説明

ナビゲーション装置

【課題】車線情報を最新の状態に保つための作業量及び車線情報量を低減するとともに、走行車線を正確に求めることのできるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、移動体の位置を推定する位置推定手段111と、推定された移動体の位置に対応する道路リンク候補点を特定する道路リンクマップマッチング手段121と、分岐周辺の車線情報記憶手段105から道路リンク候補点の前後に存在する各対象分岐の周辺の車線情報を取得する車線情報取得手段124と、取得した車線情報を用いて各対象分岐の周辺の道路リンクの位置誤差を算出する道路リンク位置誤差算出手段125と、取得した車線情報を用いて各対象分岐の周辺の車線間距離を算出する車線間距離算出手段126と、算出した位置誤差と車線間距離を用いて各対象分岐間の車線リンクを作成する分岐間車線リンク作成手段127とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を算出して地図上に表示するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上を走行している移動体の位置を算出して地図上に表示するナビゲーション装置において、道路上の車線を考慮に入れた処理を行うものが知られている。たとえば、特許文献1の従来技術は、道路に沿った道路基準線に基づいて道路地図を示す道路基準情報と、車線に沿った車線基準線に基づいて道路地図を示す車線基準情報と、道路基準情報と車線基準情報との間の位置関係を対応付ける対応情報とを記憶して、道路基準情報から車両が走行すべき経路を探索して、対応情報及び車線基準情報から誘導する車線を特定する。これにより、走行すべき車線に車両を誘導できる。
【0003】
特許文献2の従来技術は、道路を表すリンク、道路幅及び車線数をもとに、車線を表す仮想的なリンク(車線仮想リンク)を作成して、その車線仮想リンクに車両の位置をマッチする。これにより、並走路へのミスマッチングを防ぐ。
【0004】
特許文献3の従来技術は、交差点において複数の車線を考慮して、車線を表す仮想的なリンク(車線仮想リンク)を作成して、その車線仮想リンクに車両の位置をマッチする。これにより、複数車線の交差点におけるミスマッチングを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−266865号公報
【特許文献2】特開2004−226341号公報
【特許文献3】特開2008−101972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術では、車線に関する情報として車線基準情報や対応情報を各道路について記憶する必要がある。しかしながら、こうした車線に関する情報量は膨大であることから、これを記憶するために大容量の記憶手段が必要となる。また、正確な車両誘導を行うためには全ての道路の車線情報を最新の状態に保たなければならず、これには膨大な作業量が必要である。
【0007】
一方、特許文献2及び3の従来技術では、特許文献1のような車線に関する情報を各道路について記憶する必要がないため、上記のような不都合は生じない。しかしながら、道路を表すリンクの位置精度は通常2〜15m程度であり、道路リンクから求められる車線仮想リンクの位置精度もこれと同様であるのに対して、車線間隔は3〜3.5m程度である。したがって、車線仮想リンクの位置精度が車線間隔よりも低いことがあり、その場合は走行車線に車両を正確にマッチすることは難しい。
【0008】
本発明の課題は、車線情報を最新の状態に保つための作業量及び車線情報量を低減するとともに、走行車線を正確に求めることのできるナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるナビゲーション装置は、道路に関する道路情報を記憶する道路情報記憶手段と、分岐周辺の車線に関する車線情報を記憶する車線情報記憶手段と、移動体の位置を推定する位置推定手段と、道路情報を用いて、位置推定手段により推定された移動体の位置に対応する道路リンク候補点を特定する道路リンクマップマッチング手段と、車線情報記憶手段から道路リンク候補点の前後に存在する各対象分岐の周辺の車線情報を取得する車線情報取得手段と、車線情報取得手段により取得された車線情報を用いて、各対象分岐の周辺の道路リンクの位置誤差を算出する道路リンク位置誤差算出手段と、車線情報取得手段により取得された車線情報を用いて、各対象分岐の周辺の車線間距離を算出する車線間距離算出手段と、道路リンク位置誤差算出手段により算出された位置誤差と、車線間距離算出手段により算出された車線間距離とを用いて、各対象分岐間の車線リンクを作成する分岐間車線リンク作成手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車線情報を最新の状態に保つための作業量及び車線情報量を低減するとともに、走行車線を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態のカーナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】カーナビゲーション装置の動作手順を示す図である。
【図3】カーナビゲーション装置のマップマッチング処理の動作を示す図である。
【図4】カーナビゲーション装置のマップマッチング処理の動作を示す図である。
【図5】推定位置と過去に読み込んだ地図データのメッシュ領域の端との間の距離が閾値以下である例を示す図である。
【図6】車線ノードと車線リンクの道路中心線及び道路中心ノードの例を示す図である。
【図7】車線リンクの道路中心線と道路リンクの距離の算出例を示す図である。
【図8】対象分岐から分岐した各道路リンクと車線リンクの道路中心線との間の距離の例を示す図である。
【図9】道路リンク及び道路幅から作成した車線リンクに推定位置がミスマッチする状況を示す図である。
【図10】道路リンクに垂直な方向に補正したときのミスマッチングの状況を示す図である。
【図11】本発明のカーナビゲーション装置による正しいマッチングの状況を示す図である。
【図12】カーナビゲーション装置の道路リンクの位置誤差の算出処理の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明の一実施の形態によるカーナビゲーション装置の構成を示す。図1に示すカーナビゲーション装置は、受信手段101、センサ手段102、地図情報記憶手段103、画面音声出力手段106、経路探索指示手段107、及び演算手段110を備えている。
【0013】
受信手段101は、たとえばGPS(Global Positioning System)受信機などによって実現される。受信手段101は、アンテナを含んでおり、測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をこのアンテナで受信する。
【0014】
受信手段101はまた、ダウンコンバート、アナログデジタルコンバート、直交検波、C/A(coarse/acquisition)コード生成、相関検出及び復号の各処理機能を備えている。ダウンコンバート機能は、アンテナで受信した高周波の測位信号を低周波の測位信号へと変換するための機能である。アナログデジタルコンバート機能は、ダウンコンバート後の低周波の測位信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するための機能である。直交検波機能は、デジタル信号に変換された測位信号を検波するための機能である。C/Aコード生成機能は、測位衛星ごとに予め定められたC/Aコードと呼ばれる符号列を生成するための機能である。相関検出機能は、検波された測位信号と生成されたC/Aコードとの相関値を検出するための機能である。復号機能は、相関検出機能により検出された相関値に基づいて測位信号を復号するための機能である。
【0015】
受信手段101は、復号された測位信号に基づいて、測位衛星の軌道情報、発信状態の情報、電離層遅延計算パラメータなどを含む航法メッセージを検出する。また、測位信号の受信時刻、測位信号が表す擬似距離(衛星からの距離)、ドップラ周波数、信号強度などの観測データを測定する。そして、測定した受信時刻と航法メッセージ中の軌道情報に基づいて測位衛星の位置を算出し、この測位衛星の位置と測定した擬似距離に基づいて、アンテナが設置されている車両、すなわち図1のカーナビゲーション装置を搭載している車両(以下、自車両と称する)の位置(受信位置)を算出する。また、受信時刻付近の測位衛星の位置から測位衛星の速度を算出し、その算出結果と測位衛星の位置及びドップラ周波数に基づいて、自車両の速度及び方位(速度ベクトル、受信速度及び受信方位)を算出する。
【0016】
なお、上記の説明は測位衛星がGPS衛星である場合を例としたが、GPS衛星の代わりにGLONASS衛星や擬似衛星などの測位衛星を利用してもよい。これらの測位衛星は、宇宙あるいは地上から測位のための信号を発信する装置である。
【0017】
センサ手段102は、自車両の速度を検出するための車速パルスカウンタ等の車速センサ、自車両の角速度を検出するためのジャイロ等の角速度センサ、及び自車両の加速度を検出するための加速度計等の加速度センサによって構成される。これらの各センサから、自車両の速度(センサ速度)、角速度(センサ角速度)及び加速度(センサ加速度)がそれぞれ出力される。なお、速度は自車両の前後方向に関するもの、角速度は自車両のロール角、ピッチ角及びヨー角に関するもの、加速度は上下方向に関するものである。
【0018】
地図情報記憶手段103は、ハードディスクやメモリなどによって構成される。地図情報記憶手段103は、道路情報記憶手段104及び分岐周辺の車線情報記憶手段105を備えている。
【0019】
道路情報記憶手段104は、道路に関する道路情報や案内表示などの情報を所定のメッシュ領域ごとに格納している。道路情報は、各メッシュ領域について、当該メッシュ領域内の各道路を表すための道路ノード番号、道路ノード位置、道路リンク番号、道路リンクの幅員、車線数、道路リンクに対応する車線情報の有無フラグ、車線情報の格納場所などの各情報を含む。なお、道路ノードは道路上の交差点や分岐等に対応して設定された点であり、道路リンクは道路に沿って並んだ2つの道路ノード間を結んだ線である。
【0020】
分岐周辺の車線情報記憶手段105は、分岐周辺の車線情報を所定のメッシュ領域ごとに格納している。分岐周辺の車線情報は、車線ノード番号、車線ノード位置、車線リンクの直進可能フラグ、右折可能フラグ、左折可能フラグ、車線リンク番号、車線リンクを示す道路情報の格納場所などの各情報を含む。なお、車線ノードは車線上の所定位置に対応して設定された点であり、車線リンクは車線に沿って並んだ2つの車線ノード間を結んだ線である。直進可能フラグ、右折可能フラグ及び左折可能フラグは、それぞれ分岐を直進、右折または左折できるどうかを示すフラグ情報である。分岐を直進、右折または左折できる場合は「真」が、できない場合は「偽」が、分岐に接続されていない場合は「ヌル」がこれらの各フラグ情報に対して設定されている。
【0021】
画面音声出力手段106は、モニタやスピーカなどによって構成される。画面音声出力手段106は、後述のマップマッチング手段112から、推定位置、推定方位、第一道路リンク候補点の位置、方位及び道路リンク番号、道路逸脱判定結果、第一車線リンク候補点の位置、方位及び車線リンク番号、車線逸脱判定結果を受け取る。なお、これらの各情報の詳細については後で説明する。
【0022】
マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路走行を表しており、自車両前方の所定距離以内に分岐があり、さらにその分岐周辺の道路に車線情報がある場合、画面音声出力手段106は、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報及び分岐間車線リンクの車線情報を受け取り、これに基づいて道路地図上に車線リンク及び分岐間車線リンクを描画する。そして、第一車線リンク候補点の位置をカーマークとして道路地図上に描画する。ここで、第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報をマップマッチング手段112の代わりに分岐周辺の車線情報記憶手段105から読み込んでも構わない。
【0023】
一方、マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路逸脱を表している場合、画面音声出力手段106は、道路情報記憶手段104から推定位置周辺の道路情報を読み込み、これに基づいて道路地図上に道路リンクを描画する。そして、推定位置をカーマークとして道路地図上に描画する。また、それ以外の場合、第一道路リンク候補点の位置をカーマークとして道路地図上に描画する。
