説明

ノンリークショックレス電磁比例制御弁

【課題】作動油温の変化によるショック緩和性能のばらつきを防止し、加工コストを低減し、電磁弁の比例制御と閉弁時のノンリーク状態とを求める油圧回路を安く提供する。
【解決手段】プランジャ7の端面に形成された、裁頭円錐状封止面7hを持つ凸部7gと、流入室1cの流出口2の入口に形成された、前記裁頭円錐状封止面7hと分離可能に液密に嵌合する裁頭円錐状座面1dと、を具え、前記裁頭円錐状座面1dとの嵌合状態で前記裁頭円錐状封止面7hの基部が、前記裁頭円錐状座面1dから前記流入室1c内に露出することを特徴とするノンリークショックレス電磁比例制御弁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノンリーク型のショックレス電磁弁に関し、特には、比例制御を可能にしたショックレス電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のノンリーク型のショックレス電磁弁としては、非特許文献1に記載しているSVシリーズが知られており、この電磁弁は、図5に断面を示すように、浅い円形の凹部1aが形成されるとともにその凹部1aの中央部に裁頭円錐状の突出部1bが形成され、その突出部1bの中央に流出口2、その突出部1bの側方に流入口3が設けられた本体1を具えるとともに、その凹部1aに液密に螺着固定されて凹部1a内に流入室1cを画成する蓋部材としての円盤状の基部4と、その基部4の中央部の貫通孔に一端部を液密に固定されたスリーブ5と、そのスリーブ5の他端部に液密に固定された固定軸6と、スリーブ5内に僅かな隙間をあけて摺動自在に嵌挿されたプランジャ7と、そのプランジャ7と固定軸6との間に介挿されてそのプランジャ7を流入室1cへ向けて常時附勢するスプリング8とを有するプランジャアッセンブリ9を具え、さらに、そのスリーブ5および固定軸6に挿通された、磁束を集めるフラックスプレート10および、コイル11を巻かれたボビン12と、それらフラックスプレート10とボビン12とに被せられてボルト14で固定軸6に締着固定されたハウジング13とを具えるものである。
【0003】
ここで、上記電磁弁の一部を図6に拡大して模式的に示すように、プランジャ7の先端部7aには流出口2内に入り込む円錐状の突起7bが設けられており、また固定軸6の基端部6aとプランジャ7の後端部7cとの間には流入室1cからスリーブ5とプランジャ7との隙間を通って、粘性を持つ作動油が入りこんでいる。この構成により、コイル11への通電によってプランジャ7を磁力で流出口2から後退させ、またコイル11への通電の遮断によってプランジャ7をスプリング8で流出口2へ向けて進出させると、プランジャ7の進退移動に伴って円錐状の突起7bが流出口2を徐々に開閉するのと併せて、固定軸6の基端部6aとプランジャ7の後端部7cとの間に入った作動油がスリーブ5とプランジャ7との隙間を通って流入室1cに出入りすることで、この電磁弁の開閉のショックを緩和する。そしてプランジャ7は進出限位置では、流入口3から加わる作動油の油圧の、プランジャ7の先端部7aの流入室1c側受圧面と後端部7cの固定軸6側受圧面との面積差による差圧で、流出口2の周囲の突出部1bの平坦な先端面に突起7bの周囲の平坦な下端面を液密に押し付けられて流出口2を完全に閉止しているので、上記電磁弁は閉弁時には、作動油の漏れが生じないノンリーク状態となる。
【0004】
また、従来のショックレス電磁弁としては、例えばスプールタイプのものも一般に知られており、この電磁弁は、コイルの磁力で進退移動するプランジャで本体に対しスプールを摺動させてそのスプールの外周面で弁の開閉を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社ファインシンター2005年1月発行のカタログNo.KC−0501「TSM油圧機器シリーズ」中第11〜14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記前者の従来のノンリークショックレス電磁弁は、ショック緩和性能を得るのに円錐状の突起7bだけでなく作動油の粘性にも依存しているため、作動油の油温が変化するとプランジャ7の作動速度が変化して、ショック緩和性能にバラツキが生ずるという問題があった。また、作動油がスリーブ5とプランジャ7との隙間の微小流路を通って出入りするので、それらの部品に高い加工精度が必要となり、加工コストが嵩むという問題もあった。
【0007】
