説明

ナビゲーション装置

【課題】地図の視認性を確保しつつ、実世界を忠実に反映した地図表示と文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることができる「ナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】1つの言語の文字に併せて当該文字を複数の言語のうちの前記1つの言語以外の他の言語で表現した前記他の言語の文字を表示すべき前記1つの言語の文字の条件を設定する条件設定手段25を備え、地図表示手段19は、条件設定手段25によって設定された条件を満足する前記1つの言語の文字についてのみ、前記他の言語の文字を併せて表示すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に係り、特に、地図表示に好適なナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用のナビゲーション装置の需要は益々高まり、その市場は中東の湾岸協力会議(GCC:Gulf Cooperation Council)の加盟6カ国においても拡大しつつある。
【0003】
ここで、GCC加盟国では、ナビゲーション装置に対してアラビア語対応が義務付けられている。具体的には、1.地図表示をアラビア語で行うこと、2.音声案内をアラビア語で行うこと、3.マニュアルをアラビア語で表記することが、ナビゲーション装置(純正品)をGCC加盟国で販売するための条件とされている。
【0004】
そして、このような条件にしたがって地図上にアラビア語の文字を表示する場合には、現地の看板などのサインテキストがアラビア語で表記されているため、実世界を忠実に反映した地図表示を行うことができる。
【0005】
しかしながら、旅行者や海外出張者等のGCC加盟国民以外の外国人は、アラビア語に不慣れな場合が想定される。
【0006】
そこで、例えば、地図上に、アラビア語の文字とこれを英語で表現した文字とを同時に表示することによって、現地の実世界を忠実に反映した地図表示と外国人による文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることも考えられる。
【0007】
なお、これまでにも、例えば、特許文献1に示すように、地図上に複数の言語で表現された文字を同時に表示する技術は既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−219105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、地図上の文字密度は、一言語の文字を表示する際に最適となるように設定されることが通常である。このため、単純に複数の言語の文字を表示した場合には、地図上において文字が占める面積が大きくなり、地図の視認性が悪くなってしまうといった問題が生じていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、地図の視認性を確保しつつ、実世界を忠実に反映した地図表示と文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることができるナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明に係るナビゲーション装置は、地図データが記憶された地図データ記憶手段と、この地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに基づいて、所定の領域を示す地図を表示部に表示する地図表示手段とを備え、前記地図データには、前記地図上に文字を表示するための複数の言語ごとの文字データが含まれており、前記地図表示手段は、前記複数の言語のうちの設定された1つの言語に対応する前記文字データに基づいて、前記地図上に前記1つの言語の前記文字を表示するナビゲーション装置であって、前記1つの言語の文字に併せて当該文字を前記複数の言語のうちの前記1つの言語以外の他の言語で表現した前記他の言語の文字を表示すべき前記1つの言語の文字の条件を設定する条件設定手段を備え、前記地図表示手段は、前記条件設定手段によって設定された前記条件を満足する前記1つの言語の文字についてのみ、前記他の言語の文字を併せて表示することを特徴としている。
【0012】
そして、このような構成によれば、地図表示手段により、条件設定手段によって設定された条件を満足する1つの言語の文字についてのみ他の言語の文字を併記することができるので、地図の視認性を確保しつつ、実世界を忠実に反映した地図表示と文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることができる。
【0013】
ここで、前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における自車位置の前方の所定の領域内に表示されることが含まれていてもよい。
【0014】
そして、このような構成によれば、地図上における自車位置の前方の所定の領域内に表示される1つの言語の文字について、他の言語の文字を併記することができる。
【0015】
