説明

ニンジンの土寄せ装置

【課題】ニンジンの根を切断することなく、小さい温室内で、極めて能率よく、しかも快適な環境と楽な姿勢でニンジンに土寄せする。
【解決手段】ニンジンの土寄せ装置は、走行モーター6及び走行モーター6を駆動する電池7とを備える本体1と、この本体1の両側に設けている一対の無限軌道機構2と、この無限軌道機構2で本体1を移動させて、田畑に複数列に植え付けしているニンジン列の間を移動して、ニンジン列の間の土を両側のニンジンCに土寄せする土寄せ具3と、無限軌道機構2で移動される本体1に設けているグリップ4と、電池7と走行モーター6との間に接続しているスイッチ5とを備える。この土寄せ装置は、無限軌道機構2がニンジン列の間を移動して、土寄せ具3をニンジン列の間に移動させ、土寄せ具3が両側のニンジンCに土寄せする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田畑に植え付けしているニンジン上端の緑変を防止するために、土寄せする土寄せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンジンは、本葉が5〜6枚となるまで成長したときに土寄せして、ニンジンが土から突出しない状態で成長させる必要がある。ニンジンが土から突出すると、光合成して緑色に変色して商品価値が著しく低下するからである。このため、従来は、ニンジンが特定の大きさになるまで成長すると、土寄せして土から突出しないようにして生育している。土寄せに使用される鍬は開発されている(特許文献1参照)。しかしながら、専用の鍬を使用しても、土寄せ作業は極めて多労働である。また、その作業は、相当に重労働であって、楽な姿勢で土寄せできない欠点がある。それは、ニンジンが、立った姿勢では作業できない小さい温室で栽培されるために、無理な姿勢でしか作業できないからである。
【0003】
この欠点は、エンジン等で自走しながら土寄せする装置で解消できる。この種の装置として、畝を作るための土寄せ装置が開発されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−135001号公報
【特許文献2】特開平10−309101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンで自走する土寄せ装置は、鍬に比べて楽に土寄せできる。ただ、畝を作る土寄せ装置でニンジンの土寄せはできない。それは、畝を作るための土寄せと、ニンジンが地面から突出するのを防止する土寄せとは、土寄せする状態が極めて異なるからである。ニンジンの土寄せは、互いに接近して複数列に並べて植え付けしているニンジン列の間に、ニンジンの根を切断しないように、葉をかき分けて土寄せ具を正確に移動させて、少量の土をニンジンに向かって正確に土寄せする必要がある。
【0005】
また、畝の土寄せ装置が大きいことも、ニンジンの土寄せに使用できない理由のひとつである。ニンジンを栽培する温室は小さく、エンジンで自走する大きな土寄せ装置を搬入できない。仮に、小さい温室内に移動できる小型のエンジン式の土寄せ装置を開発したとしても、温室内にエンジンの排気ガスが充満して使用できない。
【0006】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、ニンジンの根を切断することなく、小さい温室内で、極めて能率よく、しかも快適な環境と楽な姿勢でニンジンに土寄せできるニンジンの土寄せ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のニンジンの土寄せ装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
ニンジンの土寄せ装置は、走行モーター6及び走行モーター6を駆動する電池7とを備える本体1と、この本体1の両側に設けている一対の無限軌道機構2と、この無限軌道機構2で本体1を移動させて、田畑に複数列に植え付けしているニンジン列の間を移動して、ニンジン列の間の土を両側のニンジンCに土寄せする土寄せ具3と、無限軌道機構2で移動される本体1に設けているグリップ4と、電池7と走行モーター6との間に接続しているスイッチ5とを備える。この土寄せ装置は、無限軌道機構2がニンジン列の間を移動して、土寄せ具3をニンジン列の間に移動させ、土寄せ具3が両側のニンジンCに土寄せする。
