説明

バイオマスエネルギー変換装置

【課題】太陽光励起レーザー装置を用いた水素生成と炭素の固定化
【解決手段】太陽光により励起されるレーザーを用いる事により太陽から変換されるセルロース類を高速炭化し水素生成を行う。この水素を用いたアンモニア生成および炭素の固定化を行う

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温を用いたバイオマス分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでバイオマスの発酵によるメタノールや太陽電池エネルギー利用水分解による水素生成技術開発が行なわれてきたが、これらはクリーンエネルギーであるが効率が悪いため、より効率の高い太陽エネルギー利用水素生成の可能性が探求されてきた。
【特許文献1】特開2006−319291号公報
【非特許文献1】レーザー学会Vol.32pp.48−53模擬太陽光励起のD型断面大口径マルチモードNdファイバーレーザー、バイオマス新液体燃料ISBN4−87326−385−9 C3043
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バイオマスを発酵させエタノール等の液体燃料に変換する方法は盛んに行われてきたが、この方法は食物性バイオマスを使うことが多く、この結果、食物の高騰を招いている。
【0004】
そのため食物性バイオマスを使わずにバイオマス発酵エタノール等の液体燃料を得る技術開発が進められているが、この方式は効率が悪く長時間が必要となる。
【0005】
バイオマスは光合成により炭酸ガスを短期間固定化するが、空気中で長時間放置すると分解され炭酸ガスを放出し、また薪のように燃焼する結果として炭酸ガスを放出し、長時間のサイクルで見ると炭酸ガスは固定化されないし、通常バイオマスの炭化は自己燃焼を用いるため温度が低く炭酸ガス等を多量に発生するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、この発明は、非食物性バイオマスを原料に使い、太陽エネルギー励起レーザー等の高収束密度エネルギーを用いてバイオマスを急速に高温で分解する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、バイオマスは、その構成物質である水素、酸素、炭素に分解し分離でき、水素が効率よく生成でき且つ炭酸ガスを固定化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施形態を、図1、図2、図3および図4に示す。この発明は図1に示されるように大面積の太陽光をレーザーに変換−集中し、図2のようにこれを並列化し高温炉に導入しこれを用いてバイオマスを高速高温生し、この高温によりバイオマスを分解する事により、バイオマスを水素に高効率で変換するエネルギー変換装置である。
【0009】
図3において太陽レーザーにより主成分がセルロース類であるバイオマス粉体を高温化しその構成物質である水素、酸素。炭素に急速分解するが、温度は1000度C程度またはそれ以上であるので炭素は固体であるが酸素と水素は気体であり、それぞれに分離ができ、酸素は金属粉などの酸素吸着物質による除去や、水素透過幕等により水素と分離される。
【0010】
図3に示すように、この水素を用いて適切な温度で窒素と結合させアンモニア生成を行う場合もある。
【0011】
図3にエネルギー変換装置において炭素の酸化や水素の酸化を抑制知るためにバイアス電圧をかける場合もある。
【0013】
図3においてレーザーの吸収性を上げ、反射防止のためグラファイト粉や水素と酸素との結合、炭素と酸素の結合を抑制するために鉄化合物粉等をバイオマス粉に混入し水素生成の効率を上げ炭素固定化を増進する。
【0014】
図4はレーザーを用いたエネルギー変換装置の間接照射型で、集約された収束太陽光レーザーを照射すると図3に示されるようにエネルギー変換装置の空胴内を拡散するが、空間閉じ込め空洞内部では光吸収性のよい物質で覆われ、光エネルギーをすべて吸収するような構造体になっており、そのため光の吸収性は上がる。バイオマスの粉体はこの空洞に接触し、これによりバイオマス粉体にエネルギーが与えられ分解する。
【0015】
太陽励起レーザー光は発振−増幅され、その長さは数十m〜数kmになるがこの長距離伝播中に伝播媒質の温度変化や振動、レーザー媒質の不均質性、レーザーの空間非一様性、非線形散乱効果の影響を受け、これを防止するために光軸のひずみに対応した補正光学系を挿入する。
【0016】
