説明

トレー支持什器

【課題】天井の高さや棚使用者の要求などに応じて、トレー棚の高さを簡単に変更し、棚板へのトレーの載置数量を容易に増減しうるようにした、使い勝手のよいトレー支持什器を提供する。
【解決手段】トレー支持什器のトレー棚2が、ベース構造体1の背面に、上下位置変更可能として下部が取付けられ、ベース構造体1より上方に突出する部分の高さを変更しうるようにした左右複数の支柱3と、各支柱3の前面に前方を向くように取付けられた上下複数のブラケット9、11と、各ブラケット9、11により支持された上下複数段の棚板4とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば病院や薬局の調剤室等において、多種の薬剤を識別・区分けして収容しているトレーを多数並置しうるトレー棚を備えるトレー支持什器に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、左右方向に離間させて立設した複数の支柱の前面に、側面視横向きL字状またはT字状のブラケットの後端部を掛止し、各ブラケットの上面により棚板の下面を支持することにより、棚板の上面を、左右方向に仕切りのない連続した一平面とし、棚板上に、多数のトレーを、左右方向に無駄な空間を形成することなく、効率的に並置しうるようにしたトレー棚を開発し、先に特許出願している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されているトレー棚においては、その高さが、各支柱の高さにより一定に設定されているので、上下の棚板の数、及びそれに載置されるトレーの数が定められてしまい、上下の棚板の数を増減して、トレーの載置数を変更することはできなかった。
また、部屋内における天井の高さが一定でない場合や、梁などにより、天井の一部が下方に突出している場合、あるいは棚の使用者の要求により、棚板の高さを変えたり、トレーの載置数を増減したいときに、それに対応することができず、使い勝手が悪いという問題もある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、天井の高さや使用者の要求などに応じて、トレー棚の高さを簡単に変更し、棚板へのトレーの載置数を容易に増減しうるようにした、使い勝手のよいトレー支持什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)複数の物品収容用トレーを載置しうるトレー棚を有するトレー支持什器であって、前記トレー棚を、床面に設置されたベース構造体に、上下位置変更可能として下部が取付けられ、前記ベース構造体より上方に突出する部分の高さを変更しうるようにした左右複数の支柱と、前記各支柱の前面に前方を向くように取付けられた上下複数のブラケットと、前記各ブラケットにより支持され、かつ上面に前記複数のトレーを載置しうる上下複数段の棚板とを備えるものとする。
【0007】
このような構成によると、左右複数の支柱を、ベース構造体に上下位置変更可能として取付けてあるので、トレー支持什器の設置場所の天井の高さや、什器使用者の要求などに応じて、トレー棚の高さを簡単に変更することができ、各支柱により支持される棚板の数、及び各棚板へのトレーの載置数を容易に増減することができる。
また、例えば天井に設けた梁などにより、天井の一部が下方に突出している場合において、トレー支持什器を梁の下方に位置させて配置する必要が生じた際には、左右いずれか1本の支柱または複数の支柱の高さを、梁と干渉しない位置まで低くすることにより、梁の下方にトレー支持什器を支障なく設置することができる。
【0008】
(2)上記(1)項において、ベース構造体の背面に、複数の支柱の下部を、上下複数の固定ねじをもって、上下位置変更可能に取付ける。
【0009】
このような構成によると、ベース構造体に対する各支柱の取付作業や、各支柱の上下位置の変更作業を、ベース構造体の後方より容易に行うことができる。
【0010】
(3)上記(2)項において、ベース構造体の背面に、上下複数のめねじ孔を、上下の棚板の間隔と等しいピッチで設け、前記めねじ孔に固定ねじを選択的に螺合することにより、支柱の上下位置を、めねじ孔のピッチと等しい間隔で段階的に変更しうるようにする。
【0011】
このような構成によると、各支柱の高さをめねじ孔のピッチと等しい間隔で段階的に変更すると、各支柱により支持されている棚板もめねじ孔のピッチと等しい間隔で段階的に上下に移動するので、上下の棚板間の間隔は変わらず、従って、一定の上下寸法のトレーを、各段の棚板上に支障なく載置することができる。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、支柱を3本以上設け、かつ上段部の棚板を左右複数に分割して、互いに隣接する棚板における対向端部を、中間部の支柱に取付けられた上部のブラケットにより支持することにより、中間部の支柱の高さを低くしたとき、上段部の左右の棚板を選択的に取り外せるようにする。
【0013】
このような構成によると、例えば天井の高さの一部が低く、それに対応させて、いずれか1本または2本以上の支柱の高さを低くした際に、その高さを低くした支柱のブラケットにより対向端部が支持されている左右いずれかの棚板のみを取り外し、上段部の他の棚板は残しておけるので、棚板へのトレーの載置数が大きく減ることはない。
