説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】 プリント条件が登録されていないフィルムであっても満足なプリントが得られ、日向や日陰の撮影でも色のバラツキが少なく、更に迅速処理適性に優れた撮影用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供すること。
【解決手段】 青感光性層、緑感光性層、赤感光性層の最小濃度をそれぞれDminB、DminG、DminRとし、特性曲線の最小濃度+0.30を与える露光量(logE)をそれぞれSB、SG、SRとし、SB、SG、SRから高露光量側にlogEで1.50の露光量点の濃度をD1.5B、D1.5G、D1.5Rとし、最小濃度+0.30の濃度とD1.5B、D1.5G、D1.5Rを直線で結んだ傾きをそれぞれγB、γG、γRとした場合、それらが特定の関係にあることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は撮影用ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、写真用プリンターの技術進歩により、簡単な操作で満足のいく写真プリントに仕上がるようになってきた。特に、1チャンネル型プリンターは、CCDカメラを用いてネガ画像を今までよりきめ細やかにスキャニング(画像走査)でき、それにより各シーンでのパターン分析をも加味して適切な露光制御をすることができる。
【0003】1チャンネル型プリンターのほとんどの機種は、フィルム固有のコードを読み取り、フィルムの種類を判別しプリント条件を決めている。カラーネガフィルムは市場に50種以上のものが存在し、それぞれのプリント条件をプリンターに予め入力しなければならない。しかし現状は、これらのフィルム固有の情報は実際には20種程度しか登録されておらず、登録されていないフィルムのプリント品質は色がバラツキ、満足のいかないものが多く存在するのも事実である。
【0004】更に、登録されているフィルムでも、撮影シーンにより色がばらつくという市場の声もまだ数多くある。このプリントの色の変動は、特に日向、日陰、夕方など撮影時の色温度の変動によりプリントの色(プリントレベル)が好ましくない仕上がりになってしまうことである。また、カラー写真は人物を撮影しているものが非常に多いが、上記撮影時の色温度の変動によって人物の肌が好ましくない再現になってしまう。
【0005】また、より早く写真が見たいというユーザーの要望から、カラーフィルムの現像処理の迅速化も行われている。これにより、ユーザーには早くプリントを渡すことができるが、現像処理の迅速化によりプリントの色変動を大きくしているのも事実である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的はプリント条件が登録されていないフィルムであっても満足なプリントが得られ、日向や日陰の撮影でも色のバラツキが少なく、特に肌色再現が良好であり、更に迅速処理適性に優れた撮影用ハロゲン化銀カラー写真感光材料(カラーネガフィルム)を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】最小濃度、感度、ガンマのバランスは、カラードカプラーの添加量の調整による最小濃度のコントロール、ハロゲン化銀粒径の調整による感度のコントロール、カプラー添加量の調整によるガンマのコントロールにより達成できるが、それぞれ色再現性、粒状性の劣化を伴うことになる。本発明の技術は色再現性(特に肌色再現性)、粒状性の劣化を伴わず本発明の特性曲線の形状が達成できる。本発明の目的は、以下の構成により達成された。
【0008】1)青感光性層、緑感光性層、赤感光性層の最小濃度をそれぞれDminB、DminG、DminRとし、露光量(logE)対濃度(D)で表される特性曲線の最小濃度+0.30を与える露光量(logE)をそれぞれSB、SG、SRとし、SB、SG、SRから高露光量側にlogEで1.50の露光量点の濃度をD1.5B、D1.5G、D1.5Rとし、最小濃度+0.30の濃度とD1.5B、D1.5G、D1.5Rを直線で結んだ傾きをそれぞれγB、γG、γRとした場合、以下の関係にあることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0009】
(1)0.40≦DminG−DminR≦0.46(2)0.60≦DminB−DminR≦0.66(3)−0.08≦SB−SG≦0.00(4)0.00≦SR−SG≦0.08(5)1.16≦γB/γG≦1.21(6)0.98≦γR/γG≦1.032)青感光性層の最小濃度+0.7の分光感度曲線の470nmの感度をS470、430nmの感度をS430とした時、以下の関係にあることを特徴とする前記1)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0010】
50%S470≦S430≦90%S470(50%S470は470nmの50%の感度、90%S470は470nmの90%の感度を示す。)
3)5200°Kの色温度の太陽光下でマクベス社製マクベスカラーチェッカーを適性露出で撮影し、現像処理後、マクベスカラーチェッカーのバリュー5のグレイ(N5)がCIE1976 Lab色度座標空間でカラーチェッカーと同じL*、a*、b*値となるようにプリントした場合、ライトスキンチャートの色度点が以下の関係にあることを特徴とする前記1)または2)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0011】10.0≦a*≦13.5、8.5≦b*≦11.54)塗布銀量が3.0g/m2以上、3.9g/m2以下であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0012】本発明について、以下に詳述する。本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における青感光性層、緑感光性層、赤感光性層それぞれに対応する露光量(logE)対濃度(D)で表される特性曲線おいて、最小濃度(DminB、DminG、DminR)、最小濃度+0.30を与える露光量(SB、SG、SR)、SB、SG、SRから高露光量側にlogEで1.50の露光量点の濃度(D1.5B、D1.5G、D1.5R)、最小濃度+0.30の濃度とD1.5B、D1.5G、D1.5Rを直線で結んだ傾き(γB、γG、γR)の間には、、請求項1に示すように前記(1)〜(6)の関係にある。
