説明

ナノ繊維複合体製造方法、ナノ繊維複合体及びセパレーター

【課題】従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能なナノ繊維複合体及び当該ナノ繊維複合体を製造可能なナノ繊維複合体製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により基材層W上にナノ繊維層310を形成し、基材層Wとナノ繊維層310とが積層した構造を有するナノ繊維複合体を製造する電界紡糸工程を含むナノ繊維複合体300の製造方法であって、ナノ繊維312とビーズ状構造体314とが混在した状態のナノ繊維層310が形成される電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施することを特徴とするナノ繊維複合体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ナノ繊維複合体製造方法、ナノ繊維複合体及びセパレーターに関する。
【0002】
従来、基材層と、ナノ繊維層とが積層した構造を有するナノ繊維複合体と、当該ナノ繊維複合体からなるセパレーターとが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなナノ繊維複合体及びセパレーターは、ポリマー溶液を用いて電界紡糸法(エレクトロスピニング法ともいう。)により基材層上にナノ繊維層を形成する電界紡糸工程を含むナノ繊維複合体製造方法により製造することができる。
【0003】
従来のナノ繊維複合体製造方法によれば、それぞれ異なる性質を有する基材層とナノ繊維層とを用いて製造することにより、多様な性質を有するナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0004】
また、従来のナノ繊維複合体によれば、基材層が有する性質にナノ繊維層が有する性質(広い表面積、微細な空隙等)を付加することにより、多様な性質を有するようにすることが可能となる。
【0005】
また、従来のセパレーターによれば、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細なナノ繊維層を備えるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0006】
なお、「基材層」とは、ナノ繊維層を形成するための基材となる層のことをいう。
また、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。さらに、「セパレーター」とは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に用いるセパレーターのことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−103050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のナノ繊維複合体製造方法で製造した従来のナノ繊維複合体は、基材層とナノ繊維層との間の接合強度が小さい(つまり、剥離しやすい)場合があるという問題がある。このため、従来のナノ繊維複合体製造方法においては、熱接着繊維やバインダー繊維等の接着材料や加熱処理、加圧処理、化学処理等の接着処理を用いることにより、基材層とナノ繊維層とを接着することが行われている(例えば、特許文献1の[0040]段落参照。)。しかしながら、本発明の発明者らの研究により、上記のような場合には、接着を行うことによってナノ繊維同士の間隙が埋まることにより品質が低下するという問題や、接着のための工程(加熱処理工程、加圧処理工程、化学処理工程等)により生産性が低下するという問題が発生することが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能なナノ繊維複合体及び当該ナノ繊維複合体を製造可能なナノ繊維複合体製造方法を提供することを目的とする。さらに、上記したナノ繊維複合体を有し、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能なセパレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ところで、電界紡糸法により基材層上にナノ繊維を形成する際、電界紡糸条件(主に、ポリマー溶液のポリマー濃度が低いとき)によっては、ナノ繊維とビーズ状構造体(略球状の構造体)とが混在した状態のナノ繊維層が得られることがある。
【0011】
従来、ナノ繊維の技術分野において上記ナノ繊維層の存在は知られていたものの、多くの場合には電界紡糸条件設定の失敗の産物とみなされていた。
しかしながら、本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、後述する試験例に示すように、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で電界紡糸法を行い、基材層と当該状態のナノ繊維層とが積層した構造を有するナノ繊維複合体を製造すると、基材層とナノ繊維層との間の接合強度が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の要素により構成される。
【0012】
[1]本発明のナノ繊維複合体製造方法は、ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により基材層上にナノ繊維層を形成し、前記基材層と前記ナノ繊維層とが積層した構造を有するナノ繊維複合体を製造する電界紡糸工程を含むナノ繊維複合体の製造方法であって、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施することを特徴とする。
