説明

ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法

【課題】 高感度なハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、処理による増感色素の残色が少なく、脱銀の阻害も起こらない処理方法を提供する。
【解決手段】 分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、処理工程に用いる処理液が下記の一般式(SR)で表されるスチルベン化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分光増感されたハロゲン化銀写真感光材料の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化のために多大な努力がなされてきた。ハロゲン化銀写真乳剤においては、ハロゲン化銀粒子表面に吸着した増感色素が感材に入射した光を吸収し、その光エネルギーをハロゲン化銀粒子に伝達することによって感光性が得られる。したがって、ハロゲン化銀の分光増感においては、ハロゲン化銀粒子単位粒子表面積あたりの光吸収率を増加させることによってハロゲン化銀へ伝達される光エネルギ−を増大させることが出来、分光感度の高感度化が達成されると考えられる。ハロゲン化銀粒子表面の光吸収率を向上させるためには、単位粒子表面積あたりの分光増感色素の吸着量を増加させればよい。
【0003】しかし、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着量には限界があり、単層飽和吸着(すなわち一層吸着)より多くの色素発色団を吸着させるのは困難である。従って、分光増感領域における個々のハロゲン化銀粒子の入射光量子の吸収率は未だ低いのが現状である。
【0004】これらの点を解決する方法として、多層吸着あるいは隣接する色素からのエネルギー移動による光吸収率向上の試みとしてこれまでに、Photographic Science and Engineering 第20巻3号、第97貢(1976年)、米国特許3,622,316号、特開昭63−138、341号、特開昭64−84、244号、Photographic Science and Engineering 第27巻2号、第59貢(1983年)、特開昭61−251842号などが検討されてきた。
【0005】また、2つの別々に共役しておらず、共有結合で連結された発色団をもつ、いわゆる連結色素については、米国特許3,622,317号、米国特許3,976,493号、特開昭64−91134号、特開平6−57235号、特開平6−27578号、欧州特許第887,700A1号、米国特許4,950,587号など、現在まで光吸収率向上のために数多くの検討が行われてきたが、いずれも光吸収率の向上効果が十分ではなく、高感度化も十分なものではなかった。
【0006】一方、光吸収率向上のために増感色素の吸着量を増加させると、処理後に感光材料中に残存する増感色素が無視できなくなり、色汚染を引き起こす(以下残色)。特に、迅速処理では残色の程度が大きく、改良が求められていた。
【0007】残色を引き起こす増感色素の残存形態については増感色素がそのモノマー体及び会合体として存在することが、例えば欧州特許第0,654,702号等に記載されている。この色汚染は処理後の感光材料を水洗いすることで減少していくことが分かっている。この増感色素の洗い出しは水洗浴のイオン強度に影響される。イオン強度の高い場合には増感色素は凝集体として存在し、ゼラチン膜中の拡散係数は著しく低いと推定される。したがって、処理液、特に水洗浴あるいはリンス浴の処理時間や処理液の組成が異なると残色の程度は同じではなく、ラボの機器、管理状況の違いによりラボ間差を引き起こされ、残色差がプリントの色バランスに与える影響が大きく、改善が強く求められている。
【0008】他方で、増感色素を粒子表面上に多層吸着させた場合、処理工程において定着(脱銀)阻害が起こる場合があり、特に迅速処理では改善が強く望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、増感色素を多層吸着させた高感度なハロゲン化銀写真感光材料の処理において、処理による増感色素の残色が少なく、かつ定着阻害を抑制するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記の課題は下記の(1)〜(7)により解決された。
(1) 分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、処理工程に用いる処理液の少なくとも一つが下記一般式(SR)で表される化合物の少なくとも1種を含有する処理液によって処理されることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材の処理方法。
一般式(SR)
【化2】