一方、上記後者の従来のショックレス電磁弁は、スプールタイプであるため、本体とスプールとの隙間から作動油の漏れが生じて、構造的にノンリーク状態にならないという問題があった。そしてノンリーク状態を求めようとすると、シャットオフバルブと組み合わせる必要があって油圧回路の構成にコストが嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、流出口および流入口が開口する凹部を有する本体と、前記凹部に液密に固定されてその凹部内に流入室を画成する蓋部材と、前記蓋部材の貫通孔に一端部を液密に固定されたスリーブと、前記スリーブの他端部に液密に固定された固定軸と、前記スリーブ内に摺動自在に嵌挿されたプランジャと、前記プランジャと前記固定軸との間に介挿されてそのプランジャを前記流入室へ向けて常時附勢するスプリングと、前記スリーブおよび前記固定軸の周囲に嵌装されたコイルと、前記蓋部材と前記コイルとの間に介挿されて前記コイルの磁束を前記プランジャに向かわせるフラックスプレートと、を具える電磁弁において、前記プランジャの、前記流入室に向く端面に形成された、裁頭円錐状封止面を持つ凸部と、前記流入室の前記流出口の入口に形成された、前記裁頭円錐状封止面と分離可能に液密に嵌合する裁頭円錐状座面と、を具え、前記裁頭円錐状封止面と前記裁頭円錐状座面との嵌合状態で、その裁頭円錐状封止面の基部が、前記裁頭円錐状座面から前記流入室内に露出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁にあっては、流入口から流入室内およびプランジャと固定軸との間に作動油が流入した状態で、コイルへの通電開始とその通電量の増加とによってプランジャをスプリングに抗して磁力で流出口から徐々に後退させ、またコイルへの通電量の減少によってプランジャを磁力に抗してまたは通電遮断によって磁力に抗することなくスプリングで流出口へ向けて徐々に進出させると、プランジャの進退移動に伴ってそのプランジャの凸部の裁頭円錐状封止面と流出口の入口の裁頭円錐状座面との間の隙間が徐々に開閉することで、この電磁弁の開閉のショックを緩和する。またそのプランジャの進退移動に伴って、固定軸とプランジャとの間に入った作動油がスリーブとプランジャとの隙間を通って出入りする。そしてプランジャは進出限位置では、流入口から加わる作動油の油圧の、プランジャの流入室側受圧面と固定軸側受圧面との面積差による差圧と、スプリングの押圧力とで、その裁頭円錐状封止面を裁頭円錐状座面に液密に押し付けられて流出口を完全に閉止しているので、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁は閉弁時には作動油の漏れが生じないノンリーク状態となる。しかも裁頭円錐状封止面と裁頭円錐状座面とが嵌合した閉弁状態で、その裁頭円錐状封止面の基部が裁頭円錐状座面から流入室内に露出するので、プランジャの流入室側受圧面はその露出した基部まで及び、プランジャの流入室側受圧面と固定軸側受圧面との面積差が僅かなものとなる。
【0010】
従ってこの発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、コイルの磁力の変化とスプリングとによって流出口を徐々に開閉するとともに、開弁時にコイルの磁力に対抗するプランジャの流入室側受圧面と固定軸側受圧面との差圧による押圧力をそれらの受圧面の僅かな面積差によってスプリングの押圧力より小さくしてショック緩和性能を得ているので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのを防止でき、またスリーブとプランジャとの加工精度を下げて加工コストを低減することができ、しかもこの制御弁単独で閉弁時には作動油の漏れが生じないノンリーク状態となるので、電磁弁の比例制御と閉弁時のノンリーク状態とを求める場合に、シャットオフバルブと組み合わせる必要をなくして油圧回路の構成コストを安くすることができる。
【0011】
なお、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁においては、前記プランジャには、そのプランジャと前記固定軸との間の隙間と、前記流入室とを連通させる油路が形成されていると好ましい。このようにすれば、プランジャの進退移動の際に作動油が、プランジャと固定軸との間の隙間と流入室との間で容易に流動できるので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのをより有効に防止することができる。
【0012】
また、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁においては、前記固定軸には、前記スプリングの予加重を調節する調節ネジが液密に貫挿されて螺着されていると好ましい。このようにすれば、電磁比例制御弁を分解しなくても、作動油の油圧に合わせてスプリングの予加重を容易に調節することができる。
【0013】
さらに、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁においては、前記プランジャと前記固定軸との互いに対向する端部は、互いに嵌合する向きでそれぞれ裁頭円錐面を形成されていると好ましい。このようにすれば、プランジャの進退移動による固定軸との距離の変化を小さくし得て、磁力によるプランジャの吸引力の制御を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁の一実施例を示す断面図である。
