説明

ドアロック装置用アクチュエータ

【課題】作動レバーの幅を小さくしてハウジングを小さくしたドアロック装置用アクチュエータを提供する。
【解決手段】ハウジングと、ハウジングに回動可能に保持され2個のカム突片84a、84bを回動する回転部材84と、回転部材を回転駆動するモータと、一端がハウジングに揺動自在に保持され、カム突片に係合して揺動してドアロック装置をロック状態又はアンロック状態にする作動レバー85と、を有し、作動レバーは、回転部材に対向する対向面851bに立設された揺動軸82と同軸で且つ回転部材の回転軸88を挿通するガイド孔851aをもつアーム部851と、アーム部の先端側に設けられカム突片の一方84aを当接しその回動を規制するストッパ壁852aと前記カム突片の他方84bが嵌入当接して作動レバーを揺動させる揺動凹溝852bとを備える突出部852とを備え、突出部は対向面から回転部材に向かって突出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック装置のロック、アンロックを電気的に行うアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドアロック装置用アクチュエータでは、ロッキングレバーをロック位置とアンロック位置に揺動させるため、ロッキングレバーに作動レバーを取り付け、該作動レバーを動力により回転する回転部材に連結している。すなわち、図5、6に示すように、回転部材60にカム突片61aをもつカム突子61を設け、これに連動する作動レバー70には回転部材60の回転軸を挿通するガイド孔71とカム突子61を嵌挿するカム凹陥部72を設け、カム凹陥部72にカム突子61の回動を規制するストッパ壁72aとカム突子61の回動を許容する誘導壁72bとカム突片61aが嵌入当接して作動レバー70を揺動させる揺動凹溝73cとが形成してある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭62−99578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の作動レバーでは、カム突子61が軸部61bを中心に回転するため、カム凹陥部72にカム突子61の回動を許容する誘導壁72b、72b'が形成されている。そして、誘導壁72bは、カム突子61の軸部61bが図6のようにガイド孔71の最も右寄りにあるとき(作動レバー70が時計回りに最も揺動したとき)のカム突片61aの回転軌跡上に形成されている。また、誘導壁72b'は、カム突子61の軸部61bがガイド孔71の最も左寄りにあるとき(作動レバー70が反時計回りに最も揺動したとき)のカム突片61aの回転軌跡上に形成されている。したがって、作動レバー70の幅W(揺動軸74を通る中心線CLに平行な作動レバー外形への接線S間の距離)は、軸部61bの相対的な最大振れ幅とカム突片61aの回転直径との合計に誘導壁72b、72b'の肉厚を加えたものになる。すなわち、従来の作動レバーは、カム凹陥部72にカム突子61の回動を許容する誘導壁72b、72b'が形成されているため、上記の幅Wが大きくなってしまう。そして、作動レバーを揺動軸回りに揺動させるので作動レバーを内包するアクチュエータのハウジングが大きくなってしまう。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、作動レバーの幅を小さくしてハウジングを小さくしたドアロック装置用アクチュエータを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明のドアロック装置用アクチュエータは、ハウジングと、該ハウジングに回動可能に保持され2個のカム突片を回動する回転部材と、該回転部材を回転駆動するモータと、一端が前記ハウジングに揺動自在に保持され、前記カム突片に係合して揺動してドアロック装置をロック状態又はアンロック状態にする作動レバーと、を有するドアロック装置用アクチュエータであって、前記作動レバーは、前記回転部材に対向する対向面に立設された揺動軸と同軸で且つ前記回転部材の回転軸を挿通するガイド孔をもつアーム部と、前記アーム部の先端側に設けられ前記カム突片の一方を当接しその回動を規制するストッパ壁と前記カム突片の他方が嵌入当接して前記作動レバーを揺動させる揺動凹溝とを有する突出部とを備え、該突出部は前記対向面から前記回転部材に向かって突出されていることを特徴としている。
【0006】
また、前記本発明のドアロック装置用アクチュエータにおいて、前記ストッパ壁は前記揺動軸を中心とする円弧面であり、前記アーム部は前記円弧面から垂直に延び、前記揺動軸に向かって細くなる略扇状板体であることが望ましい。
【0007】
また、前記円弧面の一方の端点は前記作動レバーが一方に最大揺動したとき前記カム突片の一方が係合する係合点であり、他方の端点は前記作動レバーが他方に最大揺動したとき前記カム突片の前記一方が係合する係合点であるとよい。
【発明の効果】
【0008】