【0013】本発明においては、更に以下の関係にあることがより好ましい。
0.61≦γG≦0.69、0.41≦DminG−DminR≦0.450.61≦DminB−DminR≦0.65−0.06≦SB−SG≦−0.01、0.01≦SR−SG≦0.060.98≦γR/γG≦1.00請求項2の本発明においては、青感光性層の最小濃度+0.7の分光感度曲線の470nmの感度をS470、430nmの感度をS430とした時、50%S470≦S430≦90%S470の関係にあるが、より好ましくは65%S470≦S430≦80%S470の関係にあることである。
【0014】また本発明は請求項3に記載の関係にあるが、より好ましくは11.0≦a*≦12.5、9.5≦b*≦11.0の関係にあることである。
【0015】更に塗布銀量については、3.30g/m2以上、3.78g/m2以下がより好ましい。
【0016】本発明で用いるカラーチェッカーチャートとは、Kollmorgen Corp.の1divisionであるマクベス社製の「マクベスカラーチェッカーチャート」を指し、具体的には18種のカラーチェッカーチャートと6種のグレーチャートよりなるものである。この6種のグレーチャートは、反射率の違いで白から黒までを表しているが、バリュー5のグレイ(N5)は反射率18%相当で、基準のグレイとなっている。
【0017】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の乳剤としては、立方体、八面体、十四面体のような正常晶でも、平板状または柱状の双晶もしくは不規則な多表面をもつ双晶でもよい。粒子のハロゲン組成は、特に制限はなく、例えば沃化銀、臭化銀、塩化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃化銀及び塩沃臭化銀のいずれでもよいが、本発明においては沃臭化銀であることが特に好ましい。
【0018】本発明においては、平板状の双晶粒子(以下、平板粒子という)を用いることが好ましい。平板粒子は、主平面に平行な双晶面を通常は2枚有する。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができ、具体的な方法は次の通りである。まず、含有される平板粒子が、支持体上にほぼ主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し、試料を作製する。これをダイヤモンドカッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を得る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。
【0019】平板粒子における2枚の双晶面間距離は、上記の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察において、主平面に対しほぼ垂直に切断された断面を示す平板粒子を任意に1000個以上選び、主平面に平行な偶数枚の双晶面の内、最も距離の短い2枚の双晶面間距離をそれぞれの粒子について求め、加算平均することにより得られる。双晶面間距離は、核形成時の過飽和状態に影響を及ぼす因子、例えばゼラチン濃度、ゼラチン種、温度、沃素イオン濃度、pBr、pH、イオン供給速度、撹拌回転数等の諸因子の組み合わせにおいて、適切に選択することにより制御することができる。一般に核形成を高過飽和状態で行なうほど、双晶面間距離を狭くすることができる。過飽和因子に関しての詳細は、例えば特開昭63−92924号あるいは特開平1−213637号等の記述を参考にすることができる。双晶面間距離の平均は0.01〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.013〜0.025μmである。
【0020】平板粒子は粒子を形成する過程及び/又は成長させる過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩、ロジウム塩、イリジウム塩、インジウム塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオンを添加し、粒子内部及び/又は粒子表面にこれらの金属元素を含有させることができる。
【0021】平板粒子の形成手段は、当該分野でよく知られている種々の方法を用いることができる。即ち、シングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法、コントロールド・トリプルジェット法等を任意に組み合わせて使用することができるが、高度な単分散粒子を得るためには、ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAgをハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが重要である。pAg値としては7.0〜12の領域を使用し、好ましくは7.5〜11の領域を使用することができる。添加速度の決定にあたっては、特開昭54−48521号、同58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0022】平板粒子の製造時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶剤を使用しなくてもよい。
