説明

パンティストッキング

【課題】パンティストッキングの大腿部の伝線指数を特定し、パンティストッキングの衣服圧を特定することにより、伝線が起こりにくく、かつフィット性に優れるパンティストッキングを提供する。
【解決手段】ポリウレタン弾性糸にポリアミド系合成繊維フィラメント、あるいはポリエステル系合成繊維フィラメントを巻きつけた被覆弾性糸を使用するパンティストッキング、あるいはポリアミド系合成繊維フィラメント、またはポリエステル系合成繊維フィラメントにポリウレタン弾性繊維を直接編成するパンティストッキングにおいて、伝線指数が0.01〜5cmであることを特徴とし、かつ膝以下の衣服圧が5mmHg以上であるパンティストッキング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性糸を用いたパンティストッキングに関し、さらに詳しくはポリウレタン弾性糸にポリアミド系合成繊維フィラメントもしくはポリエステル系合成繊維フィラメントを巻きつけた被覆弾性糸を使用するか、またはポリアミド系合成繊維フィラメント、もしくはポリエステル系合成繊維フィラメントにポリウレタン弾性繊維を直接編成して得られた、着用時に伝線が起こりにくく、かつフィット性に優れたパンティストッキング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンティストッキングは、外出時における女性の脚部の保護や保温さらには美しく見せる効果から、広く世間に浸透し愛用されている。しかし、パンティストッキングは、天竺組織のため、着用する際や着用時に何かにひっかけることにより簡単に伝線が走るという問題点があった。また伝線が走ると外見上見栄えが悪いことから、履き替えることを余儀なくされ、耐久性や経済的に問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するため、特許文献1には、ストッキングと同素材でできた生地にシール加工を施したものを破損部分に貼付する伝線防止方法が開示されているが、シールを貼るためにその部分が固くなり、風合いが悪くなる、あるいは伝線した箇所を全てカバーできるものではなく、伝線をそれ以上拡がらないようにする効果はあっても、伝線の目立ちにくさという点では不十分であった。
【特許文献1】特開2006−241658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点であった伝線が起こりにくく、かつフィット性にも優れたパンティストッキングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、パンティストッキングにおいて、大腿部の編目を切断しマネキンに装着した際の伝線指数を特定し、パンティストッキングの衣服圧を特定することにより、伝線が起こりにくく、かつフィット性に優れたパンティストッキングが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0006】
本願で特許請求する発明は、以下のとおりである。
(1)ポリウレタン弾性糸に、ポリアミド系合成繊維フィラメント、もしくはポリエステル系合成繊維フィラメントを巻きつけた被覆弾性糸を用いるか、またはポリアミド系合成繊維フィラメント、もしくはポリエステル系合成繊維フィラメントにポリウレタン弾性繊維を直接編成して得られたパンティストッキングであって、伝線指数が0.01〜5cmで、かつ膝以下の衣服圧が5mmHg以上であることを特徴とするパンティストッキング。
(2)ポリウレタン弾性糸が、ポリウレタン化合物を5重量%〜40重量%含有するポリウレタンウレア弾性繊維であって、熱機械測定分析(TMA)による圧縮変形開始温度が150℃以上180℃以下であり、50%伸長下、180℃における熱切断秒数が30秒以上であることを特徴とする(1)記載のパンティストッキング。
(3)ポリウレタンウレアが、炭素数2〜10の一種以上のアルキレンエーテルからなるポリアルキレンエーテルジオールを原料とすることを特徴とする(1)または(2)記載のパンティストッキング。
(4)ポリウレタン化合物が、炭素数2〜10の一種以上のアルキレンエーテルからなるポリアルキレンエーテルジオールを原料とすることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパンティストッキング。
(5)被覆弾性糸の撚り数が400T/m〜3000T/m、ドラフト率1.5〜5.0であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパンティストッキング。
(6)(1)記載のパンティストッキングをプレセット後、ファイナルセットとして100℃〜140℃で10秒〜90秒でスチームセットすることを特徴とするパンティストッキングの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるパンティストッキングは、伝線指数および膝以下の衣服圧を特定範囲に規定することにより、伝線が起こりにくく、かつフィット性に優れたパンティストッキングとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のパンティストッキングに用いられるポリウレタン弾性糸は、ポリウレタンウレア重合体を主成分とする組成物からなる。耐熱性の高いポリウレタンウレア重合体を主成分とすることで、加工処理時の熱での糸切れが起こりにくく、良好な伸縮物性を有するパンティストッキングが得られる。ポリウレタンウレア重合体の含有量については、このポリウレタンウレア弾性繊維およびパンティストッキングの耐熱性、物理的特性の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75重量%以上である。
