説明

パターン形成用メタルマスク

【課題】プリント配線等基板に高密度実装用のはんだ端子を形成する際、電鋳法にて作製されたニッケル合金からなるパターン形成用メタルマスクを用いて印刷を行うが、印刷回数を重ねる毎に、開口部の歪、メタルマスク全体の伸びや撓み等が生じるといった問題があった。本発明により、これらの印刷耐久性や、さらには、開口部の位置ズレを改良する。
【解決手段】ニッケル合金からなるパターン形成用メタルマスクにおいて、ニッケルの含有量が30〜60重量%であり、且つ、X線回折により測定した結晶配向性の積分強度の合計が3000以下になるように、電鋳法にて作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密微細パターンを形成するためのパターン形成用メタルマスクに関し、例えば、電子部品や半導体チップを高密度に実装するためのはんだ端子等をはんだペーストにより形成する際に使用する孔版印刷用のメタルマスクや、有機EL素子を有機色素の蒸着法で製造する際に用いられる蒸着用メタルマスクなどのパターン形成用メタルマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、プリント配線板上に電子部品や半導体チップを高密度に表面実装することが求められている。その為、電子部品や半導体チップを実装するためのはんだ端子の形成に際し、微細な箇所に選択的にはんだペーストを塗布する必要性が高まり、はんだペースト印刷用の高精細メタルマスクが必須となってきた。また、有機EL素子等においても、大型でより高精細化が進み、該素子の製造用の高精細蒸着用メタルマスクが求められている。
【0003】
例えば、孔版印刷用メタルマスクの形成方法としては、エッチング法、電鋳法の二つに大別される。エッチング法は、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金等の基板の両面に感光性レジストを塗布した後、所定の開口パターンを有する露光マスクを介して露光・現像し、塩化第二鉄などを用いてエッチング処理を施し、所定の開口パターンを得るという方法であるが、該方法では基板の両面側からエッチングされるため、開口部の形状が鼓状になり、且つ開口部の内壁に凹凸が発生する為、はんだペーストの抜け性を阻害し、高精細パターンの形成が難しい。
【0004】
一方、電鋳法は、ステンレス等の導電性基板の表面に感光性レジストを塗布し、所定の開口パターンを有する露光マスクを介して露光・現像し、感光性レジストで開口部のパターンを形成した後、露出した導電性基板面に電気めっきにより金属を積層させる方法である。該方法においては、感光性レジストで形成される開口部に対応するパターンの形状が、めっき工程においてそのまま転写されるので、開口部の断面形状がエッチング法を用いるよりも優れ、高精細パターンの形成に適している。
【0005】
しかし、電鋳法により得られたメタルマスクをスクリーン印刷版として用いると、印刷中にスキージの押圧によって、メタルマスク、特に開口周辺部が塑性変形し、はんだ端子の位置精度が低下する。その結果、印刷を繰り返し継続すると印刷位置の精度が許容限界を超えてしまい、メタルマスクの耐久性が悪いという問題がある。又、有機色素や金属等を蒸着、スパッタ等の気相法により高精細パターンを形成する場合においても、繰り返し行うと、熱応力により開口周辺部が塑性変形し、パターンの位置精度が低下し、メタルマスクの耐久性が悪い。
【0006】
前記した耐久性を改善すべく、メタルマスクの結晶の配向性において、(111)面、(200)面及び(220)面のピーク強度比が0.4以上であり、該メタルマスクを金属枠に取り付けた際のテンションが0.25〜0.32mmである印刷用メタルマスクを提案されている。
【特許文献1】特開2004−345265号公報 しかし、前記したメタルマスクでも、耐久性は十分ではなく、且つパターンが更に高精細、即ち開口部がより小さくなり、且つ開口部のピッチがさらに狭くなるに伴いメタルマスクをスクリーン印刷版として用いた場合、版離れ性が悪くなり、形成されたはんだ端子に滲みが生じたり、はんだペーストの抜け性が低下し、はんだ端子に欠けが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、プリント配線等基板に高密度実装用のはんだ端子の形成において、電鋳法により作製されたニッケル合金からなるメタルマスクを用いてはんだペーストを印刷した際に、前記した版離れ性、はんだペーストの抜け性、及び耐久性を改善し、高密度、高精細な開口部を有し、且つ耐久性に優れた画像形成用メタルマスクを提供する事にある。さらに、有機EL素子の製造においても、耐久性に優れ、且つ高精細な画像形成用の蒸着用メタルマスクを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、パターン形成用メタルマスクの特性及び材質に着目し、ニッケル合金電鋳生成膜の結晶配向性が、本発明におけるメタルマスクの耐久性、すなわち、応力により生じる歪に大きく関係していることを発見し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、電鋳法により作られ、ニッケルを30〜60重量%含有するニッケル合金からなるパターン形成用メタルマスクであって、X線回折積分強度の合計が3000以下であることを特徴とするパターン形成用メタルマスク、