カム突片の一方を当接しその回動を規制するストッパ壁とカム突片の他方が嵌入当接して作動レバーを揺動させる揺動凹溝とを備える突出部を、作動レバーの揺動軸と同軸で且つ回転部材の回転軸を挿通するガイド孔をもつアーム部の先端側に備える構造であるので、アームの揺動軸側にはカム突片の回転軌跡と交差するものがない。その結果、作動レバーの幅Wを小さくすることができ、作動レバーを内包するハウジングを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最良の形態のドアロック装置用アクチュエータを図1〜図4を用いて説明する。図1はアクチュエータを備えたドアロック装置全体の斜視図、図2はロッキングレバーを駆動操作するアクチュエータの斜視図、図3はアクチュエータの分解斜視図、図4は要部の平面視図と側面視図である。
【0010】
ドアロック装置1は、ドア側に固定されるベース2と、ベース2にピン9aにより回動可能に枢支されたリフトレバー3と、ベース2にピン9bにより回動可能に枢支されたオープンレバー4と、オープンレバー4と係合してポールをラッチと係脱させるべく回転及び並進操作可能なオープンリンク5と、オープンリンク5のポールとの係合を制御するロッキングレバー7と、ロッキングレバー7を揺動させるアクチュエータ8とを有している。
【0011】
アクチュエータ8は、ドアロック装置をロック状態又はアンロック状態に切り換えるためのものであり、閉状態のドアを開状態に移行させることが可能な状態をアンロック状態と言い、閉状態のドアを開状態に移行させることが不能な状態をロック状態と言う。
【0012】
ベース2の上方にはピン9aとピン9bとで立壁61を有する階段状のサブベース6が支持されている。
【0013】
なお、リフトレバー3は、車両側に固定されたストライカ(不図示)と係合してドアを閉状態に保持するラッチ(不図示)とピン9aを介して連動する。
【0014】
ベース2には、オープンレバー4がピン9bにより回動可能に枢支され、オープンリンク5はオープンレバー4と係合してポールをラッチと係脱させるべく回転及び並進操作される。このオープンリンク5は、後述するロッキングレバー7の軸部71と係合する長孔51と、リフトレバー3の爪31と係合する当接部52とを有している。オープンレバー4を矢印D方向に操作すると、オープンリンク5は矢印E方向に並進し、当接部52がリフトレバー3の爪31に当接してリフトレバー3を矢印F方向に回転させる。するとオープンレバー3に連動するポールが回転してラッチとの係合を解除してドアが開状態になる。
【0015】
また、ベース2には、ロッキングレバー7がピン(不図示)により回動可能に枢支されている。ロッキングレバー7は、オープンリンク5の長孔51と係合する軸部71と、後述するアクチュエータ8の揺動レバー81と係合する係合部72を有している。
【0016】
サブベース6の立壁61には、ブラケット20を介してアクチュエータ8が取り付けられ、揺動軸82回りに揺動する揺動レバー81がロッキングレバー7の係合部72に係合している。
【0017】
アクチュエータ8は、ハウジング83と、ハウジング83に回動可能に保持され2個のカム突片84a、84bを回動する回転部材84と、回転部材84を回転駆動するモータ86と、一端がハウジング83に揺動自在に保持され、カム突片84a、84bに係合して揺動する作動レバー85と、を有している。
【0018】
モータ86は、ウォーム歯車87を介して回転部材84を正回転・逆回転させる。回転部材84は、円盤状で、中心にハウジング83に固定された回転軸88が挿通する孔が形成され、その孔を中心とする左右両側にカム突片84a、84bが形成されている。
【0019】
回転部材84と連結して揺動する作動レバー85は、作動レバー85の回転部材84と対向する側の対向面851bに立設された揺動軸82と同軸で且つ回転部材84の回転軸88を挿通するガイド孔851aをもつアーム部851と、アーム部851の先端側に設けられカム突片84aを当接しその回動を規制するストッパ壁852aとカム突片84bが嵌入当接して作動レバー85を揺動させる揺動凹溝852bとを備える突出部852と、を有している。作動レバー85の突出部852はアーム部851の対向面851bから回転部材84に向かって突出し、揺動凹溝852bは作動レバー85の揺動軸82の方向に開口する。ストッパ壁852aは揺動軸82を中心とする円弧面であり、アーム部851は円弧面852aから垂直に延び、揺動軸82に向かって細くなる略扇状板体である。円弧面852aの一方の端点Pを作動レバー85が一方に最大揺動したときカム突片84aが係合する係合点に、他方の端点Qを作動レバー85が他方に最大揺動したときカム突片84aが係合する係合点に、それぞれ設定してある。したがって、揺動軸82を通る中心線CLに平行な作動レバー外形への接線S間の距離Wは、最小化されている。
【0020】
次に、先ず、アクチュエータ8の作動を主に図4を参照して説明する。
