説明

パーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたはパーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオンを含有する化合物

本発明は、パーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたはパーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオン、((パー)フルオロ)フェニル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたは((パー)フルオロ)フェニル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオンまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基で一置換もしくは二置換されたフェニル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基で一置換もしくは二置換されたフェニル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオンを含む化合物、これらの調製物およびこれらの、色素増感太陽電池のための電解質配合物の一部としての使用、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたはパーフルオロアルキル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオン、((パー)フルオロ)フェニル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオンまたは(パー)フルオロ)フェニル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオンまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基で一置換もしくは二置換されたフェニル−シアノ−アルコキシ−ボレートアニオン、または1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基で一置換もしくは二置換されたフェニル−シアノ−アルコキシ−フルオロ−ボレートアニオンを含有する化合物、これらの製造、特に、色素増感太陽電池のための電解質配合物の一部としてのこれらの使用に関する。
【0002】
本発明にしたがった塩は、一方でイオン液体の合成のために用いることができ、他方で、当該塩は、イオン液体としてそのまま用いることもできる。
【0003】
イオン液体または液体塩は、有機カチオンおよび一般的に無機アニオンからなるイオン種である。これらは中性分子を含有せず、通常373Kより低い融点を有する。
【背景技術】
【0004】
イオン液体の分野は、潜在用途が多種多様であるため、現在、徹底した研究の対象である。イオン液体についての総説は、例えば、R. Sheldon "Catalytic reactions in ionic liquids“, Chem. Commun., 2001, 2399-2407; M.J. Earle, K.R. Seddon “Ionic liquids. Green solvent for the future”, Pure Appl. Chem., 72 (2000), 1391-1398; P. Wasserscheid, W. Keim "Ionische Fluessigkeiten - neue Loesungen fuer die Uebergangsmetallkatalyse“ [Ionic Liquids - Novel Solutions for Transition-Metal Catalysis], Angew. Chem., 112 (2000), 3926-3945; T. Welton "Room temperature ionic liquids. Solvents for synthesis and catalysis”, Chem. Rev., 92 (1999), 2071-2083またはR. Hagiwara, Ya. Ito "Room temperature ionic liquids of alkylimidazolium cations and fluoroanions”, J. Fluorine Chem., 105 (2000), 221-227である。
【0005】
イオン液体の性質は、例えば、融点、熱および電気化学的安定性、粘度は、アニオンの特質によって強く影響される。
E. Bernhardt et al, Z. Anorg. Allg. Chem. 2000, 626, 560, E. Bernhardt et al, Chem. Eur. J. 2001, 7, 4696およびE. Bernhardt et al, Z. Anorg. Allg. Chem. 2003, 629,1229は、新規の化学的および電気化学的に安定な、ボレートアニオン[B(CN)、[FB(CN)4−x、式中x=1〜3、および[B(CFを開示している。
【0006】
先行技術文献
EP1205480 A1は、テトラキスフルオロアルキルボレートおよび伝導性塩またはイオン液体としてのその使用を記載する。
【0007】
WO 2006/010455は、アルコキシトリス(パーフルオロアルキル)ボレート塩およびイオン液体の合成のための前駆体としてのそれらの使用またはイオン液体としてのそれらの使用を記載する。
【0008】
WO 2006/045405は、式[B(R4−x−y(CN)(F)、式中xは1、2または3であり、y=0または1、x+y=4であり、Rは全フッ素置換されたか、または部分的にフッ素置換された、1〜12個のC原子を有するアルキル基を示す、の塩、特に、トリス(トリフルオロメチル)シアノホウ酸カリウム、トリス(トリフルオロメチル)シアノホウ酸グアニジニウム、およびトリス(トリフルオロメチル)シアノホウ酸トリチリウムを記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、新規であり、熱および電気化学的に安定であり、イオン液体の合成のためにまたはイオン液体として用いることができ、イオン液体の合成またはイオン液体として、色素増感太陽電池における適用のために特に有用である、代替えの化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該課題は、本発明にしたがった式Iの塩と、式Iaの特定のボレートアニオンとによって達成される。
【0011】
本発明はしたがって、式Ia
[B(R)(CN)(OR3−x−y(F) Ia
式中、
xは1または2であり、yは0または1であり、x+yが<3であり、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは、1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、
のボレートアニオンを含有する化合物に関する。
【0012】
本発明はさらに、式I
[Kt]z+z[B(R)(CN)(OR3−x−y(F)
式中
[Kt]z+は、無機または有機カチオンまたはHを示し、
zは、1または2であり、
xは、1または2であり、yは0または1であり、x+yは<3であり、
は、1〜4個のC原子を有する、直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル基を示す、
の化合物に関する。
【0013】
1〜4個のC原子を有する、直鎖または分岐パーフルオロアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロ−sec−ブチルまたはノナフルオロ−tert−ブチルである。
1〜4個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。
【0014】
式Ia中または式I中のRは、特に、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたはヘプタフルオロプロピル、C、p−FC、3,5−(CFまたはC、特に好ましくは、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐パーフルオロ基またはC、非常に特に好ましくはトリフルオロメチルまたはペンタフルオロエチルである。
式Ia中または式I中のRは、特に、メチル、エチル、n−プロピルまたはn−ブチル、特に好ましくは、メチルまたはエチル、とりわけ特に好ましくはメチルである。
【0015】
本発明にしたがって、式Iの化合物のカチオンの選択に関し、制限自体は存在しない。したがって、[Kt]z+は無機または有機カチオンであり得る。アルカリ金属カチオンを有する式Iの化合物は、有機カチオンまたはアルカリメタルカチオン以外の金属カチオンを有する式Iの化合物の合成のために、好ましい出発材料である。式Iの塩の使用が、イオン液体のための用途の分野におけるものである場合、カチオンは好ましくは有機カチオンである。式Iの塩の使用が、イオン液体の合成のための前駆体、有機カチオンまたはブレンステッド酸を有する導電性塩として、または触媒の分野における、電気化学デバイスまたはセンサのための伝導性塩としてのものである場合、カチオンは好ましくは金属カチオンである。
【0016】
好ましくは、有機カチオンは、スルホニウム、オキソニウム、アンモニウム、ホスホニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウムカチオンまたは複素環カチオンを含む群から選択される。有機カチオンの例は、z=4の帯電の度合を有するポリアンモニウムイオン、または、フェニル基が、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分岐アルケニル、または2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分岐アルキニルで置換されてもよい、トリチリウムカチオンでもある。
【0017】
スルホニウムカチオンは、例えば式(1)で表すことができ、オキソニウムカチオンは、例えば式(2)で表すことができる
[(RS] (1)
[(RO] (2)
式中、
は、1〜8個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基、R’’’N−または置換されていないフェニルまたは、R’’’、OR’’’、N(R’’’、CNもしくはハロゲンで置換されたフェニルであり、およびR’’’は互いに独立して、Hまたは直鎖または分岐のC〜Cアルキルである。
【0018】
[(RO]カチオンまたは[(RS]カチオンのRは、好ましくは1〜8個のC原子を有する直鎖アルキル、または非置換フェニル、またはR’’’、OR’’’、N(R’’’、CNまたはハロゲンで置換されたフェニルであり、R’’’は互いに独立して、Hまたは直鎖または分岐のC〜Cアルキル、特に好ましくは1〜8個のC原子を有する直鎖アルキル、特にメチルまたはエチル、非常に特に好ましくはエチルである。特に好ましいスルホニウムカチオンは、ジエチル−メチルスルホニウムである。
【0019】
アンモニウムカチオンは、例えば式(3)で表すことができる
[NR (3)
式中、
Rは、いずれの場合にも、互いに独立して、
H、
OR’、NR’、ただし式(3)において、最大1つの置換基RがOR’、NR’であり、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分または完全に不飽和のシクロアルキル、
を示し、
【0020】
ここで、1個または2個のRは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで、または部分的に−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、ここで、α位にないRにおける1個または2個の非隣接炭素原子は、基−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される、原子および/または原子団で置き換えられてもよく、
ここで、R’=H、非−、部分または全フッ素置換されたC1−〜C18−アルキル、C3−〜C7−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり得、X=ハロゲンであり得る。
【0021】
ホスホニウムカチオンは、例えば、式(4)で表すことができる
[PR (4)
式中
は、いずれの場合にも、互いに独立して、
H、OR’またはNR’
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
を示し、
【0022】
ここで、1個または2個のRは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで、または部分的に−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、ここで、Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、基−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される、原子および/または原子団に置き換えられてもよく、ここで、R’=H、非−、部分的またはパーフルオロ化C−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0023】
しかしながら、4個全てのまたは3個の置換基RおよびRが完全にハロゲンで置換されている、式(3)および(4)のカチオン、例えば、トリス(トリフルオロメチル)メチルアンモニウムカチオン、テトラキス(トリフルオロメチル)アンモニウムカチオンまたはテトラキス(ノナフルオロブチル)アンモニウムカチオンは除かれる。
【0024】
ウロニウムカチオンは、例えば、式(5)で、
[C(NR)(OR)(NR)] (5)
また、チオウロニウムカチオンは式(6)で、表すことができ、
[C(NR)(SR)(NR)] (6)
式中、
〜Rは、それぞれ、互いに独立して、
H、ここで、HはRについては除外され、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル,
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
を示し、
【0025】
ここで、置換基R〜Rの1個または2個以上は、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで、または部分的に−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、ここで、R〜Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される、原子および/または原子団に置き換えられてもよく、ここで、R’=H、非−、部分的またはパーフルオロ化C−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0026】
グアニジニウムカチオンは、式(7)で表すことができ
[C(NR)(NR1011)(NR1213)] (7)
式中、
〜R13はそれぞれ、互いに独立して、
H、−CN、NR’、−OR’、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル,
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
を示し、
【0027】
ここで、置換基R〜R13の1個または2個以上は、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで、または部分的に−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、ここで、R〜R13における、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される、原子および/または原子団に置き換えられてもよく、ここで、R’=H、非−、部分的またはパーフルオロ化C−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0028】
複素環カチオンは、例えば、式(8)で表すことができ、
[HetN]z+ (8)
式中、
HetNz+は、
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
の群から選択される複素環カチオンを示し、
式中、置換基
’〜R’はそれぞれ、互いに独立して、
H、
F、Cl、Br、I、−CN、−OR’、−NR’、−P(O)R’、−P(O)(OR’)、−P(O)(NR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)X、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’および/またはNO
【0032】
ただし、R’、R’、R’は、
Hおよび/または
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
任意にフッ素化または全フッ素置換された、1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
任意にフッ素化または全フッ素置換された、2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
任意にフッ素化または全フッ素置換された、2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキル、
飽和、部分的または完全に不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C〜C−アルキルまたはアリール−C〜C−アルキル、
を示し、
【0033】
ここで、置換基R1’、R2’、R3’および/またはR4’は、一緒になって、環系を形成してもよく、
ここで、1個または2個以上の置換基R1’〜R4’は、部分的にまたは完全に、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Cl、または−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NO,で置換されてもよく、しかしここで、R’およびR’は、同時に完全にハロゲンで置換されることができず、ここで、R’〜R’の置換基において、ヘテロ原子に結合していない、1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられてもよく、ここで、R’=H、非−、部分的または全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである。
【0034】
本発明の目的のために、完全に不飽和の置換基も、芳香族置換基を意味すると解される。
本発明にしたがって、式(3)〜(7)の化合物の適切な置換基RおよびR〜R13は、H以外には、好ましくは:C−〜C20−、特にC−〜C14−アルキル基、およびC−〜C−アルキル基で置換されてもよい、飽和または不飽和、すなわち芳香族でもある、C−〜C−シクロアルキル基、特にフェニルである。
【0035】
式(3)または(4)の化合物における、置換基RおよびRは、同一であっても、異なっていてもよい。置換基RおよびRは、好ましくは異なる。
置換基RおよびRは、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルまたはテトラデシルである。
【0036】
グアニジニウムカチオン[C(NR)(NR1011)(NR1213)]の4個までの置換基は、単−、二−または多環式のカチオンを形成するような方法で、ペアになって結合してもよい。
一般性を限定することなく、かかるグアニジニウムカチオンの例:
【0037】
【化3】

