説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法

【課題】迅速処理においても色再現性および画像保存性に優れるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。
【解決手段】支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーであり、かつ該色素形成カプラーを、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料および画像形成方法に関し、詳しくは画像保存性に優れた画像を提供することができるハロゲン化銀カラー写真感光材料および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真感光材料は、安価に安定した品質で高画質の画像を提供する材料として今日まで広く用いられてきているが、ユーザーの高画質化、品質安定化、高生産性化への要求はますます高まっている。高画質化の要求に対しては、白色度、色再現性、鮮鋭性等の改良が求められており、品質安定化の要求に対しては、感光材料の製造安定性、未露光状態での経時保存での安定性、現像処理時の性能安定性の改良が必要とされている。また、生産性の向上に対しては処理の迅速化が強く求められている。
カラーペーパーやカラーリバーサル等の直接鑑賞用に用いられる写真感光材料においては、第一には色再現性が重要である。色再現性の改良には、色素形成カプラー(以下、単にカプラーともいう)と芳香族第一級アミン化合物の酸化体(より具体的にはp−フェニレンジアミン系カラー現像主薬の酸化体)とのカップリング反応により形成される色素自身の不要吸収が少なく、吸収特性に優れることが必要である。また、それに加えて、増感色素やイラジエーション防止染料などの残色が少ないこと、かぶりが少ないことなどが重要である。第二には、色画像形成後には高い画像保存性を有することが重要である。このため当業界においても使用するカプラーおよび高沸点有機溶媒の選定、さらに画像安定化剤の使用などにより、光や熱による色素の分解を効果的に抑制して色画像を長期間安定化する検討がなされてきた。
【0003】
近年の写真処理サービス業界において、カラープリントではデジタル露光を利用した焼付装置の普及によりデジタルカメラなどのデジタル情報元からのカラープリントが簡易迅速に得られるようになり、カラープリントによる画像出力の機会が増している。カラープリント業界においては主としてラボの生産スピードを高め顧客へのサービス向上を図る目的からプリント露光〜発色現像処理の時間短縮など効率化が求められている。カラー写真感光材料における迅速現像処理性向上の一般的手段としては例えば、[1]発色色素の分子吸光係数の大きいカプラーの採用などによる有機素材塗設量の削減、[2][1]に伴うハロゲン化銀乳剤塗設量の削減、[3][1]に伴う親水性バインダー塗設量の削減および写真構成層全体の薄層化、[4]活性の高いカプラーの採用、[5]現像速度の速いハロゲン化銀乳剤の採用、などが挙げられる。発色現像や脱銀での超迅速処理化に適した感光材料を提供するため、当業界でも分子吸光係数の高い色素を形成するカプラーの採用などにより感光材料の塗布銀量の低減を図り、また処理後のプリントに不要な処理液成分が残留しステインが生じることを防ぐために上記[1][2]に対する努力がなされてきた。
【0004】
活性や分子吸光係数が高く上記感光材料に適したカプラーとしては、アシル酢酸アニリド系を改良したカプラーとして、1−アルキルシクロプロパンカルボニル酢酸アニリド系化合物(特許文献1参照)、環状マロンジアミド型イエローカプラー(特許文献2参照)、ヘテロ環アセトアニリドイエローカプラー(特許文献3参照)、ピラゾロアゾールマゼンタカプラー(特許文献4および特許文献5参照)、ピロロアゾール型シアンカプラー(特許文献6および特許文献7参照)、ピロロトリアゾール型シアンカプラー(特許文献8および特許文献9参照)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、前記有機素材塗設量の削減および写真構成層全体の薄層化を実現して迅速処理性をさらに向上する目的からは、上記の如き分子吸光係数の高い色素を形成するカプラーを用いただけでは従来必ずしも十分ではなかった。カプラー以外の有機素材として例えば高沸点有機溶媒を低減し、それとともにゼラチンバインダーを低減することで超迅速処理での水洗工程や乾燥工程に適した感光材料が得られるが、このとき発色性、色相、あるいは画像保存性を損なう場合があった。
【0006】
【特許文献1】特開平4−218042号公報
【特許文献2】特開平5−11416号公報
【特許文献3】特開2003−173007号公報
【特許文献4】特開昭63−041851号公報
【特許文献5】特開平06−043611号公報
【特許文献6】欧州特許第0488248号明細書
【特許文献7】欧州特許第0291197A1号明細書
【特許文献8】特開2001−342189号公報
【特許文献9】特開2002−287311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は色再現性と画像保存性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料および画像形成方法を提供することにあり、さらには迅速処理適性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料および画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、本発明の上記課題は以下の手段により達成されることを見出した。
(1)支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーであり、かつ該色素形成カプラーを、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(2)前記のアゾメチン色素の酢酸エチルへの溶解度が、1×10-8mol/L以上7×10-4mol/L以下であることを特徴とする(1)項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(3)前記のアゾメチン色素の極大吸収波長が570nm以上700nm以下であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(4)前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーの少なくとも1種を含有するハロゲン化銀乳剤層が、総色素形成カプラー塗布量0.18ミリモル/m2以上0.28ミリモル/m2以下でありかつ色素形成後の該色素の極大吸収波長における最大光学反射濃度が2.0以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(5)前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが下記一般式(CP−I)で表されるカプラーであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0009】
【化3】

【0010】
一般式(CP−I)中、Gaは−C(R23)=もしくは−N=を表し、Gaが−N=を表すときGbは−C(R23)=を表し、Gaが−C(R23)=を表すときGbは−N=を表す。R21及びR22は、各々独立にハメットの置換基定数σp値が0.20以上1.0以下の電子吸引性基を表す。R23は置換基を表す。Yは、水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
(6)前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料が下記一般式(I)で表される色素形成カプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0011】
【化4】

【0012】
式中、Qは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
(7)前記芳香族第一級アミン化合物の酸化体が、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリンの酸化体であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(8)前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して24質量%以上80質量%以下含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(9)支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料を露光後、現像処理する画像形成方法であって、該色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素を形成し、かつ該アゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする画像形成方法。
(10)前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーの少なくとも1種を含有するハロゲン化銀乳剤層が、総色素形成カプラー塗布量0.18ミリモル/m2以上0.28ミリモル/m2以下でありかつ色素形成後の該色素の極大吸収波長における最大光学反射濃度が2.0以上であることを特徴とする(9)項に記載の画像形成方法。
(11)前記現像処理において、発色現像時間が30秒以下であることを特徴とする(9)又は(10)項に記載の画像形成方法。
(12)前記露光が、1×10-4秒以下であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、迅速処理においても色再現性、画像保存性に優れたカラープリントを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素(以下、有機溶媒難溶性色素とも称す)を形成する色素形成カプラーを含有する。
ここで溶解度とは常温(20〜25℃で、特定するならば25℃)での容量モル濃度(飽和溶液1000cm3に含まれる溶質mol量)を指す。溶解度は一般的な操作、すなわち溶解平衡に達した飽和溶液の作製、固相と液層の分離、液相中の溶質の定量に従い求めることが好ましく、より具体的な溶解度の求め方は、例えば「新実験化学講座(丸善株式会社)」等に記載されている。
上記色素の酢酸エチルへの溶解度の好ましい範囲は、1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下であり、より好ましくは、1×10-8mol/L以上2×10-3mol/L以下、さらに好ましくは、1×10-8mol/L以上7×10-4mol/L以下、最も好ましくは、1×10-6mol/L以上2×10-4mol/L以下である。
本発明においては、上記の有機溶媒難溶性色素を形成する色素形成カプラーは、該カプラーを含有する層(該カプラーを含有する発色層)の総親油性成分に対して、18質量%以上100質量%以下含有する。
ここで、親油性成分とは具体的には、カプラー、高沸点有機溶媒、水不溶性かつ有機溶媒可溶性ポリマー、さらに画像安定化や混色防止およびステイン防止などの目的から加えられる非水溶性有機素材、等から成る疎水性かつ有機溶媒可溶性の組成物を表す。これらの有機溶媒可溶性の組成物から成る親油性成分は、ゼラチン等の親水性バインダー中に微粒子分散物として一般に得ることができる。本発明における有機溶媒難溶性色素を形成するカプラーは該カプラーを含む親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有されることが好ましく、18質量%以上90質量%以下含有することがより好ましく、さらには24質量%以上80質量%以下含有することが最も好ましい。
【0015】
上記の有機溶媒難溶性色素を形成する色素形成カプラーは使用されるハロゲン化銀乳剤層において単一で用いることも他の色素形成カプラーと併用することもできる。他の色素形成カプラーを併用する場合、他の色素形成カプラーが形成する色素の酢酸エチルへの溶解度は前記の好ましい範囲に特に限定されない。また併用する色素形成カプラーがいずれも上記の有機溶媒難溶性色素を形成する場合、これらの色素形成カプラーの使用比率はいかなる比率でもよい。一方、併用する色素形成カプラーが前記の酢酸エチルへの溶解度の好ましい範囲に属さない場合、これらの色素形成カプラー(複数でもよい)の総モルと上記難溶性色素を形成するカプラー(複数でもよい)の総モルの比は6:4〜0:10が好ましく、より好ましくは5:5〜0:10であり、最も好ましくは5:5〜1:9である。
【0016】
上記の有機溶媒難溶性色素を形成する色素形成カプラーの少なくとも1種を含有するハロゲン化銀乳剤層における色素形成カプラー塗布量の総計は薄層化の点からは少ない方が好ましいが、色素画像形成後の極大吸収波長(上記の有機溶媒難溶性色素を形成する色素形成カプラーから得られる色素の極大吸収波長)における光学反射濃度が少なくとも1.8以上(好ましくは1.8以上2.6以下)が好ましく、2.0以上(好ましくは2.0以上2.5以下)がより好ましく、最も好ましくは2.1以上(好ましくは2.1以上2.4以下)である。
このような反射濃度を得るための色素形成カプラーの塗布量は具体的には0.16ミリモル/m2以上0.30ミリモル/m2以下が好ましく、0.18ミリモル/m2以上0.28ミリモル/m2以下がより好ましく、塗布量0.19ミリモル/m2以上0.26ミリモル/m2以下が最も好ましい。
【0017】
上記有機溶媒難溶性色素を形成するカプラーはいかなる構造のカプラーでもよいが、シアン色素形成カプラーであることが好ましく、さらには、画像材料形成時の該色素の極大吸収波長が、写真構成層中で570nm以上700nm以下であることが好ましく、580nm以上660nm以下であることがより好ましい。このようなシアン色素形成カプラーとしては具体的には後述の一般式(CP−I)、(CP−II)または(CP−III)で表されるカプラーが挙げられる。
本発明において上記の有機溶媒難溶性色素の融点は該色素を形成するカプラーの融点よりも高いことが好ましい。具体的には、該有機溶媒難溶性色素がカプラーに対して0℃以上融点が高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましく、60℃以上高いことが最も好ましい。
【0018】
次に一般式(CP−I)で表されるカプラーについて説明する。
【0019】
【化5】

