説明

ヒンジ構造

【課題】車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造において、トランクルームのスペースを拡大させる。
【解決手段】トランクルーム3のラッゲージドア1を回動自在に支持するヒンジ構造であって、先端11aに開口11a1が形成され、後端が底部11bで塞がれた中空筒状に形成され、且つ軸心が円弧状に湾曲している第1アーム11と、第1アーム11の筒内に収納されたコイルバネ13と、円弧状に湾曲した棒状になされ、その先端部12aでラッゲージドア1の裏面側を支持し、その後端部12bが第1アーム11の開口11a1から第1アーム11の筒内に摺動自在に挿入され、筒内に出し入れ自在に収納される第2アーム12とを備える。第2アーム12の後端部12bは、第1アーム11の筒内に収納されたコイルバネ13に当接し、コイルバネ13により第1アーム11の開口11a1に向けて付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ構造に関し、例えば、車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、車両Wの後部に位置するラッゲージドア1は、一対のヒンジアーム100を介して、車両ボディに回動自在に支持されている。
そして、ユーザは、ラッゲージドア1を開閉することで、トランクルーム3に荷物の出し入れを行っている。
【0003】
ここで、従来技術による、ラッゲージドアを支持するヒンジ構造について図6を用いて説明する。
図6は、従来技術によるラッゲージドアを支持するヒンジ構造の断面を示した模式図である。
図示するように、ラッゲージドア1を支持するヒンジ構造は、ラッゲージドア1を支持するヒンジアーム100と、ラッゲージドア1を開き方向(矢印Y1方向)に付勢するダンパステー200とを備えている。
【0004】
具体的には、ヒンジアーム100は、一端部(基端部100a1)が、バックウィンドウガラス2の下側にあるバックパネル4に回転自在に固定された略直線棒状の第1アーム100aと、第1アーム100aの先端部から延びる円弧状に湾曲した第2アーム100bとを備えている。
ここで、第1アーム100aの基端部100a1は、サポートブラケット110およびボルト112を用いて、バックパネル4に回転自在に固定されている。
また、第2アーム100bは、車両Wの骨格を構成するアッパバックリンフォース6に接合されたトルーフパネル5に形成された貫通孔5aを挿通し、その先端部100b1が、ラッゲージドア1の裏面に取り付けられている。なお、第2アーム100bの先端部100b1は、サポートブラケット111およびボルト113を用いて、ラッゲージドア1の裏面に固定されている。
また、トルーフパネル5の貫通孔5aには、貫通孔5aと、第2アーム100bの側面部との間に形成された隙間を塞ぐためのシールゴム7が取り付けられている(シールゴム7により、トランクルーム3に水が浸入するのを防いでいる)。
【0005】
また、ダンパステー200は、ステーブラケット210により、一端がバックパネル4に固定され、他端がヒンジアーム100(第1アーム100a)に取り付けられ、ヒンジアーム100を介して、ラッゲージドア1を開き方向(矢印Y1方向)に付勢するようになされている。
このように、従来技術のヒンジ構造は、ダンパステー200を取り付けることにより、ユーザが行うラッゲージドア1の開閉操作の負担(操作力)を軽減させるようにしている。
【0006】
そして、上記のように構成されたヒンジ構造は、ヒンジ回転中心Bとする半径(回転半径)Rの円運動により、ラッゲージドア1の開閉動作を行うようになされている。
なお、図5および図6に示したように、一端がバックパネルに取り付けられ且つヒンジ回転中心の円運動によりラッゲージドアを開閉するヒンジアームと、ラッゲージドアを開き方向に付勢する部品(トーションバー)とを備えたヒンジ構造の構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−24744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術のヒンジ構造は、以下に示す技術的課題を有している。
具体的には、図6に示すように、上述した従来技術のヒンジ構造では、ヒンジ回転中心Bとした半径Rの円運動により、ラッゲージドア1が開閉動作を行うようになされている(特許文献1のヒンジ構造も同様の構造を採用している)。
そして、従来技術のヒンジ構造では、ヒンジアーム100が、車両ボディの構造体(アッパバックリンフォース6等の構造体)を避けた形状になされている必要があり、それにより、ラッゲージドア1を開閉動作させるヒンジアーム100の円運動の半径Rが大きくなる。
