいこともあってこれを他方の手で加工材に押え付けて工具本体部の姿勢を保持するには他方の手の負担が大きいためあくまで補助的であり、基本的にはトリマは工具本体を片手で把持して用いるものであったので、この点で作業内容によっては当該トリマの操作性及び作業性をより一層改善する必要があった。
本発明は、加工時における位置及び姿勢をより確実かつ楽に保持することができるようにしてトリマの操作性及び作業性を一層高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は下記の発明によって解決される。
第1の発明は、電動モータにより回転するスピンドルを備えた工具本体と、工具本体を支持する円筒形の本体支持部と加工材に当接させるベースを有するベースアッセンブリを備え、工具本体のスピンドルに取り付けた刃具をベースの下面から下方へ突き出して加工材の加工を行うトリマであって、本体支持部は使用者が一方の手で把持する把持部としての機能を備えており、ベースに使用者が他方の手で把持する補助把持部を備えたトリマである。
第1の発明によれば、使用者は一方の手で本体支持部を把持し、他方の手で補助把持部を把持して当該トリマを両手で支えて用いることができ、これにより当該トリマの姿勢及び移動操作を楽に行うことができるのでその操作性を高めることができる。
第2の発明は、第1の発明において、補助把持部をベースから取り外し可能なトリマである。第2の発明によれば、他の手持ち式作業工具の把持部であって、例えばルーターのサイドグリップ部やハンマドリルのサイドハンドルを取り外して当該トリマの補助把持部として取り付けることができるので、他の手持ち作業工具の部品を有効活用することができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、ベースからの把持高さについて、補助把持部の把持高さを本体支持部の把持高さに位置合わせしたトリマである。
第3の発明によれば、本体支持部を把持した一方の手の把持高さと、補助把持部を把持した他方の手の把持高さがほぼ同じであることから、当該トリマの把持性及び操作性を一層高めることができる。
第4の発明は、第1〜第3の何れか一つの発明において、工具本体のスピンドルに対して刃具をオフセットさせるオフセット機構を備えたオフセット用の本体支持部を取り付け可能なオフセットベースに、オフセット用の本体支持部に代えてオフセット機構を備えない通常加工用の本体支持部を取り付け可能であり、かつ補助把持部をオフセット機構のオフセット位置と同軸に取り付け可能なトリマである。
第4の発明によれば、通常オフセットベースの、工具本体とは反対側の端部に補助把持部が取り付けられることから、一方の手でオフセットベースの一端側を支持し、他方の手でオフセットベースの他端側を支持することとなり、当該オフセットベースの両側をバランス良く支持して当該トリマを用いることができ、この点で当該トリマの操作性を一層高めることができる。また、補助把持部がオフセット位置と同軸に配置されているので、オフセット機構を用いない通常の加工時においてオフセット位置を有効に活用することができる。
第5の発明は、第4の発明において、オフセットベースのオフセット機構用の逃がし孔にアタッチメントを介して補助把持部をオフセットベースに取り付け可能なトリマである。
第5の発明によれば、工具本体のスピンドルに刃具を取り付けてオフセット加工ではなく通常の加工を行う場合に、当該通常加工用のベースアッセンブリにオフセットベースを取り付けて当該オフセットベースを補助把持部取り付け用ベースとして機能させることができ、これにより当該通常の加工時の操作性を高めることができる。
上記オフセット加工とは、工具本体のスピンドルに対してオフセットさせた位置(オフセット位置)に刃具を取り付けて行う加工形態を言う。これに対して通常の加工(非オフセット加工)とは、工具本体のスピンドルに刃具を直接取り付けて行う加工形態を言うものとする。前者のオフセット加工では、オフセット軸を含むオフセット機構を備えた本体支持部にオフセットベースが取り付けられる。この場合、工具本体のスピンドルに対して一定距離だけ離間した位置にオフセット軸が平行に配置される。オフセット軸及びこれに取り付けた刃具は、スピンドルとの間に介装した駆動ベルト等の動力伝達部によりスピンドルと一体回転される。後者の通常の加工では、オフセット軸を含むオフセット機構を備えない通常加工用の本体支持部のベース取り付け座部に、通常加工用の標準ベースに代えてオフセットベースが取り付けられる。このオフセットベースにアタッチメントを介して補助把持部が取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】通常加工用のベースアッセンブリに工具本体を取り付けたトリマの全体正面図である。
