説明

ヒータユニット、ファンフィルタユニット及び基板処理装置

【課題】ヒータユニットを通過する空気を均一に効率良く加熱し、さらに、ヒータユニットの周囲に配置される部品に対するヒータユニットからの熱伝達を抑制する。
【解決手段】ヒータユニット15は、線状の発熱体26を平面状に引き回して形成された平面状ヒータ22と、熱伝導性の高い材料で網状に形成され、平面状ヒータ22の少なくとも片面側にこの平面状ヒータ22に対向させて配置された第1網状体23と、第1網状体23より熱伝導性の低い材料で網状に形成され、第1網状体23における平面状ヒータ22に対向した面の反対側の面に対向させて配置された第2網状体24、25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータユニット、このヒータユニットを用いたファンフィルタユニット、このファンフィルタユニットを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや液晶基板等の基板処理工程では、基板処理時の不良発生防止のために基板処理装置内の塵を抑えた環境で基板処理を行う必要がある。基板処理装置内の塵の抑制は、フィルタを用いて塵を捕集した清浄な空気を基板処理装置内に供給することにより行われている。
【0003】
また、基板処理工程では、処理環境の温度を上げることにより処理反応を活発化させて処理速度を速くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0004】
このため、温風を発生させる温風発生装置を基板処理装置と別個に設け、温風発生装置で発生させた温風を基板処理装置内に供給するとともに、基板処理装置内に供給される温風中の塵をフィルタを用いて捕集している。なお、温風発生装置は、筐体と、筐体内に収納されたヒータと、筐体内に空気を送るファンとを備え、温風発生装置と基板処理装置との間に送風ダクトが接続されている。送風ダクトの基板処理装置の入口部分には、塵を捕集するフィルタが設けられている。
【0005】
一方、温風発生装置と基板処理装置とを別個に設けることなく、基板処理装置内に清浄な温風を供給するようにした装置としては、下記特許文献1に記載されているように、ファンとヒータとフィルタとを備えたファンフィルタユニットを基板処理装置の上部に設置したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、温風発生装置と基板処理装置とを別個に設け、温風発生装置で発生させた温風を送風ダクトを介して基板処理装置内に供給する方式は、温風発生装置を設置するスペースが必要であり、基板処理装置と温風発生装置とを含む装置全体の設置スペースが大きくなる。
【0008】
また、温風発生装置に接続された基板処理装置が複数ある場合には、温風発生装置と各基板処理装置とを接続する送風ダクトの長さが各基板処理装置ごとに異なる場合があり、送風ダクトの長さが異なることにより各基板処理装置に供給される温風の温度がばらつきを生じやすい。各基板処理装置に供給される温風の温度がばらつきを生じると、各基板処理装置内で処理される半導体ウエハ等の品質がばらつきを生じる。
【0009】
特許文献1に記載されたように、ヒータを含むファンフィルタユニットを使用した場合には、ヒータの熱がフィルタに伝わり易い。フィルタの耐熱温度は60℃程度であるので、ヒータからの熱がフィルタに伝わることによりフィルタが変形等して劣化し、塵の捕集性能が低下する。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒータユニットを通過する空気を均一に効率良く加熱することができるとともにヒータユニットの周囲に配置される部品に対するヒータからの熱伝達を抑制することができるヒータユニット、このヒータユニットを用いたファンフィルタユニット、このファンフィルタユニットを用いた基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る第1の特徴は、ヒータユニットにおいて、線状の発熱体を平面状に引き回して形成された平面状ヒータと、熱伝導性の高い材料で網状に形成され、平面状ヒータの少なくとも片面側にこの平面状ヒータに対向させて配置された第1網状体と、第1網状体より熱伝導性の低い材料で網状に形成され、第1網状体における平面状ヒータに対向した面の反対側の面に対向させて配置された第2網状体と、を備えることである。
【0012】
