説明

ハンズフリーインターホン装置

【課題】 音声とノイズの特徴の違いを自己相関を用いて求め、この結果を送話表示部の制御に活用することで、送話表示部点灯動作の違和感を削減する。
【解決手段】
居室親機2に居室親機2のマイク22で集音された音声が玄関子機1のスピーカ13で報音される送話状態と、玄関子機1のマイク12で集音した音声が居室親機2のスピーカ23で報音される受話状態とを切り替えて通話路を制御する通話制御部24と、送話状態であることを表示する送話表示部27とを備え、居室親機2にマイク22が集音した音の自己相関を演算して音声の有無を判断する音声判定部29と、音声判定部29の判定結果と通話路の状態とに基づいて送話表示部27の点滅を制御する送話表示制御部28とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玄関子機と居室親機を備えたハンズフリーインターホン装置に関し、特に居室親機からの音声を玄関子機に伝送する送話路が形成されている状態を表示する送話表示部を居室親機に備えたハンズフリーインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンズフリーインターホン装置の居室親機には、通話時に居住者の声が玄関子機から出力されていることを居住者に通知するための送話表示部が設けられたものが普及している。このような従来のハンズフリーインターホン装置では、居室親機のマイクで集音した送話音声の大きさと玄関子機のマイクが集音した受話音声の大きさを比較して大きい方の音声を優先させて通話路を形成するボイススイッチが設けられ、送話路が形成された時に送話表示部を点灯させている(例えば、特許文献1参照)。
また、騒音を考慮して送話に切り替える閾値は、固定せずに周囲のノイズレベルを学習して学習結果を反映させる構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−64644号公報
【特許文献2】特開2000−305579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のボイススイッチの切換信号を受けて送話表示部の点灯を制御する構成は、入力信号の大きさが判定基準となっているため、居室親機側のノイズレベルが玄関子機からの受話音声のレベルを越えると居住者が喋っていると判断して送話路を形成する。この場合、送話表示部が点灯してしまうため、居住者が喋っていない場合でも送話表示部が点灯する状態が発生し、居住者が違和感を感じる場合があった。
また、ノイズレベルを学習して検出閾値を設定するよう構成したものであっても、非定常な雑音を選別することは難しかったため、同様に居住者が喋っていなくても送話表示部が点灯する場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、自己相関を用いて音声とノイズを判別し、この結果を送話表示部の制御に活用することで、送話表示部点灯動作の違和感を削減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、玄関等の住戸外に設置されて来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を備えた玄関子機と、住戸内に設置されて玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有し、居室親機が居室親機のマイクが集音した音声を玄関子機のスピーカで報音する送話状態と、玄関子機のマイクで集音した音声を居室親機のスピーカで報音する受話状態とを切り替え制御して通話路を形成する通話制御部と、送話状態であることを表示する送話表示部とを備えたハンズフリーインターホン装置において、居室親機は、居室親機のマイクが集音した音の自己相関を演算して音声の有無を判断する音声判定部と、音声判定部の判定結果と通話路の状態とに基づいて送話表示部の点灯を制御する送話表示制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、自己相関を演算して音声の特徴を抽出して音声とノイズを判別するため、集音するノイズの音量が大きい場合でも音声と判断することが無くなる。よって、単に送話音量と受話音量を比べて判断して点灯制御していた従来の形態に比べて居住者音声を精度良く認識でき、送話表示部の点灯動作の違和感を無くすことができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、音声判定部は、5〜20msの時間範囲において自己相関演算を実施し、演算値が予め設定した基準以上のピークを検出した場合に集音した音が音声であると判断することを特徴とする。