【0038】
ここで、置換基R〜R10およびR13は、上述の意味または特に好ましい意味を有することができる。
所望の場合には、炭素環または上述のグアニジニウムカチオンのヘテロ環もまた、C−〜C−アルキル、C−〜C−アルケニル、−CN、−NO、F、Cl、Br、I、−OH、−C−C−アルコキシ、−NR’、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−COOH、−SONR’、−SOX’または−SOH、ここでXおよびR’は上述の意味を有し、置換もしくは非置換フェニル、または非置換もしくは置換ヘテロ環で置換されてもよい。
【0039】
ウロニウムカチオン[C(NR)(OR)(NR)]またはチオウロニウムカチオン[C(NR)(SR)(NR)]の4個までの置換基は、単−、二−または多環式のカチオンを形成するような方法で、ペアになって結合してもよい。
一般性を限定することなく、カチオンの例を以下に示し、ここでY=OまたはSである:
【0040】
【化4】

【0041】
ここで、置換基R、RおよびRは、上述の意味または特に好ましい意味を有することができる。
所望の場合には、炭素環または上述のカチオンのヘテロ環もまた、C−〜C−アルキル、C−〜C−アルケニル、−CN、−NO、F、Cl、Br、I、−OH、−C−C−アルコキシ、−NR’、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−COOH、SONR’、SOXまたはSOH、または置換もしくは非置換フェニル、または非置換もしくは置換ヘテロ環で置換されてもよく、ここで、XおよびR’は上述の意味を有する。
【0042】
置換基R〜R13はそれぞれ、互いに独立して、好ましくは、1〜16個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。式(5)〜(7)の化合物における、置換基RおよびR、RおよびR、RおよびR、R10およびR11ならびにR12およびR13は、同一または異なっていてもよい。R〜R13は特に好ましくはそれぞれ、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フェニル、ヘキシルまたはシクロヘキシルであり、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソプロピル、n−ブチルまたはヘキシルである。
【0043】
本発明にしたがって、式(8)の化合物の適切な置換基R1’〜R4’は、それぞれ互いに独立して、好ましくは、
H、R1’およびR4’が同時にHではないことを前提として、
1〜20個のC原子を有し、任意に、フッ素化または全フッ素置換された、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有し、任意に、フッ素化または全フッ素置換された、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有し、任意に、フッ素化または全フッ素置換された、直鎖または分岐アルキニル、または
2〜8個のC原子を有する、直鎖または分岐アルコキシアルキル
である。
【0044】
本発明にしたがって、式(8)の化合物の適切な置換基R1’〜R4’は、R1’およびR4’が同時にHではないことを前提としてH以外には、特に好ましくは:C−〜C20−、特にC−〜C12−アルキル基、およびC−〜C−アルキル基で置換されてもよい、飽和または不飽和、すなわち芳香族でもある、C−〜C−シクロアルキル基、特にフェニルである。
【0045】
置換基R1’およびR4’はそれぞれ、互いに独立して、特に好ましくは、メチル、エチル、アリル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。これらは、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、n−ブチルまたはヘキシルである。ピロリジニウム、ピペリジニウムまたはインドリニウム化合物において、二つの置換基R1’およびR4’は、好ましくは異なる。
【0046】
置換基R2’またはR3’は、いずれの場合にも、互いに独立して、特に、H、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。R2’は特に好ましくは、H、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチルまたはsec−ブチルである。R2’およびR3’は、非常に特に好ましくはHである。
【0047】
−〜C12−アルキル基は、例えば、任意にフッ素化または全フッ素置換された、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらには、ペンチル、1−,2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、またはドデシルでもある。用語「全フッ素置換された」は、与えられたアルキル基において、全てのH原子が、F原子で置換されていることを意味する。用語「フッ素化された」は、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルなどのように、与えられたアルキル基の少なくとも1つのH原子がF原子で置換されていることを意味する。
【0048】
複数の二重結合が存在し得る、2〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルケニルは、例えば、任意にフッ素化または全フッ素置換された、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらには、4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039、好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、更に好ましくは、4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。用語「全フッ素置換された」は、与えられたアルキル基において、全てのH原子がF原子で置換されていることを意味する。用語「フッ素化された」は、与えられたアルキル基の少なくとも1つのH原子がF原子で置換されていることを意味する。
【0049】
複数の三重結合が存在し得る、2〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキニルは、例えば、任意にフッ素化または全フッ素置換された、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、さらには4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15、−C1017〜−C2037、好ましくはエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。用語「全フッ素置換された」は、与えられたアルキル基において、全てのH原子がF原子で置換されていることを意味する。用語「フッ素化された」は、与えられたアルキル基の少なくとも1つのH原子がF原子で置換されていることを意味する。
【0050】
2〜12個のC原子を有する直鎖または分岐アルコキシアルキルは、例えば、メトキシメチル、1−メトキシエチル、1−メトキシプロピル、1−メトキシ−2−メチル−エチル、2−メトキシ−プロピル、2−メトキシ−2−メチル−プロピル、1−メトキシブチル、1−メトキシ−2,2−ジメチル−エチル、1−メトキシ−ペンチル、1−メトキシヘキシル、1−メトキシ−ヘプチル、エトキシメチル、1−エトキシエチル、1−エトキシプロピル、1−エトキシ−2−メチル−エチル、1−エトキシブチル、1−エトキシ−2,2−ジメチル−エチル、1−エトキシペンチル、1−エトキシヘキシル、1−エトキシヘプチル、プロポキシメチル、1−プロポキシエチル、1−プロポキシプロピル、1−プロポキシ−2−メチル−エチル、1−プロポキシブチル、1−プロポキシ−2,2−ジメチル−エチル、1−プロポキシペンチル、ブトキシメチル、1−ブトキシエチル、1−ブトキシプロピルまたは1−ブトキシブチルである。特に好ましいのは、メトキシメチル、1−メトキシエチル、2−メトキシ−プロピル、1−メトキシプロピル、2−メトキシ−2−メチル−プロピルまたは1−メトキシブチルである。
【0051】
アリール−C〜C−アルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここで、両方のフェニル環およびアルキレン鎖も、上述のように、ハロゲンで、特に−Fおよび/または−Cl、または特に−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで、部分的にまたは完全に置換されてもよい。
【0052】
3〜7個のC原子を有する、非置換飽和または部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル基は、したがって、C−〜C−アルキル基でそれぞれ置換されてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニルであり、ここで、シクロアルキル基またはC−〜C−アルキル基で置換されたシクロアルキル基は、今度は、F、Cl、BrまたはI、特にFまたはClなどのハロゲン原子で、または−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOでも置換されてもよい。
【0053】
置換基R、R〜R13またはR1’〜R4’において、ヘテロ原子のα−位に結合していない、1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−、式中R’=非−、部分的または全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニル、の群から選択される原子および/または原子団で置換されてもよい。
【0054】
一般性を限定することなく、このように修飾された置換基R、R〜R13およびR1’〜R4’の例は:
−OCH、−OCH(CH、−CHOCH、−CH−CH−O−CH、−COCH(CH、−CSC、−CSCH(CH、−S(O)CH、−SOCH、−SO、−SO、−SOCH(CH、−SOCHCF、−CHSOCH、−O−C−O−C、−CF、−C、−C、−C、−C(CF、−CFSOCF、−CN(C)C、−CHF、−CHCF、−C、−CFH、−CH、−C(CFH、−CHC(O)OH、−CH、−C(O)Cまたは−P(O)(Cである。
【0055】
R’において、C−〜C−シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
R’において、置換されたフェニルは、C−〜C−アルキル、C−〜C−アルケニル、−CN、−NO、F、Cl、Br、I、−OH、−C−〜C−アルコキシ、NR’’、−COOH、−SOX’、−SR’’、−S(O)R’’、−SOR’’、SONR’’またはSOHで置換されたフェニルを示し、式中、X’は、F、ClまたはBrを示し、およびR’’は、R’のために定義されたように、非−、部分的または全フッ素置換されたC−〜C−アルキルまたはC−〜C−シクロアルキルを示し、
【0056】
例えば、o−、m−またはp−メチルフェニル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−ヨードフェニル、更に好ましくは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルである。
【0057】
1’〜R4’において、ヘテロアリールは、1、2または3個のNおよび/または1個または2個のSまたはO原子が存在し得る、5〜13員環を有する、飽和または不飽和の単−または二環複素環ラジカルを意味すると解され、ここで複素環ラジカルは、C−〜C−アルキル、C−〜C−アルケニル、−CN、−NO、F、Cl、Br、I、−OH、−NR’’、−C〜C−アルコキシ、−COOH、−SOX’、−SONR’’、−SR’’、−S(O)R’’、−SOR’’またはSOH、式中X’およびR’’は上述の意味を有する、で単−または多置換されてもよい。
【0058】
複素環ラジカルは、好ましくは置換または非置換2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−、4−または5−イミダゾイル、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソオキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3−チアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、2−、3−、4−、5−または6−2H−チオピラニル、2−、3−または4−4H−チオピラニル、3−または4−ピリダジニル、
【0059】
ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−1H−インドリル、1−、2−、4−または5−ベンゾイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンザ−2,1,3−オキサジアゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリニル、1−、2−、3−、4−または9−カルバゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−アクリジニル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニルまたは1−、2−または3−ピロリジニルである。
【0060】
ヘテロアリール−C〜C−アルキルは、アリール−C〜C−アルキルに類似であり、例えばピリジニルメチル、ピリジニルエチル、ピリジニルプロピル、ピリジニルブチル、ピリジニルペンチル、ピリジニルヘキシルを意味すると解し、ここで上述の複素環は、このようにアルキレン鎖にさらに結合してもよい。
【0061】
HetNz+は好ましくは、
【化5】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して、上述の意味を有する。
【0062】
HetNz+は特に好ましくは、
【化6】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して、上述の意味を有する。
【0063】
HetNz+は非常に特に好ましくは、
【化7】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して、上述の意味を有する。
【0064】
好ましい1,1−ジアルキルピロリジニウムカチオンは、例えば、1,1−ジメチルピロリジニウム、1−メチル−1−エチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メチル−1−ブチルピロリジニウム、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウム、1−メチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−メチル−1−オクチルピロリジニウム、1−メチル−1−ノニルピロリジニウム、1−メチル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1−エチル−1−プロピルピロリジニウム、1−エチル−1−ブチルピロリジニウム、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウム、1−エチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−エチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−エチル−1−オクチルピロリジニウム、1−エチル−1−ノニルピロリジニウム、1−エチル−1−デシルピロリジニウム、
【0065】
1,1−ジプロピルピロリジニウム、1−プロピル−1−メチルピロリジニウム、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウム、1−プロピル−1−ペンチルピロリジニウム、1−プロピル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−プロピル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−プロピル−1−オクチルピロリジニウム、1−プロピル−1−ノニルピロリジニウム、1−プロピル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジブチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−ペンチルピロリジニウム、1−ブチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−ブチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−ブチル−1−オクチルピロリジニウム、1−ブチル−1−ノニルピロリジニウム、1−ブチル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジペンチルピロリジニウム、1−ペンチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−ペンチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−ペンチル−1−オクチルピロリジニウム、1−ペンチル−1−ノニルピロリジニウム、1−ペンチル−1−デシルピロリジニウム、