一般式(SR)中、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は同一でも異なっていてもよく−OR51または−NR5253(R51、R52およびR53はそれぞれ水素原子またはアルキル基)で表され、かつ以下の条件■ないし■の少なくとも一つを満足する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を合計4つ以上有する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を合計2つ有し、かつ一般式〔B〕群から選ばれた置換基を合計2つ以上有する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を1つ有し、かつ一般式〔B〕群から選ばれた置換基を合計3つ以上有する。 一般式〔A〕群:−SO3 M、−OSO3 M、−COOM、−NR3 X一般式〔B〕群:−OR、−NR′R″、−CN、−NHCONH2一般式〔A〕群中、Xはハロゲン原子、Rはアルキル基を表す。また、一般式(SR)および〔A〕において、Mは水素原子、アルカリ金属、テトラアルキルアンモニウムまたはピリジニウムを表す。一般式〔B〕群中、R、R′、及びR″は水素原子またはアルキル基であり、R′、R″は互いに連結して環を形成してもよい。
(2) 3環以上縮環した塩基性核を有する増感色素を含むハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、上記(1)に記載の処理方法。
(3) 芳香族基を少なくとも1つ持つ増感色素を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の処理方法。
(4) アスペクト比2以上100以下のハロゲン化銀粒子が、乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の50%(面積)以上存在する乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の処理方法。
(5) セレン増感されているハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の処理方法。
(6) ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多層吸着しており、かつ二層目増感色素の構造が一層目増感色素と異っており、かつ二層目増感色素がカチオン色素とアニオン色素の両方を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の処理方法。
(7) 全処理時間が4分以上8分以内であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】本発明において光吸収強度とは、単位粒子表面積あたりの増感色素による光吸収面積強度であり、粒子の単位表面積に入射する光量をI0 、該表面で増感色素に吸収された光量をIとしたときの光学濃度Log(I0 /(I0 −I))を波数(cm-1)に対して積分した値と定義する。積分範囲は5000cm-1から35000cm-1までである。
【0013】本発明にかかわるハロゲン化銀写真乳剤は、分光吸収極大波長が500nm以上の粒子の場合には光吸収強度が100以上、分光吸収極大波長が500nm未満の粒子の場合には光吸収強度が60以上のハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子投影面積の1/2以上含むことが好ましい。また、分光吸収極大波長が500nm以上の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは150以上、さらに好ましくは170以上、特に好ましくは200以上、であり、分光吸収極大波長が500nm以下の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは90以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは120以上である。上限は特にないが、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは500以下である。
【0014】また分光吸収極大波長が500nm未満の粒子に関しては、分光吸収極大波長は350nm以上であることが好ましい。
【0015】光吸収強度を測定する方法の一例としては、顕微分光光度計を用いる方法を挙げることができる。顕微分光光度計は微小面積の吸収スペクトルが測定できる装置であり、一粒子の透過スペクトルの測定が可能である。顕微分光法による一粒子の吸収スペクトルの測定については、山下らの報告(日本写真学会、1996年度年次大会講演要旨集、15ページ)を参照することができる。この吸収スペクトルから一粒子あたりの吸収強度が求められるが、粒子を透過する光は上部面と下部面の二面で吸収されるため、粒子表面の単位面積あたりの吸収強度は前述の方法で得られた一粒子あたりの吸収強度の1/2として求めることができる。このとき、吸収スペクトルを積分する区間は光吸収強度の定義上は5000cm-1から35000cm-1であるが、実験上は増感色素による吸収のある区間の前後500cm-1程度を含む区間の積分で構わない。
【0016】また顕微分光法を用いないでも、粒子が重なず、かつ、すきまがないように並べて、透過スペクトルを測定して求める方法も可能である。さらに光吸収強度は増感色素の振動子強度と単位面積当たりの吸着分子数で一義的に決定される値であり、増感色素の振動子強度、色素吸着量および粒子表面積を求めれば光吸収強度に換算することが出来る。増感色素の振動子強度は、増感色素溶液の吸収面積強度(光学濃度×cm-1)に比例する値として実験的に求めることが出来るので、1Mあたりの色素の吸収面積強度をA(光学濃度×cm-1)、増感色素の吸着量をB(mol/molAg)、粒子表面積をC(m2 /molAg)とすれば、次の式により光吸収強度を誤差10%程度の範囲で求めることが出来る。
0.156 ×A×B/Cこの式から光吸収強度を算出しても、前述の定義に基づいて測定された光吸収強度(Log(I0 /(I0 −I)))を波数(cm-1)に対して積分した値)と実質的に同じ値が得られる。
【0017】光吸収強度を増加させる方法には、色素発色団を粒子表面上に一層より多く吸着させる方法や、色素の分子吸光係数を増大させる方法、あるいは、色素占有面積を小さくする方法があり、いずれの方法を用いてもよいが、好ましくは色素発色団を粒子表面上に一層より多く吸着させる方法である。ここで、色素発色団が粒子表面上に一層より多く吸着した状態とは、ハロゲン化銀粒子近傍に束縛された色素が一層より多く存在することを意味し、分散媒中に存在する色素を含まない。また、色素発色団が粒子表面上に吸着した物質と共有結合で連結されている場合でも、連結基が長く、色素発色団が分散媒中に存在する場合には光吸収強度を増加させる効果は小さく、一層より多い吸着とは見なされない。また、色素発色団を粒子表面上に一層以上吸着させる、いわゆる多層吸着においては、粒子表面に直接吸着していない色素によって分光増感が生じることが必要であり、そのためにはハロゲン化銀に直接吸着していない色素から粒子に直接吸着した色素への励起エネルギー、又は電子の伝達が必要となる。したがって、励起エネルギー、又は電子の伝達が10段階を超えて起きる必要のある場合には、最終的な励起エネルギー、又は電子の伝達効率が低くなるため好ましくない。この1例は特開平2―113239などのポリマー色素のように色素発色団の大部分が分散媒中に存在し、励起エネルギーの伝達が10段階以上必要な場合が挙げられる。本発明においては、励起エネルギーと電子のうち、励起エネルギーを伝達する場合が好ましい。本発明では一分子あたりの色素発色団数は1から3が好ましい。
【0018】ここで述べた発色団とは、理化学辞典(第四版、岩波書店、1987年)、985〜986頁に記載の分子の吸収帯の主な原因となる原子団を意味し、例えばC=C,N=Nなどの不飽和結合を持つ原子団など、いかなる原子団も可能である。
【0019】例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0020】好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、アロポーラー色素、などのポリメチン発色団が挙げられる。さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0021】これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515貢などに記載されている。 シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21〜22欄の(XI)、(XII)、(XIII) に示されているものが好ましい。ただし、n12 、n15 、n17 、n18 の数は限定せず、0 以上の整数とする。
【0022】ハロゲン化銀粒子への色素発色団の吸着は、好ましくは1.5層以上、さらに好ましくは1.7層以上、特に好ましくは二層以上である。なお、上限は特にないが、10層以下が好ましく、さらに好ましくは5層以下である。
【0023】本発明においてハロゲン化銀粒子表面に発色団が一層より多く吸着した状態とは、該乳剤に添加される増感色素のうち、ハロゲン化銀粒子表面の色素占有面積が最も小さい色素によって到達する単位表面積あたりの飽和吸着量を一層飽和被覆量とし、この一層飽和被覆量に対して色素発色団の単位面積当たりの吸着量が多い状態をいう。また、吸着層数は一層飽和被覆量を基準とした時の吸着量を意味する。ここで、共有結合で色素発色団が連結された色素の場合には、連結しない状態の個々の色素の色素占有面積を基準とすることが出来る。色素占有面積は、遊離色素濃度と吸着色素量の関係を示す吸着等温線、および粒子表面積から求めることが出来る。吸着等温線は、例えばエー・ハーツ(A.Herz)らのアドソープション フロム アクエアス ソリューション(Adsorption from Aqueous Solution)アドバンシーズ イン ケミストリー シリーズ(Advances in Chemistry Series)No.17、173ページ(1968年)などを参考にして求めることが出来る。
【0024】増感色素の乳剤粒子への吸着量は、色素を吸着させた乳剤を遠心分離器にかけて乳剤粒子と上澄みのゼラチン水溶液に分離し、上澄み液の分光吸収測定から未吸着色素濃度を求めて添加色素量から差し引くことで吸着色素量を求める方法と、沈殿した乳剤粒子を乾燥し、一定重量の沈殿をチオ硫酸ナトリウム水溶液とメタノールの1:1混合液に溶解し、分光吸収測定することで吸着色素量を求める方法の2つの方法を用いることが出来る。複数種の増感色素を用いている場合には高速液体クロマトグラフィーなどの手法で個々の色素について吸着量を求めることも出来る。上澄み液中の色素量を定量することで色素吸着量を求める方法は、例えばダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)第56巻、1054ページ(1952年)などを参考にすることができる。しかし、色素添加量の多い条件では未吸着色素までも沈降することがあり、上澄み中の色素濃度を定量する方法では必ずしも正しい吸着量を得られないことがあった。一方沈降したハロゲン化銀粒子を溶解して色素吸着量を測定する方法であれば乳剤粒子の方が圧倒的に沈降速度が速いため粒子と沈降した色素は容易に分離でき、粒子に吸着した色素量だけを正確に測定できる。この方法が色素吸着量を求める方法として最も信頼性が高い。
【0025】ハロゲン化銀粒子表面積の測定方法の一例としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して、個々の粒子の形状とサイズを求め算出する方法がある。この場合、平板状粒子において厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。透過型電子顕微鏡写真の撮影方法としては、例えば、日本電子顕微鏡学会関東支部編「電子顕微鏡試料技術集」誠分堂新光社1970年刊、バターワーズ社(Buttwrworths)、ロンドン、1965刊、ピー・ビー・ヒルシュ(P.B.Hirsch)らのエレクトロン マイクロスコープ オブチンクリスタル(Electron Microscopy of Thin Crystals)を参考にすることができる。
【0026】他の方法としては、例えばエイ・エム・クラギン(A.M.Kragin)らのらのジャーナル オブ フォトグラフィック サイエンス(The Journal of Photographic Science)第14巻、185ページ(1966年)、ジェイ・エフ・パディ(J.F.Paddy)のトランスアクションズ オブ ザ ファラデ− ソサイアティ(Transactions of the Faraday Society)第60巻1325ページ(1964年)、エス・ボヤー(S.Boyer)らのジュナル デ シミフィジク エ デ フィジコシミ ビジョロジク(Journal de Chimie Physique et de Physicochimie biologique)第63巻、1123ページ(1963年)、ダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)第56巻、1054ページ(1952年)、エイチ・ソーヴエニアー(H.Sauvenier)編集、イー・クライン(E.Klein)らのインターナショナル・コロキウム(International Coloquium)、リエージュ(Liege)、1959年、「サイエンティフィック フォトグラフィー(Scientific Photography)」などを参考にすることができる。
【0027】色素占有面積は上記の方法で個々の場合について実験的に求められるが、通常用いられる増感色素の分子占有面積はほぼ80Å2 付近であるので、簡易的にすべての色素について色素占有面積を80Å2 としておおよその吸着層数を見積もることも出来る。
【0028】本発明において、ハロゲン化銀粒子に色素発色団が多層に吸着している場合、ハロゲン化銀粒子に直接吸着している、いわゆる一層目の色素発色団と二層目以上の色素発色団の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、一層目の色素発色団の還元電位が二層目以上の色素発色団の還元電位の値から0.2vを引いた値よりも、貴であることが好ましい。
【0029】還元電位、及び酸化電位の測定は、種々の方法が可能であるが、好ましくは、位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーで行う場合であり、正確な値を求めることができる。なお、以上の位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーによる電位の測定法はジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(Journal of Imaging Science)、第30巻、第27頁(1986年)に記載されている。
【0030】また、二層目以上の色素発色団は、発光性色素の場合が好ましい。発光性色素の種類としては色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を持つものが好ましい。これらはたとえば、前田三男、レーザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1980年)及び第9巻、85頁(1981年)、及びF. Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973年)の中に整理されている。
【0031】さらに、一層目の色素発色団のハロゲン化銀写真感光材料中における吸収極大波長が二層目以上の色素発色団の吸収極大波長よりも長波長であることが好ましい。さらに、二層目以上の色素発色団の発光が一層目の色素発色団の吸収と重なることが好ましい。また、一層目の色素発色団はJ-会合体を形成した方が好ましい。さらに、所望の波長範囲に吸収および分光感度を有するためには、二層目以上の色素発色団もJ会合体を形成していることが好ましい。
【0032】本発明において用いる用語の意味を以下に記述する。
色素占有面積:色素一分子あたりの占有面積。吸着等温線から実験的に求めることが出来る。共有結合で色素発色団が連結された色素の場合には、連結しない状態の個々の色素の色素占有面積を基準とする。簡易的には802
一層飽和被覆量:一層飽和被覆時の単位粒子表面積あたりの色素吸着量。添加された色素のうち最小の色素占有面積の逆数。
多層吸着:単位粒子表面積あたりの色素発色団の吸着量が一層飽和被覆量よりも多い状態。
吸着層数:一層飽和被覆量を基準とした時の単位粒子表面積あたりの色素発色団の吸着量。
【0033】光吸収強度100以上のハロゲン化銀写真乳剤粒子を含有する乳剤の増感色素による分光吸収率の最大値Amax、および分光感度の最大値Smaxのそれぞれ50%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは100nm以下である。またAmaxおよびSmaxの80%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、20以上で、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下である。またAmaxおよびSmaxの20%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは180nm以下、さらに好ましくは150nm以下、特に好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0034】分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を実現する好ましい第一の方法は、次のような特定の色素を用いる方法である。
【0035】例えば、特開平10−239789、同8−269009、同10−123650号、特願平7−75349号に記載されている芳香族基を持つ色素、又は芳香族基を持つカチオン色素とアニオン色素を併用する方法、特開平10−171058号に記載されている多価電荷を持つ色素を用いる方法、特開平10−104774号に記載されているピリジニウム基を持つ色素を用いる方法、特開平10−186559号に記載されている疎水性基を持つ色素を用いる方法、及び特開平10−197980号に記載されている配位結合基を持つ色素を用いる方法などが好ましい。
【0036】特に好ましい方法は、芳香族基を少なくとも一つ持つ色素を用いる方法である。その中で、好ましくは正に荷電した色素のみ用いる方法、又は正と負に荷電した色素を併用し、かつ、正及び負に荷電した色素のうち少なくとも一方が少なくとも一つの芳香族基を置換基として持つ方法である。
【0037】芳香族基について詳細に説明する。芳香族基としては、炭化水素芳香族基、及び複素芳香族基がある。これらは、さらに炭化水素芳香族環、及び複素芳香族環同士が縮合した多環縮合環、又は芳香族炭化水素環と芳香族複素環が組み合わされた多環縮合環構造を持つ基であっても良く、後述の置換基V等で置換されていても良い。芳香族基に含まれる芳香族環として好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、トリフェニレン、ナフタセン、ビフェニル、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾフラン、キノリジン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キノキサゾリン、キノリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、チアントレン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、フェノチアジン、フェナジン等が挙げられる。
【0038】さらに好ましくは、上述の炭化水素芳香族環であり、特に好ましくはベンゼン、ナフタレンであり、最も好ましくはベンゼンである。
【0039】色素としては、前述の色素発色団の例として示した色素が挙げられる。好ましくは、ポリメチン色素であり、前述のポリメチン色素発色団の例として示したポリメチン色素が挙げられる。
【0040】さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好ましくはシアニン色素である。
【0041】特に好ましい方法について、構造式を示して詳細に説明する。
【0042】すなわち、次の(1)、(2)の場合が好ましい。(1)と(2)では、(2)がより好ましい。
(1)下記一般式(II)で表されるカチオン性、又はベタイン性のメチン色素のうち少なくとも一種を用いる方法。
(2)下記一般式(II)で表されるカチオン性のメチン色素のうち少なくとも一種と下記一般式(III)で表されるアニオン性のメチン色素のうち少なくとも一種を同時に用いる方法。一般式(II)
【0043】
【化3】


【0044】式中、Z1は含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。R1はアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Q1は一般式(II)で表される化合物がメチン色素を形成するのに必要な基を表す。L1及びL2はメチン基を表す。p1は0または1を表す。ただしZ1、R1、Q1、L1、及びL2は一般式(II)で表されるメチン色素が全体としてカチオン色素、又はベタイン色素となる置換基を持つものとする。ただし、好ましくはカチオン色素となる置換基を持つ場合である。M2は電荷均衡のための陰イオンを表し、m2は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。
一般式(III)
【0045】
【化4】


【0046】式中、Z2は含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。R2はアルキル基、アリール基、又は複素環基である。Q2は一般式(III)で表される化合物がメチン色素を形成するのに必要な基を表す。L3及びL4はメチン基を表す。p2は0または1を表す。ただしZ2、R2、Q2、L3、及びL4は一般式(III)で表されるメチン色素が全体としてアニオン色素となる置換基を持つものとする。M3は電荷均衡のための陽イオンを表し、m3は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。
【0047】但し、一般式(II) の化合物を単独で用いる場合、R1は芳香族環を持つ基であることが好ましい。
【0048】また、一般式(II) の化合物と一般式(III)の化合物を併用する場合は、R1,及びR2のうち少なくとも一方は、芳香族環を持つ基であることが好ましい。さらに、好ましくは、R1、及びR2とも、芳香族環を持つ基である場合である。
【0049】本発明のカチオン色素とは、対イオンを除いた色素の電荷がカチオン性である色素ならばいずれでも良いが、好ましくはアニオン性の置換基を持たない色素である。また、本発明のアニオン色素とは、対イオンを除いた色素の電荷がアニオン性である色素ならばいずれでも良いが、シアニン色素の場合好ましくはアニオン性の置換基を2つ以上持つ色素である。本発明のベタイン色素とは、分子内に電荷を全く持たないか、又は分子内塩を形成し、分子が全体として電荷を持たない色素である。シアニン色素の場合好ましくはアニオン性の置換基を1つ持つ色素である。
【0050】ここで言うアニオン性置換基とは、負電荷を有した置換基であり、例えばpH5〜8の間で90%以上解離したプロトン解離性酸性基が挙げられる。具体的には、例えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、リン酸基、ほう酸基、アルキルスルホニルカルバモイルアルキル基(例えばメタンスルホニルカルバモイルメチル基)、アシルカルバモイルアルキル基(例えばアセチルカルバモイルメチル基)、アシルスルファモイルアルキル基(例えばアセチルスルファモイルメチル基)、アルキルスルフォニルスルファモイルアルキル基(例えばメタンスルフォニルスルファモイルメチル基)が挙げられる。さらに好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。特に好ましくはスルホ基である。
【0051】一般式(II)で表わされるカチオン色素として、さらに好ましくは下記一般式(IV)で表されるときである。
一般式(IV)
【0052】
【化5】


【0053】一般式(IV)中、L5、L6、L7、L8、L9、L10、及びL11はメチン基を表す。p3、及びp4は0または1を表す。n1は0、1、2、3または4を表す。Z3及びZ4は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。R3、R4はアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。但し、R3、R4、Z3、Z4、L5〜L11はアニオン性の置換基を持たない。M2、m2は一般式(II)と同義である。
【0054】また、一般式(III)で表わされるアニオン色素として、さらに好ましくは下記一般式(V)で表されるときである。
一般式(V)
【0055】
【化6】