本発明の実施形態に係る第2の特徴は、ファンフィルタユニットにおいて、空気を送風するファンを有するファンユニットと、送風される空気中の塵を捕集するフィルタを有するフィルタユニットと、第1網状体と第2網状体とが設けられている側の面をフィルタユニットに対向させてファンユニットとフィルタユニットとの間に配置された第1の特徴に係るヒータユニットと、を備えることである。
【0013】
本発明の実施形態に係る第3の特徴は、基板処理装置において、内部に基板処理のための機構が設けられた筐体と、この筐体に取付けられて筐体内に空気を供給する第2の特徴に係るファンフィルタユニットと、を備えることである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒータユニットを通過する空気を均一に効率良く加熱することができ、さらに、ヒータユニットの周囲に配置される部品に対するヒータユニットからの熱伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】ファンフィルタユニットを示す分解斜視図である。
【図3】ヒータユニットを示す分解斜視図である。
【図4】ヒータユニットの一部を示す断面図である。
【図5】(a)はシーズヒータを示す縦断側面図、(b)はシーズヒータを示す縦断正面図である。
【図6】ヒータユニットの電気的接続構造を示す模式図である。
【図7】ファンヒータユニットの電気的接続構造を示す模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るファンフィルタユニットを示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るファンフィルタユニットを示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る平面状ヒータを示す平面図である。
【図11】本発明のその他の実施形態に係る平面状ヒータの引き回し構成を示す平面図である。
【図12】本発明のその他の実施形態に係る平面状ヒータの引き回し構成を示す平面図である。
【図13】本発明のその他の実施形態に係るリボンヒータを用いた平面状ヒータを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1について、図1ないし図7に基づいて説明する。
【0017】
基板処理装置1は図1に示すように、内部に基板処理のための機構が設けられた筐体である処理ボックス2と、処理ボックス2内に設けられたカップ3と、カップ3内に設けられて基板Wを水平状態で保持する保持テーブル4と、保持テーブル4を水平面内で回転させる回転機構5と、保持テーブル4上の基板Wに対して上方から処理液を供給する供給ノズル6と、供給ノズル6を基板Wの表面に沿って水平方向に移動させる移動機構7と、処理ボックス2の天井部に設けられたファンフィルタユニット8とを備えている。回転機構5は保持テーブル4を回転させるモータ9を備え、移動機構7は供給ノズル6を水平方向に移動させるモータ10を備えている。供給ノズル6には配管11、12の一端側が接続され、一方の配管11の他端側は処理液を供給する処理液供給部(図示せず)に接続され、他方の配管12の他端側は気体を供給する気体供給部(図示せず)に接続されている。カップ3は、回転する基板W上から飛散する処理液を受け取る働きをする。
【0018】
ファンフィルタユニット8は図2に示すように、ファンユニット13と、フィルタユニット14と、これらのファンユニット13とフィルタユニット14との間に配置されたヒータユニット15とを備えている。
【0019】
ファンユニット13はケース16を有し、このケース16内にファンであるプロペラファン17が収容されている。また、ケース16はヒータユニット15とフィルタユニット14との外周部を覆う位置まで延出している。
【0020】
フィルタユニット14はフィルタ保持枠18を有し、このフィルタ保持枠18内に蛇腹状に折り畳まれたフィルタ19が保持されている。
【0021】
ヒータユニット15は、ヒータ枠20とヒータ枠蓋21とを有し、これらのヒータ枠20とヒータ枠蓋21とによってヒータユニット15の構成部品が保持されている。
【0022】
ヒータ枠20とヒータ枠蓋21とによって保持されるヒータユニット15の構成部品としては、図3及び図4に示すように、平面状ヒータ22と、熱伝導性の高い材料であるアルミニウムで網状に形成された第1網状体である一対のアルミニウム製網23と、熱伝導率がアルミニウムより約1/10と低いステンレスを材料として網状に形成された1つ目の第2網状体である一対のステンレス製網24と、熱伝導率がアルミニウムより約1/200と低いガラス繊維を材料として網状に形成された2つ目の第2網状体であるガラス繊維製網25とが含まれている。
