説明

バッテリ充電制御装置

【課題】バッテリを外すことなく、外部の充電器により充電した際に装置内部で消費される電力が過大になって装置が破損するのを防止したバッテリ充電制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンにより駆動される磁石式交流発電機1の出力を整流する整流器3の出力でバッテリ2を充電する。バッテリ2の端子電圧が設定値を超えたときに短絡指令発生回路4から短絡指令信号を発生させ、短絡指令信号が発生したときにトリガ信号供給回路7から出力短絡用スイッチを構成するサイリスタSuないしSwにトリガ信号を与える。トリガ信号供給回路7は発電機1の出力電圧を電源電圧として動作する増幅器AuないしAwを備えていて、短絡指令信号をこれらの増幅器により増幅して得た信号をサイリスタSuないしSwにトリガ信号として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石式交流発電機の整流出力でバッテリを充電する際にバッテリの端子電圧を設定値以下に保つように制御するバッテリ充電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車、船外機、農業機械等、エンジンにより駆動される装置に搭載されるバッテリの充電を制御するバッテリ充電制御装置として、図3に示されているように、エンジンにより駆動される磁石式交流発電機1の出力を整流してバッテリ2に供給するダイオードブリッジ全波整流回路3と、整流回路3の出力電圧が設定値以上になったときに短絡指令信号を発生する短絡指令発生回路4と、トリガ信号が与えられたときにオン状態になる出力短絡用スイッチ5uないし5wを備えてこれらの出力短絡用スイッチを通して交流発電機1の出力を短絡する出力短絡回路5と、短絡指令信号が発生したときに出力短絡用スイッチ5uないし5wにトリガ信号を与えるトリガ信号供給回路7′とを備えたものが用いられている。
【0003】
図3において、磁石式交流発電機1は、エンジンのクランク軸に取り付けられた磁石回転子と、スター結線された三相の発電コイルLuないしLwを有する固定子とからなり、整流回路3は、三相Hブリッジ接続されたダイオードD1ないしD6からなっている。整流回路3は三相の交流入力端子3uないし3wと正極側及び負極側の直流出力端子3a及び3bとを有していて、発電機1の三相の出力端子1uないし1wがそれぞれ交流入力端子3uないし3wに接続され、直流出力端子3a,3b間にバッテリ2が接続されている。
【0004】
短絡指令発生回路4は、PNPトランジスタTR1と抵抗器R1及びR2と、ツェナーダイオードZD1とからなっていて、整流回路3の出力端子間の電圧(バッテリ2の端子電圧)が設定値以上になったときにツェナーダイオードZD1が導通してトランジスタTR1にベース電流が流れる。これによりトランジスタTR1が導通し、バッテリ2からトランジスタTR1を通して短絡指令信号が出力される。
【0005】
出力短絡用スイッチ5uないし5wはそれぞれ発電機1の三相の出力端子1uないし1wに対応するように設けられたサイリスタSuないしSwからなっていて、これらのサイリスタはそれぞれ発電機の対応する出力端子と整流回路3の負極側出力端子3bとの間に接続されている。
【0006】
トリガ信号供給回路7′は、トランジスタTR1のコレクタに一端が共通接続され、他端がサイリスタSuないしSwのゲートに接続された抵抗器R3ないしR5と、サイリスタSuないしSwのゲートカソード間にそれぞれ接続された抵抗器R6ないしR8とからなり、トランジスタTR1がオン状態になったときに発生する短絡指令信号(トランジスタTR1のコレクタ電流)を抵抗器R3ないしR5を通してサイリスタSuないしSwのゲートにトリガ信号として供給する。
【0007】
図3に示した例では、出力短絡用スイッチ5uないし5wをそれぞれ構成するサイリスタSuないしSwと、整流回路3のブリッジ回路の下辺を構成するダイオードD4ないしD6とにより出力短絡回路5が構成され、サイリスタSuないしSwのいずれかとダイオードD4ないしD6のいずれかとを通して発電機1の出力端子間が短絡される。
【0008】
例えば、発電機1の発電コイルLuから流出した電流が発電コイルLvを通して戻る期間においては、サイリスタSuがオン状態になって、サイリスタSuとダイオードD5とを通して、出力端子1u,1v間が短絡され、発電機1の発電コイルLuから流出した電流が発電コイルLwを通して戻る期間においては、サイリスタSuがオン状態になって、サイリスタSuとダイオードD6とを通して、出力端子1u,1w間が短絡される。
