説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】高感度でかぶりが低く、階調特性に優れ、かつ製造工程における混合溶解後の経時での性能変化が小さいハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】支持体上にシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびイエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該シアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、セレン増感された塩化銀含有率が90モル%以上の高塩化銀乳剤粒子からなり、かつ下記一般式(I)で示されるカプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】


式中、R'およびR''は各々独立に置換基を表し、Zは水素原子または芳香族第一級アミンカラー現像主薬の酸化体とのカップリング反応において離脱し得る基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関し、詳しくは、高感度でかぶりが低く、硬調な階調をしたハロゲン化銀乳剤を得ることができ、かつ製造工程における混合溶解後の経時での性能変化が小さいハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー印画紙等のハロゲン化銀写真感光材料分野においては、現像処理工程の短縮化、迅速化に対する要求がますます強まっているが、同時にコストダウン、高画質化等の性能に対する要求も強い。
【0003】
カラー印画紙に用いられるハロゲン化銀乳剤は、主として前記迅速化の要望から塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤が用いられるが、塩化銀含有率の高い感光材料は、感度が低くかぶり易いという欠点を有している。
【0004】
高塩化銀乳剤の高感化のために化学増感法、ハロゲン化銀乳剤粒子形成法など種々の改良がなされてきた。ハロゲン化銀乳剤における化学増感の代表的方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感、金等の貴金属増感、還元増感および、これらの組み合わせによる、各種増感法が知られている。上記の増感法のうち、セレン増感法におけるセレン増感剤としてセレノカルボン酸エステルすなわちセレノエステルが使用できることが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0005】
カラー印画紙においては、白色をきれいに表現するため、できるだけかぶりの小さいハロゲン化銀乳剤を使用するのが好ましい。セレン増感は、当業界で行われている硫黄増感よりは大きな増感効果を示す場合があるが、かぶりの発生が非常に大きく、また、軟調化し易いためカラー印画紙には不向きであった。また、セレン増感に金増感を併用すると著しい感度増加が得られるが、同時にかぶりの上昇が大きく、また、軟調化しやすくなるため、かぶりの発生の少ない硬調なセレン増感法の開発が強く望まれていた。
【0006】
一方、製造工程において、ハロゲン化銀乳剤、種々の乳化分散物および各種添加剤等を混合溶解した後に塗布される。生産スケールの増大や塗布のトラブルなどにより、数時間に渡って溶解した状態で経時を余儀なくされてしまう。この混合溶解後の経時での性能変化をなるべく少なくすることが製造安定化に大きな要素となっている。
【特許文献1】米国特許第3,297,446号明細書
【特許文献2】米国特許第3,297,447号明細書
【特許文献3】特公昭57−22090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するため、高感度でかぶりが低く、硬調な階調をしたハロゲン化銀乳剤を得ることができ、かつ製造工程における混合溶解後の経時での性能変化が小さいハロゲン化銀写真感光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記の手段で、上記の課題が達成できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。すなわち、本発明は、
(1)支持体上にシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびイエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該シアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、セレン増感された塩化銀含有率が90モル%以上の高塩化銀乳剤粒子からなり、かつ下記一般式(I)で示されるカプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(I)中、R'およびR''は各々独立に置換基を表し、Zは水素原子、または芳香族第一級アミンカラー現像主薬の酸化体とのカップリング反応において離脱し得る基を表す。
(2)前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE1)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(SE1)中、MおよびMは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、またはカルバモイル基を表し、Qはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OMもしくは−NMを表し、M〜Mは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。また、M、MおよびQはそれぞれ結合して環構造を形成してもよい。
(3)前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE2)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(SE2)中、X、XおよびXは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OJまたは−NJを表す。J〜Jは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
(4)前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE3)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(SE3)
−Se−E
一般式(SE3)中、EおよびEは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはカルバモイル基を表す。なお、EおよびEは同じであっても異なっていても良い。
(5)前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(PF1)〜(PF6)で表される少なくとも1種のセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0015】
【化4】

【0016】
一般式(PF1)〜(PF6)中、L21はN原子、S原子、Se原子、Te原子またはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。n21は0または1を表す。A21は−O−、−S−または−NR24−を表し、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を表す。R23はR21またはR22と共に5〜7員環を形成してもよい。X21は=O、=Sまたは=NR25を表し、Y21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR26、−SR27、又は−N(R28)R29を表す。R25〜R29は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。X21とY21は互いに結合して環を形成してもよい。R210、R211およびR212は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R210およびR211のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。W21は電子求引性基を表し、R213〜R215は各々独立に水素原子または置換基を表す。W21とR213は互いに結合して環状構造を形成してもよい。A22は−O−、−S−、−Se−、−Te−または−NR219−を表す。R216は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表し、R217〜R219は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Z21は置換基を表し、n22は0〜4の整数を表す。n22が2以上である場合、複数のZ21は互いに同じでも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよい。Q21およびQ22は前記一般式(SE1)〜(SE3)より選ばれる化合物を表し、Q21およびQ22中のSe原子はAuに配位結合する。n23は0または1を表し、J21は対アニオンを表す。n23が1の場合、Q21とQ22は同じでも異なってもよい。ただし、一般式(PF6)で表される化合物は一般式(PF1)〜(PF5)で表される化合物を含むものではない。
【0017】
(6)前記高塩化銀乳剤粒子の平均辺長が0.1μm以上0.35μm以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(7)前記高塩化銀乳剤粒子の沃化銀含有率が0.1モル%以上1モル%以下であり、かつ粒子体積の80%より外側に沃化銀含有相が一部もしくは全部に形成されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(8)セレン増感剤で化学増感されている前記赤感性ハロゲン化銀乳剤層に含まれるカプラー量が銀1モルに対して0.6当量〜1当量であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(9)前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料が、像様露光後9秒以内に発色現像処理工程を開始し、かつ該発色現像処理工程が28秒以内の時間で行われることにより画像を形成する迅速処理用ハロゲン化銀カラー写真感光材料あることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(10)前記露光が、レーザー走査露光で像様露光される、デジタル露光用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明の効果】
【0018】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、高感度でかぶりが低く、階調特性に優れ、かつ製造工程における混合溶解後の経時での性能変化が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施方法および実施態様について詳細に説明する。
シアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層において、本発明に用いるハロゲン化銀乳剤はセレン増感された塩化銀含有率が90モル%以上の高塩化銀乳剤粒子からなり、かつ下記一般式(I)で示されるカプラーの少なくとも1種を含有する。
最初に、一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0020】
【化5】

【0021】
一般式(I)中、R'およびR''は各々独立に置換基を表し、Zは水素原子または芳香族第一級アミンカラー現像主薬の酸化体とのカップリング反応において離脱し得る基を表す。
【0022】
ここで、特に断らない限り、以下の「アルキル」という用語は、不飽和または飽和で直鎖または分岐鎖のアルキル基(アルケニルおよびアラルキルを含む)を指し、3〜8個の炭素原子を有する環式アルキル基(シクロアルキル基とシクロアルケニル基を含む)を含み、「アリール」という用語は、具体的には、縮合アリールを含む。
【0023】
一般式(I)中、R'およびR''は、未置換であるかまたは置換されているアルキル基、アリール基、アミノ基、もしくはアルコキシ基、あるいは窒素、酸素、および硫黄から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有している5〜10員の複素環(この環は未置換であるか、または置換されている)から独立に選ばれるのが好ましい。
【0024】
一般式(I)中、R'および/またはR''がアミノ基またはアルコキシ基である場合、それらは、置換基(例えば、ハロゲン、アリールオキシ、またはアルキル−もしくはアリール−スルホニル基)で置換されていてもよい。しかしながら、好適には、R'およびR''は、炭素数1〜50の、未置換であるかまたは置換されているアルキルもしくはアリール基(例えば、ヘキシル、フェニル、トリル)、あるいはピリジル、モルホリノ、イミダゾリル、またはピリダゾリル基などの5〜10員の複素環から独立に選ばれる。
【0025】
一般式(I)中、R'は、置換基(例えば、ハロゲン、アルキル、アリールオキシ、またはアルキル−もしくはアリール−スルホニル基(さらに置換されていてもよい)が挙げられ、これらが好ましい)で置換されているアルキル基であるのがより好ましい。R''がアルキル基である場合、それも同様に置換されていてもよい。
【0026】
しかしながら、R''は、好ましくは、未置換アリール基であるか、あるいは、例えばシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、アルキル−もしくはアリール−カルボニル、アルキル−もしくはアリール−オキシカルボニル、アシルオキシ、カルボンアミド(carbonamido)、アルキル−もしくはアリール−カルボンアミド、アルキル−もしくはアリール−オキシカルボンアミド、アルキル−もしくはアリール−スルホニル、アルキル−もしくはアリール−スルホニルオキシ、アルキル−もしくはアリール−オキシスルホニル、アルキル−もしくはアリール−スルホキシド、アルキル−もしくはアリール−スルファモイル、アルキル−もしくはアリール−スルファモイルアミノ、アルキル−もしくはアリール−スルホンアミド、アリール、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、アルキル−もしくはアリール−ウレイド、またはアルキル−もしくはアリール−カルバモイル基(いずれもさらに置換されていてもよい)で置換されているアリール基である。好ましい置換基は、ハロゲン、シアノ、アルコキシカルボニル、アルキルスルファモイル、スルホンアミド、アルキル−スルホンアミド、アルキルスルホニル、カルバモイル、アルキルカルバモイル、またはアルキルカルボンアミドである。R'がアリールまたは複素環である場合、それも同様に置換されていてもよい。
【0027】
好適には、R''は4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、4−シアノフェニル、3−クロロ−4−シアノ−フェニル、ペンタフルオロフェニル、または3−もしくは4−スルホンアミド−フェニル基である。
【0028】
一般式(I)中、Zは水素原子、または芳香族第一級アミンカラー現像主薬の酸化体とのカップリング反応において離脱し得る基を表す。Zとしては、好ましくは水素、クロロ、フルオロ、置換アリールオキシ、より好ましくは水素またはクロロであってもよい。
【0029】
ただし、現像主薬酸化体との反応により、拡散性現像抑制剤、もしくはその前駆体となるもの、および/または、現像主薬酸化体との反応後開裂した化合物がさらにもう1分子の現像主薬酸化体と反応することにより、現像抑制剤もしくはその前駆体となるもの、いわゆるDIR化合物となるもの、でないほうが好ましい。
【0030】
なお、現像抑制剤としては例えばリサーチディスクロージャー(Research Disclosure) 76巻、No. 17643、(1978年12月)、米国特許第4,477,563号、同第5,021,332号、同第5,026,628号、同第3,227,554号、同第3,384,657号、同第3,615,506号、同第3,617,291号、同第3,733,201号、同第3,933,500号、同第3,958,993号、同第3,961,959号、同第4,149,886号、同第4,259,437号、同第4,095,984号、同第4,782,012号、英国特許第1450479号または同第5034311号公報に記載されているごとき現像抑制剤が含まれる。
【0031】
現像抑制剤もしくはその前駆体となる代表的なものは、ヘテロ環チオ基、ヘテロ環セレノ基またはトリアゾリル基(単環もしくは縮合環の1、2、3−トリアゾリルもしくは1、2、4−トリアゾリル)であり、特に好ましくはテトラゾリルチオ、テトラゾリルセレノ、1、3、4−オキサジアゾリルチオ、1、3、4−チアジアゾリルチオ、1−(または2−)ベンゾトリアゾリル、1、2、4−トリアゾール−1−(または4−)イル、1、2、3−トリアゾール−1−イル、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ベンゾオキサゾリルチオ、2−ベンゾイミダゾリルチオおよびこれらの誘導体が含まれる。
【0032】
Zによって、カプラーの化学当量、すなわち2当量カプラーであるか、または4当量カプラーであるかが決定し、またZの種類によって、カプラーの反応性を変更することができる。このような基は、カプラーからの放出後に、例えば色素形成、色素色相調整、現像促進または現像抑制、漂白促進または漂白抑制、電子移動容易化、および色補正などの機能を果たすことによって、写真記録材料におけるカプラーが塗布される層、または他の層に好都合な影響を及ぼすことができる。
【0033】
カップリング離脱基の代表的な部類には、例えば、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、スルホニルオキシ、アシルオキシ、アシル、ヘテロシクリル、スルホンアミド、ヘテロシクリルチオ、ベンゾ−チアゾリル、ホスホニルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、およびアリールアゾが含まれる。これらのカップリング離脱基は、例えば、米国特許第2,455,169号、同第3,227,551号、同第3,432,521号、同3,467,563号、同第3,617,291号、同第3,880,661号、同第4,052,212号、および同第4,134,766号の各明細書;並びに英国特許第1,466,728号、同第1,531,927号、同第1,533,039号の各明細書、および英国特許出願公開明細書第2,066,755A号、および同第2,017,704A号公報(これらの開示は引用により本明細書中に取り入れられる)に記載されている。ハロゲン、アルコキシ基、およびアリールオキシ基が最も好適である。
カップリング離脱基としては、特に塩素原子、水素、またはp−メトキシフェノキシ基が好ましい。
【0034】
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
【化18】

