説明

バインダ

【課題】走行車輪の上下調節により植立穀稈の刈取り高さを大きく変更することができるバインダを提供する。
【解決手段】既存のバインダ11の走行車輪19,19を車軸17から取り外した後、この車軸17を入力軸として当該車軸17回りに上下揺動可能なチェン伝動ケース21,21を装着し、該チェン伝動ケース21,21の出力軸26,26に走行車輪19,19を取り付け可能に構成すると共に、前記チェン伝動ケース21,21の上下揺動に連動する機体の前後バランス調節手段41を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車輪の上下調節により刈取り高さを変更するバインダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバインダでは、エンジンの動力をトランスミッションを介して刈取結束装置と走行車輪に伝達すると共に、乾田あるいは湿田等の圃場の状態に応じて適正な植立穀稈の刈取り高さと結束位置とを変更できるように、当該走行車輪を簡単に上下調節することができる車輪調節機構を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−201523号公報(第2−4頁、図5−図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来のものでは、走行車輪の上下調節により植立穀稈の刈取り高さと結束位置を変更できる範囲が狭く、例えば東南アジア等の稲作地帯のように植立穀稈が2m近くまで成長する地域では、当該植立穀稈をハーベスタ等の脱穀機に供給するために適正な稈長で刈り取ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、トランスミッションケースの前側に刈取結束装置を配設し、且つトランスミッションケースの下部に走行車輪の車軸を備えたバインダにおいて、前記走行車輪を車軸から取り外した後、この車軸を入力軸とするチェン伝動ケースを装着すると共に、該チェン伝動ケースの出力軸に走行車輪を取り付け可能に構成したことを第1の特徴としている。
そして、チェン伝動ケースを車軸回りに上下揺動可能に構成すると共に、該チェン伝動ケースの上下揺動に連動する機体の前後バランス調節手段を設けたことを第2の特徴としている。
また、チェン伝動ケースを車軸回りに上下揺動可能に構成すると共に、刈取結束装置とトランスミッションケースの間に補助車輪を設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、既存のバインダの車軸から走行車輪を取り外した後、車軸を入力軸とするチェン伝動ケースを装着すると共に、該チェン伝動ケースの出力軸に走行車輪を取り付け可能に構成したことによって、例えば東南アジア等の稲作地帯のように植立穀稈が2m近くまで成長する地域においても、その植立穀稈をハーベスタ等の脱穀機に供給するために適正な稈長で刈り取ることができるようになる。また、超湿田や水没した圃場での高刈り作業も可能になる。
そして、請求項2の発明によれば、チェン伝動ケースを車軸回りに上下揺動可能に構成すると共に、チェン伝動ケースの上下揺動に連動する機体の前後バランス調節手段を設けたことによって、前記チェン伝動ケースの上下揺動により、その入出力軸の軸間寸法に略相当する範囲の刈取り高さを任意に調節することができ、且つチェン伝動ケースの上下揺動による機体の前後バランスの変動を、当該チェン伝動ケースの上下揺動に連動させて自動的に調節できるようになりオペレータの作業負荷が軽減する。
また、請求項3の発明によれば、チェン伝動ケースを上下揺動可能に構成すると共に、刈取結束装置とトランスミッションケースの間に補助車輪を設けたことによって、前記チェン伝動ケースの上下揺動により、その入出力軸の軸間寸法に略相当する範囲の刈取り高さを任意に調節することができ、更にチェン伝動ケースを上方に揺動させて走行車輪を持ち上げることにより刈取り高さを低く設定する際、当該走行車輪が機体の後側に大きく移動して機体の前後バランスが著しく前側に偏るといった不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、バインダ11の側面図と平面図であり、バインダ11は、機体の略中央に位置するトランスミッションケース12の後側にエンジンフレーム13を螺設し、このエンジンフレーム13上にエンジン14を搭載すると共に、トランスミッションケース12の前側に刈取部15aと結束部15bとを前後に一体的に備える刈取結束装置15を配設している。また、トランスミッションケース12の上部に設けられた図示しないブラケット介して平面視でコ字状のループ形状を有する操縦ハンドル16を取付けている。
