説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】スケールの堆積に起因する不具合の発生を抑えることができるヒートポンプ式給湯機を得ること。
【解決手段】断熱材27が周囲に配置されている貯湯タンク20の下部から貯湯用循環管路50の往き管に取り出した水をヒートポンプで湯に沸上げ、該湯を貯湯用循環管路の戻り管50bにより貯湯タンクの上部から該貯湯タンクに戻して貯えるヒートポンプ式給湯機を構成するにあたり、貯湯用循環管路の戻り管を、少なくとも貯湯タンクの上部側では上記の断熱材に近接させて貯湯タンクの側方に配置し、貯湯タンクの頂部よりも下方で貯湯タンク側に水平または斜め上向きに向きを変えさせて貯湯タンクの上部に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクを有するヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯タンクを有するヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク下部に貯湯用循環管路の往き管が接続され、貯湯タンク上部に貯湯用循環管路の戻り管が接続される。また、貯湯用循環管路の戻り管から貯湯タンクに戻される湯により貯湯タンク内の温度成層が乱されないように、戻り管から貯湯タンクに戻された湯の拡がり方向を制御する拡散板を設けることもある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許昭59−86847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯湯用循環管路の戻り管は、貯湯タンクの上部に接続されるので、当該戻り管の貯湯タンク側の端部は、常時、比較的高温に保たれる。このため、戻り管の貯湯タンク側の端部では、沸き上げた湯からスケールが析出し易い。戻り管内に析出したスケールの一部は湯と一緒に貯湯タンク内に流入するが、残りのスケールは戻り管内に堆積する。
【0005】
また、貯湯タンクとの接続箇所の手前で戻り管に比較的長い水平区間が設けられるため、該水平区間で特にスケールの堆積が起こり易い。また、溶存していたエアが湯の沸上げ時に気化することで発生した気泡も上記の水平区間に溜まり易く、この気泡は湯よりも高温であるため、当該水平区間ではスケールの析出が気泡により加速され易い。
【0006】
戻り管内でのスケールの堆積は湯の流通を阻害し、戻り管を閉塞させて貯湯用循環管路に湯水を流せなくなるという不具合の原因ともなる。昨今のヒートポンプ式給湯機では、ヒートポンプの動作制御の容易化やヒートポンプでの熱交換効率の向上を図る等の観点から貯湯用循環管路の往き管、戻り管が細径化してきているため、スケールの堆積をできるだけ防止することが求められている。
【0007】
戻り管におけるスケールの堆積と同様の理由から、特許文献1に記載された貯湯式給湯機で戻り管から貯湯タンクに戻された湯を上向きもしくは横向きに拡げる拡散板においても、スケールが堆積し易い。拡散板にスケールが堆積すると、戻り管から貯湯タンクに戻された湯が所望方向に拡がらなくなるため、貯湯タンク内に温度成層を形成し難くなるという不具合が生じる。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、スケールの堆積に起因する不具合の発生を抑えることができるヒートポンプ式給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のヒートポンプ式給湯機は、断熱材が周囲に配置されている貯湯タンクの下部から貯湯用循環管路の往き管に取り出した水をヒートポンプで湯に沸上げ、該湯を貯湯用循環管路の戻り管により貯湯タンクの上部から該貯湯タンクに戻して貯えるヒートポンプ式給湯機であって、貯湯用循環管路の戻り管は、少なくとも貯湯タンクの上部側では断熱材に近接して貯湯タンクの側方に配置され、貯湯タンクの頂部よりも下方で該貯湯タンク側に水平または斜め上向きに向きを変えて貯湯タンクの上部に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スケールの堆積に起因する不具合の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のヒートポンプ式給湯機の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示したヒートポンプ式給湯機での貯湯用循環管路の戻り管と貯湯タンクとの接続箇所およびその周辺を拡大して概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のヒートポンプ式給湯機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明のヒートポンプ式給湯機の一例を示す概略図である。