説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】迅速処理性に優れ、且つ処理変動によるカブリが改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。
【解決手段】下記式で表されるハロゲン化銀乳剤を含有した写真感光材料。


[Chは硫黄原子、セレン原子もしくはテルル原子を表す。A1は酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。詳しくは、新規なカルコゲン化合物により達成された高感度でカブリが低いハロゲン化銀乳剤を用いた、迅速処理性に優れたプリント用のハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いたカラープリント分野においてもデジタル化の進行が進んできており、例えばレーザー走査露光に代表されるデジタル露光は、従来から行われている処理済カラーネガフィルムからカラープリンターを通して直接焼付を行うアナログ露光に比べ、飛躍的な普及率の伸びを示している。このようなデジタル露光は、画像処理を行うことにより高品質なプリントを得られる特徴があり、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いたプリントの品質向上に果たす役割が極めて大きい。また、デジタルカメラのような電子記録媒体による画像情報から簡易に高画質なプリントを得られることもあり、今後更なる普及が期待されている。
【0003】
一方、インクジェット、昇華型、カラーゼログラフィーなどの技術がそれぞれ進歩して写真画質を謳うなど、カラープリント方式として認知されつつある。これら競合するプリント方式の中にあって、ハロゲン化銀カラー写真感光材料とデジタル露光を組合わせたプリント方式は、高画質、高生産性、そして得られる画像の高堅牢性に特長がある。これらの特長を更に伸ばし、高品質のカラープリントを安価に、且つ短時間で提供することが望まれている。
例えば、店頭でデジタルカメラの記録媒体を受け取り、数分程度の短い所要時間で高画質なプリントを仕上げて返却するような、カラープリントのワンストップサービスを提供できるようになれば、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いたカラープリントの優位性は益々高まる。また、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の迅速処理性を向上させれば、処理機器の小型化が可能になり、小型且つ安価でありながら生産性の高いプリント機器を提供することができ、カラープリントのワンストップサービスが益々普及すると期待できる。
このために、ハロゲン化銀カラー写真感光材料としては、露光時間の短縮、露光後から現像開始までのいわゆる潜像時間の短縮、処理時間の短縮、処理後の乾燥時間の短縮など様々な観点からの検討が必要であり、それぞれに対する提案が従来からなされている。
【0004】
プリント用のハロゲン化銀カラー写真感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤は、前述のように様々な要求を満たす必要がある。ハロゲン組成においては、迅速処理性の要求により、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤(高塩化銀乳剤ともいう)が用いられている。更に、ハロゲン化銀乳剤に含有される乳剤粒子のサイズ(粒径ともいう)を小さくすることにより、現像速度が向上することが知られており、関連する技術が開示されている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、乳剤粒子のサイズを小さくすると感度も低下してしまい、デジタル露光に必要な感度を得られなくなるという問題がある。そのため、高塩化銀乳剤を高感度化する技術が求められていた。
【0005】
ハロゲン化銀写真感光材料に使用するハロゲン化乳剤は、通常、所望の感度、階調等を得るために各種の化学物質を用いて化学増感を施す。その代表的な方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感、金などの貴金属増感及びこれらの組み合わせによる各種増感方法が知られている。近年、ハロゲン化銀写真感光材料における高感度、優れた粒状性や高い鮮鋭度、さらには、現像進行などを速めた迅速処理などへの要望が強く、上記の増感方法の種々の改善がなされてきた。
【0006】
上記の増感方法のうち、セレン増感におけるセレン増感剤としてセレノカルボン酸エステルすなわちセレノエステルが使用できることが知られている。具体的な化合物が開示されている例としては、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。
【0007】
セレン増感剤は当業界で用いられている硫黄増感よりは大きな増感効果を示すことがあるがカブリの発生が大きく、また軟調化しやすく、保存時の感度変化が大きいという傾向が多々ある。これまでに開示された特許の多くは、こういった欠点を改良するものであるが、未だ不十分な結果に止まっており、特にカブリの発生をより抑える基本的な改善が熱望されてきた。また、特に硫黄増感、セレン増感、テルル増感に金増感を併用するとそれぞれ著しい感度増加が得られるが、同時にカブリも上昇する。特に、金−硫黄増感に比べ、金−セレン増感、金−テルル増感は感度増加が大きいものの、カブリの上昇が大きく、また、軟調化しやすい。そのため、感度増加が大きく、カブリの発生が少なく、硬調なセレン増感剤、およびテルル増感剤の開発がなおも強く望まれてきた。
【0008】
こうした中で、特許文献4にはジアシルセレニド化合物が、特許文献5にはセレニウム原子に2つのカルボニル基が連結した化合物が、また、特許文献6ではセレノカルボン酸(Se−エステル)化合物がセレン増感剤として有用であることが記載されている。これらの化合物によって、カブリが低く抑えることができ、かつ高感度を達成できることが開示されている。しかしながら、上述の公報に記載されている化合物でもまだ増感剤として充分とは言えず、更にカブリを低く抑え、かつ高感度を達成できる増感剤の開発が望まれていた。
【0009】
また、一般にセレン化合物、テルル化合物は対応する硫黄化合物に比べて安定性の低い化合物が多いことが知られている。化学増感剤として用いられるセレン化合物やテルル化合物も安定性の低い化合物が少なくなく、溶液で保存していると徐々に分解が起こってしまい、セレン化合物またはテルル化合物の溶液を調液した直後に乳剤製造した場合と調液後しばらく時間が経過した後に乳剤製造した場合とでは、感度、カブリ、階調等が大きく異なる傾向がある。従って、カブリを低く抑えて高感度を実現する化学増感剤において、さらに安定性が高いことが望まれていた。
【0010】
このような背景のもとで、感度増加が大きく、カブリの発生が少ない金−カルコゲン増感剤の開発がなおも強く望まれていた。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,297,446号明細書
【特許文献2】米国特許第3,297,447号明細書
【特許文献3】特公昭57−22090号公報
【特許文献4】特開平4−2711341号公報
【特許文献5】特開平5−11385号公報
【特許文献6】特開平7−140579号公報
【非特許文献1】日本写真学会誌2004年度秋季大会講演要旨集(20〜21頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、小サイズ高塩化銀ハロゲン化銀乳剤であって、感度を高めカブリを低減し、且つ保存性を改良したハロゲン化銀乳剤を提供することである。本発明の第2の目的は、迅速処理性に優れ、且つ処理変動によるカブリが改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は下記の手段によって達成された。
【0014】
[1]支持体上に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、且つ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物により化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0015】
【化1】

【0016】
[一般式(1)において、Chは硫黄原子、セレン原子もしくはテルル原子を表す。A1は酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Xは置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い。Yは下記一般式(2)〜(5)で表される基より選ばれる基である。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
一般式(2)において、Zはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ORもしくはNRを表し、R〜Rは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。一般式(3)において、Lは2価の連結基を表し、EWGは電子求引性基を表す。一般式(4)において、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNR11を表し、R〜R11は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。一般式(5)において、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNR15を表し、R12は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R13〜R15は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Xは置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い。]
[2]前記青感光性ハロゲン化銀乳剤層が辺長0.50μmを越えるハロゲン化銀粒子を実質的に含有しないことを特徴とする[1]に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、感度が高くカブリが少なく、保存安定性の良い小サイズ高塩化銀ハロゲン化銀乳剤を提供することができ、またそれを用いることにより迅速処理性に優れ、且つ処理変動によるカブリが改善されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下において、本発明の実施態様について詳細に説明する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、支持体上に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物により化学増感された塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有する。
【0024】
本発明で用いられる、塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤(高塩化銀乳剤ともいう)および該乳剤を構成するハロゲン化銀乳剤粒子について詳細に説明する。
【0025】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、迅速処理性の観点から塩化銀含有率が、通常90モル%以上であり、更には95モル%以上であることがより好ましく、97モル%以上であることが特に好ましい。1つの感光性ハロゲン化銀乳剤層が2種類以上の複数の乳剤を混合して含んでいてもよいが、この場合には該層中のハロゲン化銀乳剤全体の平均としてハロゲン組成が90%以上であることを意味する。この場合においても、95モル%以上であることがより好ましく、97モル%以上であることが特に好ましい。
【0026】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、臭化銀を含んでいてもよく、臭化銀含有率は0〜5.0モル%であることが好ましい。高感度化や相反則不軌の改良の観点では、0.1モル%以上の臭化銀を含有することが好ましい。この意味で、臭化銀含有率は0.3モル%以上が更に好ましく、0.5モル%以上であることが特に好ましい。また、迅速処理性の観点では、処理液中での臭素イオンの蓄積による現像遅れなどを抑えるために、4モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることが特に好ましい。
【0027】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、沃化銀を含んでいてもよく、沃化銀含有率は0〜1モル%であることが好ましい。高感度化の観点では、0.05モル%以上の臭化銀を含有することが好ましい。この意味で、沃化銀含有率は0.1モル%以上が更に好ましく、0.15モル%以上であることが特に好ましい。また、処理性の観点からは、0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることが特に好ましい。
【0028】
ハロゲン化銀乳剤のハロゲン組成については、X線回析、EPMA(XMAという名称もある)法(電子線でハロゲン化銀乳剤粒子を走査してハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA(XPSという名称もある)法(X線を照射し粒子表面から出て来る光電子を分光する方法)などを適宜組み合わせて分析することができる。
【0029】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀乳剤粒子が臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有することが好ましい。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは周囲よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜50モル%であることが更に好ましく、15〜30モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよい。
【0030】
ハロゲン化銀乳剤粒子が臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが重要である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0031】
ハロゲン化銀乳剤粒子が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤粒子が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の5%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、10%以上20%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0032】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀乳剤粒子が臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0033】
高感度化や硬調化などの効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接あるいは共存していることが好ましい。特に粒子表面付近で共存することが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の70%から100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%から100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%から100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物の導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0035】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度でカブリの低い乳剤を得る上で好ましい範囲がある。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部にするほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度でカブリの低い乳剤を得ることができる。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0036】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンは粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0037】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤において、粒子間沃化銀含有率分布の変動係数は20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。ハロゲン化銀粒子の粒子間沃化銀含有率分布の変動係数が20%より大きい場合は、それを用いた感光材料の写真性能は、硬調ではなく、また、圧力を加えたときのカブリ増加や感度低下も大きくなり好ましくない。
【0038】
個々の粒子の沃化銀含有率はX線マイクロアナライザーを用いて、1個1個の粒子の組成を分析することで測定できる。粒子間沃化銀含有率分布の変動係数とは少なくとも100個、より好ましくは200個、特に好ましくは300個以上の乳剤粒子の沃化銀含有率を測定した際の沃化銀含有率の標準偏差と平均沃化銀含有率を用いて下記関係式で定義される値である。
(標準偏差/平均沃化銀含有率)×100=変動係数
個々の粒子の沃化銀含有率測定は例えば欧州特許第147,868号公報に記載されている。
【0039】
本発明においてハロゲン化銀乳剤として、全ハロゲン化銀粒子の68%以上が平均臭化銀含有率の±18%以内であるような粒子間臭化銀分布の少ない乳剤が好ましく用いられる。臭化銀含有率分布については、特開2003−270749号公報に記載されているとおりである。
【0040】
次に本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【0041】
【化6】