【0007】
そして、トランスミッションケース12の下部には、エンジン14の動力により回転駆動する車軸17を備え、この車軸17の左右両端部にクレビスピン18,18の着脱により、簡単に取り付け/取り外し可能な走行車輪19,19を装着している。
【0008】
また、図3は、上述の如く車軸17の左右両端部から走行車輪19,19を取り外した後、この車軸17を入力軸として当該車軸17回りに上下揺動可能な左右対称のチェン伝動ケース21,21を装着すると共に、該チェン伝動ケース21,21に前記走行車輪19,19を再び取り付けたものである。
【0009】
詳述すると、チェン伝動ケース21,21の上部には、左右一対のボールベアリング22,22に支承した入力側の筒軸23にスプロケット24を固設すると共に、当該筒軸23を車軸17に外嵌させた状態で、その外側端部をクレビスピン18,18を用いて車軸17の左右方向の所定位置に装着している。
【0010】
一方、チェン伝動ケース21,21の下部には、左右一対のボールベアリング25,25に支承した出力軸26にスプロケット27が固設してあり、上述した入力側のスプロケット24と出力側のスプロケット27に係回したチェン28によって、当該チェン伝動ケース21,21内にチェン伝動機構を構成している。
【0011】
そして、チェン伝動ケース21,21下部の対向する内側のベアリングホルダ21a,21a部にプレートからなるブラケット31,31を螺設すると共に、両ブラケット31,31にパイプ状の連結部材32を回転自在に支承することによって、図4及び図5に示すように、チェン伝動ケース21,21の入力軸である車軸17に、当該チェン伝動ケース21,21と走行車輪19,19とを一体的(左右同時)に上下揺動、即ち上下調節可能に支承している。
【0012】
また、エンジンフレーム13の下部には、背面視で下方に開口端を有するコの字状に曲げ形成した支持プレート33が螺設してあり、この支持プレート33の左右両側の曲げ辺33a,33aに機体の前後方向に向く長穴H,Hを形成すると共に、上述したパイプ状の連結部材32の左右両端側に固設したプレート状のアーム34,34の上端を、当該長穴H,Hにボルト35,35を用いて固定できるように構成している。
【0013】
したがって、上述したボルト35,35を緩めた状態で、図4に矢印で示す如く車軸17を中心として後側上方にチェン伝動ケース21,21を揺動(上動)させてゆくと、プレート状のアーム34,34の上端は、支持プレート33の長穴H,Hに沿ってその後端部までスライドするので、この状態でボルト35,35を締め付けることによって、刈取結束装置15の地面Gからの高さを略h1とすることができる。
【0014】
同じく、ボルト35,35を緩めた状態で、図5に矢印で示す如く車軸17を中心として該車軸17の直下方向にチェン伝動ケース21,21を揺動(下動)させてゆくと、プレート状のアーム34,34の上端は、支持プレート33の長穴H,Hに沿ってその前端部までスライドし、この状態でボルト35,35を締め付けることによって、刈取結束装置15の地面Gからの高さを略h2とすることができる。
【0015】
即ち、上述した構成によれば、既存のバインダ11の車軸17から走行車輪19,19を取り外した後、この車軸17回りに上下揺動可能なチェン伝動ケース21,21を設ける共に、該チェン伝動ケース21,21の出力軸26,26に前記走行車輪19,19を装着可能に構成することによって、刈取結束装置15の地面Gからの高さを、チェン伝動ケース21,21の入出力軸17,26,26の軸間寸法に相当する略h1〜h2(h1<h2)の範囲で任意に調節できるようになっている。尚、前記走行車輪19,19に換えて外形やラグ形状を異にする走行車輪を装着してもよい。
【0016】
また、車軸17回りにチェン伝動ケース21,21を上下揺動させると、機体の前後バランスが大きく変動することから、チェン伝動ケース21,21の上下揺動に連動する機体の前後バランス調節手段として、図4及び図5に例示するように、エンジンフレーム13の下面に接して機体の前後方向にスライド可能なバランスウェイト41を設けると共に、このバランスウェイト41と上述したプレート状のアーム34,34の上端を連結すれば、伝動ケース21,21の上下揺動に伴う機体の前後バランスの変動を、当該伝動ケース21,21の上下揺動に連動させて自動的に調節できるようになり、オペレータの作業負荷を軽減させることができる。
【0017】