すなわち、従来技術は、その構造上、ヒンジアーム100自体の形状寸法が大きくなり(これにより、トランクルーム3内でのヒンジアーム100の運動軌跡が大きくなり)、車両のトランクルーム3のスペースを狭めてしまうという技術的課題を有している。
【0009】
また、上述した図6のヒンジ構造および特許文献1のヒンジ構図は、いずれも、ユーザが行うラッゲージドアの開閉操作の負担を軽減させるために、ヒンジアームと別体で構成された部品(ダンパステーやトーションバー)を備えているが、それにより、部品点数の増加を招いていた。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造において、トランクルームのスペースを拡大させると共に、部品点数を減少させることができるヒンジ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明は、車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造に適用される。
そして、前記ヒンジ構造は、先端に開口が形成され、後端が底部で塞がれた中空筒状に形成され、且つ軸心が円弧状に湾曲している第1アームと、前記第1アームの筒内に収納され、その一端部が前記底部に支持された弾性体と、円弧状に湾曲した棒状になされ、その先端部でラッゲージドアを支持し、その後端部が前記第1アームの開口から該第1アームの筒内に摺動自在に挿入され、該筒内に出し入れ自在に収納される第2アームとを備え、前記第1アームは、前記先端が前記トランクルームの前方側の開口縁近傍に固定され、前記後端が車両のサイドパネルに固定され、前記第2アームは、前記後端部が前記第1アームの筒内に収納された弾性体の他端部に当接し、該後端部が該弾性体により前記第1アームの開口に向けて付勢されることを特徴としている。
【0012】
このように本発明のヒンジ構造は、中空筒状に形成され且つ軸心が円弧状に湾曲している第1アームと、円弧状に湾曲した棒状になされ、その先端部でラッゲージドアを支持し、その後端部が前記第1アームの開口から該第1アームの筒内に挿入され、該筒内に出し入れ自在に収納される第2アームとを備えている。
この構成により、ユーザは、ラッケージドアに開き方向(又は閉じ方向)の荷重を加えることにより、ラッゲージドアを支持した第2アームを第1アームの筒内で円弧状の軸心(第1アームの軸心)に沿って移動させることができる。すなわち、第2アームを第1アームの筒内から引き出す(又は押し込む)ことができ、これにより、ラッゲージドアを開ける(又は閉める)ことができる。
このように、本発明によれば、第1アームの円弧状の軸心に沿った運動軌跡により、ラッゲージドアを開閉することができるため、従来技術のヒンジ構造(ヒンジ回転中心の円運動)と比べて、ヒンジアームの運動軌跡を小さくなすことができる。
すなわち、本発明によれば、上述した従来技術のヒンジ構造のように、ヒンジ回転中心を設ける必要がなく、ヒンジアームを小型化できるため、上述した従来技術のヒンジ構造のものと比べて、車両のトランクルームのスペースを拡大することができる。
【0013】
また、本発明のヒンジ構造は、第1アームの筒内に弾性体を収納し、この弾性体により、第1アームの筒内に挿入された第2アームの後端部が該弾性体により前記第1アームの開口に向けて付勢されるようになされている。この構成により、弾性体が、第2アームを介して、ラッゲージドアを付勢することができる。
すなわち、本発明によれば、上述した従来技術のように、ヒンジアームと別体で構成された部品(ダンパステーやトーションバー)を設けることなく、ユーザが行うラッゲージドアの開閉操作の負担を軽減させることができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0014】
また、前記第1アームの外周側面には、軸心方向と平行する方向に延びる長孔状のガイド溝11が形成され、前記第2アームの後端部側の外周側面には、凸状に突出するガイドピンが形成され、前記第2アームのガイドピンが、前記第1アームのガイド溝に摺動自在に嵌合されていることが望ましい。
この構成により、第1アームの筒内に挿入された第2アームが、第1アームの筒内で回転することが防止され、且つ第2アームが、第1アームの筒内から外れることが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造において、トランクルームのスペースを拡大させると共に、部品点数を減少させることができるヒンジ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
先ず、本実施形態のヒンジ構造の構成について、図1〜図4を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態のヒンジ構造により支持されたラッゲージドアを備えた車両を後方から見た斜視図である。