【0042】
一般式(1)においてChは硫黄原子、セレン原子もしくはテルル原子を表すが、本発明においてはセレン原子もしくはテルル原子である場合が好ましく、セレン原子である場合がより好ましい。即ち、一般式(1)において、Chはセレン原子もしくはテルル原子を表し、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表し、Xは置換基を表し、nは0から4の整数(nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い)を表す場合が好ましく、Chはセレン原子を表し、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表し、Xは置換基を表し、nは0から4の整数(nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い)を表す場合がより好ましい。
【0043】
一般式(1)におけるR〜Rで表されるアルキル基とは直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,5ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ソディウムスルホエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ブトキシプロピル基、エトキシエトキシエチル基、n−ヘキシルオキシプロピル基等)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基等)を表す。また、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、(つまり炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。R〜Rで表されるアルケニル基とは、炭素数2〜16のアルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)を表し、R〜Rで表されるアルキニル基とは炭素数2〜10のアルキニル基(例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基等)を表す。
【0044】
〜Rで表されるアリール基とは、好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルである。R〜Rで表されるヘテロ環基とは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環である。これらは単環であっても良いし、更に他のアリール環もしくはヘテロ環と共に縮合環を形成しても良い。ヘテロ環基として好ましくは5〜6員のものであり、例えばピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、フリル基、ピラニル基、クロメニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、モルホリニル基などが挙げられる。
【0045】
で表されるアシル基とは、好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のアシル基であり、例えばアセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基などが挙げられる。
【0046】
本発明において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基が好ましく、水素原子、アルキル基もしくはアシル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。RおよびRは水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基である場合が最も好ましい。Rは水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0047】
一般式(1)においてAは酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表すが、本発明においては酸素原子もしくは硫黄原子である場合が好ましく、酸素原子である場合が最も好ましい。
【0048】
一般式(1)においてXは置換基を表す。置換基の例としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基(及びその塩を含む)、シリル基などが挙げられる。なおここで塩とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンやアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンとの塩を意味する。
【0049】
本発明において、Xとして好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基などであり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などであり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基(及びその塩を含む)などである。
【0050】
一般式(1)において、nは0から4の整数を表す。本発明においてnは0から2を表す場合が好ましく、0または1である場合がより好ましい。
【0051】
一般式(1)においてYは、一般式(2)〜(5)で表される基より選ばれる基である。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
一般式(2)において、Zはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ORもしくはNRを表し、R〜Rは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。ここで言うアルキル基とは一般式(1)におけるR〜Rが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれR〜Rが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0057】
一般式(1)においてYが一般式(2)で表される場合、本発明において好ましいものはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rが水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜2の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Zがアルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基である場合であり、より好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜1の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Zがアルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基である場合であり、更に好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0を表し、Zがアルキル基もしくはアリール基である場合である。
【0058】
次に一般式(3)について説明する。
一般式(3)において、Lで表される2価の連結基は、炭素数2〜20の脂肪族基を表し、特に炭素数2〜10の直鎖、分岐または環状のアルキレン基(例えばエチレン、プロピレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン)、アルケニレン基(例えばビニレン)、アルキニレン基(例えばプロピニレン)を表す。好ましいLとしては一般式(L1)、一般式(L2)で表されるものが挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
一般式(L1)、一般式(L2)において、G、G、G、Gは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数1〜10のヘテロ環基を表し、G、G、Gは連結して環を形成しても良い。G、G、G、Gとして好ましくは水素原子、アルキル基もしくはアリール基であり、水素原子もしくはアルキル基がより好ましい。
【0062】
一般式(3)において、EWGは電子求引性基を表す。ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σ値が正の値である置換基であり、好ましくはσ値が0.2以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σ値が0.2以上の電子求引性基の具体例としてはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。
【0063】
本発明において、EWGは好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、またはハロゲン原子であり、より好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基であり、更に好ましくはアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である。
【0064】
一般式(1)においてYが一般式(3)で表される場合、好ましいものはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rが水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜2の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Lが一般式(L1)または一般式(L2)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基もしくは少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合であり、より好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜1の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Lが一般式(L1)または一般式(L2)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基もしくは少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合であり、更に好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0を表し、Lが一般式(L1)で表され、EWGがアシル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基もしくは少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基である場合である。
【0065】
次に一般式(4)について説明する。
一般式(4)においてR〜R11は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。ここで言うアルキル基とは一般式(1)におけるR〜Rが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれR〜Rが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0066】
本発明において、Rはアルキル基が好ましい。RおよびR10は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、一方が水素原子で他方が水素原子もしくはアルキル基である場合が最も好ましい。R11は水素原子、アルキル基もしくはアリール基が好ましく、水素原子もしくはアルキル基がより好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0067】
一般式(4)においてAは酸素原子、硫黄原子もしくはNR11を表すが、本発明においては酸素原子もしくは硫黄原子である場合が好ましく、酸素原子である場合が最も好ましい。
【0068】
一般式(1)においてYが一般式(4)で表される場合、好ましいものはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rが水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜2の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rがアルキル基もしくはアリール基を表し、RおよびR10が水素原子、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す場合である。より好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜1の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rがアルキル基もしくはアリール基を表し、RおよびR10が水素原子、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す場合である。更に好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基もしくはアリール基を表し、RおよびR10が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表す場合である。
【0069】
次に一般式(5)について説明する。
一般式(5)において、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNR15を表し、R12は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R13〜R15は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表すものである。R12〜R15で表されるアルキル基とは一般式(1)におけるR〜Rが表すアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。同様に、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基についてもそれぞれR〜Rが表すアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R12で表されるアシル基は、一般式(1)におけるアシル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0070】
一般式(5)におけるnおよびXは、一般式(1)におけるnおよびXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
一般式(5)においてAは酸素原子、硫黄原子もしくはNR15を表すが、本発明においては酸素原子もしくは硫黄原子を表す場合が好ましい。
【0072】
一般式(1)においてYが一般式(5)で表される場合、好ましいものはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、Rが水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜2の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Aが酸素原子もしくは硫黄原子を表し、R12が水素原子、アルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、R13およびR14が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜2の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。より好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜1の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表し、Aが酸素原子を表し、R12がアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、R13およびR14が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0〜1の整数を表し、Xがアルキル基、アリール基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基もしくはスルホ基(及びその塩を含む)を表す場合である。更に好ましくはChがセレン原子を表し、Aが酸素原子を表し、Rがアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、RおよびRが水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0を表し、Aが酸素原子を表し、R12がアルキル基、アリール基もしくはアシル基を表し、R13およびR14が水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、nが0を表す場合である。
【0073】
一般式(1)で表される化合物のうち、本発明においてはYが一般式(2)、一般式(3)もしくは一般式(4)で表される基より選ばれる場合が好ましく、Yが一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基より選ばれる場合がより好ましく、Yが一般式(3)で表される基である場合が最も好ましい。
【0074】
次に一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
【化15】