【0009】
図3に示したバッテリ充電制御装置において、バッテリ2の端子電圧が設定値以下のときには、短絡指令発生回路4のトランジスタTR1が導通せず、短絡指令信号が発生しないため、サイリスタSuないしSwにはトリガ信号が与えられない。この状態では、サイリスタSuないしSwがオン状態になることがないため、発電機1の出力は短絡されることなく、整流回路3により整流されてバッテリ2に供給される。
【0010】
バッテリ2の端子電圧が設定値を超えると、トランジスタTR1が導通して短絡指令信号を発生するため、サイリスタSuないしSwにトリガ信号が供給され、これらのサイリスタのいずれかとダイオードD4ないしD6のいずれかとを通して発電機の出力が短絡される。そのため発電機の出力電圧が低下し、バッテリ2の端子電圧が低下する。バッテリ2の端子電圧が設定値以下になるとトランジスタTR1が遮断状態になって短絡指令信号が発生しなくなり、サイリスタSuないしSwにトリガ信号が供給されなくなるため、サイリスタSuないしSwはそれぞれのアノードカソード間に逆方向電圧が印加されてそれぞれを流れるアノード電流が保持電流未満になったときにターンオフする。これらの動作の繰り返しによりバッテリ2の端子電圧が設定値を超えないように制御される。
【0011】
図3に示した例では、整流回路3と、短絡指令発生回路4と、出力短絡回路5と、トリガ信号供給回路7′とにより、バッテリ充電制御装置8′が構成されている。この種のバッテリ充電制御装置は、例えば特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2005−160129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
エンジンにより駆動される装置に搭載されたバッテリ2は、長期間使用しなかった場合にバッテリ上がりの状態になることがある。バッテリ上がり状態になった場合には、エンジンを始動することができず、エンジンにより駆動される磁石式交流発電機の出力でバッテリを充電することができなくなるため、商用電源等を用いた外部のバッテリ充電器によりバッテリ2を充電することになる。外部のバッテリ充電器によりバッテリ2を充電する際には、バッテリ2をバッテリ充電制御装置8′から取り外すことになっているが、知識を有しないユーザがバッテリ2をバッテリ充電制御装置8′から取り外すことなく、バッテリ2に外部の充電器を接続することがあり得る。
【0013】
バッテリ2をバッテリ充電制御装置8′に接続したままの状態で、外部のバッテリ充電器をバッテリ2に接続すると、バッテリ2の充電が進むに従ってバッテリ2の端子電圧が上昇し、いずれはバッテリ2の端子電圧がバッテリ充電制御装置8′に設定されている充電電圧の設定値を超える。バッテリ2の端子電圧が設定値を超えると、トランジスタTR1が導通して出力短絡回路5のサイリスタSuないしSwにトリガ信号が与えられるが、このとき外部の充電器による充電は停止することがないため、そのまま充電を継続させた場合には、バッテリ充電制御装置8′内の抵抗器R3ないしR5で消費される電力が許容電力を超えてこれらの抵抗器が焼損し、バッテリ充電制御装置8′が破損するおそれがあった。
【0014】
本発明の目的は、バッテリを取り外すことなく外部の充電器が接続された場合に、内部の回路が破損するおそれをなくしたバッテリ充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、磁石式交流発電機の出力を整流してバッテリに供給する整流回路と、この整流回路の出力電圧が設定値以上になったときに短絡指令信号を発生する短絡指令発生回路と、トリガ信号が与えられたときにオン状態になる出力短絡用スイッチを備えて該出力短絡用スイッチを通して上記交流発電機の出力を短絡する出力短絡回路と、短絡指令信号が発生したときに出力短絡用スイッチにトリガ信号を与えるトリガ信号供給回路とを備えたバッテリ充電制御装置を対象とする。
【0016】
本発明においては、上記トリガ信号供給回路が交流発電機の出力端子側から電源電圧が与えられて動作する増幅器を備えていて、短絡指令信号を該増幅器により増幅して得た信号を出力短絡用スイッチにトリガ信号として与えるように構成されている。
【0017】
