説明

パルスピックアップ検出器用の電圧供給装置

【課題】 電動機のオーバーホール後のパルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相差の確認作業において、パルスピックアップ検出器の電源を遮断した状態において、パルス信号波形の位相差の確認作業が行える電圧供給装置を提供する。
【解決手段】 外部の交流電源からパルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bの電源である直流電圧を発生させる直流電源装置を備え、この直流電源装置から直流電圧を供給するパルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bを有し、さらに、このパルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bから取り出したパルス信号波形1およびパルス信号波形2を出力する記録計出力端子13および記録計出力端子14を有するパルス信号波形1およびパルス信号波形2の位相差の確認作業用の電圧供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機に取付けられたパルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相差の確認を電源遮断状態で行うための電圧供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転速度および回転方向の制御を行うために、ドライブ装置に回転数および回転方向を電気的な信号として入力することが必要である。その場合の一例として、電動機の回転軸と同期して回転するスリットの入った金属製の円盤を回転軸に取付け、この円盤と対峙した位置である固定部の2箇所にパルスピックアップ検出器を取付ける。この状態で、電動機の回転軸を回転すると、それぞれのパルスピックアップ検出器がスリット入りの円盤により発生されたオンとオフからなるパルス信号波形を繰り返し検出し、その検出したオンとオフからなるパルス信号波形をドライブ装置に入力して電動機の回転速度および回転方向の制御を行う。
【0003】
図1は各パルスピックアップ検出器で検出したパルス信号波形を表したものである。各パルスピックアップ検出器をパルスピックアップ検出器Aとパルスピックアップ検出器Bとする時、パルスピックアップ検出器Aのパルス信号波形1がパルスピックアップ検出器Bのパルス信号波形2に対して位相が90度進むか、90度遅れるかのいずれかによって、電動機の回転方向が認識される。また、パルス信号波形の周波数によって電動機の回転数が認識される。このパルス信号波形の位相差は、取付けたパルスピックアップ検出器Aとパルスピックアップ検出器Bの位置関係によって決まる。
【0004】
そこで、電動機の回転速度や回転方向の制御が無制御状態になるトラブル、もしくは、電動機のオーバーホール後の各パルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相の位置関係を確認する際には、記録計によって各パルスピックアップ検出器のパルス信号波形を確認する必要がある。
【0005】
その手順について、図2のパルスピックアップ検出器A、パルスピックアップ検出器Bとドライブ装置3の配線図を参照して説明する。ドライブ装置3の端子PPAに記録計4のチャンネルC14aの+側配線、ドライブ装置3の端子PPBに記録計4のチャンネルC24bの+側配線、ドライブ装置3の端子COMに記録計のチャンネルC1および記録計のチャンネルC2の−側配線を接続する。そして、電動機を回転させた後、記録計4を起動させ記録計のチャンネルC1、記録計のチャンネルC2に出力されるパルス信号波形1およびパルス信号波形2が、電動機の回転方向に合った位相差のずれが発生しているか、パルス信号波形1およびパルス信号波形2に乱れがないかを確認する。
【0006】
この測定方法は、もちろん、パルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bの各電源が投入された状態で行う。しかし、電動機をオーバーホール後に設置する際は、電気配線が外されているため、電源は遮断されている。電動機の設置後に電源を投入することは、大規模な機械修理において安全の上で不可能である、と判断された場合には、パルスピックアップ検出器Aのパルス信号波形1やパルスピックアップ検出器Bのパルス信号波形2の確認作業ができず、後回しとなってしまう。また、これらのパルス信号波形1やパルス信号波形2の確認後に、パルスピックアップ検出器Aやパルスピックアップ検出器Bの位置の調整もしくは取替が必要となった場合、設備によっては、作業範囲が十分に確保することができないために、非常に手間のかかる作業となる。
【0007】
従来の類似の装置としては、電源盤の受電試験において試験員の作業負担を軽減する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この装置は電動機オーバーホール後のパルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相差の確認作業を行うものと相違するものであった。
【0008】
【特許文献1】特開平09−135507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、電動機のオーバーホール後のパルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相差の確認作業において、パルスピックアップ検出器の電源を遮断した状態においても、パルス信号波形の位相差の確認作業が行える電圧供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の手段について説明する。本発明の手段は、外部の交流電源からパルスピックアップ検出器の電源である直流電圧を発生させる直流電圧発生装置を備えている。この直流電圧発生装置から直流電圧を供給するパルスピックアップ検出器を有し、さらに、このパルスピックアップ検出器から取り出したパルス信号波形を出力する出力端子を有することを特徴とするパルス信号波形の位相差の確認作業用の電圧供給装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記の手段としたことで、電動機のオーバーホール後のパルスピックアップ検出器によるパルス信号波形の位相差の確認作業において、パルスピックアップ検出器の電源を遮断した状態において、パルス信号波形の確認作業が行うことが可能となる。さらに、このことにより、実運転では、電動機のパルスピックアップ検出器に接続されたドライブ装置からの既設配線が未接続の状態であるので、電動機を自由に適当な場所に移動させることが可能である。そこで作業範囲を十分に確保できる場所を選定し、その場所でパルスピックアップ検出器のパルス信号波形の位相差の確認作業が行えるので、パルスピックアップ検出器の位置関係の調整もしくはパルスピックアップ検出器の取替が必要となった場合でも、その作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。本発明の装置であるパルスピックアップ検出器用の電圧供給装置の回路図を図3に示す。この電圧供給装置は、交流電源電圧110Vで使用するため、電圧入力のためのコンセント5を有しており、電源の投入、遮断はタンプラスイッチ6で行い、その2次側に電源投入状態の表示としてパイロットランプ7を配線する。そして、交流電源電圧110Vを直流電源電圧12Vに変換する定電圧発生装置8を有し、それを介して直流電圧12Vを出力する。