【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
【化18】

【0081】
上記化学式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
【0082】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することができる。個々の化合物によってその合成法は最適なものが選ばれるため、一般的となりうる合成法を挙げることができないが、その中でも有用な合成ルートを説明する。
【0083】
(例示化合物1の合成)
p−メトキシベンジルクロリド2gとセレノ尿素1.4gにアセトン60mLを加えて窒素雰囲気下、1時間加熱還流した。反応溶液を冷却し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶1.9gにメタノール40mLを加えて氷冷し、ナトリウムメトキシドメタノール溶液を2.8mL、次いでトリフルオロ酢酸0.63mL、次いでシクロへキセノン0.65gを加えた。室温で30分かくはんした後、酢酸エチル100mL、希塩酸100mLを加えて有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、例示化合物1を1.2g得た。
H NMR(CDCl) δ:
1.6〜1.9(m,2H), 2.0〜2.2(m,2H), 2.3〜2.5(m,3H), 2.75(m,1H), 3.11(m,1H),
3.79(s,3H), 3.81(s,2H), 6.81(d,2H), 7.22(d,2H)
【0084】
(例示化合物65の合成)
5−ホルミルサリチル酸54.6gにメタノール500mLを加え、塩化チオニル36mLをゆっくり滴下した。加熱還流5時間の後、溶媒を留去した。酢酸エチル600mLと塩化ナトリウム水溶液を加えて有機相を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去することで5−ホルミルサリチル酸メチルエステルを58.7g得た。これにアセトン500mLを加えた後、炭酸カリウム67.6g、ヨウ化メチル30mLを加え、6時間加熱還流した。析出した塩をろ別した後、溶媒を留去し、クロロホルム200mL、5%炭酸カリウム水溶液100mLを加えて有機相を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、残渣にエタノール100mLを加え、析出する結晶をろ取することで5−ホルミル−2−メトキシ安息香酸メチルを14.5g得た。これにメタノール80mLを加えて氷冷下水素化ホウ素ナトリウム2.8gを徐々に加えた。室温で4時間攪拌した後、溶媒を留去し、酢酸エチル、希塩酸を加えて有機層を抽出し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。溶媒を留去することで5−ヒドロキシメチル−2−メトキシ安息香酸メチルを12.8g得た。5−ヒドロキシメチル−2−メトキシ安息香酸メチル2gに塩化メチレン10mLを加えた溶液に、塩化チオニル1.8gと1,2,3−ベンゾトリアゾール1.8gを塩化メチレン10mLに溶解した溶液を加えた。析出した沈殿をろ別後、塩化ナトリウム水溶液を加えて有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥後、溶媒を留去することで5−クロロメチル−2−メトキシ安息香酸メチルを2g得た。これにアセトン20mL、セレノ尿素920mgを加えて1時間加熱還流した後氷冷し、析出した結晶をろ取した。この結晶3.8gに5−クロロメチル−2−メトキシ安息香酸メチル2.42g、アセトン100mLを加えた後、水酸化カリウム1.27gを水10mLに溶解した溶液を滴下した。室温で0.5時間攪拌した後、溶媒を留去した。酢酸エチル、塩化ナトリウム水溶液を加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する事で、例
示化合物65を3.7g得た。
H NMR(CDCl) δ:
3.67(s, 4H), 3.89(s, 6H), 3.90(s, 6H), 6.90(d, 2H), 7.38(d, 2H),
7.69(s, 2H)
【0085】
(例示化合物48の合成)
例示化合物65 0.7gにメタノール5mLを加え、水酸化ナトリウム0.26gを水4mLに溶解した溶液を滴下した。70℃で1時間攪拌した後、希塩酸を加えることで析出した結晶をろ取することで例示化合物48を0.26g得た。
H NMR(DO) δ:
3.84(s, 6H), 3.859(s, 4H), 7.01(d, 2H), 7.22(d, 2H), 7.30(s, 2H)
【0086】
(例示化合物72の合成)
例示化合物65 0.8gにメタノール20mLを加え、5M水酸化ナトリウム水溶液0.4mLを滴下した後、70℃で1時間攪拌した。溶媒を留去した後、酢酸エチルと希塩酸を加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する事で例示化合物72を0.11g得た。
H NMR(CDCl) δ:
3.69(s, 4H), 3.89(s, 6H), 4.09(s, 3H), 6.94(d, 1H), 6.98(d, 1H),
7.39(d, 1H), 7.49(s, 1H), 7.66(s, 1H), 8.03(s, 1H)
【0087】
(例示化合物67の合成)
3,4,5−トリメトキシベンジルアルコール10gに塩化メチレン80mLを加え、塩化チオニル4.8mLと1,2,3−ベンゾトリアゾール7.8gを塩化メチレン40mLに溶解した溶液を滴下した。室温で2.5時間攪拌した後、不溶分をろ別し、水を加えて有機層を洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去することで3,4,5−トリメトキシベンジルクロリドを得た。3,4,5−トリメトキシベンジルクロリド2.6gにセレノ尿素1.34g、アセトン80mLを加えて1.5時間加熱還流し、析出した結晶をろ取した。この結晶2.2gにメタノール40mLを加え、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液2.6mLを滴下した後、3,4,5−トリメトキシベンジルクロリド1.4gを加えた。0.5時間攪拌した後、溶媒を留去し、酢酸エチルと希塩酸を加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。エタノールを加えて析出した結晶をろ取することで例示化合物67を1g得た。
H NMR(CDCl) δ:
3.70(s, 4H), 3.86(s, 18H), 6.50(s, 4H)
【0088】
本発明の一般式(1)で表される化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり1×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−7〜5×10−4モルである。
【0089】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、水、或いはアルコール類(メタノール、エタノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、グリコール類(メチルプロピレングリコールなど)、及びエステル類(酢酸エチルなど)などを溶媒として添加しても良い。
【0090】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物の添加は、乳剤製造時のどの段階でも可能であるが、ハロゲン化銀粒子形成後から化学増感工程終了までの間に添加することが好ましい。
【0091】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤は、本発明のセレン化合物で化学増感されたハロゲン化銀粒子の他に、従来公知の特許に開示されている不安定型セレン化合物および/または非不安定型セレン化合物を用いたセレン増感剤により化学増感されたハロゲン化銀粒子を含んでいても良く、これらのセレン増感剤を本発明のセレン増感剤と組み合わせて化学増感されていてもよい。通常、セレン化合物は、これを添加して高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより用いられる。不安定型セレン化合物としては、特公昭44−15748号、特公昭43−13489号、特開平4−25832号、特開平4−109240号などの公報に記載の化合物を用いることができる。非不安定型セレン増感剤とは求核剤なしで、非不安定型セレン増感剤のみの添加を行った際に生成するセレン化銀量が、添加した非不安定セレン増感剤の30%以下であるものをいい、特公昭46−4553号、特公昭52−34492号、特公昭52−34491号公報等に記載の化合物が挙げられる。非不安定セレン増感剤を用いる場合には、求核剤を併用することが望ましい、求核剤としては特開平9−15776号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0092】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感の金増感剤としては、金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。代表的な例としては、例えば塩化金酸塩、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールド、硫化金、金セレナイド、ジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化
合物等の化合物が挙げられる。金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モルあたり1×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0093】
有機配位子(有機化合物)を有する金(I)化合物としては、特開平4-267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えばビス(1,4,5-トリメチル-1,2,4-トリアゾリウム-3-チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート、特開平11-218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1-[3-(2-スルホナートベンズアミド)フェニル]-5-メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4-268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1-メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。これらの有機配位子を有する金(I)化合物は、あらかじめ合成して単離したものを使用する他に、有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを混合することにより、発生させて単離することなく、乳剤に添加することができる。更には、乳剤に有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを別々に添加し、乳剤中で有機配位子を有する金(I)化合物を発生させてもよい。
また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8-69074号、特開平8-69075号、特開平9-269554号に記載の金化合物、米国特許第5,620,841号、同第5,912,112号、同第5,620,841号、同第5,939,245号、同第5,912,111号に記載の化合物も用いることができる。
これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0094】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics )第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。上記Reserch Disclosureには、コロイド状硫化金の製造の際、チオシアナートイオンを用いる方法が記載されているが、代わりにメチオニンやチオジエタノールなどのチオエーテル化合物を用いることができる。
コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、平均粒径50nm以下のものを用いることが好ましく、平均粒径10nm以下がより好ましく、平均粒径3nm以下が更に好ましい。この粒径はTEM写真から測定できる。また、コロイド状硫化金の組成は、Au2S1でもよく、Au2S1〜Au2S2の様な硫黄過剰な組成のものであってもよく、硫黄過剰な組成が好ましい。Au2S1.1〜Au2S1.8が更に好ましい。
このコロイド状硫化金の組成分析は、例えば、硫化金粒子を取り出して金の含有量と硫黄の含有量をそれぞれICPやヨードメトリーなどの分析法を利用して求めることができる。液相に溶解している金イオン、イオウイオン(硫化水素やその塩を含む)が硫化金コロイド中に存在すると硫化金コロイド粒子の組成分析に影響する為、限外ろ過などにより硫化金粒子を分離した上で分析は行われる。硫化金コロイドの添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0095】
本発明で用いる乳剤は、化学増感において硫黄増感を併用することができる。
硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。
【0096】
上記の硫黄増感には、硫黄増感剤として公知のものを用いることができる。例えばチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニンなどが挙げられる。その他、例えば米国特許第1,574,944号、同第2,410,689号、同第2,278,947号、同第2,728,668号、同第3,501,313号、同第3,656,955号、独国特許第1,422,869号、特公昭56−24937号、特開昭55−45016号の各公報および明細書に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量は、乳剤の感度を効果的に増大させるのに十分な量でよい。この量は、pH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で相当の範囲にわたって変化するが、ハロゲン化銀1モル当り1×10-7モル以上、5×10-5モル以下が好ましい。
【0097】
金増感とカルコゲン増感を同一の分子で行うことが可能であり、AuChを放出可能な分子を用いることができる。ここでAuはAu(I)を表し、Chは、硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表す。AuChを放出可能な分子とは、例えば、AuCh−Lで表される金化合物が挙げられる。ここで、LはAuChと結合して分子を構成する原子団を表す。また、Auに対して、Ch-Lとともに更にもう一つ以上の配位子が配位してもよい。また、AuCh−Lで表される金化合物は銀イオン共存下、溶媒中で反応させるとChがSの場合AgAuSを、ChがSeの場合AgAuSeを、ChがTeの場合AgAuTeを生成させやすい特徴を有しているものである。このような化合物として、Lがアシル基であるものが挙げられるが、その他に、下記に示す、式(AuCh1)、式(AuCh2)、式(AuCh3)で表される化合物が挙げられる。
【0098】
式(AuCh1) R−X−M−ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表し、Mは置換または無置換のメチレン基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR2を表し、Rは、Xと結合して分子を構成する原子団(例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表し、R2は、水素原子及び置換基(例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表す。R1とMは互いに結合して環を形成してもよい。
式(AuCh1)で表される化合物において、Chが硫黄原子、及びセレン原子であるものが好ましく、Xは酸素原子、硫黄原子が好ましく、Rはアルキル基、アリール基が好ましい。より具体的な化合物の例としては、チオ糖のAu(I)塩(α金チオグルコース等の金チオグルコース、金パーアセチルチオグルコース、金チオマンノース、金チオガラクトース、金チオアラビノース等)、セレノ糖のAu(I)塩(金パーアセチルセレノグルコース、金パーアセチルセレノマンノース等)、テルロ糖のAu(I)塩、等である。ここでチオ糖、セレノ糖、テルロ糖とは、糖のアノマー位水酸基がそれぞれSH基、SeH基、TeH基に置き換わった化合物を表す。
【0099】
式(AuCh2) W1W2C=CR3ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表し、R及びW2は、置換基(例えば、水素原子、ハロゲン原子、及び、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表し、W1はハメットの置換基定数σ値が正の値である電子吸引性基を表す。RとW1、R3とW2 、W1とW2は互いに結合して環を形成してもよい。
式(AuCh2)で表される化合物において、Chが硫黄原子、及びセレン原子であるものが好ましく、Rは、水素原子及びアルキル基が好ましく、W1及びW2はハメットの置換基定数σ値が0.2以上である電子吸引性基が好ましい。より具体的な化合物の例としては、(NC)2C=CHSAu、(CH3OCO)2C=CHSAu、CH3CO(CH3OCO)C=CHSAuなどが挙げられる。
【0100】
式(AuCh3) W3−E−ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表し、Eは置換もしくは無置換のエチレン基を表し、W3はハメットの置換基定数σ値が正の値である電子吸引性基を表す。
式(AuCh3)で表される化合物において、Chが硫黄原子、及びセレン原子であるものが好ましく、Eはハメットの置換基定数σ値が正の値である電子吸引性基を有するエチレン基であることが好ましく、W3はハメットの置換基定数σ値が0.2以上である電子吸引性基が好ましい。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは3×10−6〜3×10−4モルである。
【0101】
本発明においては、上記の金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。特に、硫黄増感、セレン増感と組み合わせることが好ましい。
【0102】
本発明において、化学増感はハロゲン化銀溶剤の存在下で行うことができる。
【0103】
ハロゲン化銀溶剤としては、例えば米国特許第3,271,157号、同第3,531,289号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号の各明細書及び公報に記載された(a)有機チオエーテル類、例えば特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号の各公報に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号公報に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号公報に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)チオシアネートを用いることができる。
【0104】
好ましいハロゲン化銀溶剤としては、チオシアネートおよびテトラメチルチオ尿素がある。また、用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10-4モル以上であり、且つ1×10-2モル以下である。
【0105】
本発明で使用するハロゲン化銀乳剤は、粒子形成中または粒子形成後でかつ化学増感前、化学増感中または化学増感後に還元増感することもできる。
【0106】
還元増感としては、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長または、熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長または熟成させる方法のいずれを選ぶことができる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0107】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
【0108】
還元増感剤として例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物などが公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤として塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-3モルの範囲が適当である。
【0109】
還元増感剤は水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶液にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0110】
本発明で用いる乳剤の製造工程中に、銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用してこれを銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のように水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のように水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその添加物(例えば、NaBO2・H22・3H2O、2NaCO3・3H22、Na427・2H22、2Na2SO4・H22・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えばK228、K226、K228)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C24]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C242・6H2O]、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr27)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)、無機硫黄、およびチオスルフォン酸塩ならびにポリスルフィド化合物に代表される硫黄放出化合物などがある。
【0111】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0112】
本発明において、好ましい酸化剤は無機硫黄、チオスルフォン酸塩、およびポリスルフィド化合物のような硫黄を放出できる酸化剤である。特にチオスルフォン酸塩および/またはポリスルフィド化合物を化学増感工程中に添加することが好ましい態様である。これらの含硫黄酸化剤は、ハロゲン化銀乳剤1モルに対して10−7〜10−4の添加量が好ましく、10−6〜10−5この範囲で用いることが特に好ましい。これらの酸化剤は、本発明の一般式(1)で表される化合物、公知のカルコゲン増感剤、金増感剤などの化学増感剤の添加前および/または添加後に加えることができるし、複数の増感剤の添加途中に加えることもできる。
【0113】
前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法を用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも適用できる。
【0114】
本発明に関わるハロゲン化銀乳剤は、粒子形状に特別な制限はないが、実質的に(100)面を持つ立方体、14面体または8面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)からなるハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀全粒子の全投影面積の50%以上を占めるか、あるいは主表面が(100)面または(111)面からなるアスペクト比2以上(好ましくは5〜200)の平板状粒子からなるハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀全粒子の全投影面積の50%以上を占めるかのいずれかが好ましく用いられる。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。中でも、実質的に(100)面を持つ立方体あるいは14面体の結晶粒子からなるハロゲン化銀乳剤あるいは主表面が(111)面からなる平板状粒子からなるハロゲン化銀粒子であることが好ましく、実質的に(100)面を持つ立方体あるいは14面体の結晶粒子からなるハロゲン化銀乳剤であることが最も好ましい。
【0115】
本明細書においてハロゲン化銀乳剤粒子の粒子サイズは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する立方体の1辺の長さ(辺長)で表される。球相当直径(粒子の体積と等しい体積を有する球の直径)が1μmであれば、辺長は0.806μmで換算される。円相当直径(粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径)が1μmであれば、辺長は0.886μmで換算される。
【0116】