また、前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における誘導経路沿いに表示されることが含まれていてもよい。
【0016】
そして、このような構成によれば、地図上における誘導経路沿いに表示される1つの言語の文字について、他の言語の文字を併記することができる。
【0017】
さらに、前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における目的地または経由地の近辺に表示されることが含まれていてもよい。
【0018】
そして、このような構成によれば、地図上における目的地または経由地の近辺に表示される1つの言語の文字について、他の言語の文字を併記することができる。
【0019】
さらにまた、前記地図表示手段は、前記地図上にPOIのアイコンを選択可能な表示態様で表示し、前記アイコンが選択された場合に、選択された前記アイコンに該当する前記POIに関する文字情報を、前記1つの言語および前記他の言語によって表示してもよい。
【0020】
そして、このような構成によれば、地図上に表示されたPOIのアイコンのうちの選択されたアイコンに該当するPOIの文字情報を、1つの言語および他の言語の双方によってそれぞれ表示することができる。
【0021】
また、前記1つの言語は、現地の母国語とされ、前記他の言語は、当該母国語に対する外国語とされていてもよい。
【0022】
そして、このような構成によれば、条件設定手段によって設定された条件を満足する現地の母国語の文字についてのみ、外国語の文字を併記することができる。
【0023】
さらに、前記1つの言語は、アラビア語とされ、前記他の言語には、英語が含まれていてもよい。
【0024】
そして、このような構成によれば、条件設定手段によって設定された条件を満足するアラビア語の文字についてのみ、英語の文字を併記することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、地図の視認性を確保しつつ、実世界を忠実に反映した地図表示と文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態を示す構成図
【図2】図1のナビゲーション装置のブロック図
【図3】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態において、文字データの構成例を示す概念図
【図4】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態において、地図上への文字列の表示例を示す模式図
【図5】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るナビゲーション装置の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態におけるナビゲーション装置1は、大別して、ナビゲーションメインユニット2と、このナビゲーションメインユニット2にそれぞれ接続されたGPSレシーバ3、自律航法センサ4、操作部5、表示部としてのディスプレイ6およびスピーカ7とによって構成されている。
【0029】
ここで、GPSレシーバ3は、図示しないGPS衛星から配信されるGPS情報(時刻や軌道に関する情報)を受信し、受信したGPS情報をナビゲーションメインユニット2側に出力するようになっている。
【0030】
また、自律航法センサ4は、自車の車速、加速度(角速度)および自車方位等を検出し、検出結果をナビゲーションメインユニット2側に出力するようになっている。この自律航法センサ4は、車速センサやジャイロセンサ等からなるものであってもよい。
【0031】
さらに、操作部5は、操作内容に応じた操作信号をナビゲーションメインユニット2に入力することによって、ナビゲーション装置1に対する種々の操作を行うことが可能とされている。この操作部5は、リモコン、ディスプレイ6のタッチパネル、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダまたは音声入力用のマイクロホン等であってもよい。
【0032】
次に、ナビゲーションメインユニット2について詳述すると、図1に示すように、ナビゲーションメインユニット2は、システムバス8にそれぞれ接続されたナビCPU10、地図データ記憶手段としてのハードディスクドライブ(HDD)11、フラッシュメモリ12、RAM14、ユーザインターフェース(I/F)15、画像インターフェース(I/F)16および音声インターフェース(I/F)17を有している。
【0033】
ここで、ナビCPU10は、自車位置検出機能、地図表示機能、経路探索機能、経路誘導機能および検索機能等のナビゲーション装置1の各種の機能を実行するようになっている。
【0034】
また、ハードディスクドライブ11には、地図データが記憶されており、この地図データは、道路データフレーム、背景データフレーム、名称データフレーム、経路誘導データフレーム、経路計算データフレームおよび地点情報フレーム等の各種の物理データフレームによって構成されている。
【0035】
