バルブボディ、複合バルブ、複合バルブを用いた洗浄機能を有する流体供給ライン、及び複合バルブ付流体用容器
【課題】洗浄性又はパージ性に優れたバルブや流体供給系を提供すること。
【解決手段】(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディ。
【解決手段】(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するバルブボディ、該バルブボディを用いた複合バルブ、該複合バルブを用いた洗浄機能を有する流体ライン、及び該複合バルブを用いたバルブ付流体用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスや精密分析においては、流体(ガス、液体)を移送又は供給する装置は、そのライン内を常にコンタミネーションや異物のない状態に保つ必要があり、そのため、供給装置の部品交換、供給する流体を切り替える際のラインの洗浄やパージが行われる。特に流体用のバルブには、流路に流体が残留しやすいスペースが存在するので、残留する流体を洗浄やパージによって除去しやすい流路、構造を有するバルブが提案されている。また、高度に清浄度を保つ必要のある流体供給系においては、洗浄機能を有する供給系が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タンク室を設けたガス置換性を向上させたブロックバルブが報告されている。また、特許文献2には、2組のシリンダー制御弁を1つのバルブケーシングに組み込んだ一体型の複合弁が報告されている。
しかし、特許文献1に記載のバルブは、センター孔同士を接続する流路が、残留流体が滞留する部分となってしまう問題点を有している。また、特許文献2に記載のバルブも、並列する2組の制御弁に通じる流路に、残留物が洗浄、除去され難いスペースを有している。
【0004】
また、洗浄機能を有する流体供給系については、例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に報告されている。これらは、配管とバルブの配置の工夫により、高度な洗浄やパージを可能とするものであり、バルブ由来の流体残留の問題を解決するものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−119844号公報
【特許文献2】特開2001-317655号公報
【特許文献3】特開2001−108199号公報
【特許文献4】特開2002−226677号公報
【特許文献5】特開2005−131632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、洗浄性又はパージ性に優れたバルブや流体供給系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、洗浄又はパージにおいて、構造上の流体滞留部を排除したバルブボディの構造を見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記のバルブボディを用いた複合バルブであり、流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とする複合バルブを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体供給ラインを提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、上記の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体用容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバルブボディを用いた本発明の複合バルブは、洗浄性又はパージ性に優れるので、これを用いた流体供給ライン又は流体用容器を使用することで、洗浄性又はパージ性に優れた流体供給系を提供することができる。上記の流体供給ライン又は流体用容器を使用した流体供給系は、特に流体が液体の場合に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明のバルブボディについて説明する。
本発明のバルブボディの特徴は、(1)相対立する面に2種類の弁要素部(弁要素部A及び弁要素部B)を有し、(2)弁要素部Aは3つの弁孔を有し、弁要素部Bは2つの弁孔を有し、弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立する面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)弁要素部Aの弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b、流路cを形成しており、弁要素部Bの弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることにある。この構成をとることにより、V型2連3方複合バルブに代表される従来の複合バルブよりも、バルブ内の流路を短くすること、単純な構造にすることが可能となり、小型化が可能である。
【0014】
本発明のバルブボディの構成を図1に示す。なお、図1は、本発明のバルブボディの構成についての概念を表すモデルである。
【0015】
図1のモデル(I)〜(IV)は、弁要素部Aから通じる流路b、流路c及び弁要素部Bから通じる流路dが、それぞれ、弁要素部Aが存在する面に平行する方向に配された異なる3つの孔又は流路に通じる形状で示している。この形状は、バルブ内の流路を短くでき、また、孔開け加工が加工面に対して垂直方向のみであるので孔開け、孔の連結孔内の精密研磨が容易であるので好ましい。
【0016】
また、上記のモデル(I)〜(IV)では、流路b、流路c、流路dが、それぞれ異なる方向(面)に向いて配されているが、図2に示すように、3つが同じ面に配されていてもよく〔モデル(III−1)参照〕、2つが同じ面に配されていてもよい〔モデル(III−2)、(III−3)参照〕。なお、図2は、図1におけるモデル(III)のタイプを代表例として表しているが、(I)、(II)、(IV)についても同様である。
【0017】
また、弁要素部Aの3つの弁孔と弁要素部Bの2つの弁孔の配置については、任意である。例えば、図1のモデル(III)は、弁要素部Aの3つの弁孔が直列に、弁要素部Bの2つの弁孔を結んだ直線と90°の角度をなすように配置されているが、弁要素部Aの3つの弁孔が弁要素部Bの2つの弁孔と直列するように配されてもよい。また、弁要素部Aの3つの弁孔はL字型(90°)に配置されてもよく、くの字型(>90°)に配置されてもよく、レの字型(<90°)に配置されてもよい。図3のモデル(III')は、弁要素部Aの弁孔と弁要素部Bの弁孔を直列に配置した場合のモデルであり、モデル(III")は、弁要素部Aの弁孔をL字型に配置した場合のモデルである。本発明のバルブボディとしては、小型化に適し、加工も容易であるので、弁要素部Aの弁孔と弁要素部Bの弁孔を直列に配置したもの又は弁要素部Aの弁孔をL字型に配置したものが好ましい。
【0018】
本発明のバルブボディは、(1)相対立する面に2種類の弁要素部(弁要素部A及び弁要素部B)を有し、(2)弁要素部Aは3つの弁孔を有し、弁要素部Bは2つの弁孔を有し、弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立する面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)弁要素部Aの弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b、流路cを形成しており、弁要素部Bの弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするが、これらの特徴を備えていれば、更に構成要素が追加されていてもよい。例えば、流路eを追加して、四方バルブボディとすることもできる。四方バルブボディの例としては、図4のモデル(V−1)、(V−2)、(V−3)で示される構造が挙げられる。
【0019】
本発明のバルブボディの構造を図5に示す。図5は、バルブの具体的な形状図にあわせたもので、その内部構造の縦断面図である。なお、図5に対応するモデルは図3のモデル(III')であり、ダイヤフラム弁を用いた場合の構成である。
【0020】
本発明のバルブボディは、用途や機能により、弁孔の配置や流路の方向を選択することができるが、洗浄又はパージ特性を重要視したバルブに使用される場合は、図1のモデル(III)及びモデル(III)に属するものが好適である。例えば、モデル(III)に属するものとしては、図2のモデル(III−1)、(III−2)、(III−3)、図3のモデル(III')、(III")が挙げられる。
【0021】
次に、本発明の複合バルブについて説明する。
本発明の複合バルブは、本発明のバルブボディを用いたものであり、本発明のバルブボディの流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とするものである。具体的には、本発明のバルブボディにおけるモデル(III)のタイプに属するものを用いた複合バルブが挙げられる。本発明の複合バルブは、洗浄性又はパージ性が良好である。
【0022】
また、本発明の複合バルブにおいて、上記の弁機構A、弁機構Bとしては、例えば、ニードルバルブ、ベローズバルブ、ボールバルブ、アングルバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ダイヤフラムバルブの開閉弁が挙げられる。本発明の複合バルブの構造の利点を最大限に活かすには、流体滞留部の少ないダイヤフラム方式の開閉弁が好適である。その他のバルブの場合は、本発明のバルブボディの効果により排除された流体滞留部よりも大きな流体滞留部を形成する場合がある。また、バルブ機構の制御方式は手動、自動制御(圧空駆動、電動駆動等)いずれでもよい。自動制御の場合、初期状態は開(ノーマリーオープン)でもよく、閉(ノーマリークローズ)でもよい。
【0023】
本発明の複合バルブの好ましい形態の1つである弁機構A及び弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁である場合の具体例を図6に示す。
【0024】
本発明の複合バルブの好ましい形態の1つである弁機構A及び弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁であるものは、図7の様なバルブ記号の組み合わせによる構成図で表すことができる。図7において、黒塗り部はダイヤフラムによる開閉機構及び/又は流量調整機構の対象となる中心側の流路ポートを表す。なお、以下、ライン、配管、容器に本発明の複合バルブを使用した場合を図で示す場合は、この構成図を用いることもある。
【0025】
本発明の複合バルブの有効な使用方法の一例としては、弁機能Aを分流弁とし、弁機能Bを封止弁とする使用方法が挙げられる。例えば、流路cを流体の供給元のラインに接続し、流路bをプロセス装置へ流体を供給するラインに接続し、流路dをドレインラインに接続する。流体供給時は、弁機能Bを閉にして弁機能Aの開閉で流体のプロセスへの供給をコントロールすることができる。供給ラインのメンテナンス(部材交換、洗浄、パージ)時は、弁機能Aを閉とし、弁機能Bを開にして、関連する供給元のライン及び本発明の複合バルブ内の流体を、流路dから排出する。複合バルブ内の流体の排出ルートは流路c→流路a→流路dとなる。その後、流体の供給ラインに洗浄用又はパージ用の流体(ガス又は液体)を流通させ、必要に応じて真空引きを併用し、供給ライン及び複合バルブ内を洗浄する。この時、流路b及びプロセスラインは封止されているので、供給ラインのメンテナンスの影響を完全に排除できる。洗浄又はパージ用流体は、サイクル的に流通させると洗浄効果が向上するので、サイクルパージ又はサイクル洗浄するのが好ましい。また、供給する流体及び/又はパージ・洗浄用流体が液体である場合は、複合バルブ内の液溜りを効率的に排出するために、ドレインラインへの流路の出口方向が下を向くような複合バルブのデザイン及び配置を選択することが好ましい。例えば、上記例示の使用法の場合には、流路dが下を向くように配置する。
【0026】
次に、本発明の流体供給ライン(以下、本発明の洗浄機能付流体供給ラインともいう)について説明する。