【0048】
【化19】

【0049】
【化20】

【0050】
【化21】

【0051】
【化22】

【0052】
【化23】

【0053】
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
本発明で使用するシアンカプラーとしては、上記のIC−22〜IC−24、IC−30、IC−31が特に好ましい。
【0056】
次に、本発明に用いるセレン化合物について説明する。
セレン化合物として、以下の一般式(SE1)、(SE2)もしくは(SE3)で表される化合物が好ましい。
【0057】
【化26】

【0058】
式中、MおよびMは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、ヘテロ環基、アシル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基またはカルバモイル基を表し、Qはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OMまたは−NMを表し、M〜Mは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。また、M、MおよびQはそれぞれ結合して環構造を形成してもよい。X、XおよびXは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OJまたは−NJを表す。J〜Jは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。EおよびEは各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはカルバモイル基を表す。EおよびEは同じであっても異なっていても良い。
【0059】
以下に、一般式(SE1)で表されるセレン化合物について説明する。
【0060】
〜MおよびQで表されるアルキル基とは直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,5ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ソディウムスルホエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ブトキシプロピル基、エトキシエトキシエチル基、n−ヘキシルオキシプロピル基等)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基等)を表す。また、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、(つまり炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。M〜MおよびQで表されるアルケニル基とは、炭素数2〜16のアルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)を表し、M〜MおよびQで表されるアルキニル基とは炭素数2〜10のアルキニル基(例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基等)を表す。
【0061】
〜MおよびQで表されるアリール基としては、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のフェニル基およびナフチル基(例えば無置換フェニル基、無置換ナフチル基、3,5−ジメチルフェニル、4−ブトキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基等)等が挙げられ、ヘテロ環基としては例えばピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、モルホリル基等が挙げられる。
【0062】
およびMで表されるアシル基としては例えばアセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、カプロイル基、n−ノナノイル基等が挙げられ、アミノ基としては、例えば無置換アミノ基、メチルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−ブチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられ、カルバモイル基としては、例えば無置換カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0063】
とM、QとM、またはQとMは互いに結合して環構造を形成しても良く、更にQが−NMを表す場合、MとMは互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0064】
また、M〜MおよびQは可能な限り置換基を有してもよく、その置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0065】
一般式(SE1)で表される好ましい化合物としては、M及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、及びアシル基であり、Qがアルキル基、アルケニル基、アリール基、または−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す場合である。より好ましくは、M及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、Qがアルキル基、アリール基、または−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す場合である。更に好ましくはM及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、Qが−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す場合である。
【0066】
一般式(SE1)で表される化合物は、公知の方法、例えばケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)55,181−228(1955)、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)24,470−473(1959)、ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J.Heterocycl.Chem.)4,605−609(1967)、「薬誌」82,36−45(1962)、特公昭39−26203号、特開昭63−229449号、OLS−2,043,944号を参考にして合成できる。
【0067】
次に、一般式(SE2)で表される化合物について詳細に説明する。
【0068】
〜XおよびJ〜Jで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロ環基は、それぞれ一般式(SE1)においてM〜MおよびQが表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロ環基と同義である。またX〜XおよびJ〜Jは可能な限り置換基を有していてもよく、その置換基の例としては先に説明した置換基と同じ具体例が挙げられる。
【0069】
一般式(SE2)で表される化合物として好ましくはX〜Xがそれぞれアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す場合であり、より好ましくはX〜Xがそれぞれアリール基を表す場合である。
【0070】
一般式(SE2)で表される化合物は、公知の方法、例えば、オルガニック・フォスフォラス・コンパウンズ(OrganicPhosphorusCompounds、4巻、1〜73頁)、ジャーナル・ケミカル・ソサイエティーB(J.Chem.Soc.(B),1416頁、1968年)、ジャーナル・オルガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.32巻、1717頁、1967年)、ジャーナル・オルガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.32巻、2999頁、1967年)、テトラヘドロン(Tetrahedron、20、449頁、1964年)、ジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.,91巻、2915頁、1969年)等を参考にして合成できる。
【0071】
次に一般式(SE3)で表される化合物について説明する。
およびEで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロ環基は、それぞれ一般式(SE1)においてM〜MおよびQが表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロ環基と同義である。EおよびEで表されるアシル基としては例えばアセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、カプロイル基、n−ノナノイル基等が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基等が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては例えばフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などが挙げられ、カルバモイル基としては例えば無置換カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。またEおよびEは可能な限り置換基を有していてもよく、その置換基の例としては先に説明した置換基と同じ具体例が挙げられる。
【0072】
本発明において、一般式(SE3)で表される好ましい化合物は、EおよびEが下記一般式(T1)〜(T4)で表される基より選ばれる。この場合、EおよびEは同じであっても異なっていても良い。
【0073】
【化27】

【0074】
一般式(T1)において、Y11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR11もしくは−NR1213を表し、R11〜R13は各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。
一般式(T2)において、L11は2価の連結基を表し、EWGは電子求引性基を表す。
一般式(T3)において、A11は酸素原子、硫黄原子もしくは−NR17を表し、R14〜R17は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。
一般式(T4)において、A12は酸素原子、硫黄原子もしくは−NR111を表し、R18は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R19、R110、R111は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Z11は置換基を表し、n11は0から4の整数を表す。n11が2以上である場合はZ11が同じでも異なっていても良い。
【0075】
一般式(T1)においてY11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、OR11もしくはNR1213を表し、R11〜R13はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表すが、ここで言うアルキル基とは式(SE1)におけるM〜MおよびQが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれM〜MおよびQが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0076】
一般式(T1)において、本発明ではY11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基である場合が好ましく、アルキル基もしくはアリール基である場合がより好ましい。
【0077】
一般式(T2)において、L11で表される2価の連結基は、炭素数2〜20のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を表し、特に炭素数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルキレン基(例えばエチレン、プロピレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン)、アルケニレン基(例えばビニレン)、アルキニレン基(例えばプロピニレン)を表す。好ましいL11としては下記一般式(L1)、一般式(L2)に示すものが挙げられる。
【0078】
【化28】