【0013】
パルスピックアップ検出器に電圧を出力する端子には、取付け、取外しを容易にするためにコネクタプラグ9とコネクタプラグ10とし、それぞれのコネクタプラグ9、コネクタプラグ10に接続するコネクタソケット付ケーブル11とコネクタソケット付ケーブル12を有する。
【0014】
また、記録計出力端子13の端子PP1は、電動機に設置してあるパルスピックアップ検出器A、Bのパルス信号を出力できるように、この装置内でコネクタプラグ9にあるコネクタ端子9aと接続されている。同様に、記録計出力端子14の端子PP2も、この装置内でコネクタプラグ10にあるコネクタ端子10aと接続されている。さらに記録計出力端子13の端子N12と、記録計出力端子14の端子N12は定電圧発生装置8の直流電圧0Vに接続されている。なお、コネクタプラグ9のコネクタ端子9dコネクタソケット付きケーブル11のN1と接続され、さらにコネクタプラグ10のコネクタ端子10dはコネクタソケット付きケーブル12のN2とそれぞれ接続されている。
【0015】
上記の回路接続とすることにより、パルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bの電源が遮断された状態でも、外部交流110V電源を使用し、パルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bに直流電圧12Vを供給して、パルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bのパルス信号波形1およびパルス信号波形2を出力することが可能な本発明の電圧供給装置が得られる。
【0016】
次に、この電圧供給装置と電動機に設置されたパルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bの接続方法およびその使用方法について説明する。これらの接続をする際は、電動機のオーバーホール後の電動機の設置前としているので、図2に示すパルスピックアップ検出器Aとパルスピックアップ検出器Bに接続されたドライブ装置3からの配線を外すものとする。つまり、図2のパルスピックアップ検出器Aおよびパルスピックアップ検出器Bの各端子に接続されているドライブ装置3からの配線は無いものとする。
【0017】
以上のようにドライブ装置3からの配線を外した後、図3のコネクタソケット付ケーブル11の線番S1をコネクタソケット11aから図2のパルスピックアップ検出器Aの端子Sに、図3のコネクタソケット付ケーブル11の線番P1をコネクタソケット11aから図2のパルスピックアップ検出器Aの端子+Aに、図3のコネクタソケット付ケーブル11の線番N1をコネクタソケット11aから図2のパルスピックアップ検出器Aの端子COMに、図3のコネクタソケット付ケーブル11の線番SDをコネクタソケット11aから図2のパルスピックアップ検出器Aの端子SDにそれぞれ接続する。
【0018】
同様に、図3のコネクタソケット付ケーブル12の線番S2をコネクタソケット12aから図2のパルスピックアップ検出器Bの端子Sに、図3のコネクタソケット付ケーブル12の線番P2をコネクタソケット12aから図2のパルスピックアップ検出器Bの端子+Bに、図3のコネクタソケット付ケーブル12の線番N2をコネクタソケット12aから図2のパルスピックアップ検出器Bの端子COMに、図3のコネクタソケット付ケーブル12の線番SDをコネクタソケット12aから図2のパルスピックアップ検出器Bの端子SDにそれぞれ接続する。
【0019】
そして、図3の記録計4のチャンネルC14aの+側配線を図3のパルスピックアップ検出器A用の電圧供給装置の端子PP1に接続し、図3の記録計4のチャンネルC14aの−側配線を図3のパルスピックアップ検出器A用の電圧供給装置の端子N12に接続する。
【0020】
同様に、図3の記録計4のチャンネルC24bの+側配線を図3のパルスピックアップ検出器B用の電圧供給装置の端子PP2に接続し、図3の記録計4のチャンネルC24bの−側配線を図3のパルスピックアップ検出器B用の電圧供給装置の端子N12に接続する。
【0021】
上記のように接続が終了すると、パルスピックアップ検出器A用およびパルスピックアップ検出器B用の電圧供給装置のコンセント5を介して、所内の電源から交流110V電圧を取出し、タンプラスイッチ6を投入し、記録計4を起動させる。次いで電動機の回転軸を手で回し、パルスピックアップ検出器Aのパルス信号波形1およびパルスピックアップ検出器Bのパルス信号波形2を確認する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】パルスピックアップ検出器のパルス信号波形を示す。
【図2】パルスピックアップ検出器とドライブ装置の配線図を示す。
【図3】パルスピックアップ検出器用の電圧供給装置の配線図を示す。
【符号の説明】
【0023】
1 パルス信号波形
2 パルス信号波形
3 ドライブ装置
4 記録計
4a チャンネルC1
4b チャンネルC2
A パルスピックアップ検出器
B パルスピックアップ検出器
5 コンセント
6 タンプラスイッチ
7 パイロットスイッチ
8 定電圧発生装置
9 コネクタプラグ
9a コネクタ端子
9b コネクタ端子
9c コネクタ端子
9d コネクタ端子
10 コネクタプラグ
10a コネクタ端子
10b コネクタ端子
10c コネクタ端子
10d コネクタ端子
11 コネクタソケット付ケーブル
11a コネクタソケット
12 コネクタソケット付ケーブル
12a コネクタソケット
13 記録計出力端子
14 記録計出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の交流電源からパルスピックアップ検出器の電源である直流電圧を発生させる直流電圧発生装置を備え、この直流電圧発生装置からの直流電圧を供給するパルスピックアップ検出器と、該パルスピックアップ検出器から取り出したパルス信号波形を出力する出力端子からなることを特徴とするパルス信号波形の位相差の確認作業用の電圧供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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