本発明の洗浄機能付流体供給ラインは、上記の本発明の複合バルブを具備してなるものであり、流体(ガス又は液体)をプロセスラインに供給する機能を有し、且つ、洗浄又はパージ用の流体(ガス又は液体)を導入することができるものである。形状及び形態は制限されない。洗浄又はパージ用の流体(ガス又は液体)を導入する際に適切な手順を選択して、プロセスサイドへのラインを遮断することで、プロセスサイドに影響を与えることなく、供給サイドのラインに残存する供給流体を完全にかつ簡便に洗浄置換できる。
【0027】
本発明の洗浄機能付流体供給ラインの一例を図8に示す。図8は、供給する流体が1系列の場合のラインである。図8で示した洗浄機能付流体供給ラインにおいて、本発明の複合バルブは、V3及びV4を含む点線で囲われた部分並びにV8及びV9を含む点線で囲われた部分の2箇所である。V1へは供給流体もしくはパージガス(通常は清浄な不活性ガスを使用する)を切り替えて導入でき、また、V2へは洗浄流体とパージガスを切り替えて導入でき、ベントは真空系に接続されている。
【0028】
以下に図8で示した洗浄機能付流体供給ラインの運用例を示す。
(供給工程1):V1,V2,V4,V5,V6,V9を閉止、V3,V7,V8を開放してベントより供給流体が充填される系内を真空引きする。
(供給工程2):(供給工程1)の状態から、V7,V8を閉止、V1,V3の順に開放し供給流体を導入する。V3,V1を閉止し待機状態とする。
(供給工程3):プロセスサイドからの供給要求に応じ、待機状態から、V1,V3,V9を開放し、供給流体をプロセスサイドに供給する。
(供給工程4):プロセスサイドからの停止要求に応じ、(供給工程3)の状態からV9,V3,V1の順にバルブを閉止し、待機状態に戻す。
【0029】
上記の供給工程により、流体の供給を繰り返し行った後、供給流体のタンク交換等で供給ラインのメンテナンスを行う場合の供給ラインの洗浄は、下記の操作により行うことができる。
(洗浄工程1):V9を閉止してプロセスサイドと供給系を絶縁した状態下で、V2,V6,V5,V4は閉止状態とし、V7,V8,V3,V1の順にバルブを開放し、系内に残存する供給流体をベントへ排出する。更にV1から間欠的にパージガスを導入し、供給流体の接触したラインをサイクルパージする。
(洗浄工程2):(洗浄工程1)の状態から、V1を閉止して供給流体の接触したラインを真空引きする。このとき供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程3):(洗浄工程2)の状態から、V2、V5を開放し、V4,V3,V8,V7の経路で洗浄用流体を流し、系内を洗浄する。この際、間欠的にV5を閉止させ洗浄用流体を脈動的に流入させ洗浄効果を向上させることもできる。(洗浄工程2)と同じく、供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程4):(洗浄工程3)の状態で、V2からの導入流体を洗浄用流体からパージガスに切り替え、V4閉止、V6開放し、洗浄用流体導入部分のデッドスペースに残存する洗浄用流体をベントより排出する。
(洗浄工程5):(洗浄工程4)の状態から、V6閉止、V4開放し、V2から間欠的にパージガスを導入し、供給流体の接触したラインをサイクルパージする。
(洗浄工程6):(洗浄工程5)の状態から、V2,V5を閉止し、V6を開放して、ベントよりライン全体を真空引きする。このとき供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程7):V6,V7,V9,V1を閉止し、V2,V5を開放しパージガスを導入し系内を不活性ガス雰囲気に戻し、V2,V5を閉止する。この状態で完全にラインは正常化された状態に戻る。ここで供給工程が開始可能の状態となる。
【0030】
本発明の洗浄機能付流体供給ラインの別の一例を図9に示す。図9は供給する流体が4系列の場合のラインである。基本的な操作方法は図8の運用例で述べた方法に準ずる。複数のプロセスラインから供給要求があった場合は同時に供給してもよいし、1プロセスライン毎に順次供給してもよい。
【0031】
次に、本発明の流体用容器について説明する。
本発明の流体用容器は、前記の本発明の複合バルブを具備してなるものであり、主に流体(ガス又は液体)をプロセスラインに供給するのに用いる流体容器である。本発明の流体用容器は、流体の保存容器、デリバリー容器を兼ねてもよい。本発明の流体用容器は、形状及び形態は制限されない。
【0032】
本発明の流体用容器の例を図10に示す。図10の容器1〜6は、いずれも流体が液体である場合の例である。
【0033】
本発明の流体用容器の使用方法及び利点について、容器2を代表例として説明する。
流体をプロセスへ供給しているときは、V4、V1は開の状態で、流体の供給圧力を保持するためにアルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスを外部から導入する。V6は閉で、V3は開、V2は閉、V5は開で、AからFを流通させてFからプロセスラインへ流体を供給する。容器が空になり、メンテナンスを行う際には、V1は閉、V4は開、V3は閉、V6は閉、V2は閉、V5は開で、Fからの吸引又は減圧によりFからAまでの残留流体の吸出しと、V2を開くことによるV4からの不活性ガスパージの繰り返しにより、A〜Fまでの残留流体除去を行う。次にA〜F間でのラインの洗浄を洗浄用液体で行う。この際は、V5開、V2閉、V3閉、V6開でF〜Bへと洗浄用液体を流す。洗浄用液体の流通の後でV2を開にすることよる不活性ガスのパージを行い、必要に応じて洗浄液体流通と不活性ガスのパージをサイクルで行う。上記操作をすることで、流体用容器のバルブ内及び配管系を高度に清浄な状態に保つことが可能となる。
【0034】
図10の容器1は、本発明の流体用容器の基本的な構成を示す例である。容器3及び容器4は、容器2にさらなる機能を付与した例である。容器3は、F'からキャリアガスを導入して、容器内の流体を押し出して供給させることもでき、Fからキャリアガスを導入して、F'から流体を同伴させた気流として流体を供給させるバブラー容器として使用することもできる。容器4は、更に充填機能を付与したものであり、容器4においては、Gは流体を補充・充填及び/又は排出するためのメンテナンスポートであり、B,B'はドレインである。容器5,6は、容器1にさらなる機能を付与した例である。容器3,4ではB、B'としてドレインポートを別途設けた態様であるが、容器5,6ではそれを簡略化し、ポートFに供給流体排出と、ドレインの両機能を集約させた態様としてある。また、容器3,4,5,6ではV3に連結したディップチューブが容器内に導入されているが、例えば、容器に液体が導入される用途で使用される場合等においては、ディップチューブをV3バルブに連結するのではなく、メンテナンスポートのバルブに接続して使用することもできる。
【0035】
以下の説明は、本発明のバルブボディ、複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器に、適宜適用される。
本発明の流体供給ライン、流体用容器には、上記の基本構成以外に、必要に応じてその構成中にバルブ、分岐管、バイパス管、ドレイン管、圧力計、圧力制御装置、真空度制御装置、残量計量装置、漏洩検知器、エジェクター、質量流量制御器(MFC)又は質量流量計(MFM)等の流量制御機器等のプロセス制御やメンテナンスのための部材を配置することができる。また、系内の清浄度を高めるために部分的又は全体的に加熱ができるように必要に応じてヒーターや加熱コントロール装置を配していてもよい。
【0036】
さらに、容器部位には、充填ポート、排出ポート等容器のメンテナンスに係わる予備ポートを設置してもよく、圧力計、レベルメーター、残量計量装置等を設置してもよい。
【0037】
これらの各部位の部材については、流体の分解、変質の要因となる外環境因子を遮断し、流体に対して実質的に不活性なものが使用される。
【0038】
本発明のバルブボディ、複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器の部材の材質としては、テフロン(登録商標)等のフッ素化樹脂、シリコン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、PET、塩ビ等の合成樹脂類;SUS316、316L、304、304L、317、317Lに代表されるオーステナイト系ステンレス、SUS405、410、430、TP409に代表されるフェライト系ステンレス、SUS329に代表される2層ステンレス等の各種ステンレス材、ハステロイ等のニッケル合金、チタン、アルミ等の金属類;ガラス、石英等のガラス類;アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化タンタル、窒化珪素、窒化チタン等のセラミックス類が挙げられ、これらは単独で又は併用して使用することができる。また、材料や目的によっては、テフロン(登録商標)やガラス等の不活性材料で表面をコーティングしてもよい。
【0039】
CVD、ALD等の半導体製造プロセスに使用される場合には、高真空対応性や高清浄度保持に適するステンレス材が好ましく、更に、流体接触部分は、配管からのパーティクル及び金属の溶出や、その他水等の不純分の放出等を防ぐため、バフ研磨処理、電解研磨処理、更に物理的及び/又は化学的研磨手法を併用したECB、MCP等の高精度研磨処理を施した上、精密洗浄を施し、十分に乾燥を施した表面状態とすることが好ましく、必要に応じて表面にオゾンパッシベーション、酸素/加熱処理によるパッシベーション化、フッ化処理等による不導体化処理等、2次的なクリーン化処理を施してもよい。
【0040】
CVD、ALDプロセスに使用される場合の流路、配管部位には、ステンレス部材の配管が好適である。SUS316LのAOD若しくはVOD(シングルメルト材)又はVIM/VAR(ダブルメルト材)が使用され、その内表面はBA以上、好ましくはEP処理同等以上のクリーン配管を使用する。強度の耐蝕性を要求される場合等、必要に応じて配管内表面に酸化若しくはフッ素化パッシベーション処理等を施しても良い。また、配管同士又はフィッティング類との固定接続は通常クリーン雰囲気下での突き合わせ自動溶接によるものが好適である。
【0041】
また、CVD、ALDプロセスに使用される場合の接続部分及びバルブや配管のフィッティングによる接続する場合の方式としては、PT、NPT、NW,KW、ICF、ISO、スエジロック、VCR、UJR、CVC、MCG、UPG、スーパーJSK等が挙げられる。流体、洗浄液、不活性ガスとの接触部分には、締め付け時のパーティクル発生を極力抑えることが可能であり、デッドスペースが極力小さいUPG、VCR、UJR、CVC、HMJが好ましい。また、バルブボディを集積バルブ状に接続するためには、Cシール、Wシール等の方式を使用することができるが、特にデッドスペースを極小化するためにはWシールが好ましい。
【0042】
本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器は、流体が液体の場合、流体が発火性の場合、流体が腐食性の場合、流体が高い反応性を有する場合に有用である。特に半導体の製造プロセスであるCVD法やALD法は、高反応性の液体を扱うので、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器を適用することが有効である。その他に、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器は、精密分析装置に組み込んで用いたり、フォトレジスト工程又はドライ若しくはウェットエッチング工程における薬剤の供給や、医薬品、食品、飲料の製造及び/又は供給等に用いることもできる。
【0043】