また、図2は、本発明の実施形態のヒンジ構造の断面を示した模式図である。
また、図3は、図2に示したヒンジ構造のヒンジアームを拡大して示した模式図である。また、図4は、図3に示したヒンジアームのA-A断面図である。
なお、本実施形態は、ラッゲージドアを支持するヒンジ構造に特徴があり、当該ヒンジ構造以外の構成(車両を構成するラッゲージドア、車体ボディの構造等)は、従来技術のものと同じである。
そのため、図1〜図4では、従来技術と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を簡略化する。
また、本実施形態では、一対のヒンジ構造によりラッゲージドアを支持しているが、一対のヒンジ構造は、どちらも同じ構成であるため、図2〜図4では、一対のうちの一方だけを代表して示している。
【0018】
図1に示すように、車両Zの後部に位置するラッゲージドア1は、車両後方の左右両側において、一対のヒンジアーム10により車両ボディに開閉自在に支持されている。
また、一対のヒンジアーム10は、それぞれ、一端部が車両ボディ(サイドパネルの車室側)に固定され、他端部がラッゲージドア1の裏面側(トランクルーム側)に固定されている。
【0019】
具体的には、図2に示すように、ラッゲージドア1を回動自在に支持する一対のヒンジ構造は、それぞれ、ヒンジアーム10と、ヒンジアーム10を車両Zに取り付ける固定部品(ボルト20、サポートブラケット30、ボルト31等)とを備えている。
また、ヒンジアーム10は、第1アーム11、第2アーム12、およびコイルスプリング(弾性体)13を有している。
なお、ヒンジアーム10は、どのような材質により形成されていてもよいが、例えば、金属(鉄やステンレス等)により形成されている。
【0020】
また、第1アーム11は、先端11aに開口11a1を有し、後端側に底部11bが形成された中空筒状(チューブ状)になされ、且つ軸心が円弧状に湾曲した形状になされている(車両Zの下方に円弧凸状に湾曲した形状になされている)。
なお、第1アーム11は、先端11aがトランクルーム3の開口部3aの前方側の開口縁近傍(具体的な固定位置は後述する)に固定されている。また、第1アーム11は、後端側が車両Zのサイドパネル(車両ボディを構成するサイドパネル)に固定されている。
また、コイルスプリング13は、第1アームの筒内に内蔵(収納)され、一端部が底部11bにより支持され、他端部が第2アーム12の後端部12bに当接している。
【0021】
また、第2アーム12は、第1アーム11の筒内に摺動自在に挿入できる形状になされた、円弧状に湾曲した棒状(車両Zの下方に円弧凸状に湾曲した形状になされている)に形成されている。
そして、第2アーム12は、その先端部12aがラッゲージドア1の裏面側に取り付けられ、ラッゲージドア1を支持している。
【0022】
また、第2アーム12は、その後端部12bが第1アーム11の開口11a1から第1アーム11の筒内に摺動自在に挿入され、当該筒内に出し入れ自在に収納される。
また、第2アーム12は、第1アーム11の筒内で第1アーム11の軸心方向を移動可能になされ、且つ筒内に収納されたコイルスプリング13の他端部に当接し、コイルスプリング13により軸心方向(Y1方向)に付勢される(すなわち、第2アーム12の後端部12bがコイルスプリング13により第1アーム11の開口11a1に向けて付勢される)。
【0023】
つぎに、ヒンジアーム10の詳細な構成、およびヒンジアーム10の取付位置について説明する。
第1アーム11は、先端11aに形成された開口11a1が中空の筒内と連通し、且つその先端11aの外周縁にフランジ部11a2が形成されている。また、第1アーム11は、その後端側(底部11bの外側)に略板状のボルト固定部15が形成されている。
【0024】
そして、第1アーム11は、先端11aのフランジ部11a2が、車両Zの骨格を構成するアッパバックリンフォース(アッパバックRF)6に接合されたトルーフパネル5に、ボルト20により固着されている。また、第1アーム11は、後端側のボルト固定部15が、ボルト21により、車体のサイドパネル(図示せず)に固着される。
【0025】
より具体的には、第1アーム11は、その先端11aの開口11a1が、トルーフパネル5の貫通孔5aに重ねられ、且つ先端部11aに形成されたフランジ部11a2の上面がトルーフパネル5の貫通孔5aの周縁に当接された状態で、ボルト20によりトルーフパネル5に固定されている。
このようにトルーフパネル5に第1アーム11を固定することにより、トルーフパネル5の貫通孔5aから、第1アーム11の先端11aの開口11a1を通って、第1アーム11の筒内の底部11bまで至る空間が貫通する。