【0009】
本発明に用いるポリウレタンウレア重合体は、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、2官能性アミン、および単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させて得ることができる。
【0010】
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリカーボネートジオール又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくはポリアルキレンエーテルグリコールであり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。中でも、優れた弾性機能を示す、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールが好適であり、炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールがより好適である。炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールの好適な例としては、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールがあげられる。また高分子ポリオールの数平均分子量としては500〜5,000が好ましい。より好ましい数平均分子量は、1,000〜3,000である。
【0011】
ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0012】
鎖延長剤として用いる2官能性アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ピペラジン、o−,m−及びp−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス[2−(エチルアミノ)−ウレア]等が挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン単独、又は1,2−プロピレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタジアミンの群から選ばれる少なくとも1種が5〜40モル%含まれるエチレンジアミン混合物が挙げられる。より好ましくは、エチレンジアミン単独である。
【0013】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。モノアルコールより1官能性アミンであるモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンが好ましい。
【0014】
本発明のポリウレタンウレア重合体を製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーを2官能性アミンで鎖伸張反応を行い、ポリウレタンウレア重合体を得ることができる。本発明において好ましいポリマー基質としては、数平均分子量500〜5000のポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/または炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールに過剰等量のジイソシアナートを反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、次いでプレポリマーに2官能性アミンと1官能性アミンとを反応させて得られるポリウレタンウレア重合体である。
【0015】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系極性溶媒を用いることができる。好ましくはジメチルアセトアミドである。
【0016】
本発明に用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、熱機械測定分析(TMA)による圧縮変形開始温度が150℃以上、180℃以下である。この温度範囲にあることにより、通常のパンティストッキングの加工条件にて、目的の伝線の防止機能を得ることができる。パンティストッキングの伝線防止機能を発現させる観点から、ポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形開始温度は175℃以下であることが好ましく、加工工程における熱処理後パンティストッキングのフィット性などの点から160℃以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、パンストを加工する時の糸切れ耐熱性の観点から、原糸を50%伸長下、180℃の熱体に接触させた際に、破断が起こるまでの時間が30秒以上である。このようなポリウレタンウレア弾性繊維は高温でも糸切れしにくいため、加工時の温度条件の制約の少ないパンティストッキングを提供することができる。