トリガ信号供給回路を上記のように構成すると、短絡指令信号が発生したときに増幅器に流れる入力電流は、出力短絡用スイッチに与えるトリガ信号の電流値よりも増幅器の直流電流増幅率分だけ小さい電流とすることができる。また交流発電機を停止させて外部の充電器によりバッテリを充電している状態では、増幅器に電源電圧が与えられないため、短絡指令信号が発生しても増幅器は信号を出力せず、出力短絡用スイッチにはトリガ信号が与えられない。従って、発電機を停止させて外部の充電器によりバッテリの充電を行っている状態でバッテリの端子電圧が設定値を超えたとしても、バッテリ充電制御装置の内部の回路に大きな電流が流れることはなく、内部の回路で大きな電力が消費されることがないので、バッテリ充電制御装置内の回路での消費電力が過大になって、装置の構成部品が損傷するのを防ぐことができる。
【0018】
磁石発電機の出力を整流する整流回路としては通常ダイオードブリッジ全波整流回路が用いられる。この場合出力短絡回路は、発電機の各出力端子に対応するように設けられて発電機の対応する出力端子と整流回路の負極側出力端子との間にカソードを該負極側出力端子側に向けて接続されたサイリスタを出力短絡用スイッチとして備えて、交流発電機の出力をいずれかの出力短絡用スイッチと整流回路の一部とを通して短絡する構成をとることができる。
【0019】
整流回路及び出力短絡回路を上記のように構成する場合、トリガ信号供給回路は、発電機の各出力端子から電源電圧が与えられて動作する増幅器を発電機の各出力端子毎に備えて、短絡指令信号を発電機の各出力端子に対応する増幅器により増幅して得た信号を発電機の各出力端子に対応するサイリスタにトリガ信号として与えるように構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、トリガ信号供給回路が交流発電機の出力端子側から電源電圧が与えられて動作する増幅器を備えていて、短絡指令信号を該増幅器により増幅して得た信号を出力短絡用スイッチにトリガ信号として与えるように構成されているので、短絡指令信号が発生したときに増幅器に流れる入力電流を、出力短絡用スイッチに与えるトリガ信号の電流値よりも増幅器の直流電流増幅率分だけ小さい電流とすることができる。また交流発電機を停止させて外部の充電器によりバッテリを充電した場合には、増幅器に電源電圧が与えられず、バッテリの端子電圧が上昇して短絡指令信号が発生しても出力短絡用スイッチにトリガ信号が与えられることがない。従って、バッテリを取り外すことなく、外部の充電器による充電が行われて、バッテリの端子電圧が設定値を超えたときに、バッテリ充電制御装置の内部の回路に大きな電流が流れるのを防ぐことができ、バッテリ充電制御装置内の回路での消費電力が過大になって、装置の構成部品が損傷するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の好ましい実施形態を示したもので、同図において、1はエンジンにより駆動される磁石式交流発電機、2はバッテリ、3は発電機1の出力を整流するダイオードブリッジ全波整流回路、4は整流回路3の出力電圧が設定値以上になったときに短絡指令信号を発生する短絡指令発生回路、5はトリガ信号が与えられたときにオン状態になる出力短絡用スイッチ5uないし5wを備えて、これらの出力短絡用スイッチを通して交流発電機1の出力を短絡する出力短絡回路、7は短絡指令信号が発生したときに出力短絡用スイッチ5uないし5wにトリガ信号を与えるトリガ信号供給回路である。
【0022】
図示の磁石式交流発電機1は、エンジンのクランク軸に取り付けられた磁石回転子と、スター結線された三相の発電コイルLuないしLwを有してエンジンのケース等に固定された固定子とからなり、エンジンの回転に伴って三相交流電圧を出力する。
【0023】
整流回路3は、カソードが共通接続されダイオードD1ないしD3と、アノードが共通接続されるとともにカソードがダイオードD1ないしD3のアノードに接続されたダイオードD4ないしD6とからなるダイオードブリッジ全波整流回路からなっていて、ダイオードD1ないしD3のアノードとダイオードD4ないしD6のカソードとの接続点からそれぞれ三相の交流入力端子3uないし3wが引き出され、ダイオードD1ないしD3のカソードの共通接続点及びダイオードD4ないしD6のアノードの共通接続点からそれぞれ正極側及び負極側の直流出力端子3a及び3bが引き出されている。
【0024】
整流回路3の交流入力端子3uないし3wにそれぞれ発電機1の三相の出力端子1uないし1wが接続され、直流出力端子3a及び3bにそれぞれバッテリ2の正極端子及び負極端子が接続されている。
【0025】