つまり、図4に矢印で示す如く車軸17を中心として後側上方にチェン伝動ケース21,21を揺動(上動)させて刈り高さを低く調節すると、バランスウェイト41は、プレート状のアーム34,34に押されて機体後方側へ移動する。また、図5に矢印で示す如く車軸17を中心として該車軸17の直下方向にチェン伝動ケース21,21を揺動(下動)させて刈り高さを高く調節すると、バランスウェイト41は、プレート状のアーム34,34に引かれてトランスミッションケース12側へ移動する。尚、バランスウェイト41は、ボルト42を用いてエンジンフレーム13の下面に位置決め固定できるように構成している。
【0018】
そして、図5に示したように、車軸17を中心として該車軸17の直下にチェン伝動ケース21,21を揺動させ、刈取結束装置15の地面Gからの高さを略h2とした状態から、図6に矢印で示す如く操縦ハンドル16を押し下げると、走行車輪19,19の車軸、即ちチェン伝動ケース21,21の出力軸26,26を支点として刈取結束装置15の地面Gからの高さを更に高くすることができるので、例えば東南アジア等の稲作地帯のように植立穀稈が2m近くまで成長する地域においても、その植立穀稈をハーベスタ等の脱穀機に供給するために適正な稈長で刈り取ることができるようになる。また、超湿田や水没した圃場での高刈り作業も可能になる。
【0019】
また、図7に示すものは、車軸17を中心とするチェン伝動ケース21,21の上下調節動作をネジ式調節機構45を介して行なえるように構成したものであって、このネジ式調節機構45は、エンジンフレーム13の後部に回転可能に支承したハンドル46付のネジ軸と、該ネジ軸47が螺挿するネジ筒48を備え、該ネジ筒48の左右両端にプレート状のアーム34,34の上端を連結することによって、ハンドル46の回転操作により当該チェン伝動ケース21,21の上下調節を可能にしている。
【0020】
ところで、図4に示したように、車軸17を中心として後側上方にチェン伝動ケース21,21を揺動させて刈取結束装置15の地面Gからの高さを略h1とした状態、即ちチェン伝動ケース21,21を上方に揺動させ走行車輪19,19を持ち上げることにより刈取り高さを低く設定する際は、当該走行車輪19,19が機体の後側に大きく移動して機体の前後バランスが著しく前側に偏るので、それに抗すべくオペレータは操縦ハンドル16を強く把持しなければならない。
【0021】
そこで、図7に示すように、刈取結束装置15とトランスミッションケース12の間、即ちトランスミッションケース12の下部に補助車輪51を設けることによって、機体の前後バランスが著しく前側に偏るといった不都合を回避してオペレータの作業負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】既存のバインダの側面図。
【図2】既存のバインダの平面図。
【図3】車軸にチェン伝動ケースを装着した状態を示す一部省略背断面図。
【図4】刈り高さを低く調節した状態を示すバインダの側面図。
【図5】刈り高さを高く調節した状態を示すバインダの側面図。
【図6】高刈り姿勢状態を示すバインダの側面図。
【図7】補助車輪を装着した状態を示すバインダの側面図。
【符号の説明】
【0023】
12 トランスミッションケース
15 刈取結束装置
17 車軸
19 走行車輪
21 チェン伝動ケース
26 出力軸
41 前後バランス調節手段
51 補助車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションケース(12)の前側に刈取結束装置(15)を配設し、且つトランスミッションケース(12)の下部に走行車輪(19,19)の車軸(17)を備えたバインダにおいて、前記走行車輪(19,19)を車軸(17)から取り外した後、この車軸(17)を入力軸とするチェン伝動ケース(21,21)を装着すると共に、該チェン伝動ケース(21,21)の出力軸(26,26)に走行車輪(19,19)を取り付け可能に構成したことを特徴とするバインダ。
【請求項2】
チェン伝動ケース(21,21)を車軸(17)回りに上下揺動可能に構成すると共に、該チェン伝動ケース(21,21)の上下揺動に連動する機体の前後バランス調節手段(41)を設けた請求項1に記載のバインダ。
【請求項3】
チェン伝動ケース(21,21)を車軸(17)回りに上下揺動可能に構成すると共に、刈取結束装置(15)とトランスミッションケース(12)の間に補助車輪(51)を設けた請求項1に記載のバインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−29207(P2008−29207A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202690(P2006−202690)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】