【0024】
画面音声出力手段106はまた、後述の経路誘導手段113から、道路誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号、車線誘導信号、誘導車線の各情報を取得する。なお、これらの各情報の詳細については後で説明する。
【0025】
経路誘導手段113からの道路誘導信号がオンであり、かつ前述のマップマッチング手段112から受けた第一車線リンク候補点の車線リンク番号に対応する車線リンクと誘導車線とが異なる場合、画面音声出力手段106は、所定の案内表示を出力すると共に誘導方向を音声で出力する。一方、車線誘導信号がオンである場合、画面音声出力手段106は、走行車線を音声で出力する。
【0026】
経路探索指示手段107は、リモートコントローラ、タッチパネル、マイクなどによって構成される。経路探索指示手段107を用いてユーザから入力された目的地の情報は、経路探索手段114に送られる。
【0027】
演算手段110は、CPU(central processing unit、中央演算処理装置)、メモリなどから構成される。演算手段110は、位置推定手段111、マップマッチング手段112、経路誘導手段113、及び経路探索手段114を機能的に備えている。
【0028】
位置推定手段111は、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位を入力すると共に、センサ手段102からセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を入力する。そして、これらの入力情報を用いて、カーナビゲーション装置の位置(推定位置)、方位(推定方位)及び速度(推定速度)を算出し、さらに推定位置及び推定方位の共分散を算出する。
【0029】
マップマッチング手段112は、道路情報取得手段120、道路リンクマップマッチング手段121、道路逸脱判定手段122、車線マップマッチング実施判定手段123、車線情報取得手段124、道路リンク位置誤差算出手段125、車線間距離算出手段126、分岐間車線リンク作成手段127、車線マップマッチング手段128、及び車線逸脱判定手段129から構成されている。
【0030】
道路情報取得手段120は、位置推定手段111により算出された推定位置から近い順に所定数(たとえば4つ)のメッシュを特定し、その各メッシュの道路情報を道路情報記憶手段104から読み込んで取得する。
【0031】
道路リンクマップマッチング手段121は、道路情報取得手段120により読み込まれた道路情報に基づいて、位置推定手段111により算出された推定位置からその周囲の各道路リンクに下ろした各垂線と各道路リンクとの交点を道路リンク候補点としてそれぞれ求める。そして、位置推定手段111により算出された推定位置、推定方位及びそれらの共分散と、道路情報取得手段120により読み込まれた道路情報とを用いて、各道路リンク候補点の評価量を計算する。なお、各道路リンク候補点の評価量の計算方法については、後で詳しく説明する。この評価量の計算結果に基づいて、自車両が走行している確率が最も高い道路リンク候補点を第一道路リンク候補点として特定し、その第一道路リンク候補点の道路リンク番号を設定すると共に、位置及び方位を算出する。
【0032】
道路逸脱判定手段122は、自車両が道路リンク上を走行しているという帰無仮説及びその対立仮説を立てる。統計学的仮説検定に基づいて、位置推定手段111により算出された推定位置、推定方位推定方位及びそれらの共分散と、道路情報取得手段120により読み込まれた道路情報とを用いて、所定の有意水準で帰無仮説が採択するかを判定することにより、自車両が道路を逸脱したかどうかを判定する。
【0033】
車線マップマッチング実施判定手段123は、道路リンクマップマッチング手段121により算出された第一道路リンク候補点の道路リンク番号と、道路情報取得手段120により読み込まれた道路情報とに基づいて、第一道路リンク候補点の道路リンクに対する車線情報の有無フラグが「真」と「偽」のいずれであるかを判定する。また、道路逸脱判定手段122により自車両が道路走行中、すなわち道路を逸脱していないと判定され、かつ第一道路リンク候補点の前方において所定距離以内に分岐がある場合、その分岐周辺の道路リンクに対する車線情報の有無フラグが「真」と「偽」のいずれであるかを判定する。その結果、いずれか少なくとも一方の車線情報の有無フラグが「真」である場合は、車線マップマッチング処理を実施すると判定する。そうでない場合、車線マップマッチング処理を実施しないと判定する。
【0034】
車線情報取得手段124は、第一道路リンク候補点の前後方向の分岐周辺の道路リンクを探索し、その道路リンクに対する車線情報の有無フラグから車線情報があるかどうかを調べる。その結果、車線情報があれば、その道路リンクの車線情報を分岐周辺の車線情報記憶手段105から読み込んで取得する。
【0035】
道路リンク位置誤差算出手段125は、第一道路リンク候補点の前後方向の分岐周辺の各道路リンクに対して、その道路リンクの方向に垂直な方向の位置誤差をそれぞれ算出する。こうして算出した垂直方向の位置誤差から、分岐周辺の各道路リンクの位置誤差を算出する。
【0036】
車線間距離算出手段126は、車線情報取得手段124により取得された車線情報に基づいて、第一道路リンク候補点の前後方向の分岐周辺で車線情報が現れる箇所(例えば、後で説明する図6では道路中心ノード603)における車線間距離を算出する。
【0037】
分岐間車線リンク作成手段127は、道路情報取得手段120により取得された道路情報と、道路リンク位置誤差算出手段125により算出された分岐周辺の各道路リンクの位置誤差と、車線間距離算出手段126により算出された車線間距離とに基づいて、第一道路リンク候補点の前後方向で車線情報がない道路リンクに対して車線ノードの位置を算出する。こうして算出された各車線ノードを道路リンクの方向に沿って繋げることで、車線情報がない分岐間の道路リンクに対して車線リンクを作成する。
【0038】
車線マップマッチング手段128は、位置推定手段111により算出された推定位置及び推定方位と、車線情報取得手段124により読み込まれた車線情報とを用いて、推定位置からその周囲の各車線リンクに下した各垂線と各車線リンクとの交点を車線リンク候補点としてそれぞれ求め、推定位置から各車線リンク候補点までの距離を計算する。そして、計算された距離が最も短い車線リンク候補点を第一車線リンク候補点として特定し、その第一車線リンク候補点の車線リンク番号及び道路リンク番号を設定すると共に、位置及び方位を算出する。
【0039】
車線逸脱判定手段129は、車線マップマッチング手段128により算出された推定位置から第一車線リンク候補点までの距離が所定の閾値未満である場合、自車両が車線を走行していると判定する。そうでない場合、自車両が車線を逸脱したと判定する。
【0040】
経路探索手段114は、経路探索指示手段107から目的地の情報を受け取り、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点の道路リンク番号を受け取る。そして、道路情報記憶手段104に格納されている道路情報に基づいて目的地に最も近い道路リンク番号を特定し、その道路リンク番号及び第一道路リンク候補点の道路リンク番号に基づいて、それらの道路リンクをつなぐ複数の経路を探索する。こうして探索された経路の中で所定の条件を満たす経路、たとえば距離が最も短い経路を誘導経路として選定する。
【0041】
経路誘導手段113は、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点の道路リンク番号及び位置を取得し、経路探索手段114から誘導経路の道路リンク番号を取得し、道路情報記憶手段104から案内表示などの情報を取得する。第一道路リンク候補点の位置から誘導経路において右左折すべき分岐点までの距離が所定距離以下になると、経路誘導手段113は、道路誘導信号をオンにして、誘導方向を表す道路誘導方向信号に右左折の情報を設定する。そして、道路誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号などの誘導情報を画面音声出力手段106に送る。このとき、車線マップマッチング手段128により特定された第一車線リンク候補点がある場合は、その第一車線リンク候補点の道路リンク番号をもとに、分岐までに自車両が走行すべき車線(誘導車線)を特定する。そして、第一車線リンク候補点の車線リンク番号が誘導車線の車線リンク番号と異なるときに車線誘導信号をオンして、車線誘導信号、誘導車線の情報を画面音声出力手段106に送る。
【0042】
また、第一道路リンク候補点の道路リンク番号が誘導経路の道路リンク番号と異なった場合、経路誘導手段113は経路探索信号を経路探索手段114に送る。この経路探索信号を受けると、経路探索手段114は経路を再探索する。
【0043】
次に、以上説明した図1のカーナビゲーション装置の動作手順を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップ201において、受信手段101は、測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をアンテナで受信し、前述の各機能を用いて、測位衛星の軌道情報、発信状態の情報、電離層遅延計算パラメータなどを含む航法メッセージを検出すると共に、受信時刻、擬似距離、ドップラ周波数、信号強度などの観測データを測定する。そして、受信時刻及び軌道情報をもとに測位衛星の位置を算出し、測位衛星の位置及び擬似距離をもとに受信位置を算出する。また、軌道情報をもとに受信時刻付近の測位衛星の位置から測位衛星の速度を算出すると共に、測位衛星の位置及び速度、ドップラ周波数をもとに受信速度及び受信方位を算出する。こうして算出した受信位置、受信速度及び受信方位を位置推定手段111に送る。
【0045】
ステップ202において、センサ手段102は、自車両の車軸の回転に伴って出力される車速パルス数を計測し、そのパルス数に所定の速度センサの係数を掛け合わせて、速度(センサ速度)を算出する。また、自車両の角速度に対応した信号を出力し、この出力値から角速度センサのバイアス分を引き、所定の角速度センサの係数を掛け合わせて、角速度(センサ角速度)を算出する。さらに、自車両の加速度に対応した信号を出力し、この出力値から加速度センサのバイアスを引き、加速度(センサ加速度)を算出する。こうして算出したセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を位置推定手段111に送る。
【0046】
ステップ203において、位置推定手段111は、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位を受け取り、センサ手段102からセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を受け取って、これらに基づく位置推定処理を以下の動作手順により行う。
【0047】
位置推定手段111は、位置推定処理の動作手順において、自車両の位置、進行方向の速度、進行方向の加速度、方位、方位の角速度、及びピッチ角を状態量として、下記の数式1で表される状態方程式(連続型)を立てる。なお、数式1では、加速度及び角速度を一次マルコフ過程とおいた。
【0048】
数式1において、x(t)、y(t)、z(t)は経度、緯度、高さ方向の自車両の位置をそれぞれ表し、v(t)は進行方向の速度を表し、a(t)は進行方向の加速度を表し、θ(t)は方位を表し、ω(t)は方位の角速度を表し、φ(t)はピッチ角を表している。また、θpは方位の予測値を表し、φpはピッチ角の予測値を表し、αaは加速度の時定数の逆数を表し、αωは角速度の時定数の逆数を表し、σa、σω、σφは加速度、方位の角速度、ピッチ角の標準偏差をそれぞれ表し、w(t)は平均0、標準偏差1の白色雑音を表し、η(t)は状態量ベクトルを表している。
【0049】
さらに、位置推定処理の動作手順において、センサ速度、センサ角速度、センサ加速度、受信位置、受信速度、及び受信方位を観測量として、下記の数式2で表される観測方程式(連続型)を立てる。
【0050】
数式2において、vs(t)はセンサ速度を表し、gs(t)はセンサ加速度を表し、ωs(t)はセンサ角速度を表し、xr(t)、yr(t)、zr(t)は経度、緯度、高さ方向の受信位置をそれぞれ表し、vr(t)は受信速度を表し、θr(t)は受信方位を表し、gは重力加速度を表し、ε(t)は観測雑音ベクトルを表し、y(t)は観測量ベクトルを表している。また、θp(t)及びφp(t)は、数式5で算出される予測量ベクトルから得られる値である。
【0051】
【数1】