なお、ボルト固定部15が固着されるサイドパネル(図示せず)の位置について特に限定されるものではないが、例えば、ボルト固定部15が、サイドパネルのうち、トランクルーム3の開口部3aよりも上方(車両の上方)であって、且つトランクルーム3よりも車両の前方側の位置に固着される。
【0026】
また、第1アーム11の先端側と、トルーフパネル5の貫通孔5aとの間に形成された隙間からトランクルーム3内に水が侵入することを防止するため、第1アーム11の先端11aと、トルーフパネル5の貫通孔5aとの間に、当該隙間を塞ぐシールゴム(図示せず)が取り付けられている。
【0027】
また、第2アーム12は、その先端部12aが、サポートブラケット30およびボルト31により、ラッゲージドア1の裏面に固着されている。
また、第2アーム12は、その後端部12bが、トルーフパネル5の貫通孔5aを通って(挿通して)、トルーフパネル5aの裏面に固定されている第1アーム11の筒内に挿入されている。これにより、第2アーム12は、第1アームの筒内に出し入れ自在に収納される。
【0028】
そして、第2アーム12の後端部12bは、第1アーム11の筒内において、当該筒内の底部11bで支持されているコイルスプリング13の他端部に当接し、コイルスプリング13により弾性的に支持される。
この構成により、第2アーム12は、コイルスプリング13からの弾性力により、ラッゲージドア1を開き方向(矢印Y1方向)に付勢するようになされ、これにより、ユーザのラッゲージドア1の操作力が軽減される。
【0029】
また、図3および図4に示すように、本実施形態のヒンジ構造は、第1アーム11の外周側面に、第1アーム11の軸心と平行する方向に延びる長孔状のガイド溝11cが開口している(第1アーム11には、第1アーム11の先端11aの近傍から、底部11bの近傍まで延びるガイド溝11cが形成されている)。すなわち、第1アーム11の外周側面には、第1アームの軸心と同様の円弧状のガイド溝11cが形成されている。
【0030】
また、第2アーム12の後端部12b側の外周側面には、凸状に突出するガイドピン12cが設けられている。
そして、第2アームのガイドピン12cが、第1アーム11のガイド溝11cに摺動自在に嵌合されている。
これにより、第1アーム11の筒内に挿入された第2アーム12が、第1アーム11の筒内で回転することが防止される。また、第1アーム11の筒内に挿入された第2アーム12が、第1アーム11から外れることが防止される。
【0031】
次に、本実施形態のヒンジ構造の動作を説明する。
先ず、ラッゲージドア1が閉められた状態において、ユーザからラッゲージドア1に開き方向(Y1方向)の荷重が加えられたとする。
この場合、ラゲージドア1を支持した第2アームが、第1アームの筒内で円弧状の軸心に沿って前記開き方向(Y1方向)に移動し、当該筒内から引き出され、これによりラッゲージドア1が開かれる。
また、第2アーム12は、前記筒内から引き出されている際、コイルスプリング13により、前記開き方向(矢印Y1方向)に向けて付勢される。
すなわち、コイルスプリング13が、ラッゲージドア1を支持する第2アームを介して、ラッゲージドア1を付勢するため、ユーザのドアの開閉操作の負担が軽減される。
【0032】
また、ラッゲージドア1が開いている状態において、ユーザからラッゲージドア1に閉じ方向(Y2方向)の荷重が加えられたとする。
この場合、ラッゲージドア1を支持した第2アームが、第1アームの筒内で円弧状の軸心に沿って前記閉じ方向(Y2方向)に移動し、当該筒内に押し込まれ、これによりラッゲージドア1が閉められる。
そして、第2アーム12は、前記筒内に押し込まれている際には、コイルスプリング13からの弾性力を受けるため、コイルスプリング13が緩衝材としての機能を果たす。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のヒンジ構造によれば、ユーザは、ラッケージドア1に開き方向(又は閉じ方向)の荷重を加えることにより、ラッゲージドア1を支持した第2アーム12を第1アーム11の筒内で円弧状の軸心(第1アーム11の軸心)に沿って動作させ、該筒内から第2アームを引き出す(又は押し込む)ことができる。これにより、ラッゲージドア1を開ける(又は閉める)ことができる。
すなわち、本実施形態によれば、ヒンジアーム10の円弧状の運動軌跡により、ラッゲージドア1を開閉させることができるため、従来技術のヒンジ構造(ヒンジ回転中心の円運動)と比べて、ヒンジアーム10の運動軌跡を小さくなすことができる。
【0034】
具体的には、本実施形態のヒンジアーム10の運動軌跡は、図2に示すように、車体ボディ等の構造体(アッパバックRF6)上に設けたヒンジ回転中心(仮想的回転中心C)の円運動(半径rの円運動)による運動軌跡と同様のものとなる。