及び、X線回折により測定したメタルマスクの結晶配向性の積分強度の合計が2000以下である前記記載のパターン形成用メタルマスク、
及び、結晶配向性における(111)面の積分強度が1500以下である前記記載のパターン形成用メタルマスク、
及び、結晶配向性における(200)面の積分強度が1500以下である前記記載のパターン形成用メタルマスク、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のニッケル合金からなるパターン形成用メタルマスクはその結晶配向性を制御したことにより、本発明のメタルマスクを用いてはんだペーストを電子部品の高密度、高精細実装用パターンに印刷しても、版離れ性、はんだペーストの抜け性に優れる為、はんだペーストの滲みやはんだ端子に欠け等の欠陥は発生せず、且つ印刷回数を増やしても印刷位置のズレは発生せず、耐久性に優れる。また、有機色素や金属等を蒸着、スパッタ等の真空技術で高精細画像を形成する際のメタルマスクとして用いても耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のパターン形成用メタルマスクについて詳細に説明する。
メタルマスクの作製手順としては、まず、表面がフラットで、導電性を有する金属、例えば、ステンレス、銅、アルミ、ニッケル等からなる基板、またはガラス、プラスチック等の非導電性の基板に蒸着、スパッタ、又は無電解めっき法で導電性の金属薄膜を形成した基板を母型とし、該母型に感光性レジストを塗布または積層する。感光性レジストとしては、ドライフィルムや液状レジストがあり、それぞれネガ型、ポジ型のどちらでも用いる事ができる。次いで、開口部が20〜100μm、開口部の繰返しピッチが80〜200μmであるパターンを有するガラスマスクを前記感光性レジスト面に真空密着させた後、紫外線光を照射して露光を行う。次いで、アルカリ溶液あるいは溶剤等を用いて現像して未露光部分を除去した後、ステンレス基板上に感光性レジストで開口部に対応するパターンを形成する。すなわち、はんだペーストや色素が通過する開口部に相当する部分にはレジスト膜が残り、その他の部分はレジスト膜が除去され、導電性の基板表面が露呈した状態になる。該基板を母型Aと称す。続いて、母型Aの導電性部分にニッケル合金の電気めっきを行う。
【0012】
本発明において、ニッケル合金としては、ニッケルを30〜60重量%含有し、クロム、マンガン、鉄、コバルト、錫、銅、タングステン、バナジウム、リン、ホウ素等との合金が挙げられる。特に、前記した効果(高精細メタルマスクの耐久性)の点からは、鉄及び/又はコバルトとの合金が好ましく、さらに好ましくはニッケルの含有量が35〜45重量%の鉄及び/又はコバルト合金である。ニッケルと鉄及び/又はコバルトとの合金には、鉄、コバルト以外に他の金属を含有させる事もできる。
【0013】
メタルマスクの結晶配向性においては、繰返し使用時のスキージの押圧による開口周辺部の塑性変形や熱応力による開口周辺部の塑性変形によって生じる開口部の歪や位置精度の低下の問題から、X線回折積分強度の合計が3000以下である事が好ましく、2000以下である事がより好ましい。又、該X線回折積分強度の合計の下限値は200程度である。さらに前記した積分強度の合計値が2000以下であって、(111)面の積分強度が1500以下、又は(200)面の積分強度が1500以下である事が最も好ましい。メタルマスクのX線回折の積分強度や結晶配向性は、めっき浴の組成、めっき浴の温度、PH、電流密度、攪拌条件、極間距離、添加剤等のめっき条件により大きく変化する。従って、本発明の前記した好ましい積分強度や配向性は、前記した種々のめっき条件をコントロールする事により得られる。
【0014】
電鋳に用いられるめっき浴としては、ニッケルめっきに用いられるスルファミン酸ニッケル浴、塩化物浴、ワット浴等の酸性浴のうちいずれを用いても良いが、めっき浴のPH値は浴の種類によって異なるが、1.5〜5.5が好ましい。
【0015】