これらのうち、道路データフレームは、道路地図の表示等に用いられるようになっている。この道路データフレームには、リンク列データレコードが格納されており、このリンク列データレコードは、リンク列ヘッダ、リンク列の形状を示すリンク列形状情報、他のリンク列との関係を示すノード・リンク接続情報、ノード付加情報(リンクID、幅員・車線情報、道路名称等)、標高情報および通行規制情報等によって構成されている。
【0036】
また、背景データフレームは、背景地図の表示等に用いられるようになっている。この背景データフレームには、表示クラスごとにまとめられた図形データリスト列が格納されており、更に、各図形データリストには、図形(線または面)の形状を表現するための要素点座標情報(始点座標、オフセット座標)が格納されている。
【0037】
さらに、名称データフレームは、地図上への文字列の表示等に用いられるようになっている。この名称データフレームには、表示クラスごとにまとめられた名称データリストが格納されており、この名称データリストは、名称データレコード列によって構成されている。各名称データレコードは、地図上に文字を表示するための文字データに相当する。この名称データフレームを用いて表示される文字列は、例えば、建物名、公園名、行政区画名および河川名等の表示クラスごとの表示対象地物の名称となる。
【0038】
さらにまた、経路誘導データフレームは、経路誘導に用いられるようになっており、この経路誘導データフレームには、誘導データフレーム、文字列データフレーム、形状データフレームおよびパターンデータフレーム等が格納されている。ここで、誘導データフレームには、交差点名称、道路名称および方面名称等が格納されている。また、文字列データフレームには、誘導データフレームと関連した実体の表示文字、発音文字およびアクセント情報等が格納されている。さらに、形状データフレームには、誘導データフレームと関連した実体を描画するための形状が格納されている。さらにまた、パターンデータフレームには、案内のために交差点の進入方向に応じた画像を描画するための実データが格納されている。
【0039】
また、経路計算データフレームは、目的地までの最適経路の計算に用いられるようになっており、この経路計算データフレームには、ノードデータフレーム、リンクデータフレーム、リンクコストデータフレーム、上位レベルノード・リンク対応データフレームおよびノード座標データフレーム等が格納されている。ここで、ノードデータフレームには、道路種別ごとにまとめられたランクの単位でノードデータが格納されている。また、リンクデータフレームには、リンクレコード、規制レコードおよびリンク間コストレコード等が格納されている。さらに、リンクコストデータフレームには、リンクIDやリンク自身のコスト等が格納されている。さらにまた、上位レベルノード・リンク対応データフレームには、当該レベルを基準とした上位のノードおよびリンクを特定する情報が格納されている。また、ノード座標データフレームには、ノードの座標が格納されている。
【0040】
さらに、地点情報フレームには地点情報が格納されている。この地点情報は、目的地や経由地の候補となる地点の検索や、地図上へのPOI(Points Of Interests)のアイコン(換言すれば、ランドマーク)の表示等に用いられるようになっている。この地点情報は、具体的には、地点の名称、住所、郵便番号、電話番号、種別およびPOIのアイコン等によって構成されている。
【0041】
さらにまた、ハードディスクドライブ11には、ナビCPU10の実行プログラムが記憶されている。
【0042】
また、フラッシュメモリ12には、ナビゲーション装置1の起動とともにナビCPU10によってハードディスクドライブ11から読み出されたナビCPU10の実行プログラムが格納されるようになっており、この格納された実行プログラムがナビCPU10によって適宜実行されることによって、ナビゲーション装置1の各種の機能が適宜実行されるようになっている。
【0043】
さらに、RAM14は、ナビCPU10による処理結果等の各種のデータの一時的な保存等に用いられるようになっている。
【0044】
さらにまた、ユーザインターフェース15、画像インターフェース16および音声インターフェース17には、操作部5、ディスプレイ6およびスピーカ7がそれぞれ接続されている。
【0045】
次に、ナビCPU10について更に詳述すると、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとしての自車位置算出部18を有しており、この自車位置算出部18には、GPSレシーバ3から出力されたGPS情報および自律航法センサ4から出力された検出結果が入力されるようになっている。そして、自車位置算出部18は、GPSレシーバ3側から入力されたGPS情報に基づいて、自車位置を絶対座標として算出(測位)する衛星航法を行うようになっている。また、自車位置算出部18は、自律航法センサ4側から入力された検出結果に基づいて、自車位置を前回の測位位置からの変化分である相対位置として算出する自律航法を行うようになっている。さらに、自車位置算出部18は、ハードディスクドライブ11に記憶されている地図データを用いることによって、衛星航法または自律航法によって検出された自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置に補正するマップマッチング処理を行うようになっている。そして、自車位置算出部18は、マップマッチング処理が適正に行われた場合には、マップマッチング処理後の自車位置を最終的な算出結果とするようになっている。