【0008】
グリップ4は、本体1の後方に配置している後方グリップ4Aと、本体1の上方に配置している前方グリップ4Bとを備えることができる。後方グリップ4Aは、前方グリップ4Bよりも下方に位置させることができる。また、後方グリップ4Aは無限軌道機構2の進行方向に延びる姿勢で、前方グリップ4Bは進行方向に対して左右方向に延びる姿勢で本体1に連結することができる。スイッチ5は、グリップ4に設けることができる。
【0009】
無限軌道機構2は、互いに平行に対向して連結している一対の固定プレート24と、この固定プレート24の間にあって固定プレート24の下部に水平な方向に離して配設している複数の従動輪25と、この従動輪25よりも上方にあって固定プレート24の間に配設している駆動スプロケット26と、駆動スプロケット26と従動輪25とにかけられて、駆動スプロケット26で固定プレート24の外周縁に沿って移動するベルトとを備えることができる。
【0010】
土寄せ具3は、両面に土寄せ面30aを設けることができる。両側の土寄せ面30aは、前端を尖鋭な形状とするV字状として、垂直断面においては上方の幅を下方の幅よりも狭くする方向に傾斜させることができる。土寄せ具3の両面に設けている土寄せ面30aは、下端縁を水平面とすることができる。さらに、土寄せ具3は金属プレーとして、両面に設けている土寄せ面30aの後端部に、外側に折曲された折曲片30Aを設けることができる。折曲片30Aは、垂直断面において上方の幅を下方の幅よりも広くなる方向に傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のニンジンの土寄せ装置は、ニンジンの根を切断することなく、小さい温室内で、極めて能率よく、しかも快適な環境と楽な姿勢でニンジンに土寄せできる特長がある。それは、本発明のニンジンの土寄せ装置が、走行モーターと電池とを備える本体の両側に設けた一対の無限軌道機構で本体を移動させており、田畑に複数列に植え付けしているニンジン列の間を移動する土寄せ具でニンジン列の間の土を両側のニンジンに土寄せするからである。この構造の土寄せ装置は、互いに接近して複数列に並べて植え付けしているニンジン列の間に、土寄せ具を正確に移動できるので、ニンジンの根を切断することなく、またニンジンの葉をかき分けながら土寄せ具を理想的に移動させて、適量の土をニンジンに向かって確実に土寄せできる。したがって、本発明の土寄せ装置は、従来の畝を作る土寄せ装置では実現できないニンジンの土寄せを実現してニンジンが地面から突出するのを有効に防止できる。
【0012】
さらに、本発明のニンジンの土寄せ装置は、走行モーターを電池で駆動して本体を走行させるので、ニンジンを栽培する小さな温室内であっても、エンジン式の装置のように排気ガスを充満させることなく、作業者の健康や環境の面からも安心して使用できると共に、騒音を極減して静かに運転できる。したがって、この土寄せ装置は、快適な使用環境を実現できる。
【0013】
さらに、本発明のニンジンの土寄せ装置は、無限軌道機構で移動される本体にグリップを設けているので、このグリップを握って土寄せ装置を楽に操作できる。とくに、本発明の請求項2の土寄せ装置は、グリップとして、本体の後方に配置している後方グリップと、本体の上方に配置している前方グリップとを備えているので、片方の手で後方グリップを、もう片方の手で前方グリップを握って、土寄せ装置を安定して操作できる。さらに、本発明の請求項3の土寄せ装置は、後方グリップを前方グリップよりも下方に位置させているので、体重を土寄せ装置で支える姿勢で、小さい温室内であっても楽に移動できる特長がある。さらにまた、本発明の請求項4の土寄せ装置は、後方グリップを進行方向に延びる姿勢とし、前方グリップを進行方向に対して左右方向に延びる姿勢として本体に連結しているので、前後の各グリップを両手で楽に握って、方向性よく安定して操作できる。さらにまた、本発明の請求項5の土寄せ装置は、グリップにスイッチを設けているので、グリップを握ったままの姿勢で、本体の運転を操作できる。
