説明

ナッツ類の加工方法

【課題】ナッツ類の食感・風味を改良する。
【解決手段】ナッツ類を弱アルカリ条件下で加熱する工程、加熱処理されたナッツ類をシロップ浸け工程とフライ工程に供することを特徴とするナッツ類の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナッツ類の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アーモンドのボイル時にメタリン酸塩を使用することが知られているが(特許文献1)、この方法ではアーモンド豆自体の風味向上効果は乏しいものであった。
【0003】
特許文献2は、カカオ豆又はカカオニブを低濃度のアルカリ溶液で高圧加熱処理し、次いでシラップ液に浸漬する方法を開示するが、この方法により、カカオ豆の風味向上は図ることができない。
【0004】
特許文献3は、大豆スナックの加工方法が開示されているが、大豆は粉に加工された後に処理されているため、大豆本来の食感・風味が十分残されていない。
【特許文献1】特公昭54-36216
【特許文献2】特開2001-333694
【特許文献3】特開平2-84135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナッツ類の食感・風味を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ナッツ類の食感・風味の改良のために検討を重ねた結果、ナッツ類本来の素材の食感・風味向上を弱アルカリ液を用いた加熱処理とその後の糖液処理とフライ処理を組み合わせることにより、ナッツ類の新しい食感・風味を得ることができることを見出した。
【0007】
本発明は、以下のナッツ類の加工方法を提供するものである。
1. ナッツ類を弱アルカリ条件下で加熱処理し、加熱処理されたナッツ類をシロップ浸け工程とフライ工程に供することを特徴とするナッツ類の加工方法。
2. ナッツ類がアーモンド、マカダミアナッツ、へーゼルナッツ、クルミ、ビーナッツ又はカシューナッツである、項1に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新しい食感・風味を有するナッツ類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、弱アルカリ条件下でナッツ類を加熱処理することで、アルカリ液の抽出力によるナッツ類の雑味の除去ができる。また、加熱処理によりナッツ類内のたんぱく質が溶出し、保水性が向上すること、及び、デンプンの水素結合が壊れ、その隙間から水が浸入するためナッツ類へ十分水分を浸透させることができる。このような弱アルカリ条件下での加熱処理の後、糖液(シロップ)に浸漬させてナッツ類の表面に糖類を浸透させ、さらにフライ工程を行うことで、浸漬水分の除去を行なうことができる。このようにして得られたナッツ類は、従来の加工方法で得られない、ナッツ類の新しい食感・風味を得ることができる。
【0010】
弱アルカリ条件としては、pH7.5〜pH10.5、好ましくはpH7.8〜pH9.5、より好ましくはpH8〜pH9が例示される。弱アルカリ条件は、重曹(NaHCO3)、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、Na2HPO4、K2HPO4、Na3PO4などのアルカリ剤を適量水に溶解させることにより調整できる。ナッツ類は、このような弱アルカリ性の水溶液に浸漬され、加熱処理(特にボイル処理)される。アルカリ剤の濃度としては、0.001〜1%程度、好ましくは0.003〜0.8%程度、より好ましくは0.005〜0.6%程度、さらに好ましくは0.01〜0.5%程度である。弱アルカリ性溶液の温度は、40〜100℃、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。弱アルカリ性溶液の温度は、該溶液のナッツ類への浸透性により異なり、例えばアルカリ性溶液の浸透性が低いアーモンドの場合には、70〜100℃が好ましく、アルカリ性溶液の浸透性が高いマカダミアナッツの場合には、40〜80℃が好ましい。加熱処理は常圧で行なってもよく、加圧下に行なってもよい。好ましくは常圧で加熱処理される。加熱処理時間は、1〜15分程度、好ましくは2〜10分程度が挙げられる。加熱処理の時間は、pHと圧力、ナッツ類の種類と大きさ、温度などにより変化するが、処理時間が短すぎるとナッツ類の表面への水ないし糖類の浸透が低下して本発明の効果が低くなる。また、処理時間が長すぎるとナッツ類本来の風味が低下する。さらに、pHが7に近づくとナッツ類の雑味の除去と表面の浸透性の向上効果が不十分になる。一方、pH11以上の強アルカリ性になると、ナッツ類の表面の組織の破壊が進みすぎてガリガリした食感となり、好ましくない。