【0020】
一般式(CP−I)中、Gaは−C(R23)=もしくは−N=を表し、Gaが−N=を表すときGbは−C(R23)=を表し、Gaが−C(R23)=を表すときGbは−N=を表す。R23は置換基を表す。Yは、水素原子若しくは、現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。R21及びR22はいずれもハメットの置換基定数σp値が0.20以上1.0以下の電子吸引性基であるが、R21とR22のσp値の和が0.65以上であることが望ましい。本発明に使用されるカプラーはこのような強い電子吸引性基の導入によりシアンカプラーとして優れた性能を有するものである。R21とR22のσp値の和としては、好ましくは0.70以上であり、上限としては1.8程度である。
【0021】
本発明においてR21及びR22はハメットの置換基定数σp値(以下、単にσp値という)が0.20以上1.0以下の電子吸引性基である。好ましくは、σp値が0.30以上0.8以下の電子吸引性基である。ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載あるが、例えば、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」,第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域増刊」,122号,96〜103頁,1979年(南江堂)、Chemical Reviews,91巻,165頁〜195頁,1991年に詳しい。本発明においてR21及びR22はハメットの置換基定数σp値により規定されるが、これらの成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなくその値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれる限り包含されることは勿論である。
【0022】
σp値が0.20以上1.0以下の電子吸引性基であるR21及びR22の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σp0.20以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、複素環基、塩素原子、臭素原子、アゾ基、又はセレノシアネート基があげられる。これらの置換基のうち更に置換基を有することが可能な基は、後述するR23で挙げるような置換基を更に有してもよい。
【0023】
尚、脂肪族オキシカルボニル基は、その脂肪族部位が直鎖状、分枝鎖状または環状でもよく、飽和でも不飽和結合を含んでいてもよい脂肪族部位であり、脂肪族オキシカルボニル基は、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、シクロアルケニルオキシカルボニル等を含むものである。
【0024】
代表的なσp値が0.2以上1.0以下の電子吸引性基のσp値を挙げると、臭素原子(0.23)、塩素原子(0.23)、シアノ基(0.66)、ニトロ基(0.78)、トリフルオロメチル基(0.54)、トリブロモメチル基(0.29)、トリクロロメチル基(0.33)、カルボキシル基(0.45)、アセチル基(0.50)、ベンゾイル基(0.43)、アセチルオキシ基(0.31)、トリフルオロメタンスルホニル基(0.92)、メタンスルホニル基(0.72)、ベンゼンスルホニル基(0.70)、メタンスルフィニル基(0.49)、カルバモイル基(0.36)、メトキシカルボニル基(0.45)、エトキシカルボニル基(0.45)、フェノキシカルボニル基(0.44)、ピラゾリル基(0.37)、メタンスルホニルオキシ基(0.36)、ジメトキシホスホリル基(0.60)、スルファモイル基(0.57)などである。
【0025】
21として好ましくはシアノ基、脂肪族オキシカルボニル基(炭素数2〜36の直鎖または分岐鎖アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、シクロアルケニルオキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシロキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、オレイルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、プロパギルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、ジアルキルホスホノ基(炭素数2〜36のジアルキルホスホノ基であり、例えば、ジエチルホスホノ、ジメチルホスホノ)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(炭素数1〜36のアルキルまたはアリールスルホニル基であり、例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基)、フッ素化アルキル基(炭素数1〜36のフッ素化アルキル基であり、例えばトリフロロメチル)を表わす。R21として特に好ましくはシアノ基、脂肪族オキシカルボニル基、フッ素化アルキル基である。
【0026】
22として好ましくは、R21で挙げたような脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基(炭素数1〜36のカルバモイル基であり、例えば、ジフェニルカルバモイル、ジオクチルカルバモイル)、スルファモイル基(炭素数1〜36のスルファモイル基であり、例えば、ジメチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル)、R21で挙げたようなジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基(炭素数12〜50のジアリールホスホノ基であり、例えばジフェニルホスホノ、ジ(p−トルイル)ホスホノ)を表す。
【0027】
23としては、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイルオキシ基、複素環チオ基から選ばれる置換基が好ましく、これらはさらに置換基を有していても良い。R23は、さらに好ましくは、脂肪族基(好ましくはアルキル基、アラルキル基)、アリール基、アルコキシ基またはアシルアミノ基あり、これらはさらに置換されていてもよい。
【0028】
Yとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アリールオキシ基、複素環アシルオキシ基、ジアルキルホスホノオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基又はカルバモイルオキシ基である。また、離脱基または離脱基から放出される化合物が更に現像主薬酸化体(好ましくは芳香族第1級アミンカラー現像主薬酸化体)と反応する性質を有しているものも好ましい。例えば離脱基が非発色カプラー、ハイドロキノン誘導体、アミノフェノール誘導体、スルホンアミドフェノール誘導体などが挙げられる。
【0029】
前記一般式(CP−I)で表されるカプラーは好ましくは下記一般式(CP−II)で表される。
【0030】
【化6】