本発明においてハロゲン化銀乳剤の粒子サイズに制限はないが、迅速処理性の観点から、一般式(1)で表される化合物で化学増感されたハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層中に辺長0.50μmを越える大サイズ粒子を実質的に含有しないことが好ましい。辺長0.50μmを越える粒子を実質的に含有しないとは、該層中の全ハロゲン化銀粒子における辺長0.50μmを越える粒子数の割合が20%以下であることを意味する。辺長0.45μmを越える粒子を実質的に含有しないことが更に好ましく、辺長0.40μmを越える粒子を実質的に含有しないことが特に好ましい。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、青感光性ハロゲン化銀乳剤層が辺長0.50μmを越える大サイズ粒子を実質的に含有しない乳剤層で構成されていることが好ましい態様である。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における全てのハロゲン化銀乳剤層が、辺長0.50μmを越える大サイズ粒子を実質的に含有しない乳剤層で構成されていることが更に好ましい態様である。
なお、具体的には、粒子サイズの下限は0.05μmが好ましく、0.10μmがさらに好ましく、上限は0.50μm未満、0.45μm未満、0.40μm未満の順に好ましい。
【0117】
本発明に用いられる乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。粒子サイズの変動係数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。粒子サイズの変動係数とは、個々の粒子の辺長の標準偏差の、辺長の平均値に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0118】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤の粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、に金属錯体を添加し含有させてもよい。また、数回にわたって分割して添加し含有させてもよい。しかしながら、ハロゲン化銀粒子中に含有される金属錯体の全含有量の50%以上が用いるハロゲン化銀粒子の最表面から銀量で1/2以内の層に含有されることが好ましい。ここで述べた金属錯体を含む層の更に外側に金属錯体を含まない層を設けてもよい。
【0119】
これらの金属錯体は水または適当な溶媒で溶解して、ハロゲン化銀粒子の形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加して粒子形成を行う事により含有させるのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を含有させたハロゲン化銀微粒子を添加溶解させ、別のハロゲン化銀粒子上に沈積させることによって、これらの金属錯体を含有させることも好ましく行われる。
【0120】
これらの金属錯体を添加するときの反応溶液中の水素イオン濃度はpH=1以上10以下が好ましく、さらに好ましくはpHが2以上7以下である。
【0121】
本発明で好ましく用いられる金属錯体は一般式(I)または一般式(II)で表される。
一般式(I)
[IrX(6−n)
一般式(I)において、Xはハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、Lは、Xとは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは4−、3−、2−、1−、0、または1+を表す。ここで、3〜5個のXは互いに同一でも異なってもよく、またLが複数存在する場合、複数のLは互いに同一でも異なってもよい。
上記において、擬ハロゲン(ハロゲノイド)イオンとは、ハロゲンイオンに似た性質を有するイオンのことであり、例えば、シアン化物イオン(CN)、チオシアン酸イオン(SCN)、セレノシアン酸イオン(SeCN)、テルロシアン酸イオン(TeCN)、アジドジチオ炭酸イオン(SCSN)、シアン酸イオン(OCN)、雷酸イオン(ONC)、アジ化物イオン(N)等が挙げられる。
として好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、イソシアン酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、または、アジ化物イオンであり、中でも塩化物イオン、および臭化物イオンであることが特に好ましい。Lには特に制限はなく、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、電荷を持っていても無電荷であってもよいが、無電荷の無機化合物または有機化合物であることが好ましい。
【0122】
以下に一般式(I)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[IrCl5(H2O)]2−
[IrCl4(H2O)2]
[IrCl5(H2O)]
[IrCl4(H2O)2]0
[IrCl5(OH)]3−
[IrCl4(OH)2]2−
[IrCl5(OH)]2−
[IrCl4(OH)2]2−
[IrCl5(O)]4−
[IrCl5(O)]3−
[IrCl4(O)2]4−
[IrCl3Br(H2O)]2−
[IrCl3Br(H2O)2]
[IrCl4Br(H2O)]
[IrCl3Br(H2O)2]0
[IrCl3I(H2O)]2−
[IrCl3I(H2O)2]
[IrCl4I(H2O)]
[IrCl3I(H2O)2]0
[IrBr5(H2O)]2−
[IrBr4(H2O)2]
[IrBr5(H2O)]
[IrBr4(H2O)2]0
[IrBr5(OH)]3−
[IrBr4(OH)2]
[IrBr5(OH)]2−
[IrBr4(OH)2]2−
[IrBr5(O)]4−
[IrBr5(O)]3−
[IrBr4(O)2]4−
[IrBr4Cl(H2O)]2−
[IrBr3Cl(H2O)2]
[IrBr4Cl(H2O)]
[IrBr3Cl(H2O)2]0
[IrCl5(OCN)]3−
[IrBr5(OCN)]3−
[IrCl5(thiazole)]2−
[IrCl4(thiazole)2]
[IrCl3(thiazole)3]0
[IrBr5(thiazole)]2−
[IrBr4(thiazole)2]
[IrBr3(thiazole)3]0
[IrCl5(5−methylthiazole)]2−
[IrCl4(5−methylthiazole)2]
[IrBr5(5−methylthiazole)]2−
[IrBr4(5−methylthiazole)2]
これらの中でも[IrCl5(H2O)]2−、[IrCl5(thiazole)]2−、および[IrCl5(5−methylthiazole)]2−が好ましい。
【0123】
本発明で好ましく用いられる下記一般式(II)で表される金属錯体について説明する。
一般式(II)
[MXIIII(6−n)m−
一般式(II)において、MはCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Pd、Ptを表し、XIIはハロゲンイオンを表し、LIIは、XIIとは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。
IIはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、またはヨウ化物イオンであり、中でも塩化物イオン、および臭化物イオンであることが特に好ましい。LIIは無機化合物であっても有機化合物であってもよく、電荷を持っていても無電荷であってもよいが、無電荷の無機化合物であることが好ましい。LIIとして好ましくはHO、NOまたはNSである。
ここで、3〜6個のXIIは互いに同一でも異なってもよく、またLIIが複数存在する場合、複数のLIIは互いに同一でも異なってもよい。
【0124】
以下に一般式(II)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ReCl6]2−
[ReCl5(NO)]2−
[RuCl6]2−
[RuCl6]3−
[RuCl5(NO)]2−
[RuCl5(NS)]2−
[RuBr5(NS)]2−
[OsCl6]4−
[OsCl5(NO)]2−
[OsBr5(NS)]2−
[RhCl6]3−
[RhCl5(H2O)]2−
[RhCl4(H2O)2]
[RhBr6]3−
[RhBr5(H2O)]2−
[RhBr4(H2O)2]
[PdCl6]2−
[PtCl6]2−
これらの中でも、[RuCl5(NO)]2−、[OsCl5(NO)]2−、[RhBr6]3−および[RhCl6]3−が好ましく、[RuCl5(NO)]2−が特に好ましい。
【0125】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。
【0126】
本発明において上記の金属錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0127】
これらの金属錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。
【0128】
本発明で用いられるハロゲン化銀乳剤におけるハロゲン化銀粒子は、一般式(I)で表されるイリジウム錯体以外にも、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるイリジウム錯体を更に含有することができる。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するイリジウム錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0129】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるイリジウム錯体の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
[IrCl62-
[IrCl63-
[IrBr62-
[IrBr63-
[IrI63-
【0130】
本発明においては、以上に述べた金属錯体以外にも他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、
フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0131】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、以上に述べた金属錯体とこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4'-ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-8モルから1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モルから5×10-4モル添加することが最も好ましい。
【0132】
また、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、所望の光波長域に感光性を示す、いわゆる分光感度を付与する目的で、分光増感色素を含有させることができる。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複号メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類は、塩基性異節環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれを含むものであってもよい。その様な核として、例えばピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核を挙げることができる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0133】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核のような5〜6員異節環核を有することができる。
【0134】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同2,977,229号、同3,397,060号、同3,522,0523号、同3,527,641号、同3,617,293号、同3,628,964号、同3,666,480号、同3,672,898号、同3,679,4283号、同3,703,377号、同3,769,301号、同3,814,609号、同3,837,862号、同4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同1,507,803号の各明細書、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号の各公報に記載されている。
【0135】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0136】
増感色素を乳剤中に添加する時期は、これまで有用であると知られている乳剤調製の如何なる段階であってもよい。もっとも普通には化学増感の完了後塗布前までの時期に行なわれるが、米国特許第3,628,969号、および同第4,225,666号の各明細書に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行うことも、特開昭58−113928号公報に記載されているように化学増感に先立って行うことも出来、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することも出来る。更にまた米国特許第4,225,666号明細書に教示されているようにこれらの増感色素を分けて添加すること、即ちこれらの増感色素の一部を化学増感に先立って
添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号明細書に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0137】
増感色素は、ハロゲン化銀1モル当り、0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましく、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲がより好ましい。
【0138】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤は、化学増感時に予め調製した塩臭化銀粒子を添加し、溶解させることで写真特性を調節することができる。添加時期は化学増感時ならいつでも良いが、最初に増感色素及び化学増感剤を添加して、その後に塩臭化銀乳剤を添加して溶解させるのが好ましい。使用する塩臭化銀粒子の塩化銀含有率は、基盤粒子の表面塩化銀含有率より低濃度の塩化銀含有率の塩臭化銀粒子であり、塩化銀含有率が70モル%以下が好ましく、40モル%以下が更に好ましく、特に好ましくは純臭化銀乳剤である。この塩臭化銀粒子のサイズは、完全に溶解させられるならばサイズに制限はないが、好ましくは辺長0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。塩臭化銀粒子の添加量は、用いる基盤粒子により変化するが、基本的には銀1モルに対して、0.005〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜1モル%である。
【0139】
本発明のハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は、特開昭62−215272号公報の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0140】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号公報に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号公報に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基若しくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号公報に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号明細書の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号明細書の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本願においても好ましく適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号公報の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は、本発明においても好ましく使用される。
【0141】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、赤感性、緑感性および青感性ハロゲン化銀乳剤層のそれぞれ少なくとも一層を有して構成され、前記ハロゲン化銀乳剤層のうち少なくとも一層が、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物により化学増感された塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。
【0142】
本発明の感光材料は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層のそれぞれ少なくとも一層を有して構成されることが好ましい。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光に対して、感光性を有しているのが好ましい。好ましい例としては、青色領域に感光性を有する乳剤をイエロー発色層に含み、緑色領域に感光性を有する乳剤をマゼンタ発色層に含み、赤色領域に感光性を有する乳剤をシアン発色層に含むハロゲン化銀カラー写真感光材料を挙げることができるが、これに限定されない。
【0143】
本発明においては、ハロゲン化銀乳剤層に少なくとも2種類の感度の異なるハロゲン化銀乳剤を含有してもよい。感度の異なるハロゲン化銀乳剤は3種類を越えてもよいが、感光材料の設計上は2種類もしくは3種類であることが好ましい。複数のハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズ、ハロゲン組成や構造、増感色素、化学増感剤、かぶり防止剤等の種類や量が異なっていてもよく、また同じであってもよい。
【0144】
少なくとも2種類の感度の異なるハロゲン化銀乳剤は、同一ハロゲン化銀乳剤層に混合されていることが好ましいが、感度の異なる乳剤がそれぞれ別々の乳剤層に塗り分けられていてもよい。但し、それらの層はほぼ等しい感色性や発色色相を有していることが必要である。ここで、ほぼ等しい感色性とは、カラー写真感光材料の場合、例えば青感色性同士、緑感色性同士または赤感色性同士のことで、その範囲なら分光感度が異なっていてもよい。また、ほぼ等しい発色色相とは、カラー写真感光材料の場合、例えばイエロー発色同士、マゼンタ発色同士またはシアン発色同士のことで、その範囲なら発色色相が異なっていてもよい。
【0145】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。また、色相の異なる(例えば黒色発色などの)発色層を設けてもよい。この色相の異なる発色層に含まれるハロゲン化銀乳剤は、青感色性、緑感色性、赤感色性のいずれでもよいが、弁別性を高める目的で赤外感色性にすることができる。
【0146】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば、写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては、特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。本発明においては、反射型支持体が好ましい。
【0147】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0148】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明における反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号公報、同10−333278号公報、同11−52513号公報、同11−65024号公報、EP0880065号明細書、及びEP0880066号明細書に記載されている例が挙げられる。
【0149】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、前記蛍光増白剤を分散含有する親水性コロイド層を、別途形成してもよい。前記蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系を用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0150】
反射型支持体としては、透過型支持体、又は上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性又は第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0151】
また、本発明の感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0152】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0153】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号公報、同5−127325号公報、同5−216185号公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0154】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0155】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号公報の3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号公報の3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号公報に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、例えば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号公報の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号公報の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号明細書、同3,459,563号明細書に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0156】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなり、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層であるが、これらに限るものではない。
【0157】
イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からは、シアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号公報、同9−114035号公報、同10−246940号公報、米国特許第5,576,159号明細書等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0158】
本発明に使用できる写真用添加剤はリサーチ・ディスクロージャー(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
添加剤の種類 RD17643号 RD18716号 RD307105号
1.化学増感剤 23頁 648頁右欄 866頁
2.感度上昇剤 648頁右欄
3.分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄 866〜868頁
強色増感剤 〜649頁右欄
4.増 白 剤 24頁 647頁右欄 868頁
5.光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄 873頁
フィルター 〜650頁左欄
染料、紫外線吸収剤
6.バインダー 26頁 651頁左欄 873〜874頁
7.可塑剤、 27頁 650頁右欄 876頁
潤滑剤
8.塗布助剤、 26〜27頁 650頁右欄 875〜876頁
表面活性剤
9.スタチツク 27頁 650頁右欄 876〜877頁
防止剤
10.マット剤 878〜879頁
【0159】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号公報、特開平2−33144号公報、欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号公報、同4−359249号公報、同4−313753号公報、同4−270344号公報、同5−66527号公報、同4−34548号公報、同4−145433号公報、同2−854号公報、同1−158431号公報、同2−90145号公報、同3−194539号公報、同2−93641号公報、欧州特許公開第0520457A2号明細書等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0160】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許文献の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0161】
【表1】