【図2】通常加工用のベースアッセンブリの正面側の斜視図である。
【図3】通常加工用のベースアッセンブリの背面側の斜視図である。
【図4】通常加工用の標準ベースの斜視図である。
【図5】通常加工用の標準ベースを図4中矢印(V)方向から見た下面図である。
【図6】本実施形態のトリマの全体斜視図である。
【図7】本実施形態のトリマであって、別形態の補助把持部を備えたトリマの全体斜視図である。
【図8】オフセット加工用のトリマの全体側面図である。
【図9】オフセット加工用のトリマの全体斜視図である。
【図10】オフセットベースの上面側斜視図である。
【図11】オフセットベースを図10中矢印(XI)方向から見た下面図である。
【図12】オフセットベースに対するアタッチメントの取り付け状態を図6中矢印(XII)方向から見た一部破断側面図である。
【図13】ルーターの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。図1に示すようにこのトリマ1は、電動モータを内装した工具本体10と、この工具本体10を加工材Wに対して保持するための標準ベースアッセンブリ20を備えている。
工具本体10は概ね円柱体形をなすもので、その下面にスピンドル11が突き出す状態に備えられている。このスピンドル11に刃具12が装着されている。
図2及び図3に示すように標準ベースアッセンブリ20は、加工材Wの上面に当接させる標準ベース23と円筒形状の本体支持部22を有している。本体支持部22の内周側に工具本体20が挿入されて保持されている。刃具12を標準ベース23の下面から下方へ突き出させて加工材Wの主として端縁部に押し当て、この押し当て状態で当該トリマ1を端縁部に沿って移動させることにより当該加工材Wの縁取り加工を行うことができる。
標準ベース23は、本体支持部22の下部に一体に設けたベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態で取り付けられている。ベース取り付け座部21は円環形状を有しており、その内周側は工具本体10の刃具12を下面側へ通過させるための逃がし孔21cとして機能する。ベース取り付け座部21の下面全面に、同じ円環形状を有する標準ベース23が貼り付け状態に取り付けられている。この標準ベース23の詳細についてはさらに後述する。
ベース取り付け座部21の上面に本体支持部22が上方へ起立する状態に設けられている。本実施形態の場合、ベース取り付け座部21と本体支持部22は、アルミニウムを素材とする鋳物製で一体に成形されている。
使用者は、当該トリマ1を移動操作する際には、一方の手で工具本体10の頭部(上部)若しくは本体支持部22を把持し、他方の手でベース取り付け座部21を押え付けて、当該トリマ1の加工材Wに対する位置を制御する。このため、本体支持部22は工具本体10を保持する機能の他、使用者が把持する把持部としての機能を有している。
【0008】
本体支持部22は、その正面側において上部のスリット部22aとその下側の窓部22bを備えており、正確には断面C字形を有してその拡径方向に適度な弾性を有している。スリット部22aにクランプ装置25が設けられている。このクランプ装置25は、支軸25aを介して左右方向に傾動操作可能に設けられたレバー25bを備えている。図2においてレバー25bを手前側のアンクランプ位置(右方)に傾動操作すると、クランプロッド25cに設けたカム部(図では見えていない)の作用が解除されて本体支持部22がその弾性により拡径方向(スリット部22aが幅広になる方向)に緩み、これにより工具本体10を本体支持部22に対して上下に変位可能かつ上方へ抜き出して取り出し可能となる。レバー25bを左方のクランプ位置に傾動操作すると、クランプロッド25cのカム部の作用により本体支持部22がその弾性に抗して縮径方向(スリット部22aが幅狭になる方向)に縮められて工具本体10が本体支持部22に強固にクランプされる。