【0056】一般式(V)中、L12、L13、L14、L15、L16、L17、及びL18はメチン基を表す。p5、及びp6は0または1を表す。n2は0、1、2、3または4を表す。Z5及びZ6は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。R5、R6はアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。但し、R5及びR6はアニオン性の置換基を有する。M3、m3は一般式(III)と同義である。
【0057】但し、一般式(IV) の化合物を単独で用いる場合、R3及びR4のうち少なくとも一つは芳香族環を有する基である。
【0058】好ましくは、R3及びR4の両方とも芳香族環を有する基である場合である。
【0059】一般式(IV) の化合物と一般式(V)の化合物を併用する場合は、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも一つは、芳香族環を有する基である。
【0060】好ましくは、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも二つは、芳香族環を有する基である場合であり、さらに好ましくは、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも三つは、芳香族環を有する基である場合であり、特に好ましくはR3、R4、R5、及びR6の全てが、芳香族環を有する基である場合である。
【0061】上記の好ましい方法により、分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を実現することができるが、二層目以上の色素は通常は単量体状態で吸着するため、所望の吸収幅および分光感度幅よりも広くなることがほとんどである。したがって所望の波長域で高い感度を実現するためには、二層目以上に吸着する色素にJ会合体を形成させることが必要である。本発明において、二層目以上の色素とは、ハロゲン化銀粒子には吸着しているが、ハロゲン化銀に直接は吸着していない色素のことである。本発明において二層目以上の色素のJ会合体とは、二層目以上に吸着した色素の示す吸収の長波長側の吸収幅が、色素発色団間の相互作用のない単量体状態の色素溶液が示す吸収の長波長側の吸収幅の2倍以下であると定義する。ここで長波長側の吸収幅とは、吸収極大波長と、吸収極大波長より長波長で吸収極大の1/2の吸収を示す波長とのエネルギー幅を表す。一般にJ会合体を形成すると単量体状態と比較して長波長側の吸収幅は小さくなることが知られている。単量体状態で二層目に吸着した場合には、吸着位置および状態の不均一性があるため色素溶液の単量体状態の長波長側の吸収幅の2倍以上に大きくなる。したがって、上記定義により二層目以上の色素のJ会合体を定義することが出来る。
【0062】二層目以上に吸着した色素の分光吸収は、該乳剤の全体の分光吸収から一層目色素による分光吸収を引いて求めることが出来る。一層目色素による分光吸収は、一層目色素のみを添加したときの吸収スペクトルを測定すれば求められる。また、増感色素が多層吸着した乳剤に色素脱着剤を添加して二層目以上の色素を脱着させることで、一層目色素による分光吸収スペクトルを測定することも出来る。色素脱着剤を用いて粒子表面から色素を脱着させる実験では、通常一層目色素は二層目以上の色素が脱着した後に脱着されるので、適切な脱着条件を選べば、一層目色素による分光吸収を求めることが出来る。これにより、二層目以上の色素の分光吸収を求めることが可能となる。色素脱着剤を用いる方法は、浅沼らの報告(ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー B(Journal of Physical Chemistry B)第101巻2149頁から2153頁(1997年))を参考にすることが出来る。
【0063】一般式(II)で表されるカチオン色素、又はベタイン色素(好ましくはカチオン色素)、及び一般式(III)で表されるアニオン色素を用いて、二層目色素のJ会合体を形成させるためには、一層目として吸着させる色素と二層目以降に吸着させる色素を分離して添加するのが好ましく、一層目色素と二層目以上の色素は異なる構造の色素を用いることがより好ましい。二層目以上の色素はカチオン性の色素、又はベタイン性の色素(好ましくはカチオン性の色素)を単独、又はカチオン性の色素とアニオン性の色素を併用して添加することが好ましい。
【0064】一層目色素はいかなる色素を用いることも出来るが、好ましくは一般式(II)または一般式(III)で表される色素であり、さらに好ましくは一般式(II)のカチオン色素である。二層目色素は、一般式(II)のカチオン色素、又はベタイン色素(好ましくはカチオン色素)を単独で用いる場合が好ましい。また、これと同列に好ましい二層目色素としてカチオン色素とアニオン色素を併用する場合は、いずれか一方が一般式(II)のカチオン色素または一般式(III)のアニオン色素である場合が好ましく、さらに一般式(II)のカチオン色素と一般式(III)のアニオン色素を両方とも含むことが好ましい。二層目色素としてのカチオン性色素/アニオン性色素の比率は、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.75〜1.33、最も好ましくは0.9から1.11の範囲である。
【0065】本発明では一般式(II)あるいは一般式(III)で表される色素以外を添加しても構わないが、一般式(II)あるいは一般式(III)で表される色素は、好ましくは全色素添加量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上である。二層目色素はこのようにして添加することにより、二層目色素の再配列を促進しつつ、二層目色素間の相互作用を高めることができるためJ会合体形成が実現できる。
【0066】また一般式(II)または一般式(III)の色素において、一層目色素として使用する場合は、Z1,Z2は芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。また、二層目以上の色素として使用する場合、Z1,Z2は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
【0067】ここで、塩基性核の縮環数は、例えばベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。3環式縮環型複素環として好ましくはナフト[2,3-d] オキサゾール、ナフト[1,2-d] オキサゾール、ナフト[2,1-d] オキサゾール、ナフト[2,3-d] チアゾール、ナフト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チアゾール、ナフト[2,3-d] イミダゾール、ナフト[1,2-d] イミダゾール、ナフト[2,1-d] イミダゾール、ナフト[2,3-d] セレナゾール、ナフト[1,2-d] セレナゾール、ナフト[2,1-d] セレナゾール、インドロ[5,6-d] オキサゾール、インドロ[6,5-d] オキサゾール、インドロ[2,3-d] オキサゾール、インドロ[5,6-d] チアゾール、インドロ[6,5-d] チアゾール、インドロ[2,3-d] チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d] オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d] オキサゾール、ベンゾフロ[2,3-d] オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d] チアゾール、ベンゾフロ[6,5-d] チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d] オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5-d] オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3-d] オキサゾール等が挙げられる。また、4環式縮環型複素環として好ましくは、アントラ[2,3-d] オキサゾール、アントラ[1,2-d] オキサゾール、アントラ[2,1-d] オキサゾール、アントラ[2,3-d] チアゾール、アントラ[1,2-d] チアゾール、フェナントロ[2,1-d] チアゾール、フェナントロ[2,3-d] イミダゾール、アントラ[1,2-d] イミダゾール、アントラ[2,1-d] イミダゾール、アントラ[2,3-d] セレナゾール、フェナントロ[1,2-d] セレナゾール、フェナントロ[2,1-d] セレナゾール、カルバゾロ[2,3-d] オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d] オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d] チアゾール、カルバゾロ[3,2-d] チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d] チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d] オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d] オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7-d] オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6-d] オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d] チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d] チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7-d] チアゾール等が挙げられる。3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3-d] オキサゾール、ナフト[1,2-d] オキサゾール、ナフト[2,1-d] オキサゾール、ナフト[2,3-d] チアゾール、ナフト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チアゾール、インドロ[5,6-d] オキサゾール、インドロ[6,5-d] オキサゾール、インドロ[2,3-d] オキサゾール、インドロ[5,6-d] チアゾール、インドロ[2,3-d] チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d] オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d] オキサゾール、ベンゾフロ[2,3-d] オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d] チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d] オキサゾール、アントラ[2,3-d] オキサゾール、アントラ[1,2-d] オキサゾール、アントラ[2,3-d] チアゾール、アントラ[1,2-d] チアゾール、カルバゾロ[2,3-d] オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d] オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d] チアゾール、カルバゾロ[3,2-d] チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d] チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d] オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3-d] オキサゾール、ナフト[1,2-d] オキサゾール、ナフト[2,3-d] チアゾール、インドロ[5,6-d] オキサゾール、インドロ[6,5-d]オキサゾール、インドロ[5,6-d] チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d] オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d] チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d] オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d] オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d] チアゾール、カルバゾロ[3,2-d] チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d] チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d] チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d] オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d] オキサゾールである。
【0068】また、ハロゲン化銀粒子表面上を色素発色団が多層に被覆しているような吸着状態を実現したもう一つの好ましい方法は、連結基によって共有結合で連結した2つ以上の色素発色団部分を持つ色素化合物を用いる方法である。用いることのできる色素発色団としてはいかなるものでも良いが、前述の色素発色団で示したものが挙げられる。好ましくは、前述の色素発色団で示したポリメチン色素発色団である。さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0069】好ましい例としては、例えば、特開平9−265144号に記載されているメチン鎖で連結された色素を用いる方法、特開平10−226758号に記載されているシアニン色素とオキソノール染料が連結された色素を用いる方法、特開平10−110107、同10−307358、同10−307359、同10−310715号に記載されている特定構造の連結色素を用いる方法、特願平8−31212号、特開平10−204306号に記載されている特定の連結基を持つ連結色素を用いる方法、特願平10−249971号に記載されている反応性基を持つ色素を用い乳剤中で連結色素を生成させる方法などが挙げられる。
【0070】好ましい連結色素としては、下記一般式(I)で表される色素である。
一般式(I)
【0071】
【化7】


【0072】式中、D1及びD2は色素発色団を表わす。Laは連結基、又は単結合を表す。q及びrは各々1から100までの整数を表わす。M1は電荷均衡対イオンを表し、m1は分子の電荷を中和するのに必要な数を表す。
【0073】D1、D2、Laについて述べる。
【0074】D1,及びD2で表わされる色素発色団としてはいかなるものでも良いが、前述の色素発色団で示したものが挙げられる。好ましくは、前述の色素発色団で示したポリメチン色素発色団である。さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0075】本発明において、一般式(I)で表される連結色素がハロゲン化銀粒子に吸着した場合にはD2はハロゲン化銀に直接吸着していない発色団であることが好ましい。すなわち、D2のハロゲン化銀粒子への吸着力はD1よりも弱い方が好ましい。さらに、ハロゲン化銀粒子への吸着力の序列は、D1>La>D2となっている場合が最も好ましい。
【0076】上記のように、D1はハロゲン化銀粒子への吸着性を持つ増感色素部分であることが好ましいが、物理吸着、または化学吸着いずれによって吸着させても構わない。
【0077】D2はハロゲン化銀粒子への吸着性が弱く、また発光性色素の場合が好ましい。発光性色素の種類としては色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を持つものが好ましい。これらはたとえば、前田三男、レーザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1980年)及び第9巻、85頁(1981年)、及びF. Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973年)の中に整理されている。
【0078】さらに、D1のハロゲン化銀写真感光材料中における吸収極大波長がD2の吸収極大波長よりも長波長であることが好ましい。さらに、D2の発光がD1の吸収と重なることが好ましい。また、D1はJ-会合体を形成した方が好ましい。さらに、一般式(I)で表される連結色素が所望の波長範囲に吸収および分光感度を有するためには、D2もJ会合体を形成していることが好ましい。
【0079】D1とD2の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、D1の還元電位がD2の還元電位の値から0.2vを引いた値よりも、貴であることが好ましい。
【0080】Laは連結基(好ましくは2価の連結基)または単結合を表す。この連結基は、好ましくは炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち、少なくとも1種を含む原子又は原子団からなる。好ましくはアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン)、アリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、−N(Va)−(Vaは水素原子、又は一価の置換基を表わす。一価の置換基としては後述のVが挙げられる。)、複素環2価基(例えば、6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数0以上100以下、好ましくは炭素数1以上20以下の連結基を表す。
【0081】上記の連結基は、更に後述のVで表わされる置換基を有しても良い。また、これらの連結基は環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を含有しても良い。
【0082】更に好ましくは炭素数1以上10以下のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン)、炭素数6以上10以下のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレン)、炭素数2以上10以下のアルケニレン基(例えば)例えば、エテニレン、プロペニレン)、炭素数2以上10以下のアルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、エーテル基、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基を1つ又はそれ以上組み合わせて構成される炭素数1以上10以下の2価の連結基である。これらは、後述のVで置換されていても良い。
【0083】Laはスルーボンド(through −bond)相互作用によりエネルギー移動または電子移動を行っても良い連結基である。スルーボンド相互作用にはトンネル相互作用、超交換(super-exchange)相互作用などがあるが、中でも超交換相互作用に基づくスルーボンド相互作用が好ましい。スルーボンド相互作用及び超交換相互作用は、シャマイ・スペイサー(Shammai Speiser )著、ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)第96巻、第1960−1963頁、1996年で定義されている相互作用である。このような相互作用によりエネルギー移動または電子移動する連結基としては、シャマイ・スペイサー(Shammai Speiser)著、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第96巻、第1967−1969頁、1996年に記載のものが好ましい。
【0084】q及びrは1から100までの整数を表わす。好ましくは1から5の整数であり、さらに好ましくは1から2の整数であり、特に好ましくは1である。q及びrが2以上の場合は含まれる複数のLa及びD2はそれぞれ相異なる連結基及び色素発色団であっても良い。
【0085】一般式(I)の色素は全体で−1の電荷を持つ場合が好ましい。
【0086】さらに好ましくは、一般式(I)において、D1及びD2がそれぞれ独立に下記一般式(VI)、(VII)、または(VIII) で表されるメチン色素である時である。
一般式(VI)
【0087】
【化8】