【0031】
一般式(CP−II)において、R11、R12、R13、R14、R15は同じであっても異なってもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表す。Zは両端の炭素原子と共に環構造を形成するのに必要な非金属原子群を表し、Zの形成する非金属原子群は置換基で置換されていてもよい。Xは水素原子又は置換基を表す。R16、R19、R20は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、または置換基を表す。R17はアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、窒素原子で結合した含窒素ヘテロ環基を表す。R18はアルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、窒素原子で結合した含窒素ヘテロ環基を表す。R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は互いに結合し、5〜8員環を形成していてもよい。
【0032】
以下、一般式(CP−II)で表されるカプラーを詳細に説明する。
一般式(CP−II)において、R11、R12、R13、R14、R15は同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表す。該置換基としては、置換可能なものであればよく、置換若しくは無置換の脂肪族基又は、置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、さらに好ましいものとしては以下に述べるものである。
11、R12として好ましくは、脂肪族基を表し、例えば炭素数1〜36の、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基で、詳しくは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、トリデシル、シクロペンチル、シクロヘキシルを表す。脂肪族基としてより好ましくは、炭素数1〜12である。
13、R14、R15として好ましくは、水素原子又は脂肪族基を表す。該脂肪族基としては、先にR11、R12で挙げた基が挙げられる。R13、R14、R15は特に好ましくは水素原子である。
【0033】
一般式(CP−II)において、Zは両端の炭素原子と供に環構造を形成するのに必要な非金属原子群を表し、Zの形成する非金属原子群(環)は置換基で置換されていてもよい。Zで形成される環は、好ましくは、5〜8員環であり、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子又は炭素原子が挙げられ、さらに好ましくは、炭素原子である。
Zで形成される環としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピペラジン環、オキサン環、チアン環等が挙げられ、これらの環は、さらに置換基で置換されていてもよい。
Zで形成される環として好ましくは、置換されてもよいシクロヘキサン環であり、特に好ましくは、4位が炭素数1〜24のアルキル基(さらに置換基で置換されていてもよい)で置換されたシクロヘキサン環である。
【0034】
一般式(CP−II)において、Xは、水素原子又は置換基を表す。該置換基は、酸化カップリング反応時にX−C(=O)O−基の離脱を促進する基が好ましい。Xは、その中でも、ヘテロ環、置換又は無置換のアミノ基、もしくは、アリール基を表すのが好ましい。ヘテロ環としては、窒素原子、酸素原子、又はイオウ原子を有する5〜8員環で炭素数1〜36のものが好ましい。さらに好ましくは、窒素原子で結合した5員又は6員環で、そのうち6員環が特に好ましい。これらの環はベンゼン環又はヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。具体例として、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ラクタム化合物、ピペリジン、ピロリジン、ピロール、モルホリン、ピラゾリジン、チアゾリジン、ピラゾリン及びこれらに置換可能な置換基が置換した化合物などが挙げられる。この場合の好ましい置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アシルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基等が挙げられる。置換アミノ基の好ましい置換基としては、脂肪族基、アリール基若しくはヘテロ環基が挙げられ、置換アミノ基としては、1置換よりも2置換の方が好ましい。脂肪族基としては、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、例えば炭素数36以下のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられ、さらにこれらは、シアノ基、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルコキシカルボニル基(例えばエトキシカルボニル)、クロル等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基で置換されていてもよい。アリール基としては、炭素数6〜36のものが好ましく、さらに単環がより好ましい。具体例としては、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2−メチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル等が挙げられる。
Xは、特に好ましくはアルコキシカルボニル基で置換された脂肪族基を有する2置換アミノ基である。
【0035】
一般式(CP−II)において、R16、R19、R20は水素原子、又は置換基を表す。好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アゾリル基を挙げることができる。さらに好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シアノ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ホスホニル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。特に好ましくは水素原子である。
【0036】
一般式(CP−II)において、R17はアシルアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2〜36のアシルアミノ基であり、例えば、アセトアミド、t−ブチルアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、2−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブタンアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド、2−{4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ}デカンアミド)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ドデシルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−ブチルアミノ、置換基を有していてもよい炭素数6〜36のアニリノ基、例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ、2−クロロ−5−テトラデカンアミドアニリノ、2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルアニリノ、N−メチルアニリノ、2−クロロ−5−{2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ドデカンアミド}アニリノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノ)、ウレイド基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のウレイド基であり、例えば3、3ジメチルウレイド)、窒素原子で結合した含窒素ヘテロ環基(好ましくは、置換基を有していてもよい5〜8員環の含窒素ヘテロ環であり、例えば、1−ピロリジニル、1−ピペリジル、1−ピペラジニル、4−モルホリニル、インドリニル)を表す。
17として好ましくは、アシルアミノ基、窒素原子で結合した含窒素ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、アシルアミノ基である。
【0037】
一般式(CP−II)において、R18はアルコキシ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ)、アリールオキシ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜36のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ)、アリールチオ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜36のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ)、アシルアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2〜36のアシルアミノ基であり、例えば、アセトアミド、t−ブチルアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、2−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブタンアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド、2−{4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ}デカンアミド)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ドデシルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−ブチルアミノ、置換基を有していてもよい炭素数6〜36のアニリノ基、例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ、2−クロロ−5−テトラデカンアミドアニリノ、2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルアニリノ、N−メチルアニリノ、2−クロロ−5−{2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ドデカンアミド}アニリノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノ)、ウレイド基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のウレイド基であり、例えば3,3−ジメチルウレイド)、窒素原子で結合した含窒素ヘテロ環基(好ましくは、置換基を有していてもよい5〜8員環の含窒素ヘテロ環であり、例えば、1−ピロリジニル、1−ピペリジル、1−ピペラジニル、4−モルホリニル、インドリニル)を表す。
18として好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、アルコキシ基である。
【0038】
一般式(CP−II)において、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は互いに結合し、5〜8員環(例えば該ベンゼン環と共にインドリン環、テトラヒドロナフタレン環)を形成していてもよい。
【0039】
前記一般式(CP−II)で表されるカプラーは、さらに好ましくは下記一般式(CP−III)で表される。
【0040】
【化7】

【0041】
一般式(CP−III)において、R31はアルキル基を表す。R32はアルコキシ基を表す。R33、R34、R35は水素原子またはアルキル基を表す。R33とR34は各アルキル基の場合、互いに結合し、3〜6員環を形成していてもよい。
【0042】
以下、一般式(CP−III)で表されるカプラーを詳細に説明する。
一般式(CP−I)において、R31アルキル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルコキシ基であり、例えば、メチル、エチル)を表す。R31はより好ましくはエチル基である。R32はアルコキシ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ)を表す。R32はより好ましくはメトキシ基である。
【0043】
33、R34、R35は水素原子またはアルキル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜36のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、クロロメチル)を表す。R33、R34、R35はより好ましくはメチル基である。
【0044】
一般式(CP−III)において、R33とR34は各々アルキル基の場合、互いに結合し3〜6員環(例えばシクロプロピル環)を形成することも好ましい。
【0045】
以下、本発明の一般式(CP−III)で表されるカプラーの具体例(例示化合物CP−(1)〜CP−(10))を示すが、これらに限定されるものではない。
【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
一般式(CP−I)で表される色素形成カプラーは、特開2001−342189号公報、特開2002−287311号公報に記載の方法、またはこれらに準じた方法で容易に合成することができる。
【0049】
一般式(CP−I)で表される色素形成カプラーは、一般的には0.01〜1g/m2、好ましくは0.05〜0.4g/m2、さらに好ましくは0.1〜0.3g/m2の量で塗布されることが好適である。
【0050】
本発明の感光材料に使用可能なイエロー色素形成カプラー(本明細書において、単に「イエローカプラー」という場合がある)としては、後述の表1中に記載のイエローカプラーや、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号、同第953871A1号、同第953872A1号、同第953873A1号、同第953874A1号、同第953875A1号等の各明細書に記載のピロール−2又は3−イルもしくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。これらの中では、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0051】
本発明の感光材料において、好ましくは下記一般式(I)で表される色素形成カプラーの少なくとも1種を感光材料構成層のいずれか1層が含有することが好ましい。
【0052】
【化10】

【0053】
式中、R1は水素原子以外の置換基を表す。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、スルホンアミド基(アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0054】
なお、上述の置換基はさらに置換基で置換されていてもよく、該置換基としては上述の基が挙げられる。
【0055】
好ましくは、R1は置換もしくは無置換のアルキル基である。R1の総炭素数は1以上60以下が好ましく、6以上50以下がより好ましく、11以上40以下がさらに好ましく16以上30以下が最も好ましい。R1が置換アルキル基である場合の置換基としては前述のR1の置換基として挙げた例が挙げられる。また、R1のアルキル基自身の炭素数は1〜40が好ましく、3〜36がより好ましく、さらに好ましくは8〜30である。この好ましい順は特に、Qには依存しないが、特に以下に述べるQが−C(−R11)=C(−R12)−CO−で表される基の場合に好ましい。
【0056】
好ましくは、R1は炭素数11以上の無置換アルキル基、もしくは2位、3位あるいは4位にアルコキシ基またはアリールオキシ基が置換したアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数16以上の無置換アルキル基、もしくは3位にアルコキシ基またはアリールオキシ基が置換したアルキル基であり、最も好ましくはC1633基、C1837基、3−ラウリルオキシプロピル基、もしくは3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)プロピル基である。
【0057】
一般式(I)においてQは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。好ましくは形成される5〜7員環は置換もしくは無置換、単環もしくは縮合環のヘテロ環であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される。さらに好ましくは、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO2−、もしくは−C(−R11)=C(−R12)−CO−で表される基を表す(本発明においてこれらの基の表記はこれらの基で表される基の結合の向きを制限するものではない)。このうち好ましくは、Qは−C(−R11)=C(−R12)−SO2−で表される基を表す。R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。形成される5員〜7員の環は飽和または不飽和環であり、該環は脂環、芳香環、ヘテロ環であってもよく、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が挙げられる。また置換基としては前述のR1の置換基として挙げた例が挙げられる。
【0058】
これらの各置換基や複数の置換基が互いに結合して形成した環は、更に置換基(前述のR1の置換基として例示した基が挙げられる)で置換されてもよい。
【0059】
一般式(I)において、R2は水素原子以外の置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくは、R2はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル)、アリール基(たとえばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、ドデシルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、ナフチルチオ)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。なおR2が−CONH−基に対してオルト位にある場合、好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基である。
本発明においては少なくとも1つのR2が−CONH−基に対してオルト位にある場合が好ましい。
【0060】
一般式(I)において、mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
mは好ましくは0〜3であり、0〜2がより好ましく、1〜2がさらに好ましく、2である場合が最も好ましい。
【0061】
一般式(I)においてXは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。Xが現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基である場合の例としては窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子)などが挙げられる。
窒素原子で離脱する基としては、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族(本明細書では4n+2個の環状共役電子を有するものを意味する)もしくは非芳香族、単環もしくは縮合環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有する5もしくは6員のヘテロ環基)であり、例えばスクシンイミド、マレインイミド、フタルイミド、ジグリコールイミド、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、インドール、ベンゾピラゾール、ベンツイミダゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン−2,4−ジオン、オキサゾリジン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2−オン、ベンツイミダゾリン−2−オン、ベンゾオキサゾリン−2−オン、ベンゾチアゾリン−2−オン、2−ピロリン−5−オン、2−イミダゾリン−5−オン、インドリン−2,3−ジオン、2,6−ジオキシプリンパラバン酸、1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、2−ピリドン、4−ピリドン、2−ピリミドン、6−ピリダゾン、2−ピラゾン、2−アミノ−1,3,4−チアゾリジン−4−オン)、カルボナミド基(例えばアセタミド、トリフルオロアセタミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アリールアゾ基(例えばフェニルアゾ、ナフチルアゾ)、カルバモイルアミノ基(例えばN−メチルカルバモイルアミノ)などが挙げられる。
【0062】
窒素原子で離脱する基のうち、好ましいものはヘテロ環基であり、さらに好ましいものは、環構成原子として窒素原子を1、2、3または4個有する芳香族ヘテロ環基、または下記一般式(L)で表されるヘテロ環基である。
【0063】
【化11】