【0046】
また、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとして、地図表示手段としての地図描画部19を有している。この地図描画部19は、ハードディスクドライブ11に記憶されている地図データを用いることによって、所定の領域を示す地図をディスプレイ6に表示するようになっている。この地図描画部19によって表示される地図には、自車位置算出部18によって算出された自車位置の周辺の地図や、操作部5を用いたスクロール操作によって指定された領域の地図が含まれる。
【0047】
さらに、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとしての目的地設定部20を有している。この目的地設定部20は、ナビゲーションの目的地を設定するための各種の操作画面(目的地候補の検索画面を含む)をディスプレイ6に表示した上で、表示された操作画面に対する操作部5の操作にしたがった目的地を設定するようになっている。
【0048】
さらにまた、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとしての経由地設定部21を有している。この経由地設定部21は、ナビゲーションの経由地を設定するための各種の操作画面(経由地候補の検索画面を含む)をディスプレイ6に表示した上で、表示された操作画面に対する操作部5の操作にしたがった経由地を設定するようになっている。
【0049】
また、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとしての経路探索部22を有している。この経路探索部22は、ハードディスクドライブ11に記憶されている地図データに基づいて、自車位置算出部18によって算出された自車位置から目的地設定部20によって設定された目的地までの予め設定された経路探索条件に応じた最適経路を探索するようになっている。経路探索条件は、デフォルトで設定される場合もあるし、ユーザが操作部5を用いた入力操作によって設定する場合もある。このとき、経由地設定部21によって経由地が設定されている場合には、経路探索部22は、設定された経由地を経由するような最適経路を探索するようになっている。そして、経路探索部22は、探索された最適経路を、ディスプレイ6への表示によって誘導経路の候補としてユーザに提示するようになっている。
【0050】
さらに、図2に示すように、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとしての経路誘導部23を有している。この経路誘導部23は、経路探索部22によって提示された最適経路を誘導経路に設定するための操作部5を用いた入力操作が行われると、この最適経路を誘導経路に設定するようになっている。誘導経路の設定は、誘導経路に関する情報、例えばリンクおよび目的地等をRAM14等に保存することによって行うようにしてもよい。そして、経路誘導部23は、誘導経路の設定の後に、設定された誘導経路にしたがった経路誘導を開始するようになっている。経路誘導は、交差点拡大図をディスプレイ6に表示することや、スピーカ7を介して交差点右左折案内用の音声を出力すること等によって行われるようになっている。
【0051】
さらにまた、本実施形態において、名称データレコードは、複数の言語ごとに複数格納されており、地図描画部19は、これら複数の言語のうちの設定された1つの言語(以下、主表示言語と称する)の文字列を地図上に表示するようになっている。なお、主表示言語の文字列に対応する名称データレコードと、当該主表示言語の文字列を前記複数の言語のうちの当該主表示言語以外の他の言語で表現した当該他の言語の文字列に対応する名称データレコードとは、例えば、互いに対応するコードやフラグが設定されていること等によって互いに対応付けられている。
【0052】
図3は、このような名称データレコードの概念図の一例を示したものである。図3に示すように、主表示言語の設定は、名称データレコードの主表示フラグを「1」に設定することによって行うようにしてもよい。この主表示フラグの設定は、デフォルトで行われていてもよいし、操作部5を用いた言語モードの設定操作にしたがって行われるようにしてもよい。この場合、デフォルト設定は、設定内容の変更が不能または可能のいずれの状態で行うようにしてもよい。また、前記複数の言語は、アラビア語すなわちGCC加盟国仕向けの場合における地図表示が行われる現地の母国語と、この母国語に対する外国語としての英語(世界共通言語)との2言語であってもよい。この場合に、主表示言語は図3に示すようにアラビア語であってもよい。
【0053】