この構成によれば、音声の特徴を抽出でき、ノイズと音声の違いを良好に判別できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、通話制御部は、玄関子機のマイクが集音する音の大きさ及び居室親機のマイクが集音する音の大きさを比較して通話路を切り替えるボイススイッチにより通話路の送話/受話を切り替えることを特徴とする。
この構成によれば、送話路/受話路の切り替えはボイススイッチにより実施することで、音声が途切れることなく切り替えでき、通話時の違和感が生じない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自己相関を演算して音声の特徴を抽出して音声とノイズを判別するため、集音するノイズの音量が大きい場合でも音声と判断することが無くなる。よって、単に送話音量と受話音量を比べて判断して点灯制御していた従来の形態に比べて居住者音声を精度良く認識でき、送話表示部の点灯動作の違和感を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るハンズフリーインターホン装置の一例を示すブロック図である。
【図2】音声の自己相関の演算例を示し、(a)は自己相関、(b)は規格化した自己相関である。
【図3】図2の自己相関に対比するためのノイズの自己相関の演算例を示し、(a)は自己相関、(b)は規格化した自己相関である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るハンズフリーインターホン装置のブロック図を示し、1は玄関等の住戸外に設置されて来訪者等が居住者を呼び出して通話する機能を備えた玄関子機、2は住戸内に設置されて玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機であり、両者は伝送線L1により接続されている。
【0012】
玄関子機1は、呼出操作する操作部11、通話するためのマイク12及びスピーカ13、このマイク12及びスピーカ13を制御する音声処理部14、来訪者を撮像するためのカメラ15、カメラ15が撮像した映像の変調処理等を行う映像処理部16、居室親機2と通信するための子機通信処理部17等を備えている。
【0013】
居室親機2は、応答操作や各種設定操作を行う操作部21、通話するためのマイク22及びスピーカ23、マイク22及びスピーカ23を制御すると共に玄関子機1と居室親機2の間の通話路を制御する通話制御部24、玄関子機1から伝送された映像信号の復調処理等を行う映像処理部25、復調された映像を表示するモニタ26、送話状態であることを点灯表示するLED(図示せず)を備えた送話表示部27、送話表示部27を制御する送話表示制御部28、マイク22が集音した音が音声であるか判定する音声判定部29、居室親機2を制御する親機CPU30、玄関子機1と通信するための親機通信処理部31等を備えている。
【0014】
通話制御部24はボイススイッチ24aを備えて、居室親機2のマイク22が集音した音のレベルと玄関子機1が集音した音のレベルとを比較して大きい方の音を優先させる制御を行う。具体的に通話路形成時は、居住者の音声のレベルと来訪者の音声のレベルを比較して、居住者の方が大きい場合は送話路を形成し、来訪者の方が大きい場合は受話路を形成する。
また音声判定部29は、DSPから成る自己相関演算部29a、及び音声を符号化する音声CODEC29bを備え、居室親機2のマイク22が集音した音が音声であるかノイズであるか判別するために自己相関を演算する。
【0015】
このように構成されたハンズフリーインターホン装置は以下のように動作する。但し、来訪者等により玄関子機1が呼出操作されたら居室親機2で呼出音を鳴動する動作、呼出操作を受けてカメラ15が起動して来訪者映像が居室親機2のモニタ26に表示される動作、居住者が居室親機2を応答操作して来訪者との間で通話が成される動作等は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは送話表示部27の点灯制御を中心に説明する。
【0016】
玄関子機1からの呼び出しを受けて居室親機2が応答操作されると、玄関子機1と居室親機2の間で通話路が形成される。ただし、ここでは居室親機2はハンズフリー応答を実施するため、通話路は送話路か受話路の何れか一方を形成して通話が行われる。そして、このとき音声判定部29は次のように動作する。
居室親機2のマイク22で収音された音が入力され、入力された音は音声CODEC29bにより符号化されて自己相関演算部29aにおいて自己相関が演算される。自己相関は、解析したい周期に合わせてフレームに分割され、分割された各信号により自己相関が算出される。ここでは、音声の基本周波数である50Hz〜200Hz(基本周期5〜20ms)が解析される。なお、この音声の基本周期等は、例えば山口晶大著「初めてのDSP活用大全」CQ出版株式会社 2006年10月15日発行、p.269−270に記載されており、公知のデータである。
【0017】