【図2】上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁の一部を拡大して模式的に示す説明図である。
【図3】上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁を用いた油圧回路の一例を示す回路図である。
【図4】図3に示す油圧回路で油圧シリンダを作動させる際の上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁の制御例を示す説明図である。
【図5】従来のノンリークショックレス電磁弁の一例を示す断面図である。
【図6】上記従来の電磁弁の一部を拡大して模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁の一実施例を示す断面図、図2は、上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁の一部を拡大して模式的に示す説明図、図3は、上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁を用いた油圧回路の一例を示す回路図、そして図4は、図3に示す油圧回路で油圧シリンダを作動させる際の上記実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁の制御例を示す説明図であり、図中、図5,6に示す従来例と同様の部分は、それと同一の符号にて示す。
【0016】
この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、図1に断面を示すように、浅い円形の凹部1aが形成されるとともにその凹部1aの中央部に裁頭円錐状の突出部1bが形成され、その突出部1bの中央に流出口2、その突出部1bの側方に流入口3が設けられた本体1を具えるとともに、その凹部1aに例えばOリングを介し液密に螺着固定されて凹部1a内に流入室1cを画成する蓋部材としての円盤状の基部4を有するプランジャアッセンブリ9を具え、このプランジャアッセンブリ9は、その基部4の他に、その基部4の中央部の貫通孔4aに一端部を液密に例えばロー付けで固定されたスリーブ5と、そのスリーブ5の他端部に液密に例えばロー付けで固定された磁性体製の固定軸6と、スリーブ5内に僅かな隙間をあけて摺動自在に嵌挿された磁性体製のプランジャ7と、そのプランジャ7にその中心軸線に沿って後端部(固定軸6側の端部)7cから前端部(流入室1c側の端部)7aへ向けて形成された凹部7d内に収容されたスプリング8と、固定軸6にその中心軸線に沿って形成された貫通孔6b内に例えばOリングを介し液密に貫挿されてその貫通孔6b内の雌ネジ6cに頭部の雄ネジ14aを螺着された調節ネジ14と、これもプランジャ7の凹部7d内に収容されてその調節ネジ14の先端とスプリング8との間に介挿された円板状のスペーサ15とを有している。
【0017】
これによりスプリング8は、固定軸6とプランジャ7との間に介挿されてプランジャ7を流入室1cへ向けて常時附勢し、調節ネジ14は、固定軸6の貫通孔6b内でねじ込み方向へ回転されるとスペーサ15を介してスプリング8を圧縮してスプリング8の予加重を増加させ、固定軸6の貫通孔6b内で戻り方向へ回転されるとスペーサ15を介してスプリング8を伸長させてスプリング8の予加重を減少させることで、流入口3に供給される作動油の油圧に応じた押圧力でプランジャ7を押圧するようにスプリング8の予加重を調節する。
【0018】
また、ここにおけるプランジャ7は、そのプランジャ7の外周面に形成されてプランジャ7の軸線方向へ延在する溝状の油路7eと、その油路7eと上記凹部7dとを連通させる連通路7fとを有しており、これにより、流入口3から流入室1c内に流入した作動油は、油路7eと連通路7fとを通って、プランジャ7の後端部7cの、固定軸6の基端部6aとの間の隙間およびプランジャ7の凹部7d内に入り込む。
【0019】
この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁はさらに、上記スリーブ5および固定軸6に挿通されて固定されたコイルアッセンブリ16を具えており、このコイルアッセンブリ16は例えば、磁束を集めるフラックスプレートの役目をする磁性体製の厚板をコ字状に折曲したハウジング13の両端板13a,13bの間に、コイル11を巻かれるとともにそのコイル11の周囲を樹脂19で密封された筒状のボビン12と、そのボビン12を図1では上側の端板13bに押し付けて固定する皿ばね18とを介挿してなり、そのハウジング13の両端板のうち図1では下側の端板13aには、スリーブ5および固定軸6が貫通可能な貫通孔13cが形成され、また上側の端板13bには、固定軸6の小径の先端部(プランジャ7側と逆側の端部)6dは貫通できるがスリーブ5および固定軸6の大径部は入れない内径の貫通孔13dが形成されている。