図2に戻って、ナビCPU10は、その機能ブロックの1つとして、条件設定手段としての条件設定部25を有している。この条件設定部25は、主表示言語の文字列に併せて副表示言語の文字列を表示すべき主表示言語の文字列の条件を設定するようになっている。ただし、副表示言語とは、前記複数の言語のうちの主表示言語以外の他の言語のことであり、副表示言語の文字列とは、主表示言語の文字列を副表示言語で表現した(訳した)文字列のことである。前述のように、前記複数の言語をアラビア語と英語との2言語とし、アラビア語を主表示言語とした場合には、英語は副表示言語となる。条件設定部25によって設定される条件は、固定されたものであってもよいし、または、操作部5の操作によって変更可能なものであってもよい。
【0054】
そして、地図描画部19は、地図上に主表示言語の文字を表示する際に、条件設定部25によって設定された条件を満足する主表示言語の文字についてのみ、副表示言語の文字を併せて表示するようになっている。そのための具体的な方法としては、例えば、地図描画部19は、予め、主表示言語の文字列に該当する名称データレコードのうち、条件設定部25によって設定された条件を満足する名称データレコードの副表示フラグを「1」に設定しておけばよい。そして、主表示言語の文字列を表示する際に、当該主表示言語の文字列に該当する名称データレコードの副表示フラグが「1」に設定されている場合には、当該名称データレコードに対応付けられた他言語の名称データレコードを抽出して、その文字列を副表示言語の文字列として併せて表示すればよい。なお、主表示フラグおよび副表示フラグのデフォルトの設定値は「0」であってもよい。
【0055】
このような構成によれば、条件設定部25によって設定された条件を満足する主表示言語の文字列についてのみ副表示言語の文字列を併記することができるので、副表示言語の文字列の表示数を制限することによって地図の視認性を確保することができる。その上で、例えば、主表示言語を現地の母国語とすることによって実世界を忠実に反映した地図表示を行うことができるとともに、副表示言語を現地に不慣れなユーザが理解可能な外国語とすることによって文字内容の理解に適した地図表示を行うことができる。なお、設計コンセプトまたは地図描画部19に設定された言語モードに応じては、主表示言語を外国語、副表示言語を母国語としてもよい。また、前記複数の言語を3言語以上とする場合には、2以上の言語が副表示言語となる可能性がある。この場合、地図上の文字密度を考慮すれば、副表示言語の文字列は一言語であることが好ましい。そこで、例えば、名称データレコードに、副表示言語として用いる言語を選択するための選択フラグを前記複数の言語ごとに設けた上で、副表示言語にすべき言語に対応する選択フラグをユーザの選択操作にともなって「1」に設定し、他の言語に対応する選択フラグは「0」に設定するように構成してもよい。
【0056】
ところで、自車位置の前方に存在する地物(建物等)は、ユーザが走行の際に目印とし易いため、このような地物を示す文字列は、実世界において当該地物に表記された文字列(看板上の文字列等)との対比および文字内容の理解の観点から、主表示言語および副表示言語の双方で表記することが好ましい。したがって、条件設定部25によって設定される条件には、主表示言語の文字が地図上における自車位置の前方の所定の領域内に表示されることが含まれていてもよい。このような条件を設定した場合には、例えば、図4に示すように、当該所定の領域の一例としての自車位置Pの前方に設定された地図上の扇形エリアA内に表示される主表示言語(アラビア語)の文字列について、これに対応する副表示言語(英語)の文字列を併せて表示することができる。図4では、扇形エリアA内において、「レストラン##」という呼びを有する食堂が、アラビア語および英語で同時に表記されている。なお、扇形エリアAは、地図における他の領域と峻別可能な状態で表示されてもよいし、表示されなくてもよい。また、このような文字列の表示を図3に示した名称データレコードを用いて行う場合には、地図描画部19は、主表示言語の文字列に該当する名称データレコードのうち、当該文字列の表示位置を示す座標情報(図3参照)が扇形エリアA内に含まれるような名称データレコードの副表示フラグを「1」に設定し、それ以外の名称データレコードの副表示フラグは「0」に設定しておけばよい。この場合に、副表示フラグの設定値は、自車位置の変化に応じて変動することになる。
【0057】
また、これ以外に、誘導経路沿いに存在する地物についても、自車位置の前方に存在する地物と同様に走行の際の目印とし易いため、このような地物を示す文字列についても、主表示言語および副表示言語の双方で表記することが好ましい。したがって、条件設定部25によって設定される条件には、主表示言語の文字列が地図上における誘導経路沿いに表示されることが含まれていてもよい。このように構成すれば、地図上における誘導経路沿いに表示される主表示言語の文字列について、副表示言語の文字列を併記することができる。なお、主表示言語の文字列が誘導経路沿いに表示されるか否かについては、名称データレコードにおける座標情報と、誘導経路に関する座標情報とを比較して判断すればよい。また、このような文字列の表示を図3に示した名称データレコードを用いて行う場合には、地図描画部19は、誘導経路が設定された際に、誘導経路沿いに表示される主表示言語の文字列に該当する名称データレコードの副表示フラグを「1」に設定し、他の名称データレコードの副表示フラグは「0」に設定しておけばよい。この場合に、副表示フラグの設定値は、ダイナミックルートガイダンスやリルート等によって誘導経路が変化しない限り一定となる。