【0064】
式中、Lは−NC(=O)−と共に5〜6員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基を表す。
これらの例示は上記ヘテロ環基の説明の中で挙げており、これらが更に好ましい。なかでも、Lは5員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基が好ましい。
【0065】
酸素原子で離脱する基としては、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(例えばピリジルオキシ、ピラゾリルオキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシ基(例えばメトキシ、ドデシルオキシ)、カルバモイルオキシ基(例えばN,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルバモイルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)などが挙げられる。
酸素原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基である。
【0066】
イオウ原子で離脱する基としては、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、ナフチルチオ)、ヘテロ環チオ基(例えばテトラゾリルチオ、1,3,4−チアジアゾリルチオ、1,3,4−オキサゾリルチオ、ベンツイミダゾリルチオ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、オクチルチオ、ヘキサデシルチオ)、アルキルスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばベンゼンスルフィニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)などが挙げられる。
イオウ原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、ヘテロ環チオ基がより好ましい。
【0067】
Xは置換基により置換されていてもよく、Xを置換する置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
Xは、現像主薬の酸化体とのカップリング反応により離脱する基が好ましく、このような離脱基の中でも、好ましくは窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基であり、より好ましくは窒素原子で離脱する基であり、更に好ましくは、窒素原子で離脱する基で述べた好ましい基の順に好ましい。
Xの好ましい基をさらに説明すると、窒素原子で離脱する基が好ましいが、窒素原子を少なくとも2個(好ましくは2個)有する芳香族ヘテロ環基(好ましくは5員環の芳香族ヘテロ環基で、置換基を有してもよいピラゾール基など)または前記一般式(L)で表される基が特に好ましい。
【0068】
またXは写真性有用基であってもよい。この写真性有用基としては、現像抑制剤、脱銀促進剤、レドックス化合物、色素、カプラー等、あるいはこれらの前駆体が挙げられる。
なお、本発明においては、好ましくは上記のような写真性有用基でない方が好ましい。
【0069】
カプラーを感光材料中で不動化するために、Q、R1、X、あるいはR2の少なくとも1つは置換基を含めた総炭素数が8以上50以下であることが好ましく、より好ましくは総炭素数が10以上40以下である。
【0070】
一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物を下記一般式(II)で表すことができる。以下に一般式(II)で表される化合物を詳細に説明する。
【0071】
【化12】

【0072】
一般式(II)において、R1、R2、m、Xは一般式(I)において述べたものと同じものを表し、好ましい範囲も同様である。
【0073】
一般式(II)において、R3は置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくは、R3はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル)、アリール基(たとえばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。
nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0074】
本発明において一般式(I)もしくは一般式(II)で表されるカプラーのうち、好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なおカップリング位の水素原子(Xが置換する炭素原子上の水素原子)が、カップリング位に結合したC=N部の窒素原子(環構成している、R1が結合していない窒素原子)上に移動した互変異性体も本発明に含まれる。
【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
【化15】

