説明

バルブクリアランス自動調整機能付きのロッカアーム

【課題】捩りコイルばねの捩りトルクの負荷によりアジャストスクリュを回転させつつ軸方向に移動させてバルブクリアランスを自動調整するラッシュアジャスタ機能部を一方の端部に有するロッカアームにおいて、アーム端部の軽量化により高速回転時の追従性の向上を図ること、および、組付け時の取り扱いの容易化を図ることである。
【解決手段】ロッカシャフト2を中心にして揺動可能なアーム3の端部に、捩りコイルばね26と、その捩りコイルばね26からの捩りトルクにより回転しつつ軸方向に移動してバルブクリアランスを自動調整するアジャストスクリュ24とを設ける。アジャストスクリュ24がねじ係合されるねじ孔21をアーム3の一方の端部に直接形成して、アーム端部の薄肉により軽量化を図り、追従性を向上させる。ねじ孔21の上側にストレート孔22を形成し、そのストレート孔22内に捩りコイルばね26を収容して、アーム組付け時の取り扱いの容易化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関におけるアーム式動弁装置のバルブクリアランスを自動調整する機能を備えるロッカアームに関する。
【背景技術】
【0002】
カムの回転によって吸気バルブあるいは排気バルブ(以下、単にバルブという)を開閉させるようにした動弁装置として、エンジンの上方に設けられたロッカシャフトを中心にしてアームを揺動自在に支持し、そのアームの一端部をカムの回転により押し上げ、アームの他端部でバルブステムを押し下げてバルブを開放させるようにしたアーム式のものが知られている。
【0003】
上記アーム式動弁装置においては、機械的、熱的影響によってバルブクリアランスが形成されると、バルブリフト量が変化し、バルブを精度よく開閉させることができなくなるため、バルブクリアランスを自動補正することが行われている。
【0004】
バルブクリアランスを自動的に補正する装置として、給油式ラッシュアジャスタが存在する。しかし、給油式ラッシュアジャスタにおいては、エンジンオイルを作動流体として使用しているため、エンジンの回転数による油圧の変化やオイルに含まれるコンタミ、あるいは、気泡の影響を受け易い。また、構造が複雑で、製造、組立てに多くの工数を要し、コスト的に不利である。
【0005】
そのような問題点を解決するため、本件の発明者は、特許文献1において、アームの端部内に機械式ラッシュアジャスタを組込み、そのラッシュアジャスタによりバルブクリアランスを自動補正するようにしたアーム式動弁装置を既に提案している。
【0006】
ここで、特許文献1に記載されたラッシュアジャスタにおいては、円筒状のボディの内周に鋸歯状の雌ねじを形成し、その雌ねじにアジャストスクリュの外周に形成された鋸歯状の雄ねじをねじ係合し、そのアジャストスクリュに捩りコイルばねの捩じりトルクを負荷して、アジャストスクリュを回転させつつボディの開口端から突出する方向に移動させるようにしている。
【0007】
また、特許文献1に記載されたアーム式動弁装置においては、ロッカシャフトを中心にして揺動可能なアームの端部に上下に貫通する嵌合孔を設け、その嵌合孔の下方から内部に上記ラッシュアジャスタのボディを挿入し、そのボディの下端部に設けられたフランジをアームの端部下面に当接させた状態で、嵌合孔の上端開口から上方に突出する上端部に波ばねを嵌合し、その波ばね上に止め輪を取付けてラッシュアジャスタの抜止めとしている。
【0008】
ところで、ボディの雌ねじおよびアジャストスクリュの雄ねじを鋸歯状とする上記のようなラッシュアジャスタにおいては、圧縮コイルばねの弾性力をアジャストスクリュに負荷することによって、そのアジャストスクリュを回転させつつ軸方向に移動させることができるが、この場合、雌ねじと雄ねじのねじ係合部では、アジャストスクリュの進行方向と反対側の圧力側フランク間にバックラッシが生じることになり、アジャストスクリュはカムからの押圧力が負荷される度にバックラッシに相当する分後退することになる。このため、仮に、ねじ面が摩耗すると、バックラッシが増加することになって所望のバルブリフト量が得られなくなる可能性がある。
【0009】