【0088】式(VI)中、L19、L20、L21、L22、L23、L24、及びL25はメチン基を表す。p7、及びp8は0または1を表す。n3は0、1、2、3または4を表す。Z7及びZ8は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。M4は電荷均衡対イオンを表し、m4は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R7及びR8はアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
一般式(VII)
【0089】
【化9】


【0090】式(VII)中、L26、L27、L28、及びL29はメチン基を表す。p9は0又は1を表す。n4は0、1、2、3又は4を表す。Z9及びZ10は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。M5は電荷均衡対イオンを表し、m5は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R9及びR10はアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
一般式(VIII)
【0091】
【化10】


【0092】式(VIII) 中、L30、L31、L32、L33、L34、L35、L36、L37及びL38はメチン基を表す。p10及びp11は0又は1を表す。n5及びn6は0、1、2、3又は4を表す。Z11、Z12及びZ13は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。M6は電荷均衡対イオンを表し、m6は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R11、R12及びR13はアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
【0093】以下、一般式(II)から(VIII)で表されるメチン化合物について詳細に述べる。
【0094】一般式(II)及び(III)中、Q1及びQ2はメチン色素を形成するのに必要な基を表す。Q1及びQ2により、いかなるメチン色素を形成することも可能であるが、前述の色素発色団の例として示したメチン色素が挙げられる。好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好ましくはシアニン色素である。これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer) 著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry) 」、第18章、第14節、第482から515貢などに記載されている。シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の一般式は、米国特許第5、340、694号第21〜22欄の(XI)、(XII)、(XIII)に示されているものが好ましい。ただし、n12、n15、n17、n18の数は限定せず、0以上の整数とする。 また、一般式(II)及び(III)において、Q1及びQ2によりシアニン色素が形成される場合などは、下記のような共鳴式で表現することも可能である。
一般式(II)
【0095】
【化11】


【0096】一般式(III)
【0097】
【化12】


【0098】一般式(II)、(III)、(IV) 、(V)、(VI) 、(VII)、及び(VIII) 中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6,Z7、Z8、Z9、Z11、及びZ13は含窒素複素環、好ましくは5又は6員の含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い。環としては、芳香族環、又は非芳香族環いずれでも良い。好ましくは芳香族環であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環などの炭化水素芳香族環や、ピラジン環、チオフェン環などの複素芳香族環が挙げられる。
【0099】含窒素複素環としてはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができるが、好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核であり、さらに好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、最も好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核である。
【0100】これらの含窒素複素環上の置換基をVとすると、Vで示される置換基としては特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1から10、好ましくは炭素数2から8、更に好ましくは炭素数2から5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカルボニル)、炭素数0から10、好ましくは炭素数2から8、更に好ましくは炭素数2から5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルフォニル)、ニトロ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、
【0101】炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ、エタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ)、
【0102】アミノ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、更に好ましくは炭素数1から8の置換アミノ基(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数3から10、更に好ましくは炭素数3から6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム)、炭素数0から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、更に好ましくは炭素数1から8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、2−ピリジルチオ、ナフチルチオ)、炭素数2から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、
【0103】炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2から18、好ましくは炭素数3から10、更に好ましくは炭素数3から5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする}、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、更に好ましくは炭素数6から10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル)、
【0104】炭素数1から20、好ましくは炭素数2から10、更に好ましくは炭素数4から6の置換又は無置換のヘテロ環基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)が挙げられる。また、環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環)が縮合した構造をとることもできる。これらのVで表わされる置換基上に、さらにVが置換していても良い。
【0105】置換基として好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、芳香環縮合、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基である。
【0106】Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6上の置換基Vとしてさらに好ましくは芳香族基、芳香環縮合である。
【0107】一般式(VI)、(VII)、または(VIII) で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD1で表される発色団を表すとき、Z7、Z8、Z9、Z11、及びZ13上の置換基Vとして、さらに好ましくは芳香族基、芳香環縮合である。
【0108】一般式(VI)、(VII)、または(VIII) で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD2で表される発色団を表すとき、Z7、Z8、Z9、Z11、及びZ13上の置換基Vとしてさらに好ましくはカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはスルホ基である。
【0109】Z10は酸性核を形成するために必要な原子群を表すが、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核の形をとることもできる。ここでいう酸性核とは、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the PhotographicProcess)第4版、マクミラン出版社、1977年、198貢により定義される。具体的には、米国特許第3、567、719号、第3、575、869号、第3、804、634号、第3、837、862号、第4、002、480号、第4、925、777号、特開平3ー167546号などに記載されているものが挙げられる。
【0110】酸性核が、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環を形成するとき好ましく、次の核が挙げられる。
【0111】2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2、4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2、4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1、3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1、1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5、7−ジオキソ−6、7−ジヒドロチアゾロ[3,2-a]ピリミジン、シクロヘキサン−1、3−ジオン、3、4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1、3−ジオキサン−4、6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2、4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1、3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1、2、3、4−テトラヒドロキノリン−2、4−ジオン、3−オキソ−2、3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1、1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2、3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1、1−ジオキサイドの核。
【0112】Z10として好ましくはヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、チアゾリジン−2、4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2、4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2−または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。特に好ましくは2−または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸である。
【0113】Z12によって形成される5員又は6員の含窒素複素環は、Z10によって表される複素環からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものである。好ましくはヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、チアゾリジン−2、4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2、4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2−または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、特に好ましくは2−または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニンからオキソ基、又はチオキソ基を除いたものである。
【0114】R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はアルキル基、アリール基、及び複素環基であるが、具体的には、例えば、炭素原子1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル)、炭素原子1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の置換アルキル基{例えば置換基として前述のVが置換したアルキル基が挙げられる。好ましくはアラルキル基(例えばベンジル、2−フェニルエチル)、不飽和炭化水素基(例えばアリル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル)、カルボキシアルキル基(例えば、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル)、アルコキシアルキル基(例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、アリーロキシアルキル基(例えば2−フェノキシエチル、2−(1−ナフトキシ)エチル)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えばエトキシカルボニルメチル、2−ベンジルオキシカルボニルエチル)、アリーロキシカルボニルアルキル基(例えば3−フェノキシカルボニルプロピル)、アシルオキシアルキル基(例えば2−アセチルオキシエチル)、アシルアルキル基(例えば2−アセチルエチル)、カルバモイルアルキル基(例えば2−モルホリノカルボニルエチル)、スルファモイルアルキル基(例えばN,N−ジメチルスルファモイルメチル)、スルホアルキル基(例えば、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−[3−スルホプロポキシ]エチル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチル)、スルホアルケニル基、スルファトアルキル基(例えば、2ースルファトエチル基、3−スルファトプロピル、4−スルファトブチル)、複素環置換アルキル基(例えば2−(ピロリジン−2−オン−1−イル)エチル、テトラヒドロフルフリル)、アルキルスルホニルカルバモイルアルキル基(例えばメタンスルホニルカルバモイルメチル基)、アシルカルバモイルアルキル基(例えばアセチルカルバモイルメチル基)、アシルスルファモイルアルキル基(例えばアセチルスルファモイルメチル基)、アルキルスルフォニルスルファモイルアルキル基(例えばメタンスルフォニルスルファモイルメチル基)}、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から10、さらに好ましくは炭素数6から8の無置換アリール基(例えばフェニル基、1ーナフチル基)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から10、さらに好ましくは炭素数6から8の置換アリール基(例えば置換基の例として挙げた前述のVが置換したアリール基が挙げられる。具体的にはp−メトキシフェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数4から8の無置換複素環基(例えば2ーフリル基、2−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピラゾリル、3−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、2−イミダゾリル、2−オキサゾリル、2−チアゾリル、2−ピリダジル、2−ピリミジル、3−ピラジル、2−(1,3,5-トリアゾリル)、3−(1,2,4-トリアゾリル)、5−テトラゾリル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数4から8の置換複素環基(例えば置換基の例として挙げた前述のVが置換した複素環基が挙げられる。具体的には5−メチル−2−チエニル基、4−メトキシ−2−ピリジル基などが挙げられる。)が挙げられる。
【0115】R1,R3、及びR4として好ましくは、芳香族環を有する基である。芳香族環としては、炭化水素芳香族環、複素芳香族環が挙げられ、これらは、さらに炭化水素芳香族環、及び複素芳香族環同士が縮合した多環縮合環、又は芳香族炭化水素環と芳香族複素環が組み合わされた多環縮合環であっても良く、前述の置換基V等で置換されていても良い。芳香族環として好ましくは、前述の芳香族基の説明で芳香族環の例として示したものが挙げられる。
【0116】また、芳香族環を有する基は、−Lb−A1で表わすことができる。ここで、Lbは単結合を表わすか、または連結基である。A1は、芳香族基を表わす。Lbの連結基として好ましくは、前述のLaなどで説明した連結基が挙げられる。A1の芳香族基として好ましくは、前述の芳香族基の例として挙げたものである。
【0117】好ましくは、炭化水素芳香族環を有するアルキル基として、アラルキル基(例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、ナフチルメチル、2−(4−ビフェニル)エチル)、アリーロキシアルキル基(例えば、2−フェノキシエチル、2−(1−ナフトキシ)エチル、2−(4−ビフェニロキシ)エチル、2−(o,mあるいはp−ハロフェノキシ)エチル、2−(o,mあるいはp−メトキシフェノキシ)エチル)、アリーロキシカルボニルアルキル基(3−フェノキシカルボニルプロピル、2−(1−ナフトキシカルボニル)エチル)などが挙げられる。また、複素芳香族環を有するアルキル基として例えば、2−(2−ピリジル)エチル、2−(4−ピリジル)エチル、2−(2−フリル)エチル、2−(2−チエニル)エチル、2−(2−ピリジルメトキシ)エチルが挙げられる。炭化水素芳香族基としては4−メトキシフェニル、フェニル、ナフチル、ビフェニルなどが挙げられる。複素芳香族基としては、2ーチエニル基、4−クロロー2−チエニル、2ーピリジル、3ーピラゾリルなどが挙げられる。
【0118】さらに好ましくは上述の置換もしくは無置換の炭化水素芳香族環、又は複素芳香族環を有するアルキル基である。特に好ましくは、上述の置換もしくは無置換の炭化水素芳香族環を有するアルキル基である。
【0119】R2,R5、及びR6として好ましくは、芳香族環を有する基である。R5,及びR6はアニオン性の置換基を持つ。また、R2はアニオン性の置換基を持つ場合が好ましい。芳香族環としては、炭化水素芳香族環、複素芳香族環が挙げられ、これらは、さらに炭化水素芳香族環、及び複素芳香族環同士が縮合した多環縮合環、又は芳香族炭化水素環と芳香族複素環が組み合わされた多環縮合環であっても良く、前述の置換基V等で置換されていても良い。芳香族環として好ましくは、前述の芳香族基の説明で芳香族環の例として示したものが挙げられる。
【0120】また、芳香族環を有する基は、−Lc−A2で表わすことができる。ここで、Lcは単結合を表わすか、または連結基である。A2は、芳香族基を表わす。Lcの連結基として好ましくは、前述のLaなどで説明した連結基が挙げられる。A2の芳香族基として好ましくは、前述の芳香族基の例として挙げたものである。Lc,又はA2には、少なくとも1つのアニオン性置換基が置換している場合が好ましい。
【0121】好ましくは、炭化水素芳香族環を有するアルキル基として、スルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換したアラルキル基(例えば、2−スルホベンジル、4−スルホベンジル、4−スルホフェネチル、3−フェニル−3−スルホプロピル、3−フェニル−2−スルホプロピル、4,4−ジフェニル−3−スルホブチル、2−(4’−スルホ−4−ビフェニル)エチル、4−ホスホベンジル)、スルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換したアリーロキシカルボニルアルキル基(3−スルホフェノキシカルボニルプロピル)、スルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換したアリーロキシアルキル基(例えば、2−(4−スルホフェノキシ)エチル、2−(2−ホスホフェノキシ)エチル、4,4−ジフェノキシ−3−スルホブチル)、などが挙げられる。また、複素芳香族環を有するアルキル基としては、3−(2−ピリジル)−3−スルホプロピル、3−(2−フリル)−3−スルホプロピル、2−(2−チエニル)−2−スルホプロピルなどが挙げられる。炭化水素芳香族基としてはスルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換したアリール基(例えば、4−スルホフェニル、4−スルホナフチル)、複素芳香族基としては、スルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換した複素環基(例えば、4−スルホー2ーチエニル基、4−スルオー2ーピリジル基)などが挙げられる。
【0122】さらに好ましくは、上述のスルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換した炭化水素芳香族環、又は複素芳香族環を有するアルキル基であり、特に好ましくは上述のスルホ基、リン酸基、及またはカルボキシル基が置換した炭化水素芳香族環を有するアルキル基である。最も好ましくは、2−スルホベンジル、4−スルホベンジル、4−スルホフェネチル、3−フェニル−3−スルホプロピル、4−フェニル−4−スルホブチルである。
【0123】一般式(VI)、(VII) 、または(VIII) で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD1で表される発色団を表すとき、R7、R8、R9、R10,R11、R12,及びR13で表される置換基として好ましくは上述の無置換アルキル基、置換アルキル基(例えば、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、アラルキル基、アリーロキシアルキル基)である。
【0124】一般式(VI)、(VII)、または(VIII) で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD2で表される発色団を表すとき、R7、R8、R9、R10,R11、R12,及びR13で表される置換基として好ましくは、アニオン性の置換基を持つアルキル基(例えばカルボキシアルキル基、スルホアルキル基)であり、さらに好ましくはスルホアルキル基である。
【0125】L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L19、L20、L21、L22、L23、L24、L25、L26、L27、L28、L29、L30、L31、L32、L33、L34、L35、L36、L37及びL38はそれぞれ独立にメチン基を表す。L1〜L38で表されるメチン基は置換基を有していても良く、置換基としては前述のVが挙げられる。例えば置換又は無置換の炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、特に好ましくは炭素数1から5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、2−カルボキシエチル)、置換または無置換の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、更に好ましくは炭素数6から10のアリール基(例えばフェニル、o−カルボキシフェニル)、置換または無置換の炭素数3から20、好ましくは炭素数4から15、更に好ましくは炭素数6から10の複素環基(例えばN,N−ジメチルバルビツール酸基)、ハロゲン原子、(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数2から10、更に好ましくは炭素数4から10のアミノ基(例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、N−メチルピペラジノ)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ)などが挙げられる。また他のメチン基と環を形成してもよく、もしくはZ1〜Z13、R1〜R13と共に環を形成することもできる。
【0126】L1、L2、L3、L4、L5、L6、L10、L11、L12、L13、L17、L18、L19、L20、L24、L25、L26、L27、L30、L31、L37、及びL38として好ましくは、無置換メチン基である。
【0127】n1、n2、n3、n4、n5、及びn6はそれぞれ独立に0、1、2、3または4を表す。好ましくは0、1、2、3であり、更に好ましくは0、1、2であり、特に好ましくは0、1である。n1、n2、n3、n4、n5、及びn6が2以上の時、メチン基が繰り返されるが同一である必要はない。
【0128】p1、p2、p3、p4、p5、p6、p7、p8、p9、p10、及びp11はそれぞれ独立に0または1を表す。好ましくは0である。
【0129】M1、M2、M3、M4、M5、及びM6は色素のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオン又は陰イオンの存在を示すために式の中に含められている。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H+ )、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えばフッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン)、置換アリ−ルスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1、3−ベンゼンスルホン酸イオン、1、5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2、6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマー又は色素と逆電荷を有する他の色素を用いても良い。また、CO2 - SO3 - は、対イオンとして水素イオンを持つときはCO2H、SO3 Hと表記することも可能である。
【0130】m1、m2、m3、m4、m5、及びm6は電荷を均衡させるのに必要な0以上の数を表し、好ましくは0〜4の数であり、さらに好ましくは0〜1の数であり、分子内で塩を形成する場合には0である。
【0131】次に、発明の実施の形態の説明で詳細に述べた、特に好ましい技術で使われる色素の具体例だけを以下に示す。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例。
【0133】
【化13】