【0079】
一般式(L1)、一般式(L2)において、G、G、G、Gは各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数1〜10のヘテロ環基を表し、G、G、Gは連結して環を形成しても良い。G、G、G、Gとして好ましくは水素原子、アルキル基もしくはアリール基であり、水素原子もしくはアルキル基がより好ましい。
【0080】
一般式(T2)において、EWGは電子求引性基を表す。ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σ値が正の値である置換基であり、好ましくはσ値が0.12以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σ値が正の電子求引性基の具体例としてはアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、σ値が正の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。本発明において、EWGは好ましくはアルコキシ基、アシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σ値が正の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、またはハロゲン原子であり、より好ましくはアルコキシ基、アシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基であり、更に好ましくはアルコキシ基、アシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である。
【0081】
一般式(T2)において、好ましくはL11が一般式(L1)で表され、G〜Gが水素原子、アルキル基を表し、EWGがアルコキシ基、アシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表す場合である。より好ましくはL11が一般式(L1)で表され、G〜Gが水素原子、アルキル基を表し、EWGがアルコキシ基、アシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表す場合である。
【0082】
一般式(T3)においてR14〜R17は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表すが、ここで言うアルキル基とは一般式(SE1)におけるM〜MおよびQが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれM〜MおよびQが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0083】
本発明において、R14はアルキル基が好ましい。R15およびR16は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基である場合が最も好ましい。R17は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0084】
一般式(T3)においてA11は酸素原子、硫黄原子もしくは−NR17を表すが、本発明においては酸素原子もしくは硫黄原子である場合が好ましく、酸素原子である場合がより好ましい。
【0085】
一般式(T3)において、好ましくはA11が酸素原子もしくは硫黄原子であり、R14がアルキル基であり、R15およびR16が水素原子、アルキル基もしくはアリール基の場合である。より好ましくはA11が酸素原子であり、R14がアルキル基であり、R15およびR16が水素原子もしくはアルキル基の場合である。
【0086】
一般式(T4)においてR18、R19、R110、R111で表されるアルキル基とは一般式(SE1)におけるM〜MおよびQが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれM〜MおよびQが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R18で表されるアシル基はアセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、カプロイル基、n−ノナノイル基などが挙げられる。
【0087】
一般式(T4)においてZ11は置換基を表すが、その例としては先に説明した置換基と同じ具体例が挙げられる。
【0088】
本発明において、Z11として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基などであり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などであり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などである。
【0089】
一般式(T4)において、n11は0から4の整数を表す。本発明においてn11は0から2を表す場合が好ましく、0または1である場合がより好ましい。
【0090】
一般式(T4)においてA12は酸素原子、硫黄原子もしくは−NR111を表すが、本発明においては酸素原子もしくは硫黄原子を表す場合が好ましく、酸素原子を表す場合がより好ましい。
【0091】
一般式(T4)において、好ましくはA12が酸素原子もしくは硫黄原子であり、R18が水素原子、アルキル基、もしくはアシル基であり、R19およびR110が水素原子、アルキル基、アリール基であり、n11が0〜2であり、Z11がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)の場合である。より好ましくはA12が酸素原子であり、R18が水素原子もしくはアルキル基であり、R19およびR110が水素原子もしくはアルキル基であり、n11が0〜2であり、Z11がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、アルコキシ基、ウレイド基、スルホ基(及びその塩を含む)の場合である。更に好ましくはA12が酸素原子であり、R18がアルキル基であり、R19およびR110が水素原子であり、n11が0〜2であり、Z11がアルキル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、アルコキシ基、スルホ基(及びその塩を含む)の場合である。
【0092】
本発明において、一般式(SE3)で表される化合物のうち、好ましい化合物はEおよびEのうち、少なくとも一方が一般式(T1)から選ばれる場合、あるいは少なくとも一方が一般式(T4)から選ばれる場合である。より好ましくはEおよびEのうち、一方が一般式(T1)で他方が一般式(T1)、(T2)、(T4)から選ばれる場合、あるいは一方が一般式(T4)で他方が一般式(T3)、一般式(T4)から選ばれる場合である。更に好ましくはEおよびEのうち、一方が一般式(T1)で他方が一般式(T2)、(T4)から選ばれる場合、あるいはEおよびEともに一般式(T4)から選ばれる場合である。最も好ましくはEおよびEのうち、一方が一般式(T1)で他方が一般式(T2)から選ばれる場合、あるいはEおよびEともに一般式(T4)から選ばれる場合である。
【0093】
一般式(SE3)で表される化合物は既に知られている次の文献、S. Patai, Z. Rappoport編,ザ ケミストリー オブ オルガニック セレニウム アンド テルリウム コンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and Tellurium Compounds),第1巻(1986年)、同,第2巻(1987年)、 D. Liotta著,オルガノセレニウム ケミストリー(Organo- selenium Chemistry),(1987年)等に記載の方法に準じて合成することができる。
【0094】
次に一般式(SE1)〜(SE3)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、立体異性体が複数存在しうる化合物については、その立体構造を限定するものではない。
【0095】
【化29】

【0096】
【化30】

【0097】
【化31】

【0098】
【化32】

【0099】
また、本発明においてはその他のセレン化合物として、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−271341号、同5−40324号、同5−11385号、同6−51415、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−92599号、同7−98483号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号、同8−114882号、同9−138475号、同9−197603号、同10−10666号公報などに記載されているセレン化合物、具体的には、コロイド状金属セレン、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類などを用いることができる。またさらに、特公昭46−4553号、同52−34492号公報などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸類(例えば、セレノシアン酸カリウム)、セレナゾール類、セレニド類なども用いることができる。この中では特にセレノシアン酸類が好ましい。
【0100】
以上、セレン化合物として、用いることのできる構造を示してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で用いるセレン化合物は、X線光電子分光装置で測定したセレン原子の3d軌道電子の束縛エネルギー値が54.0eV以上65.0eV以下であることが、硬調化や低カブリの点で好ましい。
【0101】
本発明で用いるセレン増感剤の使用量は、使用するセレン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等により変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当り1×10-8〜1×10-4モル、好ましくは1×10-7〜1×10-5モル程度を用いる。また、本発明における化学増感の条件としては、特に制限はないが、pClとしては0〜7が好ましく、0〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましい。温度としては40〜95℃が好ましく、50〜85℃がより好ましい。
【0102】
本発明で用いるセレン化合物は、粒子形成直後から、化学増感終了直前までのどの段階にも添加することができる。好ましい添加時期は、脱塩後から化学増感工程の間である。
【0103】
次に本発明に用いる金セレン化合物について説明する。
本発明に用いる金セレン化合物として、以下の一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0104】
【化37】