しかし、特許文献1に記載されたラッシュアジャスタにおいては、捩りコイルばねを用いてアジャストスクリュに捩りトルクを負荷するようにしているため、雄ねじと雌ねじのねじ係合部では、アジャストスクリュの進行方向である遊び側フランク間にバックラッシが生じることになり、カムからの圧力がアジャストスクリュに負荷されても、そのアジャストスクリュは後退しない。このため、ねじ面が摩耗しても確実に所望のバルブリフト量を得ることができるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−127533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記アーム式動弁装置においては、アームの嵌合孔に挿入される筒状ボディの内周にアジャストスクリュの雄ねじがねじ係合される雌ねじを形成しているため、アーム端部の重量が重くなって、カムの高速回転による追従性が悪く、その追従性を向上させる上において改善すべき点が残されている。
【0012】
また、アジャストスクリュに捩りトルクを負荷する捩りコイルばねが、アームの端部上に露出しているため、アーム式動弁装置に対するアームの組付け時、比較的強度の弱い捩りコイルばねが、エンジン周りの他の部品や構造物に接触して変形したり、外れ落ちる可能性があって取扱いが困難であり、その取扱いの容易化を図る上においても、改善すべき点が残されている。
【0013】
ここで、特公昭62−33401号公報に示されるように、アームの端部にねじ孔を形成し、そのねじ孔の内周の雌ねじにスクリュロッドの外周の雄ねじをねじ係合させるようにすると、アームの端部の軽量化を図ることができるものの、上記公報に記載された弁すきま調整装置においては、アーム上に設けた板ばねによってアジャストスクリュを軸方向に押圧するようにしているため、アーム組付け時の取り扱いの容易化までも改善することはできない。
【0014】
この発明の課題は、捩りコイルばねの捩りトルクの負荷によりアジャストスクリュを回転させつつ軸方向に移動させてバルブクリアランスを自動調整するラッシュアジャスタ機能部を一方の端部に有するロッカアームにおいて、アーム端部の軽量化により高速回転時の追従性の向上を図り、かつ、動弁装置に対する組付け時の取扱いの容易化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明においては、カムの回転により一端部が押上げられてロッカシャフトを中心に揺動し、他端部でバルブステムを押し下げてバルブを開放させる揺動可能なアームを有し、そのアームの両端部における一方の端部に、その端部下面で開口するねじ孔と、そのねじ孔の上側にアームの端部上面で開口するストレート孔とを設け、前記ねじ孔の内周に形成された雌ねじにアジャストスクリュの外周に形成された雄ねじをねじ係合し、前記ストレート孔内に捩りコイルばねを組込み、その捩りコイルばねの上端部をアームに連結し、下端部を前記アジャストスクリュの上部に連結して、アジャストスクリュが回転しつつねじ孔の下端開口から突出する方向に向けて移動する方向の捩りトルクをアジャストスクリュに負荷した構成を採用したのである。
【0016】
上記のように、アジャストスクリュの雄ねじがねじ係合されるねじ孔をアームの一方の端部に形成することによって、アームの一方の端部の軽量化を図ることができ、カムの高速回転による追従性の良好なロッカアームを得ることができる。
【0017】
また、捩りコイルばねをアームの端部に形成されたストレート孔内に組み込むことによって、動弁装置に対するロッカアームの組付け時に、捩りコイルばねがエンジン周りの他の部品に接触するというようなことがなくなり、アーム組付け時の取り扱いを容易とすることができる。
【0018】
ここで、ねじ孔の上側に形成されたストレート孔の内径をねじ孔の内径より大径とすると、タップによるねじ孔の加工を可能とし、ねじ孔を簡単に形成することができる。
【0019】
また、捩りコイルばねの外径をストレート孔の内径より小径とし、かつ、ねじ孔の内径より大径とすると、バックラッシュを自動調整するラッシュアジャスタ機能部の組立て時、捩りコイルばねをストレート孔の上方から落とし込むことにより、ストレート孔とねじ孔の境界位置に形成される段差部で捩りコイルばねが受け止められるため、組立ての容易化を図ることができる。
【0020】