【0162】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号公報の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号公報の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号明細書の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO98/33760号の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号公報の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0163】
本発明に使用可能なシアン色素形成カプラー(単に、「シアンカプラー」という場合がある)としては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号公報の一般式(I)又は(II)で表されるカプラー及び特開平6−347960号公報の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許文献に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号公報に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号明細書、同第4,916,051号明細書に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号公報、同8−311360号公報、同8−339060号公報に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0164】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号明細書に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0165】
なお、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該特許文献の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本発明にそのまま適用され、本明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0166】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号公報に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号公報に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号公報に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号明細書や同第294,785A号明細書に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号公報に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許文献の段落番号0009〜0026はそのまま本発明に適用され、本明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号明細書、同第884640号明細書に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0167】
また、イエロー色素形成カプラー(単に、「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号明細書、同第953871A1号明細書、同第953872A1号明細書、同第953873A1号明細書、同第953874A1号明細書、同第953875A1号明細書等に記載のピロール−2又は3−イル若しくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーまたは特開2003−173007号公報に記載のアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラー、またはアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーの使用が好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。が好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラー、またはアシル基にヘテロ環が置換したアセトアニリド型イエローカプラーの使用が好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0168】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号明細書)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0169】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許文献に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号公報、特開平10−282615号公報及び独国特許第19629142A1号明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号明細書、欧州特許第839623A1号明細書、欧州特許第842975A1号明細書、独国特許19806846A1号明細書及び仏国特許第2760460A1号明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0170】
本発明においては、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許文献に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号明細書、欧州特許第711804A号明細書及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
【0171】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0172】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0173】
本発明における写真構成層構成層中の総塗設ゼラチン量は3g/m2以上6g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上5g/m2以下であることが更に好ましい。また、超迅速処理した場合でも、現像進行性、及び定着漂白性、残色を満足するために、写真構成層全体の膜厚が3μm〜7.5μmであることが好ましく、更に3μm〜6.5μmであることが好ましい。乾燥膜厚の評価方法は、乾燥膜剥離前後の膜厚の変化、あるいは断面の光学顕微鏡や電子顕微鏡での観察により測定することができる。本発明において、現像進行性と乾燥速度を上げることを両立するために、膨潤膜厚が8μm〜19μmであることが好ましく、更に9μm〜18μmであることが好ましい。膨潤膜厚の測定としては、35℃の水溶液中に乾燥した感光材料を浸し、膨潤して十分平衡に達した状態で打点方法にて測定することができる。本発明における総塗布銀量は、0.2g/m2〜0.5g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜0.45g/m2であることが更に好ましく、0.2g/m2〜0.40g/m2であることが最も好ましい。
【0174】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10−5〜1g/m2、好ましくは1×10−4〜1×10−1g/m2、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2g/m2である。
【0175】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。
本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0176】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0177】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0178】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては1×10−4秒以下、更に好ましくは1×10−6秒以下である。
【0179】
本発明をハロゲン化銀カラー写真感光材料に適用する場合、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光することが好ましい。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。
レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学(株)発表)、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG、商品名)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG、商品名)などが好ましく用いられる。
【0180】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特開2000−310822号公報に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0181】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許文献に詳しく記載されている。
【0182】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号明細書に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1明細書や同EP0789480A1号明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0183】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許文献に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0184】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料として適用される。発色現像時間は28秒以下、好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。
なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0185】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬(特にp−フェニレンジアミン系カラー発色現像主薬)を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。
なお、本発明においては、アルカリ剤と現像主薬(特にp−フェニレンジアミン系カラー発色現像主薬)を含む現像液で現像する方法が好ましい。
アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号公報、同9−152686号公報、同9−152693号公報、同9−211814号公報、同9−160193号公報に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0186】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号公報、同9−152695号公報に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0187】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号公報に記載されたものを用いることができる。
【実施例】
【0188】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記例中、組成を示す%は特に断わりがない限り質量%を示す。
【0189】
実施例1
(青感層乳剤BH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、核形成部分の添加は硝酸銀の添加が0%から5%の時点までとした。硝酸銀の添加が5%の時点から85%の時点まで、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加速度を時間に対する1次関数として加速した。加速添加の終了時点における溶質添加速度は、臨界成長速度の85%とした。硝酸銀の添加が85%から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり2.5モル%)を添加した。硝酸銀の添加が95%の時点から96%の時点にかけて、沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.25モル%)を激しく撹拌しながら添加した。硝酸銀の添加が5%の時点から50%の時点にかけて、K[RuCl(NO)]を添加した。硝酸銀の添加が85%の時点から90%の時点にかけて、K[Fe(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が90%の時点から95%の時点にかけて、K[IrCl]およびK[IrCl(5−methylthiazole)]を添加した。硝酸銀の添加が95%の時点から98%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]、K[IrCl(HO)]、およびK[IrClBr(HO)]を添加した。得られた乳剤粒子は、平均辺長0.35μm、変動係数9.0%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子で、臭化銀含有率は2.5モル%、沃化銀含有率は0.2モル%そして塩化銀含有率97.3モル%であった。この乳剤に沈降脱塩処理を施した後、ゼラチンと、化合物Ab−1、Ab−2、Ab−3、および硝酸カルシウムを添加し再分散を行った。
【0190】
【化19】