CVD、ALDプロセスに使用される場合、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器中に流通する流体としては、例えば、珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物や、それらの混合物及び溶液が挙げられる。金属化合物を構成する金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1族元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2族元素、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチノイド元素等の3族元素、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルの5族元素、クロム、モリブデン、タングステンの6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムの7族元素、鉄、ルテニウム、オスミウムの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムの9族元素、ニッケル、パラジウム、白金の10族元素、銅、銀、金の11族元素、亜鉛、カドミウム、水銀の12族元素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの13族元素、ゲルマニウム、錫、鉛の14族元素、砒素、アンチモン、ビスマスの15族元素、ポロニウムの16族元素が挙げられる。
【0044】
上記の珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物は、CVD、ALD法に使用し得る揮発性を有するものであれば特に制限されることはない。上記の珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物において、珪素原子、リン原子、ホウ素原子、金属原子と結合し各化合物を構成する配位子としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物、メタン、エタン、プロパン、2−プロパン、ブタン等のアルカン類;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン等のモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ第三ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリメチルシリルアミン、トリエチルシリルアミン等のシリルアミン;メタンイミン、エタンイミン、プロパンイミン、2−プロパンイミン、ブタンイミン、2−ブタンイミン、イソブタンイミン、第三ブタンイミン、ペンタンイミン、第三ペンタンイミン等のアルカンイミン類;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第三ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン類;メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、1,1−ジメチル−2−メトキシエチルアルコール、2−(N,N’−ジメチル)エチルアルコール、1,1−ジメチル−2−(N,N’−ジメチル)エチルアルコール等のモノアルコール類、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のジオール類;β−ジケトン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸−2メトキシエチル等のβ−ケトエステル等が挙げられる。これらの配位子は1種類が金属原子等に結合してもよく、2種類以上が結合していてもよく、また、ダブルアルコキシドのように1分子中に2種以上の金属原子等を有する複核化合物でもよい。
【0045】
上記の金属化合物の例を以下に示す。
2族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化1】
【0047】
また、3族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化2】
【0049】
また、4族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化3】
【0051】
また、5族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化4】
【0053】
また、アルミニウム化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化5】
【0055】
また、ビスマス化合物としては、トリフェニルビスマス、トリ(o−メチルフェニル)ビスマス、トリ(m−メチルフェニル)ビスマス、トリ(p−メチルフェニル)ビスマス等のトリアリールビスマス系化合物、トリメチルビスマス等のトリアルキルビスマス系化合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ビスマス等のβ−ジケトン系錯体、トリス(シクロペンタジエニル)ビスマス、トリス(メチルシクロペンタジエニル)ビスマス等のシクロペンタジエニル系錯体、トリ第三ブトキシビスマス、トリ第三ペントキシビスマス、トリエトキシビスマス等の低分子アルコールとのアルコキシド、トリ(1,1−ジメチル−2−メトキシエトキシ)ビスマス等のエーテルアルコキシドが挙げられる。
【0056】
また、鉛化合物としては、ビス(アセチルアセトナト)鉛、ビス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2−メチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(オクタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(3−メチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,7−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−エチルノナン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオナト)鉛等のアルキル置換β−ジケトネート類、ビス(1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオナト)鉛等のフッ素置換アルキルβ−ジケトネート類、ビス(1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛等のエーテル置換β−ジケトネート類が挙げられる。
【0057】
上記〔化1〕〜〔化5〕の式において、Ra、Rb及びRhで表されるハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第二アミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル挙げられる。また、Rcで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第二アミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。また、Rdで表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基は、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。Rg、Rj、Ri、R1、R2、R3で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられ、Aで表される炭素数2から8のアルカンジイル基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、−C(CH3)2−CH2−、−CH(CH3)−CH2−、−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH(CH3)−、−CH(CH3)−C2H4−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、−C2H4−CH(CH3)−、−C(C2H5)2−CH2−、−CH(C2H5)−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−CH2−、C(C2H5)2−C2H4−等が挙げられる。
【0058】
また、上記金属化合物等を溶液として用いる場合の溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;フラン、ピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジメチシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;アセトニトリル、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類;ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ルチジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリドン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン等の窒素含有環状化合物類等が挙げられ、これらは、溶質である化合物の溶解性や、使用温度と沸点、引火点との関係等により、1種類で又は2種類以上の混合物で用いられる。
【0059】
本発明の複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器において、上記のようなCVD、ALD用の原料を流体として使用した場合、これを洗浄する洗浄液としては、例えば、上記例示の溶媒、クロロホルム、ジクロロエチルエーテル、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明する。
下記実施例1は、本発明のバルブボディを用いた本発明の複合バルブの実施例を示す。また、実施例2及び3は、いずれも、本発明の複合バルブを具備してなる本発明の流体供給ラインを組み込んだ流体供給装置を、その操作手順と共に示す実施例であり、比較例1は、従来のバルブ・配管ユニットを具備してなる流体供給ラインを組み込んだ流体供給装置を、その操作手順と共に示す例である。また、実施例4は、本発明の複合バルブを具備してなる本発明の流体用容器を組み込んだ装置を、容器交換作業手順とともに示す実施例である。
【0061】
[実施例1]
本発明の複合バルブの実施例を図11〜15に示す。図11(実施例1−1)、図12(実施例1−2)は、エア駆動による開閉機構を有する複合バルブの例であり、図13(実施例1−3)、図14(実施例1−4)、図15(実施例1−5)は、手動開閉機構を有する複合バルブの例である。
【0062】
[実施例2、3及び比較例1]
図16、図17に示す洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を用い、後述の手順により流体(半導体製造用原料)の供給及びラインの洗浄を行ない、本発明の複合バルブを具備する流体供給ラインによる洗浄性効果と、従来のバルブ・配管ユニットを具備する流体供給ラインによる洗浄性効果との比較評価を行った。図16に示す流体供給装置が、実施例2及び3に用いたものであり、図17に示す流体供給装置が、比較例1に用いたものである。実施例2と実施例3とでは、ラインの洗浄の手順が一部異なる。図16におけるV27とV28からなる複合バルブ及びV29とV30からなる複合バルブが本発明の複合バルブである。実施例2、3と比較例1との実質的な比較部分は、図16におけるV29とV30からなる複合バルブと、図17におけるV19、V20、V21、V22のバルブ及び配管からなるユニットとである。
なお、流体にテトラキス第3ブトキシハフニウム、洗浄液にエチルシクロヘキサンを用いた。図16及び図17において、STはエチルシクロヘキサンの容器、CTはテトラキス第3ブトキシハフニウムの容器、WTは廃棄用の液体容器を表す。
【0063】
(実施例2)
図16の流体供給装置を用いて、以下の手順により、操作を行った。