【0105】
一般式(PF1)〜(PF6)中、L21はN原子、S原子、Se原子、Te原子またはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。n21は0または1を表す。A21はO、Sまたは−NR24を表し、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を表す。R23はR21またはR22と共に5〜7員環を形成してもよい。
21は=O、=Sまたは=NR25を表す。Y21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR26、−SR27または−N(R28)R29を表す。R25〜R29は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。X21とY21は互いに結合し環を形成してもよい。
210、R211およびR212は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R210およびR211のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。
21は電子求引性基を表し、R213〜R215は各々独立に水素原子または置換基を表す。W21とR213は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
22は−O−、−S−、−Se−、−Te−もしくは−NR219−を表す。R216は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R217〜R219は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Z21は置換基を表し、n22は0から4の整数を表す。n22が2以上である場合はZ21が同じでも異なっていても良い。
21およびQ22は先に述べた一般式(SE1)〜(SE3)より選ばれる化合物であり、Q21およびQ22中のSe原子はAuに配位結合する。n23は0または1を表し、J21は対アニオンを表す。n23が1の場合、Q21とQ22は同じでも異なってもよい。ただし、一般式(PF6)で表される化合物は一般式(PF1)〜(PF5)で表される化合物を含むものではない。
【0106】
次に一般式(PF1)で表される金セレン化合物について説明する。
一般式(PF1)において、R21およびR22は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、最も好ましくは水素原子またはアルキル基である。
【0107】
23は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキル基もしくはアリール基である。R24は好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0108】
23はR21もしくはR22と共に5〜7員の環構造を形成してもよい。形成される環構造は非芳香族の含酸素、含硫黄または含窒素のヘテロ環となる。またこの環構造は芳香族もしくは非芳香族の炭素環、あるいはヘテロ環と縮環を形成していてもよい。本発明においてはR23がR21もしくはR22と共に5〜7員の環状構造を形成することがより好ましい。
【0109】
本発明において、一般式(PF1)で表される化合物のうち、好ましくはA21が−O−、−S−または−NR24−であり、R21及びR22がそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、R23が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、R24が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基である。より好ましくはA21が−O−または−S−であり、R21及びR22がそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、R23がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。更に好ましくはA21が−O−または−S−を表し、R21及びR22がそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基であり、R23がアルキル基、アリール基である。
特に好ましくはR23がR21またはR22と共に形成した環状構造がグルコース、マンノース、ガラクトース、グロース、キシロース、リキソース、アラビノース、リボース、フコース、イドース、タロース、アロース、アルトロース、ラムノース、ソルボース、ディジトキソース、2−デオキシグルコース、2−デオキシガラクトース、フルクトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸などとその糖誘導体(一般式(PF1)におけるA21が0の場合)及びその硫黄類似体(一般式(PF1)におけるA21がSの場合)の場合である。
【0110】
ここで糖誘導体とは糖構造におけるヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基がアルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基などに置換された化合物を表す。またこれら糖構造においては1位の立体構造が異なるα異性体とβ異性体、および鏡像異性体の関係にあるD体とL体が存在するが、本発明においてはこれら異性体を区別することはない。この場合、好ましい化合物としては例えばセレノグルコース金(I)塩、セレノマンノース金(I)塩、セレノガラクトース金(I)塩、セレノリキソース金(I)塩など、およびこれらの糖誘導体などが挙げられる。
【0111】
次に一般式(PF2)で表される化合物について説明する。
一般式(PF2)において、X21は好ましくは=Oもしくは=Sであり、より好ましくは=Oである。Y21は好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはN原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環のヘテロ環基、−OR26、−SR27、または−N(R28)R29を表すが、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR26、−SR27、または−N(R28)R29であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、または−N(R28)R29であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。
25〜R29は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基またはアリール基である。
【0112】
一般式(PF2)において、X21とY21は互いに結合して環を形成してもよい。この場合に形成される環は3〜7員の含窒素ヘテロ環であり、例えばピロール類、インドール類、イミダゾール類、ベンズイミダゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、イソオキサゾール類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、インダゾール類、プリン類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、キノリン類、キナゾリン類が挙げられる。
【0113】
一般式(PF2)で表される化合物のうち、好ましくはX21が=Oまたは=Sであり、Y21がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR26、−SR27、−N(R28)R29であり、R26〜R29がアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。より好ましくはX21が=Oであり、Y21がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。最も好ましくはX21が=Oであり、Y21がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0114】
次に一般式(PF3)で表される化合物について説明する。
一般式(PF3)において、R210およびR211の少なくとも一方は電子求引性基を表すが、ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σ値が正の値である置換基であり、好ましくはσ値が0.2以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σ値が0.2以上の電子求引性基の具体例としてはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。本発明において好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基またはハロゲン原子であり、より好ましくはアシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基である。
【0115】
一般式(PF3)において、R210およびR211の両方とも電子求引性基を表すのが好ましい。R212として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。
【0116】
一般式(PF3)において、R210、R211、R212は互いに結合して環形成する場合も好ましい。形成される環は、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であり、5〜7員環が好ましい。環を形成するR210はアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基が好ましく、R211はアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基が好ましい。
【0117】
一般式(PF3)で表される化合物のうち、好ましくはR210及びR211が電子求引性基であり、R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基である。より好ましくはR210及びR211が電子求引性基であり、R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。最も好ましくはR210及びR211が電子求引性基であり、R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0118】
また、一般式(PF3)で表される化合物のうち、R210とR211が非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基である。更に好ましくはR210とR211とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。最も好ましくはR210とR211とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、R212が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0119】
次に一般式(PF4)で表される化合物について説明する。
一般式(PF4)において、W21が表す電子求引性基は先に述べたR210及びR211が表す電子求引性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0120】
一般式(PF4)において、R213〜R215として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基,アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などであり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0121】
21とR213は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であり、好ましくは5〜7員環である。環を形成するW21はアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基が好ましく、R213はアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
【0122】
一般式(PF4)で表される化合物のうち、好ましくはW21が電子求引性基であり、R213〜R215が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。より好ましくはW21が電子求引性基であり、R213〜R215が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。最も好ましくはW21が電子求引性基であり、R213〜R215が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0123】
また、一般式(PF4)で表される化合物のうち、W21とR213とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時R213がアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基などであり、R214およびR215は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などである。更に好ましくはW21とR213とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R214およびR215が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、最も好ましくはW21とR213とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R214およびR215は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0124】
次に一般式(PF5)で表される化合物について説明する。
一般式(PF5)において、R216は水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基が好ましく、水素原子、アルキル基もしくはアシル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。R217およびR218は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基である場合が最も好ましい。R219は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0125】
一般式(PF5)において、A22は−O−、−S−、−Se−、Teもしくは−NR219を表すが、本発明においては−O−、−S−もしくは−NR219である場合が好ましく、−O−もしくは−S−である場合がより好ましく、−O−である場合が最も好ましい。
【0126】
一般式(PF5)においてZ21は置換基を表す。置換基の例としては先に説明した置換基と同じ基が挙げられる。本発明において、Z21として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基などであり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などであり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などである。
【0127】
一般式(PF5)においてn22は0から4の整数を表すが、本発明においてn22は0から2を表す場合が好ましく、0または1である場合がより好ましい。
【0128】
一般式(PF5)において、好ましくはA22が−O−、−S−もしくは−NR219−を表し、R216が水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基を表し、R217およびR218が水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R219が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、n22が0〜2を表し、Z21がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。より好ましくはA22が−O−、−S−もしくは−NR219−を表し、R216がアルキル基を表し、R217およびR218が水素原子もしくはアルキル基を表し、R219がアルキル基もしくはアリール基を表し、n22が0〜2を表し、Z21がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。更に好ましくはA22が−O−、−S−もしくは−NR219−を表し、R216がアルキル基を表し、R217およびR218が水素原子もしくはアルキル基を表し、R219がアルキル基を表し、n22が0〜2を表し、Z21がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。最も好ましくはA22が−O−を表し、R216がアルキル基を表し、R217およびR218の一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基を表し、n22が0〜1を表し、Z21がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。
【0129】
一般式(PF1)〜(PF5)において、n21は0または1を表すが、n21が1を表す場合、L21はN原子、S原子、Se原子、Te原子もしくはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。具体的には置換もしくは無置換のアミン類(好ましくは炭素数1〜30の、1級、2級、もしくは3級のアルキルアミン、アリールアミンを意味する。)、5ないし6員の含窒素ヘテロ環類(N、O、S及びCの組合せからなる5ないし6員の含窒素ヘテロ環が好ましく、置換基を有していてもよい。このヘテロ環は環内のN原子を介して金に配位してもよいし、置換基を介して金に配位してもよく、例えばベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、チアゾリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサゾリン、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアジン、ピロール、ピロリジン、イミダゾリジン、モルホリンが挙げられる。)、メソイオン類(ここでいうメソイオン化合物とは、5または6員の複素環状化合物で、一つの共有結合構造式または局性構造式では満足に表示することができず、また環を構成する全ての原子に関連したπ電子の六偶子を有する化合物で環は部分的正電荷を帯び、環外原子または原子団上の等しい負電荷と釣り合いを保っている化合物であり、メソイオン環としてはイミダゾリウム環、ピラゾリウム環、オキサゾリウム環、チアゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、チアジアゾリウム環、オキサジアゾリウム環、チアトリアゾリウム環、オキサトリアゾリウム環などが挙げられる。)、チオール類(好ましくは炭素数1〜30のアルキルチオール類、または炭素数6〜30のアリールチオール類もしくはN原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環のヘテロ環チオール類)、チオエーテル類(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、またはN原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環ヘテロ環基がそれぞれS原子に結合した化合物であり、対称でも非対称でもよい。例えばジアルキルチオエーテル類、ジアリールチオエーテル類、ジヘテロ環チオエーテル類、アルキル−アリールチオエーテル類、アルキル−ヘテロ環チオエーテル類、アリール−ヘテロ環チオエーテル類が挙げられる。)、
【0130】
ジスルフィド類(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基がS原子に結合したジスルフィド化合物であり、対称でも非対称でもよい。例えばジアルキルジスルフィド類、ジアリールジスルフィド類、ジヘテロ環ジスルフィド類、アルキル−アリールジスルフィド類、アルキル−ヘテロ環ジスルフィド類、アリール−ヘテロ環ジスルフィド類が挙げられる。より好ましくは、ジアルキルジスルフィド類、ジアリールジスルフィド類またはアルキル−アリールジスルフィド類である。)、チオアミド類(チオアミドは環構造の一部であってもよいし、非環式チオアミドであってもよい。有用なチオアミド類としては、例えば米国特許4,030,925号、同4,031,127号、同4,080,207号、同4,245,037号、同4,255,511号、同4,266,031号、及び同4,276,364号並びにリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)第151巻、1976年11月、15162項、及び同第176巻、1978年12月、17626項に開示されているものから選ぶことができる。例えばチオ尿素、チオウレタン、ジチオカルバミン酸エステル、4−チアゾリン−2−チオン、チアゾリジン−2−チオン、4−オキサゾリン−2−チオン、オキサゾリジン−2−チオン、2−ピラゾリン−5−チオン、4−イミダゾリン−2−チオン、2−チオヒダントイン、ローダニン、イソローダニン、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン、チオバルビツール酸、テトラゾリン−5−チオン、1,2,4−トリアゾリン−3−チオン、1,3,4−チアジアゾリン−2−チオン、1,3,4−オキサジアゾリン−2−チオン、ベンズイミダゾリン−2−チオン、ベンズオキサゾリン−2−チオン及びベンゾチアゾリン−2−チオンであり、これらは置換されてもよい。)、
【0131】
セレノール類(好ましくは炭素数1〜30のアルキルセレノール類、アリールセレノール類、またはN原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環のヘテロ環セレノール類である。)、セレノエーテル類(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基がSe原子に結合したセレノエーテル化合物であり、Se原子に対して対称置換でも非対称置換でもよく、例えばジアルキルセレノエーテル類、ジアリールセレノエーテル類、ジヘテロ環セレノエーテル類、アルキル−アリールセレノエーテル類、アルキル−ヘテロ環セレノエーテル類、アリール−ヘテロ環セレノエーテル類が挙げられる。好ましくはジアルキルセレノエーテル類、ジアリールセレノエーテル類もしくはアルキル−アリールセレノエーテル類である。)、ジセレニド類(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基がSe原子に結合したジセレニド化合物であり、ジセレニド基に対して対称でも非対称でもよく、例えばジアルキルジセレニド類、ジアリールジセレニド類、ジヘテロ環ジセレニド類、アルキル−アリールジセレニド類、アルキル−ヘテロ環ジセレニド類、アリール−ヘテロ環ジセレニド類が挙げられる。好ましくはジアルキルジセレニド類、ジアリールジセレニド類もしくはアルキル−アリールジセレニド類である。)、セレノアミド類(前述のチオアミド化合物のS原子をSe原子に置き換えた化合物が挙げられる。)、テルロール類(前述のセレノール化合物においてSe原子をTe原子に置き換えた化合物が挙げられる。)、テルロエーテル類(前述のセレノエーテル化合物においてSe原子をTe原子に置き換えた化合物が挙げられる。)、ジテルリド類(前述のジセレニド化合物においてSe原子をTe原子に置き換えた化合物が挙げられる。)、テルロアミド類(前述のセレノアミド化合物においてSe原子をTe原子に置き換えた化合物が挙げられる。)、アルキルホスフィン類(好ましくは炭素数1〜20の、1級、2級、もしくは3級のアルキルホスフィン類である。)、アリールホスフィン類(好ましくは炭素数1〜20の、1級、2級、もしくは3級のアリールホスフィン類である。)等が挙げられる。
【0132】
21は好ましくは5ないし6員の含窒素ヘテロ環類、メソイオン類、チオール類、チオエーテル類、チオアミド類、セレノール類、セレノエーテル類、セレノアミド類、アルキルホスフィン類またはアリールホスフィン類であり、更に好ましくは5ないし6員の含窒素ヘテロ環類、メソイオン類、チオール類、チオエーテル類、チオアミド類、セレノール類、アルキルホスフィン類またはアリールホスフィン類であり、最も好ましくはメソイオン類、チオール類、チオエーテル類、チオアミド類、セレノール類、アルキルホスフィン類またはアリールホスフィン類である。特に好ましいL21は下記一般式(PL1)〜(PL5)より選ばれる。
【0133】
【化34】

