説明

ハウジング構造並びに記録装置及び電子機器

【課題】浮遊物発生部の機能に影響を与えず、浮遊物発生部の一面側に形成されている空洞部内での浮遊物の拡散を防止することができるハウジング構造並びにそのハウジング構造を備えた記録装置及び電子機器を提供すること。
【解決手段】浮遊物の発生部190Aが内蔵されていると共に、前記浮遊物発生部の一面側に空洞部193が設けられたハウジング構造であって、前記浮遊物発生部から前記空洞部への浮遊物の侵入を防止する部材102a、102cがミドルハウジング102に一体成形されて設けられている。これにより、浮遊物侵入防止部材は、浮遊物発生部に直接関与せずに浮遊物発生部にて発生した浮遊物の空洞部への流れ込みを阻止するので、浮遊物発生部の機能に影響を与えず、空洞部内での浮遊物の拡散を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊物の発生部が内蔵されていると共に、浮遊物発生部の一面側に空洞部が形成されたハウジング構造並びにそのハウジング構造を備えた記録装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の1つであるインクジェット式記録装置は、記録ヘッドが搭載されたキャリッジを移動させつつ、記録ヘッドに設けられたノズル開口からインク滴を吐出することにより記録するようになっている。ところが、インク滴の吐出が少ないノズル開口においては、インク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇により、目詰まりが発生し易くなる。そこで、全ノズル開口からインク滴を廃インク吸収材に向けて定期的に吐出させるフラッシング処理を実行することにより、目詰まりを防止するようにしている。
【0003】
ところで、近年の高画質化に伴ってインク滴の粒径が小さくなってきているため、インク滴の一部が廃インク吸収材に到達する前に空気抵抗によってミスト化して浮遊する場合がある。そして、浮遊しているインクミストは、キャリッジの移動に伴う空気流によっても煽られて飛散し、キャリッジの背面側に回り込んでキャリッジの移動制御のためのリニアエンコーダのリニアスケールに付着して汚染するおそれがある。尚、このインクミストの発生は、フラッシング処理のみならず、所謂縁無し印刷が可能な記録装置においても発生する。
【0004】
そこで、キャリッジに空気流規制手段を設けたインクジェット式記録装置が提案されている。この空気流規制手段は、キャリッジ側方の空気流をキャリッジ背面側に導く空気流案内作用面と、キャリッジ背面側に導かれた空気流の上方への流れを規制すると共に、空気流の流れを主走査方向に方向付けする規制リブとを有している。これにより、キャリッジ背面に回り込むインクミストの流れを規制することができ、リニアスケールへのインクミストの付着を防止することができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−88235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したインクジェット式記録装置では、キャリッジという機構部分を変更する必要があるため、記録機能に影響が出るおそれがある。また、リニアスケールへのインクミストの付着を防止することはできるが、キャリッジ背面側に空洞部が形成されている場合は、その空洞部内でのインクミストの拡散は防止することができない。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、浮遊物発生部の機能に影響を与えず、浮遊物発生部の一面側に形成されている空洞部内での浮遊物の拡散を防止することができるハウジング構造並びにそのハウジング構造を備えた記録装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明のハウジング構造では、浮遊物の発生部が内蔵されていると共に、前記浮遊物発生部の一面側に空洞部が設けられたハウジング構造であって、前記浮遊物発生部から前記空洞部への浮遊物の侵入を防止する部材がハウジングに一体成形されて設けられたことを特徴としている。これにより、浮遊物侵入防止部材は、浮遊物発生部に直接関与せずに浮遊物発生部にて発生した浮遊物の空洞部への流れ込みを阻止するので、浮遊物発生部の機能に影響を与えず、空洞部内での浮遊物の拡散を防止することができる。
【0009】
また、前記浮遊物侵入防止部材は、前記浮遊物発生部の一面側を全幅に亘って遮蔽する遮蔽壁を備えていることを特徴としている。これにより、浮遊物は遮蔽壁に衝突して遮蔽壁に付着し易くなるので、浮遊物の空洞部への流れ込みを阻止することができる。また、前記浮遊物侵入防止部材は、前記空洞部の一部断面を遮蔽する遮蔽リブを備えていることを特徴としている。これにより、浮遊物が遮蔽壁の両側を回り込んできたとしても、当該浮遊物は遮蔽リブに衝突して遮蔽リブに付着し易くなるので、浮遊物の空洞部への侵入防止効果を更に高めることができる。また、前記空洞部は、制御基板が配置されることを特徴としている。これにより、浮遊物の付着により特に影響が出易い電気系統を保護することができる。