図2は、50Hz〜200Hzを解析するために、分割したフレームからフレーム長320サンプル(サンプリング周波数fs=160kHz)で自己相関を演算した算出結果を示している。図2(a)は自己相関、(b)は規格化した自己相関を示し、ここでは母音「さ」の音声の場合を示している。
尚、図2において、横軸はサンプル数であり、図3は比較のために同レベルの道路ノイズが居室親機のマイクにフレームインした際の算出結果を示している。
【0018】
この図2と図3の比較から、入力信号がノイズの場合は図3(b)に示すように5〜20msの範囲で自己相関に周期性が無いことが確認できる。一方、入力信号が音声の場合は、図2(b)から130サンプル(約120Hz)辺りに次のピークが現れて周期性を確認できる。この周期性のピークを基準値Tと比較することで、解析範囲内において相関のピーク値が基準値を上回った場合は音声有りと判断でき、基準値Tを上回るピークが無い場合は音声無し(ノイズ)と判断することができる。
【0019】
送話表示制御部28は、通話制御部24と音声判定部29の信号を基に送話表示部27を制御する。ボイススイッチ24aが送話路を形成すると、通話制御部24が送話表示制御部27に対して、送話路形成信号を出力する。また、自己相関演算部29aが送話される音が音声であると判定したら、音声判定部29が送話表示制御部28に対して通知する。送話表示制御部28は、送話路が形成されて且つ音声判定部29から通知があった場合に、送話表示部27のLEDを点灯させる。
【0020】
このように、送話表示部27を点灯させる際、自己相関を演算して音声の特徴を抽出して音声とノイズを判別するため、集音するノイズの音量が大きい場合でも音声と判断することが無くなり、単に送話音量と受話音量を比べて判断して点灯制御していた従来の形態に比べて居住者音声を精度良く認識できる。その結果、送話表示部27の点灯動作の違和感を無くすことができる。
また、5〜20msの間の所定の時間範囲において自己相関演算を実施して音声の特徴を抽出することで、ノイズと音声の違いを良好に区別できる。
更に、送話路/受話路の切り替えはボイススイッチ24aにより実施されることで、音声が途切れることなく切り替えでき、通話時の違和感が生じない。
【0021】
尚、上記実施形態では、自己相関を演算する時間範囲を5〜20ms、解析するフレーム長を320サンプルとしているが、この数値に限定するものではない。近い数値、例えば演算する時間範囲を3〜15msとしても音声と雑音を判別することは可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・玄関子機、2・・居室親機、12・・マイク、13・・スピーカ、22・・マイク、23・・スピーカ、24・・通話制御部、24a・・ボイススイッチ、27・・送話表示部、28・・送話表示制御部、29・・音声判定部、29a・・自己相関演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関等の住戸外に設置されて来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を備えた玄関子機と、住戸内に設置されて前記玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有し、前記居室親機が居室親機のマイクが集音した音声を玄関子機のスピーカで報音する送話状態と、玄関子機のマイクで集音した音声を前記居室親機のスピーカで報音する受話状態とを切り替え制御して通話路を形成する通話制御部と、前記送話状態であることを表示する送話表示部とを備えたハンズフリーインターホン装置において、
前記居室親機は、前記居室親機のマイクが集音した音の自己相関を演算して音声の有無を判断する音声判定部と、前記音声判定部の判定結果と前記通話路の状態とに基づいて前記送話表示部の点灯を制御する送話表示制御部とを有することを特徴とするハンズフリーインターホン装置。
【請求項2】
前記音声判定部は、5〜20msの時間範囲において自己相関演算を実施し、
演算値が予め設定した基準以上のピークを検出した場合に集音した音が音声であると判断することを特徴とする請求項1記載のハンズフリーインターホン装置。
【請求項3】
前記通話制御部は、前記玄関子機のマイクが集音する音の大きさ及び前記居室親機のマイクが集音する音の大きさを比較して通話路を切り替えるボイススイッチにより前記通話路の送話/受話を切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載のハンズフリーインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175658(P2012−175658A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38724(P2011−38724)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】