【0018】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は上述のごとく、高温での耐熱性に優れ、かつ、それより低い温度で圧縮変形しやすいという特徴を有する。このような性能は、繊維基質にポリウレタンウレア重合体を用い、さらに特定のポリウレタン化合物を特定量含有させることで発現させることができる。
【0019】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、ポリウレタン化合物を5重量%以上、40重量%以下含有する。ポリウレタン化合物の含有量を5重量%以上とすることで、パンティストッキングでの伝線防止効果を得ることができるが、40重量%以下とすることで、弾性繊維の破断強伸度、パワー、回復性を損なわず、良好な伸縮物性を有するパンティストッキングを得ることができる。ポリウレタン化合物の含有量は、より好ましくは10重量%以上、30重量%以下である。
【0020】
本発明に用いるポリウレタン化合物は、ハードセグメントがウレタン結合からなる重合体であり、例えば、高分子ポリオール、イソシアネート、低分子ポリオールを反応させて得ることができる。また、単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させてもよい。
【0021】
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、又はこれらの混合物又はこれらの共重合物、または後述する分子中に3つ以上の官能基を有するポリオール等が挙げられる。実質的に線状のホモ又は共重合体からなるポリエーテルグリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。実質的に線状のホモ又は共重合体からなるポリエステルジオールとしては、アジピン酸、フタル酸などの二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール類との縮合脱水反応によるアジペート系ポリエステルジオール、ε−カプロラクトンの開環重合によるポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等である。高分子ポリオールは、数平均分子量として500〜2,500のものが好ましい。より好ましくは、600〜2,200であり、特に好ましくは、800〜1,800である。
【0022】
イソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートや後述する分子中に3つ以上の官能基を有するイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0023】
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサンや後述する分子中に3つ以上の官能基を有する低分子ポリオール等を鎖延長剤として用いることができる。低分子ジオールとして好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールである。
【0024】
本発明に用いることができるポリウレタン化合物を製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、高分子ポリオールとイソシアネートと低分子ポリオールの3成分を一括混合し、反応させるワンショット法。または、高分子ポリオールとイソシアネートをイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーを低分子ジオールで鎖伸長反応を行うプレポリマー法があるが、いずれの方法でポリウレタンを得てもよい。ポリウレタン化反応の操作に関しては、プレポリマー法におけるウレタンプレポリマー合成時やウレタンプレポリマーとジオールとの反応時に、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系極性溶媒を用いることができる。好ましくはジメチルアセトアミドである。
【0025】
本発明に用いられるポリウレタン化合物は、パンティストッキングの伝線を防止する効果を発現させるために、硬度が低いものが好ましい。良好な固着性能を得るために、ポリウレタン化合物の硬度は、JIS−K6253で規定されている硬度が80A以下であることが好ましく、77A以下がより好ましい。
【0026】
本発明に用いられるポリウレタン化合物は、示差走査熱量計(DSC)測定において、80℃から、このポリウレタン化合物の分解が始まるまでの温度間で、ハードセグメントに起因する吸熱ピークを持たないものが好ましい。このような特性は、ハードセグメント比率を下げたもの、およびハード構造がルーズなもので発現できる。ポリウレタン化合物の分解温度は熱重量分析(TG)にて大きな熱減量が起こる温度で測定される。この温度範囲で、明確な吸熱ピークを持たないことにより、より良好な固着性能が得られるだけでなく、伸縮機能において良好な回復性を有することができる。
【0027】
このような性能を有するポリウレタン化合物としては、ポリウレタン重合体を得る際に、高分子ポリオールに対するイソシアネートの当量比を変えることで、ハードセグメントの分子量の比率を下げる方法や、以下に記する架橋型ポリウレタンを用いる方法、後述のポリウレタン重合体の原料として共重合のポリアルキレンエーテルグリコールを用いることで好適に得ることができる。
【0028】