同図に示すヒートポンプ式給湯機150は、水を湯に沸き上げて所望箇所、図示の例では浴槽170およびシャワー180に給湯する機能と、浴槽170内の浴水170aを追焚きする機能とを有するものであり、ヒートポンプユニット10と給湯機本体120と制御装置130とリモートコントローラ140とを備えている。以下、ヒートポンプ式給湯機150の各構成要素について説明する。
【0014】
ヒートポンプユニット10は、冷媒を圧縮する圧縮機と、放熱器に相当する沸上げ用熱交換器と、膨張弁と、蒸発器と、これらを環状に接続する循環配管とによって構成された冷凍サイクル部(図示せず)を有し、該冷凍サイクル部がヒートポンプとして機能する。上記の冷凍サイクル部では、二酸化炭素等の自然冷媒が圧縮機で圧縮されて高温、高圧となった後に沸上げ用熱交換器で放熱し、膨張弁で減圧され、蒸発器で吸熱してガス状態となって圧縮機に吸入される。
【0015】
一方、給湯機本体120は、貯湯タンク20、給水管路40、貯湯用循環管路50、圧力逃し弁70、タンク側循環管路80、ふろ側循環管路90、追焚き用熱交換器100、および給湯管路110等を有している。
【0016】
貯湯タンク20は、給水管路40から供給される水を貯えると共にヒートポンプユニット10で沸き上げられた湯を貯える積層式の貯湯タンクであり、その上部および下部は、それぞれ、当該貯湯タンク20の上下軸方向外側にドーム状に突出している。この貯湯タンク20の下部には給水管路40の第1給水管部40a、貯湯用循環管路50の往き管50aおよびタンク側循環管路80の戻り管80bが接続されており、上部には貯湯用循環管路50の戻り管50b、タンク側循環管路80の往き管80a、および給湯管路110が接続されている。貯湯タンク20は、給水管路40からの給水により常に満水状態に保たれる。
【0017】
貯湯タンク20内の温度成層が第1給水管部40a、戻り管50bおよび戻り管80bの各々から流入する水または湯によって乱されてしまうのを抑えるために、貯湯タンク20内には3つのバッフル部22,23,25が設けられている。バッフル部22は第1給水管部40aから流入した水の流れ方向を貯湯タンク20の最下部側に規制し、バッフル部23は貯湯用循環管路50の戻り管50bから流入した湯の流れ方向を貯湯タンク20の頂部側に規制する。また、バッフル部25はタンク側循環管路80の戻り管80bから流入した湯の流れ方向を貯湯タンク20の底部側に規制する。
【0018】
貯湯タンク20内の湯水の温度を検出するために、貯湯タンク20の周面部には複数のタンク温度センサ(図示せず)が互いに異なる取付け高さをもって取り付けられている。また、貯湯タンク20の保温性を高めて湯の温度低下を抑えるために、貯湯タンク20の周囲には該貯湯タンク20の頂部から下部にかけて断熱材27が配置されている。
【0019】
給水管路40は、市水等の水を貯湯タンク20および後述の第1、第2混合弁101a,101bに供給する管路であり、減圧弁35が設けられた第1給水管部40aと、第2給水管部40bとを有している。減圧弁35は、水道等の水源(図示せず)からの水の水圧を所定値以下に減じる。第1給水管部40aは水源と貯湯タンク20下部とを繋ぎ、第2給水管部40bは減圧弁35の下流側で第1給水管部40aから分岐して、該第1給水管部40aと第1、第2混合弁101a,101bとを繋ぐ。給水管路40での水の流れ方向を図1中に実線の矢印Aで示してある。
【0020】
貯湯用循環管路50は、貯湯タンク20の下部からヒートポンプユニット10中の沸上げ用熱交換器(図示せず)を経由して貯湯タンク20の上部に達する管路であり、貯湯用送水ポンプ43が設けられた往き管50aと、戻り管50bとを有している。上記の往き管50aは貯湯タンク20の下部と沸上げ用熱交換器とを繋ぎ、戻り管50bは沸上げ用熱交換器と貯湯タンク20の上部とを繋ぐ。貯湯タンク20内の水をヒートポンプユニット10で湯に沸き上げる沸上げ運転時の貯湯用循環管路50での湯水の流れ方向を、図1中に実線の矢印Bで示してある。
【0021】