さらに、捩りコイルばねの上下両端部のそれぞれに角形の巻回部を設け、その上側巻回部をストレート孔の上側開口端部内に固定されたキャップ部材の下端部の角筒部に嵌合し、下側巻回部をアジャストスクリュの上部に設けられた角軸部に嵌合することにより、アームおよびアジャストスクリュに対する捩りコイルばねの連結を嵌合による連結とすることができ、捩りコイルばねをアームおよびアジャストスクリュに対して容易に連結することができる。
【0021】
この発明に係るロッカアームにおいて、捩りコイルばねの巻方向をアジャストスクリュの外周に形成された雄ねじの巻方向に対して逆巻とすると、捩りコイルばねに捩りを与えた際に、上下の巻回部はキャップ部材の角筒部およびアジャストスクリュの角軸部に強く巻付くことになり、アジャストスクリュに対して捩りトルクを確実に負荷することができる。
【0022】
また、捩りコイルばねは負荷される捩りによって中央部の円筒形コイル部が縮径することになる。このため、捩りが与えられる前の無負荷状態で、捩りコイルばねの外径とストレート孔の内径面間の隙間を小さく設定することができる。これにより、ストレート孔に対して捩りコイルばねを挿入する組付け時に、捩りコイルばねはストレート孔の内径面で案内されて傾くのが防止され、下側巻回部をアジャストスクリュの角軸部に確実に嵌合させることができると共に、キャップの角筒部を上側の巻回部に確実に嵌合させることができ、組立ての自動化を可能とすることができる。
【0023】
ここで、ラッシュアジャスタ機能部の組立てには、下記の組立て方法を採用することができる。すなわち、ねじ孔の下端開口からアジャストスクリュをねじ込み、そのアジャストスクリュを最も奥の位置までねじ込んだ状態で、ストレート孔の上側開口から捩りコイルばねを挿入して、その下側の巻回部をアジャストスクリュの角軸部に嵌合し、捩りコイルばねの上側巻回部にキャップ部材の角筒部を嵌合させて、キャップ部材を回転し、捩りコイルばねに所定大きさの捩り力を付与する状態で、キャップ部材をストレート孔の上側開口部に圧入する。
【0024】
上記のような組立て方法の採用において、捩りコイルばねの自由長さを、ねじ孔内の最も奥の位置までねじ込まれたアジャストスクリュの角軸部に下側巻回部が嵌合される状態で上部がアームの端部上面から上方に位置する長さとしておくことにより、キャップ部材の回転による捩り力の負荷を確実に行うことができ、組立ての容易化を図ることができる。
【0025】
キャップ部材を圧入によって取付け場合は、そのキャップ部材に円筒部を設けておくようにする。このとき、円筒部の上端面で開口する切欠部を形成しておくことにより、圧入代を高精度に管理する必要がなくなって加工の容易化を図ることができ、安定した圧入力を得ることができる。また、円筒部の上端に外向きのフランジを設けておくと、アームの上端面に対するフランジの当接によって圧入量を管理することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明においては、上記のように、アジャストスクリュの雄ねじがねじ係合されるねじ孔をアームの一方の端部に直接形成したことによって、アームの端部を薄肉として軽量化を図ることができ、カムの高速回転による追従性の良好なロッカアームを得ることができる。
【0027】
また、捩りコイルばねをアームの一方の端部に形成されたストレート孔内に組み込んだことによって、動弁装置に対するロッカアームの組付け時に、捩りコイルばねがエンジン周りの他の部品に接触するというようなことがなくなり、取り扱いの容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るロッカアームを採用したアーム式動弁装置の縦断面図
【図2】図1のラッシュアジャスタ機能部の組込み部を拡大して示す断面図
【図3】図2の平面図
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図2のV−V線に沿った断面図
【図6】ラッシュアジャスタ機能部の組立て途中の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、アーム式動弁装置を示す。このアーム式動弁装置においては、シリンダヘッド1の上側に配置されたロッカシャフト2によってアーム3の長さ方向中央部を支持し、そのアーム3の一端部をカム4の回転により押し上げてロッカシャフト2を中心にアーム3を揺動させ、そのアーム3の他端部でバルブステム5を押し下げてバルブ6を開放させるようにしている。