例えば、本発明において、ニッケル−鉄合金めっき作製の際に使用するめっき浴としては、硫酸ニッケル六水和物190〜300g/L、硼酸20〜50g/Lもしくはギ酸ニッケル5〜25g/L、塩化ニッケルもしくは臭化ニッケル5〜40g/L、硫酸鉄七水和物30〜200g/Lからなるワット浴や60%スルファミン酸ニッケル溶液300〜600g/L、塩化ニッケルもしくは臭化ニッケル5〜35g/L、40%スルファミン酸鉄溶液10〜40ml/L、硼酸20〜50g/Lからなるスルファミン酸浴等が挙げられる。又、ニッケル−コバルト合金めっき作製の際に使用するめっき浴としては、60%スルファミン酸ニッケル溶液400〜600g/L、塩化ニッケルもしくは塩化コバルト5〜40g/L、硼酸20〜50g/Lからなるスルファミン酸浴が挙げられる。この際、コバルト源として陽極にコバルトブロックを用いる事もできる。
【0016】
前記したニッケル−鉄及び/又はコバルト合金めっき作製の際に使用するめっき浴には、めっき皮膜を均一に形成させるために、添加剤として、乳酸、グリコール酸、グリシン、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、トリエタノールアミンのうち1種もしくは2種以上を0.02〜1.0mol/Lが好ましく、0.1〜0.9mol/Lが更に好ましく、0.3〜0.8mol/Lが最も好ましい。又、鉄やコバルト等がめっき浴中で沈殿するのを防止するために、1,5ナフタレンジスルフォン酸ナトリウム、1,3,6ナフタレントリスルフォン酸ナトリウム、オルソベンゼンスルフォンイミド、パラトルエンスルフォンアミドのうち1種もしくは2種以上を添加しても良いし、勿論添加しなくても良い。
【0017】
前記しためっき浴に母型Aを浸漬し、通電させ、所定の厚さが得られるまで電析させる。この際、電流密度としては、0.3〜2.0A/dm2が好ましく、0.5〜1.5A/dm2が更に好ましい。浴のPH値は、ワット浴の場合には1.5〜3.0が好ましく、2.0〜2.8が特に好ましい。その他の浴に関しては前記した通りである。又、浴の温度は40〜60℃が好ましく、45〜55℃が特に好ましい。
【0018】
次に、めっきのついた母型Aをアルカリ水溶液或いはアミン系溶剤等に浸してレジストを除去した後、母型Aから剥離して、本発明のメタルマスクを得る。
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
板厚0.2mm、550×650mmのSUS304基板の表面を研磨し、感光性レジスト(ニチゴー・モートン(株)社製、NIT)を熱圧着にて50μmラミネートした。次に、直径60μm、繰返しピッチ130μmで10000(100×100)個からなるパターンを有するガラスマスクを前記感光性レジスト面に真空密着させた後、紫外線光を照射して露光を行い、アルカリ水溶液を用いて現像し、未露光部分を除去した後、ステンレス基板上に感光性レジストで開口部に対応するパターンを形成した。
【0021】
次に、60%スルファミン酸ニッケル溶液600g/L、塩化ニッケル15g/L、40%スルファミン酸鉄溶液20ml/L、硼酸30g/L、マロン酸0.3mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド1g/L、PH2.3からなる浴にて、電流密度1.0A/dm2、浴温度50℃で前記基板上に厚さ45μmのニッケル−鉄合金膜を形成した。これをアミン系溶剤(旭電化工業(株)社製、アデカリムーバー R−4050B)に浸漬させてレジストを除去後、めっき部分を基板から剥がし、460×560mmのニッケル−鉄合金のメタルマスクを得た。
【0022】
このメタルマスクの金属の組成を分析したところ、ニッケルが45重量%、鉄が55重量%であった。また、X線回折積分強度を測定すると、積分強度の合計が1912であった。このうち、(111)面の積分強度は1456、(200)面における積分強度は310であり、(220)面の積分強度は146であった。
【0023】
前記で作製したメタルマスクを外形550×650mmサイズのアルミ製の枠に取り付け、スクリーン印刷版として完成させた。
【0024】
前記して作られた印刷版をスクリーン印刷機(SP28P−DH、パナソニックファクトリーソリューション(株)製)に装着し、プリント配線基板上に鉛フリーの半田ペースト(LF−71S−3、タムラ化研(株)製)を印刷し、乾燥させて直径約60μmのはんだ端子を形成した。形成したはんだ端子を観察したが、はんだペーストの滲みは発生せず、抜け性にも優れる為、はんだ端子に欠け等の欠陥は全く生じなかった。また、はんだペーストを1万5千回繰り返し印刷しても形成したはんだ端子には位置精度に異常は発生せず、更に、メタルマスク全体の撓みや開口部の歪も生じなかった。
【実施例2】
【0025】
めっき条件として、60%スルファミン酸ニッケル溶液580g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル30g/L、酒石酸0.3mol/Lを添加し、PH5.2の浴にて、陽極にはコバルトブロックを用い、電流密度1.0A/dm2、浴温度45℃で行う以外は実施例1と同じ方法で、メタルマスク及びメタルマスク印刷版を作り、印刷評価した。
このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、60重量%、コバルトが40重量%であった。また、X線回折積分強度の合計は1174であった。このうち、(111)面の積分強度は570、(200)面における積分強度は401であり、(220)面の積分強度は203であった。又、印刷結果は実施例1と同じように、はんだペーストの滲みは発生せず、抜け性にも優れる為、はんだ端子に欠け等の欠陥は全く生じなかった。1万回印刷してもメタルマスクに歪は発生せず、はんだ端子の位置精度は良好であった。開口部の歪も生じなかった。
【実施例3】
【0026】
めっき条件として、硫酸ニッケル六水和物200g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル15g/L、硫酸鉄七水和物100g/L、マロン酸0.8mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド2g/L添加し、PH値を2.0に調整した浴にて、電量密度1.2A/dm2、浴温度45℃で行う以外は実施例1と同じ方法で、メタルマスク及びメタルマスク印刷版を作製した。
【0027】
このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、40重量%、残りは鉄であった。また、X線回折積分強度を測定すると、積分強度の合計は788であった。このうち、(111)面の積分強度が695、(200)面における積分強度は64であり、(220)面の積分強度も29であった。
又、このメタルマスク印刷版を用い、実施例1と同様に評価したところ、1万5千回印刷してもメタルマスクの開口部に歪は全く発生せず、印刷耐久性に優れていた。また、はんだ端子の位置ズレもほとんどなく、位置精度は良好であった。更に、クリームはんだの滲み、はんだ端子の割れ、抜け、欠け等の欠陥は全く見られなかった。
【実施例4】
【0028】
板厚0.2mm、550×650mmのSUS304基板の表面を研磨し、感光性レジスト(ニチゴー・モートン(株)社製、NIT)を熱圧着にて25μmラミネートした。次に、幅40μmで長さ70μmの長方形を繰り返しピッチ100μmで30万個からなる開口パターンを有するガラスマスクを使用し、実施例1と同様に露光、現像を行った。
【0029】
めっき条件として、硫酸ニッケル六水和物200g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル15g/L、硫酸鉄七水和物120g/L、グリコール酸0.6mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド2g/L添加し、PH値を2.0に調整した浴にて、電流密度1.4A/dm2、浴温度50℃で厚さ20μmのニッケル−鉄合金膜を形成した。これをアミン系溶剤(旭電化工業(株)社製、アデカリムーバー R−4050B)に浸漬させてレジストを除去後、めっき基板から剥がし、400×500mmのニッケル−鉄合金のメタルマスクを得、該メタルマスクをフレームに固定し、有機EL製造用蒸着マスクを完成させた。
【0030】
このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、35重量%、鉄が65重量%であった。又、X線回折積分強度を測定すると、積分強度の合計は274であった。このうち、(111)面の積分強度は214、(200)面における積分強度は60であり、(220)面の積分強度は0であった。
【0031】
該蒸着マスクを有機EL製造装置に装着し、RGB3種類の有機EL媒体を順次蒸着させ、有機層を形成させた。同様の工程を5000回繰り返し行ったが、蒸着マスクの開口部に歪は発生せず、また、開口部における位置ズレも確認されなかった。
【0032】
〔比較例1〕
実施例3において、硫酸ニッケル六水和物200g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル15g/L、硫酸鉄七水和物40g/L、マロン酸0.6mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド1g/L添加し、PH値を4.7に調整した浴にて、電流密度0.5A/dm2、浴温度50℃を用いる以外は実施例3と同じ方法でメタルマスク及びメタルマスク印刷版を作製した。このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、60重量%、鉄が40重量%であった。また、X線回折積分強度の合計は3033であった。このうち、(111)面の積分強度は1682であり、(200)面の積分強度は1243、(220)面の積分強度は108であった。実施例1と同様にしてメタルマスク印刷版の印刷評価を行った結果、はんだペーストを繰り返し印刷することによってメタルマスク全体に撓みが生じ、その結果開口部に歪が生じ、位置精度の低下した。位置精度からは該メタルマスクの使用限度は(耐久性)1500程度である。また、一部に、印刷時のクリームはんだの滲みやはんだ端子の割れ、抜け、欠け等の欠陥が発生した。