【0014】
さらに、本発明の請求項7のニンジンの土寄せ装置は、土寄せ具の両面に土寄せ面を設けて、前端を尖鋭な形状とするV字状とすると共に、垂直断面における上方の幅を下方の幅よりも狭くする方向に傾斜させているので、土寄せ具をニンジン列の間でスムーズに移動させながら、この部分の土を土寄せ面に沿って効率よく左右に移行させて土寄せできる。さらに、本発明の請求項8の土寄せ装置は、土寄せ具の両面に設けている土寄せ面の下端縁を水平面としているので、土寄せ具がニンジン列の間を掘り進む深さを一定としながら、安定してニンジンに土寄せできる。さらにまた、本発明の請求項9の土寄せ装置は、土寄せ具の両面に設けている土寄せ面の後端部に、外側に折曲された折曲片を設けており、この折曲片を、垂直断面における上方の幅が下方の幅よりも広くなる方向に傾斜させているので、土寄せ面に沿って移行した土を確実にニンジンの上面に土寄せできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのニンジンの土寄せ装置を例示するものであって、本発明はニンジンの土寄せ装置を以下のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1ないし図7に示すニンジンの土寄せ装置は、走行モーター6と電池7とを備える本体1と、この本体1の両側に設けている一対の無限軌道機構2と、この無限軌道機構2で本体1を移動させて、田畑に複数列に植え付けしているニンジン列の間を移動して、ニンジン列の間の土を両側のニンジンに土寄せする土寄せ具3と、無限軌道機構2で移動される本体1に設けているグリップ4と、電池7と走行モーター6との間に接続しているスイッチ5とを備える。
【0018】
本体1は、充電できる二次電池7と、この二次電池7にスイッチ5を介して接続している走行モーター6とをフレーム8に固定している。さらに、本体1は、走行モーター6の回転を減速して無限軌道機構2を駆動する減速機構(図示せず)をフレーム8に内蔵している。図の土寄せ装置は、フレーム8の上部に走行モーター6を固定している。走行モーター6は、プーリー9とベルト10を介して減速機構の減速歯車に連結している。図のフレーム8は、2枚の金属板を互いに平行な姿勢で垂直に配設して、金属板の間に減速歯車を内蔵している。2枚の金属板を回転できるように貫通して、無限軌道機構2の駆動軸11を両側に突出させている。この駆動軸11は、減速歯車とベルト10とプーリー9を介して走行モーター6に連結している。
【0019】
さらに、図に示す本体1は、フレーム8に後方グリップ4Aを固定している。後方グリップ4Aは、無限軌道機構2の進行方向に延びる姿勢、すなわち前後方向に延長して本体1に固定している。後方グリップ4Aの前方で、フレーム8の上面にスイッチ5を固定している。ここに配置されるスイッチ5は、後方グリップ4Aを掴む手で便利にオンオフに操作できる。
【0020】
また、図の本体1は、フレーム8の前方に、水平姿勢で左右に延びる連結ロッド12を固定している。図の土寄せ装置は、連結ロッド12を伸縮ロッドとして、その両端に無限軌道機構2を連結している。伸縮ロッドは、図8に示すように、外筒12Aに内筒12Bを挿入して伸縮できる構造としている。外筒12Aはフレーム8に連結して、この外筒12Aに内筒12Bを伸縮できるように連結している。外筒12Aと内筒12Bの連結部分において、外筒12Aは、外側にナット13を固定している。このナット13に止ネジ14をねじ込んでいる。止ネジ14は、外筒12Aを半径方向に貫通して、先端を内筒12Bの表面に押圧して、連結ロッド12が伸縮しないように外筒12Aと内筒12Bを連結する。止ネジ14は上端にツマミ15を固定している。この伸縮ロッドは、ツマミ15で止ネジ14を緩めて伸縮される。伸縮ロッドが伸縮して、その両端に連結している無限軌道機構2の間隔が調整される。
【0021】