(1)CTに流体(テトラキス第3ブトキシハフニウム)を100g、STに洗浄液(エチルシクロヘキサン)を1500g充填し、容器内部を窒素で0.1MPaに加圧し、WTは真空状態とした。なお、CTの容器バルブはV1〜V3、STの容器バルブはV6〜V8、WTの容器バルブはV11〜V12である。初期状態では容器、流体供給ラインのシステムの全てのバルブは閉止状態とした。容器を流体供給ラインに取り付けるにあたり、はじめにWTを取り付け、真空ポンプを稼働させ、V16、V13、V18、V31、V26、V29、V28、V27、V25、V19の順にバルブを開放した。次にSTを取り付け、V10、V8、V9の順に開放した。次にCTを取り付け、V4、V32、V3、V5を開放した。
(2)次に、窒素ボンベの元バルブは閉止した状態で、V14、V15を開放した。ここで、窒素のレギュレータ及び絞り弁は事前に0.1MPa、1リットル/分(0℃、1気圧下)に調整した。この状態で、配管を50℃に加温しながら十分な時間をかけて真空処理を行った。
(3)V16を閉止し、窒素ボンベの元バルブを開放し、V14を開放して系内部を窒素で満たし、その後、V14閉、16開で10秒保持、V14開、V16閉で10秒保持の操作を1サイクルとしたサイクルパージを10サイクル繰り返した。最後にV16開、V14閉の状態で、系内を十分に真空引きした後、V12とV16を除く全てバルブを閉にして、組み立て及び実験前処理を終えた。
(4)V14、V15、V9、V4を開放し、CT、STへの導入圧を確保し、V5、V19、V28、V29、V31、V18、V11を開放してV12を閉止した。その後、V6、V1を開放し、容器内圧力を定常化させた。
(5)V2を開放し流体を全てWTに移液した。CTタンクが空になったら即座にV1を閉止し、V12を開放し、液送ライン系内及びCTが減圧となるように十分に真空に引いた。
(6)V11、V12を閉止し、V13を開放した後、V5、V4を閉止し、V7、V32、V3を開放し、CTへ洗浄液を100g導入した。導入し終わったら、V32を閉止、V4を1秒間開放後閉止し、再度V32を開放し、100gの洗浄液をCTに導入した。導入後V32を閉止し、V4を10秒間開放し、即座にV2を閉止した。V13を閉止し、V12、V11を開放し、V5を開放し、この状態を10秒間保つことで、真空引きを併用したパージを行った後、V4を閉止、V32を開放し、50gの洗浄液でラインを洗浄した。
(7)V32を閉止、V4を開放し洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V4を閉止、V13を開放、V11、V12を閉止し系内を十分に真空引きし、次いで、V18を閉止、V32を開放後、V17を開・閉する事で、十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に100gずつ洗浄液を採取した。なお、サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートを簡易グローブボックス内に設置した。
(8)採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0064】
(実施例3)
図16の流体供給装置を用いて、上記実施例2の(6)まで、同様の操作を行った。次いで、下記(7')、(8')の操作を行なった。
(7')V32を閉止、V4を開放し、洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V4を閉止、V13を開放、V11、V12を閉止し、系内を十分に真空引し、次いで、V13を閉止し、V12、V11を開放、V5を開放し、V28、V31を閉止、V27、V26を開放し50gの洗浄液でラインを洗浄した。V32を閉止、V4を開放し、ライン中の洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出した後、V4を閉止、V13を開放し、V11、V12を閉止、系内を十分に真空引きした。その後、V27、V26を閉止、V28、V31を開放、系内を十分に真空引きし、次いで、V18を閉止してV32を開放後、V17を開・閉する事で十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に100gずつ洗浄液を採取した。サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートを簡易グローブボックス内に設置した。
(8')採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0065】
(比較例1)
図17の流体供給装置を用いて、上記実施例2の(5)まで、同様の操作を行った。但し、V21,V24は常時閉止状態とし、CTタンクからWTタンクへの流体の排出はV2−V5−V20−V22−V23−V18−V11の経路で行った。次いで、下記(6")〜(8")の操作を行なった。
(6")V22を閉止し、V7、V10、V19を開放し、CTへ洗浄液を100g導入した。導入し終わったら、V7を閉止、V8を1秒開放、V8を閉止し、再度V7を開放し、100gの洗浄液をCTに導入した。V7を閉止、V8を10秒開放し、V8閉止後、即座にV2、V5、V20を閉止し、V22を開放し、V13を閉止し、V12、V11を開放し、V7を開放し50gの洗浄液でラインを洗浄した。
(7")V7を閉止、V8を開放し洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V8を閉止、V13開放、V11、V12を閉止し系内を十分に真空引した。次いで、V18を閉止、V7の開放後、V17を開・閉する事で十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に50g、100gずつ洗浄液を採取した。サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートは簡易グローブボックス内に設置した。
(8")採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0066】
図18に、実施例2、実施例3及び比較例1の結果(採取液のハフニウム濃度)を示す。
図18中、X軸のECH量は、洗浄液であるエチルシクロヘキサンのはじめにサンプリングした50gを含めた各サンプル採取開始時までの積算値を示しており、縦軸のHf濃度は各サンプリングターム毎の溶液中に存在するハフニウムの平均質量比率で表示している。なお、Y軸は対数表示である。
【0067】
比較例1の結果から、従来のバルブの組み合わせによる方式では、デッドスペースに残存する流体が長期間にわたり洗浄液に出続けるため、大量の洗浄液を流しても洗浄効果が低いことがわかる。これに対し、実施例2、3の結果から、本発明の複合バルブを用いた本発明の流体供給ラインの流体供給装置を用いる事により、効果的な系内洗浄ができることが示された。実施例2、3共に優れた洗浄性を示したが、特に実施例3において、複合バルブ内部の微少なデッドスペースを十分に洗浄することで、より効果的な洗浄効果が得られることが分かった。
【0068】
[実施例4]
図19の装置系を用いて、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムをプロセスに供給した後、本発明の流体用容器(図10:容器2)に相当する流体用容器CTの交換のためのメンテナンス作業を下記手順により行った。流体用容器CTを取り外した後、V5、V2、V3、V6のバルブ内をファイバースコープを用いて観察したが、流体であるテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムの分解物等の異物付着は確認できなかった。
(手順)
V1、V2、V3、V6、V11、V14を閉、V4、V5、V12、V13、V15を開とし、残存している流体をプロセスライン経由の真空引きにより、WTへ液体を移した後、V2を開とし、不活性ガスを導入しながら、残液をプロセスライン経由、真空引き併用でWTへ排出した。
容器バルブを含めV12からV14を経て真空ポンプに至るまでのラインをヒーターを使用して50℃に加熱し、この状態を保ったまま、V2、V12を閉、V6開とし、ラインを減圧してから、V11を開放して、洗浄液であるヘキサンを10秒間導入し、さらにV11の開閉により、合計10回のヘキサンによるサイクル洗浄を行った。洗浄後、V2、V3、V11閉、 V4、V5、V6開 とし、WTのバイパス経由で真空引きしてから、V2 の開閉でアルゴンによるパージを10回行い、V2閉で30分間系内を真空引きしてから、バルブを含めV12からV14を経て真空ポンプに至るまでのラインの温度を室温に戻し、V6を閉止し、V2を開放しライン内圧力を不活性ガスにより陽圧にしてから、全バルブ閉止し、容器2をラインから取り外した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のバルブボディの実施例のモデルを示すもので、図1の(I)はその一実施例のモデルを表す斜視図、図1の(II)は他の実施例のモデルを表す斜視図、図1の(III)は別の実施例のモデルを表す斜視図、図1の(IV)はさらに別の実施例のモデルを表す斜視図である。
【図2】図2の(III−1)〜(III−3)は、いずれも、図1の(III)を一部変形したバルブボディの実施例のモデルを表す斜視図である。
【図3】図3の(III’)及び(III”)は、いずれも、図1の(III)を一部変形したバルブボディの他の実施例のモデルを表す斜視図である。
【図4】図4の(V−1)〜(V−3)は、いずれも、本発明のバルブボディのさらに別の実施例を表すモデルの斜視図である。
【図5】図3の(III’)のバルブボディにダイヤフラム弁を適用した場合の該バルブボディの内部構造を表す縦断面図である。
【図6】本発明の複合バルブの一実施例を表す平面図である。
【図7】図6に示す複合バルブをバルブ記号で表した構成図である。
【図8】本発明の洗浄機能付流体供給ラインの一実施例を表す概略系統図である。
【図9】本発明の洗浄機能付流体供給ラインの他の実施例を表す概略系統図である。
【図10】図10の容器1〜容器6は、いずれも、本発明の流体用容器の実施例を表す概略図である。
【図11】実施例1−1の複合バルブの平面図である。
【図12】実施例1−2の複合バルブの平面図である。
【図13】実施例1−3の複合バルブの平面図である。
【図14】実施例1−4の複合バルブの平面図である。
【図15】実施例1−5の複合バルブの平面図である。
【図16】実施例2及び実施例3で用いた、本発明の洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を表す概略図である。
【図17】比較例1で用いた、洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を表す概略図である。
【図18】実施例2、実施例3及び比較例1における洗浄性効果の結果を表すグラフである。
【図19】実施例4で用いた、本発明の流体用容器を具備する装置を表す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するバルブボディ、該バルブボディを用いた複合バルブ、該複合バルブを用いた洗浄機能を有する流体ライン、及び該複合バルブを用いたバルブ付流体用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスや精密分析においては、流体(ガス、液体)を移送又は供給する装置は、そのライン内を常にコンタミネーションや異物のない状態に保つ必要があり、そのため、供給装置の部品交換、供給する流体を切り替える際のラインの洗浄やパージが行われる。特に流体用のバルブには、流路に流体が残留しやすいスペースが存在するので、残留する流体を洗浄やパージによって除去しやすい流路、構造を有するバルブが提案されている。また、高度に清浄度を保つ必要のある流体供給系においては、洗浄機能を有する供給系が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タンク室を設けたガス置換性を向上させたブロックバルブが報告されている。また、特許文献2には、2組のシリンダー制御弁を1つのバルブケーシングに組み込んだ一体型の複合弁が報告されている。
しかし、特許文献1に記載のバルブは、センター孔同士を接続する流路が、残留流体が滞留する部分となってしまう問題点を有している。また、特許文献2に記載のバルブも、並列する2組の制御弁に通じる流路に、残留物が洗浄、除去され難いスペースを有している。
【0004】