…(数式1)
【数2】

…(数式2)
【0052】
受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位の出力がある場合、位置推定手段111は、下記の数式3〜数式7を用いて、推定位置、推定速度、推定加速度、推定方位、推定角速度及び推定ピッチ角を算出する。数式3〜数式7を用いることで、カルマンフィルタによる計算ができる。
【0053】
数式3〜数式7において、K(k)はゲイン行列を表し、Rは観測雑音行列を表している。また、η(k|k)は推定量ベクトルを表し、η(k+1|k)は予測量ベクトルを表し、P(k|k)、P(k|k−1)はη(k|k)、η(k|k−1)の推定誤差共分散行列をそれぞれ表している。Φ(Δt、αa、αω)は状態遷移行列を表し、Δtはサンプリング間隔を表し、Q(k)はシステム雑音行列を表し、kは離散時間を表している。
【0054】
【数3】

…(数式3)
【数4】

…(数式4)
【数5】

…(数式5)
【数6】

…(数式6)
【数7】

…(数式7)
【0055】
一方、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位の出力がない場合、位置推定手段111は上記の数式3〜数式7において、観測量ベクトルy、行列H及び観測雑音行列Rから、受信位置、受信速度及び受信方位に関連する要素をそれぞれ削除する。
【0056】
位置推定手段111は、以上説明したような手順により位置推定処理を行い、これによって得られた推定位置、推定方位及び推定速度と、位置及び方位の推定誤差共分散とをマップマッチング手段112に送る。
【0057】
ステップ204において、マップマッチング手段112は、以下のような手順によりマップマッチング処理を行う。
【0058】
マップマッチング処理では、まず道路情報取得手段120により、道路情報記憶手段104から道路ノード番号、ノード位置、道路リンク番号、道路リンクの幅員などの道路情報を読み込む。次に、道路リンクマップマッチング手段121により、推定位置周囲の各道路リンクに対して前述のような方法で道路リンク候補点をそれぞれ求め、各道路リンク候補点の道路リンク方位と所定の道路リンクの位置誤差に基づいて、各道路リンク候補点の位置誤差の共分散を計算する。そして、計算した各道路リンク候補点の位置誤差の共分散及び所定の方位誤差の分散と、推定位置及び推定方位とに基づいて、各道路リンク候補点の評価量を計算する。この計算結果により、道路を走行している確率が最も高い評価量を持つ道路リンク候補点を第一道路リンク候補点と決定する。
【0059】
また、道路逸脱判定手段122により、道路リンクの位置、方位及びそれらの分散と、幅員情報と、推定位置及び推定方位及びそれらの共分散とに基づいて、自車両が道路を逸脱しているかどうかを判定する。
【0060】
さらに、第一道路リンク候補点から前方の所定距離以内に車線情報を含む分岐があり、かつ分岐間車線リンク作成手段127により分岐間の道路リンクについて車線リンクを作成していない場合、道路リンク位置誤差算出手段125により道路リンクの位置誤差を算出すると共に、車線間距離算出手段126により車線間距離を算出する。そして、分岐間車線リンク作成手段127により、道路リンクの位置誤差に基づいて道路リンクの位置を補正すると共に、車線間距離を用いて分岐間の車線ノードの位置を算出する。
【0061】
また、第一道路リンク候補点から前方の所定距離以内に車線情報を含む分岐がある場合、車線マップマッチング手段128により、第一道路リンク候補点の道路リンクに対応する車線リンクまたは分岐間車線リンクに対して推定位置から垂線を下ろしたときの交点を車線リンク候補点として設定し、推定位置と各車線リンク候補点の間の距離を算出する。この距離が最も短い車線リンク候補点を第一車線リンク候補点とする。そして、第一車線リンク候補点の車線リンクが右側から何番目かを調べ、走行車線番号とする。なお、車線リンク候補点がない場合は走行車線番号に「ヌル」を示す値を設定する。
【0062】
一方、推定位置と第一車線リンク候補点との間の距離が所定の閾値未満である場合は、車線逸脱判定手段129により自車両が車線走行中であると判定し、そうでない場合は車線逸脱と判定する。
【0063】
マップマッチング手段112は、以上説明したようなマップマッチング処理の結果として、第一道路リンク候補点の位置、方位、道路リンク番号、道路逸脱判定結果、第一車線リンク候補点の位置、方位、車線リンク番号及び車線逸脱判定結果を、経路探索手段114、経路誘導手段113及び画面音声出力手段106に送る。また、車線マップマッチング手段128により設定された車線リンク番号が「ヌル」を示す値でない場合、第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報及び分岐間車線リンクの車線情報を経路誘導手段113及び画面音声出力手段106に送る。
【0064】
なお、以上説明したようなステップ204のマップマッチング処理については、後で図3及び4を用いて詳細に説明する。
【0065】
ステップ205では、経路探索の入力の有無を判定する。経路探索指示手段107に対してユーザから目的地の入力があった場合、経路探索の入力ありと判定してステップ208に進む。このとき経路探索指示手段107は、その目的地の情報を経路探索手段114へ送る。一方、目的地の入力がない場合はステップ206に進む。
【0066】
ステップ206では、誘導経路の有無を判定する。誘導経路がある場合、ステップ207に進む。そうでない場合、ステップ210に進む。
【0067】
ステップ207では、自車両が誘導経路上にいるか否かを判定する。第一道路リンク候補点に対応する道路リンクが誘導経路の道路リンクに含まれている場合、自車両が誘導経路上にいると判定してステップ209に進む。一方、第一道路リンク候補点に対応する道路リンクが誘導経路の道路リンクに含まれていない場合は、自車両が誘導経路上にいないと判定してステップ208に進む。
【0068】
ステップ208において、経路探索手段114は、道路情報記憶手段104から目的地付近の道路情報を読み込み、目的地から周囲の各道路リンクまでの距離を計算して、その距離が最も近い道路リンク番号を目的地の道路リンクとする。そして、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点の道路リンク番号、位置及び方位を受け取り、第一道路リンク候補点の道路リンクからその方位に向かって、目的地の道路リンクまでつなぐ複数の経路を探索し、その中で所定の条件を満たす経路、たとえば最も短い距離の経路を誘導経路とする。こうして誘導経路を決定したら、経路探索手段114は、その誘導経路上の道路リンク番号を経路誘導手段113に送る。
【0069】
ステップ209において、経路誘導手段113は、経路探索手段114から誘導経路上の道路リンク番号を受け取り、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点の位置、方位、道路リンク番号、道路逸脱判定結果、第一車線リンク候補点の位置、方位、車線リンク番号、走行車線番号及び車線逸脱判定結果を受け取り、第一車線リンク候補点の車線リンク番号及び走行車線番号が「ヌル」を示す値でない場合、第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報及び分岐間車線リンクの車線情報を受け取る。また、道路情報記憶手段104から誘導経路上の道路リンクに対応する案内表示などの情報を読み込む。
【0070】
マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路走行を示している場合、経路誘導手段113は、第一リンク候補点の位置から右左折すべき分岐点までの距離が所定距離以下になったときに、道路誘導信号をオンにして、誘導方向を表す道路誘導方向信号を決定する。そうでないときには道路誘導信号をオフにする。また、第一車線リンク候補点の車線リンク番号及び走行車線番号が「ヌル」を示す値でなく、かつ右左折すべき分岐点の手前の誘導車線と第一リンク候補点の走行車線番号とが異なる場合、経路誘導手段113は、車線誘導信号をオンにする。そうでない場合は車線誘導信号をオフにする。