【0013】
このため、本発明のナノ繊維複合体によれば、従来のナノ繊維複合体製造方法と同様に、それぞれ異なる性質を有する基材層とナノ繊維層とを用いて製造することにより、多様な性質を有するナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明のナノ繊維複合体によれば、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施するため、後述する実施例に示すように、下記のようなナノ繊維複合体を製造することが可能となる。すなわち、従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能なナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0015】
[2]本発明のナノ繊維複合体製造方法においては、所定の電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施したとき、前記ナノ繊維と前記ビーズ状構造体のうち実質的に前記ナノ繊維のみからなるナノ繊維層が形成されるポリマー濃度を第1ポリマー濃度とし、前記ナノ繊維と前記ビーズ状構造体のうち実質的に前記ビーズ状構造体のみからなる層が形成されるポリマー濃度を第2ポリマー濃度としたとき、前記第1ポリマー濃度よりも低く、前記第2ポリマー濃度よりも高い第3ポリマー濃度のポリマーを含有するポリマー溶液を用いて前記所定の電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施することにより、基材上に、前記ナノ繊維層として、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層を形成することが好ましい。
【0016】
このような方法とすることにより、本発明のナノ繊維複合体を安定して製造することが可能となる。
【0017】
なお、上記「所定の電界紡糸条件」には、ポリマー溶液のポリマー濃度以外の電界紡糸条件が含まれる。
【0018】
[3]本発明のナノ繊維複合体製造方法においては、前記基材層は、2層以上の層が積層された構造を有する基材層であり、少なくとも前記基材層における上面又は下面のうち一方の面と側面とが、前記ナノ繊維層により覆われるように電界紡糸工程を実施することが好ましい。
【0019】
このような方法とすることにより、ナノ繊維層により基材層の2層以上の層を側面で繋止することが可能となり、その結果、2層以上の層の間の接合強度も大きくすることが可能なナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0020】
[4]本発明のナノ繊維複合体は、基材層と、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層とを備え、前記基材層と前記ナノ繊維層とが積層した構造を有することを特徴とする。
【0021】
本発明のナノ繊維複合体によれば、従来のナノ繊維複合体と同様に、基材層が有する性質にナノ繊維層が有する性質(広い表面積、微細な空隙等)を付加することにより、多様な性質を有するようにすることが可能となる。
【0022】
また、本発明のナノ繊維複合体によれば、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層とを備えるため、従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0023】
なお、本発明のナノ繊維複合体は、電池(一次電池及び二次電池)のセパレーター、コンデンサー(キャパシターともいう。)のセパレーター、ワイピングクロス、フィルター、バグフィルター等の産業資材、各種触媒の担体、各種電子・機械材料、高機能・高感性テキスタイル等の衣料品、再生医療材料、バイオメディカル材料、医療用MEMS材料、バイオセンサー材料等の医療材料、ヘルスケア、スキンケア等美容関連用品、その他幅広い用途に使用可能である。
【0024】
[5]本発明のナノ繊維複合体においては、前記ナノ繊維の平均径は、30nm〜3000nmの範囲内にあり、前記ビーズ状構造体の平均径は、60nm〜5000nmの範囲内にあり、前記ビーズ状構造体の平均径は、前記ナノ繊維の平均径の2倍〜100倍の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、基材層とナノ繊維層との間の接合強度を一層大きくし、一層高い品質及び一層高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0026】
なお、本発明において、ナノ繊維の平均径を30nm〜3000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が30nmより小さい場合には製造が困難となる場合があるためであり、当該平均径が3000nmより大きい場合にはナノ繊維としての性質が損なわれる場合があるためである。
また、本発明において、ビーズ状構造体の平均径を60nm〜5000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が60nmより小さい場合には基材層とナノ繊維層との接合強度が十分に大きくならない場合があるためであり、当該平均径が5000nmより大きい場合にはナノ繊維複合体を薄くすることが困難となる場合があるためである。