【0134】
一般式(PL1)〜(PL5)において、ChはS、SeまたはTeを表し、M21は水素原子もしくは化合物の電荷を中和する対カチオンを表す。一般式(PL1)において、A23は−O−、−S−または−NR223−を表し、R220、R221、R222、R223は、それぞれ前述のR21、R22、R23、R24と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(PL2)において、X22は=O、=Sまたは=NR224を表し、Y22は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR225、−SR226、−N(R227)R228を表す。R224、R225、R226、R227、R228は、それぞれ前述のR25、R26、R27、R28、R29と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(PL3)において、R229、R230、R231は、それぞれ前述のR210、R211、R212と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(PL4)において、W22、R232、R233、R234は、それぞれ前述のW21、R213、R214、R215と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(PL5)において、A24は−O−、−S−、−Se−、−Te−もしくは−NR238−を表す。R235、R236、R237、R238、Z22、n23はそれぞれ前述のR216、R217、R218、R219、Z21、n22と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0135】
21が上記一般式(PL1)〜(PL5)より選ばれる時、一般式(PF1)〜(PF5)で表される化合物は金(I)に対して対称型錯体にも非対称型錯体にも成り得る。本発明においてはどちらも好ましいが、金(I)に対して対称型錯体である場合がより好ましい。
【0136】
一般式(PL1)〜(PL5)において、ChはS、SeまたはTeを表すが、本発明においてはSもしくはSeが好ましく、更にはSである場合が好ましい。
【0137】
一般式(PL1)〜(PL5)において、M21は水素原子もしくは化合物の電荷を中和する対カチオンを表す。M21が対カチオンを表す場合、具体的にはLi、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Baなどのアルカリ土類金属など無機の陽イオンや、置換または無置換のアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなど有機の陽イオンなどを表す。ただし、M21が無機の陽イオンである場合、本発明においてM21はAg+イオンおよびAu+イオンを表すことはない。本発明においてM21は水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオン、置換または無置換のアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属の陽イオン、置換または無置換のアンモニウムイオンがより好ましく、アルカリ金属の陽イオンもしくは置換または無置換のアンモニウムイオンが更に好ましい。
【0138】
本発明において、一般式(PL1)で表される化合物のうち、好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、A23が−O−または−S−であり、R220及びR221がそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基であり、R222がアルキル基、アリール基の場合である。より好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSであり、A23が−O−または−S−であり、R220及びR221がそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基であり、R222がアルキル基、アリール基の場合である。特に好ましくはR222がR220またはR221と共に形成した環状構造がグルコース、マンノース、ガラクトース、グロース、キシロース、リキソース、アラビノース、リボース、フコース、イドース、タロース、アロース、アルトロース、ラムノース、ソルボース、ディジトキソース、2−デオキシグルコース、2−デオキシガラクトース、フルクトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸などとその糖誘導体(一般式(PL1)におけるA23が0の場合)及びその硫黄類似体(一般式(PL1)におけるA23がSの場合)の場合である。また、これら糖構造においては1位の立体構造が異なるα異性体とβ異性体、および鏡像異性体の関係にあるD体とL体が存在するが、本発明においてはこれら異性体を区別することはない。L21として好ましい化合物としては例えばチオグルコース、チオマンノース、チオガラクトース、チオリキソース、チオキシロース、チオアラビノース、セレノグルコース、セレノマンノース、セレノガラクトース、セレノリキソース、セレノキシロース、セレノアラビノースおよびテルログルコースなどとそのアルカリ金属塩、およびその硫黄類似体とこれらの誘導体が挙げられる。
【0139】
一般式(PL2)で表される化合物のうち、好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSもしくはSeであり、X22が=Oまたは=Sであり、Y22が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR225、−SR226、−N(R227)R228であり、R224〜R228がアルキル基、アリール基またはヘテロ環基の場合である。より好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSもしくはSeであり、X22が=Oであり、Y22がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基の場合である。最も好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSであり、X22が=Oであり、Y22がアルキル基、アリール基、ヘテロ環基の場合である。
【0140】
一般式(PL3)で表される化合物のうち、好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、R229及びR230が電子求引性基であり、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基である。より好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、R229及びR230が電子求引性基であり、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。最も好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSであり、R229及びR230が電子求引性基であり、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0141】
また、一般式(PL3)で表される化合物のうち、R229とR230が非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時M21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基である。更に好ましくはR229とR230とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、M21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeを表し、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。最も好ましくはMがアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSであり、R229とR230とが非芳香族の5〜7員の環を形成し、R231が水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0142】
一般式(PL4)で表される化合物のうち、好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、W22が電子求引性基であり、R232〜R234が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。より好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、W22が電子求引性基であり、R232〜R234が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。最も好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeであり、W22が電子求引性基であり、R232〜R234が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0143】
また、一般式(PL4)で表される化合物のうち、W22とR232とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成しているものも好ましく、この時M21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSまたはSeを表し、R26がアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基などであり、R233およびR234は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などであるものが好ましい。更に好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSもしくはSeを表し、W22とR232とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R233およびR234が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、最も好ましくはM21がアルカリ金属の陽イオンであり、ChがSを表し、W22とR232とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環を形成し、R233およびR234は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0144】
一般式(PL5)で表される化合物のうち、好ましくはChがSもしくはSeであり、A24が−O−、−S−もしくは−NR238−を表し、R235が水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基を表し、R236およびR237が水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R238が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、n23が0〜2を表し、Z22がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。より好ましくはChがSもしくはSeであり、A24が−O−、−S−もしくは−NR238−を表し、R235がアルキル基を表し、R236およびR237が水素原子もしくはアルキル基を表し、R238がアルキル基もしくはアリール基を表し、n23が0〜2を表し、Z22がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。更に好ましくはA24が−O−、−S−もしくは−NR238−を表し、R235がアルキル基を表し、R236およびR237が水素原子もしくはアルキル基を表し、R238がアルキル基を表し、n23が0〜2を表し、Z22がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。最も好ましくはChがSであり、A24が−O−を表し、R235がアルキル基を表し、R236およびR237の一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基を表し、n23が0〜1を表し、Z22がアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。
【0145】
一般式(PL1)〜(PL5)で表される化合物のうち、L21として好ましくは一般式(PL1)、(PL2)及び(PL5)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(PL1)及び(PL5)で表される化合物であり、最も好ましくは一般式(PL1)で表される化合物である。
【0146】
次に一般式(PF6)で表される化合物について説明する。
一般式(PF6)において、J21は対アニオンを表す。対アニオンとは、具体的にはハロゲンイオン(例えばF、Cl、Br、I)、テトラフルオロボロネートイオン(BF)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモネートイオン(SbF)、アリールスルホネートイオン(例えばp−トルエンスルホネートイオンなど)、アルキルスルホネートイオン(例えばメタンスルホネートイオン、トリフルオロメタンスルホネートイオンなど)、カルボキシイオン(例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオンなど)などが挙げられる。なお、これら対アニオンは、メルカプト基(−SH)やチオエーテル基(−S−)、セレノエーテル基(−Se−)、テルロエーテル基(−Te−)などに代表される、金への吸着基を持たない方が好ましい。
【0147】
本発明において、J21はハロゲンイオン、テトラフルオロボロネートイオン、ヘキサフルオロホスホネートイオン、アリールスルホネートイオンもしくはアルキルスルホネートイオンが好ましく、ハロゲンイオン、テトラフルオロボロネートイオンもしくはヘキサフルオロホスホネートイオンがより好ましく、ハロゲンイオンが更に好ましい。ハロゲンイオンの中でもCl、BrもしくはIが好ましく、ClもしくはBrがより好ましく、Clが更に好ましい。
【0148】
一般式(PF6)において、Q21およびQ22は先に説明した一般式(SE1)〜(SE3)で表される化合物から選ばれる。
21およびQ22が一般式(SE1)で表される化合物の場合、好ましくは、M及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、及びアシル基であり、Qがアルキル基、アルケニル基、アリール基、または−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す場合である。より好ましくは、M及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、Qがアルキル基、アリール基、または−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基である場合である。更に好ましくは、M及びMがそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基であり、Qが−NMであり、MおよびMが水素原子、アルキル基、アリール基である場合である。
【0149】
21およびQ22が一般式(SE2)で表される化合物の場合、好ましくはV〜Vがそれぞれアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す場合であり、より好ましくはV〜Vがそれぞれアリール基を表す場合である。
【0150】
21およびQ22が一般式(SE3)で表される化合物の場合、好ましくはEおよびEが一般式(T2)〜(T4)から選ばれる場合である。より好ましくはEおよびEのうち、一方が一般式(T4)から選ばれ、他方が一般式(T2)、(T3)もしくは(T4)から選ばれる場合であり、更に好ましくはEおよびEのうち、一方が一般式(T4)から選ばれ、他方が一般式(T3)もしくは一般式(T4)から選ばれる場合であり、最も好ましくはEおよびEともに一般式(T4)から選ばれる場合である。
【0151】
本発明において、一般式(PF6)で表される化合物のうち、好ましいものはJ21がハロゲンイオン、テトラフルオロボロネートイオン、ヘキサフルオロホスホネートイオン、アリールスルホネートイオンもしくはアルキルスルホネートイオンであり、n23が0または1であり、Q21およびQ22が一般式(SE1)あるいは(SE3)で表される化合物から選ばれる場合であり、より好ましくはJ21がハロゲンイオン、テトラフルオロボロネートイオンもしくはヘキサフルオロホスホネートイオンであり、n23が0であり、Q21が一般式(SE3)で表される化合物から選ばれる場合であり、更に好ましくはJ21がハロゲンイオンであり、n23が0であり、Q21が一般式(SE3)で表される化合物から選ばれる場合である。
【0152】
本発明において、一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物のうち、好ましく用いられるのは一般式(PF1)、(PF5)及び(PF6)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(PF1)及び(PF6)で表される化合物であり、最も好ましくは一般式(PF6)で表される化合物である。
【0153】
次に一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらに限定されるものではない。また、立体異性体が複数存在しうる化合物については、その立体構造を限定するものではない。なお、以下の例示化合物中、Etはエチル基、Meはメチル基、i−Prはイソプロピル基、Phはフェニル基、Bnはベンジル基、Acはアセチル基をそれぞれ示すものである。
【0154】
【化35】