【0030】
ここで、バルブステム5は、上端にスプリングリテナ7を有し、そのスプリングリテナ7に負荷されるバルブスプリング8の押圧力によってバルブステム5は下端のバルブ6がバルブシート9に密着する方向に付勢されている。
【0031】
なお、図1では、カム4の回転によりタペット10およびプッシュロッド11を介してアーム3の一端部を押し上げるようにしたOHVエンジンを示しているが、アーム3の一端部をカム4によって直接押し上げるようにしたOHCエンジンであってもよい。
【0032】
図2に示すように、アーム3の一端部内には、バルブクリアランスを自動調整する機械式のラッシュアジャスタ機能部20が設けられている。
【0033】
ラッシュアジャスタ機能部20は、アーム3の一端部に、その一端部下面で開口するねじ孔21と、その上側にアーム3の一端部上面で開口するストレート孔22を形成し、上記ねじ孔21の内周に形成された雌ねじ23にアジャストスクリュ24の外周の雄ねじ25をねじ係合し、そのアジャストスクリュ24にストレート孔22内に組み込まれた捩りコイルばね26の捩りトルクを負荷して、アジャストスクリュ24が回転しつつねじ孔21の下端開口から下方に向けて移動する方向にアジャストスクリュ24を付勢し、そのアジャストスクリュ24の下端に設けられた球面部27をプッシュロッド11の上面に形成された球面座28に押し付けるようにしている。
【0034】
ここで、ねじ孔21の内周に形成された雌ねじ23およびアジャストスクリュ24の外周に形成された雄ねじ25は、カム4からの押し込み力を受ける圧力側フランク29のフランク角が遊び側フランク30のフランク角より大きい鋸歯状ねじとされ、その鋸歯状ねじに捩りコイルばね26の捩りトルクによってアジャストスクリュ24が回転しつつ軸方向に移動するリード角が設けられている。
【0035】
なお、雌ねじ23および雄ねじ25は鋸歯状ねじに限定されず、台形ねじであってもよく、あるいは、三角ねじであってもよい。
【0036】
ストレート孔22の内径は、ねじ孔21の内径より大径とされ、そのストレート孔22とねじ孔21の境界位置に段差面31が設けられている。
【0037】
捩りコイルばね26の捩りトルクをアジャストスクリュ24に負荷するためには、その捩りコイルばね26の上端部をアーム3に連結し、下端部をアジャストスクリュ24に連結する必要がある。そこで、実施の形態では、図2、図4および図5に示すように、捩りコイルばね26の上下の両端部に角形の巻回部32a、32bを設け、その上側巻回部32aをストレート孔22の開口端部内に取付けたキャップ部材33の下端の角筒部34に嵌合し、下側巻回部32bをアジャストスクリュ24の上端部に設けられた角軸部35に嵌合している。
【0038】
ここで、キャップ部材33をアーム3に固定するため、そのキャップ部材33に円筒部36を設け、その円筒部36をストレート孔22の上側開口端部内に圧入している。また、その圧入量を規制するため、上記円筒部36の上端に外向きフランジ37を設け、その外向きフランジ37をアーム3の一端部上面に衝合させるようにしている。
【0039】
図2および図3に示すように、外向きフランジ37の外周から円筒部36の上部に至る切欠部38を形成しておくと、圧入代を高精度に管理する必要がなくなり、安定した圧入力を得ることができる。
【0040】
図6に示すように、捩りコイルばね26は、その外径がストレート孔22の内径より小径とされ、かつ、ねじ孔21の内径より大径とされている。また、捩りコイルばね26の巻方向は、アジャストスクリュ24の外周に形成された雄ねじ25の巻方向に対して逆巻とされている。
【0041】
さらに、捩りコイルばね26の自由長さLは、ねじ孔21にねじ係合されたアジャストスクリュ24が最も奥の位置までねじ込まれて上部の角軸部35に下側巻回部32bが嵌合される状態で上部がアーム3の一端部上面から上方に位置する長さとされている。ここで、アジャストスクリュ24が最も奥の位置までねじ込まれた、とは、そのアジャストスクリュ24の下端部に設けられたフランジ39がアーム3の一端部下面に衝合する位置までアジャストスクリュ24がねじ込まれた状態をいう。