【0023】
平面状ヒータ22は、線状の発熱体、例えば、シーズヒータ26を隣り合って位置する部分の間隔が一定となるように渦巻状に引き回すことにより平面状に形成されている。なお、シーズヒータ26は図5に示すように、ステンレス等の金属製のパイプ27内に発熱線28を通し、パイプ27と発熱線28との間に絶縁物29を充填することにより形成されている。図3に戻って、平面状ヒータ22の両端には通電用引き出し線30の一端側が接続され、平面状ヒータ22の表面には平面状ヒータ22の温度を測定する第1温度測定部であるヒータ温度測定用熱電対31が取付けられている。
【0024】
一対のアルミニウム製網23は、平面状ヒータ22を両面側から挟む位置に配置され、アルミニウム製網23の一方の面は平面状ヒータ22に対して複数個所で点接触している(図4参照)。アルミニウム製網23の表面には、このアルミニウム製網23の温度を測
定する第2温度測定部である網温度測定用熱電対32が取付けられている。また、アルミニウム製網23の外周側の一部には切欠部33が形成され、この切欠部33内にはサーモスタット34が配置されている。
【0025】
一対のステンレス製網24は、アルミニウム製網23における平面状ヒータ22に接触した面の反対側の面に対向させて、平面状ヒータ22と一対のアルミニウム製網23とを挟む位置に配置されている。このステンレス製網24には、サーモスタット34における熱伝導性の高い部分である感熱面34aが当接され、ステンレス製網24の温度上昇がサーモスタット34により監視されている。
【0026】
一対のガラス繊維製網25は、ステンレス製網24におけるアルミニウム製網23に対向した面の反対側の面に対向させて、平面状ヒータ22と一対のアルミニウム製網23と一対のステンレス製網24とを挟む位置に配置されている。
【0027】
これらのアルミニウム製網23とステンレス製網24とガラス繊維製網25との周縁部は、図4に示すようにヒータ枠20とヒータ枠蓋21により挟まれ、ヒータ枠20とヒータ枠蓋21とは複数の固定ネジ35により固定されている。さらに、アルミニウム製網23とステンレス製網24とガラス繊維製網25との網目部分には固定ネジ36が挿通され、固定ネジ36の先端部にはナット37が螺合されて、これらの網23〜25が締付け固定されている。
【0028】
アルミニウム製網23とガラス繊維製網25とは可撓性を有する剛性の低い網であり、これに対して、ステンレス製網24は剛性の高い網である。これらのアルミニウム製網23とステンレス製網24とガラス繊維製網25とを積層して固定ネジ35、36を用いて固定することにより、ステンレス製網24が補強部材として機能し、アルミニウム製網23とガラス繊維製網25との撓みが防止される。
【0029】
つぎに、ヒータユニット15の電気的接続構造を図6に基づいて説明する。
【0030】
一端側を平面状ヒータ22の両端に接続された通電用引き出し線30の他端側は、平面状ヒータ22への通電状態を制御する温度制御部であるヒータ制御ユニット38に接続されている。また、このヒータ制御ユニット38には、平面状ヒータ22の温度を測定するヒータ温度測定用熱電対31が接続されている。そして、ヒータ制御ユニット38は、ヒータ温度測定用熱電対31の測定値が設定値となるように平面状ヒータ22への通電状態を制御している。
【0031】
アルミニウム製網23の温度を測定する網温度測定用熱電対32は、ファンフィルタユニット8の全体を制御するメインコントローラ39に接続されている。このメインコントローラ39には、ヒータ制御ユニット38と報知部40とが接続されている。報知部40は、網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以上となった場合に、警報を発報する。また、メインコントローラ39内には通電遮断部41が設けられ、この通電遮断部41は、網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以上となった場合に、平面状ヒータ22に対する通電を遮断する信号をヒータ制御ユニット38に対して出力する。
【0032】
サーモスタット34は、ヒータ制御ユニット38に接続されている。サーモスタット34の内部には電気接点(図示せず)が設けられており、この電気接点はステンレス製網24の温度の測定値が設定値以上となった場合にオフとなる。サーモスタット34の電気接点がオフとなることにより、平面状ヒータ22への通電が遮断される。