【0066】
1,1−ジヘキシルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−オクチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−ノニルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジヘキシルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−オクチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−ノニルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジヘプチルピロリジニウム、1−ヘプチル−1−オクチルピロリジニウム、1−ヘプチル−1−ノニルピロリジニウム、1−ヘプチル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジオクチルピロリジニウム、1−オクチル−1−ノニルピロリジニウム、1−オクチル−1−デシルピロリジニウム、1,1−ジノニルピロリジニウム、1−ノニル−1−デシルピロリジニウムまたは1,1−ジデシルピロリジニウムである。非常に特に好ましいのは、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムまたは1−プロピル−1−メチルピロリジニウムである。
【0067】
好ましい1−アルキル−1−アルコキシアルキルピロリジニウムカチオンは、例えば、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−エチルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−プロピルピロリジニウム、1−(2−メトキシエチル)−1−ブチルピロリジニウム、1−(2−エトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−エトキシメチル−1−メチルピロリジニウムである。非常に特に好ましいのは、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムである。
【0068】
好ましい1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオンは、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ペンチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−プロピルイミダゾリウム、
【0069】
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,3−ジプロピルイミダゾリウム、1,3−ジブチルイミダゾリウム、1,3−ジペンチルイミダゾリウム、1,3−ジヘキシルイミダゾリウム、1,3−ジヘプチルイミダゾリウム、1,3−ジオクチルイミダゾリウム、1,3−ジノニルイミダゾリウム、1,3−ジデシルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ノニルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−エチル−3−ヘプチルイミダゾリウム、1−エチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ノニルイミダゾリウムまたは1−デシル−3−エチルイミダゾリウムである。特に好ましいカチオンは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムまたは1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムである。
【0070】
好ましい1−アルコキシアルキル−3−アルキルイミダゾリウムカチオンは、例えば、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−メトキシエチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(2−メトキシエチル)−3−プロピルイミダゾリウム、1−(2−メトキシエチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(2−エトキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−エトキシメチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0071】
好ましい1−アルケニル−3−アルキルイミダゾリウムカチオンは、例えば、1−アリル−3−メチル−イミダゾリウムまたは1−アリル−2,3−ジメチルイミダゾリウムである。
好ましい1−アルキル−ピリジニウムカチオンは、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−n−プロピルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−n−ブチルピリジニウム、1−n−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−n−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−n−ブチル−3−エチルピリジニウム、1−n−ペンチルピリジニウム、1−n−ヘキシルピリジニウム、1−n−ヘプチルピリジニウム、1−n−オクチルピリジニウム、1−n−ノニルピリジニウム、1−n−デシルピリジニウム、1−n−ウンデシル−ピリジニウムまたは1−n−ドデシルピリジニウムである。
【0072】
カチオン[Kt]z+は、さらに、無機でもあり得、特に金属カチオンまたはNOである。金属カチオンは、周期表の1〜12族からの金属を含む。
好ましい金属カチオンは、Li、Na、K、Rb、Cs、Ag、Mg2+、Cu、Cu2+、Zn2+,Ca2+、Y+3、Yb+3、La+3、Sc+3、Ce+3、Ce+4、Nd+3、Tb+3、Sm+3などのアルカリ金属カチオン、またはロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、オスミウム、コバルト、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウランもしくは金のような希土類、遷移もしくは貴金属を含む、錯(リガンド含有)金属カチオンである。アルカリ金属は好ましくはリチウムまたはカリウムである。
【0073】
[Kt]z+がLiである式Iの化合物は、好ましくは、一次バッテリ、二次バッテリ、コンデンサ、超コンデンサまたは電気化学電池における伝導性塩として、任意にさらなる伝導性塩および/または添加物との組み合わせにおいて、ポリマー電解質または相間移動媒体の構成要素として、用いることができる。
【0074】
[Kt]z+がKである式Iの化合物は、好ましくは、[Kt]z+が有機カチオンまたはカリウム以外の他の金属カチオンである、式Iの化合物のための出発材料として用いることができる。
本発明にしたがった化合物の有機カチオンは、好ましくは式(1)、(3)および(4)のスルホニウム、アンモニウム、ホスホニウムカチオン、または式(8)の複素環カチオンである。
【0075】
本発明にしたがった化合物の有機カチオンは、特に好ましくは、上述のように、HetNz+がイミダゾリウム、ピロリジニウムまたはピリジニウムである式(8)の複素環カチオンであり、ここで、置換基R1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して上述の意味を有する。式(1)の化合物の有機カチオンは、非常に特に好ましくはイミダゾリウムであり、ここで、置換基R1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して、上述の意味を有し、または1,1−ジアルキルピロリジニウム、1−アルキル−1−アルコキシアルキルアルキルピロリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウム、1−アルケニル−3−アルキルイミダゾリウムまたは1−アルコキシアルキル−3−アルキルイミダゾリウムの特に好ましい意味の1つを有する。
【0076】
式Iの特に適切な有機カチオンは、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、トリブチル−メチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリブチル−メチルホスホニウム、テトラ−フェニルホスホニウム、ジエチル−メチルスルホニウム、S−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルイソチオウロニウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピニルイミダゾリウム、1,1−ジメチルピロリジニウムまたはトリメチルスルホニウムである。
【0077】
当業者に言うまでもないが、本発明にしたがった化合物における、例えば、C、H、N、O、Cl、Fなどの置換基は、対応するアイソトープで置き換えられてもよい。
【0078】
式I−1
[Me][B(R)(CN)(OR3−x I−1
式中、
Meは、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属カチオン、好ましくはKであり、
、xおよびRは上述の意味を有する、
の化合物を示す、[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、yが0である式Iの化合物は、
【0079】
例えば、式II
[Me][B(R)(OR II
式中、
[Me]は、上述の意味を有し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、
の化合物の
アルキル基が独立して、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドとの反応により調製することができる。
【0080】
上述のような、式IIの化合物と、トリアルキルシリルシアニドとのかかる反応は、文献に記載されていない。テトラフルオロボレートM[BF(M=Li、K)のトリメチルシリルシアニド、(CHSiCNとの反応は、E. Bernhard at al. [Z. fuer Anorg. und Allg. Chem., 629, (2003), p. 677-685]によって研究されてきた。この反応は、数時間から数週間の時間で非常にゆっくりと進み、ジシアノジフルオロ−[BF(CN)およびトリシアノフルオロボレート[BF(CN)の混合物をもたらすことが報告されている。この方法でモノシアノトリフルオロボレート[BF(CN)]を合成し、単離する全ての試みは失敗していた。
【0081】
驚くべきことに、テトラフルオロボレートM[BF、での反応とは反対に、[RB(OCHの(CHSiCNでの反応は、かなり早く、式Iのモノシアノ−およびジシアノ−アルコキシボレートの形成を主生成物としてもたらす。予想外に、トリメチルシリルシアニドは、選択的にホウ素に結合したアルコキシ基を置き換え、Rの炭素鎖におけるフッ素原子を攻撃しない。
【0082】
本発明は、したがって、式I−1
[Me][B(R)(CN)(OR3−x I−1
式中、Meはアルカリ金属カチオンであり、R、xおよびRは上述の意味を有する、
の化合物を示す、[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、y=0である式Iの化合物の製造方法であって、
【0083】
式II
[Me][B(R)(OR II
式中、[Me]は、上述の意味を有し、Rは、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、Rは、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基を示す、
の化合物と、
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドとの反応を含む前記方法にも関する。
【0084】
この方法は、空気中、好ましくは乾燥雰囲気、例えば、乾燥した空気、窒素またはアルゴン下で、行うことができる。
式IIの化合物は、ある場合には、商業的に入手可能であり、または既知の方法によって合成することができる。式IIの化合物の製造のための、既知の方法は、例えば、A. A. Kolomeitsev, A. A. Kadyrov, J. Szczepkowska-Sztolcman, M. Milewska, H. Koroniak, G. Bissky, J.A. Barten, G.-V. Roeschenthaler, Tetrahedron Letters, 44 (2003), p.8273-8277.; N.Yu. Adonin, V.V. Bardin, H.-J. Frohn, Z. Anorg. Allg. Chem., 633 (2007), p. 647-652.; JP 2008027766 Aに記載されている。
【0085】
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドは、ある場合には、商業的に入手可能であり、または既知の方法によって合成することができる。例えば、アルカリ金属ヨウ化物および任意で元素状ヨードの存在下で、アルカリ金属シアン化物のトリアルキルシリル塩化物との反応によって、トリアルキルシリルシアニドを生成することが可能である(M.T. Reetz, I. Chatziiosifidis, Synthesis, 1982, p. 330; J.K. Rasmussen, S. M. Heilmann and L.R. Krepski, The Chemistry of Cyanotrimethylsilane in G.L. Larson (Ed.)“Advances in Silicon Chemistry“, Vol. 1, p. 65-187, JAI Press Inc., 1991; WO 2008/102661 A1)。
【0086】
ナトリウムシアン化物およびナトリウムヨウ化物またはカリウムシアン化物またはカリウムヨウ化物の使用が特に好ましい。好ましくは、1mol/lのアルカリシアン化物およびトリアルキルシリル塩化物に対して、0.1mol/lでアルカリ金属ヨウ化物は使用される。反応は、乾燥雰囲気、例えば乾燥した空気、窒素またはアルゴン下で行われる。
【0087】
トリアルキルシリルシアニドのアルキル基は、同一であっても、異なっていてもよい。好ましくは、これらは同一である。トリアルキルシリルシアニドの例は、トリメチルシリルシアニド、トリエチルシリルシアニド、ジメチルエチルシリルシアニド、トリイソプロピルシリルシアニド、トリプロピルシリルシアニドまたはトリブチルシリルシアニドなどである。特に好ましいのは、トリメチルシリルシアニドの使用である。
【0088】
[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、y=0である式Iの化合物であって、上述の式I−1の化合物を示す化合物の製造方法は、有機溶媒中、または、1つの出発材料が、反応温度において液体である場合は、有機溶媒が存在しない状態で、10℃〜200℃の間の温度で行う。
【0089】
有益な有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフランである。
本発明の一態様において、化学量論量の式IIの化合物とトリアルキルシリルシアニドを使用する場合には、主生成物として、xが1である式I−1の化合物を得るために、上述の溶媒における反応を、10℃〜70℃の温度において行うことが好ましい。好ましい温度は、室温(25℃)である。好ましい溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0090】
本発明の他の態様において、1等量より多いトリアルキルシリルシアニドを使用した場合、主生成物として、xが2である式I−1の化合物を得るために、反応を、10℃〜200℃の温度において、有機溶媒が存在しないか、または有機溶媒の存在下で、行うことが好ましい。好ましい温度は60℃〜100℃であり、特に好ましくは70℃である。詳細には、例を参照する。有機溶媒が存在しない状態で、反応を行うことが好ましい。
【0091】
以下の一般スキームは、Meがカリウムである式I−1の化合物に関する問題を対処する:
【化8】