さらにまた、本発明において、ビーズ状構造体の平均径をナノ繊維の平均径の2倍〜100倍の範囲内にしたのは、当該平均径がナノ繊維の平均径の2倍よりも小さい場合には基材層とナノ繊維層との接合強度が十分に大きくならない場合があるためであり、当該平均径がナノ繊維の平均径の100倍よりも大きい場合にはナノ繊維複合体を薄くすることが困難となる場合があるためである。
【0027】
[6]本発明のナノ繊維複合体においては、前記基材層は、2層以上の層が積層された構造を有する基材層であり、少なくとも前記基材層における上面又は下面のうち一方の面と、側面とが前記ナノ繊維層により覆われていることが好ましい。
【0028】
このような構成とすることにより、ナノ繊維層により基材層の2層以上の層を側面で繋止した、2層以上の層の間の接合強度が大きいナノ繊維複合体とすることが可能となる。
【0029】
[7]本発明のセパレーターは、セパレーターを構成する層のうち少なくとも1つの層として、本発明のナノ繊維複合体を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明のセパレーターによれば、従来のセパレーターと同様に、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細なナノ繊維層を備えるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0031】
また、本発明のセパレーターによれば、本発明のナノ繊維複合体を有するため、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0032】
本発明のセパレーターは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサーに特に好適に用いることができる。
【0033】
[8]本発明のセパレーターにおいては、前記セパレーターの厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0034】
このような構成とすることにより、十分な機械的強度を有し、かつ、十分に低いイオン抵抗性を有するセパレーターとすることが可能となる。
なお、本発明において、セパレーターの厚さを1μm〜100μmの範囲内にしたのは、当該厚さが1μmより薄い場合にはセパレーターの機械的強度を十分に高くすることができない場合があるためであり、当該厚さが100μmより厚い場合にはイオン抵抗性を十分に低くすることができない場合があるためである。
上記の観点からは、セパレーターの厚さが10μm〜40μmの範囲内にあることが一層好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1に係るセパレーター(ナノ繊維複合体300)を説明するための図である。
【図2】実施形態1におけるナノ繊維複合体製造装置1を説明するための図である。
【図3】実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法のフローチャートである。
【図4】実施例1に係るナノ繊維複合体300aの電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2に係るナノ繊維複合体300cの電子顕微鏡写真である。
【図6】実施形態2に係るナノ繊維複合体302の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のナノ繊維複合体製造方法、ナノ繊維複合体及びセパレーターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0037】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るセパレーター(ナノ繊維複合体300)の構成
まず、実施形態1に係るセパレーターの構成を説明する。
図1は、実施形態1に係るセパレーター(ナノ繊維複合体300)を説明するための図である。図1(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いた状態のセパレーターの斜視図であり、図1(b)はセパレーターの拡大断面図であり、図1(c)は図1(b)のAで示す範囲をさらに拡大して示す模式図である。
【0038】
実施形態1に係るセパレーターは、実施形態1に係るナノ繊維複合体300からなる。つまり、実施形態1においてはナノ繊維複合体300とセパレーターとは同一物である。ナノ繊維複合体300は、図1に示すように、基材層Wと、ナノ繊維312とビーズ状構造体314とが混在した状態のナノ繊維層310とを備え(図1(c)参照。)、基材層Wとナノ繊維層310とが積層した構造を有する。セパレーター300の厚さは1μm〜100μmの範囲内であり、例えば、50μmである。
【0039】
ナノ繊維312の平均径は、30nm〜3000nmの範囲内にあり、例えば、200nmである。また、ビーズ状構造体314の平均径は、60nm〜5000nmの範囲内にあり、例えば、4000nmである。さらに、ビーズ状構造体314の平均径は、ナノ繊維312の平均径の2倍〜100倍の範囲内にあり、例えば、20倍である。
【0040】
基材層Wは長尺シートの形態を取っており、基材層Wとしては、各種材料からなる不織布、織物、編物、紙など、通気性のあるものを用いることができる。実施形態1においては基材層Wとして繊維質の基材層を用いており、図1(c)中、符号200で示すのは基材層W中の繊維である。基材層Wの厚さは、例えば1μm〜90μmのものを用いることができる。基材層Wの長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。なお、基材層Wとしては、繊維質以外のもの(例えば、多孔性のフィルム)も用いることができる。