【0058】
さらに、これら以外に、目的地または経由地の近辺に存在する地物についても、走行の際の目印とし易いため、このような地物を示す文字列についても、主表示言語および副表示言語の双方で表記することが好ましい。したがって、条件設定部25によって設定される条件には、主表示言語の文字が地図上における目的地または経由地の近辺に表示されることが含まれていてもよい。このように構成すれば、地図上における目的地または経由地の近辺に表示される主表示言語の文字列について、副表示言語の文字列を併記することができる。なお、主表示言語の文字列が目的地/経由地の近辺に表示されるか否かについては、名称データレコードにおける座標情報と、目的地/経由地に該当する地点情報における座標情報とを比較して判断すればよい。また、この場合に、図3に示した副表示フラグの設定は、目的地/経由地の設定時に行えばよい。
【0059】
上記構成に加えて、さらに、本実施形態において、地図描画部19は、地図上にPOIのアイコンを表示するようになっている。このとき、地図描画部19は、POIのアイコンを、操作部5の操作によって選択可能な表示態様で表示してもよい。そして、この場合には、地図描画部19は、当該アイコンが選択された場合に、選択されたアイコンに該当するPOIに関する文字情報を、主表示言語および副表示言語のそれぞれによって同時に表示するようにしてもよい。なお、文字情報としては、POIの名称等を挙げることができる。ただし、このような複数の言語による文字情報の表示を実現するためには、地点情報についても、名称データレコードと同様に、文字表示する情報については複数の言語ごとに複数の情報を格納しておく必要がある。
【0060】
次に、本実施形態の作用の一例について図5を参照して説明する。
【0061】
なお、図5の初期状態において、地図描画部19には、主表示言語が既に設定されているものとする。また、このとき、条件設定部25によって既に条件が設定されているものとする。さらに、このとき、各名称データレコードの副表示フラグは、いずれも「0」に設定されているものとする。
【0062】
そして、初期状態から、まず、図5のステップ1(ST1)において、地図描画部19により、ハードディスクドライブ11に記憶されている名称データレコードの中から、主表示言語の文字列に該当する名称データレコードを、主表示フラグの設定値「1」に基づいて抽出し、抽出された名称データレコードに対して、該当する文字列が条件設定部25によって設定された条件を満足するか否かの条件判定を個々に行う。
【0063】
ただし、この条件判定は、当該条件の内容に応じて、当該条件を満足する名称データレコードが存在する事由が発生したタイミングで行えばよい。例えば、当該条件が、前述のように「主表示言語の文字が地図上における自車位置の前方の所定の領域内に表示されること」であれば、このような条件に応じた条件判定は、自車位置算出部18による自車位置の算出を待って行えばよい。また、当該条件が、前述のように「主表示言語の文字列が地図上における誘導経路沿いに表示されること」であれば、このような条件に応じた条件判定は、経路誘導部23による誘導経路の設定を待って行えばよい。さらに、当該条件が、前述のように「主表示言語の文字が地図上における目的地または経由地の近辺に表示されること」であれば、このような条件に応じた条件判定は、目的地設定部20による目的地の設定または経由地設定部21による経由地の設定を待って行えばよい。
【0064】
そして、ステップ1(ST1)において肯定的な判定結果が得られた名称データレコードについては、ステップ2(ST2)に進み、否定的な判定結果が得られた名称データレコードについては、ステップ3(ST3)に進む。
【0065】
ここで、ステップ2(ST2)に進んだ名称データレコードについては、このステップ2(ST2)において、副表示フラグを「1」に設定してステップ4(ST4)に進む。
【0066】
一方、ステップ3(ST3)に進んだ名称データレコードについては、このステップ3(ST3)において、副表示フラグを「0」に維持してステップ4(ST4)に進む。
【0067】
次いで、ステップ4(ST4)において、地図描画部19によって本格的な地図表示を開始する。すなわち、地図描画部19により、自車位置算出部18によって算出された自車位置、既知の画面サイズおよび既設定の地図の縮尺(デフォルト値であってもよい)に応じて、現時点で地図表示に用いるべき主表示言語の文字列に該当する名称データレコードを、現時点で地図表示に用いるべき他の地図データ要素(道路データや背景データ等)とともに特定する。
【0068】
次いで、ステップ5(ST5)において、地図描画部19により、ステップ4(ST4)において特定された名称データレコードの副表示フラグが「1」に設定されているか否かを判定する。このステップ5(ST5)における判定は、現時点で表示すべき主表示言語の文字列が条件設定部25によって設定された条件を満足するか否かの判定に相当する。
【0069】
そして、ステップ5(ST5)において肯定的な判定結果が得られた名称データレコードについては、ステップ6(ST6)に進み、否定的な判定結果が得られた名称レコードについては、ステップ8(ST8)に進む。
【0070】