また、洗浄機能を有する流体供給系については、例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に報告されている。これらは、配管とバルブの配置の工夫により、高度な洗浄やパージを可能とするものであり、バルブ由来の流体残留の問題を解決するものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−119844号公報
【特許文献2】特開2001-317655号公報
【特許文献3】特開2001−108199号公報
【特許文献4】特開2002−226677号公報
【特許文献5】特開2005−131632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、洗浄性又はパージ性に優れたバルブや流体供給系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、洗浄又はパージにおいて、構造上の流体滞留部を排除したバルブボディの構造を見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記のバルブボディを用いた複合バルブであり、流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とする複合バルブを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体供給ラインを提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、上記の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体用容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバルブボディを用いた本発明の複合バルブは、洗浄性又はパージ性に優れるので、これを用いた流体供給ライン又は流体用容器を使用することで、洗浄性又はパージ性に優れた流体供給系を提供することができる。上記の流体供給ライン又は流体用容器を使用した流体供給系は、特に流体が液体の場合に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明のバルブボディについて説明する。
本発明のバルブボディの特徴は、(1)相対立する面に2種類の弁要素部(弁要素部A及び弁要素部B)を有し、(2)弁要素部Aは3つの弁孔を有し、弁要素部Bは2つの弁孔を有し、弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立する面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)弁要素部Aの弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b、流路cを形成しており、弁要素部Bの弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることにある。この構成をとることにより、V型2連3方複合バルブに代表される従来の複合バルブよりも、バルブ内の流路を短くすること、単純な構造にすることが可能となり、小型化が可能である。
【0014】
本発明のバルブボディの構成を図1に示す。なお、図1は、本発明のバルブボディの構成についての概念を表すモデルである。
【0015】
図1のモデル(I)〜(IV)は、弁要素部Aから通じる流路b、流路c及び弁要素部Bから通じる流路dが、それぞれ、弁要素部Aが存在する面に平行する方向に配された異なる3つの孔又は流路に通じる形状で示している。この形状は、バルブ内の流路を短くでき、また、孔開け加工が加工面に対して垂直方向のみであるので孔開け、孔の連結孔内の精密研磨が容易であるので好ましい。
【0016】
また、上記のモデル(I)〜(IV)では、流路b、流路c、流路dが、それぞれ異なる方向(面)に向いて配されているが、図2に示すように、3つが同じ面に配されていてもよく〔モデル(III−1)参照〕、2つが同じ面に配されていてもよい〔モデル(III−2)、(III−3)参照〕。なお、図2は、図1におけるモデル(III)のタイプを代表例として表しているが、(I)、(II)、(IV)についても同様である。
【0017】
また、弁要素部Aの3つの弁孔と弁要素部Bの2つの弁孔の配置については、任意である。例えば、図1のモデル(III)は、弁要素部Aの3つの弁孔が直列に、弁要素部Bの2つの弁孔を結んだ直線と90°の角度をなすように配置されているが、弁要素部Aの3つの弁孔が弁要素部Bの2つの弁孔と直列するように配されてもよい。また、弁要素部Aの3つの弁孔はL字型(90°)に配置されてもよく、くの字型(>90°)に配置されてもよく、レの字型(<90°)に配置されてもよい。図3のモデル(III')は、弁要素部Aの弁孔と弁要素部Bの弁孔を直列に配置した場合のモデルであり、モデル(III")は、弁要素部Aの弁孔をL字型に配置した場合のモデルである。本発明のバルブボディとしては、小型化に適し、加工も容易であるので、弁要素部Aの弁孔と弁要素部Bの弁孔を直列に配置したもの又は弁要素部Aの弁孔をL字型に配置したものが好ましい。
【0018】
本発明のバルブボディは、(1)相対立する面に2種類の弁要素部(弁要素部A及び弁要素部B)を有し、(2)弁要素部Aは3つの弁孔を有し、弁要素部Bは2つの弁孔を有し、弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立する面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)弁要素部Aの弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b、流路cを形成しており、弁要素部Bの弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするが、これらの特徴を備えていれば、更に構成要素が追加されていてもよい。例えば、流路eを追加して、四方バルブボディとすることもできる。四方バルブボディの例としては、図4のモデル(V−1)、(V−2)、(V−3)で示される構造が挙げられる。
【0019】
本発明のバルブボディの構造を図5に示す。図5は、バルブの具体的な形状図にあわせたもので、その内部構造の縦断面図である。なお、図5に対応するモデルは図3のモデル(III')であり、ダイヤフラム弁を用いた場合の構成である。
【0020】
本発明のバルブボディは、用途や機能により、弁孔の配置や流路の方向を選択することができるが、洗浄又はパージ特性を重要視したバルブに使用される場合は、図1のモデル(III)及びモデル(III)に属するものが好適である。例えば、モデル(III)に属するものとしては、図2のモデル(III−1)、(III−2)、(III−3)、図3のモデル(III')、(III")が挙げられる。
【0021】
次に、本発明の複合バルブについて説明する。
本発明の複合バルブは、本発明のバルブボディを用いたものであり、本発明のバルブボディの流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とするものである。具体的には、本発明のバルブボディにおけるモデル(III)のタイプに属するものを用いた複合バルブが挙げられる。本発明の複合バルブは、洗浄性又はパージ性が良好である。
【0022】
また、本発明の複合バルブにおいて、上記の弁機構A、弁機構Bとしては、例えば、ニードルバルブ、ベローズバルブ、ボールバルブ、アングルバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ダイヤフラムバルブの開閉弁が挙げられる。本発明の複合バルブの構造の利点を最大限に活かすには、流体滞留部の少ないダイヤフラム方式の開閉弁が好適である。その他のバルブの場合は、本発明のバルブボディの効果により排除された流体滞留部よりも大きな流体滞留部を形成する場合がある。また、バルブ機構の制御方式は手動、自動制御(圧空駆動、電動駆動等)いずれでもよい。自動制御の場合、初期状態は開(ノーマリーオープン)でもよく、閉(ノーマリークローズ)でもよい。
【0023】
本発明の複合バルブの好ましい形態の1つである弁機構A及び弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁である場合の具体例を図6に示す。
【0024】
本発明の複合バルブの好ましい形態の1つである弁機構A及び弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁であるものは、図7の様なバルブ記号の組み合わせによる構成図で表すことができる。図7において、黒塗り部はダイヤフラムによる開閉機構及び/又は流量調整機構の対象となる中心側の流路ポートを表す。なお、以下、ライン、配管、容器に本発明の複合バルブを使用した場合を図で示す場合は、この構成図を用いることもある。
【0025】
本発明の複合バルブの有効な使用方法の一例としては、弁機能Aを分流弁とし、弁機能Bを封止弁とする使用方法が挙げられる。例えば、流路cを流体の供給元のラインに接続し、流路bをプロセス装置へ流体を供給するラインに接続し、流路dをドレインラインに接続する。流体供給時は、弁機能Bを閉にして弁機能Aの開閉で流体のプロセスへの供給をコントロールすることができる。供給ラインのメンテナンス(部材交換、洗浄、パージ)時は、弁機能Aを閉とし、弁機能Bを開にして、関連する供給元のライン及び本発明の複合バルブ内の流体を、流路dから排出する。複合バルブ内の流体の排出ルートは流路c→流路a→流路dとなる。その後、流体の供給ラインに洗浄用又はパージ用の流体(ガス又は液体)を流通させ、必要に応じて真空引きを併用し、供給ライン及び複合バルブ内を洗浄する。この時、流路b及びプロセスラインは封止されているので、供給ラインのメンテナンスの影響を完全に排除できる。洗浄又はパージ用流体は、サイクル的に流通させると洗浄効果が向上するので、サイクルパージ又はサイクル洗浄するのが好ましい。また、供給する流体及び/又はパージ・洗浄用流体が液体である場合は、複合バルブ内の液溜りを効率的に排出するために、ドレインラインへの流路の出口方向が下を向くような複合バルブのデザイン及び配置を選択することが好ましい。例えば、上記例示の使用法の場合には、流路dが下を向くように配置する。
【0026】
次に、本発明の流体供給ライン(以下、本発明の洗浄機能付流体供給ラインともいう)について説明する。
本発明の洗浄機能付流体供給ラインは、上記の本発明の複合バルブを具備してなるものであり、流体(ガス又は液体)をプロセスラインに供給する機能を有し、且つ、洗浄又はパージ用の流体(ガス又は液体)を導入することができるものである。形状及び形態は制限されない。洗浄又はパージ用の流体(ガス又は液体)を導入する際に適切な手順を選択して、プロセスサイドへのラインを遮断することで、プロセスサイドに影響を与えることなく、供給サイドのラインに残存する供給流体を完全にかつ簡便に洗浄置換できる。
【0027】
本発明の洗浄機能付流体供給ラインの一例を図8に示す。図8は、供給する流体が1系列の場合のラインである。図8で示した洗浄機能付流体供給ラインにおいて、本発明の複合バルブは、V3及びV4を含む点線で囲われた部分並びにV8及びV9を含む点線で囲われた部分の2箇所である。V1へは供給流体もしくはパージガス(通常は清浄な不活性ガスを使用する)を切り替えて導入でき、また、V2へは洗浄流体とパージガスを切り替えて導入でき、ベントは真空系に接続されている。
【0028】
以下に図8で示した洗浄機能付流体供給ラインの運用例を示す。
(供給工程1):V1,V2,V4,V5,V6,V9を閉止、V3,V7,V8を開放してベントより供給流体が充填される系内を真空引きする。
(供給工程2):(供給工程1)の状態から、V7,V8を閉止、V1,V3の順に開放し供給流体を導入する。V3,V1を閉止し待機状態とする。
(供給工程3):プロセスサイドからの供給要求に応じ、待機状態から、V1,V3,V9を開放し、供給流体をプロセスサイドに供給する。
(供給工程4):プロセスサイドからの停止要求に応じ、(供給工程3)の状態からV9,V3,V1の順にバルブを閉止し、待機状態に戻す。
【0029】
上記の供給工程により、流体の供給を繰り返し行った後、供給流体のタンク交換等で供給ラインのメンテナンスを行う場合の供給ラインの洗浄は、下記の操作により行うことができる。