【0071】
道路誘導信号や車線誘導信号をオンにしたとき、経路誘導手段113は、道路誘導方向信号、案内表示、誘導車線などの情報を画面音声出力手段106に送る。
【0072】
ステップ210において、画面音声出力手段106は、マップマッチング手段112から推定位置、推定方位、第一道路リンク候補点の位置、方位、道路リンク番号、道路逸脱判定結果、第一車線リンク候補点の位置、方位、車線リンク番号及び車線逸脱判定結果を受け取る。そして、道路逸脱結果が道路走行であり、自車両前方の所定距離以内に分岐点があり、かつその分岐周辺の道路に車線情報がある場合、マップマッチング手段112から第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報及び分岐間車線リンクの車線情報を受け取り、車線リンク及び分岐間車線リンクを道路地図上に描画すると共に、第一車線リンク候補点の位置をカーマークとして描画する。ここで、第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報をマップマッチング手段112の代わりに分岐周辺の車線情報記憶手段105から読み込んでも構わない。
【0073】
一方、道路逸脱結果が道路逸脱である場合、画面音声出力手段106は、道路情報記憶手段104から推定位置周辺の道路情報を読み込み、道路リンクを描画すると共に、推定位置をカーマークとして描画する。また、それ以外の場合は、第一道路リンク候補点の位置をカーマークとして描画する。
【0074】
画面音声出力手段106はまた、経路誘導手段113から道路誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号、車線誘導信号、誘導車線の情報を取得する。そして、道路誘導信号がオンである場合に案内表示を出力し、誘導方向を報知するための画像や音声を出力する。また、車線誘導信号がオンである場合、誘導車線を報知して誘導車線へ自車両を誘導するための画像や音声を出力する。
【0075】
続いて、図2のステップ204のマップマッチング処理についての詳細な説明を、図3及び図4を用いて以下に行う。ステップ204のマップマッチング処理が開始されると、最初に図3のステップ301が実行される。
【0076】
ステップ301において、道路情報取得手段120は、過去に道路情報を取得したか否かを判定する。道路情報記憶手段104から過去に道路情報を読み込んで取得している場合、ステップ302に進む。そうでない場合、ステップ303に進む。
【0077】
ステップ302において、道路情報取得手段120は、図2のステップS203において位置推定手段111から送られた推定位置と過去に読み込んだ道路情報のメッシュ領域の端との間の距離が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。たとえば図5に示すように、推定位置501と過去に道路情報を読み込んだ4つのメッシュ領域502の端との距離が所定距離よりも短く、推定位置501が4つのメッシュ領域502の端付近にある斜線領域503内に含まれる場合、ステップ303に進む。そうでない場合、ステップ304に進む。
【0078】
ステップ303において、道路情報取得手段120は、推定位置を含むメッシュ領域と、推定位置から近い所定数、たとえば3つのメッシュ領域とについて、道路情報記憶手段104から道路情報を読み込んで取得する。なお、既に道路情報を取得済みのメッシュ領域については再び取得する必要はない。
【0079】
ステップ304において、道路リンクマップマッチング手段121は、前回の処理で求められた道路リンク候補点があるか否かを判定する。前回の処理で求められた道路リンク候補点がある場合、ステップ306に進む。ない場合、ステップ305に進む。
【0080】
ステップ305において、道路リンクマップマッチング手段121は、図2のステップS203で求められた推定位置、推定方位、推定速度、及び推定位置と推定方位の誤差共分散を位置推定手段111から受け取る。そして、推定位置を含むメッシュ領域内の全ての道路リンクと推定位置との間の距離を算出し、その距離が短い順に所定数の道路リンクを選定する。こうして選定した各道路リンクに対して、道路リンク候補点をそれぞれ生成する。ここでは前述のように、選定した各道路リンクに対して推定位置から下した垂線の足の各々を道路リンク候補点とする。
【0081】
上記のようにして道路リンク候補点を生成したら、道路リンクマップマッチング手段121は、各道路リンク候補点の方位を設定する。ここでは、各道路リンク候補点について、当該道路リンク候補点が存在する道路リンクの両進行方向を表す互いに反対向きの2つの道路リンク方位のうち、位置推定手段111から受け取った推定方位との差が90度以下になる方の道路リンク方位を当該道路リンク候補点の方位として設定する。なお、一方通行の道路リンクの場合はこの限りではない。ステップ305を実行したらステップ310に進む。
【0082】
ステップ306において、道路リンクマップマッチング手段121は、図2のステップS203で求められた推定位置、推定方位、推定速度、及び推定位置と推定方位の誤差共分散を位置推定手段111から受け取る。そして、推定速度に所定の処理周期をかけることで走行距離を算出し、前回の処理で求められた各道路リンク候補点の位置を算出した走行距離分だけ前方に移動させる。このとき、各道路リンク候補点が存在する各道路リンクに沿って移動させる。
【0083】
ステップ307において、車線マップマッチング手段128は、前回の処理で求められた車線リンク候補点があるか否かを判定する。前回の処理で求められた車線リンク候補点がある場合、ステップ308に進む。ない場合、ステップ309に進む。
【0084】
ステップ308において、車線マップマッチング手段128は、前回の処理で求められた各車線リンク候補点の位置を、ステップS306で算出した走行距離分だけ前方に移動させる。このとき、各車線リンク候補点が存在する各車線リンクに沿って移動させる。
【0085】
ステップ309において、道路リンクマップマッチング手段121は、ステップS306で算出した走行距離を前回の累積走行距離に足し合わせて今回の累積走行距離を算出し、これが所定距離以上であるか否かを判定する。今回の累積走行距離が所定距離以上である場合、累積走行距離をゼロに設定して、ステップ310に進む。そうでない場合は、図4のステップ321に進む。
【0086】
ステップ310において、道路リンクマップマッチング手段121は、道路リンクへのマップマッチング処理を行う。ここでは、以下に説明するような手順で第一道路リンク候補点を求めることにより、道路リンクへのマップマッチング処理を行う。
【0087】
最初に道路リンクマップマッチング手段121は、ステップ305で生成した各道路リンク候補点、またはステップ306で前方移動した各道路リンク候補点について、その各道路リンク候補点から所定距離だけ前方にある道路リンクの全てに対して道路リンク候補点を新たに追加する。ここでは、ステップ305と同様の方法により、前方の各道路リンクに対して追加の道路リンク候補点をそれぞれ設定する。
【0088】
次に道路リンクマップマッチング手段121は、下記の数式8から数式11を用いて、ステップ305で生成した各道路リンク候補点、またはステップ306で前方移動した各道路リンク候補点と、上記で追加した各道路リンク候補点とについて、評価量Tをそれぞれ計算する。数式8〜数式11において、(x,y)は推定位置を表し、θは推定方位を表し、(x,y)は各道路リンク候補点の位置を表し、θは各道路リンク候補点の方位を表し、Σは推定位置及び推定方位の誤差共分散行列を表し、Σは道路リンク候補点の位置及び方位の誤差共分散行列を表し、σpl及びσθlは予め設定された道路リンクの位置誤差及び方位誤差の分散を表し、nは距離系列データの数を表している。なお、距離系列データとは、自車両が走行した一定距離間隔の地点における推定量及び道路リンク候補点のデータである。
【0089】
【数8】