【0041】
実施形態1に係るセパレーターは、後述するナノ繊維複合体製造装置1を用いて、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法により得られるものである。
【0042】
2.実施形態1におけるナノ繊維複合体製造装置1の構成
次に、実施形態1におけるナノ繊維複合体製造装置1の構成を説明する。
図2は、実施形態1におけるナノ繊維複合体製造装置1を説明するための図である。図2(a)はナノ繊維複合体製造装置1の正面図であり、図2(b)はノズルユニット110をコレクター150側から見た図である。なお、図2(b)においては、基材層Wの下に配置されている構成要素(上向きノズル120等)も図示している。図2においては、一部の部材は断面図として示している。
【0043】
ナノ繊維複合体製造装置1は、実施形態1に係るナノ繊維複合体300を製造するための装置である。つまり、実施形態1に係るセパレーターを製造するための装置であるともいえる。
ナノ繊維複合体製造装置1は、図2に示すように、搬送装置10と、電界紡糸装置20とを備える。ナノ繊維複合体製造装置1においては、電界紡糸装置として1台の電界紡糸装置20を備える。
【0044】
搬送装置10は、基材層Wを所定の搬送速度で搬送する。搬送装置10は、基材層Wを繰り出す繰り出しローラー11、基材層Wを巻き取る巻き取りローラー12、基材層Wの張りを調整するテンションローラー13,18と、繰り出しローラー11と巻き取りローラー12との間に位置する補助ローラー14を備える。繰り出しローラー11及び巻き取りローラー12は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される構造となっている。
電界紡糸装置20は、搬送装置10により搬送されている基材層Wにナノ繊維312とビーズ状構造体314とが混在した状態のナノ繊維層310を形成する。
【0045】
電界紡糸装置20は、図2に示すように、筐体100と、ノズルユニット110と、ポリマー溶液供給部130(図示せず。)と、コレクター150と、電源装置160と、補助ベルト装置170とを備える。第1電界紡糸装置20は、後述する複数の上向きノズル120の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら吐出して、ナノ繊維層310を形成する。
【0046】
筐体100は、導電体からなる。
ノズルユニット110は、複数の上向きノズル120を有する。
本発明のセパレーター製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、ノズルユニット110は、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさで、ブロック状の形状を有する。
【0047】
上向きノズル120は、図示しないポリマー溶液供給部130から供給される「ナノ繊維312の原料であるポリマー溶液」を吐出口から吐出するノズルである。上向きノズル120は、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する。上向きノズル120を構成する材料としては導電体を用いることができ、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0048】
上向きノズル120は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。上向きノズル120の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)とすることができる。
【0049】
なお、実施形態1においては、ノズルとして上向きノズル120を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。ノズルとして横向きノズルを用いてもよいし、下向きノズルを用いてもよい。
【0050】
コレクター150は、ノズルユニット110の上方に配置されている。コレクター150は導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材152を介して筐体100に取り付けられている。
電源装置160は、上向きノズル120と、コレクター150との間に高電圧を印加する。電源装置160の正極はコレクター150に接続され、電源装置160の負極は筐体100を介してノズルユニット110に接続されている。
【0051】
補助ベルト装置170は、長尺シートWの搬送速度に同期して回転する補助ベルト172と、補助ベルト172の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー174とを有する。5つの補助ベルト用ローラー174のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター150と基材層Wとの間に補助ベルト172が配設されているため、基材層Wは、正の高電圧が印加されているコレクター150に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0052】
3.実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法の説明
次に、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法を説明する。
図3は、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法のフローチャートである。
