説明

ハニカム構造体

【課題】通気性を確保しつつ耐熱衝撃性の向上を図ることができるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】本発明は、中心軸CLに沿って延在する柱状のハニカム構造体10であって、中心軸CLの延在方向で互いに対向する第1の端面10a及び第2の端面10bと、複数の第1流路Ra及び複数の第2流路Rbを形成する隔壁10cと、を有し、第1流路Raは、第1の端面10a側が開口され、第2の端面10b側が封口されており、第2流路Rbは、第1の端面10a側が封口され、第2の端面10b側が開口されており、第1の端面10aの開口割合は、第2の端面10bの開口割合より大きく、第2の端面10bには、少なくとも一つの第2流路Rb2を含む高強度領域Fが形成され、高強度領域Fに含まれる全ての第2流路Rb2は、高強度領域Fに含まれない第2流路Rb1と比べて、中心軸CLに垂直な断面形状の最小曲率半径が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを浄化するフィルタとして用いられるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル粒子フィルタ(DPF)等、内燃機関の排出ガスを浄化するフィルタとしてハニカム構造体が広く用いられている(例えば特許文献1を参照)。ハニカム構造体には、排出ガスから取り除かれた煤が堆積するため、一定期間ごとに煤を燃焼してフィルタ再生(regeneration)を行う必要がある。煤を燃焼させるには、高温かつ大量の燃焼排ガスを供給して煤に着火し、煤を燃え尽きさせればよい。
【0003】
フィルタ再生時には煤の燃焼熱によりハニカム構造体が破損する場合があることから、ハニカム構造体は高い耐熱衝撃性が求められている。特許文献1には、複数のセグメント部を連結部で結合した構造を持つハニカム構造体において、連結部の強度を調整することで耐熱衝撃性を高めたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らがハニカム構造体について実験を重ねたところ、耐熱衝撃性テストにおいてハニカム構造体のガス下流側端面に放射状のクラックが複数発生し、さらに過酷な条件において、これらのクラックが拡大して互いに繋がり最終的に環状のクラックを形成する状況が見出された。このため、クラックの発生によるフィルタ性能の低下を避けるための対策を行う必要がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、通気性を確保しつつ耐熱衝撃性の向上を図ることができるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、中心軸に沿って延在する柱状のハニカム構造体であって、中心軸の延在方向で互いに対向する第1の端面及び第2の端面と、中心軸に沿って延在する複数の第1流路及び複数の第2流路を形成する隔壁と、を有し、第1流路は、第1の端面側が開口され、第2の端面側が封口されており、第2流路は、第1の端面側が封口され、第2の端面側が開口されており、第1の端面の開口割合は、第2の端面の開口割合より大きく、第2の端面には、少なくとも一つの第2流路を含む高強度領域が形成され、高強度領域に含まれる全ての第2流路は、高強度領域に含まれない第2流路と比べて、中心軸に垂直な断面形状の最小曲率半径が大きい。
【0008】
上記ハニカム構造体によれば、第2流路の断面形状(開口形状)の最小曲率半径が大きいほど第2の端面上における開口への応力集中を低減できることから、高強度領域におけるクラックの発生を抑制することができる。しかも、上記ハニカム構造体では、高強度領域に含まれない第2流路を最小曲率半径の小さい断面形状とすることで、全ての第2流路の断面形状が同じ場合と比べて第2の端面上に第2流路を効率良く配置することができ、フィルタ単位面積当たりの開口面積を大きくして通気性を十分に確保することができる。従って、上記ハニカム構造体によれば、通気性を十分に確保しつつ、クラックの発生を抑制して耐熱衝撃性の向上を図ることができる。
【0009】
上記高強度領域には、複数の第2流路が含まれていても良い。
この場合、より広範囲な領域についてクラックの発生を抑制することができる。
【0010】
上記高強度領域は、中心軸を囲む環状に形成されていても良い。
この場合、熱衝撃により第2の端面に現れる環状のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
上記高強度領域は、中心軸に直交する方向に沿って延在するように形成されていても良い。
この場合、熱衝撃により第2の端面に現れる放射状のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
上記高強度領域は、中心軸を中心として放射状に複数形成されていても良い。
この場合、熱衝撃により第2の端面に現れる放射状のクラックの発生を更に効果的に抑制することができる。
【0013】
上記高強度領域に含まれる全ての第2流路の中心軸に垂直な断面形状は円形状又は楕円形状であり、高強度領域に含まれない第2流路の中心軸に垂直な断面形状は多角形状であっても良い。
上記ハニカム構造体によれば、第2流路の断面形状が円形状又は楕円形状である高強度領域においてクラックの発生を抑制することができるので、耐熱衝撃性の更なる向上を図ることができる。しかも、上記ハニカム構造体では、高強度領域に含まれない第2流路の断面形状を円形状と比べて最小曲率半径の小さい多角形状とすることで高強度領域以外の領域に第2流路を効率的に配置することができ、フィルタ単位面積当たりの開口面積を大きくして通気性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通気性を確保しつつ耐熱衝撃性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るハニカム構造体を示す斜視図である。