…(数式8)
【数9】

…(数式9)
【数10】

…(数式10)
【数11】

…(数式11)
【0090】
自車両が道路上を走行している場合、自車両に対応する道路リンク候補点の位置及び方位は、推定位置及び推定方位とほぼ一致するはずである。そのため、評価量Tが小さい道路リンク候補点ほど、その道路リンク候補点に対応する道路上を自車両が走行している確率が高くなる。そこで道路リンクマップマッチング手段121は、上記のようにして各道路リンク候補点の評価量Tを算出したら、評価量Tが小さい(道路を走行している確率が高い)順に所定数の道路リンク候補点を選定し、それ以外の道路リンク候補点の情報を除去する。そして、道路リンク候補点の中から評価量Tが最も小さい(道路を走行している確率が最も高い)道路リンク候補点を第一道路リンク候補点とする。推定位置及び推定方位の誤差、道路リンク位置及び方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、評価量Tは自由度2×nのχ二乗分布に従う。このため、評価量Tの値以上である自由度2×nのχ二乗分布の確率密度関数の積分値が、その道路を走行している確率に相当する。
【0091】
ステップ311において、道路逸脱判定手段122は、道路リンクからの逸脱の判定を行う。ここでは、まず道路逸脱判定手段122は、下記に示すように、第一道路リンク候補点に対応する道路リンクを対象として、推定位置と道路リンクとの距離に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hp0:推定位置と道路リンクとの距離に差がない。
・対立仮説Hp1:推定位置と道路リンクとの距離に差がある。
【0092】
次に道路逸脱判定手段122は、下記の数式12〜数式15を用いて、推定位置と道路リンクとの距離を無次元化した検定量Tを算出する。ここで、Σpeは推定位置の誤差共分散を表し、Σplは道路リンク位置の誤差共分散を表している。
【0093】
【数12】

…(数式12)
【数13】

…(数式13)
【数14】

…(数式14)
【数15】

…(数式15)
【0094】
推定位置の誤差及び道路リンク位置の誤差が正規分布に従うと仮定すると、上記のようにして算出される検定量Tは、自由度1のχ二乗分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する検定を自由度1のχ二乗分布に基づいて行うと、道路逸脱判定手段122は次のように仮説を採択できる。すなわち、検定量Tが自由度1及び有意水準αのχ二乗値以下である場合は、帰無仮説を棄却できず、推定位置と道路リンクとの距離に差がないと判定する。一方、検定量Tが自由度1及び有意水準αのχ二乗値よりも大きい場合は、帰無仮説を棄却し、推定位置と道路リンクとの距離に差があると判定する。
【0095】
さらに道路逸脱判定手段122は、下記に示すように、第一道路リンク候補点に対応する道路リンクを対象として、推定方位と道路リンク方位に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hθ0:推定方位と道路リンク方位に差がない。
・対立仮説Hθ1:推定方位と道路リンク方位に差がある。
【0096】
続いて道路逸脱判定手段122は、下記の数式16〜数式18を用いて、推定方位と道路リンク方位の差を無次元化した検定量Tθを算出する。
【0097】
【数16】

…(数式16)
【数17】

…(数式17)
【数18】

…(数式18)
【0098】
推定方位の誤差及び道路リンク方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、検定量Tθは正規分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する両側検定を正規分布に基づいて行うと、道路逸脱判定手段122は以下のように仮説を採択できる。すなわち、検定量Tθの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値以下である場合は、帰無仮説を棄却できず、推定方位と道路リンク方位に差がないと判定する。一方、検定量Tθの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値よりも大きい場合は、帰無仮説を棄却し、推定方位と道路リンク方位に差があると判定する。
【0099】
以上説明した各判定により、推定位置と道路リンクとの距離に差がなく、かつ推定方位と道路リンク方位に差がないと判定した場合、道路逸脱判定手段122は道路走行、すなわち自車両が道路を走行中であると判定する。そうでない場合、道路逸脱判定手段122は道路逸脱、すなわち自車両が道路から逸脱していると判定する。
【0100】
図4のステップ312において、車線マップマッチング実施判定手段123は、車線リンクへのマップマッチング処理の実施判定を行う。ここでは、下記の条件1あるいは条件2を満たす場合、車線リンクへのマップマッチングを実施すると判定し、ステップ313に進む。一方、条件1及び条件2の両方を満たさない場合は、車線リンクへのマップマッチングを実施しないと判定し、ステップ321に進む。このとき、図3のステップ308において各車線リンク候補点を前方に移動させていた場合は、その各車線リンク候補点を削除する。
・条件1:第一道路リンク候補点が存在する道路リンクに対する車線情報の有無フラグが真である。
・条件2:ステップ311で道路走行と判定され、かつ、第一道路リンク候補点の前方の所定距離以内に分岐があり、その分岐周辺の道路リンクに対する車線情報の有無フラグが真である。
【0101】
ステップ313において、車線情報取得手段124は、第一リンク候補点から所定距離以内にある分岐周辺の車線情報を過去に読み込んだか否かを判定する。過去に実施されたステップ314の処理により、第一リンク候補点の前方及び後方の所定距離以内にある分岐周辺の車線情報を既に読み込んでいる場合は、ステップ315に進む。そうでない場合、ステップ314に進む。
【0102】
ステップ314において、車線情報取得手段124は、第一リンク候補点の前後方向にある各分岐を対象分岐として、その対象分岐周辺の車線情報を分岐周辺の車線情報記憶手段105から読み込んで取得する。
【0103】
ステップ315において、道路リンク位置誤差算出手段125は、第一道路リンク候補点から前方の分岐までの間の道路リンクに対する分岐間車線リンクの情報が既にあるか否かを判定する。分岐間車線リンクの情報がある場合、ステップ319に進む。ない場合、ステップ316に進む。ここで、分岐間車線リンクとは、第一リンク候補点の前後方向にある各対象分岐間をつなぐ道路リンクに対して作成される車線リンクであり、道路情報及び分対象岐周辺の車線情報から過去に実施されたステップ318の処理(詳細は後述する)によって求められたものである。
【0104】
ステップ316において、道路リンク位置誤差算出手段125は、第一道路リンク候補点前後の各対象分岐周辺の道路リンクに対して位置誤差を算出する。ここでは、図6を用いて以下に説明するような方法により、道路リンクの位置誤差を算出する。
【0105】
道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ314で分岐周辺の車線情報記憶手段105から取得された第一リンク候補点の前後方向の各対象分岐周辺の車線情報に基づいて、まず、対象分岐周辺の道路両端の車線に対応する各車線ノード間の中点を算出する。たとえば図6に示すように、車線ノード601及び602に対して、これらの中点603(図6中の各点603のうち右側に位置する点)を算出する。同様にして、対象分岐周辺に存在する道路両端の車線ノードの各組み合わせについて、それぞれの中点を算出する。こうして算出された各中点を車線リンクの道路中心ノードと呼ぶことにする。なお、図6において黒丸で示す各点は車線ノードを、白丸で示す各点は車線リンクの道路中心ノードをそれぞれ表している。
【0106】
以上説明したようにして車線リンクの道路中心ノードを算出したら、道路リンク位置誤差算出手段125は次に、対象分岐の中心から先の各道路に対応する車線リンクの道路中心ノード間を結んだ線(たとえば線604)を求める。こうして求められた線を車線リンクの道路中心線と呼ぶことにする。
【0107】
さらに、分岐に接続された各道路について、上記のようにして求められた車線リンクの道路中心線がほぼ直線である範囲をそれぞれ探索し、その範囲において車線リンクの道路中心線と対応する道路リンクとの距離Δwをそれぞれ算出する。こうして算出した分岐中心からの各道路の距離Δwを用いて、対象分岐周辺の道路リンクの位置誤差を算出する。
【0108】
なお、以上説明したようなステップ316の処理については、後で図12を用いて詳細に説明する。
【0109】
ステップ317において、車線間距離算出手段126は、次のような処理を行うことにより、第一リンク候補点の前後方向の各対象分岐からそれぞれ分岐する各道路における車線間距離を算出する。ここでは、車線情報がなくなる位置に対応する各車線ノードのうち隣接する車線ノード同士の間の距離をそれぞれ算出することで、車線間距離を算出する。
【0110】
ステップ318において、分岐間車線リンク作成手段127は、次のような処理を行うことにより、分岐間車線リンクを作成する。ここでは、分岐間車線リンク作成手段127はまず、下記の数式19及び数式20を用いて、第一道路リンク候補点の前後の各対象分岐間に存在する各道路ノードについて道路ノードの位置の補正量(Δxrl,Δyrl)を算出する。ここで、Lcfは第一道路リンク候補点の前方にある対象分岐の道路ノードと補正量を求める道路ノードの距離を表し、Lcbは第一道路リンク候補点の後方にある対象分岐の道路ノードと補正量を求める道路ノードの距離を表し、(Δxof、Δyof)及び(Δxob、Δyob)は第一道路リンク候補点の前方及び後方の各対象分岐付近の道路リンクの位置誤差をそれぞれ表している。
【0111】
【数19】

…(数式19)
【数20】

…(数式20)
【0112】
上記の数式19及び数式20から分かるように、第一道路リンク候補点の前後の各対象分岐から補正量を求める各道路ノードまでの距離比に応じて、その距離が近いほど大きな重み付けが、各対象分岐付近の道路リンクの位置誤差に対して行われる。こうして重み付けされた各対象分岐付近の道路リンクの位置誤差同士を足し合わせることにより、各道路ノードの位置の補正量が算出される。
【0113】
分岐間車線リンク作成手段127は次に、下記の数式21〜数式24を用いて、上記の数式19及び数式20により補正量を求めた各道路ノードに対して、それに対応する分岐間車線ノードの位置(xll,i,yll,i)を算出する。ここで、iは道路の端から何番目の分岐間車線ノードであるかを表しており、θllf及びθllbは当該分岐間車線ノードの前方及び後方に存在する各分岐間車線リンクの方位をそれぞれ表している。また、wf,i,i+1及びwb,i,i+1は、第一道路リンク候補点の前後の各対象分岐からそれぞれ分岐する各道路に対してステップ317で算出された車線間距離のうち、i番目の車線ノードとi+1番目の車線ノードとの車線間距離を表している。wは道路の両端の車線ノード間の距離を表している。
【0114】
【数21】