【0042】
上記の構成からなるラッシュアジャスタ機能部20の組立てに際しては、ねじ孔21の下端開口からアジャストスクリュ24をねじ込み、そのアジャストスクリュ24の下端部に設けられたフランジ39が、図6に示すように、アーム3の一端部下面に衝合する最も奥の位置までねじ込まれた状態で、ストレート孔22の上側開口から捩りコイルばね26を挿入して、下側巻回部32bをアジャストスクリュ24の角軸部35に嵌合し、捩りコイルばね26の上側巻回部32aにキャップ部材33の角筒部34を嵌合して、キャップ部材33を回転し、捩りコイルばね26に所定大きさの捩り力を付与する状態で、キャップ部材33をストレート孔22の上側開口部に圧入する。
【0043】
上記のような組立てにおいて、捩りコイルばね26の自由長さLは、ねじ孔21内の最も奥の位置までねじ込まれたアジャストスクリュ24の角軸部35に下側巻回部32bが嵌合される状態で上部がアーム3の一端部上面から上方に位置する長さとされているため、捩りコイルばね26の上側巻回部32aにキャップ部材33の角筒部34を容易に嵌合させることができ、そのキャップ部材33の回転によって捩りコイルばね26に捩り力を確実に負荷することができる。
【0044】
なお、ラッシュアジャスタ機能部20の組立ては上記の方法に限定されない。例えば、アジャストスクリュ24を所定量ねじ込む状態で、その上側の角軸部35に捩りコイルばね26の下側巻回部32bを嵌合し、上側巻回部32aのキャップ部材33の角筒部34を嵌合し、そのキャップ部材33をストレート孔22の上側開口部内に圧入した状態で、アジャストスクリュ24をねじ込んで、捩りコイルばね26に捩り力を付与するようにしてもよい。
【0045】
アーム3は、ラッシュアジャスタ機能部20の組立て後において動弁装置への組付けが行われる。その組付けに際しては、アジャストスクリュ24を押し込み状態に保持してアーム3の組付けを行ない、その組付け後、アジャストスクリュ24の押し込み保持を解除する。その解除により、アジャストスクリュ24は捩りコイルばね26の捩りトルクの負荷により、回転しつつ下降して下端の球面部27がプッシュロッド11の上面に形成された球面座28を押圧し、バルブクリアランスを自動調整する状態とされる。
【0046】
上記のようなアーム3の動弁装置への組付けにおいて、アジャストスクリュ24に捩りトルクを負荷する捩りコイルばね26はストレート孔22内に収納された状態にあるため、他の部品との接触はなく、取り扱いが容易である。
【0047】
ラッシュアジャスタ機能部20が組み込まれたアーム3の組付け状態でエンジンを駆動し、カム4の回転によってバルブ6を開閉させる運転状態において、シリンダヘッド1の熱膨張によってバルブステム5とアーム3の他端部間にバルブクリアランスが生じると、捩じりコイルばね26からアジャストスクリュ24に負荷される捩りトルクにより、アジャストスクリュ24が圧力側フランク29に沿って回転しつつ下降するような動きとなる。
【0048】
このとき、アジャストスクリュ24はプッシュロッド11に当接して非可動の支持であるため、アーム3の一端部が持ち上げられることになり、上記アーム3がロッカシャフト2の中心に揺動してバルブクリアランスを吸収する。
【0049】
また、アジャストスクリュ24がバルブステム5からアーム3を介して押し込み力を受けると、互いに圧接する圧力側フランク29によって上記押し込み力が支持され、アジャストスクリュ24が回転しつつねじ孔21内に没入する方向に向けて移動するのが防止される。
【0050】
反対に、バルブシート9の摩耗等によりカム4とアジャストスクリュ24の下端間の距離が縮まると、アジャストスクリュ24はプッシュロッド11から負荷される軸方向の変動荷重により徐々に押し込まれて回転しつつねじ孔21内に没入する方向(上方向)に向けて移動し、カム4のベース円4aがタペット10と接触するバルブ閉鎖時にバルブ6が不完全に閉鎖するのを防止する。このとき、アジャストスクリュ24は前記軸方向の変動荷重の最小値が0となる位置まで押し込まれ、それ以上は後退しない。
【0051】