【0092】
x=2である式I−1の化合物を、例えば、10℃〜30℃の温度において、好ましくは室温においてであるが、反応時間が、約数日、例えば、例4に記載されるように、数時間の代わりに、3日間の、式IIの化合物のトリアルキルシリルシアニドとの反応により、代替え的に合成することができる。
【0093】
x=2である式I−1の化合物は、さらに、
式IV
[Me][B(R)F IV
式中、
[Me]は上述の意味を有し、
は1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基またはC、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルである、
の化合物を
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニド、およびアルコキシが、式I−1の化合物のROと同一の意味を有するアルコキシトリメチルシランとの反応によって、代替え的に合成することができる。
【0094】
式IVの化合物は、ある場合には、商業的に入手可能であり、または既知の方法によって合成することができる。式IVの化合物を合成するための既知の方法は、例えば、US 7,208,626 B2; WO 2003/087020 (A1)およびWO 2003/087113 (A1)において、またはR.D. Chambers et al., J. Am. Chem. Soc. 82 (1960), p. 5296-5301; H.-J- Frohn and V.V. Bardin, Z. fuer Anorg.und Allg.Chemie, 627 (2001), S. 15-16; G.A. Molander and G.P. Hoag, Organometallics, 22 (2003), p. 3313-3315またはZhi-Bin Zhou et al., J. of Fluorine Chem., 123 (2003), p. 127-131において記載されている。
【0095】
上述の、式IVの化合物と、x=2であるトリアルキルシリルシアニドとの反応を介する式I−1の化合物の製造方法は、有機溶媒中で、または反応温度において1つの出発材料が液体である場合には有機溶媒が存在しない状態で、10℃〜100℃、好ましくは10℃〜30°の温度において、特に好ましくは室温において、保護ガス雰囲気において行い得る。この方法は、有機溶媒が存在しない状態で行うことが好ましい。
【0096】
有益な有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフランである。
本発明は、さらに、式I−2
[Me][B(R)(CN)(OR)F] I−2
式中、
Meは、アルカリ金属カチオンであり、
およびRは、上述の意味を有する、
の化合物を示す、[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、y=1であり、x=1である式Iの化合物を製造する方法であって、
【0097】
式III
[Me][B(R)(OR)F III
式中、
[Me]は、上述の意味を有し、
は1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、
の化合物の、
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドとの反応を含む、
前記方法にも関する。
【0098】
また、この方法は、好ましくは乾燥雰囲気、例えば、乾燥空気、窒素またはアルゴン下において行うべきである。
式IIIの化合物は、N.Yu. Adonin, H.-J. Frohn, V.V. Bardin, Organometallics, 26 (2007), p. 2420-2425; G.A. Molander, B.P. Hoag, Organometallics, 22 (2003), p. 3313-3315に基づいた方法で合成し得る。
【0099】
[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、およびy=1であり、およびx=1であり、上述の式I−2の化合物を示す、式Iの化合物の製造方法は、有機溶媒において、1つの出発材料が液体である場合には有機溶媒が存在しない状態で、10℃〜200℃の温度において、行い得る。
【0100】
式I−1またはI−2の化合物のための、上述の両方の方法において、式IIまたはIIIの化合物の添加の前に、in situでトリアルキルシリルシアニドを生成することが、可能であり、時には好ましい。このin situ生成は、上述の反応条件下にて行い得る。
カチオンが有機カチオンであり、またはアルカリ金属カチオン以外の無機カチオンである、式Iの化合物の製造方法は、周知のように、カチオンが交換される、メタセシス反応(塩−交換反応)である。
【0101】
本発明は、したがって、[Kt]z+が、アルカリ金属カチオン以外のカチオンである、上述の塩−交換反応における、式Iの化合物の製造方法であって、
式I−1
[Me][B(R)(CN)(OR3−x I−1
または式I−2
[Me][B(R)(CN)(OR)(F)] I−2
式中、
Meは、アルカリ金属カチオン、またはHであり、R、x、およびRは上述の意味を有する、
のアルカリ金属塩を、
【0102】
式V
KtA V
式中、
Ktは、有機カチオンまたは式I−1または式I−2の化合物のアルカリ金属カチオン以外の金属カチオンの意味を有し、
【0103】
Aは、F-、Cl-、Br-、I-、OH、[HF-、[CN]-、[SCN]-、[RCOO]-、[RSO-、[RCOO]-、[RSO-、[ROSO-、[SiF2-、[BF-、[SO2-、[HSO1-、[NO-、[(RP(O)O]、[RP(O)O2−、トシル酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、アスコルビン酸塩、ソルビン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、を示し、マロン酸は任意に1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基で置換され、または[CO2-であり、
ここで、
はそれぞれ、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル基であり、
はそれぞれ、互いに独立して、1〜12個のC原子を有する、フッ素化または全フッ素置換された直鎖または分岐アルキル基、またはペンタフルオロフェニルであり、ここで、塩KtAの式において、電気的中性を考慮すべきである、
の化合物と反応させることを特徴とする、前記方法にも関する。
【0104】
は特に好ましくは、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたはノナフルオロブチル、非常に特に好ましくは、トリフルオロメチルまたはペンタフルオロエチルである。
は特に好ましくは、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシルまたはn−オクチル、非常に特に好ましくは、メチルまたはエチルである。
置換されたマロン酸塩は、例えば、マロン酸メチル、またはマロン酸エチルである。
【0105】
式Vの化合物は、ほとんどの場合、商業的に入手でき、または既知の方法によって合成することができる。式Vの化合物の既知の製造方法は、例えば、P. Wasserscheid, T. Welton (Eds.), Ionic Liquids in Synthesis, Second Edition, WILEY-VCH, Weinheim, 2008において記載されている。
【0106】
式Vにおけるアニオンは、好ましくは、F、Cl、Br、I、[HF、[CN]、[SCN]、[CHCOO]、[CHSO、[CFCOO]、[CFSO、[CHOSO、[SiF2−、[BF、[SO2−、[NO、[COSO、[(CP(O)O]、[CP(O)O2−、トシル酸塩、マロン酸塩または[CO2−であり、特に好ましくは、OH、Cl、Br、I、[CHSO、[CHOSO、[CFCOO]、[CFSO、[(CP(O)O]-または[CO2-であり、非常に特に好ましくは、OH、Cl、Br、[CHOSO、[CFSO、[CHSOまたは[(CP(O)O]である。
【0107】
[Kt]z+が有機カチオンである式I化合物の製造のために、適切な有機塩は、式(1)〜(8)のカチオン塩、または上述のAとして定義された、アニオンを伴うこれらの好ましい態様、または式(1)〜(8)のカチオンの塩を意味するその好ましい態様、およびOH、Cl、Br、[CHOSO、[CFSO、[CHSOまたは[(CP(O)O]である。
【0108】
[Kt]z+が、例えば、銀、マグネシウム、銅、亜鉛およびカルシウムの群から選択される、金属カチオンである、式Iの化合物の製造のために、適切な無機塩は、例えば、AgO、AgCO、MgCO、CuO、ZnO、Zn[HCO、CaCOまたはCa(COCHである。カリウム以外のアルカリ金属塩へのメタセシス反応のために有益な塩は、例えば、LiBFであり、[Kt]z+=Hである式Iの化合物との反応のために有益なのは、NaCO、NaOH、LiCO、LiOH、Li(COCH)、RbCO、RbOH、CsCOまたはCsOHである。
【0109】
当該反応は、有利には、水中で行い、ここで10〜100℃、好ましくは25〜60℃、特に好ましくは室温の温度が適切である。
しかしながら、当該反応は、代替的に10〜100℃の温度にて、有機溶媒中で行うこともできる。ここで、適切な溶媒は、アセトニトリル、ジオキサン、ジクロロメタン、ジメトキシエタン、またはアルコール、例えば、メタノールまたはエタノールである。
【0110】
この塩交換反応の特定の態様において、式I−1またはI−2の化合物を、これらの合成の直後に、精製した単離を行うことなく、粗材料として用いることができる。反応生成物である、トリアルキルシリルフッ化物およびアルコキシトリアルキルシランなどの揮発性副生物、または過剰のトリアルキルシリルシアニドを分離すること、および塩交換反応のための粗材料を用いることが好ましい。
【0111】
本発明は、詳細に上述したようにイオン液体である、有機カチオンを有する式Iの化合物を、溶媒または溶媒添加物として、相間移動触媒として、抽出剤として、伝熱媒体として、界面活性物質として、可塑剤として、難燃剤として、伝導性塩として、または電気化学電池における添加物として、の使用にさらに関する。
【0112】
かかる式Iのイオン液体を溶媒として用いる場合、当業者に既知のあらゆる種類の反応において、これらは適切であり、例えば、ヒドロホルミル化反応、オリゴマー化反応、エステル化または異性化などの、遷移金属−または酵素−触媒反応、ここで、かかるリストは包括的ではない。
【0113】
抽出剤としての使用において、式Iのイオン液体は、イオン液体におけるそれぞれの反応性成分の溶解度に依存して、反応生成物を分離するために用いることができ、不純物を分離するためにも用いることができる。さらに、イオン液体は、複数の構成成分の分離において、例えば、混合物の複数の構成成分の蒸留分離媒体として機能し得る。
【0114】
更なる可能な用途は、ポリマー材料における可塑剤として、多くの材料または用途のための難燃剤として、および様々な電気化学電池および用途、例えば、ガルバーニ電池において、コンデンサにおいて、または燃料電池においての、伝導性塩または添加物としての使用である。
【0115】
この発明にしたがった、式Iのイオン液体の用途の更なる分野は、特にバイオポリマーおよびその誘導体または分解生成物における、炭化水素含有固体のための溶媒である。さらに、これらの新規化合物は、コンプレッサー、ポンプ、水力デバイスなどの機械のための、潤滑剤、作動流体として提供することができる。さらなる用途の分野は、粒子またはナノ材料合成の分野であり、ここで、これらのイオン液体は、媒体または添加物として作用する。
【0116】
有機カチオンを有する式Iの化合物、例えば、この発明にしたがったイオン液体は、好ましくは、電気化学および/または光電子工学デバイス、特に電解質配合物において、用いられ得る。
本発明は、したがって、上述の、または好ましいと記載された、式Iの化合物を少なくとも1つ含む電解質配合物にも関する。
【0117】
[Kt]z+がLiまたは有機カチオンである、式Iの化合物の電解質配合物は、好ましくは、一次バッテリ、二次バッテリ、コンデンサ、超コンデンサまたは電気化学電池において、任意に、さらなる伝導性塩および/または添加物との組み合わせにおいて、ポリマー電解質または相間移動媒体の構成要素として、用いることができる。好ましいバッテリは、リチウムバッテリまたはリチウムイオンバッテリである。好ましいコンデンサはリチウムイオンコンデンサである。
【0118】
式Iの化合物の電解質配合物は、光電池、発光デバイス、エレクトロクロミックまたは光−エレクトロクロミックデバイス、電気化学センサおよび/またはバイオセンサなどの、電気化学および/または光電子工学デバイスにおいて、特に好ましくは、色素増感太陽電池において、用いることができる。
かかる電解質配合物は、開示されたデバイスの欠かせない一部分を形成し、デバイスの性能は、これらの電解質の様々な構成成分の物理的および化学的特性に大きく依存する。
【0119】
本発明にしたがった、電解質配合物は、既に知られている電解質配合物の代替物である。これらは、特に、色素増感太陽電池の電解質配合物の分野において、増強した電力変換効率を、特に低温下で、示す。例えばパーフルオロアルキルシアノメトキシフルオロボレートの使用の有利な点は、低い粘度およびそれに続く、特に低温での、酸化剤種のより小さいネルンスト拡散抵抗である。
WO 2007/093961およびWO 2009/083901は、テトラシアノボレート(TCB)アニオンを有する、有機塩の有意量を含むイオン液体ベースの電解質において、今までのところ、最も優れた電力変換効率を記載する。
【0120】
化学において、電解質は、その物質を導電性にする自由イオンを含む、あらゆる物質である。最も典型的な電解質は、イオン溶液であるが、溶融電解質および固形電解質も可能である。
本発明にしたがった電解質配合物は、したがって、基本的に、溶解した、および/または溶融した状態において存在する、すなわち、イオン種の動きを介して、導電性を補助する、少なくとも1つの物質の存在に起因する、導電性媒体である。
【0121】
電解質配合物における、上述の式Iの発明のアニオンの典型的なモル濃度は、0.1〜3M、好ましくは0.8〜3Mの範囲である。電解質における、このモル濃度は、[Kt]z+が無機または有機カチオンである式(I)の1または2以上の化合物によって達成され得る。
好ましくは、当該モル濃度は、上述の、または好ましいと記載された、[Kt]z+が有機カチオンである式Iの少なくとも1つの化合物で達成される。
本発明の目的のために、モル濃度は、25℃における濃度を示す。
【0122】
好ましくは、本発明にしたがった電解質配合物は、上述の、または好ましいと上述した、式(1)、(3)、(4)、(6)または(8)のカチオンから選択されるカチオンである、式Iの化合物を少なくとも1つ含む。
特に好ましくは、本発明にしたがった電解質配合物は、上述の、または特に好ましいと記載した、[Kt]z+が式(1)または(8)のカチオンから選択されるカチオンである、式Iの化合物を少なくとも1つ含む。
【0123】
非常に特に好ましくは、本発明にしたがった電解質配合物は、上述の、または特に好ましいと記載した、[Kt]z+が式(1)のカチオンから選択されるカチオンである、式Iの化合物を少なくとも1つ含む。
非常に特に好ましくは、本発明にしたがった電解質配合物は、上述の、または特に好ましいと記載した、[Kt]z+が式(8)のカチオンから選択されるカチオンである、式Iの化合物を少なくとも1つ含む。
電解質配合物の他の構成成分は、さらに以下に示すように、1または数種類のさらなる塩、溶媒、ヨードなどである。
【0124】
電解質配合物が二成分系である場合、2つの塩、すなわち、1つの更なる塩、および、上述の式(I)の化合物、を含む。電解質配合物が三成分系である場合、更なる2つの塩および上述の式(I)の化合物を含む。二成分系は、90〜20重量%、好ましくは80〜55重量%、更に好ましくは、70〜60重量%の更なる塩および10〜80重量%、好ましくは20〜45重量%またはさらに好ましくは30〜40重量%の上述の式(I)の化合物を含む。この段落におけるパーセンテージは、本発明にしたがった電解質配合物に存在する塩の合計(=100重量%)に対して表現される。さらなる、以下に示す、一般的な任意構成成分(添加物)、例えば、非共有電子対を有するN−含有化合物、ヨード、溶媒、ポリマーおよびナノ粒子などの量は、ここで考慮しない。同じパーセンテージが、三成分系または四成分系にも適用され、さらなる塩の合計が、与えられた範囲において使用される必要があることを意味し、例えば、さらなる2つのイオン液体は、90〜20重量%で本発明にしたがった電解質配合物に含まれる。
【0125】
本発明の他の態様にしたがって、電解質配合物は、F、Cl、Iなどのハロゲン化物イオン、ポリハロゲン化物イオン、1〜20個のC原子を有するフルオロアルカン、好ましくは全フッ素置換された1〜20個のC原子を有するフルオロアルキル、および1〜20個のC原子を有するアルキルを有する、フルオロアルカンスルホナート、フルオロアルカンカルボキシラート、トリ(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ニトラート、ヘキサフルオロホスファート、トリス−、ビス−およびモノ−(フルオロアルキル)フルオロホスファート、テトラフルオロボレート、ジシアナミド、トリシアノメチド、テトラシアノボラート、チオシアナート、アルキルスルホナートまたはアルキルスルファート、から選択されるアニオンを含む、有機カチオンを有する塩をさらに1つ含む。
フルオロアルカンまたはフルオロアルキルは、好ましくは全フッ素置換されている。
【0126】
好ましくは、更なる塩は、ヨウ化物、チオシアナートまたはテトラシアノボレートなどのアニオンを含む塩から選択され、特に好ましくは、更なる塩は、ヨウ化物である。
少なくとも1つの更なる塩の、または好ましい更なる塩のカチオンは、四級窒素原子、好ましくは、ピリジニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウムまたはモルホリニウムなどの環状有機カチオンを含む有機化合物の中から選択され得る。
【0127】
しかしながら、特にDSCのために、電解質配合物における異なるカチオンの量を限定するために、有機カチオンは、式Iの化合物のカチオンの定義から選択され得る。したがって、本発明の他の好ましい態様にしたがって、電解質配合物は、上述の式Iの化合物を少なくとも1つ、および、有機カチオンが、
【化9】