【0014】
(5)上記(3)または(4)項において、めねじ孔のピッチを、支柱の前面に上下方向に一定間隔おきに並べて設けた複数の係合孔のピッチと同一またはその倍数と等しくし、前記係合孔に、ブラケットの後端部に設けた係止フックを、めねじ孔のピッチと等しい間隔で係止する。
【0015】
このような構成によると、支柱の前面に、ブラケットを簡単に取り付けうるので、支柱に取り付けられるブラケットの数及びそれにより支持される棚板の段数を容易に変更しうるとともに、支柱の高さを、めねじ孔のピッチと等しい間隔で段階的に変更しても、ブラケットにより支持された上下の棚板間の間隔が変わることはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天井の高さや使用者の要求などに応じて、トレー棚の高さを簡単に変更し、棚板へのトレーの載置数量を容易に増減しうるトレー支持什器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のトレー支持什器の一実施形態の斜視図である。
【図2】同じく、キャビネットの背面への支柱の取付け要領を示す後方斜視図である。
【図3】右側端の支柱と、それに取り付けられるブラケットの分解斜視図である。
【図4】中央部の支柱とそれに取り付けられるブラケットの分解斜視図である。
【図5】トレー棚の右端上部の前方拡大斜視図である。
【図6】右側端の支柱の高さを低くしたトレー支持什器の正面図である。
【図7】中央の支柱の高さを低くしたトレー支持什器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のトレー支持什器は、床面に設置された低寸のキャビネット1の後側に、トレー棚2を配置して構成されている。
【0019】
トレー棚2は、図2に示すように、キャビネット1の背面板1aの左右側端部と、中央部の後面に取付けられた平面視後向コ字状をなす3本の支柱3と、各支柱3の前面に支持された上下複数段の棚板(図1)とを備えている。
【0020】
各支柱3は、その下部をキャビネット1の背面板1aに上下位置調節可能に取付けることにより、床面からの高さを変更しうるようになっている。すなわち、各支柱3における前板3aの下部の上下2箇所に設けた通孔5、5に、後方より挿入した固定ねじ6を、キャビネット1の背面板1aの両側端部と中央部に設けた上下複数のめねじ孔7に、選択的に螺合することにより、各支柱3を、図2の2点鎖線で示すように、キャビネット1の上方に突出する部分の高さを変更しうるようにして、キャビネット1の背面板1aに固定されている。
なお、上下方向に並ぶめねじ孔7のピッチは、複数段の棚板4の取付け間隔と等しくしてある。これにより、各支柱3の高さを、めねじ孔7のピッチ分だけ段階的に変更しても、各支柱3の所定位置に、上下複数の棚板4を等間隔おきに、かつ水平に取付けることができる。
【0021】
各段の棚板4は、左右の支柱3に、次のようにして支持されている。
図3及び図4に示すように、各支柱3の前板3aには、縦長の多数の係合孔8が、上下方向に一定間隔おきに列設されている。なお、上記めねじ孔7のピッチは、係合孔8のピッチと同一またはその倍数と等しくするのが好ましい。
図3に示すように、右側端の支柱3(左右対称に付き、左側端の支柱は図示略)には、棚板4の右側端を支持する適数のブラケット9が取り付けられている。
【0022】
各ブラケット9は、前後方向を向く垂直の側面板9aと、この側面板9aの中間部下縁に内向きに連設された正面視L字状の棚板支持片9bと、側面板9aの後縁より内向きに屈曲する内向片9cと、内向片9cの内側縁より後向きに突出する3個の下向き鉤状の係止フック10とを備えている。
【0023】
上記3個の係止フック10を、支柱3における連続する上下3個の係合孔8に係合することにより、上下の各ブラケット9の後端部が、支柱3の前面に、上述しためねじ孔7のピッチと等しい間隔で取り付けられている。
また、棚板4の両側縁に形成された下向片4aを、左右のブラケット9の棚板支持片9bに上方より落とし込んで受支することにより、各段の棚板4は、左右のブラケット9の下端部の対向面間に、めねじ孔7のピッチと等しい間隔で架設されている。
【0024】
図4に示すように、中央の支柱3に取り付けられる上下複数のブラケット11は、前後方向を向く水平の棚板支持片11aと、この棚板支持片11aの後縁より起立する上向片11bと、その後面に固着された、左右寸法が上向片のほぼ半分の長さの係止片11cとを備え、この係止片11cの左側縁には、上下3個の下向き鉤状の係止フック12が、後向きに突設されている。
【0025】
3個の係止フック12を、支柱3の互いに隣接する上下3個の係合孔8に係合することにより、上下の各ブラケット11の後端部が、中央の支柱3の前面に、めねじ孔7及び左右両側のブラケット9のピッチと等しい間隔で取り付けられている。
【0026】
図4及び図5に示すように、各ブラケット11の棚板支持片11aにより、各段の棚板4における左右方向の中央部が支持されている。この際、棚板支持片11aの前端部の直下に、棚板4の前端に連設された側面視後向きL字状の折曲部4bを位置させることにより、棚板4の浮き上がりが防止されている。なお、上部の2段の棚板4を左右2枚に分割し、それらの対向部を、中央のブラケット11により支持してある。これは、後述するように、天井の高さに対応して、いずれかの支柱3の高さを低くした際に、その支柱3により支持された上段部の左右いずれかの棚板4を取り外せるようにするためである。