【0033】
〔比較例2〕
実施例3において、硫酸ニッケル六水和物200g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル30g/L、硫酸鉄七水和物80g/L、酒石酸0.3mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド2g/L添加し、PH値を3.2に調整した浴にて、電流密度0.8A/dm2、浴温度50℃を用いる以外は実施例3と同じ方法でメタルマスクを作製した。このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、55重量%、鉄が45重量%であった。また、X線回折積分強度の合計は3610であった。このうち、(111)面の積分強度は2364であり、(200)面の積分強度は1246、(220)面の積分強度は0であった。実施例1と同様にしてメタルマスク印刷版の印刷評価を行った結果、印刷回数に伴い、メタルマスク全体が撓み、更に、開口部の位置ズレも見られた。該メタルマスクの使用耐久性は1700回程度である。
【0034】
〔比較例3〕
実施例4において、硫酸ニッケル六水和物200g/L、硼酸30g/L、塩化ニッケル15g/L、硫酸鉄七水和物100g/L、グリコール酸0.6mol/L、オルソベンゼンスルフォンイミド2g/L添加し、PH値を2.0に調整した浴にて、電流密度0.25A/dm2、浴温度50℃を用いる以外は実施例4と同じ方法でメタルマスク及び有機EL製造用蒸着マスクを作製した。このメタルマスクのニッケル含有量を測定したところ、70重量%、鉄が30重量%であった。また、X線回折積分強度の合計は3210であった。このうち、(111)面の積分強度1580であり、(200)面の積分強度は1398、(220)面の積分強度は232であった。
【0035】
実施例4と同じようにして、該蒸着マスクを有機EL製造装置に装着し、RGB3種類の有機EL媒体を順次蒸着させ、有機層を形成させた。同様の工程を繰り返し行ったが、繰り返し回数が増加するに従って、蒸着マスクの開口部に歪が発生し、また、開口部の位置ズレが確認され、約1200回の使用で位置精度が許容範囲を越えた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明において、ニッケル合金からなる高精細パターンのパターン形成用メタルマスクにおいて、ニッケルの含有量が30〜60重量%であり、且つ、X線回折により測定した結晶配向性の積分強度の合計が3000以下になるように作製する事によって、耐久性を改善したパターン形成用メタルマスクを提供する事ができる。また、前記メタルマスクを電鋳法により作製する事で、高精細、高密度である開口部を有するパターン形成用メタルマスクを提供する事ができる。尚、これらは有機EL製造用の蒸着用メタルマスクにも利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電鋳法により作られ、ニッケルを30〜60重量%含有するニッケル合金からなるパターン形成用メタルマスクであって、X線回折により測定した結晶配向性の積分強度の合計が3000以下である事を特徴とするパターン形成用メタルマスク。
【請求項2】
X線回折により測定したメタルマスクの結晶配向性の積分強度の合計が2000以下である請求項1記載のパターン形成用メタルマスク。
【請求項3】
X線回折により測定したメタルマスクの結晶配向性において、(111)面の積分強度が1500以下である請求項1又は2記載のパターン形成用メタルマスク。
【請求項4】
X線回折により測定したメタルマスクの結晶配向性において、(200)面の積分強度が1500以下である請求項1〜3いずれか記載のパターン形成用メタルマスク。


【公開番号】特開2006−347165(P2006−347165A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140003(P2006−140003)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(592173412)株式会社プロセス・ラボ・ミクロン (30)
【Fターム(参考)】