本発明に用いられるポリウレタン化合物は、ポリウレタンウレア弾性繊維に高い耐熱性と回復性を付与するために、架橋型ポリウレタン化合物がより好適である。本発明における、架橋型ポリウレタン化合物とは、ポリウレタン分子の分岐構造、またはアロファネート結合やイソシアヌレート構造により、ポリウレタン重合体の一部が三次元的な網目構造を有しているものである。架橋型のポリウレタン化合物を得るには、分子中に3つ以上の官能基を有する、高分子ポリオール、イソシアネート、低分子ポリオールを用いる方法、ジイソシアネートの反応時にアロファネート結合やイソシアヌレートによる架橋構造を生じさせる方法等がある。成形性の観点から、アロファネート結合による架橋構造を有するものが好ましい。
【0029】
分子中に3つ以上の官能基を有する、ポリオールとしては、グリセリン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはこれらを開始剤とするポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリマーポリオールがあげられる。イソシアネートとしては、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオフォスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートや、各種イソシアネート化合物から得られるアロファネート変性ポリイソシアネート、ポリウレタン変性ポリイソシアネートがあげられる。
【0030】
アロファネート結合架橋構造を有する、架橋タイプのポリウレタン化合物を製造する方法については、例えば、プレポリマー法により低分子ジオールによる鎖延長時に、イソシアネート基が残る官能基比率で低分子ジオールを加えて鎖延長させた後、80℃以上の恒温槽でイソシアネート基が消失するまで加熱保持し、架橋させる方法。また、例えば低分子ジオールによる鎖延長後、過剰のジイソシアネート化合物を加え、同様に加熱保持して架橋させる方法等がある。
【0031】
また、本発明で用いるポリウレタン化合物としては、炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールを用いることがより好適である。炭素数が2から10の異なったアルキレンエーテルからなる共重合ポリアルキレンエーテルグリコールの好適な例としては、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールがあげられる。テトラメチレン基に対する2,2−ジメチルプロピレン基または3−メチルテトラメチレン基の共重合比は、力学特性の観点から、5〜35モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましい。
【0032】
本発明のポリウレタンウレア弾性繊維は、ジメチルシリコーンを2.5重量%以上含有することが好ましい。2.5重量%以上ジメチルシリコーンを含有することで、ポリウレタンウレア弾性繊維を使用する際に、パッケージからの糸の解舒性が良好となり、特にパッケージを長期間保管した後の解舒性の低下を抑制することができる。但し、パッケージから糸の巻き崩れの起こらないようにするため、ジメチルシリコーンの含有量は、9重量%以下が好ましい。ジメチルシリコーンの含有量は、3.5重量%〜7.5重量%がより好ましい。
【0033】
また本発明に用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、変成シリコーンの含有率が0.1重量%未満であることが好ましい。変成シリコーンはジメチルシリコーン鎖の末端、中間部側鎖を官能基で修飾したものであり、例えば、アミノ変成シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等があげられる。変成シリコーンは、繊維状に加工する紡糸前のポリウレタンドープ中に添加されたり、仕上げ油剤の成分として紡糸後に付与されて、ポリウレタン弾性繊維中に添加される。これら変成シリコーンは、変成されていないシリコーンに比べ、ポリウレタン成分との親和性が高く、加工処理を施しても、ポリウレタン繊維表面に残りやすいため、熱による固着性を低下させる。ポリウレタンウレア弾性繊維中に0.1重量%未満とすることで、ポリウレタンウレア弾性繊維のより高い熱固着性を発現することができる。より好ましくは、変成シリコーンを含有しないものである。
【0034】
本発明に用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、上述のポリウレタン化合物とポリウレタンウレア重合体を、アミド系極性溶媒に溶解して得られたポリウレタンウレア紡糸原液を、乾式紡糸によって好適に製造することができる。乾式紡糸は溶融紡糸や湿式紡糸に比べてハードセグメント間の水素結合による物理架橋を最も強固に形成させることが出来るため好ましい。また、弾性繊維中のポリウレタン化合物が40重量%以下とすることで、乾式紡糸においては紡糸時の糸切れ等の問題が無い安定な生産ができ、糸長方向の斑の少ない品位の高いポリウレタン弾性繊維を得ることができる。アミド系極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドがあげられる。ポリウレタンウレア弾性繊維中にポリウレタン化合物を含有させるには、どのような方法をとってもよいが、生産工程性の観点から、ポリウレタン化合物とポリウレタンウレア重合体を均一に混合したポリウレタンウレア組成物を紡糸することが好ましい。