【0023】平板粒子はハロゲン化銀粒子の成長終了後に、不要な可溶性塩類を除去したものであってもよいし、あるいは含有させたままのものでもよい。また、特開昭60−138538号に記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行なう事も可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure、以下RDという)17643号II項に記載の方法に基づいて行なうことができる。更に詳しくは、沈澱形成後、あるいは物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するためには、ゼラチンをゲル化させて行なうヌーデル水洗法を用いてもよく、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、あるいはゼラチン誘導体(例えば、アシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を用いてもよい。具体的な例としては、特開平5−72658号に記載の方法を好ましく使用することができる。
【0024】ハロゲン化銀乳剤は、前述のように写真業界において増感色素として知られている色素を用いて所望の波長域に光学的に増感できる。増感色素は単独で用いても良いが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。増感色素と共にそれ自身分光増感作用をもたない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、増感色素の増感作用を強める強色増感剤を乳剤中に含有させてもよい。
【0025】平板粒子には、カブリ防止剤、安定剤などを加えることができる。バインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利である。乳剤層、その他の親水性コロイド層は硬膜することができ、また可塑剤、水不溶性または可溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)を含有させることができる。
【0026】上記で記載した以外のハロゲン化銀乳剤としては、RD308119に記載されているものを用いることができる。以下に記載されている頁を列挙する。
【0027】
〔項目〕 〔RD308119〕
沃度組成 993 I−A項 製造方法 993 I−A項 及び994 E項 晶癖 正常晶 993 I−A項 晶癖 双晶 993 I−A項 エピタキシャル 993 I−A項 ハロゲン組成一様 993 I−B項 ハロゲン組成一様でない 993 I−B項 ハロゲンコンバージョン 994 I−C項 ハロゲン置換 994 I−C項 金属含有 994 I−D項 単分散 995 I−F項 溶媒添加 995 I−F項 潜像形成位置 表面 995 I−G項 適用感光材料ネガ 995 I−H項 乳剤を混合している 995 I−J項 脱塩 995 II−A項本発明においては、各ハロゲン化銀乳剤は、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。この様な工程で使用される添加剤は、RD17643、RD18716及びRD308119に記載されている。以下に関連事項が記載されている頁を列挙する。
【0028】
〔項目〕 〔RD308119〕 〔RD17643〕 〔RD18716〕
化学増感剤 996 III−A項 23 648 分光増感剤 996 IV−A−A、 B、C、D、 23〜24 648〜649 H、I、J項 強色増感剤 996 IV−A−E,J項 23〜24 648〜649 カブリ防止剤998 VI 24〜25 649 安定剤 998 VI 24〜25 649本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアンカプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタカプラー、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエローカプラーが挙げられる。また、シアンカプラー及びマゼンタカプラーで形成されるシアン及びマゼンタ色素の2次吸収を補正するシアン及びマゼンタカラードカプラーや鮮鋭性、粒状性などを改善するDIR化合物も好ましく用いることができる。
【0029】上記、シアンカプラー、マゼンタカプラー及びイエローカプラーは、公知の、各カプラーを用いることができる。例えば、シアンカプラーとしてはフェノール系、ナフトール系化合物が、マゼンタカプラーとしては5−ピラゾロン系、インダゾロン系、ピラゾロトリアゾール系、ピラゾロアゾール系化合物が、イエローカプラーとしてはケトメチレン系化合物などが挙げられる。
【0030】本発明においては、DIR化合物としては、放出された抑制剤が拡散性を示す拡散性抑制剤放出型DIR化合物が好ましく、例えば特開平4−114153号のD−1〜D−34、米国特許4,234,678号、同3,227,554号、同3,647,291号、同3,958,993号、同4,419,886号、同3,933,500号、特開昭57−56837号、同51−13239号、同58−140740号、米国特許2,072,363号、同2,070,266号、RD1981年12月第21228号などに記載されているものを挙げることができる。
【0031】上記に記載した以外にも種々のカプラーを使用することができ、その具体例は下記RDに記載されている。以下に関連ある事項が記載されている頁を示す。
【0032】
〔項目〕 〔RD308119〕〔RD17643〕
イエローカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 マゼンタカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 シアンカプラー 1001VII−D項 VIIC〜G項 カラードカプラー 1002VII−G項 VIIG項 DIR化合物 1001VII−F項 VIIF項 BARカプラー 1002VII−F項 その他の有用残基放出 1001VII−F項 カプラー アルカリ可溶カプラー 1001VII−E項本発明に用いられるカプラー等は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することができる。
【0033】本発明に使用できる公知の写真用添加剤も上記RDに記載されている。以下に関連のある事項が記載されている頁を示す。
【0034】
〔項目〕 〔RD308119〕〔RD17643〕〔RD18716〕
色濁り防止剤 1002 VII−I項 25 650 色素画像安定剤 1001 VII−J項 25 増白剤 998 V 24 紫外線吸収剤 1003 VIII−I項, XIII−C項 25〜26 光吸収剤 1003 VIII 25〜26 光散乱剤 1003 VIII フィルター染料 1003 VIII 25〜26 バインダー 1003 IX 26 651 スタチック防止剤 1006 XIII 27 650 硬膜剤 1004 X 26 651 可塑剤 1006 XII 27 650 潤滑剤 1006 XII 27 650 活性剤・塗布助剤 1005 XI 26〜27 650 マット剤 1007 XVI 現像剤(感光材料中に含有)
1001 XXB項本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることができる。
【0035】また前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることができる。
【0036】本発明において、透明支持体としては各種のものが使用できる。使用できる支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。
【0037】ポリエステル支持体としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール類との縮合ポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ジナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0038】特に、現像処理後の巻きぐせ回復性から特開平1−244446号、同1−291248号、同1−298350号、同2−89045号、同2−93641号、同2−181749号、同2−214852号及び同2−291135号等に記載されるような含水率の高いポリエステルを用いることが好ましい。これらのポリエステルは、極性基、その他の置換基を有していてもよい。本発明において、支持体としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0039】上記ポリエステルは、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性などを満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で延伸を行うことが好ましい。又、製膜後、特開昭51−16358号に記載されているような熱処理(アニール処理)を行うことが好ましい。
【0040】支持体にはマット剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、安定剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、導電性物質、粘着性付与剤、軟化剤、流動性付与剤、増粘剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0041】支持体は、最小濃度部の色味のニュートラル化、写真構成層を塗設したフィルムに光がエッジから入射した時に起こるライトパイピング現象(ふちかぶり)の防止、ハレーション防止等の目的で染料を含有させることができる。
【0042】染料の種類は特に限定されないが、支持体としてポリエステルフィルムを用いる場合、製膜工程上、耐熱性に優れたものが好ましく、例えばアンスラキノン系化学染料等が挙げられる。また、色調としては、ライトパイピング防止を目的とする場合、一般の感光材料に見られるようにグレー染色することが好ましい。染料は、1種類もしくは2種類以上の染料を混合して用いてもよい。
【0043】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料を現像処理するには、例えばT.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ ホトグラフィック プロセス第4版(The Theory of The Photografic ProcessForth Edition)第291頁〜第334頁及びジャーナル オブザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)第73巻、第3,100頁(1951)に記載されている、それ自体公知の現像剤を使用することができ、また、前述のRD17643 28〜29頁,RD18716 615頁及びRD308119XIXに記載されている通常の方法によって、現像処理することができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】実施例1〔試料1−1の作製〕下引層を施した厚さ120μmのトリアセチルセルロースフィルム支持体上に、表1〜4で示す構成からなる各層を順次支持体側から形成して、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料1−1を作製した。なお、表中の各素材の添加量は、特に記載しない限り1m2当たりのグラム数で示す。また、ハロゲン化銀とコロイド銀は銀の量に換算して示し、増感色素(SDで示す)は銀1モル当たりのモル数で示す。
【0046】
【表1】