…(数式21)
【数22】

…(数式22)
【数23】

…(数式23)
【数24】

…(数式24)
【0115】
上記の数式21〜数式24から分かるように、第一道路リンク候補点の前後の各対象分岐から数式19及び数式20で補正量を求めた各道路ノードまでの距離比に応じて、その距離が近いほど大きな重み付けが、ステップ317で各対象分岐付近の道路リンクに対して算出された車線間距離に対して行われる。こうして重み付けされた各対象分岐付近の道路リンクの車線間距離同士を足し合わせることにより、各道路ノードでの車線間距離が算出され、分岐間車線ノードの位置が算出される。
【0116】
上記の処理により分岐間車線ノードの位置を算出したら、分岐間車線リンク作成手段127は、その各分岐間車線ノードに対して分岐間車線ノード番号を設定する。また、互いに隣接し合う各分岐間車線ノード同士をつなぐ分岐間車線リンクを求め、その各々に対して分岐間車線リンク番号を設定する。これらの設定は、既存の車線ノード番号や車線リンク番号と重複しないように所定の法則に従って行われる。
【0117】
以上説明したような処理により、分岐間車線ノード番号、分岐間車線ノードの位置及び分岐間車線リンク番号を算出したら、各分岐間車線リンクに対応する道路リンク番号を特定し、これらを分岐間の車線情報として所定のメモリ領域に格納する。そして、図3のステップ303で取得した道路情報に対して、特定された道路リンク番号に対応する各道路リンクに対して分岐間の車線情報の格納場所を設定する。
【0118】
ステップ319において、車線マップマッチング手段128は、車線リンクへのマップマッチング処理を行う。ここでは、図3のステップ310で求められた第一道路リンク候補点が存在する道路リンクに対応する各車線リンクまたは各分岐間車線リンクに対して推定位置から下した垂線の足の各々を車線リンク候補点とする。こうして求められた各車線リンク候補点と推定位置との間の距離をそれぞれ算出し、その中で距離が最も短い車線リンク候補点を第一車線リンク候補点とする。
【0119】
ステップ320において、車線逸脱判定手段129は、車線リンクからの逸脱判定を行う。ここでは、ステップ319で求められた第一車線リンク候補点と推定位置との間の距離が対応する道路リンクの幅員以上である場合、車線逸脱と判定する。そうでない場合、車線走行と判定する。
【0120】
ステップ321において、マップマッチング手段112は、経路探索手段114、経路誘導手段113及び画面音声出力手段106に、位置推定手段111から受けた推定位置及び推定方位と、ステップ310で求められた第一道路リンク候補点の位置、方位及び道路リンク番号と、ステップ311で行われた道路逸脱の判定結果とを送る。また、ステップ319で第一車線リンク候補点が求められた場合、経路誘導手段113及び画面音声出力手段106に、その第一車線リンク候補点の位置、方位及び車線リンク番号と、ステップ320で行われた車線逸脱の判定結果と、ステップ318で作成された分岐間車線リンクの車線情報と、ステップ314で取得した第一道路リンク候補点前後の交差点周辺の車線情報を送る。
【0121】
ステップ321を実行したら図2のステップ204のマップマッチング処理を終了し、ステップS205へ進む。ステップ204のマップマッチング処理では、以上説明したような処理がマップマッチング手段112によって行われる。
【0122】
続いて、図4のステップ316で実行される道路リンクの位置誤差の算出処理についての詳細な説明を、図12を用いて以下に行う。ステップ316の道路リンクの位置誤差の算出処理が開始されると、最初に図12のステップ1201が実行される。
【0123】
ステップ1201において、道路リンク位置誤差算出手段125は前述のように、対象分岐周辺の道路両端の車線に対応する各車線ノード間の中点を車線リンクの道路中心ノードとして算出する。また、対象分岐の中心から先の各道路について車線リンクの道路中心ノード同士を結んだ線を車線リンクの道路中心線として算出し、その両端点間の距離から車線リンク長を算出する。
【0124】
ステップ1202において、道路リンク位置誤差算出手段125は、距離差ΔLの最小値の初期値を設定する。ここでは、たとえば99999を初期値として設定する。なお、距離差ΔLについては後で説明する。
【0125】
ステップ1203において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1201で求めた車線リンクの道路中心ノードのいずれかを選択し、車線リンクの道路中心線上で当該車線リンクの道路中心ノードから所定の長さだけ離れた位置にある点を探索する。ここでは、対象分岐から離れた位置にある車線リンクの道路中心ノード(例えば、図6では点603)から順に選択していき、そこから所定の長さだけ離れた点を探索する。
【0126】
ステップ1203での点探索方法を図7を用いて説明する。たとえば、図7において点603の次に位置する車線リンクの道路中心ノードである点701が選択された場合、その点701からの距離が所定の長さLである車線リンクの道路中心線上の点702が探索される。なお、このときの長さLは、互いに隣接し合う車線リンクの道路中心ノード間の距離のいずれよりも長くすることが好ましい。
【0127】
ステップ1204において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1203で選択された車線リンクの道路中心ノード及び当該車線リンクの道路中心ノードに対して探索された探索点の各位置情報と、これらの2点間にある全ての車線リンクの道路中心ノードの各位置情報とに基づいて、回帰直線を算出する。すなわち図7の例では、点701及び点702の位置情報と、これらの間にある車線リンクの道路中心ノードである点703及び704の位置情報とに基づいて、これら各点の回帰直線705を算出する。
【0128】
ステップ1205において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1205で算出した回帰直線と、その回帰直線の算出に用いられた各点(探索点を含む)との間の距離について、その最大値と最小値の距離差ΔLを算出する。すなわち図7の例では、回帰直線705と点701〜704との間の各距離(たとえば、点703に対して距離706)を算出する。このとき、各点と回帰直線704との位置関係が分かるようにするため、算出対象とする点の位置が回帰直線704よりも下方(地図上で南側)にある場合は距離を負の値で表し、上方(地図上では北側)にある場合は距離を正の値で表すようにすることが好ましい。こうして回帰直線705と点701〜704との間の各距離を算出したら、その最大値と最小値の距離差ΔLを算出する。
【0129】
ステップ1206において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1205で算出した距離差ΔLが所定の閾値以内であるか否かを判定する。距離差ΔLが所定の閾値以内である場合、当該距離差ΔLに対してステップ1203で選択した車線リンクの道路中心ノードから先に続く車線リンクの道路中心線(図7の例では線分707、線分711及び線分712)がほぼ直線であると判定し、ステップ1210に進む。一方、距離差ΔLが所定の閾値を超える場合、車線リンクの道路中心線は直線ではないと判定してステップ1207に進む。
【0130】
ステップ1207において、道路リンク位置誤差算出手段125は、対象分岐周辺の道路において、車線リンクの道路中心ノード全てについてステップ1205で距離差ΔLを求めたか否かを判定する。全ての車線リンクの道路中心ノードについて距離差ΔLを既に求めた場合、ステップ1209に進む。一方、距離差ΔLをまだ求めていない車線リンクの道路中心ノードが残っている場合は、ステップ1208に進む。
【0131】
ステップ1208において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1205で求めた距離差ΔLが現在保存されている距離差ΔLの最小値よりも小さい場合、その距離差ΔLを新たな最小値として保存することで距離差ΔLの最小値を更新する。そして、そのときの車線リンクの道路中心ノード及び探索点の位置(図7の例では、点701と点702の位置)を対応付けて記憶する。なお、距離差ΔLの最小値の初期値は、前述のようにステップ1202で設定される。
【0132】
ステップ1208を実行したらステップ1203へ戻り、前述の処理を繰り返す。このとき、ステップ1203では選択済みの車線リンクの道路中心ノードを選択対象から除外して、未選択の車線リンクの道路中心ノードのうちで分岐からもっとも離れた位置にあるものを選択する。
【0133】
ステップ1209において、道路リンク位置誤差算出手段125は、距離差ΔLの最小値における道路リンクと車線リンクの中心線との距離Δwを算出する。ここでは、ステップ1208の処理によって最終的に保存された距離差ΔLの最小値に対応する車線リンクの道路中心ノードと探索点の中間点を求め、その中間点から対応する道路リンクまでの距離を上記の距離Δwとして算出する。たとえば、図7の例において点701と点702が最終的に保存されている距離差ΔLの最小値に対応する道路中心ノードと探索点であった場合、これらの中間点708を求め、この中間点708に対応する道路リンク709までの距離710を距離Δwとして算出する。なお、中間点708とは、車線リンクの道路中心ノードである点701から車線リンクの道路中心線に沿って距離L/2だけ離れた位置にある点である。ステップ1209を実行したらステップ1211へ進む。
【0134】
ステップ1210において、道路リンク位置誤差算出手段125は、ステップ1206で閾値以内であると判定された距離差ΔLにおける道路リンクと車線リンクの中心線との距離Δwを算出する。ここでは、当該距離差ΔLに対してステップ1203で選択した車線リンクの道路中心ノードとそれに対応する探索点の中間点を求め、その中間点から対応する道路リンクまでの距離を上記の距離Δwとして算出する。たとえば、図7の例において点701と点702が閾値以内であると判定された距離差ΔLに対応する道路中心ノードと探索点であった場合、前述のステップ1209と同様に、これらの中間点708を求め、この中間点708から対応する道路リンク709までの距離710を距離Δwとして算出する。
【0135】
ステップ1211において、道路リンク位置誤差算出手段125は、対象分岐周辺の道路全てについてステップ1209またはステップ1210で距離Δwを求めたか否かを判定する。対象分岐周辺の全ての道路について距離Δwを既に求めた場合、ステップ1212に進む。一方、距離Δwをまだ求めていない道路が残っている場合は、ステップ1201に戻り、前述の処理を繰り返す。このとき、ステップ1201では距離Δwを算出済みの道路を選択対象から除外して、未算出の道路のいずれかを選択する。
【0136】
以上説明したようなステップ1201〜ステップ1211の各処理を実行することにより、たとえば図8に示すように、対象分岐から分岐した道路ごとに、道路リンク801と車線リンクの道路中心線802との間の距離Δwi(i=1〜3)をそれぞれ求めることができる。
【0137】
ステップ1212において、道路リンク位置誤差算出手段125は、下記の数式25及び数式26を用いて、対象分岐周辺の道路リンクの位置誤差(Δx,Δy)を算出する。ここで、θrliは道路リンクの方位である。
【0138】
【数25】