太陽光のレーザー光への変換効率を上げるために発振−増幅部では形状の最適化、レーザー材料の最適化、添加物の最適化、ミラーの反射率の最適化や増幅部でのレーザーの形状の最適化、また太陽光集光レンズの最適化、太陽光最大光度点の追尾による集約等の全体統合設計は当然行なわれる。
【実施例】
【0017】
この実施例によれば、太陽エネルギーが空間的に集積され最終端に集まりこれを制御することにより高効率で極めて高いエネルギー密度が達成でき、これを利用して大量にバイオマスを分解し水素生成をえた。
【0018】
図1の実施形態では、アクティブミラー型であったがジグザグスラブ型やディスクスラブ型の集合体や複合体でも同様で、このとき太陽光はこの形状に合わせて収束照射されレーザー体を励起し広領域の太陽エネルギーを集約しレーザー光にかえた。
【0019】
図3の実施例において太陽励起レーザーでバイオマスが高温で分解されていることが確認されており、図4の実施例においても太陽励起レーザーでセラミックやグラファイトの空洞が高温化している。
【産業上の利用可能性】
【0020】
発振したレーザーは太陽光励起により増幅し大出力が可能である。これらは水素の直接水分解や熱化学反応によるエネルギー性化合物生成に用いられ、このように生成された水素やエネルギー性化合物は燃料電池やガスタービン燃料に用いられる。
【0021】
炭素固定化が出来たことは炭酸ガスの減少に役立ち排出権にも影響を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に用いる太陽光レーザー装置を示す。
【図2】この発明に用いる太陽光レーザー集合装置を示す。
【図3】アンモニア生成装置を備えた直接照射型レーザー光によるバイオセルロース分解装置例を示す。
【図4】間接照射型レーザー光によるバイオセルロース分解装置例を示す。
【符号の説明】
【0023】
1 太陽光
2 冷却板
3 ジグザグアクティブミラー型Cr、Nd添加セラミックレーザー
4 レーザー光軸
5 太陽光励起レーザー列
6 高温炉(真空密閉型)
7 レーザー光集光集約部
8 炉レーザー光連結部
9 炉壁
10 バイオマス粉体
11 酸素分離部
12 アンモニア生成部
13 熱絶縁体
14 ポンプ部(不活性ガス導入)
15 電圧印可部
16 高温加熱体
17 空洞型高温加熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光励起レーザーを用い太陽光をレーザーに変換し、レーザーの長距離伝搬性による広面積収集性や高収束性を利用し高温発生を行い、この高温を用いセルロース,ヘミセルロース、リグニン等のからなるバイオマスを1000度Cやそれ以上の温度に急速高温化し、バイオマスを分解し水素を発生するが、このとき同時に発生する酸素は酸素吸収体を通じ分解領域から取り除かれ、また水素分離膜を用いる事により高温部領域から急速に水素を取り去り水素生成率を上げる太陽光レーザーを用いた太陽光エネルギー変換水素生成装置。
【請求項2】
上記装置を用いて水素生成を行い、その水素を窒素と高温で結合させアンモニアに変換する装置。
【請求項3】
レーザーの吸収効率を上げ高速加熱のためバイオマスを粉体化し、光吸収特性改善のためのグラファイト粉の混入や脱酸素化のための鉄等の金属粉類の混入を行い、また急速分解のため高温水蒸気や、一酸化炭素、二酸化炭素または不活性ガスを付加しバイオマスの高温ガス化分解を促進する場合もある。
【請求項4】
バイオマスに太陽光励起レーザーを照射し急速高温化し、バイオマスをガス化分解するが、このガスに酸素の供給を妨げまた発生酸素を高速除去ことにより炭酸ガス等の発生を抑え炭素を固定化する固体炭素生成分離装置。
【請求項5】
バイオマスの分解を促進し酸素の化合物発生を抑制し水素の発生効率を上げ炭素の固体化を促進するため、バイアス電圧を高温分解部にかけることもある。
【請求項6】
太陽励起レーザー光を空洞内に導き、この内壁を光吸収体で覆い光吸収を高め、この空洞を高温化しこれにバイオマス粉体を接触しバイオマス分解を高速化することもある。
【請求項7】
上記太陽光励起レーザーの代わりに高度に集約した太陽光を用いる場合もある。
【請求項8】
太陽励起レーザーや太陽熱でなく核エネルギーを用いバイオマスの高温ガス化分解する場合もある。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−30870(P2010−30870A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215949(P2008−215949)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(591114803)財団法人レーザー技術総合研究所 (36)
【Fターム(参考)】