【0134】本発明の一般式(II)(下位概念の一般式(IV) を含む)で表される化合物の具体例。
【0135】
【化14】


【0136】
【化15】


【0137】
【化16】


【0138】
【化17】


【0139】
【化18】


【0140】
【化19】


【0141】
【化20】


【0142】本発明の一般式(III)(下位概念の一般式(V)を含む)で表される化合物の具体例。
【0143】
【化21】


【0144】
【化22】


【0145】
【化23】


【0146】
【化24】


【0147】
【化25】


【0148】
【化26】


【0149】
【化27】


【0150】
【化28】


【0151】本発明の色素は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds) 」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer) 著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry) 」、第18章、第14節、第482から515項、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422項、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、及び上述した特許・文献(具体例の説明のために引用したもの)などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0152】本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、白黒用感光材料でもよいが、一般用もしくは映画用のカラーネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルムおよびカラー反転ペーパーのような種々のハロゲン化銀カラー感光材料が好ましく、また、特公平2-32615 、実公平3-39784 に記載されているレンズ付きフィルムユニット用感光材料が好適である。
【0153】本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる写真乳剤にはハロゲン化銀として臭化銀、ヨウ臭化銀、塩臭化銀、ヨウ化銀、ヨウ塩化銀、ヨウ臭塩化銀、塩化銀のいずれを用いてもよいが、乳剤最外表面のハロゲン組成が0.1mol%以上、さらに好ましくは1mol%以上、特に好ましくは5mol%以上のヨードを含むことによりより強固な多層吸着構造が構築できる。
【0154】粒子サイズ分布は、広くても狭くてもいずれでもよいが、狭い方がよりこのましい。
【0155】写真乳剤のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体、斜方十二面体のような規則的(regular)な結晶体を有するもの、また球状、板状などのような変則的(irregular)な結晶形をもつもの、高次の面((hkl)面)をもつもの、あるいはこれらの結晶形の粒子の混合からなってもよいが、好ましくは平板状粒子であり、平板状粒子については下記に詳細に記述する。高次の面を持つ粒子についてはJournal of Imaging Science誌、第30巻(1986年)の247頁から254頁を参照することができる。
【0156】また、本発明に用いられるハロゲン化銀写真乳剤は、上記のハロゲン化銀粒子を単独または複数混合して含有していても良い。ハロゲン化銀粒子は、内部と表層が異なる相をもっていても、接合構造を有するような多相構造であっても、粒子表面に局在相を有するものであっても、あるいは粒子全体が均一な相から成っていても良い。またそれらが混在していてもよい。これら各種の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型のいずれでもよい。
【0157】本発明に使用するハロゲン化銀乳剤は、本発明に開示する増感色素を吸着せしめた、高い平板状ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤が好ましい。本発明で好ましく用いられる平板乳剤は、アスペクト比(ハロゲン化銀粒子の円相当直径/粒子厚み)2以上100以下のハロゲン化銀粒子が、乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の50%(面積)以上存在する乳剤であり、好ましくはアスペクト比5以上80以下、より好ましくはアスペクト比8以上80以下のハロゲン化銀粒子が、乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の50%(面積)以上存在する乳剤であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは85%以上存在する乳剤である。ここで、平板状ハロゲン化銀粒子に於ける円相当直径とは、2つの対向する平行または平行に近い主平面の円相当直径(該主平面と同じ投影面積を有する円の直径)、粒子厚みとは該主平面間の距離を表す。また、アスペクト比が100を越える場合には、この乳剤を塗布物として完成するまでの工程において、乳剤が変形したり、破壊されてしまう問題が生じ、好ましくない。
【0158】平板状粒子の円相当直径は0.3μm以上、好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.5〜5.0μm、さらに好ましくは0.5〜3.0μmである。粒子厚さは1.5μm未満、好ましくは0.2μm未満より好ましくは0.1μm未満、更に好ましくは0.07μm未満、特に好ましくは0.05〜1.0μmである。さらに粒子厚みの変動係数が30%以下の、厚みの均一性が高い乳剤も好ましい。さらに特開昭63−163451号に記載されている粒子の厚みと双晶面の面間距離を規定した粒子も好ましい。平板粒子の粒子直径、粒子厚さの測定は米国特許第4,434,226号に記載の方法の如く粒子の電子顕微鏡写真により求めることができる。この様な高アスペクト比で且つ薄い平板粒子を調製する為に下記の技術が適用される。
【0159】本発明では、ハロゲン組成が塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀の平板ハロゲン化銀粒子が好ましく使用される。平板粒子は、(100)又は(111)かの主表面を持つものが好ましい。(111)主表面を有する平板粒子、以下これを(111)平板と呼ぶ、は普通三角形か六角形の面をもつ。一般的には分布がより均一になれば、より六角形の面を持つ平板粒子の比率が高くなる。六角形の単分散平板に関しては特公平5−61205に記載されている。
【0160】(100)面を主表面に持つ平板状粒子、以下(100)平板と呼ぶ、は長方形または正方形の形も持つ。この乳剤においては針状粒子より、隣接辺比が5:1未満の粒子が平板粒子と呼ばれる。塩化銀或いは塩化銀を多く含む平板粒子ににおいては、(100)平板粒子は本来(111)平板に比べて主表面の安定性が高い。(111)平板の場合は、(111)主表面を安定化させる事が必要であるが、それに関しては特開平9−80660号、特開平9−80656号、米国特許第5298388号に記載されている。
【0161】本発明において用いられる塩化銀或いは塩化銀の含有率の高い(111)平板に関しては下記の特許に開示されている。米国特許第4414306号、米国特許第4400463号、米国特許第4713323号、米国特許第4783398号、米国特許第4962491号、米国特許第4983508号、米国特許第4804621号、米国特許第5389509号、米国特許第5217858号、米国特許第5460934号。
【0162】本発明に用いられる高臭化銀(111)平板粒子に関しては下記の特許に記載されている。米国特許第4425425号、米国特許第4425426号、米国特許第443426号、米国特許第4439520号、米国特許第4414310号、米国特許第4433048号、米国特許第4647528号、米国特許第4665012号、米国特許第4672027号、米国特許第4678745号、米国特許第4684607号、米国特許第4593964号、米国特許第4722886号、米国特許第4722886号、米国特許第4755617号、米国特許第4755456号、米国特許第4806461号、米国特許第4801522、米国特許第4835322号、米国特許第4839268号、米国特許第4914014号、米国特許第4962015号、米国特許第4977074号、米国特許第4985350号、米国特許第5061609号、米国特許第5061616号、米国特許第5068173号、米国特許第5132203号、米国特許第5272048号、米国特許第5334469号、米国特許第5334495号、米国特許第5358840号、米国特許第5372927号。
【0163】本発明に用いられる(100)平板に関しては、下記の特許に記載されている。 米国特許第4386156号、米国特許第5275930号、米国特許第5292632号、米国特許第5314798号、米国特許第5320938号、米国特許第5319635号、米国特許第5356764号、欧州特許第569971号、欧州特許第737887号、特開平6−308648号、特開平9−5911号。
【0164】ハロゲン化銀乳剤は、一般に化学増感を行なって使用する。化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄増感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金増感)および還元増感を、それぞれ単独あるいは組み合わせて実施する。本発明においては、少なくともセレン増感されたハロゲン化銀乳剤が好ましい。即ちセレン増感単独、セレン増感及び他のカルコゲン増感及び/又は貴金属増感(特に金増感)との組合せが好ましいが、とくに好ましくはセレン増感及び貴金属増感との組合せである。
【0165】セレン増感においては、不安定セレン化合物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物については、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−271341号および同5−40324号各公報に記載がある。セレン増感剤の例には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオロメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類およびジアシルセレニド類が含まれる。なお、亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類やセレニド類のような比較的安定なセレン化合物(特公昭46−4553号および同52−34492号各公報記載)も、セレン増感剤として利用できる。
【0166】硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を増感剤として用いる。不安定硫黄化合物については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique (Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。硫黄増感剤の例には、チオ硫酸塩(例、ハイポ)、チオ尿素類(例、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N′−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例、チオアセトアミド)、ローダニン類(例、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキ類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソーオキサゾリジン−2−チオン類、ジポリスルフィド類(例、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物(例、システィン)、ポリチオン酸塩および元素状硫黄が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤として利用できる。
【0167】テルル増感においては、不安定テルル化合物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物については、カナダ国特許800958号、英国特許1295462号、同1396696号各明細書、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号および同5−303157号各公報に記載がある。テルル増感剤の例には、テルロ尿素類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルボモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、イソテルロシアナート類、テルロアミド類、テルロヒドラジド類、テルロエステル類(例、ブチルヘキシルテルロエステル)、テルロケトン類(例、テルロアセトフェノン)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類およびその他のテルル化合物(例、ポタシウムテルリド、テルロペンタチオネートナトリウム塩)が含まれる。