【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
【化18】

【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
【化21】

【0084】
【化22】

【0085】
一般式(I)で表される色素形成カプラーは、特開2003−173007号公報に記載された方法、もしくは記載の方法に準じた方法で容易に合成することができる。
【0086】
一般式(I)で表される色素形成カプラーは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル添加するのが好ましく、2×10-3〜3×10-1モル添加するのがより好ましい。
一般式(I)で表される色素形成カプラーの使用量のさらなる好ましい範囲は、本発明のハロゲン化銀写真感光材料において、0.2ミリモル/m2以上0.5ミリモル/m2以下がさらに好ましく、0.25ミリモル/m2以上0.40ミリモル/m2以下が最も好ましい。
【0087】
本発明に用いられるマゼンタカプラーとしては、後述の表1中の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号公報に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号公報に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号公報に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226849A号や同第294785A号の各明細書に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号公報に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該公報の段落番号0009〜0026はそのまま本発明に適用され、本明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号の各明細書に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0088】
本発明の感光材料はカラー現像主薬を含有するカラー現像処理組成物により発色現像がなされ色素画像を形成することが好ましい。カラー現像主薬としては、好ましい例は公知の芳香族第1級アミン化合物(芳香族第1級アミン系カラー現像主薬)、特にp−フェニレンジアミン誘導体であり、以下に例を示す。
【0089】
1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
2)4−アミノ−3−メチル−N,N−ジエチルアニリン
3)4−アミノ−N−(β−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン
4)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
5)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
6)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アニリン
7)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アニリン
8)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
9)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
10)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メトキシエチル)アニリン
11)4−アミノ−3−メチル−N−(β−エトキシエチル)−N−エチルアニリン
12)4−アミノ−3−メチル−N−(3−カルバモイルプロピル)−N−n−プロピル−アニリン
13)4−アミノ−N−(4−カルバモイルブチル)−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
14)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシピロリジン
15)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)ピロリジン
16)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ピロリジンカルボキサミド
【0090】
上記p−フェニレンジアミン誘導体のうち特に好ましくは例示化合物5)、6)、7)、8)及び12)であり、その中でも化合物5)と8)が好ましく、化合物8)が色素形成後の吸収および画像保存性などの点から最も好ましい。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は、固体素材の状態では、通常硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩の形である。
処理剤中の芳香族第1級アミン現像主薬含有量は、使用液中の該現像主薬の濃度は現像液1L当たり2ミリモル〜200ミリモル、好ましくは6ミリモル〜100ミリモル、より好ましくは10ミリモル〜40ミリモルとなるように加えられる。
【0091】
以下、本発明の画像形成方法に適用されるハロゲン化銀カラー感光材料(以下、感光材料という)について説明する。
本発明の感光材料は、支持体上に、イエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性含有ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有する。前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層(Y)として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層(M)として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層(C)として機能する。
上記Y、M、Cの各発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる3種の波長領域の光(例えばY、M、Cの順に、青色、緑色、赤色の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0092】
上記の感光性に対して、光源として半導体レーザーやLEDを用いたデジタル露光方式の用途からは、上記3種の異なる分光感度は任意に選択することが可能である。このとき色分離の観点からは最近接の分光感度極大が少なくとも30nm以上離れていることが好ましい。この少なくとも3種の異なる分光感度極大をもつ感光層(λ1、λ2、λ3)に含有される発色カプラー(Y、M、C)との対応関係は任意の組み合わせが可能である。さらに青色、緑色、赤色の光以外の波長域を用いることも可能であり、赤外分光感度を有し赤外レーザー露光に対応できることも好ましい。
【0093】
本発明の感光材料は、イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する非感光性親水性コロイド層として、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0094】
以下に、本発明で好ましく使用されるハロゲン化銀乳剤について説明する。
ハロゲン化銀乳剤の粒子形状は、特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面又は{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子からなることが好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。
本発明では、立方体あるいは14面体粒子であることが更に好ましい。
【0095】
ハロゲン化銀乳剤は、塩化銀を含有しており、該塩化銀の含有率は90モル%以上であることが好ましく、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。
また、ハロゲン化銀乳剤は、臭化銀及び/又は沃化銀を含有していることが好ましい。臭化銀含有率としては、硬調で潜像安定性に優れることから、0.1〜7モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることが更に好ましい。沃化銀含有率としては、高照度露光で高感度かつ硬調であることから0.02〜1モル%であることが好ましく、0.05〜0.50モル%が更に好ましく、0.07〜0.40モル%が最も好ましい。
また、ハロゲン化銀乳剤は、沃臭塩化銀乳剤であることが好ましく、上記のハロゲン組成の沃臭塩化銀乳剤が更に好ましい。
【0096】
ハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相及び/又は沃化銀含有相を有することが好ましい。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは周囲よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、少なくともいずれか最低1個の含有相、好ましくはそれぞれ最低1個の含有相を有する必要がある。
【0097】
ハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが好ましい。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点又は極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナー又はエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0098】
ハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、本発明のハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0099】
ハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相及び沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよいが、異なる場所にある方が、粒子形成の制御を容易にする点で好ましい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0100】
ハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0101】
ハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、又は臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリ若しくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。あるいは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0102】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0103】
ハロゲン化銀乳剤に含まれる全粒子の球相当径の変動係数は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の球相当径の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。ここで、本明細書において粒子の球相当径とは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。ハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。
【0104】
ハロゲン化銀乳剤に含まれる粒子の球相当径は、0.6μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることが更に好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径の下限は、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。球相当径0.6μmの粒子は、辺長約0.48μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.5μmの粒子は辺長約0.4μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.4μmの粒子は辺長約0.32μmの立方体粒子に相当する。
【0105】
ハロゲン化銀乳剤は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウムは、イリジウム錯体を形成していることが好ましく、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様としては、Cl、Br又はIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、Br又はIが混在していてもよい。Cl、Br又はIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0106】
6個全てのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例としては、[IrCl62-、[IrCl63-、[IrBr62-、[IrBr63-および[IrI63-を挙げるが、これらに限定されない。
【0107】
イリジウムの他の好ましい態様としては、ハロゲン及びシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾール又は置換チアゾール、チアジアゾール又は置換チアジアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾール又は置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個若しくは2個の5−メチルチアゾール、2−クロロ−5フルオロチアジアゾールまたは2−ブロモ−5フルオロチアジアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0108】
少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾール又は置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例としては、[Ir(H2O)Cl52-、[Ir(OH)Br53-、[Ir(OCN)Cl53-、[Ir(チアゾール)Cl52-、[Ir(5−メチルチアゾール)Cl52-、[Ir(2−クロロ−5−フルオロチアジアゾール)Cl52-および[[Ir(2−ブロモ−5−フルオロチアジアゾール)Cl52-を挙げるが、これらに限定されない。
【0109】
ハロゲン化銀乳剤は、上記のイリジウム錯体以外に[Fe(CN)64-、[Fe(CN)63-、[Ru(CN)64-、[Re(CN)64-、[Os(CN)64-等のCNリガンドを有するFe、Ru、ReまたはOsを中心金属とする6配位錯体を含有することが好ましい。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、更にRu、ReまたはOsを中心金属とするペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体や、Cl、Br又はIをリガンドとして有するRhを中心金属とする6配位錯体を含有することが好ましい。これらのリガンドは一部アクア化していてもよい。
【0110】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン及びリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらの金属錯体は、種類によって最適量は異なるが、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モル〜1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-9モル〜1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0111】
これらの金属錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0112】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号公報、特開平2−125245号公報、特開平3−188437号公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号明細書及び同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0113】
ハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独若しくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号公報の第18頁右下欄〜第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。このうち、特に、金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。
【0114】
金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0115】
有機配位子(有機化合物)を有する金(I)化合物としては、特開平4−267249号公報に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えばビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート、特開平11−218870号公報に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1−[3−(2−スルホナートベンズアミド)フェニル]−5−メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4−268550号公報に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1−メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。これらの有機配位子を有する金(I)化合物は、あらかじめ合成して単離したものを使用する他に、有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを混合することにより、発生させて単離することなく、乳剤に添加することができる。更には、乳剤に有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを別々に添加し、乳剤中で有機配位子を有する金(I)化合物を発生させてもよい。
【0116】
また、米国特許第3,503,749号明細書に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8−69074号、特開平8−69075号、特開平9−269554号の各公報に記載の金化合物、米国特許第5,620,841号、同第5,912,112号、同第5,620,841号、同第5,939,245号、同第5,912,111号に記載の化合物も用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0117】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154),ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)第79巻,60〜66頁,1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B,第263巻,1328頁、1966年刊等に記載されている。硫化金コロイドの添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0118】
金増感と併せてカルコゲン増感も同一の分子で行うことが可能であり、AuCh−を放出可能な分子を用いることができる。ここでAuはAu(I)を表し、Chは、硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表す。AuCh−を放出可能な分とは、例えば、AuCh−Lで表される金化合物が挙げられる。ここで、LはAuChと結合して分子を構成する原子団を表す。また、Auに対して、Ch−Lとともに更にもう一つ以上の配位子が配位してもよい。具体的な化合物の例としては、チオ糖のAu(I)塩(α金チオグルコース等の金チオグルコース、金パーアセチルチオグルコース、金チオマンノース、金チオガラクトース、金チオアラビノース等)、セレノ糖のAu(I)塩(金パーアセチルセレノグルコース、金パーアセチルセレノマンノース等)、テルロ糖のAu(I)塩、等である。
ここでチオ糖、セレノ糖、テルロ糖とは、糖のアノマー位水酸基がそれぞれSH基、SeH基、TeH基に置き換わった化合物を表す。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは3×10-6〜3×10-4モルである。
【0119】
ハロゲン化銀乳剤には、上記の金増感と他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。特に、硫黄増感、セレン増感と組み合わせることが好ましい。
【0120】
ハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は、特開昭62−215272号公報の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号明細書に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0121】
ハロゲン化銀乳剤には、その保存性を高めるため、特開平11−109576号公報に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号公報に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基若しくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号公報に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン1、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号明細書の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号明細書の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本発明においても好ましく適用され、本明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号公報の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は、本発明においても好ましく使用される。
【0122】
ハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。青、緑、赤領域の分増感に用いられる分光増感色素としては、例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & ons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号公報に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
デジタル露光方式の用途においても、分光増感は光源の光波長域に応じて任意の分光感度を付与する目的で行われ、必要により赤外分光増感を有することも好ましい。デジタル露光を目的とした分光増感法は特開平5−142712号公報に記載の方法も好ましく、赤外分光増感色素としては同公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0123】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲である。
【0124】
以下、本発明の感光材料に関してさらに詳細に説明する。
【0125】
本発明の感光材料には親水性バインダーとしてゼラチンを用いるが、必要に応じて他のゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外の蛋白質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドもゼラチンと併せて用いることができる。本発明に係わるハロゲン化銀カラー写真感光材料に用いられるゼラチンは、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのいずれでもよく、また牛骨、牛皮、豚皮などのいずれを原料として製造されたゼラチンでもよいが、好ましくは牛骨、豚皮を原料とした石灰処理ゼラチンである。
【0126】
好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0127】
本発明の感光材料における写真構成層中のゼラチン総塗設量は、即ち支持体よりハロゲン化銀乳剤層を塗設した側にある支持体から最も離れた親水性コロイド層までの感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層中に含有される親水性バインダーの総量は、4.0g/m2以上7.0g/m2以下が好ましく、より好ましくは4.0g/m2以上6.5g/m2以下、最も好ましくは4.0g/m2以上6.0g/m2以下である。親水性バインダー量が上記範囲よりも多いと発色現像処理の迅速性を損なう、ブリックス褪色の悪化、リンス工程(水洗及び/又は安定化工程)の迅速処理性を損なう、などにより本発明の効果が低下することがある。また、親水性バインダー量が上記範囲よりも少ない場合には圧力かぶり筋など膜強度の不足に伴う弊害を来しやすいので好ましくない。
【0128】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号の各公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0129】
本発明の感光材料には、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0130】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号公報3頁右上欄〜8頁に記載された染料や、特開平3−7931号公報3頁右上欄〜11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号公報に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号公報の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号公報の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同第3,459,563号の各明細書に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0131】
本発明の感光材料は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0132】
しかしながら、これとは異なった層構成をとっても構わない。
本発明の感光材料において、青感光性ハロゲン化銀乳剤層中に含まれるハロゲン化銀乳剤は、ネガのイエローマスクや露光時の光源であるハロゲンの分光特性上、緑感光性ハロゲン化銀乳剤や赤感光性ハロゲン化銀乳剤に対して相対的に高感度であることが好ましい。そのため、青感光性乳剤の粒子辺長が、他層の粒子辺長と比較して大きいことが好ましい。更に、一般に知られているイエローカプラー発色色素のモル吸光係数は、マゼンタカプラー発色色素やシアンカプラー発色色素と比較して低く、イエローカプラー塗設量増加に伴い青感光性乳剤塗設量も増加する傾向にある。このため、イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層は、引っ掻き等、感光材料表面からの圧力に対する耐性を考慮すると他層と比較して不利であり、支持体に近い側に位置することが好ましい。
【0133】
即ち、イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該ハロゲン化銀乳剤層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有青感性ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層または乳剤層の中央の層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。
【0134】
本発明の感光材料に適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号の公報または明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等の公報または明細書に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0135】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表に示す特許文献の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0136】
【表1】