【0053】
実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法は、図3に示すように、ポリマー溶液作製工程S1と、電界紡糸工程S2とを含む。実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法は、上記したナノ繊維複合体製造装置1を用いて、実施形態1に係るナノ繊維複合体300、つまり、実施形態1に係るセパレーターを製造する方法である。
【0054】
S1.ポリマー溶液作製工程
ポリマー溶液作製工程S1は、ポリマー材料を含有するポリマー溶液を作製する工程である。さらにいえば、所定の電界紡糸条件で電界紡糸工程S2を実施したとき、ナノ繊維312とビーズ状構造体314のうち実質的にナノ繊維312のみからなるナノ繊維層が形成されるポリマー濃度を第1ポリマー濃度とし、ナノ繊維312とビーズ状構造体314のうち実質的にビーズ状構造体314のみからなる層が形成されるポリマー濃度を第2ポリマー濃度としたとき、第1ポリマー濃度よりも低く、第2ポリマー濃度よりも高い第3ポリマー濃度のポリマー材料を含有するポリマー溶液を作製する工程である。
【0055】
第3ポリマー濃度は、ポリマー材料の種類や分子量、溶媒の種類や比率、温度、電圧、製造するナノ繊維複合体の用途等により適宜決定することができる。一例を挙げると、ポリマー材料がポリウレタンである場合、平均的な電界紡糸条件下において5wt%〜13wt%の範囲に設定することができる。
【0056】
S2.電界紡糸工程
電界紡糸工程S2は、ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により基材層W上にナノ繊維層310を形成し、基材層Wとナノ繊維層310とが積層した構造を有するナノ繊維複合体300を製造する工程であって、ナノ繊維312とビーズ状構造体314とが混在した状態のナノ繊維層310が形成される所定の電界紡糸条件で実施する工程である。
【0057】
まず、作製したポリマー溶液を、ポリマー溶液供給経路130を通じてノズルユニット110へ供給する。
次に、長尺シートである基材層Wを搬送装置10にセットし、その後、基材層Wを繰り出しローラー11から巻き取りローラー12に向けて所定の搬送速度Vで搬送させながら、各電界紡糸装置20において基材層Wにナノ繊維層310を形成し、実施形態1に係るナノ繊維複合体300、つまり、セパレーターを製造する。当該セパレーターは、巻き取りローラー12に巻き取られる。
【0058】
以下に、実施形態1における紡糸条件を例示的に示す。
【0059】
ポリマー溶液を製造するためのポリマー材料としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。
【0060】
ポリマー溶液を製造するための溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0061】
第1搬送速度及び第2搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。ノズルとコレクター150とノズルユニット110に印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、50kV付近に設定することが好ましい。
【0062】
紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
【0063】
以下、実施形態に係るナノ繊維複合体製造方法、ナノ繊維複合体及びセパレーター300の効果を記載する。
【0064】
実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法によれば、従来のナノ繊維複合体製造方法と同様に、それぞれ異なる性質を有する基材層とナノ繊維層とを用いて製造することにより、多様な性質を有するナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法によれば、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施するため、実施形態1に係るナノ繊維複合体300を製造することが可能となる。
【0066】
また、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法によれば、第1ポリマー濃度よりも低く、第2ポリマー濃度よりも高い第3ポリマー濃度のポリマーを含有するポリマー溶液を用いて所定の電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施するため、実施形態1に係るナノ繊維複合体300を安定して製造することが可能となる。
【0067】
実施形態1に係るナノ繊維複合体300によれば、従来のナノ繊維複合体と同様に、基材層が有する性質にナノ繊維層が有する性質(広い表面積、微細な空隙等)を付加することにより、多様な性質を有するようにすることが可能となる。
【0068】
また、実施形態1に係るナノ繊維複合体300によれば、ナノ繊維312とビーズ状構造体314とが混在した状態のナノ繊維層310とを備えるため、従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係るナノ繊維複合体300によれば、ナノ繊維312の平均径は、30nm〜3000nmの範囲内にあり、ビーズ状構造体314の平均径は、60nm〜5000nmの範囲内にあり、ビーズ状構造体314の平均径は、ナノ繊維312の平均径の2倍〜100倍の範囲内にあるため、基材層とナノ繊維層との間の接合強度を一層大きくし、一層高い品質及び一層高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0070】