また、本体1は、土寄せ具3を連結するための上下ロッド16を備える。この上下ロッド16の後端に土寄せ具3を連結している。上下ロッド16は、垂直面内で傾動できるように、前端を回転ロッド36を介してフレーム8に連結している。上下ロッド16は、前端を中心に垂直面内で傾動させて、後端部を上下に移動させる。上下ロッド16を所定の高さに調整して固定するために、ナット18とネジ棒19からなる調整機構17を設けている。ナット18は、上下ロッド16に固定している。図のナット18は、上下ロッド16から横方向に延びるロッドで、先端に雌ネジを設けたものである。ネジ棒19は、回転できるが上下に移動しないように、フレーム8の側面に連結した回転軸受20に連結している。回転軸受20は、回転できるが軸方向には移動しないようにフレーム8に連結している。回転軸受20は、ネジ棒19を回転できるように挿通する貫通孔を直径方向に貫通して設けている。ネジ棒19は、回転軸受20の貫通孔に上下方向に挿通して、下端に雄ネジを設けて、上端にツマミ21を固定している。ネジ棒19は、回転軸受20に対して上下に移動しないように、回転軸受20の上下に鍔22を設けている。この上下ロッド16は、ツマミ21でネジ棒19を回転して、上下ロッド16の後端を上下に移動できる。上下ロッド16を上下に移動して、ここに連結する土寄せ具3を上下に移動できる。土寄せ具3の上下位置は、ニンジンCの間を通過させる深さを特定する。上下ロッド16を降下させると、土寄せ具3はニンジンCの間を深く移動する。このため、ニンジンCに多量の土が寄せられる。
【0022】
本体1は、カバー23を固定している。カバー23は、プラスチックや金属板を成形して製作される。カバー23は、連結ロッド12に開閉できるように連結している。カバー23の上には前方グリップ4Bを固定している。前方グリップ4Bは、本体1の上方に配置されて、後方グリップ4Aよりも上方に配置される。いいかえると、後方グリップ4Aを前方グリップ4Bよりも下方に配置している。前方グリップ4Bは、進行方向に対して左右方向に延びる姿勢で本体1に固定している。このように、前方グリップ4Bを左右方向に、後方グリップ4Aを前後方向に延びる姿勢とし、さらに前方グリップ4Bを後方グリップ4Aよりも上方に配置する土寄せ装置は、図7に示すように、右手で後方グリップ4Aを、左手で前方グリップ4Bを握り、体重を土寄せ装置で支える姿勢で、小さい温室内を楽に移動できる。
【0023】
無限軌道機構2は、図1ないし図4に示すように、互いに平行に対向して連結している一対の固定プレート24と、この固定プレート24の間にあって固定プレート24の下部に水平な方向に離して配設している複数の従動輪25と、この従動輪25よりも上方にあって固定プレート24の間に配設している駆動スプロケット26と、駆動スプロケット26と従動輪25とにかけられて、駆動スプロケット26で固定プレート24の外周縁に沿って移動するベルト27とを備える。
【0024】
固定プレート24は金属板で、下端縁を水平とし、上縁を後方に向かって上り勾配に傾斜する形状としている。固定プレート24は、スペーサーボルト(図示せず)を介して、35mmの所定の間隔に連結している。一対の固定プレート24は、垂直姿勢で進行方向を向くように、連結ロッド12の両端に固定している。連結ロッド12は、本体1の両側に配置している無限軌道機構2の内側の固定プレート24に固定している。
【0025】
複数の従動輪25は、固定プレート24の前後と中間に回転できるように、また、下側の接線が水平となる位置にベアリングと軸を介して固定プレート24に連結している。固定プレート24の両側の従動輪25は、中間点に設けている従動輪25よりも大きくしている。これ等の従動輪25は、ベルト27の内側に設けているガイド溝(図示せず)に案内されて、ベルト27を固定プレート24の下縁に沿って移動させる。
【0026】
駆動スプロケット26は、本体1の駆動軸11に、スプライン又はキーを介して、駆動軸11に対して回転はしないが軸方向には移動できるように連結している。駆動スプロケット26は、外周にベルトを駆動する歯を一定の間隔で突出して設けている。駆動スプロケット26は、歯でベルト27を駆動する。
【0027】