【0168】貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウムなどの貴金属の塩を増感剤として用いる。貴金属塩については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique (Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。金増感が特に好ましい。前述したように、本発明は金増感を行なう態様において特に効果がある。青酸カリウム(KCN)を含む溶液で乳剤粒子上の増感核から金を除去できることは、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)Vol 19322(1975)やジャーナル・イメージング・サイエンス(Journal of Imaging Science)Vol 3228(1988)で述べられている。これらの記載によれば、シアンイオンがハロゲン化銀粒子に吸着した金原子または金イオンをシアン錯体として遊離させ、結果として金増感を阻害する。本発明に従い、シアンの発生を抑制すれば、金増感の作用を充分に得ることができる。
【0169】金増感剤の例には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金および金セレナイドが含まれる。また、米国特許2642361号、同5049484号および同5049485号各明細書に記載の金化合物も用いることができる。還元増感においては、還元性化合物を増感剤として用いる。還元性化合物については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique(Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。還元増感剤の例には、アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、ヒドラジン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合物、レダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物および水素ガスが含まれる。また、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気によって、還元増感を実施することもできる。還元増感は、ハロゲン化銀粒子の形成時に施すのが好ましい。
【0170】増感剤の使用量は、一般に使用するハロゲン化銀粒子の種類と化学増感の条件により決定する。カルコゲン増感剤の使用量は、一般にハロゲン化銀1モル当り10-8〜10-2モルであり、10-7〜5×10-3モルであることが好ましい。貴金属増感剤の使用量は、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルであることが好ましい。化学増感の条件に特に制限はない。pAgは一般に6〜11であり、好ましくは7〜10である。pHは4〜10であることが好ましい。温度は40〜95°Cであることが好ましく、45〜85°Cであることがさらに好ましい。
【0171】本発明に用いられる写真乳剤の調製法等については特開平10−239789号の第63欄36行〜第65欄2行等が適用できる。また、カラ−カプラ−等の添加剤、写真感光材料への添加剤等、本発明が適用さる感光材料の種類、感光材料の処理等については特開平10−239789号の第65欄3行〜第73欄13行等が適用できる。さらに感光材料に用いられる磁気記録層、支持体、帯電防止剤、滑り剤、マット剤、感光材料用フイルムパトロ−ネ、感光材料のAPシステムへの適用等については特開平10−104809号公報の第35欄29行〜第43欄7行の記載等が適用できる。
【0172】本発明の感光材料の現像処理は、前述のRD.No.17643 の28〜29頁、同No.18716の 651左欄〜右欄、および同No.307105 の880 〜881 頁に記載された通常の方法が適用できる。本発明の処理液は白黒感光材料用でもよいが、カラ−感光材料用が好ましく、カラーネガフィルム用およびカラー反転フィルム用がさらに好ましい。本発明に使用されうるカラーネガフィルム用の処理液については特開平10−104809号公報第30欄44行〜第35欄8行の記載が適用できる。また、本発明に使用されうるカラー反転フィルム用の処理液については特開平10−104809号公報第35欄9行〜第35欄28行の記載が適用できる。本発明では全処理時間が4分以上8分以下が好ましいが、全処理は現像から乾燥までの工程を言う。
【0173】一般式(SR)で表される水溶性蛍光増白剤について詳細に説明する。一般式(SR)中、Y1、Y2、Y3およびY4は−OR51または−NR52R53で表され、R51、R52およびR53はアルキル基を表しそれぞれ同一でも異なっていてもよい。該アルキル基は直鎖または分岐のアルキル基であり、また、アルキル基の水素原子が他の基に置換されていてもよい。ここで置換しうる基としてはいかなるものでもよいが一般式〔A〕群および一般式〔B〕群から選ばれた置換基であることが好ましい。また、R51、R52およびR53で表されるアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、さらには1〜5がより好ましい。一般式〔A〕群および一般式〔B〕群中の置換基は親水性の基として一般に知られたものである。特に一般式〔A〕群の置換基は親水性の強い、いわゆる強親水性の基として知られたものである。
【0174】本発明においては、上記一般式(SR)で表される化合物は、Y1、Y2、Y3およびY4が前記条件■ないし■の少なくとも一つを満足する。また、一般式(SR)は、分子内中心(二重結合上の中心点)に分子平面外2回の回転軸を有する、いわゆるC2h点群に属する対称性を有することが好ましい。
【0175】ここで条件■とは一般式(SR)におけるY1、Y2、Y3およびY4が合計4つ以上の一般式〔A〕群から選ばれた置換基を有する条件である。
【0176】条件■を満足する場合、一般式(SR)の化合物におけるスチルベンを構成しているベンゼン環の2つのスルホ基の個数と合わせると、分子内に合計6つ以上の強親水性の基を有することに相当する。
【0177】ここで、一般式〔A〕群から選ばれた置換基の数としては、好ましくは偶数であり、その数としては8個以下が好ましく、6個以下が好ましい。一般式〔A〕群から選ばれた置換基の数は多すぎても少なすぎても残色の防止効果が低下する点で好ましくない。
【0178】また、条件■は一般式(SR)におけるY1、Y2、Y3およびY4が合計2つの〔A〕群から選ばれた置換基と合計2つ以上の一般式〔B〕群から選ばれた置換基を有する条件である。条件■を満足する場合、一般式(SR)の化合物はスチルベンを構成しているベンゼン環の2つのスルホ基の個数と合わせると、分子内に合計4つの強親水性の基と合計2以上の親水性の基を有することに相当する。
【0179】ここで、一般式〔B〕群から選ばれた置換基の数としては、好ましくは偶数であり、その数としては10個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0180】また、条件■は一般式(SR)におけるY1、Y2、Y3およびY4が1つの〔A〕群から選ばれた置換基と合計3つ以上の一般式〔B〕群から選ばれた置換基を有する条件である。
【0181】本発明に関する前記一般式(SR)で表される化合物のうち、より好ましい化合物は上記条件■ないし■のうち、条件■または■を満足するものである。さらに条件■を満足するものがより好ましい。
【0182】上記条件■ないし■のごとき、強親水性の基を有する前記一般式(SR)で表される化合物はスチルベン系蛍光増白剤として一般に知られた構造である。しかしながら、例えば特開昭62−257154号に記載の(I−30)および(I−31)、特開平4−249243号に記載されている化合物(比較−1)の如く従来分子内に合計4つ以上の強親水性の置換基を有する蛍光増白剤は、通常分子内の2つのトリアジン環がアニリノ基を持つ特徴があった。また、トリアジン環がアニリノ基を有さない従来のスチルベン蛍光増白剤においても上記■および■の条件のいずれかを満足する具体的化合物は知られていなかった。
【0183】本発明の前記条件■または■のいずれかを満足する前記一般式(SR)で表されるスチルベン系蛍光増白剤は、トリアジン環がY1、Y2、Y3およびY4のごとくアニリノ基を有さずに強親水性の基を有する特徴がある点において特開平4−249243号に記載の蛍光増白剤と異なる。
【0184】本発明における一般式(SR)の化合物はY1、Y2、Y3およびY4は上記のごとき特徴を有するものであり、Y1、Y2、Y3およびY4の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、2−ヒドロキシエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、4−ヒドロキシブトキシ、2−ヒドロキシエチルアミノ、3−ヒドロキシプロピルアミノ、4−ヒドロキシブチルアミノ、2−ヒドロキシエチルエチルアミノ、3−ヒドロキシプロピルプロピルアミノ、4−ヒドロキシブチルブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、ジ2−ヒドロキシエチルアミノ、ジ3−ヒドロキシプロピルアミノ、ジヒドロキシブチルアミノ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、2−スルホエチルアミノ、3−スルホプロピルアミノ、4−スルホブチルアミノ、ジ2−スルホエチルアミノ、ジ3−スルホプロピルアミノ、ジ4−スルホブチルアミノ、2−スルホエチルメチルアミノ、3−スルホプロピルメチルアミノ、4−スルホブチルメチルアミノ、2−スルホエチルエチルアミノ、3−スルホプロピルエチルアミノ、4−スルホブチルエチルアミノ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ、4−カルボキシブトキシ、2−カルボキシエチルアミノ、3−カルボキシプロピルアミノ、4−カルボキシブチルアミノ、ジ2−カルボキシエチルアミノ、ジ3−カルボキシプロピルアミノ、ジ4−カルボキシブチルアミノ、2−カルボキシエチルメチルアミノ、3−カルボキシプロピルメチルアミノ、4−カルボキシブチルメチルアミノ、2−カルボキシエチルエチルアミノ、3−カルボキシプロピルエチルアミノ、4−カルボキシブチルエチルアミノ、2−スルホエトキシ、3−スルホキシプロポキシ、4−スルホキシブトキシ、2−スルホキシエチルアミノ、3−スルホキシプロピルアミノ、4−スルホキシブチルアミノ、ジ2−スルホキシエチルアミノ、ジ3−スルホキシプロピルアミノ、ジ4−スルホキシブチルアミノ、2−スルホキシエチルメチルアミノ、3−スルホキシプロピルメチルアミノ、4−スルホキシブチルメチルアミノ、2−スルホキシエチルエチルアミノ、3−スルホキシプロピルエチルアミノ、4−スルホキシブチルエチルアミノ、トリメチルアンモニオメチルアミノ、トリメチルアンモニオエチルアミノ、トリメチルアンモニオプロピルアミノ、トリエチルアンモニオメチルアミノ、トリエチルアンモニオエチルアミノ、トリエチルアンモニオプロピルアミノ等が挙げられる。
【0185】さらに好ましくは、メトキシ、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシエチルアミノ、2−スルホエチルアミノ、ジ2−スルホエチルアミノ、2−カルボキシエチルアミノ、ジ2−カルボキシエチルアミノ、ジ2−ヒドロキシエチルアミノ等が挙げられる。
【0186】本発明における前記一般式(SR)の化合物の好ましい親水性は、 logP値が−30以上かつ−4以下、さらに好ましくは−18以上かつ−7以下である。ただし、ここで logP値とは、該化合物のオクタノール/水の2成分系における分配比P(=〔オクタノール中濃度〕/〔水中濃度〕)の対数値で定義される値を表す。 logP値が−4以上では、感材膜中から処理液への溶出が困難になるとともに残色改良が小さくなり、また、理由は明らかではないが−30以下では増白剤の残色改良効果が小さくなるため好ましくない。
【0187】また、本発明における一般式(SR)の化合物は、種々の処理条件下におけるゼラチン膜中の拡散係数が大きいことが望ましい。例えばpH5の水溶液中における拡散係数が1.0 ×10-8cm2 /sec以上が好ましく、2.0 ×10-8cm2/sec以上がより好ましい。また、pH10の水溶液中においては2.0 ×10-8cm2/sec以上が好ましく、5.0 ×10-8cm2 /sec以上がより好ましい。拡散係数は、蛍光増白剤水溶液中の蛍光増白剤分子がゼラチン膜を隔て隣接する水中へ透過拡散する様子を分光光度計でモニターする事により測定することが可能であり、具体的には Journal of Polymer Science, Vol. 30、2075(1985)に記載の方法がある。
【0188】本発明で用いられる一般式(SR)のジアミノスチルベン系蛍光増白剤は、具体的な構造としてはY1、Y2、Y3およびY4が以下に示した原子団で表されるものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0189】
【表1】