実施形態1に係るセパレーターによれば、従来のセパレーターと同様に、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細なナノ繊維層を備えるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0071】
また、実施形態1に係るセパレーターによれば、実施形態1に係るナノ繊維複合体300を備えるため、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0072】
また、実施形態1に係るセパレーターによれば、セパレーターの厚さが1μm〜100μmの範囲内にあるため、十分な機械的強度を有し、かつ、十分に低いイオン抵抗性を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0073】
[実施例1]
図4は、実施例1に係るナノ繊維複合体300aの電子顕微鏡写真である。
実施例1においては、本発明により定義されるナノ繊維複合体300aを実際に製造し、当該ナノ繊維複合体300aの構造を確認した。
【0074】
実施例1に係るナノ繊維複合体300aの製造方法は、以下の通りである。
まず、電界紡糸工程に用いるポリマー溶液を作製した。当該ポリマー溶液は、原料となるポリフッ化ビニリデン(PVDF。Sigma−Aldrich社より購入。)と、ジメチルアセトアミド(DMAc):メチルエチルケトン(MEK)=7:3の混合溶媒とを用いて作製した。上記原料及び溶媒を室温で3時間撹拌し、原料の溶解を確認した。ポリマー濃度は19wt%となるように調製した。
【0075】
次に、上記のようにして作製したポリマー溶液を用いて、電界紡糸法により基材層上にナノ繊維層を形成し、基材層とナノ繊維層とが積層した構造を有するナノ繊維複合体を製造する電界紡糸工程を行った。
【0076】
基材層としては一般的な和紙(主成分はセルロースからなる。平均繊維径約20μm。)を用いた。
電界紡糸条件は、ノズル−コレクター間距離(TCD)を10cmとし、印加電圧を6kVとした。
【0077】
上記のようにして製造したナノ繊維複合体300aは、図4に示すように、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成されることが確認できた。なお、図4において背景に写っている太い繊維は和紙を構成する繊維である。
ナノ繊維複合体300aにおいては、ナノ繊維の平均径はおおよそ80nmであり、ビーズ状構造体の平均径はおおよそ2000nmであり、ビーズ状構造体の平均径はナノ繊維の平均径のおおよそ25倍であった。
【0078】
このように、本発明により定義されるナノ繊維複合体300aの構造を確認することができた。
また、ナノ繊維複合体300aのナノ繊維層側を指でこすって基材層とナノ繊維層との間の接合強度を確かめたところ、接合強度が大きいためにナノ繊維層が剥離しないことが確認できた。
【0079】
[比較例]
比較例においては、基材層上にナノ繊維層を形成するときに、実質的にナノ繊維のみからなるナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施することにより、ナノ繊維複合体300bを実際に製造し、基材層とナノ繊維層との間の接合強度を確認した。
【0080】
変形例に係るナノ繊維複合体300bの製造方法は、ポリマー濃度が24wt%となるように調製したこと以外は実施例1に係るナノ繊維複合体300aの製造方法と同様の方法としたため、詳細は省略する。
【0081】
上記のようにして製造したナノ繊維複合体300bのナノ繊維層側を指でこすって基材層とナノ繊維層との間の接合強度を確かめたところ、実施例1に係るナノ繊維複合体300aとは異なり、基材層とナノ繊維層との間の接合強度が小さいためにナノ繊維層が剥離してしまうことが確認できた。
【0082】
[実施例2]
図5は、実施例2に係るナノ繊維複合体300cの電子顕微鏡写真である。
実施例2においては、本発明により定義されるナノ繊維複合体300cを実際に製造し、当該ナノ繊維複合体300cの構造を確認した。
【0083】
実施例2に係るナノ繊維複合体300cの製造方法は、基材層としてPEフィルムセパレーター(セルガード単層ポリエチレンセパレーター、セルガード社製)を用いたこと以外は実施例1に係るナノ繊維複合体300aの製造方法と同様の方法としたため、詳細は省略する。
【0084】
上記のようにして製造したナノ繊維複合体300cにおいても、図5に示すように、実施例1に係るナノ繊維複合体300aと同様にナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成されることが確認できた。
ナノ繊維複合体300cにおいても、ナノ繊維の平均径はおおよそ80nmであり、ビーズ状構造体の平均径はおおよそ2000nmであり、ビーズ状構造体の平均径はナノ繊維の平均径のおおよそ25倍であった。
【0085】
このように、本発明により定義されるナノ繊維複合体300cの構造を確認することができた。
また、ナノ繊維複合体300cのナノ繊維層側を指でこすって基材層とナノ繊維層との間の接合強度を確かめたところ、実施例1に係るナノ繊維複合体300aと同様に、接合強度が大きいためにナノ繊維層が剥離しないことが確認できた。
【0086】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係るナノ繊維複合体302の拡大断面図である。