【0191】
再分散した乳剤を40℃で溶解し、増感色素S−1、S−2、S−3、およびS−9を分光増感が最適になるように添加した。次に、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム、化合物A(N,N−ジメチルセレノ尿素(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.0×10−6モル)、(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)、およびp−グルタルアミドフェニルジスルフィドを順番に添加して、60℃に昇温して化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加してから40℃に降温し、化合物−2、化合物−3で表される繰り返し単位2または3が主成分の化合物(末端XおよびXはヒドロキシル基)、化合物−4および臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.3モル%)を添加して化学増感を終了した。こうして得られた乳剤を乳剤BH−1とした。
【0192】
【化20】

【0193】
(青感層乳剤BL−1の調製)
乳剤BH−1の調製において、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する工程の温度および添加速度を変え、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.30μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった(塩化銀含有率97.3モル%)。この乳剤を再分散後、添加される各種化合物の量をBH−1から変更する以外は同様にして分光増感および化学増感を施し、乳剤BL−1を調製した。
【0194】
(緑感層乳剤GH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、核形成部分の添加は硝酸銀の添加が0%から5%の時点までとした。硝酸銀の添加が5%の時点から70%の時点まで、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加速度を時間に対する1次関数として加速した。加速添加の終了時点における溶質添加速度は、臨界成長速度の90%とした。硝酸銀の添加が70%から90%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり3.0モル%)を添加した。硝酸銀の添加が93%の時点で、沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.15モル%)を激しく撹拌しながら10秒間で添加した。硝酸銀の添加が5%の時点から40%の時点にかけて、K[RhCl(HO)]を添加した。硝酸銀の添加が75%の時点から85%の時点にかけて、K[IrCl]を添加した。硝酸銀の添加が85%の時点から90%の時点にかけて、K[Fe(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が90%の時点から100%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]、およびK[IrCl(HO)]を添加した。硝酸銀の添加が93%の時点から98%の時点にかけて、K[IrCl(5−methylthiazole)]を添加した。得られた乳剤粒子は、平均辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子で、臭化銀含有率は3.0モル%、沃化銀含有率は0.15モル%そして塩化銀含有率96.85モル%であった。この乳剤に沈降脱塩処理を施した後、ゼラチンと、化合物Ab−1、Ab−2、Ab−3、および硝酸カルシウムを添加し再分散を行った。
【0195】
再分散した乳剤を40℃で溶解し、増感色素S−4、S−5、S−6およびS−7を分光増感が最適になるように添加した。次に、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、無機硫黄、チオ硫酸ナトリウム5水和物および(ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート)を順番に添加し、65℃に昇温して化学増感が最適になるように熟成した。その後、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物−2を添加した。その後40℃に降温して化合物−4および臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.4モル%)を添加して化学増感を終了した。こうして得られた乳剤を乳剤GH−1とした。
【0196】
【化21】