式中、置換基R1’〜R4’は、上述のまたは好ましいと上述した意味を有する、
の群から独立して選択される、少なくとも1つのさらなるヨウ化物を含む。
【0128】
少なくとも1つの更なる塩の特に好ましい例は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムヨウ化物、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物、1,3−ジメチル−イミダゾリウムヨウ化物、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物、N−ブチル−N−メチル−ピロリジニウムヨウ化物またはN,N−ジメチル−ピロリジニウムヨウ化物である。
【0129】
本発明の他の態様において、本発明にしたがった電解質配合物に、グアニジニウムチオシアナートを添加し得る。
本発明の電解質配合物は、好ましくは、ヨード(I)を含む。好ましくは、これは、0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜20重量%および最も好ましくは1〜10重量%のIを含む。
【0130】
好ましい態様において、本発明の電解質配合物は、非共有電子対を有する窒素原子を含有する化合物を少なくとも1つさらに含む。かかる化合物の例は、EP 0 986 079 A2、2頁目40〜55行、3頁目、24行〜7ページ目54行、に見出され、これは本明細書に参照として明示的に組み込まれる。非共有電子対を有する化合物の好ましい例は、イミダゾールおよびその誘導体、好ましくは、ベンズイミダゾールおよびその誘導体が挙げられる。
【0131】
本発明の電解質配合物は、50%よりも少ない有機溶媒を含む。好ましくは、電解質配合物は、40%よりも少ない、より好ましくは、30%よりも少ない、さらにより好ましくは20%よりも少ない、10%よりもさらに少なく含む。最も好ましくは、電解質配合物は、5%よりも少ない有機溶媒を含む。例えば、これは実質的に有機溶媒を含まない。パーセンテージは、重量%のベースで示される。
【0132】
有機溶媒は、上述の量で存在する場合、文献に開示されたものから選択され得る。好ましくは、溶媒は、存在する場合、160摂氏度よりも高い、より好ましくは190度よりも高い融点を有し、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、テトラグリム、および好ましくは非対称に置換された、2−エタンスルホニル−プロパン、1−エタンスルホニル−2−メチル−プロパンまたは2−(プロパン−2−スルホニル)−ブタンなどのメトキシ−置換ニトリルまたはスルホン類である。
【0133】
溶媒が、電解質配合物に存在する場合、ゲル化剤として、ポリマーをさらに含み得、ここでポリマーは、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデン−ヘキサフルロプロピレン、ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレンコポリメルス、ナフィオン、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリラート、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンである。これらのポリマーを電解質配合物に添加する目的は、液体電解質を、疑似固体または固体電解質にすることにより、特に経年劣化の間の、溶媒保持率を改善することである。
【0134】
本発明の電解質配合物は、例えば、溶解性、そして溶媒保持率の改善も可能とする、SiO、TiO、Al、MgOまたはZnOなどの金属酸化物ナノ粒子をさらに含み得る。
本発明の電解質配合物は多くの用途を有する。例えば、光電池、発光デバイス、エレクトロクロミックまたは光−エレクトロクロミックデバイス、電気化学センサおよび/またはバイオセンサなどの光電子工学および/または電気化学デバイスにおいて使用し得る。また、電気化学バッテリ、例えば、リチウムイオンバッテリまたは二層コンデンサにおける使用も可能である。
【0135】
本発明は、したがって、光電池、発光デバイス、エレクトロクロミックまたは光−エレクトロクロミックデバイス、電気化学センサおよび/またはバイオセンサである、電気化学および/または光電子工学デバイスにおける、詳細に上述した電解質配合物の使用にもさらに関する。好ましくは、電解質配合物は色素増感太陽電池において使用し得る。
【0136】
本発明は、したがって、
式I
[Kt]z+z[B(R)(CN)(OR3−x−y(F)
式中、
[Kt]z+は、無機または有機カチオンであり、
zは、1または2であり、
xは、1または2であり、yは0または1であり、およびx+yは<3であり、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基、
の化合物、
または上述の式Iの化合物の好ましい態様
を少なくとも1つ含む電解質配合物を含む、
電気化学および/または光電子工学デバイス、例えば、光電池、発光デバイス、エレクトロクロミックまたは光−エレクトロクロミックデバイス、電気化学センサおよび/またはバイオセンサにも関する。
【0137】
好ましい態様にしたがって、本発明のデバイスは、色素または量子ドット増感太陽電池、特に好ましくは色素増感太陽電池である。
量子ドット増感太陽電池は、例えば、US 6,861,722に開示される。色素増感太陽電池において、色素は、電気エネルギーに変換するために太陽光を吸収するために使用される。色素の例は、EP 0 986 079 A2、EP 1 180 774 A2またはEP 1 507 307 A1に開示される。
【0138】
好ましい色素は、Z907またはZ907Naであり、これらはいずれも、両親媒性ルテニウム増感剤である。
好ましい態様において、色素は、ホスフィン酸と共吸着する。ホスフィン酸の好ましい例は、M. Wang et al, Dalton Trans., 2009, 10015-10020に開示される、ビス(3,3−ジメチル−ブチル)−ホスフィン酸(DINHOP)である。
色素Z907Naは、NaRu(2,2’−ビピリジン−4−カルボン酸−4’−カルボキシラート)(4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン)(NCS)を意味する。
【0139】
例えば、色素−増感太陽電池は、光電極、対電極および、光電極と対電極との間の電解質配合物または電荷移動材料を含み、ここで、増感色素は、対電極に向かい合う側の、光電極の表面上に吸収される。
本発明にしたがったデバイスの好ましいな態様にしたがって、半導体、上述の電解質配合物、および対電極を含む。
【0140】
本発明の好ましい態様にしたがって、半導体は、Si、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、GaP、InP、GaAs、CdTe、CuInS,および/またはCuInSeの群から選択される材料ベースである。好ましくは、半導体は、色素によって任意に覆われる表面を増やし、電解質に接触する、メソ多孔性表面を含む。好ましくは、半導体は、グラス支持体またはプラスチックまたは金属箔上に存在する。好ましくは、支持体は、伝導性である。
【0141】
本発明のデバイスは、好ましくは対電極を含む。例えば、Ptで被覆された、ガラス上のフッ素をドープした酸化スズまたはスズをドープした酸化インジウム(それぞれ、FTO−またはITO−ガラス)、好ましくは伝導性の同素体の炭素、ポリアニリンまたはポリ(3,4−エーチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)。ステンレス鋼またはチタン薄板などの金属物質は、ガラスの他に考えられる基板であり得る。
【0142】
本発明のデバイスは、電解質を、本発明の電解質配合物で単に置き換えることにより、従来技術の対応するデバイスとして製造し得る。例えば、色素増感太陽電池の場合、デバイスアセンブリは、数多くの特許文献、例えばWO 91/16719(例34および35)だけではなく、科学文献、例えば、Barbe, C.J., Arendse, F., Comte, P., Jirousek, M., Lenzmann, F., Shklover, V., Graetzel, M. J. Am. Ceram. Soc. 1997, 80, 3157;およびWang, P., Zakeeruddin, S. M., Comte, P., Charvet, R., Humphry-Baker, R., Graetzel, M. J. Phys. Chem. B 2003, 107, 14336において開示されている。
【0143】
好ましくは、増感された半導体性材料は光陽極として働く。好ましくは、対電極は陰極である。
本発明は、本発明の電解質配合物を半導体の表面と接触させる工程を含み、ここで、かかる表面は任意に、増感剤で被覆されている、光電セルの製造方法を提供する。好ましくは、上記の材料から選択され、増感剤は、上述の量子ドットおよび/または色素、好ましくは色素から選択される。
【0144】
好ましくは、電解質配合物は単純に単導体上に注がれ得る。好ましくは、これは、Wang et al., J. Phys. Chem. B 2003, 107, 14336の参考文献において開示されるように、対電極中の穴を介して、電池の内部ルーメンに真空を作り出し、電解質配合物を添加することにより、対電極を既に含む、別の完成したデバイスに適用される。
更なる言及なしに、当業者は、上述の記載を広い範囲において用いることができると解される。好ましい態様および例は、したがって、単に説明的な、いかなる方法に限定するものではない開示とみなされる。
【0145】
合成された化合物は、ラマン分光法、NMR分光法または元素分析を介して特徴づけられる。NMRスペクトルは、アセトン−D6(ジュウテリウムをロックとして有するBruker Avance III)において測定する。用いた周波数は::H:400.17MHz、19F:376.54MHz、11B:128.39MHz、31P:161.99MHzおよび13C:100.61MHzであり、外部標準:Hおよび13CについてはTMS;19FについてはCClF、および11BについてはBF・EtO。
【0146】
合成イオン液体におけるアニオン[CB(OCH)(CN)に関するデータ:
【化10】