クランプ装置25には、調整機構26が併設されている。クランプロッド25cの端部には調整ダイヤル26aが取り付けられている。また、図3に示すようにスリット部22aにおいてクランプロッド25cには調整ギヤ26bが取り付けられている。調整ダイヤル26aを回転操作すると、クランプロッド25cを介して調整ギヤ26bが一体で回転する。図1に示すように調整ギヤ26bは、工具本体10の側部に設けたラック部13に噛み合わされている。ラック部13は工具本体10の側部に上下に沿って設けられている。ラック部13の左右両側には、工具本体10のベースアッセンブリ20に対する取り付け位置であって、刃具12の突き出し寸法を表示するための目盛り13a,13bが表示されている。クランプ装置25をアンクランプした状態で調整ダイヤル26aを回転操作すると、ラック部13に対する調整ギヤ26bの噛み合いを経て工具本体10を上下に変位させることができる。本体支持部22に対する工具本体10の上下位置を調整した後、レバー25bをクランプ位置に傾動操作すると、工具本体10が調整した上下位置にクランプされる。
正面側の窓部22bは、加工材Wに対する刃具12の加工部位を使用者が逃がし孔21cを経て覗き見るための窓部であり、スリット22aよりも左右に大きな開口幅で設けられている。
【0009】
標準ベースアッセンブリ20のベース取り付け座部21と本体支持部22には、使用者が把持した際の把持感を高め、かつ高い滑り止め機能を持たせるための工夫がなされている。ベース取り付け座部21の周縁部であって前側の2箇所には、凹凸形状の滑り止め部21a,21aが設けられている。使用者が指先でベース取り付け座部21を加工材Wに押え付ける際に、この滑り止め部21a,21aに指先を当接させることにより高い滑り止め機能が発揮させる。本実施形態では、右手でベース取り付け座部21を押え付ける場合と左手でベース取り付け座部21を押え付ける場合の双方に対応してベース取り付け座部21の前部寄りの左右2箇所に滑り止め部21a,21aが設けられている。
また、左右の滑り止め部21a,21aに対応してその後方にはそれぞれ指止め壁部21b,21bが設けられている。両指止め壁部21b,21bは、ベース取り付け座部21の上面であって、本体支持部22の窓部22bの左右下端部からベース取り付け座部21の上面に沿って設けられている。この両指止め壁部21b,21bによって、ベース取り付け座部21を押え付けた指先が内周側の逃がし孔21c側に滑ることが防止される。
本体支持部22の周囲には、エラストマー(ゴム状の弾性力を有するポリマー(重合体))が被覆されている。このエラストマー被覆部30は、本体支持部22の背面側のほぼ半周の範囲と、正面側の窓部22bの上側に左右から張り出す逆L字形の範囲にわたって左右対称に設けられている。エラストマー被覆部30の背面側のほぼ半周の範囲は、使用者の把持した手の主として手の平が当接される。エラストマー被覆部30の左右側部とその上部から窓部22bの上方へ張り出す範囲には、把持した手の主として指先が当接される。特に、窓部22bの上方に左右から張り出す範囲の一方には親指が当接され、他方には人指し指が当接される。
このエラストマー被覆部30の左右側部には、それぞれ同じく逆L字形の範囲にわたって滑り止め部31,32が設けられている。左右の滑り止め部31,32には、それぞれ上下に延びる縦縞模様の突条31a〜31a、32a〜32aが設けられている。図示するように各突条31a,32aは、それぞれ下側ほど背面側へ変位する方向に僅かな角度で傾いている。このため、本体支持部22を把持する手の指先の進入方向(差し出し方向)及びその逆の滑り方向が多くの場合、斜め上方であることを考慮した場合における当該滑り止め部31,32の滑り止め機能がより一層高められている。
本体支持部22の背面下部には、定規固定部24が設けられている。この定規固定部24に平行定規(図示省略)をセットして定規固定ねじ24aを締め付けると、本体支持部22の背面側に平行定規を取り付けることができる。取り付けた平行定規を例えば加工材Wの端縁に当接させた状態で当該トリマ1を移動させることにより、加工材Wの端縁に対する刃具12の切り込み深さを一定に保持して当該トリマ1を平行移動させることができ、これにより高精度の縁取り加工を迅速に行うことができる。