…(数式25)
【数26】

…(数式26)
【0139】
ステップ1212を実行したら図4のステップ316の道路リンクの位置誤差の算出処理を終了し、ステップS317へ進む。ステップ316では、以上説明したような処理が道路リンク位置誤差算出手段125によって行われる。
【0140】
続いて本願発明の作用効果について説明する。道路情報記憶手段104に記憶されている道路情報において、道路リンクの位置誤差(道路ノードの位置誤差)は、一般的に5〜15m程度である。この道路リンクの位置誤差は、計測時のばらつきによる成分とオフセット成分とを含む。ばらつきによる成分の誤差は、分岐周辺で2〜10m程度であり、その他の場所では1〜2m程度である。一方、オフセット成分の誤差は2〜3m程度である。このため、分岐間の道路リンクでは、3〜5m程度の位置誤差があることになる。
【0141】
上記のように3〜5m程度の位置誤差を含む分岐間の道路リンクに対して、道路情報における道路リンクの幅員の情報をもとに車線リンクを作成すると、作成された車線リンク(作成車線リンク)も同様に3〜5m程度の位置誤差を含むこととなる。したがって、そのままでは約3.5mごと並んでいる作成車線リンクに対して自車両の推定位置を正しくマッチさせることはできない。
【0142】
その様子を図9の例を用いて以下に説明する。図9では、分岐から伸びており途中で約90度曲がっている道路を表す道路リンク901の位置について、東西方向(図の左右方向)に約3mのずれ902があり、南北方向(図の上下方向)に約1.5mのずれ903があるケースを例示している。このような状況において、自車両が道路リンク901上を南方向に進んでいる場合、たとえば自車両が右側の車線を走行していても、南北方向に約3mのずれ902があるため、誤って左側の作成車線リンク904にマッチしてしまうことがある。その結果、分岐で右折の誘導を行う際に、右折のために自車両が既に右側の車線に寄っていたとしても、カーマーク905が誤ってマッチした左側の作成車線リンク904上にあるため、経路誘導手段113が右側の車線に寄るという誤った指示を出し続けてしまうこととなる。
【0143】
そこで、分岐周辺の車線情報記憶手段105に記憶されている分岐周辺の車線情報を用いて道路リンクの位置を補正し、その位置補正後の道路リンクに対して車線リンクを作成することが考えられる。分岐周辺の車線情報記憶手段105に記憶されている分岐周辺の車線情報では、たとえばRTK−GPS受信機と慣性航法機器を搭載した計測車両を使って計測された車線リンクの位置が記録されている。RTK−GPSと慣性航法の複合航法では1m以下の誤差精度で位置が計測できるため、分岐周辺の車線情報における車線リンクの位置精度も誤差1m以下である。しかし、このように位置精度の高い車線リンクの位置を用いても、単に道路リンクに垂直な方向に道路リンクの位置を補正して車線リンクを作成する手法では、道路リンクの進行方向の位置誤差を十分に補正することができない。
【0144】
その様子を図10の例を用いて以下に説明する。図10では、図9の道路リンク901と同様の形状及び位置誤差を有する道路リンク1001を例示している。図10において分岐周辺の車線リンクの位置を用いることで、道路リンク1001に対して垂直な方向1002に道路リンクが補正される。しかし、このような方法では、道路リンク1001の進行方向である東西方向(図10では左右方向)の位置誤差が補正されずに残ってしまう。このため、自車両が道路リンク1001上を南方向に進んでいる場合、図9で説明したのと同様に、たとえば自車両が右側の車線を走行していても、南北方向に約3mのずれ902があるため、誤って左側の作成車線リンク1003にマッチしてしまうことがある。その結果、分岐で右折の誘導を行う際に、右折のために自車両が既に右側の車線に寄っていたとしても、カーマーク1004が誤ってマッチした左側の作成車線リンク1003上にあるため、経路誘導手段113が右側の車線に寄るという誤った指示を出し続けてしまうこととなる。
【0145】
これに対して、以上説明した本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、自車両の前後の各分岐点よりそれぞれ分岐した各道路に垂直な方向の道路リンクの位置誤差をもとに道路リンクの位置誤差を算出し、道路リンクの位置を補正して分岐間車線リンクを作成する。これにより、道路リンク位置のオフセット誤差を除去でき、分岐間車線リンクの位置精度を1〜2m程度に向上させることができる。その結果、自車両の推定位置を分岐間車線リンクに対して正しくマッチすることができる。
【0146】
その様子を図11の例を用いて以下に説明する。図11では、図9の道路リンク901及び図10の道路リンク1001と同様の形状及び位置誤差を有する道路リンク1101を例示している。本発明では前述のような処理を行うことにより、図11に示すように、道路リンク1101の位置に含まれるオフセット誤差成分を東西方向(図の左右方向)及び南北方向(図の上下方向)の両方について消去する方向1102に道路リンク1101の位置が補正され、分岐間車線リンクが作成される。そのため、自車両が道路リンク1101上で右側の車線を南方向に進んでいる場合に、右側の分岐間車線リンク1103に正しくマッチすることができる。また、分岐で右折の誘導を行う際に、右折のために自車両が既に右側に寄っていると、カーマーク1104が正しくマッチした右側の分岐間車線リンク1103上にあるため、経路誘導手段113が右側の車線に寄るという誤った指示を出し続ける問題が生じない。
【0147】
さらに図11では、破線で示す枠内における分岐周辺の車線リンクの道路幅と、この枠外にある分岐間の車線リンクの道路幅とが連続してスムーズに描画されていることが分かる。これにより、分岐周辺と分岐間の両方の車線リンクを違和感なく描画することができる。なお、分岐周辺の車線リンクの描画は、車線情報記憶手段105に記憶されている分岐周辺の車線情報に基づいて行われるものであり、分岐間の車線リンクの描画は、前述のような処理によって作成された分岐間車線リンクに基づいて行われるものである。これらの描画を画面音声出力手段106が行うことで、図11のような画面を画面音声出力手段106において表示することができる。
【0148】
以上説明したように、図2〜4及び12を用いて説明した本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、分岐周辺のみに設定されている精度1m以下の車線リンクの位置情報を用いて、位置精度が1〜2m程度である分岐間車線リンクを求めて自車両の推定位置をその分岐間車線リンクに正しくマッチできる。このため、分岐周辺のみについて車線情報を格納すればよいため、分岐周辺の車線情報記憶手段105の記憶容量を減らしてカーナビゲーション装置の製品コストを低減できる。また、道路が新たに作られたり、変更したりしたときに、分岐周辺のみの車線情報を作成すればよいため、車線情報を最新の状態に保つための作業量を低減できる。
【0149】
−変形例1−
以上説明した本発明のカーナビゲーション装置の動作手順において、図4のステップ319で車線リンクへのマップマッチング処理を行う際に、下記のような処理を行ってもよい。この処理により、たとえば狭角な分岐通過後の2つの車線リンク間における位置の差が小さく、自車両の移動に関する推定量と車線リンク位置との一致度合いだけではどちらの車線リンクを自車両が走行しているか容易には判定できないようなケースでも、方位の一致度合いも考慮して算出した評価量をもとに車線リンクにマッチさせるため、正しい車線リンクにマッチできる。
【0150】
この場合、ステップ319において車線マップマッチング手段128は、前述の処理と同様に、図3のステップ310で求められた第一道路リンク候補点が存在する道路リンクに対応する各車線リンクまたは各分岐間車線リンクに対して推定位置から下した垂線の足の各々を車線リンク候補点とする。その後さらに、下記の数式27から数式30を用いて、各車線リンク候補点に対する評価量Tを計算する。なお、数式27〜数式30において、(xll、yll)は推定位置から車線リンクに垂線を下ろした車線リンク候補点の位置を表し、θllは車線リンク候補点の方位を表し、Σllは車線リンク候補点の位置及び方位の誤差共分散行列を表し、σpll及びσθllは予め設定された車線リンクの位置誤差及び方位誤差の分散をそれぞれを表し、nは距離系列データの数を表している。
【0151】
【数27】