(洗浄工程1):V9を閉止してプロセスサイドと供給系を絶縁した状態下で、V2,V6,V5,V4は閉止状態とし、V7,V8,V3,V1の順にバルブを開放し、系内に残存する供給流体をベントへ排出する。更にV1から間欠的にパージガスを導入し、供給流体の接触したラインをサイクルパージする。
(洗浄工程2):(洗浄工程1)の状態から、V1を閉止して供給流体の接触したラインを真空引きする。このとき供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程3):(洗浄工程2)の状態から、V2、V5を開放し、V4,V3,V8,V7の経路で洗浄用流体を流し、系内を洗浄する。この際、間欠的にV5を閉止させ洗浄用流体を脈動的に流入させ洗浄効果を向上させることもできる。(洗浄工程2)と同じく、供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程4):(洗浄工程3)の状態で、V2からの導入流体を洗浄用流体からパージガスに切り替え、V4閉止、V6開放し、洗浄用流体導入部分のデッドスペースに残存する洗浄用流体をベントより排出する。
(洗浄工程5):(洗浄工程4)の状態から、V6閉止、V4開放し、V2から間欠的にパージガスを導入し、供給流体の接触したラインをサイクルパージする。
(洗浄工程6):(洗浄工程5)の状態から、V2,V5を閉止し、V6を開放して、ベントよりライン全体を真空引きする。このとき供給流体が分解せず、装置の構成部品に損傷を与えない温度範囲でライン加熱を併用することにより、残存する供給流体を除去しやすくすることもできる。
(洗浄工程7):V6,V7,V9,V1を閉止し、V2,V5を開放しパージガスを導入し系内を不活性ガス雰囲気に戻し、V2,V5を閉止する。この状態で完全にラインは正常化された状態に戻る。ここで供給工程が開始可能の状態となる。
【0030】
本発明の洗浄機能付流体供給ラインの別の一例を図9に示す。図9は供給する流体が4系列の場合のラインである。基本的な操作方法は図8の運用例で述べた方法に準ずる。複数のプロセスラインから供給要求があった場合は同時に供給してもよいし、1プロセスライン毎に順次供給してもよい。
【0031】
次に、本発明の流体用容器について説明する。
本発明の流体用容器は、前記の本発明の複合バルブを具備してなるものであり、主に流体(ガス又は液体)をプロセスラインに供給するのに用いる流体容器である。本発明の流体用容器は、流体の保存容器、デリバリー容器を兼ねてもよい。本発明の流体用容器は、形状及び形態は制限されない。
【0032】
本発明の流体用容器の例を図10に示す。図10の容器1〜6は、いずれも流体が液体である場合の例である。
【0033】
本発明の流体用容器の使用方法及び利点について、容器2を代表例として説明する。
流体をプロセスへ供給しているときは、V4、V1は開の状態で、流体の供給圧力を保持するためにアルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスを外部から導入する。V6は閉で、V3は開、V2は閉、V5は開で、AからFを流通させてFからプロセスラインへ流体を供給する。容器が空になり、メンテナンスを行う際には、V1は閉、V4は開、V3は閉、V6は閉、V2は閉、V5は開で、Fからの吸引又は減圧によりFからAまでの残留流体の吸出しと、V2を開くことによるV4からの不活性ガスパージの繰り返しにより、A〜Fまでの残留流体除去を行う。次にA〜F間でのラインの洗浄を洗浄用液体で行う。この際は、V5開、V2閉、V3閉、V6開でF〜Bへと洗浄用液体を流す。洗浄用液体の流通の後でV2を開にすることよる不活性ガスのパージを行い、必要に応じて洗浄液体流通と不活性ガスのパージをサイクルで行う。上記操作をすることで、流体用容器のバルブ内及び配管系を高度に清浄な状態に保つことが可能となる。
【0034】
図10の容器1は、本発明の流体用容器の基本的な構成を示す例である。容器3及び容器4は、容器2にさらなる機能を付与した例である。容器3は、F'からキャリアガスを導入して、容器内の流体を押し出して供給させることもでき、Fからキャリアガスを導入して、F'から流体を同伴させた気流として流体を供給させるバブラー容器として使用することもできる。容器4は、更に充填機能を付与したものであり、容器4においては、Gは流体を補充・充填及び/又は排出するためのメンテナンスポートであり、B,B'はドレインである。容器5,6は、容器1にさらなる機能を付与した例である。容器3,4ではB、B'としてドレインポートを別途設けた態様であるが、容器5,6ではそれを簡略化し、ポートFに供給流体排出と、ドレインの両機能を集約させた態様としてある。また、容器3,4,5,6ではV3に連結したディップチューブが容器内に導入されているが、例えば、容器に液体が導入される用途で使用される場合等においては、ディップチューブをV3バルブに連結するのではなく、メンテナンスポートのバルブに接続して使用することもできる。
【0035】
以下の説明は、本発明のバルブボディ、複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器に、適宜適用される。
本発明の流体供給ライン、流体用容器には、上記の基本構成以外に、必要に応じてその構成中にバルブ、分岐管、バイパス管、ドレイン管、圧力計、圧力制御装置、真空度制御装置、残量計量装置、漏洩検知器、エジェクター、質量流量制御器(MFC)又は質量流量計(MFM)等の流量制御機器等のプロセス制御やメンテナンスのための部材を配置することができる。また、系内の清浄度を高めるために部分的又は全体的に加熱ができるように必要に応じてヒーターや加熱コントロール装置を配していてもよい。
【0036】
さらに、容器部位には、充填ポート、排出ポート等容器のメンテナンスに係わる予備ポートを設置してもよく、圧力計、レベルメーター、残量計量装置等を設置してもよい。
【0037】
これらの各部位の部材については、流体の分解、変質の要因となる外環境因子を遮断し、流体に対して実質的に不活性なものが使用される。
【0038】
本発明のバルブボディ、複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器の部材の材質としては、テフロン(登録商標)等のフッ素化樹脂、シリコン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、PET、塩ビ等の合成樹脂類;SUS316、316L、304、304L、317、317Lに代表されるオーステナイト系ステンレス、SUS405、410、430、TP409に代表されるフェライト系ステンレス、SUS329に代表される2層ステンレス等の各種ステンレス材、ハステロイ等のニッケル合金、チタン、アルミ等の金属類;ガラス、石英等のガラス類;アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化タンタル、窒化珪素、窒化チタン等のセラミックス類が挙げられ、これらは単独で又は併用して使用することができる。また、材料や目的によっては、テフロン(登録商標)やガラス等の不活性材料で表面をコーティングしてもよい。
【0039】
CVD、ALD等の半導体製造プロセスに使用される場合には、高真空対応性や高清浄度保持に適するステンレス材が好ましく、更に、流体接触部分は、配管からのパーティクル及び金属の溶出や、その他水等の不純分の放出等を防ぐため、バフ研磨処理、電解研磨処理、更に物理的及び/又は化学的研磨手法を併用したECB、MCP等の高精度研磨処理を施した上、精密洗浄を施し、十分に乾燥を施した表面状態とすることが好ましく、必要に応じて表面にオゾンパッシベーション、酸素/加熱処理によるパッシベーション化、フッ化処理等による不導体化処理等、2次的なクリーン化処理を施してもよい。
【0040】
CVD、ALDプロセスに使用される場合の流路、配管部位には、ステンレス部材の配管が好適である。SUS316LのAOD若しくはVOD(シングルメルト材)又はVIM/VAR(ダブルメルト材)が使用され、その内表面はBA以上、好ましくはEP処理同等以上のクリーン配管を使用する。強度の耐蝕性を要求される場合等、必要に応じて配管内表面に酸化若しくはフッ素化パッシベーション処理等を施しても良い。また、配管同士又はフィッティング類との固定接続は通常クリーン雰囲気下での突き合わせ自動溶接によるものが好適である。
【0041】
また、CVD、ALDプロセスに使用される場合の接続部分及びバルブや配管のフィッティングによる接続する場合の方式としては、PT、NPT、NW,KW、ICF、ISO、スエジロック、VCR、UJR、CVC、MCG、UPG、スーパーJSK等が挙げられる。流体、洗浄液、不活性ガスとの接触部分には、締め付け時のパーティクル発生を極力抑えることが可能であり、デッドスペースが極力小さいUPG、VCR、UJR、CVC、HMJが好ましい。また、バルブボディを集積バルブ状に接続するためには、Cシール、Wシール等の方式を使用することができるが、特にデッドスペースを極小化するためにはWシールが好ましい。
【0042】
本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器は、流体が液体の場合、流体が発火性の場合、流体が腐食性の場合、流体が高い反応性を有する場合に有用である。特に半導体の製造プロセスであるCVD法やALD法は、高反応性の液体を扱うので、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器を適用することが有効である。その他に、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器は、精密分析装置に組み込んで用いたり、フォトレジスト工程又はドライ若しくはウェットエッチング工程における薬剤の供給や、医薬品、食品、飲料の製造及び/又は供給等に用いることもできる。
【0043】
CVD、ALDプロセスに使用される場合、本発明の複合バルブ、流体供給用ライン及び流体用容器中に流通する流体としては、例えば、珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物や、それらの混合物及び溶液が挙げられる。金属化合物を構成する金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1族元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2族元素、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチノイド元素等の3族元素、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルの5族元素、クロム、モリブデン、タングステンの6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムの7族元素、鉄、ルテニウム、オスミウムの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムの9族元素、ニッケル、パラジウム、白金の10族元素、銅、銀、金の11族元素、亜鉛、カドミウム、水銀の12族元素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの13族元素、ゲルマニウム、錫、鉛の14族元素、砒素、アンチモン、ビスマスの15族元素、ポロニウムの16族元素が挙げられる。
【0044】