【0137】
本発明の感光材料には、色素形成カプラーは、写真的有用物質、その他高沸点有機溶媒に加え、ともに乳化分散し、分散物として感光材料に組み込むことが好ましい。この液を親水性コロイド中、好ましくはゼラチン水溶液中に、界面活性剤の分散剤と共に超音波、コロイドミル、ホモジナイザー、マントンゴーリン、高速ディゾルバー等の公知の装置により微粒子状に乳化分散し、分散物を得る。
高沸点有機溶媒は、特に制限するものではなく、通常のものが用いられ、例えば米国特許第2,322,027号明細書、特開平7−152129号公報に記載のものが挙げられる。
また、高沸点有機溶媒と共に補助溶媒を用いることができる。補助溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級アルコールのアセテート、プロピオン酸エチル、2級ブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、s−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテートやシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0138】
更には必要に応じ、水と完全に混和する有機溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフランやジメチルホルムアミド等を一部併用する事が出来る。またこれらの有機溶媒は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、乳化分散物状態での保存時の経時安定性改良、乳剤と混合した塗布用最終組成物での写真性能変化抑制・経時安定性改良等の観点から必要に応じて乳化分散物から、減圧蒸留、ヌードル水洗あるいは限外ろ過などの方法により補助溶媒の全て又は一部を除去することができる。
この様にして得られる親油性微粒子分散物の平均粒子サイズは、0.04〜0.50μmが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.30μmであり、最も好ましくは0.06〜0.20μmである。平均粒子サイズは、コールターサブミクロン粒子アナライザーmodel N4(コールターエレクトロニクス社、商品名)等を用いて測定できる。
【0139】
また、白地の色味調節のために本発明に用いられる乳化物中に色味付け顔料を共乳化してもよく、本発明の感光材料に使用するカプラー等の写真用有用化合物を溶解する有機溶媒中に共存させ、共乳化して乳化物として調製してもよい。
【0140】
なお、感光材料に用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、既に説明したが、これら以外に、特開昭62−215272号公報の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号公報の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号明細書の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO98/33760号明細書の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号公報の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0141】
感光材料に使用可能なカプラーは、前記表1中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号明細書)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0142】
本発明の感光材料には、公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許文献に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号及び独国特許第19629142A1号の公報または明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独逸特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許19806846A1号及び仏国特許第2760460A1号の各明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0143】
本発明の感光材料には、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号等の公報または明細書に記載されている化合物を使用できる。
【0144】
本発明の感光材料には、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0145】
本発明の感光材料には、塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用してもかまわないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
【0146】
本発明の感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。
感光材料に使用可能な写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができるが、本発明においては反射支持体を用いることが好ましい。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0147】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感材の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好しくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いる事ができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。耐水性樹脂層中に含有する蛍光増白剤の具体例としては、例えば、4,4'−ビス(ベンゾオキサゾリル)スチルベンや4,4'−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベンおよびこれらの混合物などが挙げられる。使用量は、特に限定されないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0148】
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0149】
反射支持体としてさらに好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.7g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0150】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、及びEP0880066号の各公報または明細書に記載されている例が挙げられる。
【0151】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0152】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては1×10-4秒以下、更に好ましくは1×10-6秒以下である。
【0153】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号並びに同10−202950号の各公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特開2000−310822号公報に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0154】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表1に掲示した公報に詳しく記載されている。
【0155】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号明細書に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1号や同EP0789480A1号の各明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0156】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許文献に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0157】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料に特に好ましく適用される。迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上、最も好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上、最も好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは150秒以下、更に好ましくは130秒以下6秒以上である。
尚、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ、次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0158】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0159】
例示化合物CP−(1)4.1g、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン3.53gおよび無水炭酸ナトリウム2.8gの混合物中に、酢酸エチル20ミリリットル、エタノール20ミリリットル、水10ミリリットルを順次添加し、室温で撹拌した。この混合物中に、過硫酸アンモニウム3.62gを水20ミリリットルに溶解した水溶液を滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌を続け、析出した結晶をろ取し、水、エタノールで順次洗浄した。結晶を乾燥後、メタノールから再結晶し、目的とする(色素1)を紫色の結晶として3.45g(収率70%)得た。得られた化合物の構造は1HNMRおよびマススペクトルによって確認した。
【0160】
1HNMR(300MHz,DMSO−d6) δ0.90(18H,s)、1.09(3H,d)、1.25(3H,t)、1.28(9H,s)、1.3〜1.8(7H,m)、2.98(3H,s)、3.25(2H,m)、3.36(3H,s)、3.72(4H,m)、3.96(3H,s)、6.00(1H,s)、7.00(2H,m)、7.20(1H,d)、7.30(1H,t)、7.95(1H,d)、8.54(1H,s)、8.70(1H,s)、9.16(1H,br.s)
MS m/z 856(M+)
融点 276〜279℃
酢酸エチル中のλmax=634nm εmax=5.9×104cm-1-1
【0161】
【化23】

【0162】
酢酸エチル20mlに(色素1)を50mg添加し超音波攪拌により溶解し25℃での過飽和分散液を調製した。この過飽和溶液のろ液から得た色素飽和溶液について分光吸収スペクトル(1mm石英ガラスセル)を測定した。最大吸収波長の吸光度実測値から、(色素1)の溶解度は5.5×10-4モル/Lであった。
【0163】
上記と同様の方法により、例示化合物CP−(2)、CP−(5)、および後述の実施例2に記載のカプラー(ExC−1)を用いて各々(色素2)、(色素3)、(色素4)を合成し、さらに各色素の溶解度を求めた。結果を表2に示す。
【0164】
【化24】

【0165】
【表2】

【0166】
表2の結果から明らかなように、本発明に用いられる一般式(CP−I)で表されるシアンカプラーから形成されたアゾメチン色素(色素1〜3)は、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下の範囲内であった。
【実施例2】
【0167】
(青感層乳剤BH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀溶液と塩化ナトリウム溶液を同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が10%の時点から20%の時点にかけて、Cs2[OsCl5(NO)]を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3.0モル%)およびK4[Fe(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が75%の時点から80%の時点にかけて、K2[IrCl6]を添加した。硝酸銀の添加が88%の時点から98%の時点にかけて、K2[IrCl5(H2O)]およびK[IrCl4(H2O)2]を添加した。硝酸銀の添加が93%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.3モル%)を激しく攪拌しながら添加した。得られた乳剤粒子は、辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤に沈降脱塩処理を施した後、ゼラチンと、化合物(Ab−1)、(Ab−2)、(Ab−3)、および硝酸カルシウムを添加し再分散を行った。
【0168】
再分散した乳剤を40℃で溶解し、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、セレン増感剤としてSE−1および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−3で表される繰り返し単位2または3が主成分の化合物(末端X1およびX2はヒドロキシル基)、化合物−4および臭化カリウムを添加した。更に乳剤調製工程の途中で増感色素S−1、S−2、およびS−3を添加することにより分光増感を行った。こうして得られた乳剤を乳剤BH−1とした。
【0169】
【化25】

【0170】
【化26】

【0171】
【化27】

【0172】
(青感層乳剤BL−1の調製)
乳剤BH−1の調製において、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤を再分散後、添加される各種化合物の量を乳剤BH−1から変更して所望の感度を得た以外は同様にして乳剤BL−1を調製した。
【0173】
(緑感層乳剤GH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、K2[IrCl6]およびK2[RhBr5(H2O)]を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.1モル%)を激しく攪拌しながら添加した。更に、硝酸銀の添加が87%から98%の時点にかけて、K2[IrCl5(H2O)]およびK[IrCl4(H2O)2]を添加した。得られた乳剤粒子は、辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤に前記と同様に沈降脱塩処理および再分散を施した。
【0174】
この乳剤を40℃で溶解し、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、セレン増感剤としてSE−1および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−4および臭化カリウムを添加した。更に乳剤調製工程の途中で増感色素として、増感色素S−4、S−5、S−6およびS−7を添加することにより分光増感を行った。こうして得られた乳剤を乳剤GH−1とした。
【0175】
【化28】

【0176】
(緑感層乳剤GL−1の調製)
乳剤GH−1の調製において、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤を再分散後、添加される化学増感剤の量を乳剤GH−1から変更して所望の感度を得た以外は乳剤GH−1と同様にして乳剤GL−1を調製した。
【0177】
(赤感層用乳剤RH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀と塩化ナトリウム同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が60%の時点から80%の時点にかけて、Cs2[OsCl5(NO)]を添加した。硝酸銀の添加が93%の時点から98%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が85%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3モル%)を添加した。硝酸銀の添加が88%の時点から93%の時点にかけて、K2[IrCl5(5−メチルチアゾール)]を添加した。硝酸銀の添加が93%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり沃化銀量が0.1モル%となる量)を激しく攪拌しながら添加した。更に、硝酸銀の添加が93%から98%の時点にかけて、K2[IrCl5(H2O)]およびK[IrCl4(H2O)2]を添加した。得られた乳剤粒子は立方体辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀乳剤粒子であった。得られた乳剤に前記と同様にして沈降脱塩処理および再分散を行った。
【0178】
この乳剤を40℃で溶解し、増感色素S−8、化合物−5、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、金硫黄増感剤として化合物−1、セレン増感剤としてSE−1および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−4、および臭化カリウムを添加した。こうして得られた乳剤を乳剤RH−1とした。
【0179】
【化29】

【0180】
(赤感層用乳剤RL−1の調製)
乳剤RH−1の調製において、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤を再分散後、添加される各種化合物の量を乳剤RH−1から変更して所望の感度を得た以外は同様にして乳剤RL−1を調製した。
【0181】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(Ex−Y)24g、色像安定剤(Cpd−8)6g、色像安定剤(Cpd−16)1g、色像安定剤(Cpd−17)1g、色像安定剤(Cpd−18)11g、色像安定剤(Cpd−19)1g、色像安定剤(Cpd−21)11g、色像安定剤(UV−A)1gを溶媒(Solv−4)17g、溶媒(Solv−6)3g、溶媒(Solv−9)17g及び酢酸エチル45mlに溶解し、この液を3gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液205g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて700gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと前記乳剤BH−1、BL−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0182】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層に(Ab−1)、(Ab−2)、(Ab−3)、及び(Ab−4)をそれぞれ全量が10.0mg/m2、43.0mg/m2,3.5mg/m2及び7.0mg/m2となるように添加した。
【0183】
1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、第三層、第五層、および第六層、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2、0.6mg/m2となるように添加した。青感性乳剤層および緑感性乳剤層に対し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10-4モル、2×10-4モル添加した。赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2を添加した。第三層、第五層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2、18mg/m2となるように添加した。各層にポリスチレンスルホン酸ナトリウムを必要に応じて加え塗布液の粘度を調節した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0184】
【化30】