【0190】
【表2】


【0191】
【表3】


【0192】
【表4】


【0193】
【表5】


【0194】一般式(SR)の化合物は、従来公知の方法によって合成することができる。例えば、4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸ナトリウムと塩化シアヌルを縮合して4,4′−ビストリアジニルアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸ナトリウムを合成した後、アルコール類もしくはアミン類を縮合させて合成することができる。具体的には、以下の方法によって合成することができる。蛍光増白剤の合成例を以下に示す。
化合物(SR−13)の合成シアヌルクロリド10.2gをアセトン100mlに溶解し、氷冷しながら10%のジアミノスチルベンジスルホン酸ナトリウム水溶液100gを20分かけて滴下した。この間、炭酸ナトリウム水溶液で反応液のpHを5〜7に保った。さらに30分撹拌を続けた後、18%のタウリン水溶液100gを加えた。その後、加熱してアセトンを留去し、内温を95℃にして3時間撹拌した。この間、炭酸ナトリウム水溶液で反応液のpHを6以上に保った。反応終了後、冷却し塩析により淡黄色結晶12gを得た。このものは、マススペクトルおよびNMRから化合物(SR−13)であることを確認した。
λmax =348nm(ε=4.65×104 、H2O)
【0195】化合物(SR−25)の合成シアヌルクロリド10.2gをアセトン100mlに溶解し、氷冷しながら10%のジアミノスチルベンジスルホン酸ナトリウム水溶液100gを20分かけて滴下した。この間、炭酸ナトリウム水溶液で反応液のpHを5〜7に保った。さらに30分撹拌を続けた後、内温を40℃に上げて18%のタウリン水溶液35gを加えた。1時間加熱した後、アセトンを留去し、20%のN−メチルタウリン水溶液を50g加え、内温を95℃にして3時間撹拌した。この間、炭酸ナトリウム水溶液で反応液のpHを6以上に保った。反応終了後、冷却し塩析により淡黄色結晶8.3gを得た。このものは、マススペクトルおよびNMRから化合物(SR−25)であることを確認した。
λmax =345nm(ε=4.38×104 、H2O)
また、他の化合物および比較用の化合物についても上記と同様の方法により容易に合成できる。工業化学雑誌第60巻第5号P.604(1957)に記載の方法がある。
【0196】一般式(SR)の化合物は、単一種で用いた場合および他のジアミノスチルベン系化合物の複数種類とを併用した場合のいずれも有効である。また、一般式(SR)の化合物は2種以上混合して用いてもよい。
【0197】一般式(SR)の化合物と併用しうる蛍光増白剤としては、市販のジアミノスチルベン系蛍光増白剤を用いてもよい。市販の化合物としては例えば染色ノート第19版(色染社)P.165〜P.168に記載されており、ここに記載されている製品の中でも Whitex RP、または Whitex BRF liq. が好ましい。
【0198】本発明の一般式(SR)の化合物の処理液中の好ましい濃度はランニング液中において1×10-4〜5×10-2モル/リットル、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2モル/リットルである。補充液中の濃度においてはランニング液の濃度を一定に保つために必要な濃度、具体的には2×10-4〜0.1モル/リットルであることが好ましい。
【0199】
【実施例】次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0200】実施例1下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー感光材料である試料(101)を作製した。
(感光層組成)各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤 ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤 ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤 ExS:増感色素各成分に対応する数字は、g/m2 単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については、銀換算の塗布量を示す。ただし増感色素については、同一層のハロゲン化銀1モルに対する塗布量をモル単位で示す。
(試料101)
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.155 沃臭化銀乳剤P 銀 0.01 ゼラチン 0.87 ExC−1 0.002 ExC−3 0.002 Cpd−2 0.001 HBS−1 0.004 HBS−2 0.002第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.066 ゼラチン 0.407 ExM−1 0.050 ExF−1 2.0×10-3 HBS−1 0.074 固体分散染料 ExF−2 0.015 固体分散染料 ExF−3 0.020第3層(中間層)
沃臭化銀乳剤O 0.020 ExC−2 0.022 ポリエチルアクリレートラテックス 0.085 ゼラチン 0.294第4層(低感度赤感乳剤層)
沃臭化銀乳剤A 銀 0.323 ExS−1 5.5×10-4 ExS−2 1.0×10-5 ExS−3 2.4×10-4 ExC−1 0.109 ExC−3 0.044 ExC−4 0.072 ExC−5 0.011 ExC−6 0.003 Cpd−2 0.025 Cpd−4 0.025 HBS−1 0.17 ゼラチン 0.80第5層(中感度赤感乳剤層)
沃臭化銀乳剤B 銀 0.28 沃臭化銀乳剤C 銀 0.54 ExS−1 5.0×10-4 ExS−2 1.0×10-5 ExS−3 2.0×10-4 ExC−1 0.14 ExC−2 0.026 ExC−3 0.020 ExC−4 0.12 ExC−5 0.016 ExC−6 0.007 Cpd−2 0.036 Cpd−4 0.028 HBS−1 0.16 ゼラチン 1.18第6層(高感度赤感乳剤層)
沃臭化銀乳剤D 銀 1.47 ExS−1 3.7×10-4 ExS−2 1×10-5 ExS−3 1.8×10-4 ExC−1 0.18 ExC−3 0.07 ExC−6 0.029 ExC−7 0.010 ExY−5 0.008 Cpd−2 0.046 Cpd−4 0.077 HBS−1 0.25 HBS−2 0.12 ゼラチン 2.12第7層(中間層)
Cpd−1 0.089 固体分散染料ExF−4 0.030 HBS−1 0.050 ポリエチルアクリレートラテックス 0.83 ゼラチン 0.84第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
沃臭化銀乳剤E 銀 0.560 ExS−6 1.7×10-4 ExS−10 4.6×10-4 Cpd−4 0.030 ExM−2 0.096 ExM−3 0.028 ExY−1 0.031 HBS−1 0.085 HBS−3 0.003 ゼラチン 0.58第9層(低感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤F 銀 0.39 沃臭化銀乳剤G 銀 0.28 沃臭化銀乳剤H 銀 0.35 ExS−4 2.4×10-5 ExS−5 1.0×10-4 ExS−6 3.9×10-4 ExS−7 7.7×10-5 ExS−8 3.3×10-4 ExM−2 0.36 ExM−3 0.045 HBS−1 0.28 HBS−3 0.01 HSB−4 0.27 ゼラチン 1.39第10層(中感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤I 銀 0.45 ExS−4 5.3×10-5 ExS−7 1.5×10-4 ExS−8 6.3×10-4 ExC−6 0.009 ExM−2 0.031 ExM−3 0.029 ExY−1 0.006 ExM−4 0.028 HBS−1 0.064 HBS−3 2.1×10-3 ゼラチン 0.44第11層(高感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤I 銀 0.19 沃臭化銀乳剤J 銀 0.80 ExS−4 4.1×10-5 ExS−7 1.1×10-4 ExS−8 4.9×10-4 ExC−6 0.004 ExM−1 0.016 ExM−3 0.036 ExM−4 0.020 ExM−5 0.004 ExY−5 0.003 ExM−2 0.013 Cpd−3 0.004 Cpd−4 0.007 HBS−1 0.18 ポリエチルアクリレートラテックス 0.099 ゼラチン 1.11第12層(イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 銀 0.047 Cpd−1 0.16 固体分散染料ExF−5 0.020 固体分散染料ExF−6 0.020 油溶性染料ExF−7 0.010 HBS−1 0.082 ゼラチン 1.057第13層(低感度青感乳剤層)
沃臭化銀乳剤K 銀 0.18 沃臭化銀乳剤L 銀 0.20 沃臭化銀乳剤M 銀 0.07 ExS−9 4.4×10-4 ExS−10 4.0×10-4 ExC−1 0.041 ExC−8 0.012 ExY−1 0.035 ExY−2 0.71 ExY−3 0.10 ExY−4 0.005 Cpd−2 0.10 Cpd−3 4.0×10-3 HBS−1 0.24 ゼラチン 1.41第14層(高感度青感乳剤層)
沃臭化銀乳剤N 銀 0.75 ExS−9 3.6×10-4 ExC−1 0.013 ExY−2 0.31 ExY−3 0.05 ExY−6 0.062 Cpd−2 0.075 Cpd−3 1.0×10-3 HBS−1 0.10 ゼラチン 0.91第15層(第1保護層)
沃臭化銀乳剤O 銀 0.30 UV−1 0.21 UV−2 0.13 UV−3 0.20 UV−4 0.025 F−18 0.009 HBS−1 0.12 HBS−4 5.0×10-2 ゼラチン 2.3第16層(第2保護層)
H−1 0.40 B−1(直径1.7μm) 5.0×10-2 B−2(直径1.7μm) 0.15 B−3 0.05 S−1 0.20 ゼラチン 0.75更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1ないしW−5、B−4ないしB−6、F−1ないしF−18及び、鉄塩、鉛塩、金塩、白金塩、パラジウム塩、イリジウム塩、ルテニウム塩、ロジウム塩が含有されている。また、第8層の塗布液にハロゲン化銀1モル当たり8.5×10-3グラム、第11層に7.9×10-3グラムのカルシウムを硝酸カルシウム水溶液で添加し、試料を作製した。
【0201】上記に略号で示した乳剤の AgI含量及び粒子サイズ、表面ヨード含有率等を下記表6に示す。表面ヨード含有率はXPSにより下記の如く調べることができる。試料を1×10torr移管の真空中で−115℃まで冷却し、プローブX線としてMgKαをX線源電圧8kV、X線電流20mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d5/2電子について測定し、測定されたピークの積分強度を感度因子で補正し、これらの強度比から表面のヨード含有率を求めた。
【0202】
【表6】