ベルト27は、複数のベルト片を折曲できるように連結している。このベルト27は、内側にガイド溝を突出させている。ガイド溝は、底の形状を、駆動スプロケット26の歯に噛み合う形状としている。駆動スプロケット26は、ガイド溝に案内され、歯が底に噛み合ってベルト27を駆動する。従動輪25は、ガイド溝に案内されて、ベルト27を固定プレート24の外周に沿って移動させる。
【0028】
土寄せ具3は、上下ロッド16に連結している水平ロッド28と、この水平ロッド28にアーム29を介して連結している土寄せプレート30とを備える。
【0029】
水平ロッド28は金属ロッドで、連結具31を介して上下ロッド16に連結される。連結具31は、図9に示すように、水平ロッド28に固定されて、上下ロッド16を挿通する連結穴31aを設けている。この連結具31は、連結穴31aの下方をスリット31bで両側の分岐片31A、31Bに分割している。分岐片31A、31Bは、挟着ネジ32で挟着されて、連結穴31aに挿通している上下ロッド16を挟着する。挟着ネジ32は、先端に雄ネジを設けて、後端にレバー33を固定している。この挟着ネジ32は、一方の分岐片31Aのばか穴から、他方の分岐片31Bの雌ネジ穴に先端をねじ込んで、分岐片を挟着する。この連結具31は、挟着ネジ32を緩めて上下ロッド16に脱着でき、挟着ネジ32を締め付けて、上下ロッド16に連結できる。
【0030】
水平ロッド28には、アーム29を介して複数の土寄せプレート30を連結している。水平ロッド28には、好ましくは4〜5組の土寄せプレート30を連結する。アーム29は、一端を土寄せプレート30に連結して、他端を水平ロッド28に連結している。図のアーム29は、後端を土寄せプレート30の先端縁の内側に固定し、他端を連結筒34を介して水平ロッド28に連結している。さらに、図のアーム29は、土寄せプレート30の先端縁から上方に延長され、上部で湾曲されて水平ロッド28に連結している。この形状のアーム29は、ニンジン列の間を移動して、ニンジンCの葉に損傷を与えないで、スムーズに葉の間を通過する。
【0031】
連結筒34は、水平ロッド28を挿通できる中心穴を設けている。中心穴の内形は、水平ロッド28の外形よりもわずかに大きく、水平ロッド28に沿って軸方向に移動できるようにしている。軸方向に移動できる連結筒34は、土寄せプレート30の間隔を調整する。水平ロッド28は、横断面形状を非円形としている。非円形の水平ロッド28は、たとえば、上面に水平面を設け、あるいは上下に水平面を設けた形状、あるいは多角形としている。中心穴は、水平ロッド28の外形と同じ形状としている。この連結筒34は、水平ロッド28に沿って移動できるが、回転しないので複数の土寄せプレート30を同一水平面に連結できる。連結筒34は、水平ロッド28の所定の位置に固定するために、半径方向に調整ネジ35の雌ネジ穴を設けている。この雌ネジ穴に調整ネジ35をねじ込んで、水平ロッド28は所定の位置に固定される。
【0032】
土寄せプレート30は、ステンレス等の金属板で製作される。ただし、土寄せプレートは、ステンレス以外の金属板、あるいはプラスチック板で製作することもできる。また、必ずしも板状とする必要はなく、プラスチックを成形し、あるいは金属を鋳造して製造することもできる。
【0033】
図の土寄せプレート30は、2枚の金属板を先端で連結して製作している。土寄せプレート30は、先端で折曲して製作することもできる。土寄せプレート30は、両面を土寄せ面30aとしている。図10ないし図15は、土寄せプレート30の平面図、側面図、及び各部分の垂直断面図を示している。これ等の図に示す土寄せプレート30は、両側の土寄せ面30aの形状を、前端を尖鋭な形状とするV字状とし、垂直断面においては上方の幅を下方の幅よりも狭くする方向に傾斜させている。土寄せ面30aの後端部には、外側に折曲された折曲片30Aを設けている。折曲片30Aは、垂直断面において上方の幅が下方の幅よりも広くなる方向に傾斜させている。さらに、土寄せプレート30は、図3と11の側面図に示すように、下端縁を水平面として、土寄せ面30aの下端縁を水平面としている。
【0034】