【0147】
例1. カリウムシアノジメトキシトリフルオロメチルボレート
K[CFB(OCH(CN)]
【化11】

【0148】
カリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレート、K[CFB(OCH](1.7g、8.1mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に計量する。THF(10ml)およびトリメチルシリルシアニド(1.1ml、8.1mmol)をアルゴン雰囲気下で添加する。反応混合物を室温で4時間撹拌する。反応容積を続いて2mlに減少させ、K[CFB(OCHCN]を、CHCl(25ml)の緩徐な添加により沈殿させ、不活性条件下で濾過し、真空で乾燥する。淡いベージュ色のカリウムシアノジメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、1.3g(6.33mmol)、用いたカリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレートに基づいて79%である。生成物をTHF−DにおけるNMR分光法で特徴づける:
【0149】
【化12】

【0150】
例2. カリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート
K[CFB(OCH)(CN)
【化13】

【0151】
カリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレート、K[CFB(OCH](6.0g、28.3mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に計量する。トリメチルシリルシアニド(25.0ml、187.5mmol)を真空で添加する。反応混合物を70℃で20時間撹拌する。全ての揮発性構成成分を真空で除去する。未反応のトリメチルシリルシアニドをトリメチルメトキシシランとの混合物として回収し、さらなる反応のために用いることができる。残留物をアセトニトリル(5ml)に溶解する。CHCl(400ml)の添加は、実質的に無色のK[CFB(OCH)(CN)]の沈殿を生じさせ、これを濾過し、真空で乾燥する。カリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、4.9g(24.3mmol)、用いたカリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレートに基づいて86%である。200℃から分解;ラマン分光法:ν(CN)=2217 cm-1。生成物をNMR分光法により特徴づける:
【0152】
【化14】

【0153】
【化15】

【0154】
カリウムトリフルオロトリフルオロメチルボレート、K[CFBF](0.19g、1.1mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に計量する。トリメチルシリルシアニドおよびメトキシトリメチルシラン(10ml、〜10:1v/v)の混合物を、フラスコ内に凝集させる。反応混合物を室温で20時間撹拌する。全ての揮発性構成成分を真空で除去し、未反応のトリメチルシリルシアニドおよびトリメチルメトキシシランの混合物の大部分を回収する。残留物をアセトニトリル(1ml)に溶解し、およびCHCl(50ml)の添加は実質的に無色のK[CFB(OCH)(CN)]の沈殿を生じさせ、これを真空で乾燥する。カリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、0.17g(0.8mmol)、用いたカリウムトリフルオロトリフルオロメチルボレートに基づいて75%である。得られた生成物のNMRスペクトルは、例2Aにおいて記載したスペクトルとみなす。
【0155】
例3. カリウムシアノジメトキシペンタフルオロエチルボレート
K[CB(OCH(CN)]
【化16】

【0156】
カリウムトリメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH](1.0g、3.8mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に計量する。THF(5ml)、そしてトリメチルシリルシアニド(0.5ml、4.0mmol)を保護ガス下で添加する。反応混合物を室温で4時間撹拌し、続いて、乾燥するまで蒸発させる。残留物をアセトニトリル(5ml)に溶解する。CHCl(100ml)の添加は、実質的に無色のカリウムシアノジメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH(CN)]の沈殿を生じ、これを不活性条件下で濾過し、真空で乾燥する。K[CB(OCH(CN)]の収率は、0.95g(3.7mmol)、用いたカリウムトリメトキシペンタフルオロエチルボレートに基づいて97%である。生成物をTHF−DにおけるNMR分光法で特徴づける:
【0157】
【化17】

【0158】
例4. カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
K[CB(OCH)(CN)
【化18】

【0159】
カリウムトリメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH](20.0g、76.3mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する500mlの円筒反応槽に計量する。フラスコを固定し、前の例(20%メトキシトリメチルシラン、(CHSiOCHを含む)からリサイクルするするおよびトリメチルシリルシアニド(80.0ml、600mmol)をアルゴン下で添加する。反応混合物を室温で20時間撹拌する。全ての揮発性構成成分を真空で除去する。未反応のトリメチルシリルシアニドを、トリメチルメトキシシランとの混合物として回収し、さらなる反応のために用いることができる。
【0160】
残留物を30%含水H(100ml)に溶解し、KCO(20.0g)を溶液に撹拌しながら添加する。混合物を撹拌しながら2時間室温で放置し、過酸化物にネガティブテストとなるまで(Peroxid-Test Merckoquant(R))、二亜硫酸カリウムKで処理する。混合物をTHF(6x50ml)で抽出する。合わせた有機相をKCOで乾燥し、濾過し、真空で数ミリリットルまで蒸発させる。CHCl(250ml)の添加は、実質的に無色のK[CB(OCH)(CN)]の沈殿を生じさせ、これを続いて真空で乾燥する。カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、17.7g(70.2mmol)、用いたカリウムトリメトキシペンタフルオロエチルボレートに基づいて92%である。
210℃から分解;ラマン分光法:ν (CN)=2210、2216 cm−1。生成物をNMR分光法で特徴づける:
【0161】
【化19】

【0162】
例5. テトラフェニルホスホニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート
[(CP][CFB(OCH)(CN)
【化20】

【0163】
K[CFBF](0.2g、1.1mmol)を、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に計量する。トリメチルシリルシアニドおよびメトキシトリメチルシラン(10ml、〜10:1v/v)の混合物を塩上で凝縮させる。反応混合物を室温で12時間撹拌する。全ての揮発性構成成分を真空で除去し、残留物を脱イオン水(15ml)に溶解する。脱イオン水(30ml)への[PhP]Brの溶液(0.6g、1.4mmol)の緩徐な滴下は、無色の沈殿の形成を生じさせ、これを濾過し、続いて、真空で乾燥する。テトラフェニルホスホニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、0.5g(1.1mmol)、用いたカリウムトリフルオロトリフルオロメチルボレート、K[CFBF]、に基づいて92%である。融点:160℃;240℃から分解。
ラマン分光法: ν (CN)=2203 cm−1。生成物をNMR分光法で特徴づける:
【0164】
【化21】

【0165】
【化22】

【0166】
K[CFB(OCH](1.1g、5.2mmol)をまず、ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽に導入する。トリメチルシリルシアニド(10.0ml、74.9mmol)凝縮させる。反応混合物を70℃で2.5時間撹拌する。そして、揮発性構成成分を真空で除去し、残留物を脱イオン水(20ml)に溶解する。[PhP]Brの水溶液(2.6g、6.2mmol、200ml)を溶液に添加する。沈殿を濾過し、真空で乾燥する。テトラフェニルホスホニウムジシアノ−メトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、2.4g(4.8mmol)、用いたカリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレート、K[CFB(OCH]、に基づいて96%である。得られた生成物のNMRスペクトルは、例5Aに記載のスペクトルとみなす。
【0167】
例6. テトラ−n−ブチルアンモニウムジシアノメトキシトリフルオロメチル−ボレート
[(CN][CFB(OCH)(CN)
【化23】

【0168】
例2に記載のように調製したK[CFB(OCH)(CN)](1.0g、4.9mmol)を、脱イオン水(20ml)に溶解し、および脱イオン水(40ml)中の[n−BuN]Br(2.0g、6.2mmol)を添加する。細かい沈殿をCHCl(3×15ml)で抽出する。合わせた有機相を脱イオン水(4x2ml)で洗浄し、MgSO使用して乾燥する。濾過の後、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去する。テトラ−n−ブチルアンモニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、1.5g(3.7mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート、K[CFB(OCH)(CN)]、に基づいて75%である。
【0169】
【化24】

【0170】
【化25】

【0171】
ガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する10mL反応槽に配置した、カリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレートK[CFB(OCH](1.0g、4.71mmol)を、4mLのTHFに溶解する。トリメチルシリルシアニド(1.9ml、14.2mmol)をこの溶液に添加し、反応混合物を室温で18時間撹拌する。全ての揮発性生成物を真空で除去し、残留物を2mLの脱イオン水に溶解する。2mLの脱イオン水に溶解したテトラブチルアンモニウム臭化物(CNBr(1.8g、5.65mmol)を磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、添加する。
【0172】
反応混合物を次の15分間撹拌し、イオン液体を分離し、脱イオン水(1mL)で2回洗浄する。真空での乾燥の後、1.2g(2.96mmol)のテトラ−n−ブチルアンモニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート[(CN][CFB(OCH)(CN)]を得る。収率は、用いたカリウムトリメトキシトリフルオロメチルボレート、K[CFB(OCH]、に基づいて63%である。得られた生成物のNMRスペクトルは、例6Aに記載したスペクトルとみなす。
【0173】
例7. 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート
[C11][CFB(OCH)(CN)
【化26】