ロッキングレバー7が図1に示すようにアンロック位置にあるとき、回転部材84のカム突片84aをストッパ壁852aの右側の係合点Pに係合して回転部材84は停止している。このアンロック位置からロッキングレバー7をロック位置に揺動すべくモータ86を駆動して回転部材84を反時計回転方向に回動させると、それに伴われて反時計回転方向に回動する右側のカム突片84aは一旦アーム部851の外に出る軌跡上を回動し、左側のカム突片84bはストッパ壁852aの中央の揺動凹溝852bに嵌入して該凹溝852bの右側の壁面に当接してカム突片84bが凹溝85dから離脱するように作動レバー85を揺動させ、揺動軸82に軸支されている揺動レバー81を図1の矢印A'方向に回動させ、次いで図4cに示すようにカム突片84aが左側の係合点Qに係合して回転部材84は停止される。
【0021】
次いで回転部材84を時計回転方向に回動させると、上述のロック回動と反対にカム突片84aが回動して図4aのアンロック位置に切り替えられる。
【0022】
次に、ドアロック装置本体の作動をアンロック状態の図1を用いて説明する。 アクチュエータ8の揺動レバー81が矢印Aで示す時計回転方向に回動すると、揺動レバー81と係合部72の係合によりロッキングレバー7を矢印Bで示す反時計回転方向に回転させる。すると、ロッキングレバー7の軸部71とオープンリンク5の長孔51の係合によりオープンリンク5を矢印Cで示す時計回転方向に回転させる。すると、当接部52が爪31と当接するので、オープンレバー4を操作してリフトレバー3を回動させることができるアンロック状態になる。
【0023】
アンロック状態からロック状態への作動は、以下の通りである。アクチュエータ8の揺動レバー81が矢印A'で示す反時計回転方向に回動すると、揺動レバー81と係合部72の係合によりロッキングレバー7を矢印B'で示す時計回転方向に回転させる。すると、ロッキングレバー7の軸部71とオープンリンク5の長孔51の係合によりオープンリンク5を矢印C'で示す反時計回転方向に回転させる。すると、当接部52が爪31と当接できなくなり、オープンレバー4を操作してもリフトレバー3を回動させることができないロック状態になる。
【0024】
本発明のアクチュエータは、上記のヒンジタイプドアのドアロック装置の他にスライドタイプドアのドアロック装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るアクチュエータを備えたドアロック装置全体の斜視図である。
【図2】本発明に係るドアロック装用アクチュエータの斜視図である。
【図3】図2のアクチュエータの分解斜視図である。
【図4】図2のアクチュエータの要部平面視図と側面視図である。
【図5】従来のアクチュエータの分解斜視図である。
【図6】従来のアクチュエータの要部平面視図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・・・・・・・・・・車両用ドアロック装置
7・・・・・・・・・・・・ロッキングレバー
8・・・・・・・・・・・・アクチュエータ
82・・・・・・・・・・揺動軸
83・・・・・・・・・・ハウジング
84・・・・・・・・・・回転部材
84a、84b・・・・カム突片
85・・・・・・・・・・作動レバー
851・・・・・・・アーム部
851a・・・ガイド孔
851b・・・対向面
852・・・・・・・突出部
852a・・・ストッパ壁
852b・・・揺動凹溝
86・・・・・・・・・・モータ
88・・・・・・・・・・回転軸
P、Q・・・・・・・・・・係合点
W・・・・・・・・・・・・作動レバーの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに回動可能に保持され2個のカム突片を回動する回転部材と、該回転部材を回転駆動するモータと、一端が前記ハウジングに揺動自在に保持され、前記カム突片に係合して揺動してドアロック装置をロック状態又はアンロック状態にする作動レバーと、を有するドアロック装置用アクチュエータであって、
前記作動レバーは、前記回転部材に対向する対向面に立設された揺動軸と同軸で且つ前記回転部材の回転軸を挿通するガイド孔をもつアーム部と、前記アーム部の先端側に設けられ前記カム突片の一方を当接しその回動を規制するストッパ壁と前記カム突片の他方が嵌入当接して前記作動レバーを揺動させる揺動凹溝とを有する突出部とを備え、該突出部は前記対向面から前記回転部材に向かって突出されていることを特徴とするドアロック装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記ストッパ壁は前記揺動軸を中心とする円弧面であり、前記アーム部は前記円弧面から垂直に延び、前記揺動軸に向かって細くなる略扇状板体である請求項1に記載のドアロック装置用アクチュエータ。
【請求項3】
前記円弧面の一方の端点は前記作動レバーが一方に最大揺動したとき前記カム突片の一方が係合する係合点であり、他方の端点は前記作動レバーが他方に最大揺動したとき前記カム突片の前記一方が係合する係合点である請求項2に記載のドアロック装置用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−127279(P2009−127279A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302971(P2007−302971)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】