【0020】
これによりコイルアッセンブリ16は、上記スリーブ5および固定軸6をその先端部6d側から、先ずハウジング10の下側の端板13aの貫通孔13cに挿通し、次いで皿ばね18およびボビン12に挿通し、最後にその先端部6dを上側の端板13bの貫通孔13dに挿通して、固定軸6の大径部と小径の先端部6dとの間の段差部を上側の端板13bに当接させ、その先端部6dの周囲に設けた雄ネジ6eに螺合させたナット20で上側の端板13bを固定軸6に定着することで、プランジャアッセンブリ9に固定されている。
【0021】
そしてこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁では、図2にその一部を拡大して模式的に示すように、本体1の凹部1aに対向するプランジャ7の先端部の中央に凸部7gが設けられ、その凸部7gの先端部の周囲に裁頭円錐状封止面7hが形成され、また本体1の突出部1bの中央の流出口2の入口に裁頭円錐状座面1dが形成され、それら裁頭円錐状封止面7hと裁頭円錐状座面1dとは、流出口2へ向かうプランジャ7の進出移動によって液密に嵌合する。そしてその裁頭円錐状封止面7hと裁頭円錐状座面1dとの嵌合状態で、その裁頭円錐状封止面7hの、裁頭円錐状座面1dと嵌合している部分よりも半径方向外方に位置する基部は、裁頭円錐状座面1dからはみ出て流入室1c内に露出する。
【0022】
さらにこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁では、図1に示すように、プランジャ7の後端部7cと、その後端部7cと互いに対向する固定軸6の基端部6aとが、互いに嵌合する向きの裁頭円錐面すなわち、プランジャ7の後端部7cでは凸形状の裁頭円錐面、固定軸6の基端部6aでは凹形状の裁頭円錐面をそれぞれ形成されている。
【0023】
かかる構成のこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁にあっては、流入口3から流入室1c内並びにプランジャ7の後端部7cと固定軸6の基端部6aとの間およびプランジャ7の凹部7d内に作動油が流入した状態で、コイル11への通電開始とその通電量の増加とによってプランジャ7をスプリング8に抗して磁力で流出口2から徐々に後退させ、またコイル11への通電量の減少によってプランジャ7を磁力に抗してまたは通電遮断によって磁力に抗することなくスプリング8で流出口2へ向けて徐々に進出させると、プランジャ7の進退移動に伴って凸部7gの裁頭円錐状封止面7hと流出口2の入口の裁頭円錐状座面1dとの間の隙間が徐々に開閉することで、この電磁弁の開閉のショックを緩和する。またそのプランジャ7の進退移動に伴って、固定軸6の基端部6aとプランジャ7の後端部7cとの間およびプランジャ7の凹部7d内に入った作動油がスリーブ5とプランジャ7との隙間だけでなく、プランジャ7の外周面の油路7eおよびその油路7eと凹部7dとを連通させる連通路7fを通って出入りする。
【0024】
そしてプランジャ7は図1,2に示す進出限位置では、流入口3から加わる作動油の油圧の、プランジャ7の前端部7aの流入室1c側受圧面と後端部7cの固定軸6側受圧面との面積差による差圧と、スプリング8の押圧力とで、その裁頭円錐状封止面7hを裁頭円錐状座面1dに液密に押し付けられて流出口2を完全に閉止しているので、この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、閉弁時には作動油の漏れが生じないノンリーク状態となる。しかも裁頭円錐状封止面7hと裁頭円錐状座面1dとが嵌合した閉弁状態で、その裁頭円錐状封止面7hの基部が裁頭円錐状座面1dから外れ出て流入室1c内に露出しするので、プランジャ7の流入室1c側受圧面はその露出した基部まで及び、プランジャ7の流入室1c側受圧面と固定軸6側受圧面との面積差が僅かなものとなる。
【0025】
従ってこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、コイル11の磁力の変化とスプリング8とによって流出口2を徐々に開閉するとともに、開弁時にコイル11の磁力に対抗するプランジャ7の流入室1c側受圧面と固定軸6側受圧面との差圧による押圧力をそれらの受圧面の僅かな面積差によってスプリング8の押圧力より小さくしてショック緩和性能を得ているので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのを防止でき、またスリーブ5とプランジャ7との加工精度を下げて加工コストを低減することができ、しかもこの実施例の制御弁単独で閉弁時には作動油の漏れが生じないノンリーク状態となるので、電磁弁の比例制御と閉弁時のノンリーク状態とを求める場合に、シャットオフバルブと組み合わせる必要をなくして油圧回路の構成コストを安くすることができる。