土寄せプレート30は、好ましくは、土寄せ面30aの上下幅を60mm、先端の角度を30〜50度、前後方向の長さを170mm、両側の土寄せ面30aがなす角度を70度、両側の折曲片30Aのなす角度を40度、折曲片30Aの外側幅を80〜130mmとして、理想的な状態でニンジンCに土寄せできる。ただ、本発明は、土寄せプレート30の形状と寸法を以上の形状と大きさに特定するのでは決してない。土寄せ具3は、ニンジン列の間を移動して、両側のニンジンCに向かって土寄せできる全ての形状と寸法とすることができる。
【0035】
以上の土寄せ装置は、以下のようにして使用する。
(1) 複数列にニンジンCを並べて植え付けしている畑の端に、土寄せ装置を配置する。
(2) 図4に示すように、無限軌道機構2がニンジン列の間に位置するように、伸縮ロッドである連結ロッド12を伸縮させて、一対の無限軌道機構2の間隔を調整する。連結ロッド12は、ツマミ15で止ネジ14を緩めて伸縮し、両端の無限軌道機構2の間隔を調整する。
(3) 水平ロッド28に連結している複数の土寄せプレート30の連結位置を調整して、各土寄せプレート30が隣接するニンジン列の間に位置するように配置する。各土寄せプレート30の連結位置は、調整ネジ35を緩めて、連結筒34を水平ロッド28に沿って移動させて調整する。
(4) 調整機構17を操作して土寄せ具3の上下位置を調整する。調整機構17は、ツマミ21を回して上下ロッド16を上下させて、水平ロッド28の位置を上下させる。水平ロッド28を降下させると、土寄せプレート30が土中に侵入する深さが深くなり、ニンジンCに土寄せする土の量が多くなる。反対に、水平ロッド28を上昇させると、土寄せプレート30が土中に侵入する深さが浅くなり、ニンジンCに土寄せする土の量が少なくなる。土寄せ具3の上下位置、すなわち土寄せプレート30を土中に侵入させる深さは、ニンジンCが土の表面から突出する突出量と土寄せプレート30の間隔とを考慮して最適な深さとなるように調整する。
(5) 図7に示すように、右手で後方グリップ4Aを、左手で前方グリップ4Bを握り、後方グリップ4Aの前方にあるスイッチをオンにする。走行モーター6が始動し、無限軌道機構2が駆動されて、本体1が前進する。
(6) 前進する本体1は、ニンジン列の間に配置された土寄せプレート30をニンジン列に沿って移動させる。ニンジン列の間を移動する土寄せプレート30は、図4ないし図6に示すように、土寄せ面30aに当接する土を左右に移動させてニンジンCの上面に土寄せする。
(7) 土寄せ装置をニンジン列に沿って移動させて、ニンジン列の間に土寄せプレート30を通過させ、土寄せプレート30の両側のニンジンCに次々と土寄せする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例にかかるニンジンの土寄せ装置の斜視図である。
【図2】図1に示す土寄せ装置の本体のカバーを外した斜視図である。
【図3】図2に示す土寄せ装置の概略側面図である。
【図4】図1に示す土寄せ装置が土寄せする状態を示す平面図である。
【図5】図1に示す土寄せ装置が土寄せする状態を示す垂直縦断面図である。
【図6】図1に示す土寄せ装置の土寄せ具が土寄せする状態を示す垂直横断面図である。
【図7】図1に示す土寄せ装置を操作する状態を示す概略斜視図である。
【図8】連結ロッドの連結部を示す正面図である。
【図9】上下ロッドと水平ロッドの連結構造を示す正面図である。
【図10】土寄せプレートの平面図である。
【図11】図10に示す土寄せプレートの側面図である。
【図12】図10と図11に示す土寄せプレートのA−A線断面図である。
【図13】図10と図11に示す土寄せプレートのB−B線断面図である。
【図14】図10と図11に示す土寄せプレートのC−C線断面図である。
【図15】図10と図11に示す土寄せプレートのD−D線断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…本体
2…無限軌道機構
3…土寄せ具
4…グリップ 4A…後方グリップ
4B…前方グリップ
5…スイッチ
6…走行モーター
7…電池
8…フレーム
9…プーリー
10…ベルト
11…駆動軸