【0035】
ポリウレタン化合物とポリウレタンウレア重合体を混合する方法は、例えばポリウレタン組成物中で均一に混合させるには、アミド系極性溶媒中で合成したポリウレタン化合物とポリウレタンウレア重合体の溶液同士を混合する方法、無溶媒で重合したポリウレタン化合物をアミド系極性溶媒に溶解させた後にポリウレタンウレア重合体溶液中に添加する方法、溶融したポリウレタン化合物をポリウレタンウレア重合体溶液に添加する方法、粉末またはペレット状のポリウレタン化合物をポリウレタンウレア重合体のアミド系極性溶媒溶液中で溶解させる方法等があげられる。
【0036】
このポリウレタンウレア紡糸原液には、ポリウレタンウレア弾性繊維に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。
【0037】
ポリウレタンウレア弾性繊維には、ジメチルシリコーン成分を含み、鉱物油等からなる油剤を含有させることができる。油剤の含有量は、パッケージに巻き取った際に、ポリウレタンウレア弾性繊維の固形分に対し、2.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。油剤の含有のさせ方は、乾式紡糸後にポリウレタンウレア弾性繊維に付与してもよく、また油剤を紡糸原液に予め含有させて乾式紡糸してもよく、そのいずれを行っても良い。乾式紡糸後に油剤を付与する場合、紡糸原液が乾式紡糸され繊維形成後であれば特に限定されないが、巻き取り機に巻き取られる直前が好ましい。繊維を巻き取った後で油剤を付与することは、巻き取り玉から繊維を解舒するのが困難である。付与方法は、油剤バス中に回転させた金属円筒の表面上に作った油膜に紡糸直後の糸を接触させる方法、ガイド付きのノズル先端から定量吐出した油剤を糸へ付着させる方法など公知の方法を用いることが出来る。また、油剤の紡糸原液への含有のさせ方は、紡糸原液を製造するどの時点に添加してもよく、紡糸原液に溶解又は分散させておく。
【0038】
油剤として、ジメチルシリコーン、鉱物油の他、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変成シリコーンを含有しても良いが、油剤成分中の変成シリコーンの含有量は、前述の理由から、あわせて1.0重量%未満であることが好ましい。また、ポリウレタン弾性繊維に付与した際に、ジメチルシリコーン成分が2.5重量%以上含有するように、ポリウレタン弾性繊維への油剤の含有量にあわせて、油剤中のジメチルシリコーン成分の含有量を変えることが好ましい。油剤中のジメチルシリコーンの含有量は、50重量%以上が好ましい。さらに油剤には、タルク、コロイダルアルミナ等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固体のワックス等を単独、または必要に応じて任意に組み合わせて用いても良い。
【0039】
本発明に用いられるポリアミド系合成繊維とは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、及びこれらのカチオン可染型変成物やポリアミド/エステル複合繊維であり、任意の繊度、断面形状のものが使用できる。
【0040】
本発明で用いられるポリエステル系合成繊維とは、当業者に知られているポリエステル系合成繊維のことであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが代表的な例として挙げられる。
【0041】
本発明で用いられるポリウレタン弾性繊維は、シングルカバーリング糸、ダブルカバーリング糸、エアーカバーリング糸、合糸撚糸などの被覆弾性糸の状態で使用される場合と、ポリウレタン弾性繊維を直接合成繊維フィラメントとともに編成される場合があるが、被覆弾性糸の場合は特にシングルカバーリング糸が好ましい。
【0042】
本発明で対象とするパンティストッキングは、このポリウレタン弾性糸を用いた被覆弾性糸またはポリウレタン弾性糸の裸糸をパンティ部及び、またはレッグ部に用いたものである。被覆弾性糸を用いる場合は、パンティ部に前記被覆弾性糸を1〜3コース毎に1コースの割合で製編する方法が挙げられる。また、レッグ部に用いる場合は前記被覆弾性糸のみで編成する方法、前記被覆弾性糸と非弾性繊維とを交互に編成する方法、合成繊維フィラメントにポリウレタン弾性糸を直接編成する方法が挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるポリウレタン弾性糸の繊度は、好ましくは5デシテックス〜310デシテックスであり、より好ましくは7〜155デシテックスである。ポリウレタン弾性糸の繊度が5デシテックス未満であると製造が困難であり、製造できたとしても耐久性に問題がある。また、310デシテックスを超えると、パワーが強すぎて商品として価値がない。
【0044】
また、本発明に用いる被覆弾性糸のカバリング条件は、撚り数は400T/m〜3000T/mが好ましく、より好ましくは1000T/m〜2000T/mであり、ドラフト率は1.5〜6.0、好ましくは2.0〜5.0である。撚り数は400T/m未満の場合はスパンデックスの被覆率が低いためにカバリング斑が起りやすく、編成した場合に編目面が汚くなる。また、3000T/mを超えるとスパンデックスの被覆率が高すぎるため、伝線防止効果が低くなり、風合いが硬くなる。さらには生産効率が低下し、コストアップにつながる。
【0045】