【図2】ハニカム構造体の中心軸に垂直な断面の一部を示す拡大図である。
【図3】(a)は、ハニカム構造体の第1の端面の一部を示す拡大図である。(b)は、ハニカム構造体の第2の端面の一部を示す拡大図である。
【図4】ハニカム構造体の中心軸に沿った断面の一部を示す拡大図である。
【図5】ハニカム構造体の第2の端面を示す全体図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】(a)高強度領域に含まれない第2流路の断面形状を示す図である。(b)高強度領域に含まれる第2流路の断面形状を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係るハニカム構造体の第2の端面を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係るハニカム構造体10は、DPF[Diesel Particulate Filter]等に取り付けられ、内燃機関の排出ガスを浄化するためのフィルタとして用いられる円柱状の構造体である。円柱状のハニカム構造体10は、中心軸CLに沿って延在している。以後、中心軸CLの延在方向を中心軸方向と称する。
【0018】
ハニカム構造体10は、中心軸方向で互いに対向する第1の端面10a及び第2の端面10bと、中心軸CLに沿って延在する複数の第1流路Ra及び複数の第2流路Rbを形成する隔壁10cと、を有している。
【0019】
ハニカム構造体10は、多孔質(例えば、平均細孔直径20μm以下)のセラミクス材料等から構成されている。ハニカム構造体10に用いられるセラミクス材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。チタン酸アルミニウムは、更に、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0020】
このようなハニカム構造体10は、上述したセラミクス材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)を焼成し、各流路Ra,Rbに対して所定の封口処理を行うことにより得ることができる。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、メチルセルロース等の有機バインダ、及び必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0021】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及びアナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、更に、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0022】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び溶媒が挙げられる。
【0024】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン等の植物材料;氷;及びドライアイス等が挙げられる。
【0025】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリン等のアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)等が挙げられる。
【0026】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム等の界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類;及び水等を用いることができる。
【0028】
図2は、図1の中心軸CLに沿った断面の一部を示す拡大図である。図2に示されるように、ハニカム構造体10の流路Ra,Rbは、第1の端面10a側及び第2の端面10b側の何れか一方が封口されている。具体的には、第1流路Raは、第1の端面10a側が開口され、第2の端面10b側が封口材11によって封口されている。また、第2流路Rbは、第2の端面10b側が開口され、第1の端面10a側が封口材12によって封口されている。
【0029】
封口材11,12の材料は、上述したグリーン成形体と同じ材料を用いても良く、異なる材料を用いても良い。また、封口材11,12の材料には、内燃機関の排出ガスを通過させないものを用いても良い。
【0030】
ハニカム構造体10は、複数の第1流路Ra及び複数の第2流路Rbを形成する隔壁10cを有している。換言すると、隔壁10cによって個々の流路Ra,Rbが隔てられている。この隔壁10cは、第1の端面10aから第2の端面10bまで中心軸CLに沿って延在している。
【0031】
図2に示すハニカム構造体10は、第1の端面10aをガス上流側(内燃機関側)、第2の端面10bをガス下流側として、内燃機関の排出ガス流路上に配置される。ハニカム構造体10を通過する排出ガスの主な流れを矢印Gとして示す。
【0032】