12…連結ロッド 12A…外筒
12B…内筒
13…ナット
14…止ネジ
15…ツマミ
16…上下ロッド
17…調整機構
18…ナット
19…ネジ棒
20…回転軸受
21…ツマミ
22…鍔
23…カバー
24…固定プレート
25…従動輪
26…駆動スプロケット
27…ベルト
28…水平ロッド
29…アーム
30…土寄せプレート 30A…折曲片
30a…土寄せ面
31…連結具 31A…分岐片
31B…分岐片
31a…連結穴
31b…スリット
32…挟着ネジ
33…レバー
34…連結筒
35…調整ネジ
36…回転ロッド
C…ニンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モーター(6)及び走行モーター(6)を駆動する電池(7)とを備える本体(1)と、この本体(1)の両側に設けている一対の無限軌道機構(2)と、この無限軌道機構(2)で本体(1)を移動させて、田畑に複数列に植え付けしているニンジン列の間を移動して、ニンジン列の間の土を両側のニンジン(C)に土寄せする土寄せ具(3)と、無限軌道機構(2)で移動される本体(1)に設けているグリップ(4)と、電池(7)と走行モーター(6)との間に接続しているスイッチ(5)とを備え、
無限軌道機構(2)がニンジン列の間を移動して、土寄せ具(3)をニンジン列の間に移動させ、土寄せ具(3)が両側のニンジン(C)に土寄せするようにしてなるニンジンの土寄せ装置。
【請求項2】
グリップ(4)が、本体(1)の後方に配置している後方グリップ(4A)と、本体(1)の上方に配置している前方グリップ(4B)とを備える請求項1に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項3】
後方グリップ(4A)が前方グリップ(4B)よりも下方に位置する請求項2に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項4】
後方グリップ(4A)が、無限軌道機構(2)の進行方向に延びる姿勢で、前方グリップ(4B)が進行方向に対して左右方向に延びる姿勢で本体(1)に連結している請求項1に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項5】
グリップ(4)にスイッチ(5)を設けている請求項1に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項6】
無限軌道機構(2)が、互いに平行に対向して連結している一対の固定プレート(24)と、この固定プレート(24)の間にあって固定プレート(24)の下部に水平な方向に離して配設している複数の従動輪(25)と、この従動輪(25)よりも上方にあって固定プレート(24)の間に配設している駆動スプロケット(26)と、駆動スプロケット(26)と従動輪(25)とにかけられて、駆動スプロケット(26)で固定プレート(24)の外周縁に沿って移動するベルト(27)とを備える請求項1に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項7】
土寄せ具(3)が、両面に土寄せ面(30a)を設けており、両側の土寄せ面(30a)は、前端を尖鋭な形状とするV字状で、垂直断面においては上方の幅を下方の幅よりも狭くする方向に傾斜している請求項1に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項8】
土寄せ具(3)の両面に設けている土寄せ面(30a)が、下端縁を水平面としている請求項7に記載されるニンジンの土寄せ装置。
【請求項9】
土寄せ具(3)が金属プレートで、両面に設けている土寄せ面(30a)の後端部に、外側に折曲された折曲片(30A)を設けており、折曲片(30A)は垂直断面において上方の幅が下方の幅よりも広くなる方向に傾斜している請求項7に記載されるニンジンの土寄せ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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