【0033】
つぎに、ヒータユニット15を含むファンフィルタユニット8の電気的接続構造を図7
に基づいて説明する。なお、図6において説明した部分は省略する。
【0034】
ファンユニット13には、プロペラファン17の回転を制御するファンコントローラ42が設けられ、ファンコントローラ42はメインコントローラ39に接続されている。ファンコントローラ42からメインコントローラ39に対してはプロペラファン17の回転状態を通知する信号、例えば、プロペラファン17の回転停止等の異常信号が出力される。メインコントローラ39からファンコントローラ42に対してはプロペラファン17による風量を制御する信号、例えば、平面状ヒータ22への通電が遮断された場合に、その遮断から一定時間経過後又は網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以下に低下した後にプロペラファン17の回転を停止させる信号が出力される。
【0035】
このような構成において、基板処理装置1の処理ボックス2内では、保持テーブル4上の基板Wに対して供給ノズル6から処理液が供給され、基板処理が行われる。この処理ボックス2内には、ファンフィルタユニット8により清浄化されて加熱された空気が供給される。このため、処理ボックス2内が塵のない環境となり、空気中の塵が原因となる基板処理時の不良発生が防止される。さらに、処理ボックス2内に供給される空気が加熱されることにより、処理ボックス2内での基板処理が促進され、生産性が向上する。
【0036】
つぎに、処理ボックス2内に供給される空気の加熱について説明する。基板処理時には、平面状ヒータ22とプロペラファン17とに通電される。平面状ヒータ22に通電されることにより平面状ヒータ22が発熱し、この熱は、平面状ヒータ22に接触して配置されている熱伝導性の高いアルミニウムで形成されたアルミニウム製網23に熱伝導され、平面状ヒータ22とアルミニウム製網23との温度が上昇する。一方、プロペラファン17への通電によりプロペラファン17が回転し、プロペラファン17の回転に伴って空気が平面状ヒータ22とアルミニウム製網23とに向けて送風される。送風された空気は平面状ヒータ22とアルミニウム製網23とを通過する際に加熱され、加熱された空気はフィルタ19を通過して処理ボックス2内に供給される。
【0037】
ここで、平面状ヒータ22は線状のシーズヒータ26を渦巻状に引き回して平面状に形成され、この平面状ヒータ22に熱伝導性の高いアルミニウム製網23が接触し、アルミニウム製網23がヒータユニット15内の全域で均一に加熱される。このため、ヒータユニット15を通過する空気がアルミニウム製網23からの熱によりヒータユニット15内の領域の全域で略均一に加熱され、フィルタ19を通過して処理ボックス2内に供給された空気の温度が処理ボックス2内の各部で均一になる。これにより、処理ボックス2内での基板処理性能を安定させることができ、処理される基板Wの品質を安定化させることができる。
【0038】
なお、平面状ヒータ22の熱は熱伝導性の高いアルミニウム製網23に対して良好に伝わるため、平面状ヒータ22の発熱状態にムラがある場合でも、アルミニウム製網23は均一に加熱されるので、ヒータユニット15を通過する空気を均一に加熱することができる。
【0039】
また、ヒータユニット15においては、平面状ヒータ22と、一対のアルミニウム製網23とが高温になり、ヒータユニット15を通過する空気は平面状ヒータ22と一対のアルミニウム製網23とにより3回加熱されることになる。このため、平面状ヒータ22の発熱温度を抑えた場合でもヒータユニット15を通過する空気の加熱を促進することができ、平面状ヒータ22への通電量を下げて省エネを図ることができるとともに、ヒータユニット15を通過する空気を効率良く加熱することができる。
【0040】
一方、平面状ヒータ22と一対のアルミニウム製網23とを挟む位置にはステンレス製
網24が配置されており、このステンレス製網24は熱伝導率がアルミニウムの約1/10と低いステンレスで形成されている。このため、アルミニウム製網23とステンレス製網24とが接触している場合でも、アルミニウム製網23からステンレス製網24への熱伝導が抑制される。さらに、一対のステンレス製網24を挟んだ位置にはガラス繊維製網25が配置されており、このガラス繊維製網25は熱伝導率がアルミニウムの約1/200と低いガラス繊維で形成されている。したがって、これらのステンレス製網24とガラス繊維製網25とが設けられていることにより、平面状ヒータ22で発生した熱がヒータユニット15の周囲に配置される部品であるフィルタ19に熱伝達されることを抑制することができ、フィルタ19が加熱されて変形すること等により劣化して塵の捕集性能が低下するという事態の発生を防止することができる。