短絡指令発生回路4は、エミッタが整流回路3の正極側出力端子3aに接続されたPNPトランジスタTR1と、トランジスタTR1のベースエミッタ間に接続された抵抗器R1と、トランジスタTR1のベースにカソードが接続されたツェナーダイオードZD1と、ツェナーダイオードZD1のアノードと整流回路3の負極側出力端子3bとの間に接続された抵抗器R2とからなっている。この短絡指令発生回路4においては、整流回路3の出力端子間の電圧(バッテリ2の端子電圧)が設定値以上になったときにツェナーダイオードZD1が導通してトランジスタTR1にベース電流を流し、トランジスタTR1を導通させる。トランジスタTR1が導通したときに、バッテリ2からトランジスタTR1を通して短絡指令信号が出力される。
【0026】
出力短絡用スイッチ5uないし5wはそれぞれ発電機1の三相の出力端子1uないし1wに対応するように設けられたサイリスタSuないしSwからなっている。サイリスタSuないしSwはそれぞれ発電機1の対応する出力端子1uないし1wと、整流回路3の負極側出力端子3bとの間に、それぞれのアノードを出力端子1uないし1wに接続し、カソードを負極側出力端子3b側に接続した状態で設けられている。
【0027】
トリガ信号供給回路7は、磁石式交流発電機1の各出力端子から電源電圧が与えられて動作する増幅器を前記発電機の各出力端子毎に備えていて、短絡指令信号を発電機の各出力端子に対応する増幅器により増幅して得た信号を発電機の各出力端子に対応するサイリスタにトリガ信号として与えるように構成されている。
【0028】
更に詳細に説明すると、発電機1の出力端子1uないし1w(整流回路3の入力端子3uないし3w)にそれぞれコレクタが接続されたNPNトランジスタTRuないしTRwが設けられ、これらのトランジスタTRuないしTRwのエミッタがそれぞれサイリスタSuないしSwのゲートに接続されている。トランジスタTRuないしTRwのベースはそれぞれ抵抗器R3ないしR5を通してトランジスタTR1のコレクタ(短絡指令発生回路4の出力端子)に接続され、トランジスタTRuないしTRwのエミッタベース間にはそれぞれ抵抗器R9ないしR11が接続されている。図3に示した例と同様に、サイリスタSuないしSwのゲートカソード間には抵抗器R6ないしR8が接続されている。
【0029】
この例では、トランジスタTRuと抵抗器R3及びR9とにより発電機1のU相の出力端子に対応する増幅器Auが構成され、トランジスタTRvと抵抗器R4及びR10とにより発電機のV相の出力端子に対応する増幅器Avが構成されている。またトランジスタTRwと抵抗器R5及びR11とにより発電機のW相の出力端子に対応する増幅器Awが構成されている。増幅器AuないしAwと抵抗器R6ないしR8とにより、トリガ信号供給回路7が構成されている。
【0030】
増幅器Auは、発電機1のU相の出力端子1uから与えられる電圧を電源電圧として動作する増幅器で、トランジスタTR1が通したときに発生する短絡指令信号を増幅して得た信号をサイリスタSuにトリガ信号として与える。
【0031】
また増幅器Avは、発電機1のV相の出力端子1vから与えられる電圧を電源電圧として動作する増幅器で、トランジスタTR1が通したときに発生する短絡指令信号を増幅して得た信号をサイリスタSvにトリガ信号として与える。
【0032】
更に増幅器Awは、発電機1のW相の出力端子1wから与えられる電圧を電源電圧として動作する増幅器で、トランジスタTR1が通したときに発生する短絡指令信号を増幅して得た信号をサイリスタSwにトリガ信号として与える。
【0033】
図1に示した例では、出力短絡用スイッチ5uないし5wをそれぞれ構成するサイリスタSuないしSwと、整流回路3のブリッジ回路の下辺を構成するダイオードD4ないしD6とにより出力短絡回路5が構成され、サイリスタSuないしSwのいずれかとダイオードD4ないしD6のいずれかとを通して発電機1の出力端子間が短絡される。
【0034】
図1に示した実施形態において、バッテリ2の端子電圧が設定値以下のときには、短絡指令発生回路4のトランジスタTR1が導通せず、短絡指令信号が発生しないため、サイリスタSuないしSwにはトリガ信号が与えられない。この状態では、サイリスタSuないしSwがオン状態になることがないため、発電機1の出力は短絡されることなく、整流回路3により整流されてバッテリ2に供給される。
【0035】
バッテリ2の端子電圧が設定値を超えると、トランジスタTR1が導通して短絡指令信号を発生するため、発電機の出力端子1uないし1wのうち、他の出力端子よりも電位が高くなっている出力端子(出力電流が流出する状態にある出力端子)から、該電位が高い出力端子に接続された増幅器を通して、対応するサイリスタにトリガ信号が供給される。このとき増幅器AuないしAwに流れる入力電流の電流値は、出力短絡用スイッチ5uないし5wに与えるトリガ信号の電流値よりも増幅器の直流電流増幅率分だけ小さい値(従来の制御装置で流れていたトリガ信号電流値を直流電流増幅率で除した値)となるため、トリガ信号供給回路7で生じる損失は、従来のバッテリ充電制御装置のトリガ信号供給回路で生じる損失に比べて大幅に低減される。