【0010】
前記した円形をなす通常加工用(オフセット加工用ではなく、スピンドル11に直接刃具12を取り付けて行う加工、以下同じ)の標準ベース23は、ベース取り付け座部21の下面から取り外すことができる。図4及び図5には、取り外した標準ベース23が単独で示されている。この標準ベース23は、ベース取り付け座部21とほぼ同径の円形平板をなすもので、加工材Wへの傷付きを防止するために樹脂を素材として成形されている。この標準ベース23の中心には、ベース取り付け座部21の逃がし孔21cとほぼ同径の逃がし孔23aが形成されている。標準ベース23の背面側には、定規固定ねじ24aに対する矩形の逃がし凹部23cが設けられている。
この標準ベース23は、4本の固定ねじ(図示省略)によってベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態で取り付けられる。逃がし孔23aの周囲四箇所には、この4本の固定ねじを挿通するための座繰り付きのねじ挿通孔23b〜23bが設けられている。図5に示すように標準ベース23の下面側に、各ねじ挿通孔23bの座繰りが形成されている。標準ベース23側のねじ挿通孔23b〜23bに対応して、ベース取り付け座部21の下面4箇所にねじ孔21d〜21dが設けられている。図2では、前側の二箇所のねじ孔21d,21dのみが見えている。従って、標準ベース23の下面側から各ねじ挿通孔23bに固定ねじを挿入してベース取り付け座部21側のねじ孔21dに締め込むことにより、当該標準ベース23がベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態に固定される。
逆に、4本の固定ねじを緩めることにより標準ベース23をベース取り付け座部21の下面から取り外すことができる。本実施形態のトリマ1は、通常加工用の円形の標準ベース23に代えて補助把持部付きのオフセットベース41を取り付けることができる。本実施形態では、いわゆるオフセット加工用のオフセットベース41を介して通常加工用の本体支持部22に補助把持部を設けた構成となっている。図6及び図7にはそれぞれ異なる補助把持部50,51をオフセットベース41上に取り付けたトリマ1が示されている。
【0011】
一方、図8及び図9には、工具本体10を従来公知のオフセット加工用のオフセットベースアッセンブリ40に取り付けたトリマ1が示されている。オフセットベースアッセンブリ40は、本体支持部42の下面にオフセットベース41を取り付けた構成を備えている。
本体支持部42は前記通常加工用の本体支持部22に相当するもので、円筒形状をなし、その内周側に工具本体10が保持される。なお、図8及び図9ではクランプ装置25の図示が省略されている。
この本体支持部42の正面側に、オフセット機構49が装備されている。オフセット機構49は、本体支持部42の正面側に一体に設けたオフセットケース42a内に、軸受け46,47を介してオフセット軸43を回転自在に支持した構成を備えている。
このオフセット機構49を備えたオフセットベースアッセンブリ40を用いる場合、工具本体10のスピンドル11には駆動プーリ44が取り付けられる一方、刃具12が取り外される。駆動プーリ44と、オフセット軸43に取り付けた従動プーリ45との間に駆動ベルト46が掛け渡されている。オフセット軸43の下端部に刃具12が取り付けられる。このオフセット加工用の本体支持部42を用いることにより刃具12を工具本体10のスピンドル11に対してオフセットさせたオフセット軸43に取り付けることができる。
工具本体10が起動すると、駆動プーリ44と従動プーリ45に対する駆動ベルト46の噛み合い作用により回転動力がオフセット軸43に伝達されて刃具12がオフセット位置で回転する。刃具12は、オフセットベース41の前端部に設けた逃がし孔41aを経て下面側に突き出されている。
このオフセットベースアッセンブリ40を用いることにより、工具本体10を進入若しくは接近させることができない壁際での際切り加工や狭小スペースでの縁取り加工等のオフセット加工を行うことができるようになる。