これらの糸条を用いてパンティストッキングを製造する方法は特に限定されないが、例えばストッキング用丸編機を用いることができる。この場合、針本数は300本から600本、釜径(釜の直径)は3インチから5インチが好ましい。本発明におけるパンティストッキングの編組織は特に限定されず、例えばコース方向に度目を変えて編成を行う、いわゆるファッショニングや柄編を行ってもよい。
【0046】
本発明のパンティストッキングのプレセット条件、縫製条件、染色仕上条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。染色段階で必要に応じて抗菌加工、消臭加工、紫外線吸収加工などの機能加工、さらに後加工として樹脂加工等を付与することができる。ファイナルセットは、通常金属製の足型にパンティストッキングをセットし、スチームによりセットするが、その温度が100℃〜140℃が好ましく、より好ましくは115℃〜135℃である。スチームセット温度が100℃より低いと、十分な伝線防止効果が得られにくく、140℃より高いと相手糸の堅牢度が悪くなる、あるいは風合いが硬くなるため好ましくない。また、セットの時間は10秒〜90秒が好ましく、より好ましくは15秒から60秒である。セットの時間が10秒未満では、十分な伝染防止効果が得られにくく、90秒を超えると製造コストが高くなり好ましくない。
【実施例】
【0047】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。以下にポリウレタン弾性繊維、パンティストッキング性能評価のための各種評価方法について述べる。
【0048】
(1)伝線指数の測定方法
パンティストッキングの大腿部の編目をウェル方向に5mm間隔で1目ずつ5箇所切断し、ザルツマン社製MST MKIII型の足型No.7に装着した際の伝線の長さをそれぞれ測定し、5箇所の平均を算出する。
【0049】
(2)衣服圧の測定方法
ザルツマン社製MST MKIII型の足型No.7にパンティストッキングを装着し、1分後に衣服圧を読み取り、その後パンティストッキングを脱がせて1分間おき、再度装着して1分後に衣服圧を読むという動作を3回繰返し、3回の平均値を算出する。
【0050】
(3)パンティストッキングの風合い測定方法
パネラー10名にパンティストッキングのレッグ部に手を入れる、あるいは握って表面の風合いを評価してもらい、以下の基準で判定し、10名の合計点数で算出する。
5点: 風合いが非常にが柔かい
4点: 風合いがやや柔かい
3点: ふつう
2点: 風合いがやや硬い
1点: 風合いが非常に硬い
【0051】
(4)熱機械測定分析(TMA)による圧縮変形開始温度
ポリウレタン弾性繊維を、石油エーテルで油剤を除去し乾燥させた後、ジメチルアセトアミドに溶解し20%溶液とする。この溶液を、アプリケーターを用いて厚さ0.6mmで均一にガラス板上にキャストする。これを70℃16時間で、ジメチルアセトアミドを乾燥除去して厚さ約0.12mmのフィルムを得る。
このフィルムを、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)社製TMA/SS120型)の圧縮モードにて、押込プローブ経φ1.2mm、5gの一定加重下、室温より10℃/分で昇温させる。温度上昇により膨張するが、膨張から押込による圧縮変形に転ずる変曲点の温度を、圧縮変形開始温度とする。
【0052】
(5)接触熱切断秒数
初期長14cmの試験糸を50%伸長して21cmとし、表面温度180℃の直径6cmの円筒状の熱体に押し当て(接触部分1cm)、切断されるまでの秒数を測定する。
【0053】
(6)ポリウレタン化合物の示差走査熱量計(DSC)測定
ポリウレタン化合物を約10mgを、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC210型)にて、窒素50ml/分の気流下、10℃/分の昇温速度でポリウレタン化合物の分解温度まで測定する。
【0054】
(7)硬度
JIS−K6253に記載の方法で測定する。
【0055】
[実施例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)に対し、1.6倍当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。一方、エチレンジアミン(EDA)およびジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア重合体溶液PA1を得た。
【0056】
また別に、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、3.0倍等量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)を前記プレポリマーに添加し反応させた後、80℃で16時間加熱して、硬度80A、DSCにおいて80℃から分解開始温度(282℃)までの間に吸熱ピークを持たないポリウレタン化合物を得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU1を得た。
【0057】
得られたポリウレタンウレア溶液とポリウレタン溶液をPA1:PU1=80:20で混合し、ポリウレタンウレアとポリウレタンをあわせた固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタンウレア弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで
、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
【0058】
上記で得られたポリウレタンウレア弾性繊維の裸糸22デシテックスにナイロン66加工糸12デシテックス/7フィラメントを1400T/m、ドラフト率2.8でカバリングし、シングルカバーリング糸を得た。該糸をレッグ部の素材として針本数400本のパンスト編機でゾッキパンストを作成し、通常の条件でプレセットを行った後、股部及びトウ部を縫製した。染色は通常の方法でパンティストッキングの一般色であるベージュに染色、柔軟仕上処理を行い、120℃で30秒ファイナルセットを行い、実施例1のパンティストッキングを得た。
【0059】
[実施例2]
実施例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、2.4倍等量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに添加し反応させた後、80℃で60時間加熱して、硬度75A、DSCにおいて80℃から分解開始温度(253℃)までの間に吸熱ピークを持たないポリウレタン化合物を得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU2を得た。
【0060】
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU2=80:20で混合し、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
該ポリウレタンウレア弾性繊維を用い、ナイロン66加工糸12デシテックス/7フィラメントを1700T/m、ドラフト率3.0でカバリングし、シングルカバーリング糸を得た。該糸をレッグ部の素材として針本数400本のパンスト編機でゾッキパンストを作成し、通常の条件でプレセットを行った後、股部及びトウ部を縫製した。染色は通常の方法でパンティストッキングの一般色であるベージュに染色、柔軟仕上処理を行い、130℃で20秒ファイナルセットを行い、実施例2のパンティストッキングを得た。
【0061】
[実施例3]
実施例2において、ポリウレタンウレア溶液とポリウレタン溶液をPA1:PU2=65:35で混合する以外は、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得、実施例1と同様の方法で実施例3のパンティストッキングを得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のテトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成り、2,2−ジメチルプロピレン基のモル分率が10モル%の共重合ポリエーテルグリコールに対し、2.4倍当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに添加して、同様に反応させ、硬度77A、DSCにおいて80℃から分解開始温度(264℃)までの間に吸熱ピークを持たないポリウレタン化合物を得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU3を得た。得られたポリウレタン溶液をPA1:PU3=80:20で混合し、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
該ポリウレタンウレア弾性繊維を用いて実施例1と同様の方法で実施例4のパンティストッキングを得た。
【0063】
[実施例5]
実施例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量1000のポリブチレンアジペートジオールに対し、3.0倍等量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに添加して、同様に反応させ、硬度66A、DSCにおいて80℃から分解開始温度(302℃)までの間に吸熱ピークを持たないポリウレタン化合物を得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU4を得た。
【0064】
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU4=80:20で混合し、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得た。
該ポリウレタンウレア弾性繊維を用いて実施例1と同様の方法で実施例5のパンティストッキングを得た。
【0065】
[実施例6]
実施例2において、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールに代えて、数平均分子量2000のテトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基からなる共重合ポリエーテルグリコール(2,2−ジメチルプロピレン基の共重合率10モル%)を用いる以外は同様な方法で得られたポリウレタンウレア重合体溶液PA2を用いた以外は実施例2と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
該ポリウレタンウレア弾性繊維を用いて実施例1と同様の方法で実施例6のパンティストッキングを得た。
【0066】
[実施例7]