【0036】
交流発電機1の出力端子1uないし1wのうち、他の出力端子よりも電位が高くなっている出力端子に接続された増幅器を通して、該出力端子に対応するサイリスタにトリガ信号が与えられると、該サイリスタがオン状態になり、オン状態になったサイリスタと整流回路3のブリッジの下辺を構成するいずれかのダイオードとを通して発電機の出力が短絡される。
【0037】
即ち、発電機の出力端子1uの電位が出力端子1v及び1wの電位よりも高い期間は、出力端子1uから増幅器Auを通してサイリスタSuにトリガ信号が与えられる。これによりサイリスタSuがオン状態になり、このサイリスタSuとダイオードDvまたはDwとを通して発電機の出力端子1u,1v間または1u,1w間が短絡される。また発電機の出力端子1vの電位が出力端子1u及び1wの電位よりも高い期間は、出力端子1vから増幅器Avを通してサイリスタSvにトリガ信号が与えられる。これによりサイリスタSvがオン状態になり、このサイリスタSvとダイオードDwまたはDuとを通して発電機の出力端子1v,1w間または1v,1u間が短絡される。更に発電機の出力端子1wの電位が出力端子1u及び1vの電位よりも高い期間は、出力端子1wから増幅器Awを通してサイリスタSwにトリガ信号が与えられて、サイリスタSwがオン状態になり、サイリスタSwとダイオードDuまたはDvとを通して発電機の出力端子1w,1u間または1w,1v間が短絡される。
【0038】
上記のように、バッテリ2の端子電圧が設定値を超えたときには、サイリスタSuないしSvのうちのいずれかと、ダイオードD4ないしD6のうちのいずれかとを通して発電機の出力が短絡されるため、発電機の出力電圧が低下し、バッテリ2の端子電圧が低下する。発電機の出力が短絡されると増幅器AuないしAwに電源電圧が与えられなくなるため、これらの増幅器が動作を停止し、サイリスタSuないしSwにトリガ信号が供給されなくなる。またバッテリ2の端子電圧が設定値以下になるとトランジスタTR1が遮断状態になって短絡指令信号の出力を停止する。サイリスタSuないしSwはそれぞれのアノードカソード間に逆方向電圧が印加されてそれぞれを流れるアノード電流が保持電流未満になったときにターンオフする。サイリスタがターンオフすると発電機の出力の短絡が解除されるため、バッテリの充電が再開される。これらの動作の繰り返しによりバッテリ2の端子電圧が設定値を超えないように制御される。
【0039】
図1に示したバッテリ充電制御装置において、バッテリ2が消耗し、エンジンを始動することができなくなったときに、ユーザがバッテリ2を取り外すことなく、外部の充電器によりバッテリ2の充電を行ったとする。この充電によりバッテリの端子電圧が設定値を超えると、トランジスタTR1が導通して短絡指令信号が発生するが、交流発電機1を停止させて外部の充電器によりバッテリを充電している状態では、増幅器AuないしAwに電源電圧が与えられず、これらの増幅器が動作を停止しているため、短絡指令発生回路4が短絡指令信号が発生しても増幅器AuないしAwは信号を出力せず、出力短絡用スイッチにはトリガ信号が与えられない。従って、発電機を停止させて外部の充電器によりバッテリの充電を行っている状態でバッテリの端子電圧が設定値を超えたとしても、バッテリ充電制御装置の内部の回路に大きな電流が流れることはなく、内部の回路で大きな電力が消費されることがないので、バッテリ充電制御装置内の回路での消費電力が過大になって、装置の構成部品が損傷するのを防ぐことができる。
【0040】
上記の実施形態では、トリガ信号供給回路7において、発電機の各出力端子1uないし1wにそれぞれ対応させて増幅器AuないしAwを設けているが、図2に示したように、発電機の複数の出力端子に対して共通に1つの増幅器を設けるようにすることもできる。
【0041】
図2に示した例では、発電機1の出力端子1uないし1wにそれぞれアノードが接続されたダイオードDauないしDawが設けられ、これらのダイオードのカソードの共通接続点に1つのNPNトランジスタTRaのコレクタが接続されている。トランジスタTRaのエミッタはそれぞれアノードをトランジスタTRaのエミッタ側に向けたダイオードDbuないしDbwを通してサイリスタSuないしSwのゲートに接続され、トランジスタTRaのベースは抵抗器Raを通してトランジスタTR1のコレクタ(短絡指令発生回路4の出力端子)に接続されている。またトランジスタTRaのエミッタベース間に抵抗器Rbが接続され、トランジスタTRaのエミッタと整流回路3の負極側出力端子3bとの間には図1に示された抵抗器R6ないしR8に相当する抵抗器Rcが接続されている。この例では、トランジスタTRaと抵抗器Ra及びRbとにより短絡指令信号を増幅する増幅器Aが構成されている。