…(数式27)
【数28】

…(数式28)
【数29】

…(数式29)
【数30】

…(数式30)
【0152】
自車両が車線上を走行している場合、自車両に対応する車線リンク候補点の位置及び方位は、推定位置及び推定方位とほぼ一致するはずである。そのため、評価量Tが小さいものほど、その車線リンク候補点に対応する車線上を車両が走行している確率が高くなる。そこで車線マップマッチング手段128は、上記のようにして各車線リンク候補点の評価量Tを算出したら、その中で評価量Tが最も小さい(車線を走行している確率が最も高い)車線リンク候補点を第一車線リンク候補点とする。推定位置及び推定方位の誤差、車線リンク位置及び方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、評価量Tlは自由度2×nのχ二乗分布に従う。このため、評価量Tlの値以上である自由度2×nのχ二乗分布の確率密度関数の積分値が、その車線を走行している確率に相当する。
【0153】
−変形例2−
また、本発明のカーナビゲーション装置の動作手順において、図4のステップ320で車線リンクからの逸脱判定を行う際に、下記のような処理を行ってもよい。この処理を行うことにより、推定方位と車線リンクの方位を考慮して、自車両が車線を逸脱したか否かを正確に判定することができる。
【0154】
この場合、ステップ320において車線逸脱判定手段129は、下記に示すように、第一車線リンク候補点に対応する車線リンクと対象として、推定位置と車線リンクとの距離に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hpl0:推定位置と車線リンクとの距離に差がない。
・対立仮説Hpl1:推定位置と車線リンクとの距離に差がある。
【0155】
次に車線逸脱判定手段129は、下記の数式31〜数式34を用いて、推定位置と車線リンクとの距離を無次元化した検定量Tplを算出する。ここで、Σpllは車線リンク位置の誤差共分散である。
【0156】
【数31】

…(数式31)
【数32】

…(数式32)
【数33】

…(数式33)
【数34】

…(数式34)
【0157】
推定位置の誤差及び車線リンク位置の誤差が正規分布に従うと仮定すると、上記のようにして算出される検定量Tplは、自由度1のχ二乗分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する検定を自由度1のχ二乗分布に基づいて行うと、車線逸脱判定手段129は以下のように仮説を採択できる。すなわち、検定量Tplが自由度1及び有意水準αのχ二乗値以下である場合、帰無仮説を棄却できず、推定位置と車線リンクとの距離に差がないと判定する。一方、検定量Tplが自由度1及び有意水準αのχ二乗値よりも大きい場合、帰無仮説を棄却し、推定位置と車線リンクとの距離に差があると判定する。
【0158】
さらに車線逸脱判定手段129は、下記に示すように、第一車線リンク候補点に対応する車線リンクと対象として、推定方位と車線リンク方位に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hθl0:推定方位と車線リンク方位に差がない。
・対立仮説Hθl1:推定方位と車線リンク方位に差がある。
【0159】
続いて車線逸脱判定手段129は、下記の数式35〜数式37を用いて、推定方位と車線リンク方位の差を無次元化した検定量Tθlを算出する。
【0160】
【数35】

…(数式35)
【数36】

…(数式36)
【数37】

…(数式37)
【0161】
推定方位の誤差及び車線リンク方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、上記の検定量Tθlは正規分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する両側検定を正規分布に基づいて行うと、車線逸脱判定手段129は以下のように仮説を採択できる。すなわち、検定量Tθlの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値以下である場合、帰無仮説を棄却できず、推定方位と車線リンク方位に差がないと判定する。検定量Tθlの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値よりも大きい場合は、帰無仮説を棄却し、推定方位と車線リンク方位に差があると判定する。
【0162】
以上説明した各判定により、推定位置と車線リンクとの距離に差がなく、かつ推定方位と車線リンク方位に差がないと判定した場合、車線逸脱判定手段129は車線走行、すなわち自車両が車線上を走行中であると判定する。そうでない場合、車線逸脱判定手段129は車線逸脱、すなわち自車両が車線から逸脱していると判定する。
【0163】
−変形例3−
図1にした本発明のカーナビゲーション装置において、センサ手段102を削除すると共に、図2のステップ202におけるセンサ手段102の処理を削除してもよい。この場合、ステップ203の位置推定処理において、位置推定手段111は、数式1〜数式7においてセンサ手段102の測定値に関する要素を不要な要素として削除することが好ましい。すなわち、数式1〜数式7のうち、状態量ベクトルη(t)、行列F、行列G、状態遷移行列Φ(Δt、αa、αω)及びQ(k)の各々から、ピッチφ(t)に関連する要素を削除する。また、観測量ベクトルy、行列H及び観測雑音行列Rの各々から、センサ速度vs(t)、センサ角速度ωs(t)、センサ加速度gs(t)に関連する要素を削除する。これにより、センサ手段102及び計算処理量を削減できるため、カーナビゲーション装置の製品コストを低減できる。
【0164】
なお、以上説明した実施の形態では、車両に搭載されて使用されるカーナビゲーション装置の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両以外の様々な移動体に搭載されて使用されるナビゲーション装置において適用可能である。また、移動体に搭載されて使用されるナビゲーション装置以外の様々な種類の情報端末、たとえば携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等においても適用可能である。
【0165】
以上説明した実施の形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0166】
101…受信手段、102…センサ手段、103…地図情報記憶手段、104…道路情報記憶手段、105…分岐周辺の車線情報記憶手段、106…画面音声出力手段、107…経路探索指示手段、110…演算手段、111…位置推定手段、112…マップマッチング手段、113…経路誘導手段、114…経路探索手段、120…道路情報取得手段、121…道路リンクマップマッチング手段、122…道路逸脱判定手段、123…車線マップマッチング実施判定手段、124…車線情報取得手段、125…道路リンク位置誤差算出手段、126…車線間距離算出手段、127…分岐間車線リンク作成手段、128…車線マップマッチング手段、129…車線逸脱判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に関する道路情報を記憶する道路情報記憶手段と、
分岐周辺の車線に関する車線情報を記憶する車線情報記憶手段と、
移動体の位置を推定する位置推定手段と、
前記道路情報を用いて、前記位置推定手段により推定された前記移動体の位置に対応する道路リンク候補点を特定する道路リンクマップマッチング手段と、
前記車線情報記憶手段から前記道路リンク候補点の前後に存在する各対象分岐の周辺の車線情報を取得する車線情報取得手段と、
前記車線情報取得手段により取得された車線情報を用いて、前記各対象分岐の周辺の道路リンクの位置誤差を算出する道路リンク位置誤差算出手段と、
前記車線情報取得手段により取得された車線情報を用いて、前記各対象分岐の周辺の車線間距離を算出する車線間距離算出手段と、
前記道路リンク位置誤差算出手段により算出された位置誤差と、前記車線間距離算出手段により算出された車線間距離とを用いて、前記各対象分岐間の車線リンクを作成する分岐間車線リンク作成手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記道路リンク位置誤差算出手段は、前記対象分岐周辺の道路両端の車線に対応する各車線ノードの組み合わせごとに、当該各車線ノード間の中点を道路中心ノードとして算出し、各道路中心ノード間を結んだ車線リンクの道路中心線とそれに対応する道路リンクとの距離を算出することにより、前記各対象分岐の周辺の道路リンクの位置誤差を算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記道路リンク位置誤差算出手段は、前記車線リンクの道路中心線がほぼ直線である範囲において前記距離を算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記分岐間車線リンク作成手段は、前記各対象分岐からの距離比に応じて、前記道路リンク位置誤差算出手段により算出された前記各対象分岐の周辺の道路リンクの位置誤差を重み付けして足し合わせることにより、前記各対象分岐間における位置の補正量を算出し、算出した補正量を用いて前記各対象分岐間の車線リンクを作成することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記分岐間車線リンク作成手段は、前記各対象分岐からの距離比に応じて、前記車線間距離算出手段により算出された前記各対象分岐の周辺の車線間距離を重み付けして足し合わせることにより、前記各対象分岐間における車線間距離を算出し、算出した車線間距離を用いて前記各対象分岐間の車線リンクを作成することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記車線情報取得手段により取得された車線情報または前記分岐間車線リンク作成手段により作成された車線リンクを用いて、前記位置推定手段により推定された前記移動体の位置に対応する車線リンク候補点を特定する車線マップマッチング手段と、
目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記車線マップマッチング手段により特定された車線リンク候補点を用いて、前記経路において前記移動体が走行すべき誘導車線を特定する経路誘導手段と、
前記経路誘導手段により特定された誘導車線を報知するための画像および音声のいずれか少なくとも一方を出力する画面音声出力手段とをさらに備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
分岐周辺の車線を表す車線リンクに関する車線情報を記憶する車線情報記憶手段と、
前記車線情報記憶手段により記憶されている車線情報を用いて、分岐間の車線を表す車線リンクを作成する分岐間車線リンク作成手段と、
前記車線情報記憶手段により記憶されている車線情報を用いて前記分岐周辺の車線を表す車線リンクを描画すると共に、前記分岐間車線リンク作成手段により作成された前記分岐間の車線を表す車線リンクを描画する描画手段とを備え、
前記描画手段は、前記分岐周辺の車線を表す車線リンクの道路幅と前記分岐間の車線を表す車線リンクの道路幅とを連続して描画することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−108837(P2013−108837A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253834(P2011−253834)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】