実施例6で用いたPA2と、実施例4で用いたPU3を、PA2:PU3=80:20で混合し、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0067】
ナイロン66加工糸12デシテックス/7フィラメントと上記で得られたポリウレタンウレア弾性繊維の裸糸22デシテックスをレッグ部の素材として針本数400本のパンスト編機でプレーティングしてベアパンストを作成し、通常の条件でプレセットを行った後、股部及びトウ部を縫製した。染色は通常の方法でパンティストッキングの一般色であるベージュに染色、柔軟仕上処理を行い、120℃で30秒ファイナルセットを行い、実施例7のパンティストッキングを得た。
【0068】
[比較例1]
ポリウレタン化合物PU1を添加しない以外は実施例1と同様にして(各添加剤はPA1固形分対比量添加した)、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得、実施例1と同様の方法で比較例1のパンティストッキングを得た。
【0069】
[比較例2]
ポリウレタンウレア重合体PA1を添加しない以外は実施例2と同様にして(各添加剤はPU2固形分対比量添加した)、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタンウレア弾性繊維を得、実施例1と同様の方法で比較例2のパンティストッキングを得た。
【0070】
[比較例3]
実施例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、5.1倍等量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに添加し反応させ、硬度90A、DSCにおいて分解開始温度(290℃)より低い230℃に吸熱ピークを有するポリウレタン化合物を得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU5を得た。得られたポリウレタン溶液をPA1:PU5=80:20で混合し、実施例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得、実施例1と同様の方法で比較例3のパンティストッキングを得た。
【0071】
[比較例4]実施例1のパンティストッキングの製造において、カバリング条件が3200T/m、ドラフト率3.5である以外は実施例1と同様にして比較例4を得た。
【0072】
[比較例5]実施例1のパンティストッキングの製造において、ファイナルセット温度が
90℃で20秒ファイナルセットを行い、比較例5のパンティストッキングを得た。
【0073】
[比較例6]実施例1のパンティストッキングの製造において、ファイナルセット温度が
150℃で20秒ファイナルセットを行い、比較例5のパンティストッキングを得た。
以上の各実施例および比較例における組成を表1に、得られたパンティストッキングの性能を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のパンティストッキングは、いわゆるゾッキパンスト、交編パンスト、ベア編パンストに関わらず、伝線が起こりにくく、かつフィット性にも優れたパンティストッキングとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン弾性糸に、ポリアミド系合成繊維フィラメント、もしくはポリエステル系合成繊維フィラメントを巻きつけた被覆弾性糸を用いるか、またはポリアミド系合成繊維フィラメント、もしくはポリエステル系合成繊維フィラメントにポリウレタン弾性繊維を直接編成して得られたパンティストッキングであって、伝線指数が0.01〜5cmで、かつ膝以下の衣服圧が5mmHg以上であることを特徴とするパンティストッキング。
【請求項2】
ポリウレタン弾性糸が、ポリウレタン化合物を5重量%〜40重量%含有するポリウレタンウレア弾性繊維であって、熱機械測定分析(TMA)による圧縮変形開始温度が150℃以上180℃以下であり、50%伸長下、180℃における熱切断秒数が30秒以上であることを特徴とする請求項1記載のパンティストッキング。
【請求項3】
ポリウレタンウレアが、炭素数2〜10の一種以上のアルキレンエーテルからなるポリアルキレンエーテルジオールを原料とすることを特徴とする請求項1または2記載のパンティストッキング。
【請求項4】
ポリウレタン化合物が、炭素数2〜10の一種以上のアルキレンエーテルからなるポリアルキレンエーテルジオールを原料とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパンティストッキング。
【請求項5】
被覆弾性糸の撚り数が400T/m〜3000T/m、ドラフト率1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパンティストッキング。
【請求項6】
請求項1記載のパンティストッキングをプレセット後、ファイナルセットとして100℃〜140℃で10秒〜90秒でスチームセットすることを特徴とするパンティストッキングの製造方法。

【公開番号】特開2008−179925(P2008−179925A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16151(P2007−16151)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】