【0047】
【表2】


【0048】
【表3】


【0049】
【表4】


【0050】上記の試料1−1の作製に用いた沃臭化銀乳剤の特徴を表5に表示する。なお、平均粒径は沃臭化銀乳剤c〜hについては、投影面積が同じである円の直径(平均値)、沃臭化銀乳剤a、bについては、立方体の一辺長(平均値)、沃臭化銀乳剤iについては、体積から算出される球直径(平均値)で表した。
【0051】
【表5】


【0052】表5に記載の沃臭化銀乳剤i以外の各乳剤には、表1〜4に記載の増感色素を添加して熟成した後、トリフリルフォスフィンセレナイド、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸、チオシアン酸カリウムを添加し、常法に従い、化学増感を施したものを用いた。
【0053】尚、上記の組成物の他に、塗布助剤SU−1、SU−2、SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、安定剤ST−1、重量平均分子量:10,000及び重量平均分子量:100,000の2種のポリビニルピロリドン(AF−1、AF−2)、塩化カルシウム、抑制剤AF−3、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7、硬膜剤H−1、H−2及び防腐剤Ase−1を添加した。
【0054】上記試料に用いた化合物の構造を以下に示す。
【0055】
【化1】


【0056】
【化2】


【0057】
【化3】


【0058】
【化4】


【0059】
【化5】


【0060】
【化6】


【0061】
【化7】


【0062】
【化8】


【0063】
【化9】


【0064】試料1−1の総塗布銀量は3.72g/m2、ゼラチン塗布量は12.67g/m2、写真構成層の乾燥膜厚は16.00μmであった。
【0065】〔試料1−2の作製〕試料1−1の第1層のCM−1の添加量を0.16とし、第14層にDye−1を0.4添加して試料1−2を作製した。
【0066】
【化10】


【0067】〔試料1−3の作製〕試料1−1の第3層の沃臭化銀乳剤a、cの添加量をそれぞれ0.25、0.16とし、C−1の添加量を0.298とし、第14層にDye−1を0.4添加して試料1−3を作製した。
【0068】〔試料1−4の作製〕試料1−1の第14層にDye−1を0.4添加して試料1−4を作製した。
【0069】〔試料1−5の作製〕試料1−4の第1層のCM−1の添加量を0.08とし、第3層、第4層のCC−1の添加量をそれぞれ0.051、0.041として試料1−5を作製した。
【0070】各試料をJIS K7614−1981に準じ露光し、特開平10−123652号の段落〔0220〕〜〔0227〕記載の方法で現像、StatusM濃度を測定し、特性曲線を得た。特性曲線から得られた特性値を表6に示す。なお特定写真感度は250、γGは0.65であった。
【0071】更に135フォーマットに加工し、ISO200のキャスコードのパトローネにつめた。それをコニカ社製コンパクトカメラZ−up120に装填し、晴天下で各種シーンを撮影し、特開平10−123652号の段落〔0220〕〜〔0227〕記載の方法で現像処理した。処理されたフィルムをセットアップされているコニカ社製NPS858プリンターでプリントした。なお、これらの試料にはフィルム種のコードはなくプリンターでは登録されていないフィルムとして認識された。
【0072】
【表6】


【0073】表6より、本発明試料のプリント仕上がりは比較に対して、明らかに優れている。
【0074】実施例2〔試料2−1の作製〕試料1−1の第11層のSD−7、SD−8をSD−10に代え、添加量を2.5×10-4とし、第12層のSD−7をSD−10に代え、添加量を6.20×10-5として試料2−1を作製した。
【0075】
【化11】


【0076】〔試料2−2の作製〕試料2−1の第6層のAS−1の添加量を0.20として試料2−2を作製した。
【0077】〔試料2−3の作製〕試料2−1の第3層のD−1の添加量を0.20、第4層のD−1の添加量を0.031として試料2−3を作製した。
【0078】実施例1と同様の方法で各試料の特性曲線を得た。特性値を表7に示す。なお特定写真感度、γGは実施例1と同様の値であった。
【0079】
【表7】