オフセットベースアッセンブリ40の場合、オフセットベース41の取り付け座41bに本体支持部42が4本の固定ねじ48〜48で取り付けられている。この4本の固定ねじ48〜48を緩めることにより、本体支持部42及びオフセット軸43を含むオフセット機構49をオフセットベース41から取り外すことができる。本体支持部42から取り外したオフセットベース41が図10及び図11に単独で示されている。
【0012】
図10及び図11に示すようにこのオフセットベース41は、正面側が山形で背面側が半円形状の平板をなすもので、オフセットケース42aを含めて本体支持部42を側方へはみ出させない面積を有している。このオフセットベース41の上面ほぼ中央に、オフセット加工用の本体支持部42を取り付けるための円形の取り付け座41bが設けられている。このオフセット加工用の取り付け座51bの背面側(図1において上側)には、通常加工用の本体支持部22を取り付けるための円形の取り付け座41cが設けられている。
この背面側の取り付け座41cの中央には逃がし孔41gが設けられている。この逃がし孔41gは、円形の標準ベース23の逃がし孔23aに相当するもので、後述するようにこの取り付け座51bに通常加工用の本体支持部22を取り付けると、そのベース取り付け座部21の逃がし孔21cに上記逃がし孔41gが整合され、両逃がし孔21c,41gの内周側にスピンドル11が挿通され、また刃具12が通過して当該オフセットベース41の下面側に突き出される。
本実施形態では、中央側のオフセット加工用取り付け座41bと背面側の通常加工用取り付け座41cが前後にオーバーラップして設けられている。
両取り付け座41b,41cの内周側にそれぞれ4つの座繰り付きのねじ挿通孔41d〜41dが設けられている。なお、上記したように両取り付け座41b,41cが前後にオーバーラップして中央の2箇所のねじ挿通孔41d,41dが両取り付け座41b,41cで共用されているため、合計6箇所にねじ挿通孔41d〜41dが設けられている。
また、前記した逃がし孔41aの上側にも、2つの座繰り付きのねじ挿通孔41e,41eが設けられている。オフセットベース41の背面側の後端部には、通常加工用の標準ベース23と同じく定規固定部24の定規固定ねじ24aを逃がすための逃がし凹部41fが設けられている。
本実施形態では、このオフセット加工用のオフセットベース41を標準ベース23に代えて通常加工用の本体支持部22のベース取り付け座部21の下面に取り付ける。図6には、このオフセットベース41の上面側に、通常加工用の本体支持部22と補助把持部50を取り付けた状態が示されている。また、図7にはオフセットベース41の上面側に、通常加工用の本体支持部22と別形態の補助把持部51を取り付けた状態が示されている。
図示するように、通常加工用の本体支持部22は、オフセットベース41の背面側の取り付け座41cに取り付けられる。この場合、取り付け座41cの内周側のねじ挿通孔41d〜41dに挿通した4本の固定ねじをそれぞれベース取り付け座部21のねじ孔21dに締め込んで当該本体支持部22がオフセットベース41の上面側に取り付けられる。
【0013】
一方、オフセットベース41の正面側端部には、アタッチメント52を介して補助把持部50(51)が取り付けられている。アタッチメント52の詳細が図12に示されている。このアタッチメント52は、オフセットベース41の上面に当接される当接板部52aと、当接板部52aの上面側に設けた台座部52bと下面側に設けた支持凸部52cを備えている。下面側の支持凸部52cは、オフセットベース41の正面側端部に設けた逃がし孔41a内にガタツキなく挿入され、これにより台座部52bがオフセットベース41の上面に当接されている。台座部52bに設けた2つのねじ孔52e,52eに対して、逃がし孔41aの周囲に設けた2つのねじ挿通孔41e,41eを経て固定ねじ53,53を締め付けることにより、当該アタッチメント52がオフセットベース41に固定される。