【0041】
なお、ヒータユニット15は、線状のシーズヒータ26を渦巻状に引き回した平面状ヒータ22と、網状の部材であるアルミニウム製網23、ステンレス製網24、ガラス繊維製網25とが設けられている構造であるため、プロペラファン17により送風された空気に対する抵抗を小さく抑えることができ、プロペラファン17により送風された空気はヒータユニット15内をスムーズに通過する。このため、送風される空気がヒータユニット15内で局部的に滞留し、その滞留によってヒータユニット15内の空気が部分的に高温になるという事態や、処理ボックス2内の温度が局所的に高くなって処理ボックス2内での基板処理性能が不安定になるという事態の発生を防止することができる。
【0042】
つぎに、ヒータユニット15における温度制御について説明する。平面状ヒータ22の表面には、この平面状ヒータ22の温度を測定するヒータ温度測定用熱電対31が取付けられ、このヒータ温度測定用熱電対31はヒータ制御ユニット38に接続されている。そして、ヒータ制御ユニット38は、ヒータ温度測定用熱電対31の測定値が設定値となるように平面状ヒータ22への通電を制御している。このため、平面状ヒータ22の温度が設定値に維持され、処理ボックス2内に供給される空気の温度を設定値に維持することができる。
【0043】
また、アルミニウム製網23の表面には、このアルミニウム製網23の温度を測定する網温度測定用熱電対32が取付けられ、この網温度測定用熱電対32はメインコントローラ39に接続されている。そして、このメインコントローラ39には、網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以上となった場合に警報を発報する報知部40が接続されている。このため、基板処理作業の作業員は報知部40から発報された警報によりアルミニウム製網23の温度が設定値以上に上昇したことを知ることができ、必要な対策を講じることができる。さらに、網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以上となった場合には、メインコントローラ39の通電遮断部41からヒータ制御ユニット38に対し、平面状ヒータ22への通電を遮断する信号が出力され、平面状ヒータ22への通電が遮断される。これにより、アルミニウム製網23の温度が設定値以上に上昇した状態のまま基板処理作業を継続するという事態の発生を防止することができる。
【0044】
また、ステンレス製網24の温度を測定するサーモスタット34が設けられ、ステンレス製網24の温度が設定値以上となった場合にサーモスタット34内の電気接点がオフとなり、電気接点がオフとなることにより平面状ヒータ22への通電が遮断される。これにより、ステンレス製網24の温度が設定値以上となった状態のまま基板処理作業を継続するという事態の発生を防止することができる。特に、このサーモスタット34が設けられていることにより、ソフト的に動作する機器がトラブルを発生したために平面状ヒータ22への通電遮断をソフト的に行えない場合でも、ステンレス製網24の温度が設定値以上に上昇した場合には平面状ヒータ22への通電を自動的に遮断することができ、基板処理装置1の安全性を高めることができる。
【0045】
なお、第1の実施形態では、平面状ヒータ22とアルミニウム製網23とを接触させて配置した場合を例に挙げて説明したが、これらを必ずしも接触させる必要はなく、平行に対向させて近接配置してもよい。平面状ヒータ22とアルミニウム製網23とを接触させなくても平行に対向させて近接配置することにより、熱伝導性の高いアルミニウム製網23は平面状ヒータ22からの熱により十分に加熱される。
【0046】
また、第1の実施形態では、第1網状部材、第2網状部材として、線状部材を編むことにより形成したアルミニウム製網23及びステンレス製網24を例に挙げて説明したが、ここでいう網状部材とはこれに限らず、平板状の部材に複数の穴を打ち抜いたものも網状部材に含まれる。
【0047】
また、第1の実施形態では、平面状ヒータ22の両面側にアルミニウム製網23とステンレス製網24とガラス繊維製網25とを配置した場合を例に挙げて説明したが、これらの網23〜25は、平面状ヒータ22の片面側であってフィルタユニット14に対向する側だけに配置してもよい。