【0203】表6において、(1)乳剤L〜Oは特開平2−191938号の実施例に従い、二酸化チオ尿素とチオスルフォン酸を用いて粒子調製時に還元増感されている。
【0204】(2)乳剤A〜Oは特開平3−237450号の実施例に従い、各感光層に記載の分光増感色素とチオシアン酸ナトリウムの存在下に金増感、硫黄増感とセレン増感が施されている。
【0205】(3)平板状粒子の調製には特開平1−158426号の実施例に従い、低分子量ゼラチンを使用している。
【0206】(4)平板状粒子には特開平3−237450号に記載されているような転位線が高圧電子顕微鏡を用いて観察されている。
【0207】有機固体分散染料の分散物の調製下記、ExF−2を次の方法で分散した。即ち、水21.7ミリリットル及び5%水溶液のp−オクチルフェノキシエトキシエトキシエタンスルホン酸ソーダ3ミリリットル並びに5%水溶液のp−オクチルフェノキシポリオキシエチレンエーテル(重合度10)0.5gとを700ミリリットルのポットミルに入れ、染料ExF−2を5.0gと酸化ジルコニウムビーズ(直径1mm)500ミリリットルを添加して内容物を2時間分散した。この分散には中央工機製のBO型振動ボールミルを用いた。分散後、内容物を取り出し、12.5%ゼラチン水溶液8gに添加し、ビーズを濾過して除き、染料のゼラチン分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.44μmであった。
【0208】同様にして、ExF−3、ExF−4及びExF−6の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.24μm、0.45μm、0.52μmであった。ExF−5は欧州特許出願公開(EP)第549,489A号明細書の実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0209】試料(101)の各層の調整において、増感色素を複数使用する層の場合、増感色素をあらかじめ混合した後に乳剤に添加した。
【0210】また、第11層においてExS−4、ExS−7およびExS−8の3種類の増感色素を加える代わりに、表7に示すように、60℃において第一色素を5.13×10-4 mol/molAg添加して30分間攪拌した後、第二色素と第三色素をそれぞれ5.13×10-4 mol/molAgづつ添加してさらに60℃で60分間攪拌した以外は試料(101)と同様の塗布試料(102)〜(111)を作製した。
【0211】試料(101)〜(111)の第11層(高感度緑感層)乳剤の単位面積当たりの光吸収強度の測定は、各々の試料の第11層の塗布直前の乳剤をスライドガラス上に薄く塗布し、カールツアイス株式会社製の顕微分光光度計MSP65を用いて以下の方法でそれぞれの粒子の透過スペクトルおよび反射スペクトルを測定して、吸収スペクトルを求めた。透過スペクトルのリファレンスは粒子の存在しない部分を、反射スペクトルは反射率の分かっているシリコンカーバイドを測定してリファレンスとした。測定部は直径1μmの円形アパチャー部であり、粒子の輪郭にアパーチャー部が重ならないように位置を調整して14000cm-1(714nm)から28000cm-1(357nm)までの波数領域で透過スペクトル及び反射スペクトルを測定し、1−T(透過率)−R(反射率)を吸収率Aとして吸収スペクトルを求めた。ハロゲン化銀の吸収を差し引いて吸収率A’とし、−Log(1−A’)を波数(cm-1)に対して積分した値を1/2にして単位表面積あたりの光吸収強度とした。積分範囲は14000cm-1から28000cm-1までである。この際、光源はタングステンランプを用い、光源電圧は8Vとした。光照射による色素の損傷を最小限にするため、一次側のモノクロメータを使用し、波長間隔は2nm、スリット幅を2.5nmに設定した。
【0212】上記各層の形成に用いた化合物は、以下に示すとおりである。
【0213】
【化29】


【0214】
【化30】


【0215】
【化31】


【0216】
【化32】


【0217】
【化33】


【0218】
【化34】


【0219】
【化35】


【0220】
【化36】


【0221】
【化37】


【0222】
【化38】


【0223】
【化39】


【0224】
【化40】


【0225】
【化41】


【0226】
【化42】


【0227】
【化43】


【0228】
【化44】


【0229】
【化45】


また、発色現像処理工程および各処理液の調製は下記に従って行った。
【0230】(処理方法A)
工 程 処理時間 処理温度発色現像 2分0秒 41℃漂 白 20秒 41℃定着 (1) 20秒 41℃定着 (2) 20秒 41℃安定 (1) 13秒 41℃安定 (2) 13秒 41℃安定 (3) 13秒 41℃乾 燥 30秒 60℃
【0231】
発色現像液 ジエチレントリアミン五酢酸 2.0g 4、5−ジヒドロキシベンゼン−1、3− ジスルホン酸ナトリウム 0.4g ジナトリウム−N、N−ビス(スルホナートエチル)
ヒドロキシルアミン 10.0g 亜硫酸ナトリウム 4.0g 臭化カリウム 1.6g ジエチレングリコール 10.0g エチレン尿素 3.0g 2−メチル−4−〔N−エチル−N− (β−ヒドロキシエチル)アミノ〕
アニリン硫酸塩 5.7g 炭酸カリウム 39.0g 水を加えて 1.0L pH(水酸化カリウムと硫酸にて調整) 10.10
【0232】
漂白液 1,3−ジアミノプロパン四酢酸 第二鉄アンモニウム一水塩 150.0g 臭化アンモニウム 50.0g コハク酸 50.0g イミダゾール 50.0g 水を加えて 1.0L pH(アンモニア水と硝酸にて調整) 4.2
【0233】
定着液 チオ硫酸アンモニウム水溶液(750g/L) 270.0ml 重亜硫酸アンモニウム水溶液(72%) 20.0g イミダゾール 50.0g 3−メルカプト−トリアゾール 1.0g エチレンジアミン四酢酸 8.0g 水を加えて 1.0L pH(アンモニア水と酢酸にて調整) 7.0
【0234】
安定液 p−トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03g p−ノニルフェノキシポリグリシドール (グリシドール平均重合度10) 0.4g エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05g 1,2,4−トリアゾール 1.3g 1,4−ビス(1,2,4−トリアゾール −1−イルメチル)ピペラジン 0.75g 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.10 水を加えて 1.0L pH 8.5
【0235】また、(処理方法A)の現像処理液、漂白液および定着液の各溶液に、SR−13、SR−14、SR−21、SR−52、SR−73、SR−74を3ミリモル/リットルづつ添加した処理液で処理する以外は(処理方法A)と同じである方法を(処理方法B)〜(処理方法G)とした。
【0236】塗布試料(101)〜(111)の感度を調べるために、富士FW型感光計(富士写真フイルム株式会社)の光に光学ウエッジと緑色フィルターを通して1/100秒露光を与え、(処理方法B)にて発色現像処理を行い、マゼンタ濃度測定を行った。
【0237】感度はかぶり濃度+0.2の濃度を与えるに要する露光量の逆数で表し、試料(101)の感度を100としたときの相対値で示した。結果を表7に示した。
【0238】
【表7】


【0239】増感色素の残色は以下のようにして求めた。
【0240】未露光の試料(101)、(102)および(104)を(処理方法A)〜(処理方法G)で処理した後、マゼンタ色像濃度を測定し、さらに41℃、10リットル/min の流水で1時間水洗を行った。水洗の前後のマゼンタ色像の濃度差を求めた。この追加水洗による濃度値の変化が大きいほどラボ間差の起き易さの潜在的目安となる。結果を表8に示した。
【0241】
【表8】


【0242】表8から分かるようにジアミノスチルベン化合物は、増感色素の多層吸着により悪化した増感色素の残色を効果的に低減する効果が高いことがわかる。
【0243】脱銀性は次のようにして測定した。試料(101)、(102)および(104)に富士FW型感光計(富士写真フイルム株式会社)の光源にて0.1 秒の均一なグレー露光を与え、(処理方法B)により処理を行った後、蛍光X線分析法により、露光部に残存している銀量を測定した。結果を表8に示した。
【0244】表8から分かるように、このような処理方法を用いることで、色素多層吸着により脱銀が阻害されているハロゲン化銀写真感光材料でも、ジアミノスチルベン化合物の作用により、迅速な脱銀処理が可能となるという効果もあることが分かった。
【0245】
【発明の効果】本発明のハロゲン化銀写真感光材料および処理方法によれば、光吸収強度を高めるために増感色素を多層吸着させた場合でも、処理による増感色素の残色が少なく、脱銀の阻害も起こらないハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法において、処理工程に用いる処理液の少なくとも一つが下記一般式(SR)で表される化合物の少なくとも1種を含有する処理液によって処理されることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
一般式(SR)
【化1】


一般式(SR)中、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は同一でも異なっていてもよく−OR51または−NR5253(R51、R52およびR53はそれぞれ水素原子またはアルキル基)で表され、かつ以下の条件■ないし■の少なくとも一つを満足する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を合計4つ以上有する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を合計2つ有し、かつ一般式〔B〕群から選ばれた置換基を合計2つ以上有する。
■ 一般式(SR)において、Y1 、Y2 、Y3 およびY4 は一般式〔A〕群から選ばれた置換基を1つ有し、かつ一般式〔B〕群から選ばれた置換基を合計3つ以上有する。 一般式〔A〕群:−SO3 M、−OSO3 M、−COOM、−NR3 X一般式〔B〕群:−OR、−NR′R″、−CN、−NHCONH2一般式〔A〕群中、Xはハロゲン原子、Rはアルキル基を表す。また、一般式(SR)および〔A〕において、Mは水素原子、アルカリ金属、テトラアルキルアンモニウムまたはピリジニウムを表す。一般式〔B〕群中、R、R′、及びR″は水素原子またはアルキル基であり、R′、R″は互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項2】 3環以上縮環した塩基性核を有する増感色素を含むハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、請求項1記載の処理方法。
【請求項3】 芳香族基を少なくとも1つ持つ増感色素を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】 アスペクト比2以上100以下のハロゲン化銀粒子が、乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の50%(面積)以上存在する乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
【請求項5】 セレン増感されているハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法。
【請求項6】 ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多層吸着しており、かつ二層目増感色素の構造が一層目増感色素と異っており、かつ二層目増感色素がカチオン色素とアニオン色素の両方を含有するハロゲン化銀写真感光材料を処理することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項7】 全処理時間が4分以上8分以内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。

【公開番号】特開2001−75247(P2001−75247A)
【公開日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−262090
【出願日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】