実施形態2に係るナノ繊維複合体302は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維複合体300と同様の構成を有するが、基材層及びナノ繊維層の構成が実施形態1に係るナノ繊維複合体300の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るナノ繊維複合体302においては、図6に示すように、基材層は2層の層W1,W2が積層された構造を有する基材層であり、基材層における上面と側面とがナノ繊維層320により覆われている。
【0087】
実施形態2に係るナノ繊維複合体302を製造するためのナノ繊維複合体製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法と同様であるが、基材層における上面と側面とがナノ繊維層320により覆われるように電界紡糸工程を実施する点が実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法とは異なる。実施形態2に係るナノ繊維複合体製造方法としては、例えば、基材層の側面までナノ繊維層320が形成可能なようにノズルの間隔を大きく取ることや、基材層の幅を狭くすることが考えられる。
【0088】
上記のように、実施形態2に係るナノ繊維複合体製造方法は、少なくとも基材層における上面又は下面のうち一方の面と側面とが、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層320により覆われるように電界紡糸工程を実施する点が実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法の場合とは異なるが、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法と同様に、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で電界紡糸工程を実施するため、本発明のナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0089】
また、実施形態2に係るナノ繊維複合体製造方法によれば、ナノ繊維層320により基材層の2層の層を側面で繋止することが可能となり、その結果、2層の層の間の接合強度も大きくすることが可能なナノ繊維複合体を製造することが可能となる。
【0090】
なお、実施形態2に係るナノ繊維複合体製造方法は、少なくとも基材層における上面又は下面のうち一方の面と側面とがナノ繊維層により覆われるように電界紡糸工程を実施する点以外においては、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法と基本的に同様の方法であるため、実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0091】
実施形態2に係るナノ繊維複合体302は、基材層及びナノ繊維層の構成が実施形態1に係るナノ繊維複合体300の場合とは異なるが、実施形態1に係るナノ繊維複合体300と同様に、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層320とを備えるため、従来のナノ繊維複合体と比較して基材層とナノ繊維層との間の接合強度が大きく、基材層とナノ繊維層との接着の必要がなく、高い品質及び高い生産性を有するようにすることが可能となる。
【0092】
また、実施形態2に係るナノ繊維複合体302によれば、ナノ繊維層320により基材層の2層の層を側面で繋止した、2層の層の間の接合強度が大きいナノ繊維複合体とすることが可能となる。
【0093】
なお、実施形態2に係るナノ繊維複合体302は、基材層及びナノ繊維層の構成以外の点においては、実施形態1に係るナノ繊維複合体300と基本的に同様の構成を有するため、実施形態1に係るナノ繊維複合体300が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0094】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0095】
(1)上記各実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
(2)上記実施形態1においては、ナノ繊維複合体300からなるセパレーターを例にとって本発明のセパレーターを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ナノ繊維複合体以外の層(補強部材等)をさらに備えるセパレーターとしてもよい。
【0097】
(3)上記実施形態1においては、セパレーターを例にとって本発明のナノ繊維複合体300を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維複合体は、ワイピングクロス、フィルター、バグフィルター等の産業資材、各種触媒の担体、各種電子・機械材料、高機能・高感性テキスタイル等の衣料品、再生医療材料、バイオメディカル材料、医療用MEMS材料、バイオセンサー材料等の医療材料、ヘルスケア、スキンケア等美容関連用品、その他幅広い用途に使用可能である。
【0098】
(4)上記実施形態1に係るナノ繊維複合体300は、上記のナノ繊維複合体製造装置1を用いて製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維複合体は、種々のナノ繊維複合体製造装置を用いて製造することができる。
【0099】