【0010】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、インク滴を吐出しつつ移動して記録する記録ヘッドを備えた記録装置であって、上記各ハウジング構造を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する記録装置を提供することが可能である。また、前記記録ヘッドを備えた記録部が前記浮遊物発生部であり、当該記録部にて発生するインクミストが前記浮遊物であることを特徴としている。これにより、特に制御基板等の電気系部分の短絡や被記録媒体の汚染を防止することができる。また、前記記録ヘッドは、フラッシング処理が実行可能であることを特徴としている。これにより、インクミストが特に飛散し易いフラッシング処理が可能な記録装置におけるインクミストの汚染を防止することができる。また、上記目的達成のため、本発明の電子機器では、上記ハウジング構造を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する電子機器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るハウジング構造を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図、図2は、図1のハウジング構造を示す分解斜視図、図3は、図1の記録装置の上部を取り外した状態を示す斜視図、図4は、図1の記録装置の内部を示す斜視図である。この記録装置は、プリンタ、コピー及びスキャナの機能を有するインクジェット式複合機100である。このインクジェット式複合機100は、図1に示すように、全体が略直方体状のハウジング構造101で覆われている。このハウジング構造101は、図1及び図2に示すように、ミドルハウジング102、スロットハウジング103、パネルハウジング104及びオペレーションパネル105に分割されている。
【0013】
ミドルハウジング102は、図1に示すロワーハウジング106上に配設された図3及び図4に示すネットワーク機能用制御部170、用紙搬送部180及び記録部(浮遊物発生部)190等を覆うと共に、図1に示すように、前面側に操作部110、メモリカードスロット部120、ディスクスロット部130及び排紙部150が配設され、背面側に給紙部140が配設され、更に上部にスキャナ160が配設される図2に示すような略箱状に形成されている。スロットハウジング103は、図1に示すように、メモリカードスロット部120及びディスクスロット部130を覆うようにミドルハウジング102の前面側から差し込まれて取り付けられる図2に示すような垂直視断面が略コの字状に形成されている。
【0014】
パネルハウジング104は、図1に示すように、操作部110を覆うようにスロットハウジング103の上部に取り付けられる図2に示すような略平板状に形成されている。オペレーションパネル105は、図2に示すように、側面がスロットハウジング103の縁部に当接して位置決めされ、図1に示すように、パネルハウジング104を覆うように取り付けられる図2に示すような略平板状に形成されている。尚、このハウジング構造101の詳細については後述する。
【0015】
そして、図1に示すように、ハウジング構造101の上面における前面側には操作部110が配設され、前面における図示左側にはメモリカードスロット部120が配設され、前面における図示右側にはディスクスロット部130が配設されている。更に、ハウジング構造101の上面における背面側には給紙部140が配設され、前面側には排紙部150が配設され、上面にはスキャナ160が配設されている。また、図3及び図4に示すように、ハウジング構造101の内部には、ネットワーク機能用制御部170、用紙搬送部180及び記録部190が配設されている。
【0016】
操作部110は、図1に示すように、略矩形状の操作パネル111を備え、この操作パネル111の略中央部に操作状態等を表示するユニット化された液晶ディスプレイ112が装着されている。そして、液晶ディスプレイ112の両側には、パワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等の複数のボタン113が配設されている。ユーザは、液晶ディスプレイ112を見て確認しながら各種のボタン113を操作することができるので、誤操作を防止することができる。
【0017】
メモリカードスロット部120は、図1に示すように、図示矢印a方向に開閉自在なカバー121で覆われている。このメモリカードスロット部120は、複数スロット形成され、複数種類のメモリカードに対応可能に構成されている。ユーザは、インクジェット式複合機100をパーソナルコンピュータに接続しなくても、インクジェット式複合機100単独の状態でメモリカードスロット部120にメモリカードを差し込むのみで、メモリカードに格納されている画像等を記録することができる。
【0018】