【0197】
(緑感層乳剤GL−1の調製)
乳剤GH−1の調製において、硝酸銀の添加が5%の時点から40%の時点にかけて添加したK[RhCl(HO)]を1.5倍に増量する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子(塩化銀含有率96.85モル%)であった。この乳剤を再分散後、GH−1と同様にして分光増感および化学増感を施し、乳剤GL−1を調製した。
【0198】
(赤感層用乳剤RH−1の調製)
攪拌した脱イオンゼラチンを含む脱イオン蒸留水に、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する方法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。この調製の過程において、核形成部分の添加は硝酸銀の添加が0%から5%の時点までとした。硝酸銀の添加が5%の時点から70%の時点まで、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加速度を時間に対する1次関数として加速した。加速添加の終了時点における溶質添加速度は、臨界成長速度の90%とした。硝酸銀の添加が70%から90%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり4.0モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.5モル%)を添加した。硝酸銀の添加が97%の時点から98%の時点にかけて、沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.05モル%)を激しく撹拌しながら添加した。硝酸銀の添加が70%の時点から80%の時点にかけて、K[RhBr(HO)]を添加した。硝酸銀の添加が75%の時点から85%の時点にかけて、K[IrCl]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K[Ru(CN)]を添加した。硝酸銀の添加が90%の時点から95%の時点にかけて、K[IrCl(5−methylthiazole)]を添加した。硝酸銀の添加が95%の時点から100%の時点にかけて、K[IrCl(HO)]、K[IrCl(HO)]、およびK[IrClBr(HO)]を添加した。得られた乳剤粒子は、平均辺長0.25μm、変動係数9.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子で、臭化銀含有率は4.5モル%、沃化銀含有率は0.05モル%そして塩化銀含有率95.45モル%であった。この乳剤に沈降脱塩処理を施した後、ゼラチンと、化合物Ab−1、Ab−2、Ab−3、および硝酸カルシウムを添加し再分散を行った。
【0199】
再分散した乳剤を40℃で溶解し、無機硫黄およびベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、増感色素S−8および化合物−5を分光増感が最適になるように添加した。次に、トリエチルチオ尿素、前記化合物−1、およびp−グルタルアミドフェニルジスルフィドを順番に添加して、55℃に昇温して化学増感が最適になるように熟成した。その後、40℃に降温してから1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加し、化合物−2、化合物−4、化合物−5、および臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり0.3モル%)を添加して化学増感を終了した。こうして得られた乳剤を乳剤RH−1とした。
【0200】
【化22】

【0201】
乳剤RH−1の調製において、化学増感終了時に添加した1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、および1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールの添加量をそれぞれ1.5倍に増量する以外は同様にして乳剤RL−1を調製した。
【0202】
(第一層塗布液調製)
イエローカプラー(Ex−Y)24g、色像安定剤(Cpd−8)6g、色像安定剤(Cpd−16)1g、色像安定剤(Cpd−17)1g、色像安定剤(Cpd−18)11g、色像安定剤(Cpd−19)1g、色像安定剤(Cpd−21)11g、添加剤(ExC−3)0.1g、色像安定剤(UV−A)1gを溶媒(Solv−4)17g、溶媒(Solv−6)3g、溶媒(Solv−9)17g及び酢酸エチル45mlに溶解し、この液を3gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液205g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて700gの乳化分散物Aを調製した。
この乳化分散物Aと前記乳剤BH−1およびBL−1をそれぞれ溶液で混合し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0203】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層に(Ab−1)、(Ab−2)、(Ab−3)、及び(Ab−4)をそれぞれ全量が1.0mg/m2、43.0mg/m2、3.5mg/m2及び7.0mg/m2となるように添加した。また、2−メチル−4イソチアゾリン−3−オンを10.0mg/mとなるように添加した。
【0204】
1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、第二層、第三層、および第五層に、それぞれ1.20mg/m、0.36mg/m、0.44mg/mとなるように添加した。第一層および第四層に、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1.5×10−4モル、1.8×10−4モル添加した。赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/mを添加した。第二層、第三層および第五層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ25mg/m、11mg/m、14mg/mとなるように添加した。各層にポリスチレンスルホン酸ナトリウムを必要に応じて加え塗布液の粘度を調節した。また、イラジエーション防止のために、以下の水溶性染料(Dye−1)〜(Dye−4)を添加した(カッコ内は塗布量を表す)。
【0205】
【化23】

【0206】
【化24】

【0207】
【化25】

【0208】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
なお、試料101において、総ゼラチン塗設量は4.44g/m、総塗設銀量は0.33g/m、乾燥膜厚は6.2μm、膨潤総膜厚は16.7μmであった。
【0209】
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)、蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン(含有率0.03質量%))および青味染料(群青、含有率0.33質量%)を含む。ポリエチレン樹脂の量は29.2g/m
【0210】
第一層(青色感光性乳剤層)
乳剤(BH−1とBL−1の4:6混合物) 0.14
ゼラチン 1.00
イエローカプラー(Ex−Y) 0.250
色像安定剤(Cpd−8) 0.063
色像安定剤(Cpd−16) 0.010
色像安定剤(Cpd−17) 0.010
色像安定剤(Cpd−18) 0.115
色像安定剤(Cpd−19) 0.010
色像安定剤(Cpd−21) 0.115
添加剤(ExC−3) 0.001
色像安定剤(UV−A) 0.010
溶媒(Solv−4) 0.177
溶媒(Solv−6) 0.031
溶媒(Solv−9) 0.177
【0211】
第二層(中間発色層)
ゼラチン 0.34
イエローカプラー(Ex−Y) 0.085
色像安定剤(Cpd−8) 0.021
色像安定剤(Cpd−16) 0.004
色像安定剤(Cpd−17) 0.004
色像安定剤(Cpd−18) 0.039
色像安定剤(Cpd−19) 0.004
色像安定剤(Cpd−21) 0.039
添加剤(ExC−3) 0.0004
色像安定剤(UV−A) 0.004
溶媒(Solv−4) 0.060
溶媒(Solv−6) 0.011
溶媒(Solv−9) 0.060
【0212】
第三層(混色防止層)
ゼラチン 0.32
混色防止剤(Cpd−4) 0.020
混色防止剤(Cpd−12) 0.004
色像安定剤(Cpd−3) 0.004
色像安定剤(Cpd−5) 0.004
色像安定剤(Cpd−6) 0.020
色像安定剤(UV−A) 0.020
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.024
溶媒(Solv−2) 0.024
溶媒(Solv−5) 0.028
溶媒(Solv−8) 0.028
【0213】
第四層(赤色感光性乳剤層)
乳剤(RH−1とRL−1の5:5混合物) 0.10
ゼラチン 0.80
シアンカプラー(ExC−1) 0.175
シアンカプラー(ExC−2) 0.005
シアンカプラー(ExC−3) 0.015
色像安定剤(Cpd−1) 0.011
色像安定剤(Cpd−7) 0.011
色像安定剤(Cpd−9) 0.033
色像安定剤(Cpd−10) 0.001
色像安定剤(Cpd−14) 0.001
色像安定剤(Cpd−15) 0.165
色像安定剤(Cpd−16) 0.035
色像安定剤(Cpd−17) 0.022
色像安定剤(UV−5) 0.077
溶媒(Solv−5) 0.077
【0214】
第五層(混色防止層)
ゼラチン 0.38
混色防止剤(Cpd−4) 0.024
混色防止剤(Cpd−12) 0.005
色像安定剤(Cpd−3) 0.005
色像安定剤(Cpd−5) 0.005
色像安定剤(Cpd−6) 0.024
色像安定剤(UV−A) 0.024
色像安定剤(Cpd−7) 0.002
溶媒(Solv−1) 0.029
溶媒(Solv−2) 0.029
溶媒(Solv−5) 0.033
溶媒(Solv−8) 0.033
【0215】
第六層(緑色感光性乳剤層)
乳剤(GH−1とGL−1の3:7混合物) 0.09
ゼラチン 1.10
マゼンタカプラー(Ex−M) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.01
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.005
色像安定剤(Cpd−10) 0.005
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
色像安定剤(Cpd−18) 0.01
紫外線吸収剤(UV−B) 0.26
溶媒(Solv−3) 0.04
溶媒(Solv−4) 0.08
溶媒(Solv−6) 0.05
溶媒(Solv−9) 0.12
溶媒(Solv−7) 0.11
化合物(S1−4) 0.0015
【0216】
第七層(保護層)
ゼラチン 0.50
添加剤(Cpd−20) 0.015
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0217】
【化26】