上面側の台座部52bの上面には、補助把持部取り付け用のねじ孔52dが設けられている。このねじ孔52dに、補助把持部50の取り付けねじ軸部50aを締め付けることにより当該補助把持部50をオフセットベース41の正面側端部に起立状態で取り付けることができる。図6に示す補助把持部50には、ハンマドリルやドライバドリル等のその他の手持ち工具に用いられるサブハンドルが流用されている。その他の手持ち工具から取り外したサブハンドルをアタッチメント52を介してそのままオフセットベース41に取り付けることにより当該サブハンドルを補助把持部51として利用することができる。
特に、図6に示す補助把持部50の場合、その把持高さが本体支持部22とほぼ同じになるよう台座部52bの高さ寸法等が設定されている。このため、使用者は左手と右手をほぼ同じ高さで把持することができるので、当該トリマ1に対して左右均等な把持力で把持して楽な姿勢で安定した加工を行うことができる。
図7に示す補助把持部51には、例えば図13に示すルーター60のプランジベース61に用いられるサイドグリップ62が流用されている。プランジベース61から取り外した一方のサイドグリップ62をアタッチメント52を介してそのままオフセットベース41に取り付けることにより補助把持部51として利用することができる。
アタッチメント52を介して補助把持部50(51)が、逃がし孔41aと同軸であって、オフセット位置と同軸(オフセット軸43と同軸)に取り付けられる。
【0014】
以上のように構成した本実施形態のトリマ1によれば、使用者は一方の手で本体支持部22を把持し、他方の手で補助把持部50(51)を把持して当該トリマ1を両手で把持して用いることができ、これにより当該トリマ1の姿勢及び移動操作を楽に行うことができるのでその操作性を高めることができる。
特に、本実施形態に係るトリマ1は、標準ベースアッセンブリ20のベース取り付け座部21に円形の標準ベース23を取り付けることにより、使用者は一方の手で本体支持部22を把持し、他方の手でベース取り付け座部21を押え付けて通常加工(非オフセット加工)をコンパクトに行うことができる一方、この円形の標準ベース23に代えてオフセットベース41をベース取り付け座部21に取り付け、このオフセットベース41に補助把持部50(51)を取り付けることにより使用者は一方の手で同じく本体支持部22を把持し、他方の手で補助把持部50(51)を把持して両手で当該トリマ1の姿勢及び移動方向をコントロールしつつ通常加工を行うことができる。このように、標準ベースアッセンブリ20のベース取り付け座部21に円形の標準ベース23又は補助把持部50(51)付きのオフセットベース41を選択して取り付けることにより、使用者は当該トリマ1の把持状態を切り換えて通常加工を行うことができ、これにより様々な加工作業を迅速かつ楽に行うことができるようになる。
また、オフセット加工用のオフセットベース41を通常加工用に流用し、かつ補助把持部50(51)としてハンマードリルのサイドハンドルやルーター60のサイドグリップ62を流用する構成であるので、他の電動工具等の部品を有効活用することができる。
さらに、補助把持部51の把持高さが本体支持部22の把持高さと同等程度に位置合わせされているので、使用者は左手と右手をほぼ同じ高さに位置させて加工作業を行うことができ、これにより当該トリマ1の把持性及び操作性を一層高めることができる。
【0015】
また、補助把持部50(51)が、オフセット機構を利用した場合のオフセット位置(オフセット軸43の軸心)に同軸に取り付けられる構成となっている。このため、オフセットベース41の一端側に本体支持部22が取り付けられ、本体支持部22とは反対側の他端側に補助把持部50(51)が取り付けられることから、オフセットベース41の一端側を一方の手で支持し、他端側を他方の手で支持することとなり、当該オフセットベース41の両側をバランス良く把持して当該トリマ1を用いることができ、この点で当該トリマ1を操作性を一層高めることができる。
また、補助把持部50(51)を取り付けるアタッチメント52が、オフセット加工時に機能する逃がし孔41aを利用して取り付ける構成であるので、構成の簡略化を図りつつ当該補助把持部50(51)をオフセット加工時におけるオフセット軸と同軸に配置することができる。