【0011】
本発明では、加熱処理の後に糖液(シロップ)処理を行う。具体的には、Brix30〜Brix100程度、好ましくはBrix50〜Brix90程度の糖液に弱アルカリ性での加熱処理されたナッツ類を浸漬する。浸漬時間は、糖液が十分に浸透すればよく特に限定されないが、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。浸漬時間が長くても品質面で特に問題はない。糖液は、通常ショ糖を使用するが、他の糖類を使用することもできる。
【0012】
糖液処理後のナッツ類は、油でフライする。油としては、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油、大豆油、やし油、ひまわり油、落下生油、パーム核油、あまに油などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。フライ工程の油の温度は、150〜180℃程度が挙げられる。フライの時間は特に限定されないが、例えば1〜20分程度が挙げられる。
【0013】
本発明において、ナッツ類には、アーモンド、ピーナッツ、マカダミアナッツ、クルミ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツなどが含まれる。ナッツ類は皮付きのものであっても皮なしのものであってもよいが、皮付きのナッツ類、特にアーモンドが好ましい。
【0014】
本発明で加工したナッツ類は、食感・風味が未加工のナッツ類よりも優れており、そのまま食してもよく、チョコレートとともにナッツ入りチョコレートとして食してもよい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明をするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
試験方法:
(1)生アーモンド100gに対して条件0.0001〜3%の重曹液500gにいれ95℃前後でボイル処理を行った。
(2)ボイル後103〜105℃のBrix70程度のシロップ液(水30:砂糖70)500gにいれ10分間浸漬処理を行なった。
(3)シロップ浸漬後160〜170℃に加温した菜種油で7分間フライし、各サンプルを作製した。
【0016】
各条件で作成したフライアーモンドについて風味(アーモンド本来の味、香ばしさ)、食感の官能評価を実施した。比較品として重曹を添加しない水ボイルで作製したフライアーモンドで官能評価を行った。
【0017】
アーモンドの味評価は、以下の基準で行なった。
◎:アーモンドが保有する雑味がなくかつ旨味が十分残っている。
○:雑味が抜けかつ旨味がある。
△:いずれの効果も多少ある。
×:効果がない又はバランスが崩れ価値を失っている。
【0018】
香ばしさ評価は、以下の基準で行なった。
◎:豆表面(アルカリフライ)の香ばしさが非常によい。
○:豆表面の香ばしさがよい
△:豆表面の香ばしさが多少よい
×:効果がない又はバランが崩れ価値をうしなっている。
【0019】
食感評価は、以下の基準で行なった。
◎=とてもカリッとしている。
○=カリッとしている。
△=カリッと感が多少よい。
×=カリッと感改善効果なしまたは好ましくないとして判断した。
【0020】
加工処理した各サンプルの風味(アーモンド本来の味、香ばしさ)、食感について総合的に評価を行い判断した。評価基準は以下に示す。
◎:風味、食感とも非常に良好。
○:風味、食感とも良好。
△:風味よいが、食感改善効果なし。
▲:食感はよいが風味改善効果なし。
×:風味、食感とも改善効果なし。
【0021】
試験結果を以下の表1と表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナッツ類を弱アルカリ条件下で加熱処理し、加熱処理されたナッツ類をシロップ浸け工程とフライ工程に供することを特徴とするナッツ類の加工方法。
【請求項2】
ナッツ類がアーモンド、マカダミアナッツ、へーゼルナッツ、クルミ、ビーナッツ又はカシューナッツである、請求項1に記載の方法。