【0218】
【化27】

【0219】
【化28】

【0220】
【化29】

【0221】
【化30】

【0222】
【化31】

【0223】
【化32】

【0224】
【化33】

【0225】
【化34】

【0226】
以上のようにして作成した試料を試料101とした。試料101において、乳剤BH−1およびBL−1の調製に使用した化合物Aを表2に示すように変更した以外は試料101と全く同様にして、試料102〜試料112とした。
【0227】
塗布後の各試料は、25℃55%R.H.の雰囲気下で10日間経時させて硬膜反応を十分に進めてから、評価に供した。
【0228】
【化35】

【0229】
処理
上記の試料101を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア350(商品名、富士写真フイルム(株)製)を用いて標準的な写真画像を露光した。その後下記の処理工程Aにて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0230】
<処理A>
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 38.5℃ 45秒 45mL
漂白定着 38.0℃ 45秒 A剤17.5mL
B剤17.5mL
リンス1 38.0℃ 20秒 −
リンス2 38.0℃ 20秒 −
リンス3 38.0℃ 20秒 −
リンス4 38.0℃ 20秒 121mL
乾燥 80℃
(注)
* 感光材料1mあたりの補充量
** 富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス4に供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは1から4への4タンク向流方式とした。
【0231】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−1) 2.2g 5.1g
蛍光増白剤(FL−2) 0.35g 1.75g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
ポリエチレングリコール平均分子量300 10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.20g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−
ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 4.8g 14.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.15 12.40
【0232】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 800mL 500mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL − 386mL
重亜硫酸アンモニウム(65%) 30.0g − 190g
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)
アンモニウム 47.0g 133g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 5g 6g
硝酸(67%) 16.5g 66.0g −
イミダゾール 14.6g 50.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 8.3g 33.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整) 6.5 6.0 6.0
【0233】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0234】
【化36】

【0235】
各試料に以下の露光装置でグレイを与える階調露光を与え、露光を終了して5秒後から上記処理で発色現像処理を行った。レーザー光源としては、半導体レーザー(発振波長約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。感度(S)は、イエローの最低濃度(Dmin)よりも1.0高い濃度を与えるに必要な露光量の逆数をもって規定し、試料101の感度を100とした相対値で表した。
【0236】
感光材料の処理変動に対する寛容度を評価するために、発色現像時間を120秒にしてイエローの最低濃度の増加(ΔDmin)を前記45秒処理に対する差分として求めた。この値が小さいいほど、感光材料の処理変動に対するかぶり濃度の増加が少なく抑えられていることを表す。
【0237】
【表2】

【0238】
表2から明らかなように、一般式(1)で表される化合物により化学増感したハロゲン化銀乳剤を含有する感光材料は高感度であり、処理変動に対するかぶり耐性に優れていることがわかる。
【0239】
実施例2
(青感層乳剤BH−2の調製)
実施例1の乳剤BH−1の調製において、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する工程の温度および添加速度を変え、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.45μm、変動係数8.9%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤を再分散後、添加される各種化合物の量をBH−1から変更する以外は同様にして分光増感および化学増感を施し、乳剤BH−2を調製した。
【0240】
(青感層乳剤BH−3の調製)
実施例1の乳剤BH−1の調製において、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を同時添加して混合する工程の温度および添加速度を変え、硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の添加の途中に添加される各種金属錯体の量を変更する以外は同様にして乳剤粒子を得た。この乳剤粒子は辺長0.55μm、変動係数8.5%の単分散立方体沃臭塩化銀粒子であった。この乳剤を再分散後、添加される各種化合物の量をBH−1から変更する以外は同様にして分光増感および化学増感を施し、乳剤BH−3を調製した。
【0241】
(試料201の作製)
実施例1の試料101において、第一層(青色感光性乳剤層)の乳剤を、BH−1単独に等銀量で置き換える以外は同様にして、試料201を作製した。
【0242】
(試料211、221、231、241の作製)
試料201において、第一層(青色感光性乳剤層)の乳剤を、表3に示したように置き換える以外は同様にして、それぞれ塗布試料を作製した。表3において、乳剤の混合比率は銀量比率で示してある。また、辺長0.50μmを越える乳剤粒子の比率を「L>0.50μm」として%で表し、辺長0.45μmを越える乳剤粒子の比率、辺長0.40μmを越える乳剤粒子の比率も同様に表した。
【0243】
【表3】

【0244】
試料201、211、221、231および241において、第一層の乳剤を化学増感する際に用いた化合物Aを本発明の例示化合物に変更する以外は同様にして、表4に示すように試料を作製した。これらの試料を実施例1と同様に評価して、相対感度(S)および処理変動安定性(ΔDmin)を、化合物Aを用いた試料に対する相対値でそれぞれ示した。
【0245】
【表4】

【0246】
表4に示した結果から、本発明の化合物を用いた感光材料は高感度であり、処理変動時のかぶり抑制に優れていることがわかる。また、比較化合物との性能差は、乳剤粒子中に大サイズ粒子を含有しない場合に顕著に発揮されていることがわかる。辺長0.50μm以上の粒子を実質的に含有しない、試料202〜205、212〜215、および221〜225は、比較化合物に対する高感化が特に大きく、且つ処理変動時のかぶり増加も顕著に抑制されており、本発明の好ましい態様である。
【0247】
実施例3
実施例1において、処理Aの代わりに以下の処理Bを用いる以外は実施例1と同様にして、評価を行なった。処理変動の寛容度は、発色現像時間30秒にした処理におけるDminを、発色現像時間12秒のDminからの増加分(ΔDmin)で示した。イエロー画像に対して得られた結果を表5に示した。
【0248】
試料101の127mm幅のロール試料に、後述するレーザー露光により標準的な写真画像を与えた。その後、デジタルミニラボ フロンティア340(富士写真フイルム(株)製、商品名)のプロセッサーを用いて下記の処理工程にて発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニング)を行なった。このランニング処理液を用いた処理を処理Bとした。なお、プロセッサーは下記処理時間にするため処理ラック改造により搬送速度変更を実施した。
【0249】
<処理B>
処理工程 温度 時間 補充量
発色現像 45.0℃ 12秒 35mL
漂白定着 40.0℃ 12秒 A剤15mL
B剤15mL
リンス1 45.0℃ 4秒 −
リンス2 45.0℃ 2秒 −
リンス3 45.0℃ 2秒 −
リンス4 45.0℃ 3秒 175mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1mあたりの補充量
【0250】
露光用のレーザー光源としては、波長約440nmの青色半導体レーザー(2001年3月第48回応用物理学会関係連合講演会で日亜化学(株)発表)、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG、商品名)を用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μm、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10−7秒であった。半導体レーザーは温度による光量変化を抑えるために、ペルチェ素子を用いて温度を一定にした。
【0251】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−3) 4.0g 10.0g
残色低減剤(SR−1) 3.0g 3.0g
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 2.0g 4.0g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム 10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.10g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−
ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン・
3/2硫酸塩・モノハイドレード 7.0g 19.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.25 12.8
【0252】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液A] [補充液B]
水 700mL 300mL 300mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL − 400mL
亜硫酸アンモニウム 30.0g − −
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)
アンモニウム 47.0g 200g −
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 0.5g 10.0g
硝酸(67%) 7.0g 30.0g −
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 3.0g 13.0g −
重亜硫酸アンモニウム液(65%) − − 200g
コハク酸 7.0g 30.0g −
水を加えて全量 1000mL 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整) 6.0 2.0 5.6
【0253】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0254】
【化37】

【0255】
【表5】

【0256】
表5示したように、本発明の試料は比較試料に対して高感度であり、処理変動耐性に優れている。実施例1の結果と比べると、比較化合物に対する性能向上が大きくなっており、これは本発明の感光材料が迅速処理に適していることを示している。
【0257】
実施例4
実施例1において、GH−1/GL−1乳剤の調製に用いたチオ硫酸ナトリウム5水和物の代わりに、化合物A〜Dまたは本発明の化合物を使用した乳剤を調製して、試料105の第六層の乳剤と等銀量で置き換えて同様の評価をマゼンタ画像に対して実施したところ、実施例1と同様の結果を得た。
また、実施例1において、RH−1/RL−1乳剤の調製に用いたトリエチルチオ尿素の代わりに、化合物A〜Dまたは本発明の化合物を使用した乳剤を調製して、試料105の第四層の乳剤と等銀量で置き換えて同様の評価をシアン画像に対して実施したところ、実施例1と同様の結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が塩化銀含有率90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、且つ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物により化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】

[一般式(1)において、Chは硫黄原子、セレン原子もしくはテルル原子を表す。A1は酸素原子、硫黄原子もしくはNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Xは置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い。Yは下記一般式(2)〜(5)で表される基より選ばれる基である。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

一般式(2)において、Zはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ORもしくはNRを表し、R〜Rは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。一般式(3)において、Lは2価の連結基を表し、EWGは電子求引性基を表す。一般式(4)において、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNR11を表し、R〜R11は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。一般式(5)において、Aは酸素原子、硫黄原子もしくはNR15を表し、R12は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基もしくはアシル基を表し、R13〜R15は各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表す。Xは置換基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上である場合はXが同じでも異なっていても良い。]
【請求項2】
前記青感性ハロゲン化銀乳剤層が辺長0.50μm以上を越えるハロゲン化銀粒子を実質的に含有しないことを特徴とする、請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2006−308873(P2006−308873A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131438(P2005−131438)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】