【0155】
【化36】

【0156】
【化37】

【0157】
本発明に用いる一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るが通常ハロゲン化銀1モルあたり1×10−7〜5×10−3モルであり、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0158】
一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物は、水、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、グリコール類(メチルプロピレングリコールなど)及びエステル類(酢酸エチルなど)などに溶解して添加してもよく、また公知の分散法で固体分散物(微結晶分散体)として添加してもよい。
【0159】
本発明に用いる一般式(PF1)〜(PF6)で表される化合物の添加は、乳剤製造時のどの段階でも可能であるが、ハロゲン化銀粒子形成後から化学増感工程終了までの間に添加することが好ましい。
【0160】
本発明で使用するセレン増感剤として、SE1−2、SE2−1、SE2−12、SE3−16、SE3−31が好ましく、SE3−4、SE3−9、SE3−17、SE3−29、SE3−37がより好ましく、PF2−5、PF3−6、PF4−3、PF5−7が更に好ましく、PF1−1、PF6−1が最も好ましい。
【0161】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤を構成するハロゲン化銀粒子は、平均辺長は特に制限はないが0.1μm以上0.35μm以下が好ましく、0.1μm以上0.30μm以下が更に好ましく、0.1μm以上0.27μm以下が最も好ましい。更に、辺長が0.1μm以上0.35μm以下のハロゲン化銀粒子の投影面積が、ハロゲン化銀乳剤を構成する全ハロゲン化銀粒子の投影面積の総和の50%以上を占めることが好ましく、80%以上を占めることがより好ましく、90%以上を占めることが特に好ましい。ハロゲン化銀粒子の辺長は、その電子顕微鏡写真から求めることができ、ハロゲン化銀粒子と等しい体積の立方体の辺長を以て粒子辺長とする。平均辺長は、統計的に意味のある個数(例えば、600個以上)のハロゲン化銀粒子の辺長を計測し、平均値を計算することにより求めることができる。
【0162】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、塩化銀含有率は90モル%以上である必要があり、95モル%以上が好ましい。該ハロゲン化銀粒子の粒子形状は特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶粒子、主表面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体あるいは14面体粒子であることが更に好ましい。
【0163】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相および/またはヨウ化銀含有相を有することが好ましい。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を有する場合、臭化銀含有率は0.1〜4モル%である必要があり、0.5〜2モル%であることが好ましい。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を有する場合、沃化銀含有率は0.05〜1モル%である必要があり、0.1〜1モル%が好ましく、0.1〜0.40モル%がより好ましい。
【0164】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有することが好ましく、特に上記のハロゲン組成の沃臭塩化銀粒子が好ましい。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは周囲よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、3モル%以上であることが好ましく、5〜40モル%であることが更に好ましく、5〜25モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよい。
【0165】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが重要である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0166】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0167】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよいが、異なる場所にあるほうが粒子形成の制御を容易にする点で好ましい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0168】
写真作用を制御する臭化銀含有相と沃化銀含有相の機能を粒子内の表面近くに集約することが好ましい。そのため、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0169】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を有する場合、その臭化銀含有相の上記とは別の好ましい態様は、粒子表面から20nm以内の深さに臭化銀含有率が0.5〜20モル%の領域を有するハロゲン化銀乳剤である。粒子表面から好ましくは10nm以内に臭化銀含有相を有することが好ましく、臭化銀含有率が0.5〜10モル%の臭化銀含有相を有することが好ましく、0.5〜5モル%の臭化銀含有相を有することが更に好ましい。この場合、臭化銀含有相は、必ずしも層状に形成されている必要はない。しかしながら、本発明の効果を一層際立たせるためには、粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相が形成されていることが好ましい。
【0170】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を有する場合、その沃化銀含有相の上記とは別の好ましい態様は、粒子表面から20nm以内の深さに沃化銀含有率が0.3〜10モル%の領域を有するハロゲン化銀乳剤である。粒子表面から好ましくは10nm以内に沃化銀含有相を有することが好ましく、沃化銀含有率が0.5〜10モル%の沃化銀含有相を有することが好ましく、0.5〜5モル%の沃化銀含有相を有することが更に好ましい。この場合、沃化銀含有相は、必ずしも層状に形成されている必要はない。しかしながら、本発明の効果を一層際立たせるためには、粒子を取り囲むように層状に沃化銀含有相が形成されていることが好ましい。
【0171】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0172】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側に行うのが好ましく、より好ましくは70%より外側から、特に好ましくは80%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0173】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明に用いる乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンは粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0174】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子が、少なくとも2種の異なる配位子を同一錯体中に有するIrを中心金属とする6配位錯体を含有するものである場合、本発明の態様の1つであり、特に好ましい。該Irを中心金属とする6配位錯体としては、ハロゲン配位子および有機配位子を同一錯体中に含むIrを中心金属とする6配位錯体や、ハロゲン配位子およびハロゲン以外の無機配位子を同一錯体中に含むIrを中心金属とする6配位錯体がなかでも好ましい。ハロゲン配位子および有機配位子を同一錯体中に含むIrを中心金属とする6配位錯体とハロゲン配位子およびハロゲン以外の無機配位子を同一錯体中に含むIrを中心金属とする6配位錯体の両方を有することが更に好ましい。
【0175】
本発明で好ましく用いられるIrを中心金属とする6配位錯体は、下記一般式(II)で表される金属錯体である。
【0176】
一般式(II)
[IrXII(6−n)
【0177】
一般式(II)において、XIはハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LIはXIとは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。
ここで、3〜5個のXは互いに同一でも異なってもよく、またLが複数存在する場合、複数のLは互いに同一でも異なってもよい。
上記において、擬ハロゲン(ハロゲノイド)イオンとは、ハロゲンイオンに似た性質を有するイオンのことであり、例えば、シアン化物イオン(CN)、チオシアン酸イオン(SCN)、セレノシアン酸イオン(SeCN)、テルロシアン酸イオン(TeCN)、アジドジチオ炭酸イオン(SCSN)、シアン酸イオン(OCN)、雷酸イオン(ONC)、アジ化物イオン(N)等が挙げられる。
Iとして好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、イソシアン酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、または、アジ化物イオンであり、中でも塩化物イオン、および臭化物イオンであることが特に好ましい。LIには特に制限はなく、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、電荷を持っていても無電荷であってもよいが、無電荷の無機化合物または有機化合物であることが好ましい。
【0178】
一般式(II)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(IIA)で表される金属錯体が好ましい。
【0179】
一般式(IIA)
[IrXIAIA(6−n)
【0180】
一般式(IIA)において、XIAはハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LIAはXIAとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。
なお、XIAは一般式(II)のXIと同義であり、好ましい範囲も同じである。LIAとして好ましくは水、OCN、アンモニア、ホスフィン、カルボニルであり、特に水であることが好ましい。
ここで、3〜5個のXIAは互いに同一でも異なってもよく、またLIAが複数存在する場合、複数のLIAは互いに同一でも異なってもよい。
【0181】
一般式(II)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(IIB)で表される金属錯体が更に好ましい。
【0182】
一般式(IIB)
[IrXIBIB(6−n)
【0183】
一般式(IIB)において、XIBはハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LIBは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。
なお、XIBは一般式(II)のXIと同義であり、好ましい範囲も同じである。LIBは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表すが、シアン化物イオンは含めない。LIBは複素環化合物が好ましい。より好ましくは5員環化合物を配位子とする錯体であり、5員環化合物の中でも少なくとも1の窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を5員環骨格の中に含有する化合物であることがさらに好ましい。
ここで、3〜5個のXIBは互いに同一でも異なってもよく、またLIBが複数存在する場合、複数のLIBは互いに同一でも異なってもよい。
【0184】
一般式(IIB)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(IIC)で表される金属錯体が更に好ましい。
【0185】
一般式(IIC)
[IrXICIC(6−n)
【0186】
一般式(IIC)において、XICはハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LICは5員環配位子あり、かつ該環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子である。該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。
なお、XICは一般式(II)のXIと同義であり、好ましい範囲も同じである。LIC中の環骨格中の炭素原子上の置換基としては、n−プロピル基より小さな体積を持つ置換基であることが好ましい。置換基としてメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ヒドラジノ基、アジド基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドロキシアミノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が好ましい。
ここで、3〜5個のXICは互いに同一でも異なってもよく、またLICが複数存在する場合、複数のLICは互いに同一でも異なってもよい。
【0187】
以下に一般式(II)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0188】
[IrCl5(H2O)]2-
[IrCl4(H2O)2]-
[IrCl5(H2O)] -
[IrCl4(H2O)2]0
[IrCl5(OH)]3-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(OH)] 2-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(O)]4-
[IrCl4(O)2]5-
[IrCl5(O)]3-
[IrCl4(O)2]4-
[IrBr5(H2O)]2-
[IrBr4(H2O)2]-
[IrBr5(H2O)] -
[IrBr4(H2O)2]0
[IrBr5(OH)]3-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(OH)] 2-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(O)]4-
[IrBr4(O)2]5-
[IrBr5(O)]3-
[IrBr4(O)2]4-
[IrCl5(OCN)]3-
[IrBr5(OCN)]3-
[IrCl5(チアゾール)]2-
[IrCl4(チアゾール)2]-
[IrCl3(チアゾール)3]0
[IrBr5(チアゾール)]2-
[IrBr4(チアゾール)2]-
[IrBr3(チアゾール)3]0
[IrCl5(5-メチルチアゾール)]2-
[IrCl4(5-メチルチアゾール)2]-
[IrBr5(5-メチルチアゾール)]2-
[IrBr4(5-メチルチアゾール)2]-
【0189】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体を有することが更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl62-
[IrCl63-
[IrBr62-
[IrBr63-
[IrI63-
【0190】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0191】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0192】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0193】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、またはロジウムであることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0194】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’-ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-8モル〜1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モル〜5×10-4モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モル〜1×10-6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10-9モル〜1×10-6モル添加することである。
【0195】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は、特開昭62−215272号公報の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号公報に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0196】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号公報に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号公報に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基若しくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号公報に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号明細書の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号明細書の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本願においても好ましく適用され、本明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号公報の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は、本発明においても好ましく使用される。
【0197】
また、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては、例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号公報に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0198】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲である。
【0199】
次に、本発明に関わるハロゲン化銀カラー写真感光材料について説明する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の構成は、上述のように、支持体上に、シアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびイエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層ずつを有する。各層に含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。カプラーの使用量は銀に対して1当量であることが理想的であるが、好ましくは0.6当量以上であり、特に好ましくは0.7当量以上である。ここでいう1当量とは、使用した銀全てと反応した場合に発色するカプラー量であり、0.5当量とは使用した銀の半分と反応して発色するカプラー量である。
【0200】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば、写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。本発明においては、反射型支持体(又は反射支持体とも称す)が好ましく、反射型支持体としては、特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0201】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0202】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明における反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号公報、同10−333278号公報、同11−52513号公報、同11−65024号公報、EP0880065号明細書、及びEP0880066号明細書に記載されている例が挙げられる。
【0203】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、前記蛍光増白剤を分散含有する親水性コロイド層を、別途形成してもよい。前記蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系を用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0204】
反射型支持体としては、透過型支持体、又は上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性又は第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0205】
また、本発明の感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0206】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0207】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号公報、同5−127325号公報、同5−216185号公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0208】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0209】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号公報の3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号公報の3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号公報に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、例えば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号公報の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号公報の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号明細書、同3,459,563号明細書に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0210】
本発明の感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙ディスプレイ感光材料、デジタルカラープルーフ、映画用カラーポジ、映画用カラーネガ等に用いられるが、中でも、ディスプレイ感光材料、デジタルカラープルーフ、映画用カラーポジ、カラー反転印画紙、カラー印画紙が好ましく、特にカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、上述のように、イエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0211】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
青感光性ハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該青感光性ハロゲン化銀乳剤層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、緑感光性ハロゲン化銀乳剤層又は赤感光性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、青感光性ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からは、赤感光性ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からは赤感光性ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号公報、同9−114035号公報、同10−246940号公報、米国特許第5,576,159号明細書等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0212】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号公報、特開平2−33144号公報、欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号公報、同4−359249号公報、同4−313753号公報、同4−270344号公報、同5−66527号公報、同4−34548号公報、同4−145433号公報、同2−854号公報、同1−158431号公報、同2−90145号公報、同3−194539号公報、同2−93641号公報、欧州特許公開第0520457A2号明細書等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0213】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許公報の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0214】
【表1】