上記の珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物は、CVD、ALD法に使用し得る揮発性を有するものであれば特に制限されることはない。上記の珪素化合物、リン化合物、ホウ素化合物、金属化合物において、珪素原子、リン原子、ホウ素原子、金属原子と結合し各化合物を構成する配位子としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物、メタン、エタン、プロパン、2−プロパン、ブタン等のアルカン類;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン等のモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ第三ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリメチルシリルアミン、トリエチルシリルアミン等のシリルアミン;メタンイミン、エタンイミン、プロパンイミン、2−プロパンイミン、ブタンイミン、2−ブタンイミン、イソブタンイミン、第三ブタンイミン、ペンタンイミン、第三ペンタンイミン等のアルカンイミン類;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第三ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン類;メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、1,1−ジメチル−2−メトキシエチルアルコール、2−(N,N’−ジメチル)エチルアルコール、1,1−ジメチル−2−(N,N’−ジメチル)エチルアルコール等のモノアルコール類、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のジオール類;β−ジケトン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸−2メトキシエチル等のβ−ケトエステル等が挙げられる。これらの配位子は1種類が金属原子等に結合してもよく、2種類以上が結合していてもよく、また、ダブルアルコキシドのように1分子中に2種以上の金属原子等を有する複核化合物でもよい。
【0045】
上記の金属化合物の例を以下に示す。
2族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化1】
【0047】
また、3族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化2】
【0049】
また、4族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化3】
【0051】
また、5族元素の金属化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化4】
【0053】
また、アルミニウム化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化5】
【0055】
また、ビスマス化合物としては、トリフェニルビスマス、トリ(o−メチルフェニル)ビスマス、トリ(m−メチルフェニル)ビスマス、トリ(p−メチルフェニル)ビスマス等のトリアリールビスマス系化合物、トリメチルビスマス等のトリアルキルビスマス系化合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ビスマス等のβ−ジケトン系錯体、トリス(シクロペンタジエニル)ビスマス、トリス(メチルシクロペンタジエニル)ビスマス等のシクロペンタジエニル系錯体、トリ第三ブトキシビスマス、トリ第三ペントキシビスマス、トリエトキシビスマス等の低分子アルコールとのアルコキシド、トリ(1,1−ジメチル−2−メトキシエトキシ)ビスマス等のエーテルアルコキシドが挙げられる。
【0056】
また、鉛化合物としては、ビス(アセチルアセトナト)鉛、ビス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2−メチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(オクタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(3−メチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,7−ジメチルオクタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(5−エチルノナン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオナト)鉛等のアルキル置換β−ジケトネート類、ビス(1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオナト)鉛等のフッ素置換アルキルβ−ジケトネート類、ビス(1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオナト)鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオナト)鉛等のエーテル置換β−ジケトネート類が挙げられる。
【0057】
上記〔化1〕〜〔化5〕の式において、Ra、Rb及びRhで表されるハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第二アミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル挙げられる。また、Rcで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第二アミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。また、Rdで表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基は、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。Rg、Rj、Ri、R1、R2、R3で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられ、Aで表される炭素数2から8のアルカンジイル基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、−C(CH3)2−CH2−、−CH(CH3)−CH2−、−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH(CH3)−、−CH(CH3)−C2H4−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、−C2H4−CH(CH3)−、−C(C2H5)2−CH2−、−CH(C2H5)−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−CH2−、C(C2H5)2−C2H4−等が挙げられる。
【0058】
また、上記金属化合物等を溶液として用いる場合の溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;フラン、ピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジメチシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;アセトニトリル、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類;ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ルチジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリドン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン等の窒素含有環状化合物類等が挙げられ、これらは、溶質である化合物の溶解性や、使用温度と沸点、引火点との関係等により、1種類で又は2種類以上の混合物で用いられる。
【0059】
本発明の複合バルブ、流体供給ライン及び流体用容器において、上記のようなCVD、ALD用の原料を流体として使用した場合、これを洗浄する洗浄液としては、例えば、上記例示の溶媒、クロロホルム、ジクロロエチルエーテル、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明する。
下記実施例1は、本発明のバルブボディを用いた本発明の複合バルブの実施例を示す。また、実施例2及び3は、いずれも、本発明の複合バルブを具備してなる本発明の流体供給ラインを組み込んだ流体供給装置を、その操作手順と共に示す実施例であり、比較例1は、従来のバルブ・配管ユニットを具備してなる流体供給ラインを組み込んだ流体供給装置を、その操作手順と共に示す例である。また、実施例4は、本発明の複合バルブを具備してなる本発明の流体用容器を組み込んだ装置を、容器交換作業手順とともに示す実施例である。
【0061】
[実施例1]
本発明の複合バルブの実施例を図11〜15に示す。図11(実施例1−1)、図12(実施例1−2)は、エア駆動による開閉機構を有する複合バルブの例であり、図13(実施例1−3)、図14(実施例1−4)、図15(実施例1−5)は、手動開閉機構を有する複合バルブの例である。
【0062】
[実施例2、3及び比較例1]
図16、図17に示す洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を用い、後述の手順により流体(半導体製造用原料)の供給及びラインの洗浄を行ない、本発明の複合バルブを具備する流体供給ラインによる洗浄性効果と、従来のバルブ・配管ユニットを具備する流体供給ラインによる洗浄性効果との比較評価を行った。図16に示す流体供給装置が、実施例2及び3に用いたものであり、図17に示す流体供給装置が、比較例1に用いたものである。実施例2と実施例3とでは、ラインの洗浄の手順が一部異なる。図16におけるV27とV28からなる複合バルブ及びV29とV30からなる複合バルブが本発明の複合バルブである。実施例2、3と比較例1との実質的な比較部分は、図16におけるV29とV30からなる複合バルブと、図17におけるV19、V20、V21、V22のバルブ及び配管からなるユニットとである。
なお、流体にテトラキス第3ブトキシハフニウム、洗浄液にエチルシクロヘキサンを用いた。図16及び図17において、STはエチルシクロヘキサンの容器、CTはテトラキス第3ブトキシハフニウムの容器、WTは廃棄用の液体容器を表す。
【0063】
(実施例2)
図16の流体供給装置を用いて、以下の手順により、操作を行った。
(1)CTに流体(テトラキス第3ブトキシハフニウム)を100g、STに洗浄液(エチルシクロヘキサン)を1500g充填し、容器内部を窒素で0.1MPaに加圧し、WTは真空状態とした。なお、CTの容器バルブはV1〜V3、STの容器バルブはV6〜V8、WTの容器バルブはV11〜V12である。初期状態では容器、流体供給ラインのシステムの全てのバルブは閉止状態とした。容器を流体供給ラインに取り付けるにあたり、はじめにWTを取り付け、真空ポンプを稼働させ、V16、V13、V18、V31、V26、V29、V28、V27、V25、V19の順にバルブを開放した。次にSTを取り付け、V10、V8、V9の順に開放した。次にCTを取り付け、V4、V32、V3、V5を開放した。
(2)次に、窒素ボンベの元バルブは閉止した状態で、V14、V15を開放した。ここで、窒素のレギュレータ及び絞り弁は事前に0.1MPa、1リットル/分(0℃、1気圧下)に調整した。この状態で、配管を50℃に加温しながら十分な時間をかけて真空処理を行った。
(3)V16を閉止し、窒素ボンベの元バルブを開放し、V14を開放して系内部を窒素で満たし、その後、V14閉、16開で10秒保持、V14開、V16閉で10秒保持の操作を1サイクルとしたサイクルパージを10サイクル繰り返した。最後にV16開、V14閉の状態で、系内を十分に真空引きした後、V12とV16を除く全てバルブを閉にして、組み立て及び実験前処理を終えた。
(4)V14、V15、V9、V4を開放し、CT、STへの導入圧を確保し、V5、V19、V28、V29、V31、V18、V11を開放してV12を閉止した。その後、V6、V1を開放し、容器内圧力を定常化させた。
(5)V2を開放し流体を全てWTに移液した。CTタンクが空になったら即座にV1を閉止し、V12を開放し、液送ライン系内及びCTが減圧となるように十分に真空に引いた。
(6)V11、V12を閉止し、V13を開放した後、V5、V4を閉止し、V7、V32、V3を開放し、CTへ洗浄液を100g導入した。導入し終わったら、V32を閉止、V4を1秒間開放後閉止し、再度V32を開放し、100gの洗浄液をCTに導入した。導入後V32を閉止し、V4を10秒間開放し、即座にV2を閉止した。V13を閉止し、V12、V11を開放し、V5を開放し、この状態を10秒間保つことで、真空引きを併用したパージを行った後、V4を閉止、V32を開放し、50gの洗浄液でラインを洗浄した。