【0042】
この例では、ダイオードDauないしDaw及びDbuないしDbwと、トランジスタTRaと、抵抗器RaないしRcとによりトリガ信号供給回路7が構成されている。また整流回路3と、短絡指令発生回路4と、出力短絡回路5と、トリガ信号供給回路7とにより、バッテリ充電制御装置8が構成されている。
【0043】
図2に示したバッテリ充電制御装置の動作は、トランジスタTR1が導通して短絡指令信号が発生したときに、サイリスタSuないしSwへのトリガ信号の供給が1つの増幅器Aを通して行われる点を除き、図1に示した実施形態のそれと同様である。
【0044】
上記の実施形態では、エンジンにより駆動される磁石式交流発電機が三相の発電コイルLuないしLwを有しているとしたが、単相の磁石式交流発電機が用いられる場合にも同様に本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0045】
本発明で用いる短絡指令発生回路4は、整流回路3の出力電圧(バッテリの端子電圧)が設定値を超えたときに短絡指令信号(電気信号)を出力するものであればよく、その構成は上記の実施形態に示したものに限定されない。
【0046】
上記の実施形態では、出力短絡用スイッチとしてサイリスタを用いたが、出力短絡用スイッチは自己保持機能を有するスイッチであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態を示した回路図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示した回路図である。
【図3】従来のバッテリ充電制御装置の構成を示した回路図である。
【符号の説明】
【0048】
1 磁石式交流発電機
2 バッテリ
3 整流回路
4 短絡指令発生回路
5 出力短絡回路
5uないし5w 出力短絡用スイッチ
7 トリガ信号供給回路
SuないしSw サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石式交流発電機の出力を整流してバッテリに供給する整流回路と、前記整流回路の出力電圧が設定値以上になったときに短絡指令信号を発生する短絡指令発生回路と、トリガ信号が与えられたときにオン状態になる出力短絡用スイッチを備えて該出力短絡用スイッチを通して前記交流発電機の出力を短絡する出力短絡回路と、前記短絡指令信号が発生したときに前記出力短絡用スイッチにトリガ信号を与えるトリガ信号供給回路とを備えたバッテリ充電制御装置において、
前記トリガ信号供給回路は、前記交流発電機の出力端子側から電源電圧が与えられて動作する増幅器を備えていて、前記短絡指令信号を前記増幅器により増幅して得た信号を前記出力短絡用スイッチにトリガ信号として与えるように構成されていることを特徴とするバッテリ充電制御装置。
【請求項2】
磁石式交流発電機の出力を整流してバッテリに供給するダイオードブリッジ全波整流回路と、前記整流回路の出力電圧が設定値以上になったときに短絡指令信号を発生する短絡指令発生回路と、前記発電機の各出力端子に対応するように設けられて前記発電機の対応する出力端子と前記整流回路の負極側出力端子との間にカソードを該負極側出力端子側に向けて接続されたサイリスタを出力短絡用スイッチとして備えて前記交流発電機の出力をいずれかの出力短絡用スイッチと前記整流回路の一部とを通して短絡する出力短絡回路と、前記短絡指令信号が発生したときに前記出力短絡用スイッチを構成するサイリスタにトリガ信号を与えるトリガ信号供給回路とを備えたバッテリ充電制御装置において、
前記トリガ信号供給回路は、前記発電機の各出力端子から電源電圧が与えられて動作する増幅器を前記発電機の各出力端子毎に備えていて、前記短絡指令信号を前記発電機の各出力端子に対応する増幅器により増幅して得た信号を前記発電機の各出力端子に対応するサイリスタにトリガ信号として与えるように構成されていること、
を特徴とするバッテリ充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−35637(P2008−35637A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206948(P2006−206948)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】