なお、上述した従来技術のヒンジ構造において、アッパバックRF6等の構造体に、ヒンジの回転中心を設けることは困難である。
【0035】
このように、本実施形態によれば、上述した従来技術では困難であった部位(構造体)にヒンジの回転中心を設けた場合と同様のヒンジアームの運動軌跡で、ラッゲージドア1の開閉動作をさせることができる。
これにより、上述した従来技術のように、車体構造物を避けた形状にヒンジアームを形成する必要がなくなりヒンジアームを小型化することができる(トランクルーム3のスペースを拡大させることができる)。
【0036】
また、本実施形態では、第1アーム11の筒内にコイルスプリング13を収納することで、ヒンジアーム10と別体で構成された部品(ダンパステーやトーションバー)を設けることなく、ユーザが行うラッゲージドア1の開閉操作の負担を軽減させている。すなわち、本実施形態のヒンジ構造によれば、上述した従来技術のものと比べて、部品点数が削減される。
なお、本実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなくその要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、ヒンジアーム10を構成する第1アーム11の筒内にコイルスプリング13を収納するようにしているが、コイルスプリング13は弾性体の一例であり、とくにこれに限定されるものではない。弾性体は、第1アーム11の筒内に収納可能に構成され、且つ第2アーム12を付勢することができるものであればどのようなものでもよい。
また、本実施形態のヒンジ構造は、車両のラッゲージドア以外のドアの開閉構造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態のヒンジ構造により支持されたラッゲージドアを備えた車両を後方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のヒンジ構造の断面を示した模式図である。
【図3】図2に示したヒンジ構造のヒンジアームを拡大して示した模式図である。
【図4】図3に示したヒンジアームのA-A断面図である。
【図5】従来技術のヒンジ構造により支持されたラッゲージドアを備えた車両を後方から見た斜視図である。
【図6】従来技術によるラッゲージドアを支持するヒンジ構造の断面を示した模式図である。
【符号の説明】
【0039】
Z 車両
1 ラッゲージドア
2 バックウィンドウガラス
3 トランクルーム
4 バックパネル
5 トルーフパネル
5a 貫通孔(トルーフパネル)
6 アッパバックリンフォース
7 シールゴム
10 ヒンジアーム
11 第1アーム
11a 先端11a(第1アーム)
11a1 開口(第1アーム)
11a2 フランジ部(第1アーム)
11b 底部(第1アーム)
11c ガイド溝(第1アーム)
12 第2アーム
12a 先端部(第2アーム)
12b 後端部(第2アーム)
12c ガイドピン(第2アーム)
13 コイルスプリング(弾性体)
15 ボルト固定部
20 ボルト
21 ボルト
30 ブラケット
31 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトランクルームのラッゲージドアを回動自在に支持するヒンジ構造であって、
先端に開口が形成され、後端が底部で塞がれた中空筒状に形成され、且つ軸心が円弧状に湾曲している第1アームと、
前記第1アームの筒内に収納され、その一端部が前記底部に支持された弾性体と、
円弧状に湾曲した棒状になされ、その先端部でラッゲージドアを支持し、その後端部が前記第1アームの開口から該第1アームの筒内に摺動自在に挿入され、該筒内に出し入れ自在に収納される第2アームとを備え、
前記第1アームは、前記先端が前記トランクルームの前方側の開口縁近傍に固定され、前記後端が車両のサイドパネルに固定され、
前記第2アームは、前記後端部が前記第1アームの筒内に収納された弾性体の他端部に当接し、該後端部が該弾性体により前記第1アームの開口に向けて付勢されることを特徴とするヒンジ構造。
【請求項2】
前記第1アームの外周側面には、軸心方向と平行する方向に延びる長孔状のガイド溝が形成され、
前記第2アームの後端部側の外周側面には、凸状に突出するガイドピンが形成され、
前記第2アームのガイドピンが、前記第1アームのガイド溝に摺動自在に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120598(P2010−120598A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298401(P2008−298401)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】