【0048】
また、第1の実施形態では、第2網状体としてステンレス製網24とガラス繊維製網25とを設けた場合を例に挙げて説明したが、ステンレス製網24とガラス繊維製網25とのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0049】
また、第1の実施形態では、網温度測定用熱電対32の測定値が設定値以上となった場合に、警報を発する報知部40と、平面状ヒータ22への通電を遮断する信号をヒータ制御ユニット38に対して出力する通電遮断部41とを設けた場合を例に挙げて説明したが、報知部40と通電遮断部41とのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0050】
また、第1の実施形態では、ヒータ制御ユニット38とメインコントローラ39とを分
けたが、一体のコントローラであってもよい。
【0051】
また、網温度測定用熱電対32は、アルミニウム製網23の温度を測定したが、シーズヒータ26のヒータ温度測定用熱電対31とは異なる場所の表面に取付けて、シーズヒータ26の表面温度を測定してもよい。
【0052】
サーモスタット34の設置位置に関しては、第1の実施形態では、平面状ヒータ22の外周部に設置した場合を例に挙げて説明したが、このサーモスタット34の設置位置に関しては特に制約はなく、例えば、平面状ヒータ22の中央部側に設置してもよい。サーモスタット34は、そのサーモスタット34を設置した箇所の温度が設定値以上に上昇した場合に平面状ヒータ22への通電を遮断する機能を有すればよく、サーモスタット34の設置位置に応じて通電を遮断する温度を任意に設定することができる。また、複数のサーモスタットを使用して複数個所の温度上昇を検知する場合は、配線を直列配線するなどして、どれか1つのサーモスタットが通電遮断温度に到達した場合に平面状ヒータ22への通電を遮断できるような回路構成にしておくとよい。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るファンフィルタユニット51を、図8に基づいて説明する。なお、第2の実施形態及び以下に説明する他の実施形態においては、先行して説明した実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0053】
第2の実施形態に係るファンフィルタユニット51の基本的構成は図2及び図7に示したファンフィルタユニット8と同じであり、ファンユニット52とフィルタユニット14とヒータユニット15とを備えている。
【0054】
第2の実施形態のファンユニット52と第1の実施形態のファンユニット13との異なる点は、使用されるファンがプロペラファン17に代えてシロッコファン53である点と、シロッコファン53により送風される空気の送風方向に沿ったヒータユニット15の上流側に、ヒータユニット15を通過する空気の流速と風向きとを均一化する整流体として整流板54が設けられている点である。整流板54は、平板55に複数の穴56をあけることにより形成されている。
【0055】
このような構成において、シロッコファン53が駆動されることによりケース16外の空気がシロッコファン53内に吸込まれ、吸込まれた空気がシロッコファン53の外周部に形成されている開口部57から吹出す。開口部57から吹出した空気は、シロッコファン53のケース16と整流板54とで仕切られた空間内に一旦貯留されて圧力が上昇し、穴56を通過してヒータユニット15側に吹出す。穴56から吹出した空気は流速と風向きとが均一化され、ヒータユニット15を通過する。
【0056】
これにより、ヒータユニット15を通過する空気が均一に加熱され、及び、フィルタ19の通過状態も均一になる。そして、フィルタ19を通過した空気が供給される処理ボックス2内の温度が処理ボックス2内の各部で均一になり、処理ボックス2内での基板処理性能を安定させることができ、処理される基板Wの品質を安定化させることができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るファンフィルタユニット61を、図9に基づいて説明する。
【0057】