【0215】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号公報の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号公報の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号明細書の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO98/33760号明細書の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号公報の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0216】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号公報に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号公報に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号公報に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号明細書や同第294,785A号明細書に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号公報に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許公報の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号明細書、同第884640号明細書に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0217】
また、イエロー色素形成カプラー(単に、「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号明細書、同第953871A1号明細書、同第953872A1号明細書、同第953873A1号明細書、同第953874A1号明細書、同第953875A1号明細書等に記載のピロール−2又は3−イル若しくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーまたは特開2003−173007号公報に記載のアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラー、またはアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーの使用が好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。が好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラー、またはアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーの使用が好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0218】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号明細書)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0219】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許公報に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号公報、特開平10−282615号公報及び独国特許第19629142A1号明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号明細書、欧州特許第839623A1号明細書、欧州特許第842975A1号明細書、独国特許19806846A1号明細書及び仏国特許第2760460A1号明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0220】
本発明においては、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許公報に記載の化合物を用いることができる。これらは、光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号明細書、欧州特許第711804A号明細書及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
【0221】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0222】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0223】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
【0224】
本発明の感光材料は、感光材料を露光処理する画像形成装置の具体的例で示したように、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。
【0225】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0226】
本発明の感光材料は、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光することが好ましい。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。
【0227】
ここで、レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長:約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長:約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0228】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を300dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては1×10-4秒以下、更に好ましくは1×10-6秒以下である。
【0229】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特開2000−310822号公報に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0230】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許公報に詳しく記載されている。
【0231】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0232】
本発明の感光材料は、迅速処理適性を有する感光材料として好ましく適用される。
迅速処理を行う場合には、発色現像処理を前記露光後9秒以内に開始することが好ましい。
迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは30秒以下、さらに好ましくは28秒以下、より好ましくは25秒以下6秒以上、特に好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。
【0233】
なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0234】
本発明の感光材料においては、発色現像時間は、特に20秒以下(好ましくは6〜20秒、さらに好ましくは6〜15秒)が好ましい。ここで、本発明において、20秒以下の発色現像時間でカラー現像処理するとは、上記の発色現像時間が20秒以下であること(カラー現像処理全体の時間ではない)を意味するものである。
【0235】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0236】
(青感層乳剤BH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀溶液と塩化ナトリウム溶液を同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が10%の時点から20%の時点にかけて、Cs[OsCl(NO)]を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3.0モル%)およびK[Fe(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が75%の時点から80%の時点にかけて、K[IrCl]を添加した。硝酸銀の添加が88%の時点から98%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]およびK[IrCl(HO)]を添加した。硝酸銀の添加が93%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.4モル%)を激しく攪拌しながら添加した。得られた乳剤粒子は、辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤に沈降脱塩処理を施した後、ゼラチンと、化合物Ab−1、Ab−2、Ab−3、および硝酸カルシウムを添加し再分散を行った。
【0237】
再分散した乳剤を40℃で溶解し、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、金硫黄増感剤として化合物−1、セレン増感剤としてSE3-9および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−3で表される繰り返し単位2または3が主成分の化合物(末端XおよびXはヒドロキシル基)、化合物−4および臭化カリウムを添加した。更に乳剤調製工程の途中で増感色素S−1、S−2、およびS−3を添加することにより分光増感を行った。こうして得られた乳剤を乳剤BH−1とした。
【0238】
【化38】

【0239】
【化39】

【0240】
(緑感層乳剤GH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、K[Ru(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり1モル%)を添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から85%の時点にかけて、K[IrCl]およびK[RhBr(HO)]を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.2モル%)を激しく攪拌しながら添加した。更に、硝酸銀の添加が87%から98%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]およびK[IrCl(HO)]を添加した。得られた乳剤粒子は、辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤に前記と同様に沈降脱塩処理および再分散を施した。
【0241】
この乳剤を40℃で溶解し、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、セレン増感剤としてSE3-9および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−4および臭化カリウムを添加した。更に乳剤調製工程の途中で増感色素として、増感色素S−4、S−5、S−6およびS−7を添加することにより分光増感を行った。こうして得られた乳剤を乳剤GH−1とした。
【0242】
【化40】

【0243】
(赤感層用乳剤RH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀と塩化ナトリウム同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、硝酸銀の添加が60%の時点から80%の時点にかけて、Cs[OsCl(NO)]を添加した。硝酸銀の添加が93%の時点から98%の時点にかけて、K[Ru(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が85%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3モル%)を添加した。硝酸銀の添加が88%の時点から93%の時点にかけて、K[IrCl(5−メチルチアゾール)]を添加した。硝酸銀の添加が93%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり沃化銀量が0.05モル%となる量)を激しく攪拌しながら添加した。更に、硝酸銀の添加が93%から98%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]およびK[IrCl(HO)]を添加した。得られた乳剤粒子は立方体辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀乳剤粒子であった。得られた乳剤に前記と同様にして沈降脱塩処理および再分散を行った。
【0244】
この乳剤を40℃で溶解し、増感色素S−8、化合物−5、ベンゼンチオ硫酸ナトリウム、p−グルタルアミドフェニルジスルフィド、セレン増感剤としてSE3-9および金増感剤として(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を添加し、化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2、化合物−4、および臭化カリウムを添加した。こうして得られた乳剤を乳剤RH−1とした。
【0245】
【化41】

【0246】
(赤感層用乳剤RH−2の調製)
乳剤RH−1の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりに金硫黄増感剤として化合物−1を添加し、金増感剤(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を除き、添加される各種化合物の量をRH−1から変更する以外は同様にして乳剤RH−2を調製した。
【0247】
(赤感層用乳剤RH−3の調製)
乳剤RH−1の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりにSE3−29を添加し、添加される各種化合物の量をRH−1から変更する以外は同様にして乳剤RH−3を調製した。
【0248】
(赤感層用乳剤RH−4の調製)
乳剤RH−1の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりにPF1-1を添加し、添加される各種化合物の量をRH−1から変更する以外は同様にして乳剤RH−4を調製した。
【0249】
(赤感層用乳剤RH−5の調製)
乳剤RH−1の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりにPF6-1を添加し、添加される各種化合物の量をRH−1から変更する以外は同様にして乳剤RH−5を調製した。
【0250】
(赤感層用乳剤RH−6の調製)
乳剤RH−1の調製において、沃化カリウムの添加量を出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり沃化銀量が0.3モル%となる量に変更する以外は同様にして乳剤RH−6を調製した。
【0251】
(赤感層用乳剤RH−7の調製)
乳剤RH−6の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりに金硫黄増感剤として化合物−1を添加し、金増感剤(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を除き、添加される各種化合物の量をRH−6から変更する以外は同様にして乳剤RH−7を調製した。
【0252】
(赤感層用乳剤RH−8の調製)
乳剤RH−6の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりにSE3−29を添加し、添加される各種化合物の量をRH−6から変更する以外は同様にして乳剤RH−8を調製した。
【0253】
(赤感層用乳剤RH−9の調製)
乳剤RH−6の調製において、セレン増感剤SE3-9の替わりにPF6-1を添加し、添加される各種化合物の量をRH−6から変更する以外は同様にして乳剤RH−9を調製した。
【0254】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(Ex−Y)24g、色像安定剤(Cpd−8)6g、色像安定剤(Cpd−16)1g、色像安定剤(Cpd−17)1g、色像安定剤(Cpd−18)11g、色像安定剤(Cpd−19)1g、色像安定剤(Cpd−21)11g、添加剤(ExC−3)0.1g、色像安定剤(UV−A)1gを溶媒(Solv−4)17g、溶媒(Solv−6)3g、溶媒(Solv−9)17g及び酢酸エチル45mlに溶解し、この液を3gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液205g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて700gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと前記乳剤BH−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0255】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が10.0mg/m2、45.0mg/m2,5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0256】
1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、第三層、第五層、および第六層、それぞれ0.2mg/m、0.2mg/m、0.6mg/mとなるように添加した。青感性乳剤層および緑感性乳剤層に対し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10−4モル、2×10−4モル添加した。赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/mを添加した。第三層、第五層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m、6mg/m、18mg/mとなるように添加した。各層にポリスチレンスルホン酸ナトリウムを必要に応じて加え塗布液の粘度を調節した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0257】
【化42】

【0258】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)、蛍光増白剤(4,4′−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン(含有率0.03質量%)および青味染料(群青、含有率0.33質量%)を含む。ポリエチレン樹脂の量は29.2g/m
第一層(青色感光性乳剤層)
乳剤(BH−1) 0.15
ゼラチン 1.00
イエローカプラー(Ex−Y) 0.27
色像安定剤(Cpd−8) 0.06
色像安定剤(Cpd−16) 0.01
色像安定剤(Cpd−17) 0.01
色像安定剤(Cpd−18) 0.12
色像安定剤(Cpd−19) 0.01
色像安定剤(Cpd−21) 0.11
添加剤(ExC−3) 0.001
色像安定剤(UV−A) 0.01
溶媒(Solv−4) 0.17
溶媒(Solv−6) 0.03
溶媒(Solv−9) 0.17
【0259】
第二層(中間発色層)
ゼラチン 0.33
イエローカプラー(Ex−Y) 0.08
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−16) 0.01
色像安定剤(Cpd−17) 0.01
色像安定剤(Cpd−18) 0.03
色像安定剤(Cpd−19) 0.01
色像安定剤(Cpd−21) 0.03
添加剤(ExC−3) 0.001
色像安定剤(UV−A) 0.01
溶媒(Solv−4) 0.05
溶媒(Solv−6) 0.01
溶媒(Solv−9) 0.05
【0260】
第三層(混色防止層)
ゼラチン 0.31
混色防止剤(Cpd−4) 0.020
混色防止剤(Cpd−12) 0.004
色像安定剤(Cpd−3) 0.004
色像安定剤(Cpd−5) 0.004
色像安定剤(Cpd−6) 0.020
色像安定剤(UV−A) 0.020
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.024
溶媒(Solv−2) 0.024
溶媒(Solv−5) 0.028
溶媒(Solv−8) 0.028
【0261】
第四層(赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1) 0.10
ゼラチン 0.77
シアンカプラー(ExC−1) 0.16
シアンカプラー(ExC―2) 0.005
シアンカプラー(ExC−3) 0.01
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.15
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.02
色像安定剤(UV−5) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.07
【0262】
第五層(混色防止層)
ゼラチン 0.39
混色防止剤(Cpd−4) 0.025
混色防止剤(Cpd−12) 0.005
色像安定剤(Cpd−3) 0.005
色像安定剤(Cpd−5) 0.005
色像安定剤(Cpd−6) 0.025
色像安定剤(UV−A) 0.025
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.030
溶媒(Solv−2) 0.030
溶媒(Solv−5) 0.035
溶媒(Solv−8) 0.035
【0263】
第六層(緑色感光性乳剤層)
乳剤(GH−1) 0.09
ゼラチン 1.05
マゼンタカプラー(ExM) 0.11
色像安定剤(Cpd−2) 0.01
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.005
色像安定剤(Cpd−10) 0.005
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
色像安定剤(Cpd−18) 0.01
紫外線吸収剤(UV−B) 0.26
溶媒(Solv−3) 0.04
溶媒(Solv−4) 0.08
溶媒(Solv−6) 0.05
溶媒(Solv−9) 0.12
溶媒(Solv−7) 0.11
化合物(S1−4) 0.0015
【0264】
第七層(保護層)
ゼラチン 0.44
添加剤(Cpd−20) 0.015
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0265】
【化43】