【0080】試料1−1、1−3、2−1、2−2、2−3を135フォーマットに加工し、コニカ社製カメラ、ヘキサーに装填し5200°Kの色温度の太陽光源下でマクベスカラーチェッカーを適性露出で撮影した。次に日中昼間の日陰、夕方に人物を入れて撮影を行った。それぞれの色温度は6500°K、4000°Kであった。撮影したフィルムを実施例1と同様に現像処理し、マクベスカラーチェッカーはN5グレイがオリジナルと同じL*、a*、b*値となるように調整し、プリントを作成した。作成したプリントのライトスキンチャートについて、村上色彩研究所製色彩計FS35PでL*、a*、b*値を測定した。人物のシーンは実施例1と同様の方法でプリントを作成した。それらの結果を表8に示す。
【0081】
【表8】


【0082】表8より、本発明試料の6500°K、4000°Kのいずれに於けるプリント仕上がりも、比較に比し自然な仕上がりであり、本発明の優位性は明らかである。
【0083】実施例3試料2−3の各層の沃臭化銀乳剤の添加量を、下記表9のように変更し、試料3−1、3−2を作製した。
【0084】
【表9】


【0085】試料2−3、3−1、3−2を135フォーマットに加工し、コニカ社製Z−up120に装填し撮影を行った。撮影したフィルムを、以下の組成の発色現像液で処理温度42℃、90秒処理した。なお漂白工程以降は実施例1と同様の処理を行った。得られた現像済みフィルムについて、コニカ社製NPS858でプリントを作成した。プリント結果を表9に示す。
【0086】
《発色現像液》
亜硫酸ナトリウム 6.0g 炭酸カリウム 35.0g N,N−ビス(スルホエチル)ヒドロキシルアミンジナトリウム 8.0g ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム 5.0g 臭化カリウム 1.1×10-2mol/L ポリビニルピロリドン重合体または共重合体 3.0g ヨウ化カリウム 1.2×10-5mol/L 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン硫酸塩 0.035mol/L水を加えて1Lとし、水酸化カリウムまたは50%硫酸を用いてpHを10.3に調整した。
【0087】
【表10】


【0088】表10から明らかな如く、本発明試料のプリント仕上がりは比較に対して良好である。
【0089】
【発明の効果】本発明によって、プリント条件が登録されていないフィルムであっても満足なプリントが得られ、日向や日陰の撮影でも色のバラツキが少なく、更に迅速処理適性に優れた撮影用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 青感光性層、緑感光性層、赤感光性層の最小濃度をそれぞれDminB、DminG、DminRとし、露光量(logE)対濃度(D)で表される特性曲線の最小濃度+0.30を与える露光量(logE)をそれぞれSB、SG、SRとし、SB、SG、SRから高露光量側にlogEで1.50の露光量点の濃度をD1.5B、D1.5G、D1.5Rとし、最小濃度+0.30の濃度とD1.5B、D1.5G、D1.5Rを直線で結んだ傾きをそれぞれγB、γG、γRとした場合、以下の関係にあることを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(1)0.40≦DminG−DminR≦0.46(2)0.60≦DminB−DminR≦0.66(3)−0.08≦SB−SG≦0.00(4)0.00≦SR−SG≦0.08(5)1.16≦γB/γG≦1.21(6)0.98≦γR/γG≦1.03
【請求項2】 青感光性層の最小濃度+0.7の分光感度曲線の470nmの感度をS470、430nmの感度をS430とした時、以下の関係にあることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
50%S470≦S430≦90%S470(50%S470は470nmの50%の感度、90%S470は470nmの90%の感度を示す。)
【請求項3】 5200°Kの色温度の太陽光下でマクベス社製マクベスカラーチェッカーを適性露出で撮影し、現像処理後、マクベスカラーチェッカーのバリュー5のグレイ(N5)がCIE1976 Lab色度座標空間でカラーチェッカーと同じL*、a*、b*値となるようにプリントした場合、ライトスキンチャートの色度点が以下の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
10.0≦a*≦13.5、8.5≦b*≦11.5
【請求項4】 塗布銀量が3.0g/m2以上、3.9g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2003−186155(P2003−186155A)
【公開日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−384633(P2001−384633)
【出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】