第3の実施形態に係るファンフィルタユニット61の基本的構成は図8に示したファンフィルタユニット51と同じであり、ファンユニット62とフィルタユニット14とヒータユニット15とを備えている。ファンユニット62とファンユニット52との異なる点は、ファンユニット52では整流体として整流板54を設けたのに対し、ファンユニット62では整流体としてプロペラファン63を設けた点である。プロペラファン63は、シロッコファン53の中心側であってシロッコファン53とヒータユニット15との間に配置され、プロペラファン63とシロッコファン53とはモータ64を共有している。
【0058】
このような構成において、シロッコファン53が駆動されることによりヒータユニット15側に送風される空気は、シロッコファン53の中心側において少なくなる。流速が小さくなることにより、ヒータユニット15で加熱された空気がシロッコファン53の下部でよどみ、あるいはヒータユニット15から上昇してくる場合がある。そこで、シロッコファン53の中心側にプロペラファン63を設けることにより、シロッコファン53の中心側において加熱された空気をヒータユニット15側に送風し、あるいは周辺部の加熱されていない空気と攪拌する。
【0059】
これにより、ヒータユニット15を通過する空気が均一に加熱され、フィルタ19を通過した空気が供給される処理ボックス2内の温度が処理ボックス2内の各部で均一になり、処理ボックス2内での基板処理性能を安定させることができ、処理される基板Wの品質を安定化させることができる。
【0060】
なお、整流体としては、第2の実施形態で説明した整流板54と、第3の実施形態で説明したプロペラファン63との両方を設けてもよい。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るヒータユニット71を図10に基づいて説明する。ヒータユニット71の基本的構造は図6に示したヒータユニット15と同じである。ヒータユニット71とヒータユニット15との異なる点は、ヒータユニット15がシーズヒータ26を渦巻状に引き回して平面状に形成した平面状ヒータ22を有するのに対し、ヒータユ
ニット71はシーズヒータ26を往復折返し状に引き回して平面状に形成した平面状ヒータ72を有する点である。
【0061】
平面状ヒータ72は、パイプ27(図5参照)における隣り合って位置する部分同士の間隔が略一定となるように引き回されている。
【0062】
このような構成において、平面状ヒータ72は線状のシーズヒータ26を往復折返し状に引き回して平面状に形成されている。このため、ヒータユニット71を通過する空気がヒータユニット71内の領域の全体で略均一に加熱され、フィルタ19(図7参照)を通過して処理ボックス2(図1参照)内に供給される空気の温度を処理ボックス2内で均一にすることができる。これにより、処理ボックス2内での基板処理性能を安定させることができ、処理される基板Wの品質を安定化させることができる。
(その他の実施形態)
本発明のその他の実施形態について、図11ないし図13に基づいて説明する。
図11は、シーズヒータ26(図5参照)を渦巻状に引き回して平面状に形成した平面状ヒータ81の一形態であり、図12は、シーズヒータ26を往復折返し状に引き回して平面状に形成した平面状ヒータ82の一形態である。図11に示した平面状ヒータ81及び図12に示した平面状ヒータ82では、シーズヒータ26を二つに折返した状態で引き回しを行っており、一対の通電用引き出し線30が近接して位置するため、通電用引き出し線30の配線処理を簡単化することができる。図13は、線状の発熱体としてリボンヒータ83を用い、リボンヒータ83を折返し状に引き回すことにより平面状ヒータ84を形成している。
【0063】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ヒータユニットが線状の発熱体を平面状に引き回して形成された平面状ヒータと、熱伝導性の高い材料で網状に形成されて平面状ヒータの少なくとも片面側に接触させて配置された第1網状体と、第1網状体より熱伝導性の低い材料で網状に形成されて第1網状体の平面状ヒータに対向する面の反対側の面に対向させて配置された第2網状体とを有するので、ヒータユニット内を通過する空気を平面状ヒータと第1網状体とにより均一に及び効率良く加熱することができる。さらに、第2網状体によりヒータユニットからの熱がヒータユニットの周囲に配置される部品、例えば、フィルタユニット内のフィルタに熱伝達されることを抑制することができ、ヒータユニットの周囲に配置される部品がヒータユニットからの熱の影響を受けて不具合を生じるということを防止することができる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 基板処理装置