(5)上記各実施形態に係るナノ繊維複合体は、各実施形態に係るナノ繊維複合体製造方法により製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維複合体は、種々のナノ繊維複合体製造方法を用いて製造することができる。
【0100】
(6)上記実施形態1に係るナノ繊維複合体製造方法は、上記のナノ繊維複合体製造装置1を用いて行うものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維複合体製造方法は、種々のナノ繊維複合体製造装置を用いて行うことができる。
【0101】
(7)上記実施形態2においては、2層の基材層と1層のナノ繊維層320とを有するナノ繊維複合体302を例にとって本発明のナノ繊維複合体を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。3層以上の基材層や2層以上のナノ繊維層を有するナノ繊維複合体に本発明を適用することもできる。
【0102】
(8)本発明に用いるナノ繊維複合体製造装置においては、ブロック状のノズルユニット以外のノズルユニット、例えば、管状のノズルユニットを用いてもよい。
【0103】
(9)上記実施形態1においては、電界紡糸装置として1台の電界紡糸装置20を備えるナノ繊維複合体製造装置1を例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2台以上の電界紡糸装置を備えるナノ繊維複合体製造装置を本発明に適用することもできる。
【符号の説明】
【0104】
1…セパレーター製造装置、10…搬送装置、11…繰り出しローラー、12…巻き取りローラー、13,18…テンションローラー、14…補助ローラー、20…電界紡糸装置、100…筐体、110…ノズルユニット、120…第1ノズル、150…コレクター、152…絶縁体、160…電源装置、170…補助ベルト装置、172…補助ベルト、174…補助ベルト用ローラー、200…基材層の繊維、300,302…ナノ繊維複合体、310,320…ナノ繊維層、312…ナノ繊維、314…ビーズ状構造体、W…基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー溶液を用いて電界紡糸法により基材層上にナノ繊維層を形成し、前記基材層と前記ナノ繊維層とが積層した構造を有するナノ繊維複合体を製造する電界紡糸工程を含むナノ繊維複合体の製造方法であって、
ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層が形成される電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施することを特徴とするナノ繊維複合体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ繊維複合体製造方法において、
所定の電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施したとき、前記ナノ繊維と前記ビーズ状構造体のうち実質的に前記ナノ繊維のみからなるナノ繊維層が形成されるポリマー濃度を第1ポリマー濃度とし、前記ナノ繊維と前記ビーズ状構造体のうち実質的に前記ビーズ状構造体のみからなる層が形成されるポリマー濃度を第2ポリマー濃度としたとき、
前記第1ポリマー濃度よりも低く、前記第2ポリマー濃度よりも高い第3ポリマー濃度のポリマーを含有するポリマー溶液を用いて前記所定の電界紡糸条件で前記電界紡糸工程を実施することにより、基材上に、前記ナノ繊維層として、ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層を形成することを特徴とするナノ繊維複合体製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ繊維複合体製造方法において、
前記基材層は、2層以上の層が積層された構造を有する基材層であり、
少なくとも前記基材層における上面又は下面のうち一方の面と側面とが、前記ナノ繊維層により覆われるように電界紡糸工程を実施することを特徴とするナノ繊維複合体製造方法。
【請求項4】
基材層と、
ナノ繊維とビーズ状構造体とが混在した状態のナノ繊維層とを備え、
前記基材層と前記ナノ繊維層とが積層した構造を有することを特徴とするナノ繊維複合体。
【請求項5】
請求項1に記載のナノ繊維複合体において、
前記ナノ繊維の平均径は、30nm〜3000nmの範囲内にあり、
前記ビーズ状構造体の平均径は、60nm〜5000nmの範囲内にあり、
前記ビーズ状構造体の平均径は、前記ナノ繊維の平均径の2倍〜100倍の範囲内にあることを特徴とするナノ繊維複合体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のナノ繊維複合体において、
前記基材層は、2層以上の層が積層された構造を有する基材層であり、
少なくとも前記基材層における上面又は下面のうち一方の面と、側面とが前記ナノ繊維層により覆われていることを特徴とするナノ繊維複合体。
【請求項7】
セパレーターを構成する層のうち少なくとも1つの層として、請求項4〜6のいずれかに記載のナノ繊維複合体を備えることを特徴とするセパレーター。
【請求項8】
請求項7に記載のセパレーターにおいて、
前記セパレーターの厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219384(P2012−219384A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83213(P2011−83213)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】