【0026】
さらに、この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、プランジャ7には、そのプランジャ7の後端部7cと固定軸6の基端部6aとの間の隙間と流入室1cとを連通させる油路7fが形成されていることから、プランジャ7の進退移動の際に作動油が、プランジャ7の後端部7cと固定軸6の基端部6aと間の隙間と流入室1cとの間で容易に流動できるので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのを有効に防止することができる。加えて、その油路7fとプランジャ7の凹部7dとを連通させる連通路7fも形成されていることから、プランジャ7の進退移動の際に作動油が、プランジャ7の凹部7dと流入室1cとの間でも容易に流動できるので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのをより有効に防止することができる。
【0027】
さらに、この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、固定軸6に、スプリング8の予加重を調節する調節ネジ14が液密に貫挿されて螺着されているので、この実施例の電磁比例制御弁を分解しなくても、作動油の油圧に合わせてスプリング8の予加重を容易に調節することができる。
【0028】
そして、この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、プランジャ7と固定軸6との互いに対向する端部7c,6aは、互いに嵌合する向きでそれぞれ裁頭円錐面を形成されているので、プランジャ7の進退移動による固定軸6との距離の変化を小さくし得て、磁力によるプランジャ7の吸引力の制御を容易にすることができる。
【0029】
図3は、この実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁をソレノイドバルブSV1〜SV8として用いた油圧回路の一例を示すものであり、この油圧回路は、モータ駆動のポンプでリザーバから吸上げた作動油を、リザーバに連通するリリーフバルブで調圧して、ソレノイドバルブSV1,3,5,7の上記流入口3に供給し、ソレノイドバルブSV1,3,5,7の上記流出口2をそれぞれ、チェックバルブCV1〜4および絞り弁TV1,3,5,7を介して単動型油圧シリンダA〜Dに供給し、またそれら単動型油圧シリンダA〜D内の作動油を、ソレノイドバルブSV2,4,6,8の上記流入口3に供給し、ソレノイドバルブSV2,4,6,8の上記流出口2をそれぞれ、絞り弁TV2,4,6,8を介してリザーバに戻すものである。
【0030】
図4は、上記油圧回路の単動型油圧シリンダA〜Dを例えば歯科用椅子の椅子全体のリフトアップ・ダウン、背凭れのチルトアップ・ダウン、ヘッドレストのチルトアップ・ダウン、足乗せのチルトアップ・ダウンにそれぞれ用いた場合の、単動型油圧シリンダA,Bの制御例を示すものであり、例えば椅子全体のリフトアップの場合はポンプMPを一定時間ONにするとともに、その間にSV1をパルス幅変調PWMで全開まで徐々に開き、一定時間全開を維持して単動型油圧シリンダAを伸ばした後、全閉まで徐々に閉じて単動型油圧シリンダAの伸長状態を維持する。
【0031】
これによりこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、単動型油圧シリンダAの伸び始めと伸び終わりにショックを生じずに椅子全体をリフトアップしてそのリフトアップ状態に維持することができる。また例えば椅子全体のリフトダウンの場合はポンプMPをOFFに維持するとともに、その間にSV2をパルス幅変調PWMで全開まで徐々に開き、一定時間全開を維持して単動型油圧シリンダAを縮めた後、全閉まで徐々に閉じて単動型油圧シリンダAの短縮状態を維持する。これによりこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、単動型油圧シリンダAの縮み始めと縮み終わりにショックを生じずに椅子全体をリフトダウンしてそのリフトダウン状態に維持することができる。
【0032】