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、オフセットベース41に二箇所の取り付け座部41b,41cを設けて、中央の取り付け座部41bにオフセット機構付きの本体支持部42を取り付ける一方、背面側の取り付け座部41cに通常加工用の本体支持部22を取り付ける構成を例示したが、両者22,42を共通の取り付け座部に取り付ける構成としてもよい。
オフセットベース41は、その正面側が山形で、背面側が半円形の平板形状を有する構成を例示したが、単純な矩形あるいはその他の平板形状をなすオフセットベースを適用することもできる。
【符号の説明】
【0016】
W…加工材
1…トリマ(トリマ)
10…工具本体
11…スピンドル
12…刃具
13…ラック部、13a,13b…目盛り
20…標準ベースアッセンブリ(通常加工用)
21…ベース取り付け座部
21a…滑り止め部、21b…指止め壁部、21c…逃がし孔
22…本体支持部
22a…スリット、22b…窓部
23…標準ベース(通常加工用)
23a…逃がし孔、23b…ねじ挿通孔、23c…逃がし凹部
24…定規固定部、24a…定規固定ねじ
25…クランプ装置
25a…支軸、25b…レバー、25c…クランプロッド
26…調整機構
26a…調整ダイヤル、26b…調整ギヤ
30…エラストマ被覆部
31…滑り止め部(左側)、31a…突条
32…滑り止め部(右側)、32a…突条
40…オフセットベースアッセンブリ
41…オフセットベース、41a…逃がし孔
41b…取り付け座部(オフセット加工用)
41c…取り付け座部(通常加工用)、41d…ねじ挿通孔(本体支持部取り付け用)
41e…ねじ挿通孔(アタッチメント取り付け用)、41f…逃がし凹部
42…本体支持部(オフセット加工用)
43…オフセット軸
44…駆動プーリ
45…従動プーリ
46,47…軸受け
48…固定ねじ
49…オフセット機構
50…補助把持部(サイドハンドル)、50a…取り付けねじ軸部
51…補助把持部(サイドグリップ)
52…アタッチメント
52a…当接板部、52b…台座部、52c…支持凸部
52d…ねじ孔(補助把持部取り付け用)
52e…ねじ孔(アタッチメント取り付け用)
53…固定ねじ
60…ルーター
61…プランジベース
62…サイドグリップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより回転するスピンドルを備えた工具本体と、該工具本体を支持する円筒形の本体支持部と加工材に当接させるベースを有するベースアッセンブリを備え、前記工具本体のスピンドルに取り付けた刃具を前記ベースの下面から下方へ突き出して前記加工材の加工を行うトリマであって、
前記本体支持部は使用者が一方の手で把持する把持部としての機能を備えており、前記ベースに使用者が他方の手で把持する補助把持部を備えたトリマ。
【請求項2】
請求項1記載のトリマであって、前記補助把持部を前記ベースから取り外し可能なトリマ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトリマであって、前記ベースからの把持高さについて、前記補助把持部の把持高さを前記本体支持部の把持高さに位置合わせしたトリマ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載したトリマであって、前記工具本体のスピンドルに対して刃具をオフセットさせるオフセット機構を備えたオフセット加工用の本体支持部を取り付け可能なオフセットベースに、前記オフセット加工用の本体支持部に代えて前記オフセット機構を備えない通常加工用の本体支持部を取り付け可能であり、かつ前記補助把持部を前記オフセット機構のオフセット位置と同軸に取り付け可能なトリマ。
【請求項5】
請求項4記載のトリマであって、前記オフセットベースのオフセット機構用の逃がし孔にアタッチメントを介して前記補助把持部を該オフセットベースに取り付け可能なトリマ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−196869(P2012−196869A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62367(P2011−62367)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】