ディスクスロット部130は、図1に示すように、CD−R(Compact Disk−Recordable)等の読み書き可能なディスクやDVD−ROM(Digital Versatile Disk−Read Only Memory)等の読み出し可能なディスクに対応可能に構成されている。ユーザは、インクジェット式複合機100をパーソナルコンピュータに接続しなくても、インクジェット式複合機100単独の状態でディスクスロット部130にディスクを差し込むのみで、ディスクに書き込まれている画像等を記録し、若しくはメモリカードに書き込まれている画像等をディスクに転送して書き込むことができる。
【0019】
給紙部140は、図1に示すように、上方に向かって矩形状に開口した給紙口141に伸縮自在に設けられ、給紙する用紙を1枚もしくは複数枚サポートする機能を有する多段のペーパーサポート142を備えている。ユーザは、インクジェット式複合機100を使用するときは、ペーパーサポート142の先端に指を掛けてペーパーサポート142を伸張することができるので、用紙のセッティングを容易に行うことができる。また、インクジェット式複合機100を不使用のときは、ペーパーサポート142の先端を指で押して収縮させることができるので、ペーパーサポート142をコンパクトに収納することができる。
【0020】
排紙部150は、図1に示すように、前方に向かって矩形状に開口した排紙口151を開閉する機能と、排紙される用紙を1枚もしくは複数枚スタックする機能を併せ持ったスタッカ152を備えている。このスタッカ152は、下端の回転軸を中心に図示矢印b方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、インクジェット式複合機100を使用又は不使用のときは、スタッカ152の上部に指を掛けてスタッカ152を開閉することができるので、セッティングを容易に行うことができ、また排紙口151内への埃の侵入を防止することができる。更に、記録後の用紙は常に前面側から排紙されるので、ユーザは用紙を容易に取り出すことができる。
【0021】
ネットワーク機能用制御部170は、図3に示すように、着脱自在なカバー(ハウジング)171で覆われた基板格納部172内に無線LANやTVとの接続を可能とする図示しないネットワーク機能用基板を備えている。用紙搬送部180は、図3及び図4に示すように、紙送りローラ181及び従動ローラ182等を備えている。給紙部130から給送される用紙は、図示しない紙送りモータにより回転される紙送りローラ181及び従動ローラ182により挟持されて搬送される。
【0022】
記録部190は、図3及び図4に示すように、キャリッジ191、プラテン192、図示しない記録ヘッド及び廃インク吸収材等を備えている。記録ヘッドは、フルカラー印刷が可能なように、ハウジング構造101の前面両側内部に収納された例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、ライトシアン、ブラックの計6色の図示しないインクカートリッジから各色インクが供給される。そして、図示しないキャリッジモータにより走査されるキャリッジ191に搭載された記録ヘッドは、紙送りローラ181及び従動ローラ182により挟持されて搬送される用紙に対し、ノズル開口からインク滴を吐出して縁無し印刷処理等を実行する。また、インク滴の吐出が少ないノズル開口においては、インク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇により、目詰まりが発生し易くなるので、全ノズル開口からインク滴を廃インク吸収材に向けて定期的に吐出させるフラッシング処理を実行する。
【0023】
ここで、この記録部190においては、フラッシング処理や縁無し印刷処理等のときに、記録ヘッドから吐出されるインク滴の一部が廃インク吸収材に到達する前に空気抵抗によってミスト化して浮遊する場合がある。そして、浮遊しているインクミストは、キャリッジ191の移動に伴う空気流によっても煽られて飛散し、特に記録部190の記録領域の背面側に侵入し易い。そこで、本実施形態のハウジング構造101は上記問題を解消するために以下のような特徴を備えており、更に図を参照して説明する。
【0024】
図5は、上記ハウジング構造101の特徴部分を示す斜視図、図6は、図5に示す特徴部分の拡大斜視図である。図5に示すように、ミドルハウジング102は、記録部190の記録領域190Aの背面側に空洞部193が形成されている。そして、この空洞部193は、記録部190の記録領域190Aに沿う溝状に形成されており、内部にはサブ基板173が配設されている。上述したように、記録部190にて浮遊しているインクミストは、キャリッジ191の移動に伴う空気流によって煽られて飛散し、記録部190の記録領域190Aの背面側の空洞部193に侵入し、サブ基板173に付着して汚染するおそれがある。
【0025】