バルブクリアランスを自動調整するラッシュアジャスタ機能部20が組み込まれたアーム3は、カム4の回転により、ロッカシャフト2を中心にして揺動する。このとき、アーム3の一方の端部では、アジャストスクリュ24の雄ねじ25がねじ係合されるねじ孔21がアーム3に直接形成されて薄肉とされているため、軽量であり、カム4の高速回転に対しも、良好に追従して揺動運動する。
【符号の説明】
【0052】
2 ロッカシャフト
3 アーム
4 カム
21 ねじ孔
22 ストレート孔
23 雌ねじ
24 アジャストスクリュ
25 雄ねじ
26 捩りコイルばね
31 段差面
32a 巻回部
32b 巻回部
33 キャップ部材
34 角筒部
35 角軸部
36 円筒部
37 外向きフランジ
38 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムの回転により一端部が押上げられてロッカシャフトを中心に揺動し、他端部でバルブステムを押し下げてバルブを開放させる揺動可能なアームを有し、そのアームの両端部における一方の端部に、その端部下面で開口するねじ孔と、そのねじ孔の上側にアームの端部上面で開口するストレート孔とを設け、前記ねじ孔の内周に形成された雌ねじにアジャストスクリュの外周に形成された雄ねじをねじ係合し、前記ストレート孔内に捩りコイルばねを組込み、その捩りコイルばねの上端部をアームに連結し、下端部を前記アジャストスクリュの上部に連結して、アジャストスクリュが回転しつつねじ孔の下端開口から突出する方向に向けて移動する方向の捩りトルクをアジャストスクリュに負荷したバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項2】
前記ストレート孔の内径を前記ねじ孔の内径より大径とした請求項1に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項3】
前記捩りコイルばねの外径を前記ストレート孔の内径より小径とし、かつ、ねじ孔の内径より大径とした請求項2に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項4】
前記捩りコイルばねの上下両端部のそれぞれに角形の巻回部を設け、その上側巻回部をストレート孔の上側開口端部内に固定されたキャップ部材の下端部の角筒部に嵌合してアームに対する連結とし、下側巻回部をアジャストスクリュの上部に設けられた角軸部に嵌合してアジャストスクリュに対する連結とした請求項1乃至3のいずれかの項に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きのロッカアーム。
【請求項5】
前記捩りコイルばねの巻方向をアジャストスクリュの外周に形成された雄ねじの巻方向に対して逆巻とした請求項1乃至4のいずれかの項に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項6】
前記捩りコイルばねの自由長さが、前記ねじ孔内に最も押し込まれたアジャストスクリュの角軸部に下側巻回部が嵌合される状態で上部がアームの端部上面から上方に位置する長さとされた請求項4又は5に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項7】
前記キャップ部材の上部に円筒部を設け、その円筒部をストレート孔の開口端部内に圧入した請求項4乃至6のいずれかの項に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項8】
前記円筒部が、その円筒部の上端面で開口する切欠部を有してなる請求項7に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。
【請求項9】
前記円筒部が、外向きのフランジを上端に有してなる請求項7又は8に記載のバルブクリアランス自動調整機能付きロッカアーム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−96338(P2013−96338A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241275(P2011−241275)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】