【0174】
例2に記載のように調製したK[CFB(OCH)(CN)](5.5g、27.2mmol)を、脱イオン水(10ml)に溶解し、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、脱イオン水(10ml)に溶解した1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物[EMIM]Cl(4.1g、27.9mmol)を添加する。イオン液体を分離し、脱イオン水(4x2ml)で洗浄し、真空60℃で乾燥する。液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、3.7g(13.5mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシトリフルオロメチル−ボレート、K[CFB(OCH)(CN)]、に基づいて49%である。生成物を、イオンクロマトグラフィーにより特徴づけ、ハロゲン化物;塩化物:104ppm、フッ化物:41ppmの不純物の低い含有量を示した。含水量(カール・フィッシャー滴定)は58ppmである。
【0175】
【化27】

【0176】
例8. N−ブチル−N−メチルピロリジニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレート - [C20N][CFB(OCH)(CN)
【化28】

【0177】
例2に記載のように調製した、K[CFB(OCH)(CN)](250mg、1.2mmol)を脱イオン水(10ml)に溶解し、脱イオン水(20ml)に溶解した1−ブチル−1−メチルピロリジニウム塩化物(300mg、1.7mmol)を添加する。イオン液体をCHCl(3×10ml)で抽出する。合わせた有機相を脱イオン水(4x2ml)で洗浄し、MgSOを使用して乾燥する。濾過の後、ロータリーエバポレーターを使用してCHClを除去する。液体N−ブチル−N−メチルピロリジニウムジシアノメトキシトリフルオロメチルボレートの収率は、140mg(0.46mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシトリフルオロメチル−ボレート、K[CFB(OCH)(CN)]、に基づいて38%である。
【0178】
【化29】

【0179】
例9. テトラフェニルホスホニウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
[(CP][CB(OCH)(CN)
【化30】

【0180】
KCN(3.0g、46.1mmol)およびKI(0.6g、3.9mmol)を、4時間115℃で真空のガラスバルブおよびPTFEスピンドル(Young、London)および磁気撹拌バーを有する円筒反応槽内で乾燥する。トリメチルシリル塩化物(3.0ml、2.6g、23.6mmol)を続いて添加し、反応混合物を100℃で3日間撹拌する。K[CB(OCH](200mg、0.76mmol)をアルゴンの反流下で添加し、混合物を室温で3日間撹拌する。反応混合物を30%H(20ml)中に取り上げ、2時間撹拌する。[PhP]Br(500mg、1.2mmol)を続けて脱イオン水(50ml)に溶解し、反応混合物へゆっくりと滴下する。沈殿物を濾過し、乾燥し、アセトン(20ml)で抽出する。合わせたアセトン相を乾燥するまで蒸発させる。テトラフェニルホスホニウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、250mg(0.45mmol)、用いるカリウムトリメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH]、に基づいて60%である。融点:155℃;280℃から分解。
【0181】
【化31】

【0182】
例10. N−ブチル−N−メチルピロリジニウムジシアノメトキシ−ペンタフルオロエチルボレート
[C20N][CB(OCH)(CN)
【化32】

【0183】
例4に記載したように調製した、カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)](6.0g、23.8mmol)を、脱イオン水(2ml)に溶解し、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、2mlの脱イオン水中の1−ブチル−1−メチルピロリジニウム塩化物[BMPL]Cl(4.7g、26.4mmol)溶液を添加する。イオン液体を分離し、脱イオン水(4x2ml)で洗浄し、真空50℃で乾燥する。液体N−ブチル−N−メチルピロリジニウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、7.9g(22.2mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)]、に基づいて93%である。生成物をイオンクロマトグラフィーで特徴づけ、ハロゲン化物;塩化物:<5ppm、フッ化物:8ppmの不純物の低い含有量を示した。含水量(カール・フィッシャー滴定)は130ppmである。動粘性係数(20℃)は78.3mPa・sである。
【0184】
【化33】

【0185】
例11. 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
[C11][CB(OCH)(CN)
【化34】

【0186】
例4に記載のように調製した、K[CB(OCH)(CN)](5.2g、20.6mmol)、脱イオン水(10ml)に溶解し、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、脱イオン水(10ml)に溶解した、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物[EMIM]Cl(3.5g、23.9mmol)を添加する。イオン液体を分離し、脱イオン水(4x2ml)で洗浄し、真空60℃で乾燥する。液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、4.0g(12.3mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)]、に基づいて59%である。生成物をイオンクロマトグラフィーで分析し、ハロゲン化物;塩化物:20ppm、フッ化物:5ppmの不純物の低い含有量を示した。含水量(カール・フィッシャー滴定)は27ppmである。
【0187】
【化35】

【0188】
例12. 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
[C15][CB(OCH)(CN)
【化36】

【0189】
例4に記載のように調製した、カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)](500mg、1.9mmol)を、脱イオン水(10ml)に溶解し、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、脱イオン水(10ml)に溶解し、そして1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、[BMIM]Cl(450mg、2.6mmol)を添加する。イオン液体をCHCl(2×10ml)で抽出する。合わせた有機相を脱イオン水(4×2ml)で洗浄し、MgSOを用いて乾燥する。濾過の後、ロータリーエバポレーターを用いて、CHClを取り除く。液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、530mg(1.5mmol)、用いたカリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)]、に基づいて79%である。
【0190】
【化37】

【0191】
例13. ジエチルメチルスルホニウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
[C13S][CB(OCH)(CN)
【化38】

【0192】
例4に記載のように調製した、カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)](8.0g、31.7mmol)を脱イオン水(30ml)に溶解し、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、脱イオン水(30ml)に溶解したジエチルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナト(6.7g、26.3mmol)を添加する。イオン液体をCHCl(10×15ml)で抽出する。合わせた有機相を脱イオン水(5x10ml)で洗浄し、およびMgSOを使用して乾燥する。濾過の後、ロータリーエバポレーターを使用して、CHClを除去する。液体ジエチルメチルスルホニウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、8.0g(25.1mmol)、用いたジエチルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナトに基づいて95%である。生成物をイオンクロマトグラフィーで分析し、ハロゲン化物;塩化物:8ppm、フッ化物:10ppmの不純物の低い含有量を示した。含水量(カール・フィッシャー滴定)は163ppmである。動的粘度(20℃)は、43.2mPa・sである。
【0193】
【化39】

【0194】
例14. リチウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート
Li[CB(OCH)(CN)
例4に記載のように調製した、3mlのアセトニトリル中の、カリウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレート、K[CB(OCH)(CN)](1.0g、3.9mmol)の溶液に、磁気撹拌バーで反応混合物を混合することにより、アセトニトリル(0.95M、4.1ml、3.9mmolLiBF)中のリチウムテトラフルオボレート溶液を添加する。懸濁物を0℃まで冷却し、濾過する。沈殿物(KBF)を冷アセトニトリル(0℃;3ml)で洗浄し、真空で乾燥する。濾液を真空で蒸発し、残留物を真空で20時間50℃で乾燥する。カリウムテトラフルオロボレートKBFの収率、0.49g(3.91mmol)、理論値収率の99%。
リチウムジシアノメトキシペンタフルオロエチルボレートの収率は、定量的である。
生成物を質量NMR分光法で特徴づける。
【0195】
【化40】

【0196】
例15. カリウムジシアノエトキシトリフルオロメチルボレート
K[CFB(OEt)(CN)
K[CFBF](0.8g、4.5mmol)、およびトリメチルシリルシアニド(TMSCN)のエトキシトリメチルシラン(TMSOEt)との混合物(〜20mL、TMSCN/TMSOEt、〜122/28mmol)を、50℃で24時間撹拌する。全ての揮発性化合物を蒸留し、残留物をアセトンに溶解する。CHClの添加により、固体材料が沈殿する。濾過および真空での乾燥の後、0.9gのK[CFB(OEt)(CN)]を単離する。収率は、用いたK[CFBF]に基づいて計算し92%である。生成物を、NMR分光法を用いて特徴づける。
【0197】
【化41】

【0198】
例A:配合物およびデバイス
テトラシアノボレートアニオンを含有する従来技術の電解質配合物に対して、同じカチオンを使用した場合に、本発明にしたがった電解質配合物の優位性を示すために以下の電解質配合物を、合成する。
例A−1:
1.電解質調製
電解質調製に使用するためのイオン液体を、表1にまとめる。
【0199】
【表1】

【0200】
表2において用いられる電解質混合物を、1,3−ジメチルイミダゾリウムヨウ化物(mmim I)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物(emim I)、元素状ヨード、N−ブチルベンズイミダゾール、グアニジニウムチオシアナートおよび上の表にリストされたイオン液体を、36:36:5:10:2:48のモル比で用いて、調製する。
化合物mmim I、emim I、I、N−ブチルベンズイミダゾールおよびグアニジニウムチオシアナートは商業的に入手可能であり、またはBonhote, P. et al Inorg. Chem. 1996, 35, 1168-1178などの既知の文献にしたがって合成される。
【0201】
2:色素増感太陽電池(DSSC)の製造:
US 5,728,487またはWO 2007/093961に開示されるように色素増感太陽電池を製造する:
2層構造からなる光陽極を得るために、2層の、メソ多孔性TiO電極を、Wang P et al., J. Phys. Chem. B 2003, 107, 14336、特に14337頁、に開示されるように調製した。透明なナノポーラスTiO電極を調製するために、テルピネオール溶媒および20nm直径を有するアナターゼ相のナノ粒子TiOを含有するスクリーン印刷ペーストを、透明な導電性物質上に、5mmx5mmの四角い形状にハンドプリンタを使用して堆積させた。ペーストを10分間、摂氏120度で乾燥した。そして、不透明な層を調製するために、400nm直径を有するTiOを含有する他のスクリーンペーストを、ナノポーラス層の上に堆積させた。そして、2層フィルムを、摂氏500度で1時間焼結し、下が透明な層(7ミクロン厚)、上が不透明な層(4ミクロン厚)を得た。焼結の後、電極を、40mMのTiClの水溶液(Merck)に30分間、摂氏70度で浸し、そして、純粋で十分に洗い流した。
【0202】
このようにTiCl−処理された電極を、色素増感の直前に、摂氏500度で30分間乾燥した。電極を、アセトニトリルの0.3mMのZ907色素溶液(Merck HPLC grade)およびtert−ブチルアルコール(Merck)、v:v=1:1に、60時間、摂氏19度で漬けた。対電極を、上記の文献に解される、熱分解法で調製した。白金酸の5mM溶液(Merck)の液滴を、8μl/cm2で投じ、導電性物質上で乾燥させた。色素増感太陽電池を、熱で密閉するために、30ミクロン厚のBynel(DuPont、USA)ホットメルトフィルムを使用して組み立てた。対応するデバイスを製造するために、中の空間は、上述の電解質配合物でそれぞれ満たされた。
【0203】
色素Z907は、両親媒性ルテニウム増感剤Ru(2,2’ビピリジン4,4’−ジカルボン酸)(4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン)(NCS)または[Ru(H2dcbpy)(dnbpy)(NCS)]である。
光電流−電圧曲線の測定は、温度調節を有する、Air Mass 1.5模擬太陽光下で行われた。
【0204】
3. 様々な温度でのDSSC特徴。
光電流−電圧曲線の測定を、4×4cmのフォトマスクを用いて、25℃および12度での温度調節で、Air Mass 1.5模擬太陽光下で行った。
特徴的な光起電力パラメーターを表2にまとめた。特に低い温度において、パーフルオロエチルシアノメトキシフルオロボレート塩を有する電解質2を含有する検査したDSSCは、その高い光電流のおかげで優れたパフォーマンス、および低温での維持された曲線因子を示した。
【0205】
emim TCBを含む電解質1
emimペンタフルオロエチルジシアノメトキシボレートを含む電解質2
表2は、例Aにしたがって作られたデバイスの、短絡光電流密度(JSC)、開路光起電力(VOC)、曲線因子(FF)、光起電力変換効率(η)および図1および2から得られるネルンスト拡散抵抗で表される、詳細な光起電力パラメーターを示す。
【0206】
【表2】