ここで、ステップ6(ST6)に進んだ名称データレコードについては、このステップ6(ST6)において、地図描画部19により、当該名称データレコードに対応付けられた他言語の文字列に該当する名称データレコードを抽出してステップ7(ST7)に進む。
【0071】
一方、ステップ8(ST8)に進んだ名称データレコードについては、このステップ8(ST8)において、地図描画部19により、当該名称データレコードに該当する主要語言語の文字列のみを地図上に表示して処理を終了する。
【0072】
次いで、ステップ7(ST7)において、地図描画部19により、ステップ6(ST6)に進んだ名称データレコードに該当する主表示言語の文字列を表示するとともに、ステップ7(ST7)において抽出された名称データレコードに該当する副表示言語の文字列を併せて表示して処理を終了する。
【0073】
なお、ステップ7(ST7)またはステップ8(ST8)において地図上に文字列を表示した後に、自車位置の変化等の地図上に表示する文字列を変更すべきイベントが発生した場合、条件設定部25によって設定された条件が当該イベントの発生によって再度の条件判定を要する条件の場合には、ステップ1(ST1)以後の処理を繰り返し、再度の条件判定を要しない条件の場合には、ステップ4(ST4)以後の処理を繰り返せばよい。
【0074】
以上述べたように、本実施形態によれば、地図描画部19により、条件設定部25によって設定された条件を満足する主表示言語の文字についてのみ副表示言語の文字を併記することができるので、地図の視認性を確保しつつ、実世界を忠実に反映した地図表示と文字内容の理解に適した地図表示との双方を両立させることができる。
【0075】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0076】
例えば、前述した構成に加えて、さらに、設定された目的地または経由地を地図上に操作部5によって選択可能な表示態様で表示した上で、表示された目的地/経由地が選択された場合には、地図描画部19により、当該選択された目的地/経由地に関する文字情報(名称等)を主表示言語および副表示言語によって同時に表示してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ナビゲーション装置
11 ハードディスクドライブ
19 地図描画部
25 条件設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データが記憶された地図データ記憶手段と、
この地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに基づいて、所定の領域を示す地図を表示部に表示する地図表示手段と
を備え、
前記地図データには、前記地図上に文字を表示するための複数の言語ごとの文字データが含まれており、
前記地図表示手段は、前記複数の言語のうちの設定された1つの言語に対応する前記文字データに基づいて、前記地図上に前記1つの言語の前記文字を表示するナビゲーション装置であって、
前記1つの言語の文字に併せて当該文字を前記複数の言語のうちの前記1つの言語以外の他の言語で表現した前記他の言語の文字を表示すべき前記1つの言語の文字の条件を設定する条件設定手段を備え、
前記地図表示手段は、前記条件設定手段によって設定された前記条件を満足する前記1つの言語の文字についてのみ、前記他の言語の文字を併せて表示すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における自車位置の前方の所定の領域内に表示されることが含まれることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における誘導経路沿いに表示されることが含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記条件には、前記1つの言語の文字が前記地図上における目的地または経由地の近辺に表示されることが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記地図表示手段は、前記地図上にPOIのアイコンを選択可能な表示態様で表示し、前記アイコンが選択された場合に、選択された前記アイコンに該当する前記POIに関する文字情報を、前記1つの言語および前記他の言語によって表示することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記1つの言語は、現地の母国語とされ、前記他の言語は、当該母国語に対する外国語とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記1つの言語は、アラビア語とされ、前記他の言語には、英語が含まれることを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242245(P2011−242245A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114296(P2010−114296)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】