【0185】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)、蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン(含有率0.03質量%))、および青味染料(群青、含有率0.33質量%)を含む。ポリエチレン樹脂の量は29.2g/m2
第一層(青色感光性乳剤層)
乳剤(BH−1とBL−1の5:5混合物(銀モル比)) 0.13
ゼラチン 1.00
イエローカプラー(Ex−Y) 0.24
色像安定剤(Cpd−8) 0.06
色像安定剤(Cpd−16) 0.01
色像安定剤(Cpd−17) 0.01
色像安定剤(Cpd−18) 0.11
色像安定剤(Cpd−19) 0.01
色像安定剤(Cpd−21) 0.11
色像安定剤(UV−A) 0.01
溶媒(Solv−4) 0.17
溶媒(Solv−6) 0.03
溶媒(Solv−9) 0.17
【0186】
第二層(中間発色層)
ゼラチン 0.33
イエローカプラー(Ex−Y) 0.08
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−16) 0.01
色像安定剤(Cpd−17) 0.01
色像安定剤(Cpd−18) 0.03
色像安定剤(Cpd−19) 0.01
色像安定剤(Cpd−21) 0.03
色像安定剤(UV−A) 0.01
溶媒(Solv−4) 0.05
溶媒(Solv−6) 0.01
溶媒(Solv−9) 0.05
【0187】
第三層(混色防止層)
ゼラチン 0.31
混色防止剤(Cpd−4) 0.020
混色防止剤(Cpd−12) 0.004
色像安定剤(Cpd−3) 0.004
色像安定剤(Cpd−5) 0.004
色像安定剤(Cpd−6) 0.020
色像安定剤(UV−A) 0.020
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.024
溶媒(Solv−2) 0.024
溶媒(Solv−5) 0.028
溶媒(Solv−8) 0.028
【0188】
第四層(赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1とRL−1の4:6混合物(銀モル比)) 0.09
ゼラチン 0.77
シアンカプラー(ExC−1) 0.16
シアンカプラー(ExC−2) 0.015
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.07
色像安定剤(Cpd−16) 0.08
色像安定剤(Cpd−17) 0.07
色像安定剤(UV−5) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.15
【0189】
第五層(混色防止層)
ゼラチン 0.39
混色防止剤(Cpd−4) 0.025
混色防止剤(Cpd−12) 0.005
色像安定剤(Cpd−3) 0.005
色像安定剤(Cpd−5) 0.005
色像安定剤(Cpd−6) 0.025
色像安定剤(UV−A) 0.025
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.030
溶媒(Solv−2) 0.030
溶媒(Solv−5) 0.035
溶媒(Solv−8) 0.035
【0190】
第六層(緑色感光性乳剤層)
乳剤(GH−1とGL−1の1:3混合物(銀モル比)) 0.09
ゼラチン 1.10
マゼンタカプラー(ExM) 0.12
色像安定剤(Cpd−2) 0.01
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.005
色像安定剤(Cpd−10) 0.005
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
色像安定剤(Cpd−18) 0.01
紫外線吸収剤(UV−B) 0.26
溶媒(Solv−3) 0.04
溶媒(Solv−4) 0.08
溶媒(Solv−6) 0.05
溶媒(Solv−9) 0.12
溶媒(Solv−7) 0.11
化合物(S1−4) 0.0015
【0191】
第七層(保護層)
ゼラチン 0.44
添加剤(Cpd−20) 0.015
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0192】
【化31】

【0193】
【化32】

【0194】
【化33】

【0195】
【化34】

【0196】
【化35】

【0197】
【化36】

【0198】
【化37】

【0199】
【化38】

【0200】
【化39】

【0201】
以上のようにして作成した試料を試料001とした。
次に試料001の赤感光性層に対して、以下に示すように溶媒(Solv−5)を増量し、増加した親油性成分の合計量に比例してゼラチンを増量した。この赤感光性層の溶媒(Solv−5)量およびゼラチン量が異なる以外は試料001と同様の試料002、003を作製した。
【0202】
第四層(試料002の赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1とRL−1の4:6混合物(銀モル比)) 0.09
ゼラチン 1.00
シアンカプラー(ExC−1) 0.16
シアンカプラー(ExC−2) 0.015
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.07
色像安定剤(Cpd−16) 0.08
色像安定剤(Cpd−17) 0.07
色像安定剤(UV−5) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.30
【0203】
第四層(試料003の赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1とRL−1の4:6混合物(銀モル比)) 0.09
ゼラチン 1.26
シアンカプラー(ExC−1) 0.16
シアンカプラー(ExC−2) 0.015
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.07
色像安定剤(Cpd−16) 0.08
色像安定剤(Cpd−17) 0.07
色像安定剤(UV−5) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.50
【0204】
試料001に対して赤感光性乳剤層のカプラー(ExC−1)を例示化合物Cp−(1)、Cp−(2)、Cp−(5)に各々同モル置換した以外は同様な構成の試料101、102、103を作製した。
次に試料002に対して赤感光性乳剤層のカプラー(ExC−1)を例示化合物Cp−(1)、Cp−(5)に各々同モル置換した以外は同様な構成の試料104、105、107を作製した。
次に、試料003に対して赤感光性乳剤層の色素形成カプラー(ExC−1)を例示化合物(1)に等モル置換した以外は同様な構成の試料106を作製した。
【0205】
各試料を用いて後述の発色現像によりシアン画像を得た。シアン画像から抽出した色素の構造は高速液体クロマトグラフ定性分析の結果、使用カプラーに対して下記表3に示す色素であった。
各試料の赤色感光性乳剤層の親油性成分におけるカプラー含有率を表3に示す。
【0206】
【表3】

なお、カプラー(ExC−2)から得られたアゾメチン色素の酢酸エチルに対する溶解度は0.5mol/L以上であった。
【0207】
処理A
上記の試料001を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア350(富士写真フイルム社製、商品名)を用いて標準的な写真画像を露光した。その後下記の処理工程にて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング処理液を用いた処理を処理Aとした。
【0208】
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 38.5℃ 45秒 45mL
漂白定着 38.0℃ 45秒 A剤17.5mL
B剤17.5mL
リンス1 38.0℃ 20秒 −
リンス2 38.0℃ 20秒 −
リンス3 38.0℃ 20秒 −
リンス4 38.0℃ 20秒 121mL
乾燥 80℃
(注)
* 感光材料1m2あたりの補充量
** 富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス4に供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは1から4への4タンク向流方式とした。
【0209】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−1) 2.2g 5.1g
蛍光増白剤(FL−2) 0.35g 1.75g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
ポリエチレングリコール平均分子量300 10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.20g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 4.8g 14.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.15 12.40
【0210】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 800mL 500mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL − 386mL
重亜硫酸アンモニウム(65%) 30.0g − 190g
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)
アンモニウム 47.0g 133g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 5g 6g
硝酸(67%) 16.5g 66.0g −
イミダゾール 14.6g 50.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 8.3g 33.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整)6.5 6.0 6.0
【0211】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0212】
処理B
上記の試料001を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア340(富士写真フイルム社製、商品名)を用いて標準的な写真画像を露光した。その後下記の処理工程にて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。なお、プロセッサーは下記処理時間にするため処理ラック改造により搬送速度変更を実施した。このランニング処理液を用いた処理を処理Bとした。
【0213】
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 45.0℃ 12秒 35mL
漂白定着 40.0℃ 12秒 A剤15mL
B剤15mL
リンス1 45.0℃ 4秒 −
リンス2 45.0℃ 2秒 −
リンス3 45.0℃ 2秒 −
リンス4 45.0℃ 3秒 175mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1m2あたりの補充量
【0214】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−3) 4.0g 10.0g
残色低減剤(SR−1) 3.0g 3.0g
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 2.0g 4.0g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム 10.0 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.10g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム
0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナートエチル)ヒドロキシルアミン
8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード
7.0g 19.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.25 12.8
【0215】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 700mL 300mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL − 400mL
亜硫酸アンモニウム 30.0g − −
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)
アンモニウム 47.0g 200g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 0.5g 10.0g
硝酸(67%) 7.0g 30.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 3.0g 13.0g −
重亜硫酸アンモニウム液(65%) − − 200g
コハク酸 7.0g 30.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整)6.0 2.0 5.6
【0216】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0217】
【化40】

【0218】
試料001〜107は感光材料を塗布後、25℃55%相対湿度条件に14日保存の後に以下の評価を行った。
各試料に以下の露光装置で上記処理Bでグレイを与える階調露光を与え、露光を終了して5秒後から上記処理AおよびBで発色現像処理を行った。レーザー光源としては、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG、商品名)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10-7秒であった。各試料からいずれも最大濃度2.3〜2.5のグレイ画像が得られた。
次に、上記露光方法により各試料にR(赤色)露光を階調様に施し、処理Aおよび処理Bのそれぞれの処理で各シアン階調画像を作製した。これらの処理で、本発明の試料はいずれも最大発色濃度2.0〜2.4のシアン画像が得られた。
(色再現性の評価)
上記露光方法により各試料にR露光を階調様に施し処理Aおよび処理Bにより各シアン階調画像を作製した。シアン発色部濃度1.0における反射スペクトルの結果から、550nm〜400nmのマゼンタないしはイエローに相当するいずれかの不要吸収も低く官能評価上も最も優れるものを○(特に優れるものを◎)、やや劣ると認められるものを△、550nm〜400nmのマゼンタないしはイエローに相当するいずれかの不要吸収が大きく明らかに劣るものを×として色再現性を評価した。
【0219】
(光堅牢性の評価)
上記画像試料に、370nmでの光透過率50%の紫外線カットフィルターおよび熱線カットフィルターを介してキセノン光(10万lxキセノン光照射器)を14日間照射した。シアン初期濃度2.0での暴露後の相対残存率(%)により光堅牢性を評価した。
【0220】
(白地保存性の評価)
処理Bで得た画像の白地の経時安定性により試料の迅速処理適性を評価した。白地の経時安定性は処理後試料を60℃70%R.H.に21日間保存し、保存前後のシアン濃度増加分を求めこれをΔDとした。官能評価によりΔDが0.05未満を好ましい範囲と判定した。
以上の結果を表4に示す。
なお、色再現性の評価と光堅牢性の評価は、R露光し、処理Bで処理した試料の結果を、また白地保存性の評価はR露光した試料の結果を記載した。
【0221】
【表4】