矢印Gにより示されるように、内燃機関の排出ガスは、まず第1の端面10a側の開口から流路Raに流入する。流路Raに流入したガスは、流路Raの第2の端面10b側が封口されているため、隔壁10cを通過して流路Rb内に流入する。ガスが隔壁10cを通過する際にガス中の煤等が捕捉される。流路Rb内に流入したガスは、第2の端面10b側の開口を介してハニカム構造体10の外へ流れ出る。これにより、浄化されたガスがハニカム構造体10の第2の端面10b側から排出されることになる。
【0033】
次に、第1流路Ra及び第2流路Rbの断面形状について説明する。図3は、ハニカム構造体10の中心軸CLに垂直な断面の一部を示す拡大図である。図4(a)はハニカム構造体10の第1の端面10aの一部を示す拡大図であり、図4(b)は第2の端面10bの一部を示す拡大図である。
【0034】
図3及び図4に示されるように、ハニカム構造体10の中心軸CLに垂直な断面は、隔壁10cにより流路Ra,Rbを仕切る格子構造を有している。このようなハニカム構造体10の形状は、封口材11,12を除いて押出一体成形により作られており、流路Ra,Rbの断面形状は途中で変形することなく一定形状を保ったまま中心軸方向に延在する。
【0035】
第1流路Ra及び第2流路Rbの断面形状としては、正六角形状のものと規則的六角形状(例えば、隣接する正六角形の流路断面の一辺と長さが同じ長辺、及び当該長辺より長さが短い短辺からなる六角形状)のもの、及び円形状のものがある。すなわち、ハニカム構造体10は、異なる断面形状の流路を有する非対称セル構造(非対称格子構造)を備えている。
【0036】
具体的には、第1流路Raは、規則的六角形状の断面形状を有している。一方、第2流路Rbは、断面形状により二つの流路Rb1,Rb2に分けられる。流路Rb1は正六角形状の断面形状を有しており、流路Rb2は円形状の断面形状を有している。なお、流路Rb2については、図3及び図4に図示していない。
【0037】
ハニカム構造体10の中心軸CLに垂直な断面では、断面形状が正六角形状の流路Rb1を囲むように断面形状が規則的六角形状の第1流路Raが配置されている。このような配置により、ハニカム構造体10では、第1流路Raの方が第2流路Rbより数が多く形成されている。このため、第1の端面10aにおける開口割合(第1の端面10aの全体面積における第1流路Raの開口面積の割合)は、第2の端面10bにおける開口割合(第2の端面10bの全体面積における第2流路Rbの開口面積の割合)よりも大きい。このような第1の端面10aをガス上流側に向けてハニカム構造体10は排気ガス流路上に配置される。開口割合の大きい第1の端面10aをガス上流側とすることで、排気ガスがハニカム構造体10内に流入しやすくなるので、ハニカム構造体10における排気ガスの圧力損失を低減することができる。
【0038】
次に、ハニカム構造体10が有する高強度領域Fについて説明する。図5は、第2の端面10bを示す全体図であり、図6は、図5の部分拡大図である。図5及び図6に示されるように、ハニカム構造体10では、第2の端面10b上に円環上の高強度領域Fが形成されている。高強度領域Fは、中心軸CLを中心として囲むように形成されている。
【0039】
また、ハニカム構造体10の第2の端面10b上には、開口する複数の第2流路Rbが所定間隔で形成されている。第2の端面10b上において、複数の第2流路Rb同士は封口材11(第1流路Ra)及び隔壁10cを挟んで互いに離間している。
【0040】
高強度領域Fには、第2流路Rbのうち断面形状(開口形状)が円形状である流路Rb2のみが含まれている。換言すると、高強度領域Fに含まれる第2流路Rbは全て流路Rb2である。高強度領域Fには、第1流路Raを封口する封口材11及び隔壁10cも含まれている。一方、高強度領域Fに含まれない全ての第2流路Rbは、断面形状が正六角形状の流路Rb1である。
【0041】
続いて、第2流路Rbの断面形状(中心軸CLに垂直な断面の形状)の最小曲率半径について説明する。断面形状の最小曲率半径とは、断面形状を構成する曲線(外側に凸となる曲線)の曲率半径のうち最小のものを意味する。
【0042】
図7(a)は、高強度領域Fに含まれない流路Rb1の断面形状を示す図である。図7(a)に示されるように、流路Rb1は、角に丸みのある正六角形状の断面形状を有している。このような断面形状の角の丸みは、ハニカム構造体10の成形条件から生じている。すなわち、実際には流路Ra,Rbの断面形状が完全な直線のみから形成されることはなく、断面形状の角には丸みがあることが通常である。なお、応力集中を低減するため意図的に断面形状の丸みを設けていても良い。
【0043】
流路Rb1の断面形状における最小曲率半径を矢印r1として示す。なお、図7(a)の正六角形の各々の角における最小の曲率半径は等しいものとする。
【0044】
ここで、図7(b)は、高強度領域Fに含まれる流路Rb2の断面形状を示す図である。図7(b)に示されるように、流路Rb2は、半径r2の円形状の断面形状を有している。このような流路Rb2の断面形状の最小曲率半径はr2と等しい。
【0045】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、流路Rb1の断面形状の最小曲率半径r1は、流路Rb2の断面形状の最小曲率半径r2よりも小さい。換言すると、高強度領域Fに含まれる流路Rb2の断面形状の最小曲率半径r2は、高強度領域Fに含まれない流路Rb1の断面形状の最小曲率半径r1と比べて大きい。
【0046】