一方、例えば椅子の背凭れのチルトアップの場合はポンプMPを一定時間ONにするとともに、その間にSV3をパルス幅変調PWMで全開まで徐々に開き、一定時間全開を維持して単動型油圧シリンダBを伸ばした後、全閉まで徐々に閉じて単動型油圧シリンダBの伸長状態を維持する。これによりこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、単動型油圧シリンダBの伸び始めと伸び終わりにショックを生じずに椅子の背凭れをチルトアップしてそのチルトアップ状態に維持することができる。また例えば椅子の背凭れのチルトダウンの場合はポンプMPをOFFに維持するとともに、その間にSV4をパルス幅変調PWMで全開まで徐々に開き、一定時間全開を維持して単動型油圧シリンダBを縮めた後、全閉まで徐々に閉じて単動型油圧シリンダBの短縮状態を維持する。これによりこの実施例のノンリークショックレス電磁比例制御弁は、単動型油圧シリンダBの縮み始めと縮み終わりにショックを生じずに椅子の背凭れをチルトダウンしてそのチルトダウン状態に維持することができる。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更でき、例えば、プランジャ7の凸部7gの先端部の周囲に形成する裁頭円錐状封止面7hは、円錐面の一部であっても良い。また、本体1の流出口2の入口に形成する裁頭円錐状座面1dは、突出部1bでなく凹部1aの平坦な底面に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
かくしてこの発明のノンリークショックレス電磁比例制御弁によれば、コイルの磁力の変化とスプリングとによって流出口を徐々に開閉するとともに、開弁時にコイルの磁力に対抗するプランジャの流入室側受圧面と固定軸側受圧面との差圧による押圧力をそれらの受圧面の僅かな面積差によってスプリングの押圧力より小さくしてショック緩和性能を得ているので、作動油の油温の変化でショック緩和性能がばらつくのを防止でき、またスリーブとプランジャとの加工精度を下げて加工コストを低減することができ、しかもこの制御弁単独で閉弁時には作動油の漏れが生じないノンリーク状態となるので、電磁弁の比例制御と閉弁時のノンリーク状態とを求める場合に、シャットオフバルブと組み合わせる必要をなくして油圧回路の構成コストを安くすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 本体
1a 凹部
1b 突出部
1c 流入室
1d 裁頭円錐状座面
2 流出口
3 流入口
4 基部
4a 貫通孔
5 スリーブ
6 固定軸
6a 基端部
6b 貫通孔
6c 雌ネジ
6d 先端部
6e 雄ネジ
7 プランジャ
7a 先端部
7b 突起
7c 後端部
7d 凹部
7e 油路
7f 連通路
7g 凸部
7h 裁頭円錐状封止面
8 スプリング
9 プランジャアッセンブリ
10 フラックスプレート
11 コイル
12 ボビン
13 ハウジング
13a,13b 端板
13c,13d 貫通孔
14 調節ネジ
14a 雄ネジ
15 スペーサ
16 コイルアッセンブリ
18 皿ばね
19 樹脂
20 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口および流入口が開口する凹部を有する本体と、
前記凹部に液密に固定されてその凹部内に流入室を画成する蓋部材と、
前記蓋部材の貫通孔に一端部を液密に固定されたスリーブと、
前記スリーブの他端部に液密に固定された固定軸と、
前記スリーブ内に摺動自在に嵌挿されたプランジャと、
前記プランジャと前記固定軸との間に介挿されてそのプランジャを前記流入室へ向けて常時附勢するスプリングと、
前記スリーブおよび前記固定軸の周囲に嵌装されたコイルと、
前記蓋部材と前記コイルとの間に介挿されて前記コイルの磁束を前記プランジャに向かわせるフラックスプレートと、
を具える電磁弁であって、
前記プランジャの、前記流入室に向く端面に形成された、裁頭円錐状封止面を持つ凸部と、
前記流入室の前記流出口の入口に形成された、前記裁頭円錐状封止面と分離可能に液密に嵌合する裁頭円錐状座面と、
を具え、
前記裁頭円錐状封止面と前記裁頭円錐状座面との嵌合状態で、その裁頭円錐状封止面の基部が、前記裁頭円錐状座面から前記流入室内に露出することを特徴とする、ノンリークショックレス電磁比例制御弁。
【請求項2】
前記プランジャには、そのプランジャと前記固定軸との間の隙間と、前記流入室とを連通させる油路が形成されていることを特徴とする、請求項1記載のノンリークショックレス電磁比例制御弁。
【請求項3】
前記固定軸には、前記スプリングの予加重を調節する調節ネジが液密に貫挿されて螺着されていることを特徴とする、請求項1または2記載のノンリークショックレス電磁比例制御弁。
【請求項4】
前記プランジャと前記固定軸との互いに対向する端部は、互いに嵌合する向きでそれぞれ裁頭円錐面を形成されていることを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載のノンリークショックレス電磁比例制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169206(P2010−169206A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13021(P2009−13021)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000220435)株式会社ファインシンター (27)
【Fターム(参考)】