【0222】
表4から明らかなように、本発明の感光材料は、超迅速処理を行った場合に、色再現性、光堅牢性、白地保存性に優れたカラープリントが得られることがわかった。すなわち、赤色感光性層が本発明で規定される有機溶媒難溶性色素を有し親油性成分中のカプラー含有率が18質量%以上である試料101〜105、107は上記性能のいずれも優れた。
これに対し、酢酸エチルへの溶解度が本発明の規定外である有機溶媒難溶性色素を有する比較用試料001〜003はいずれも光堅牢性に劣った。また、親油性成分中のカプラー含有率が25.1質量%及び20.3質量%の試料001及び002は、白地保存性に優れていたが色再現性に劣り、親油性成分中のカプラー含有率が16.2質量%の試料003は、色再現性に優れていたが白地保存性に劣った。すなわち、比較例では色再現性と光堅牢性、白地保存性とを同時に満足することができなかった。一方、赤色感光性層が本発明で規定される有機溶媒難溶性色素を有するものの、高沸点有機溶媒を増量した比較試料106(カプラー含有率17.5質量%)は、白地保存性に劣った。
以上から、本発明では、高沸点有機溶媒を比較的少なく使用し、本発明で規定される好ましい色素を形成するカプラーをカプラー含有率の高い構成で使用することにより、色再現性、光堅牢性、白地保存性に優れたカラープリントが得られることがわかった。
【実施例3】
【0223】
前記実施例2の試料101における例示化合物CP−(1)を下記のカプラー(ExC−3)、(ExC−4)、(ExC−5)に各々同モル量置換する以外は同様の試料201、202、203を作製した。いずれのカプラーも前記一般式(CP−I)で表される化合物に該当するが、例示化合物CP−(1)は前記一般式(CP−III)で表される化合物に、カプラー(ExC−3)〜(ExC−5)は、前記一般式(CP−II)で表される化合物に該当する。実施例2と同様の露光後、処理Aおよび処理Bにより各試料のカラープリントを得た。
実施例2と同様の評価を行った結果、試料201、202、203においても本発明の効果が得られた。次に各試料のシアン最大濃度(Dmax)を評価した結果を表5に示す。
【0224】
【表5】

【0225】
例示化合物CP−(1)を用いた試料101〜103は、処理Aと処理Bのいずれも十分の発色濃度を示した。一方、カプラー(ExC−3)〜(ExC−5)を用いた試料201〜203はいずれも最大発色濃度は2.0以上であったが、処理AではDmaxが試料101〜103よりも低く、処理Bではさらに低くなり、発色濃度の点では試料101〜103よりも低下した。
この結果から、迅速処理での発色に優れる点から、本実施例に用いたピロロトリアゾール型カプラーの離脱基としては前記一般式(CP−III)に記載された構造が好ましいことがわかった。
【0226】
【化41】

【実施例4】
【0227】
以下に示す層構成以外の点では実施例2と同様の感光材料301を作製した。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
第一層(青色感光性乳剤層)
乳剤(BH−1とBL−1の5:5混合物(銀モル比)) 0.13
ゼラチン 1.32
イエローカプラー(Ex−Y) 0.34
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−2) 0.01
色像安定剤(Cpd−8) 0.08
色像安定剤(Cpd−16) 0.01
色像安定剤(Cpd−17) 0.02
色像安定剤(Cpd−18) 0.15
色像安定剤(Cpd−19) 0.01
色像安定剤(Cpd−21) 0.15
色像安定剤(UV−A) 0.01
溶媒(Solv−4) 0.23
溶媒(Solv−6) 0.04
溶媒(Solv−9) 0.23
【0228】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.39
混色防止剤(Cpd−4) 0.03
混色防止剤(Cpd−12) 0.01
色像安定剤(Cpd−3) 0.01
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−6) 0.05
色像安定剤(UV−A) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
溶媒(Solv−1) 0.03
溶媒(Solv−2) 0.03
溶媒(Solv−5) 0.04
【0229】
第三層(緑色感光性乳剤層)
乳剤(GH−1とGL−1の1:3混合物(銀モル比)) 0.11
ゼラチン 0.70
マゼンタカプラー(ExM) 0.12
紫外線吸収剤(UV−A) 0.03
色像安定剤(Cpd−2) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.005
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.01
色像安定剤(Cpd−10) 0.005
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
色像安定剤(Cpd−18) 0.01
溶媒(Solv−3) 0.03
溶媒(Solv−4) 0.06
溶媒(Solv−6) 0.03
溶媒(Solv−9) 0.08
【0230】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.39
混色防止剤(Cpd−4) 0.03
混色防止剤(Cpd−12) 0.01
色像安定剤(Cpd−3) 0.01
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−6) 0.05
色像安定剤(UV−A) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
溶媒(Solv−1) 0.03
溶媒(Solv−2) 0.03
溶媒(Solv−5) 0.04
【0231】
第五層(赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1とRL−1の4:6混合物(銀モル比)) 0.09
ゼラチン 1.04
シアンカプラー(ExC−1) 0.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.05
色像安定剤(Cpd−1) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.05
色像安定剤(Cpd−16) 0.08
色像安定剤(Cpd−17) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.20
【0232】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.34
紫外線吸収剤(UV−B) 0.24
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.11
【0233】
第七層(保護層)
ゼラチン 0.44
添加剤(Cpd−20) 0.015
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0234】
次に感光材料301の第五層のシアンカプラー(ExC−1)を例示化合物Cp−(1)およびCp−(5)に変更する以外は同様の感光材料302、303を作製した。作製した試料301、302、303の第五層の親油性成分中カプラー含有率は各々17.1%、18.5%、19.0%であった。
実施例2に記載の露光ならびに処理Aおよび処理Bにより本実施例の感光材料からカラープリント試料301、302、303を得た。実施例2に記載の評価を行った結果、表6に示すように本発明の感光材料302及び303は、色再現性、光堅牢性、白地保存性に優れることがわかった。
【0235】
【表6】

【実施例5】
【0236】
実施例2の試料101〜104を硫酸バリウム練り込んだ175μm厚みのPET反射支持体上に塗設した試料を作製し、実施例2に準じた評価を行った結果、ほぼ同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーであり、かつ該色素形成カプラーを、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項2】
前記のアゾメチン色素の酢酸エチルへの溶解度が、1×10-8mol/L以上7×10-4mol/L以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項3】
前記のアゾメチン色素の極大吸収波長が570nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項4】
前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーの少なくとも1種を含有するハロゲン化銀乳剤層が、総色素形成カプラー塗布量0.18ミリモル/m2以上0.28ミリモル/m2以下でありかつ色素形成後の該色素の極大吸収波長における最大光学反射濃度が2.0以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項5】
前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが下記一般式(CP−I)で表されるカプラーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】

一般式(CP−I)中、Gaは−C(R23)=もしくは−N=を表し、Gaが−N=を表すときGbは−C(R23)=を表し、Gaが−C(R23)=を表すときGbは−N=を表す。R21及びR22は、各々独立にハメットの置換基定数σp値が0.20以上1.0以下の電子吸引性基を表す。R23は置換基を表す。Yは、水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【請求項6】
前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料が下記一般式(I)で表される色素形成カプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化2】

式中、Qは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。R1は置換基を表す。R2は置換基を表す。mは0以上5以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【請求項7】
前記芳香族第一級アミン化合物の酸化体が、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリンの酸化体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項8】
前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して24質量%以上80質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項9】
支持体上にイエロー色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラー含有感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層のそれぞれ少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料を露光後、現像処理する画像形成方法であって、該色素形成カプラーの少なくとも1種が、芳香族第一級アミン化合物の酸化体との反応により、酢酸エチルへの溶解度が1×10-8mol/L以上5×10-3mol/L以下のアゾメチン色素を形成し、かつ該アゾメチン色素を形成する色素形成カプラーが、該色素形成カプラーを含有する層の総親油性成分に対して18質量%以上100質量%以下含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
前記のアゾメチン色素を形成する色素形成カプラーの少なくとも1種を含有するハロゲン化銀乳剤層が、総色素形成カプラー塗布量0.18ミリモル/m2以上0.28ミリモル/m2以下でありかつ色素形成後の該色素の極大吸収波長における最大光学反射濃度が2.0以上であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記現像処理において、発色現像時間が30秒以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記露光が、1×10-4秒以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2006−91791(P2006−91791A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286333(P2004−286333)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】