【0266】
【化44】

【0267】
【化45】

【0268】
【化46】

【0269】
【化47】

【0270】
【化48】

【0271】
【化49】

【0272】
【化50】

【0273】
【化51】

【0274】
以上のようにして作成した試料を試料101とした。更に試料101における第四層の構成を以下の表2の様に変更して塗布銀量を変えないように試料102〜105および121〜124を作製した。
【0275】
試料111の作成
試料101に対して第四層の構成を以下のように変更して試料111を作成した。
第四層(赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1) 0.09
ゼラチン 0.87
シアンカプラー(IC−22) 0.22
色像安定剤(Cpd−1) 0.01
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.15
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.02
色像安定剤(UV−5) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.07
【0276】
更に試料111における第四層の構成を以下の表2の様に変更して塗布銀量および塗布銀量/カプラーのモル濃度比率を変えないように試料112〜116および125〜128を作製した。
【0277】
【表2】

【0278】
処理A
上記の試料101を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア350(富士写真フイルム社製)を用いて標準的な写真画像を露光した。その後下記の処理工程にて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング処理液を用いた処理を処理Aとした。
【0279】
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 38.5℃ 45秒 45mL
漂白定着 38.0℃ 45秒 A剤17.5mL
B剤17.5mL
リンス1 38.0℃ 20秒 −
リンス2 38.0℃ 20秒 −
リンス3 38.0℃ 20秒 −
リンス4 38.0℃ 20秒 121mL
乾燥 80℃
(注)
* 感光材料1mあたりの補充量
** 富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス4に供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは1から4への4タンク向流方式とした。
【0280】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−1) 2.2g 5.1g
蛍光増白剤(FL−2) 0.35g 1.75g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
ポリエチレングリコール平均分子量300
10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.20g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム
0.50g 50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナートエチル)ヒドロキシルアミン
8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン・3/2硫酸塩・モノハイドレード
4.8g 14.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整)
10.15 12.40
【0281】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 800mL 500mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L)
107mL − 386mL
重亜硫酸アンモニウム(65%)
30.0g − 190g
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)アンモニウム
47.0g 133g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 5g 6g
硝酸(67%) 6.5g 66.0g −
イミダゾール 14.6g 50.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸
8.3g 33.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整)
6.5 6.0 6.0
【0282】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0283】
処理B
上記の試料101を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア340(富士写真フイルム社製)を用いて標準的な写真画像を露光した。その後下記の処理工程にて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。なお、プロセッサーは下記処理時間にするため処理ラック改造により搬送速度変更を実施した。このランニング処理液を用いた処理を処理Bとした。
【0284】
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 45.0℃ 12秒 35mL
漂白定着 40.0℃ 12秒 A剤15mL
B剤15mL
リンス1 45.0℃ 4秒 −
リンス2 45.0℃ 2秒 −
リンス3 45.0℃ 2秒 −
リンス4 45.0℃ 3秒 175mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1mあたりの補充量
【0285】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−3) 4.0g 10.0g
残色低減剤(SR−1) 3.0g 3.0g
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸
2.0g 4.0g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム
10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.10g
塩化カリウム 10.0g ―
4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム
0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナートエチル)ヒドロキシルアミン
8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン・3/2硫酸塩・モノハイドレード
7.0g 19.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整)
10.25 12.8
【0286】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 700mL 300mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L)
107mL − 400mL
亜硫酸アンモニウム 30.0g − −
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)アンモニウム
47.0g 200g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 0.5g 10.0g
硝酸(67%) 7.0g 30.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸
3.0g 13.0g −
重亜硫酸アンモニウム液(65%)
− − 200g
コハク酸 7.0g 30.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整)
6.0 2.0 5.6
【0287】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下)
1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0288】
【化52】

【0289】
各試料に以下の露光装置で上記処理Bでグレイを与える階調露光を与え、露光を終了して5秒後から上記処理AおよびBで発色現像処理を行った。レーザー光源としては、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。半導体レーザーは温度による光量変化を抑えるために、ペルチェ素子を用いて温度を一定にした。
【0290】
処理後の各試料のシアン発色濃度を測定し、特性曲線を得た。感度(S)は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数の真数で、処理Aにおける試料101の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど高感度で好ましい。階調(γ)は、濃度0.5と濃度1.5の感度の差で、処理Aにおける試料101の階調を100とした相対値で表した。値が小さいほど硬調で好ましい。かぶり濃度(Dmin)は、未露光部のシアン濃度からベースの濃度を引いた値を表し、値が小さいほど白地がきれいで好ましい。感度(S)、階調(γ)、かぶり濃度(Dmin)の結果を表3に示す。
【0291】
【表3】

【0292】
表3より、本発明の試料111および113〜116は、試料101〜105および112と比較して感度および階調は同等で、かぶり値が低く好ましいことがわかった。処理Aと処理Bを比較すると、処理Bの方がさらに本発明の効果が大きく、本発明は迅速処理適正が高いことを示した。また、ハロゲン化銀1モル当たりの沃化銀量を変えた試料125および127〜128と試料121〜124および126を比較すると沃化銀含有率0.3モル%のハロゲン化銀乳剤を用いた場合の方が、沃化銀含有率0.05モル%のハロゲン化銀乳剤を用いた場合よりも効果が大きいことがわかった。
【実施例2】
【0293】
実施例1の試料101〜105および試料111〜115において赤感層用についてのハロゲン化銀乳剤および乳化分散物を混合溶解し、6時間経時した後、塗布した以外は同様にして試料201〜205および試料211〜215を作成した。
乳剤とカプラーの構成は以下の表4の通りである。
【0294】
【表4】

【0295】
実施例1と同様に露光及び処理(処理B)を行い、試料101〜105および試料111〜115に対する試料201〜205および試料211〜215の変化を比較した。
【0296】
処理後の各試料のシアン発色濃度を測定し、特性曲線を得た。感度は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数の真数で、処理Bにおける試料101の感度を100とした相対値で表し、その差を感度差とし、値が0に近いほど変動が小さく好ましい。かぶり濃度差は、未露光部のシアン濃度からベースの濃度を引いた値の差を表し、値が小さいほどかぶり濃度差が少なく好ましい。感度差、かぶり濃度差の結果を表5に示す。
【0297】
【表5】

【0298】
表5より本発明の試料は、製造時における混合溶解後の経時での性能変化が小さく安定性に優れていることが分かった。試料211および213〜215と試料212を比較すると本発明に用いるセレン増感剤を使用した場合に効果が大きく、特に一般式(PF1)〜(PF6)で表されるセレン増感剤を使用した場合(試料214および215)の方がさらに効果が大きいことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびイエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該シアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、セレン増感された塩化銀含有率が90モル%以上の高塩化銀乳剤粒子からなり、かつ下記一般式(I)で示されるカプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】

一般式(I)中、R'およびR''は各々独立に置換基を表し、Zは水素原子、または芳香族第一級アミンカラー現像主薬の酸化体とのカップリング反応において離脱し得る基を表す。
【請求項2】
前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE1)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化2】

一般式(SE1)中、MおよびMは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、またはカルバモイル基を表し、Qはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OMもしくは−NMを表し、M〜Mは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。また、M、MおよびQはそれぞれ結合して環構造を形成してもよい。
【請求項3】
前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE2)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化3】

一般式(SE2)中、X、XおよびXは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OJまたは−NJを表す。J〜Jは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【請求項4】
前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(SE3)で表されるセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(SE3)
−Se−E
一般式(SE3)中、EおよびEは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはカルバモイル基を表す。なお、EおよびEは同じであっても異なっていても良い。
【請求項5】
前記高塩化銀乳剤粒子が下記一般式(PF1)〜(PF6)で表される少なくとも1種のセレン増感剤で化学増感されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化4】

一般式(PF1)〜(PF6)中、L21はN原子、S原子、Se原子、Te原子またはP原子を介して金に配位可能な化合物を表す。n21は0または1を表す。A21は−O−、−S−または−NR24−を表し、R21〜R24は各々独立に水素原子または置換基を表す。R23はR21またはR22と共に5〜7員環を形成してもよい。X21は=O、=Sまたは=NR25を表し、Y21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、−OR26、−SR27、又は−N(R28)R29を表す。R25〜R29は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。X21とY21は互いに結合して環を形成してもよい。R210、R211およびR212は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R210およびR211のうち少なくとも一方は電子求引性基を表す。W21は電子求引性基を表し、R213〜R215は各々独立に水素原子または置換基を表す。W21とR213は互いに結合して環状構造を形成してもよい。A22は−O−、−S−、−Se−、−Te−または−NR219−を表す。R216は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表し、R217〜R219は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。Z21は置換基を表し、n22は0〜4の整数を表す。n22が2以上である場合、複数のZ21は互いに同じでも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよい。Q21およびQ22は前記一般式(SE1)〜(SE3)より選ばれる化合物を表し、Q21およびQ22中のSe原子はAuに配位結合する。n23は0または1を表し、J21は対アニオンを表す。n23が1の場合、Q21とQ22は同じでも異なってもよい。ただし、一般式(PF6)で表される化合物は一般式(PF1)〜(PF5)で表される化合物を含むものではない。
【請求項6】
前記高塩化銀乳剤粒子の平均辺長が0.1μm以上0.35μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項7】
前記高塩化銀乳剤粒子の沃化銀含有率が0.1モル%以上1モル%以下であり、かつ粒子体積の80%より外側に沃化銀含有相が一部もしくは全部に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項8】
セレン増感剤で化学増感されている前記赤感性ハロゲン化銀乳剤層に含まれるカプラー量が銀1モルに対して0.6当量〜1当量であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項9】
前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料が、像様露光後9秒以内に発色現像処理工程を開始し、かつ該発色現像処理工程が28秒以内の時間で行われることにより画像を形成する迅速処理用ハロゲン化銀カラー写真感光材料あることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項10】
前記露光が、レーザー走査露光で像様露光される、デジタル露光用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2006−106022(P2006−106022A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288299(P2004−288299)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】