【0027】
棚板ブラケット11の棚板支持片11aは、水平をなしているので、図5に示すように、棚板4上に薬剤等を区分けして収容するためのトレー13を並置する際に、ブラケット11が邪魔にならず、多数のトレー13を、左右方向に隙間なく効率的に並置することができる。
【0028】
上記のように、左右の各支柱3を、キャビネット1の背面板1aに、高さ変更可能に取り付けると、トレー支持什器の設置場所の天井の高さや、什器使用者の要求などに応じて、トレー棚2の高さを簡単に変更することができ、各支柱3により支持される棚板4の段数及び各棚板4へのトレー13の載置数を容易に増減することができる。
【0029】
また、図6に示すように、例えば天井Rに設けた梁Bなどにより、天井Rの一部が下方に突出している場合において、トレー支持什器の側部を梁Bの下方に位置させて配置する際には、右側端の支柱3の高さを、梁Bと干渉しない位置まで低くするとともに、右側の最上段の棚板4を取り外すことにより、梁Bの下方にトレー支持什器を支障なく設置することができる。なお、この状態から、トレー支持什器を右方に移動させる際には、中央の支柱3の高さを低くすればよい。
この際、最上段の右方の棚板4のみを取り外せばよく、左方の棚板4はそのまま残しておける。従って、棚板4へのトレー13の載置数が大きく減ることはない。
【0030】
さらに、図7に示すように、キャビネット1及びトレー棚2の左右幅が大きいトレー支持什器を、例えば天井Rの梁Bの中央直下に配置する際には、トレー棚2に設けた5本の支柱3のうち、中央の支柱3の高さを、梁Bと干渉しない位置まで低くするとともに、中央の3本の支柱3により支持された最上段の棚板4を取り外すことにより、梁Bを跨ぐようにして、その下方にトレー支持什器を支障なく設置することができる。なお、この状態から、トレー支持什器を左右いずれか一方に移動する際には、2本以上の支柱3の高さを低くすればよい。
この際にも、上記と同様に、中央の3本の支柱3により支持された最上段の左右2枚の棚板4のみを取り外せばよく、両側部の棚板4は残せしておけるので、トレー13の載置数が大きく減ることはない。
【0031】
上記実施形態では、複数の支柱3の下部を、キャビネット1の背面板1aに上下位置変更可能に取り付けているが、例えば支柱3の下部を、キャビネット1の後端部を貫通させて内部に収容し、後面板1aの前面に上下位置を変更可能に取付けることもある。
【符号の説明】
【0032】
1 キャビネット(ベース構造体)
1a背面板
2 トレー棚
3 支柱
3a前板
4 棚板
4a下向片
4b折曲部
5 通孔
6 固定ねじ
7 めねじ孔
8 係合孔
9 ブラケット
9a側面板
9b棚板支持片
9c内向片
10 係止フック
11 ブラケット
11a棚板支持片
11b上向片
11c係止片
12 係止フック
13 トレー
B 梁
R 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品収容用トレーを載置しうるトレー棚を有するトレー支持什器であって、
前記トレー棚を、
床面に設置されたベース構造体に、上下位置変更可能として下部が取付けられ、前記ベース構造体より上方に突出する部分の高さを変更しうるようにした左右複数の支柱と、
前記各支柱の前面に前方を向くように取付けられた上下複数のブラケットと、
前記各ブラケットにより支持され、かつ上面に前記複数のトレーを載置しうる上下複数段の棚板
とを備えるものとしたことを特徴とするトレー支持什器。
【請求項2】
ベース構造体の背面に、複数の支柱の下部を、上下複数の固定ねじをもって、上下位置変更可能に取付けてなる請求項1記載のトレー支持什器。
【請求項3】
ベース構造体の背面に、上下複数のめねじ孔を、上下の棚板の間隔と等しいピッチで設け、前記めねじ孔に固定ねじを選択的に螺合することにより、支柱の上下位置を、めねじ孔のピッチと等しい間隔で段階的に変更しうるようにしてなる請求項2記載のトレー支持什器。
【請求項4】
支柱を3本以上設け、かつ上段部の棚板を左右複数に分割して、互いに隣接する棚板における対向端部を、中間部の支柱に取付けられた上部のブラケットにより支持することにより、中間部の支柱の高さを低くしたとき、上段部の左右の棚板を選択的に取り外せるようにしてなる請求項1〜3のいずれかに記載のトレー支持什器。
【請求項5】
めねじ孔のピッチを、支柱の前面に上下方向に一定間隔おきに並べて設けた複数の係合孔のピッチと同一またはその倍数と等しくし、前記係合孔に、ブラケットの後端部に設けた係止フックを、めねじ孔のピッチと等しい間隔で係止してなる請求項3または4記載のトレー支持什器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187163(P2012−187163A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50990(P2011−50990)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】