【0207】
25℃および12度における、電解質1を含む光起電力デバイスのインピーダンススペクトルを、図1に示し、25℃および12度における、電解質2を含む光起電力デバイスのインピーダンススペクトルを、図2に示す。
【0208】
例A−2:
1.電解質調製
この報告において使用したイオン液体を表3にまとめる。
【0209】
【表3】

【0210】
与えられらモル比で、下記化合物で、A−1における記載と同様に、電解質配合物を調製する。デバイスの製造は、上述のように行った−しかし、電解質配合物1(前のデータ4.75%を参照)の4.1%の効率を示すに過ぎないemimTCBに関する比較データ、およびこれまでの全ての測定よりも低い配合物1−1から見られるように、結果は、予想よりも低く―これは、イオン液体の本研究は、TCBとの比較を考慮して、解釈する必要があることを意味する。
【0211】
電解質配合物1−1のモル比: 60 emimI、5 I2、60 emimTCB、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物3のモル比: 60 emimI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物4のモル比: 60 S−エチル−N,N,N’N’−テトラメチルイソチオウロニウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
【0212】
電解質配合物5のモル比: 60 1−アリル−3−メチルイミダゾリウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物6のモル比: 60 1−アリル−2,3−ジメチルイミダゾリウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物7のモル比: 60 1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
【0213】
電解質配合物8のモル比: 60 1−メチル−3−プロピニルイミダゾリウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物9のモル比: 60 1,1−ジメチルピロリジニウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物10のモル比: 60 トリメチルスルホニウムI、5 I2、60 emim[B(CF3)(OCH3)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
【0214】
【表4】

【0215】
例B:
例Aにしたがって、以下の電解質配合物を合成し、例Aにしたがって調製したDSSCテストセルにおいて電解質として使用する:
電解質配合物11のモル比:36 mmimI、36 emimI、5 I2、72 bmplTCB、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物12のモル比:36 mmimI、36 emimI、5 I2、72 bmpl[B(C2F5)(OMe)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB;
電解質配合物13のモル比:36 mmimI、36 emimI、5 I2、72 ジエチルメチルスルホニウム[B(C2F5)(OMe)(CN)2]、2 guaSCN、10 NBB。
【0216】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】図1は、25℃および12℃における、電解質配合物1を含有するデバイスのインピーダンススペクトルを示す。
【図2】図2は、25℃および12℃における、電解質配合物2を含有するデバイスのインピーダンススペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia
[B(R)(CN)(OR3−x−y(F) Ia
式中、
xは1または2であり、yは0または1であり、x+yは<3であり、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、
のボレートアニオンを含有する化合物。
【請求項2】
化合物が、式(I)
[Kt]z+z[B(R)(CN)(OR3−x−y(F)
式中、
[Kt]z+は、無機または有機カチオンまたはHを示し、
zは、1または2であり、
x、y、RおよびRは請求項1において特定された意味を有する、
に一致することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
[Kt]z+が、スルホニウム、オキソニウム、アンモニウム、ホスホニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジニウムカチオンまたは複素環カチオンを含む群から選択される、有機カチオンであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
[Kt]z+が、
式[(RS] (1)のスルホニウムカチオン、または
式[(RO] (2)のオキソニウムカチオン、
式中、
は、1〜8個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基、R’’’N−または非置換フェニルまたはR’’’、OR’’’、N(R’’’、CNもしくはハロゲンで置換されたフェニルを示し、およびR’’’は互いに独立して、Hまたは直鎖もしくは分岐C〜Cアルキルである、
であることを特徴とする、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
[Kt]z+が、式(3)
[NR (3)、
式中、
Rは、いずれの場合にも、互いに独立して、
H、OR’、NR’、ただし、式(3)中の置換基Rの最大で1つが、OR’またはNR’であり、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
ここで、1個または2個のRは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで置換されるか、または、部分的に、−OH、−OR’、−CN、−NR’、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−NO、−SR’、−S(O)R’、−SOR’で置換されてもよく、および
ここで、Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり得、X=ハロゲンであり得る、
を示す、
に一致することを特徴とするか、
または、
[Kt]z+が、式(4)
[PR (4)、
式中、
は、いずれの場合にも、互いに独立して、
H、OR’またはNR’
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
ここで、1個または2個のRは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで置換されるか、または、部分的に、−OH、−OR’、−CN、−NR’、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−NO、−SR’、−S(O)R’、−SOR’で置換されてもよく、および
ここで、Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、およびX=ハロゲンである、
を示す、
に一致するホスホニウムカチオンであることを特徴とするか、
または
[Kt]z+が、式(5)
[C(NR)(OR)(NR)] (5)、
式中、
〜Rはそれぞれ、互いに独立して、
H、ここで、HはRに関して除かれ、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
ここで、1個または2個以上の置換基R〜Rは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで置換されるか、または、部分的に、−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、および
ここで、R〜Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである、
を示す、
に一致するウロニウムカチオンであることを特徴とするか、
または
[Kt]z+が、式(6)
[C(NR)(SR)(NR)] (6)、
式中、
〜Rはそれぞれ、互いに独立して、
H、ここで、HはRに関して除かれ、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
ここで、1個または2個以上の置換基R〜Rは、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで置換されるか、または、部分的に、−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、および
ここで、R〜Rにおける、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである、
を示す、
に一致するチオウロニウムカチオンであることを特徴とするか、
または
[Kt]z+が、式(7)
[C(NR)(NR1011)(NR1213)] (7)、
式中、
〜R13はそれぞれ、互いに独立して、
H、−CN、NR’、−OR’、
1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
ここで、1個または2個以上の置換基R〜R13は、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで置換されるか、または、部分的に、−OH、−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換されてもよく、および
ここで、R〜R13における、α位にない1個または2個の非隣接炭素原子は、
−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである、
を示す、
に一致するグアニジニウムカチオンであることを特徴とするか、
または
[Kt]z+が、式(8)
[HetN]z+ (8)
式中、
HetNz+は、
【化1】

【化2】

式中、置換基
1’〜R4’はそれぞれ、互いに独立して、
H、F、Cl、Br、I、−CN、−OR’、−NR’、−P(O)R’、−P(O)(OR’)、−P(O)(NR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)X、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’および/またはNOであり、
(ただし、R1’、R3’、R4’は、Hおよび/または1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニルであり、)
任意に、フッ素化または全フッ素置換された、1〜20個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル、
任意に、フッ素化または全フッ素置換された、2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する、直鎖または分岐アルケニル、
任意に、フッ素化または全フッ素置換された、2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する、直鎖または分岐アルキニル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されてもよい、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル、
飽和、部分的にまたは完全に不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C〜C−アルキルまたはアリール−C〜C−アルキル、を示し、
ここで、置換基R1’、R2’、R3’および/またはR4’は、ともに環系を形成してもよく、
ここで、1個または2個以上の置換基R1’〜R4’は、部分的にまたは完全にハロゲン、特に−Fおよび/または−Clで、または、−OH、−OR’、NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−SR’、−S(O)R’、−SOR’、−NOで置換され得るが、ここで、R1’およびR4’は、同時に、完全にハロゲンで置換されることはできず、およびここで、置換基R1’〜R4’において、ヘテロ原子に結合していない、1個または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−C(O)−、−C(O)O−、−NR’−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SONR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’)NR’−、−PR’=N−または−P(O)R’−から選択される原子および/または原子団で置き換えられ得、
ここで、R’=H、非−、部分的にまたは全フッ素置換されたC−〜C18−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルであり、X=ハロゲンである、
を示す、
の群から選択される複素環カチオンを示す、
に一致することを特徴とする、
請求項2または3に記載の化合物。
【請求項6】
[Kt]z+が金属カチオンまたはNOであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
式I−1
[Me][B(R)(CN)(OR3−x I−1
式中、R、xおよびRは、請求項1または2において示された意味を有する、
を示す、
[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、y=0である請求項2または6に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
式II
[Me][B(R)(OR*) II
式中、
[Me]は、アルカリ金属カチオンを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルである、
の化合物の、
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドとの反応を含む、
前記方法。
【請求項8】
反応温度が、10℃〜200℃であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化学量論量の式IIの化合物を使用する場合には、xが1である式I−1の化合物を得るために、反応温度が、10〜70℃であることを特徴とするか、または
1等量より多い式IIの化合物を使用する場合には、xが2である式I−1を得るために、反応温度が、10℃〜200℃であることを特徴とする、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
式I−2
[Me][B(R)(CN)(OR)(F)] I−2
およびRは、式1または2に示された意味を有する、
の化合物を示す、[Kt]z+がアルカリ金属カチオンであり、y=1であり、x=1である、請求項2または6に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
式III
[Me][B(R)(OR)F III
式中、
[Me]は、アルカリ金属カチオンを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐パーフルオロ基、C、C、部分的にフッ素置換されたフェニルまたは1〜4個のC原子を有するパーフルオロ基で一置換もしくは二置換されたフェニルを示し、およびRは、1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、
の化合物の、
アルキル基が独立して1〜4個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基を示す、トリアルキルシリルシアニドとの反応を含む、
前記方法。
【請求項11】
[Kt]z+が、アルカリ金属カチオン以外のカチオンである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の式Iの化合物の、塩交換反応における製造方法であって、
式I−1
[Me][B(R)(CN)(OR3−x I−1
または
式I−2
[Me][B(R)(CN)(OR)(F)] I−2
式中、
Meはアルカリ金属カチオン、またはHであり、
、xおよびRは、請求項1または2に示された意味を有する、
のアルカリ金属塩を、
式V
KtA V、
式中、
Ktは、有機カチオン、または式I−1または式I−2の化合物のアルカリ金属カチオン以外の金属カチオンの意味を有し、
Aは、F、Cl、Br、I、OH、[HF、[CN]、[SCN]、[RCOO]、[RSO、[RCOO]、[RSO、[ROSO、[SiF2−、[BF、[SO2−、[HSO1−、[NO、[(RP(O)O]、[RP(O)O2−、トシル酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、アスコルビン酸塩、ソルビン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、1〜4個のC原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基で任意に置換されたマロン酸塩または[CO2−を示し、
ここで、Rは、それぞれ互いに独立して、1〜12個のC原子を有する、直鎖または分岐アルキル基であり、および
は、それぞれ互いに独立して、1〜12個のC原子を有する、全フッ素置換された直鎖または分岐アルキル基であり、
ここで、塩KtAの式において、電気的中性を考慮すべきである、
の化合物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の式Iの化合物を少なくとも1つ含む、電解質配合物。
【請求項13】
請求項1に記載の式Iaのボレートアニオンを、0.1〜3Mのモル濃度で含む、請求項12に記載の電解質配合物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電解質配合物を含む、電気化学および/または光電子工学デバイス。
【請求項15】
光電池、発光デバイス、エレクトロクロミックもしくは光−エレクトロクロミックデバイス、電気化学センサおよび/またはバイオセンサである、請求項14に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−517232(P2013−517232A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548374(P2012−548374)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000091
【国際公開番号】WO2011/085967
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】