2 処理ボックス(筐体)
8 ファンフィルタユニット
3 平面状ヒータ
13 ファンユニット
14 フィルタユニット
15 ヒータユニット
17 プロペラファン(ファン)
19 フィルタ
22 平面状ヒータ
23 アルミニウム製網(第1網状体)
24 ステンレス製網(第2網状体)
25 ガラス繊維製網(第2網状体)
26 シーズヒータ(線状の発熱体)
31 ヒータ温度測定用熱電対(第1温度測定部)
32 網温度測定用熱電対(第2温度測定部)
34 サーモスタット
38 制御ユニット(温度制御部)
40 報知部
41 通電遮断部
51 ファンフィルタユニット
52 ファンユニット
53 シロッコファン(ファン)
54 整流板(整流体)
63 プロペラファン(整流体)
71 ヒータユニット
72 平面状ヒータ
81 平面状ヒータ
82 平面状ヒータ
83 リボンヒータ(線状の発熱体)
84 平面状ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の発熱体を平面状に引き回して形成された平面状ヒータと、
熱伝導性の高い材料で網状に形成され、前記平面状ヒータの少なくとも片面側にこの平面状ヒータに対向させて配置された第1網状体と、
前記第1網状体より熱伝導性の低い材料で網状に形成され、前記第1網状体における前記平面状ヒータに対向した面の反対側の面に対向させて配置された第2網状体と、
を備えることを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
前記第1網状体はアルミニウムを材料として形成されたアルミニウム製網であり、
前記第2網状体は、ステンレスを材料として形成されて前記アルミニウム製網における前記平面状ヒータに対向した面の反対側の面に対向させて配置されたステンレス製網と、ガラス繊維を材料として形成されて前記ステンレス製網における前記アルミニウム製網に対向した面の反対側の面に対向させて配置されたガラス繊維製網とからなることを特徴とする請求項1記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記平面状ヒータの温度を測定する第1温度測定部と、
前記第1温度測定部の測定値が設定値となるように前記平面状ヒータへの通電を制御する温度制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のヒータユニット。
【請求項4】
前記第1網状体の温度を測定する第2温度測定部と、
前記第2温度測定部の測定値が設定値以上となった場合に、前記第2温度測定部の測定値が設定値以上となったことを報知する報知部と前記平面状ヒータへの通電を遮断する通電遮断部との少なくとも一方と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のヒータユニット。
【請求項5】
前記第2網状体の温度を測定し、測定値が設定値以上となった場合に前記平面状ヒータへの通電を遮断するサーモスタットを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のヒータユニット。
【請求項6】
空気を送風するファンを有するファンユニットと、送風される空気中の塵を捕集するフィルタを有するフィルタユニットと、前記第1網状体と前記第2網状体とが設けられている側の面を前記フィルタユニットに対向させて前記ファンユニットと前記フィルタユニットとの間に配置された請求項1ないし5のいずれか一項に記載のヒータユニットと、を備えることを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項7】
前記ファンにより送風される空気の送風方向に沿った前記ヒータユニットの上流側に、前記ヒータユニットを通過する空気の流速と風向きとを均一化する整流体を備えることを特徴とする請求項6記載のファンフィルタユニット。
【請求項8】
内部に基板処理のための機構が設けられた筐体と、この筐体に取付けられてこの筐体内に空気を供給する請求項6又は7記載のファンフィルタユニットと、を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−4891(P2013−4891A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137060(P2011−137060)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)