そこで、記録部190の記録領域190Aと空洞部193の間には、インクミストの侵入を防止する遮蔽壁(浮遊物侵入防止部材)102aがミドルハウジング102に一体成形されている。この遮蔽壁102aは、ミドルハウジング102の左右の側壁102b間に形成されており、記録部190の記録領域190Aの背面側を全幅に亘って遮蔽している。これにより、インクミストは遮蔽壁102aに衝突して遮蔽壁102aに付着し易くなるので、インクミストの空洞部193への流れ込みを阻止することができる。
【0026】
更に、空洞部193内には、インクミストの侵入を防止する遮蔽リブ(浮遊物侵入防止部材)102cがミドルハウジング102に一体成形されている。遮蔽リブ102cは、溝状の空洞部193の溝幅間に形成されており、空洞部193の一部断面、即ちサブ基板173の両側を遮蔽している。これにより、インクミストが遮蔽壁102aの両側を回り込んできたとしても、当該インクミストは遮蔽リブ102cに衝突して遮蔽リブ102cに付着し易くなるので、インクミストの空洞部193への侵入防止効果を更に高めることができる。
【0027】
以上のように、遮蔽壁102a及び遮蔽リブ102cは、記録部190に直接関与せずにインクミストの空洞部193への流れ込みを阻止するので、記録部190の機能に影響を与えず、空洞部193内へのインクミストの拡散を防止することができ、インクミストの付着により特に影響が出易いサブ基板173を保護することができる。尚、上述した実施形態では、インクミストの拡散を防止するようにしたが、インクミストのみならず、浮遊物であれば塵や埃等の異物の拡散も防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ハウジング構造を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置、スキャナ等であっても適用可能である。また、記録装置に限らず、パネル構造を備えた一般的な電子装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハウジング構造を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図である。
【図2】図1のハウジング構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1の記録装置の上部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の記録装置の内部を示す斜視図である。
【図5】図1のハウジングの特徴部分を示す斜視図である。
【図6】図5に示す特徴部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
100 インクジェット式複合機、101 ハウジング構造、102 ミドルハウジング、102a 遮蔽壁、102c 遮蔽リブ、110 操作部、120 メモリカードスロット部、130 ディスクスロット部、140 給紙部、150 排紙部、160 スキャナ、170 ネットワーク機能用制御部、173 サブ基板、180 用紙搬送部、190 記録部、191 キャリッジ、193 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊物の発生部が内蔵されていると共に、前記浮遊物発生部の一面側に空洞部が設けられたハウジング構造であって、
前記浮遊物発生部から前記空洞部への浮遊物の侵入を防止する部材がハウジングに一体成形されて設けられたことを特徴とするハウジング構造。
【請求項2】
前記浮遊物侵入防止部材は、前記浮遊物発生部の一面側を全幅に亘って遮蔽する遮蔽壁を備えていることを特徴とする請求項1に記載のハウジング構造。
【請求項3】
前記浮遊物侵入防止部材は、前記空洞部の一部断面を遮蔽する遮蔽リブを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハウジング構造。
【請求項4】
前記空洞部は、制御基板が配置されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のハウジング構造。
【請求項5】
インク滴を吐出しつつ移動して記録する記録ヘッドを備えた記録装置であって、
請求項1〜4の何れか一項に記載のハウジング構造を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドを備えた記録部が前記浮遊物発生部であり、当該記録部にて発生するインクミストが前記浮遊物であることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、フラッシング処理が実行可能であることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか一項に記載のハウジング構造を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−62531(P2008−62531A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243561(P2006−243561)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】