以上説明した第1の実施形態に係るハニカム構造体10によれば、第2流路Rbの断面形状(開口形状)の最小曲率半径が大きいほど第2の端面10b上における開口への応力集中を低減できることから、断面形状の最小曲率半径が大きい流路Rb2を有する高強度領域Fにおいてクラックの発生を抑制することができる。しかも、ハニカム構造体10では、高強度領域Fに含まれない流路Rb1を最小曲率半径の小さい正六角形状の断面形状とすることで、全ての第2流路Rbの断面形状が同じ場合と比べて第2の端面10b上に第2流路Rbを効率良く配置することができ、フィルタ単位面積当たりの開口面積を大きくして通気性を十分に確保することができる。従って、ハニカム構造体10によれば、通気性を十分に確保しつつ、クラックの発生を抑制して耐熱衝撃性の向上を図ることができる。
【0047】
また、ハニカム構造体10では、中心軸CLを囲む円環状に高強度領域Fが形成されることで、熱衝撃により第2の端面10bに現れる環状のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るハニカム構造体20は、第1の実施形態に係るハニカム構造体10と比べて高強度領域の形状が異なっている。
【0049】
図8は、第2の実施形態に係るハニカム構造体20の第2の端面20bを示す全体図である。図8に示されるように、第2の実施形態に係るハニカム構造体20は、長円状の高強度領域Hを複数有している。高強度領域Hは、中心軸CLから所定距離離間した位置で、中心軸CLに直交する方向に延在するように形成されている。高強度領域Hは、中心軸CL周りに60°間隔で六箇所形成されており、中心軸CLを中心として放射状に位置している。
【0050】
高強度領域Hに含まれる全ての第2流路Rbは、断面形状(開口形状)が円形状であるRb2である。一方、高強度領域Hに含まれない全ての第2流路Rbは、断面形状が正六角形状のRb1である。
【0051】
以上説明した第2の実施形態に係るハニカム構造体20によれば、第1の実施形態に係るハニカム構造体10と同様に、通気性を十分に確保しつつ、高強度領域Hにおけるクラックの発生を抑制することで耐熱衝撃性の向上を図ることができる。しかも、ハニカム構造体20では、高強度領域Hが第2の端面20b上で放射状に位置しているので、熱衝撃により第2の端面20bに現れる放射状のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、高強度領域は、必ずしも第2流路を複数含む必要はなく、一つの第2流路のみを含む態様であっても良い。また、高強度領域の形状は、円環状や放射状に限られず、様々な形状を採用することができる。このような高強度領域の形状や位置、大きさ等は、例えば各種ハニカム構造体の第2の端面におけるクラックが発生しやすい領域に合わせて適切に設定することができる。
【0053】
また、流路Ra、Rbの断面形状は上述したものに限られない。例えば、流路Ra、Rbの形状は、六角形その他の多角形状の他、円形状や楕円形状であっても良い。仮に、流路Rb1及び流路Rb2の両方の断面形状を真円形状とした場合には、断面形状の最小曲率半径の大小は断面面積の大きさに比例する。すなわち、高強度領域Fに含まれない流路Rb1の断面形状が小さな円形状、高強度領域Fに含まれる流路Rb2が大きな円形状となっても良い。また、ハニカム構造体10,20は、必ずしも押出一体成形で作られる必要はなく、セグメント構造で作られても良い。
【符号の説明】
【0054】
10、20…ハニカム構造体 10a、20a…第1の端面 10b、20b…第2の端面 10c、20c…隔壁 11…封口材 12…封口材 CL…中心軸 Ra…第1流路 Rb…第2流路 Rb1…第2流路(正六角形状) Rb2…第2流路(円形状) F,H…高強度領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延在する柱状のハニカム構造体であって、
前記中心軸の延在方向で互いに対向する第1の端面及び第2の端面と、
前記中心軸に沿って延在する複数の第1流路及び複数の第2流路を形成する隔壁と、を有し、
前記第1流路は、前記第1の端面側が開口され、前記第2の端面側が封口されており、
前記第2流路は、前記第1の端面側が封口され、前記第2の端面側が開口されており、
前記第1の端面の開口割合は、前記第2の端面の開口割合より大きく、
前記第2の端面には、少なくとも一つの前記第2流路を含む高強度領域が形成され、
前記高強度領域に含まれる全ての前記第2流路は、前記高強度領域に含まれない前記第2流路と比べて、前記中心軸に垂直な断面形状の最小曲率半径が大きいハニカム構造体。
【請求項2】
前記高強度領域には、複数の前記第2流路が含まれている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記高強度領域は、前記中心軸を囲む環状に形成されている請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記高強度領域は、前記中心軸に直交する方向に沿って延在するように形成されている請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記高強度領域は、前記中心軸を中心として放射状に複数形成されている請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記高強度領域に含まれる全ての前記第2流路の前記中心軸に垂直な断面形状は円形状又は楕円形状であり、前記高強度領域に含まれない前記第2流路の前記中心軸に垂直な断面形状は多角形状である請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−94721(P2013−94721A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239011(P2011−239011)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】