(7)V32を閉止、V4を開放し洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V4を閉止、V13を開放、V11、V12を閉止し系内を十分に真空引きし、次いで、V18を閉止、V32を開放後、V17を開・閉する事で、十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に100gずつ洗浄液を採取した。なお、サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートを簡易グローブボックス内に設置した。
(8)採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0064】
(実施例3)
図16の流体供給装置を用いて、上記実施例2の(6)まで、同様の操作を行った。次いで、下記(7')、(8')の操作を行なった。
(7')V32を閉止、V4を開放し、洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V4を閉止、V13を開放、V11、V12を閉止し、系内を十分に真空引し、次いで、V13を閉止し、V12、V11を開放、V5を開放し、V28、V31を閉止、V27、V26を開放し50gの洗浄液でラインを洗浄した。V32を閉止、V4を開放し、ライン中の洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出した後、V4を閉止、V13を開放し、V11、V12を閉止、系内を十分に真空引きした。その後、V27、V26を閉止、V28、V31を開放、系内を十分に真空引きし、次いで、V18を閉止してV32を開放後、V17を開・閉する事で十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に100gずつ洗浄液を採取した。サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートを簡易グローブボックス内に設置した。
(8')採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0065】
(比較例1)
図17の流体供給装置を用いて、上記実施例2の(5)まで、同様の操作を行った。但し、V21,V24は常時閉止状態とし、CTタンクからWTタンクへの流体の排出はV2−V5−V20−V22−V23−V18−V11の経路で行った。次いで、下記(6")〜(8")の操作を行なった。
(6")V22を閉止し、V7、V10、V19を開放し、CTへ洗浄液を100g導入した。導入し終わったら、V7を閉止、V8を1秒開放、V8を閉止し、再度V7を開放し、100gの洗浄液をCTに導入した。V7を閉止、V8を10秒開放し、V8閉止後、即座にV2、V5、V20を閉止し、V22を開放し、V13を閉止し、V12、V11を開放し、V7を開放し50gの洗浄液でラインを洗浄した。
(7")V7を閉止、V8を開放し洗浄液をWTへ真空引きを併用したパージにより排出し、V8を閉止、V13開放、V11、V12を閉止し系内を十分に真空引した。次いで、V18を閉止、V7の開放後、V17を開・閉する事で十分に乾燥させたPFA製サンプル瓶に50g、100gずつ洗浄液を採取した。サンプリング時は、サンプル瓶内に大気を巻き込まないようにサンプリングポートは簡易グローブボックス内に設置した。
(8")採取液に含有されるハフニウム量をICP−MSを用いて定量した。
【0066】
図18に、実施例2、実施例3及び比較例1の結果(採取液のハフニウム濃度)を示す。
図18中、X軸のECH量は、洗浄液であるエチルシクロヘキサンのはじめにサンプリングした50gを含めた各サンプル採取開始時までの積算値を示しており、縦軸のHf濃度は各サンプリングターム毎の溶液中に存在するハフニウムの平均質量比率で表示している。なお、Y軸は対数表示である。
【0067】
比較例1の結果から、従来のバルブの組み合わせによる方式では、デッドスペースに残存する流体が長期間にわたり洗浄液に出続けるため、大量の洗浄液を流しても洗浄効果が低いことがわかる。これに対し、実施例2、3の結果から、本発明の複合バルブを用いた本発明の流体供給ラインの流体供給装置を用いる事により、効果的な系内洗浄ができることが示された。実施例2、3共に優れた洗浄性を示したが、特に実施例3において、複合バルブ内部の微少なデッドスペースを十分に洗浄することで、より効果的な洗浄効果が得られることが分かった。
【0068】
[実施例4]
図19の装置系を用いて、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムをプロセスに供給した後、本発明の流体用容器(図10:容器2)に相当する流体用容器CTの交換のためのメンテナンス作業を下記手順により行った。流体用容器CTを取り外した後、V5、V2、V3、V6のバルブ内をファイバースコープを用いて観察したが、流体であるテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムの分解物等の異物付着は確認できなかった。
(手順)
V1、V2、V3、V6、V11、V14を閉、V4、V5、V12、V13、V15を開とし、残存している流体をプロセスライン経由の真空引きにより、WTへ液体を移した後、V2を開とし、不活性ガスを導入しながら、残液をプロセスライン経由、真空引き併用でWTへ排出した。
容器バルブを含めV12からV14を経て真空ポンプに至るまでのラインをヒーターを使用して50℃に加熱し、この状態を保ったまま、V2、V12を閉、V6開とし、ラインを減圧してから、V11を開放して、洗浄液であるヘキサンを10秒間導入し、さらにV11の開閉により、合計10回のヘキサンによるサイクル洗浄を行った。洗浄後、V2、V3、V11閉、 V4、V5、V6開 とし、WTのバイパス経由で真空引きしてから、V2 の開閉でアルゴンによるパージを10回行い、V2閉で30分間系内を真空引きしてから、バルブを含めV12からV14を経て真空ポンプに至るまでのラインの温度を室温に戻し、V6を閉止し、V2を開放しライン内圧力を不活性ガスにより陽圧にしてから、全バルブ閉止し、容器2をラインから取り外した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のバルブボディの実施例のモデルを示すもので、図1の(I)はその一実施例のモデルを表す斜視図、図1の(II)は他の実施例のモデルを表す斜視図、図1の(III)は別の実施例のモデルを表す斜視図、図1の(IV)はさらに別の実施例のモデルを表す斜視図である。
【図2】図2の(III−1)〜(III−3)は、いずれも、図1の(III)を一部変形したバルブボディの実施例のモデルを表す斜視図である。
【図3】図3の(III’)及び(III”)は、いずれも、図1の(III)を一部変形したバルブボディの他の実施例のモデルを表す斜視図である。
【図4】図4の(V−1)〜(V−3)は、いずれも、本発明のバルブボディのさらに別の実施例を表すモデルの斜視図である。
【図5】図3の(III’)のバルブボディにダイヤフラム弁を適用した場合の該バルブボディの内部構造を表す縦断面図である。
【図6】本発明の複合バルブの一実施例を表す平面図である。
【図7】図6に示す複合バルブをバルブ記号で表した構成図である。
【図8】本発明の洗浄機能付流体供給ラインの一実施例を表す概略系統図である。
【図9】本発明の洗浄機能付流体供給ラインの他の実施例を表す概略系統図である。
【図10】図10の容器1〜容器6は、いずれも、本発明の流体用容器の実施例を表す概略図である。
【図11】実施例1−1の複合バルブの平面図である。
【図12】実施例1−2の複合バルブの平面図である。
【図13】実施例1−3の複合バルブの平面図である。
【図14】実施例1−4の複合バルブの平面図である。
【図15】実施例1−5の複合バルブの平面図である。
【図16】実施例2及び実施例3で用いた、本発明の洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を表す概略図である。
【図17】比較例1で用いた、洗浄機能付流体供給ラインを具備する流体供給装置を表す概略図である。
【図18】実施例2、実施例3及び比較例1における洗浄性効果の結果を表すグラフである。
【図19】実施例4で用いた、本発明の流体用容器を具備する装置を表す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディ。
【請求項2】
上記弁要素部Aから通じる流路b、流路c及び上記弁要素部Bから通じる流路dが、それぞれ、上記弁要素部Aが存在する面に平行する方向に配された異なる3つの孔又は流路に通じることを特徴とする請求項1に記載のバルブボディ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルブボディを用いた複合バルブであり、流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とする複合バルブ。
【請求項4】
上記弁機構A及び上記弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁である請求項3に記載の複合バルブ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体供給ライン。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の複合バルブを具備してなる流体用容器。
【請求項1】
(1)相対立する面に2種の弁要素部A及び弁要素部Bを有し、(2)上記弁要素部Aは3つの弁孔を有し、上記弁要素部Bは2つの弁孔を有し、上記弁要素部Aの3つのうち1つの弁孔は、上記弁要素部Bの2つのうち1つの弁孔と直接通じて、2種の弁要素部が存在する相対立面に直交する方向に直線状の流路aを形成しており、(3)上記弁要素部Aの上記弁要素部Bと通じない2つの弁孔は、それぞれバルブボディ外部への流路b及び流路cを形成しており、上記弁要素部Bの上記弁要素部Aと通じない1つの弁孔は、バルブボディ外部への流路dを形成していることを特徴とするバルブボディ。
【請求項2】
上記弁要素部Aから通じる流路b、流路c及び上記弁要素部Bから通じる流路dが、それぞれ、上記弁要素部Aが存在する面に平行する方向に配された異なる3つの孔又は流路に通じることを特徴とする請求項1に記載のバルブボディ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルブボディを用いた複合バルブであり、流路bに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Aに組み込んで形成される弁機構Aを有し、流路aに対する開閉機構及び/又は流量調整機構を与える弁要素を弁要素部Bに組み込んで形成される弁機構Bを有することを特徴とする複合バルブ。
【請求項4】
上記弁機構A及び上記弁機構Bがダイヤフラム方式の開閉弁である請求項3に記載の複合バルブ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の複合バルブを具備してなる洗浄機能を有する流体供給ライン。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の複合バルブを具備してなる流体用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−132427(P2007−132427A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325818(P2005−325818)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(300065121)アデカ総合設備株式会社 (4)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(300065121)アデカ総合設備株式会社 (4)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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