湯の沸上げに伴う貯湯タンク20内の湯水の体積膨張による貯湯タンク20の内圧上昇を防止するため、後述する給湯管路110の端部から一次側膨張水排出管65aが分岐し、該一次側膨張水排出管65aの流出口側に圧力逃し弁70が接続されている。また、圧力逃し弁70の流出口側には二次側膨張水排出管65bが接続されている。圧力逃し弁70は、貯湯タンク20の内圧が所定値を超えたときに開弁し、体積膨張により生じた膨張水(余剰水)を貯湯タンク20から二次側膨張水排出管65bに流出させることで貯湯タンク20の内圧過上昇を防止する。
【0022】
タンク側循環管路80は、往き管80aと、タンク側送水ポンプ75が設けられた戻り管80bとを有している。往き管80aは貯湯タンク20の上部と追焚き用熱交換器100とを繋ぎ、戻り管80bは追焚き用熱交換器100と貯湯タンク20の下部とを繋ぐ。タンク側循環管路80での湯の流れ方向を図1中に実線の矢印Cで示してある。
【0023】
ふろ側循環管路90は、往き管90aと戻り管90bとを有している。往き管90aは浴槽170と追焚き用熱交換器100とを繋ぎ、戻り管90bは追焚き用熱交換器100と浴槽170とを繋ぐ。往き管90aには、浴槽170側から追焚き用熱交換器100側に向かって、フロースイッチ81、水位センサ83、ふろ側送水ポンプ85、および追焚き用温度センサ87がこの順番で設けられている。ふろ側循環管路90での浴水170aの流れ方向を図1中に実線の矢印Dで示してある。
【0024】
追焚き用熱交換器100は、タンク側循環管路80を流れる湯とふろ側循環管路90を流れる浴水170aとの間で熱交換を行って浴水170aを加熱する。
【0025】
給湯管路110は、貯湯タンク20に貯えられた湯と第2給水管部40bからの水とを電動式の第1または第2混合弁101a,101bで混合して所定温度の湯に調整し、該湯を所望の給湯先に供給する管路であり、第1混合弁101aおよび第2混合弁101bの他に第1〜第3給湯管部110a〜110cを有している。第1給湯管部110aは貯湯タンク20の上部と第1、第2混合弁101a,101bとを繋ぎ、第2給湯管部110bは第1混合弁101aとふろ側循環管路90での戻り管90bとを繋ぎ、第3給湯管部110cは第2混合弁101bとシャワー180とを繋ぐ。
【0026】
第2給湯管部110bには、第1混合弁101a側からふろ側循環管路90側に向かって、注水電磁弁103、ふろ給湯用流量センサ104、およびふろ給湯用温度センサ105がこの順番で設けられている。注水電磁弁103は第2給湯管部110bを開閉し、ふろ給湯用流量センサ104は第2給湯管部110bでの湯水の流量を検出し、ふろ給湯用温度センサ105は第2給湯管部110bでの湯水の温度を検出する。また、第3給湯管部110cには、第2混合弁101b側からシャワー180側に向かって、一般給湯用流量センサ107および一般給湯用温度センサ108がこの順番で設けられている。一般給湯用流量センサ107は第3給湯管部110cでの湯水の流量を検出し、一般給湯用温度センサ108は第3給湯管部110cでの湯水の温度を検出する。給湯管路110での湯水の流れ方向を図1中に実線の矢印Eで示してある。
【0027】
給湯機本体120の構成要素のうち、給水管路40、貯湯用循環管路50、ふろ側循環管路90、および給湯管路100をそれぞれ除いた残りの構成要素は、外装ケース115に納められている。給水管路40、貯湯用循環管路50、ふろ側循環管路90、および給湯管路100の各々は、その一部が外装ケース115の外部にまで延在している。
【0028】
制御装置130は、上記の外装ケース115内に配置され、ヒートポンプユニット10、貯湯用送水ポンプ43、三方弁45、タンク側送水ポンプ75、ふろ側送水ポンプ85、第1混合弁101a、第2混合弁101b、および注水電磁弁103に接続されてこれらの動作を制御する。具体的には、リモートコントローラ140からユーザが入力した沸上げ開始時刻、沸上げ温度、湯張り温度、湯張り湯量、給湯温度等の情報や湯張り開始指令、追焚き開始指令等の指令と、貯湯タンク20に設けられたタンク温度センサ(図示せず)、フロースイッチ81、水位センサ83、追焚き用温度センサ87、ふろ給湯用流量センサ104、ふろ給湯用温度センサ105、一般給湯用流量センサ107、一般給湯用温度センサ108等の検出値等とに基づいて、上記の構成要素の動作を制御する。
【0029】
リモートコントローラ140は、上記の情報や指令を入力するための操作部と、該操作部から入力された情報や指令等を表示するための表示部(図示せず)とを有しており、台所や浴室等に設置されて制御装置130に有線接続または無線接続され、制御装置130の入力装置として機能する。
【0030】
上述の各構成要素を備えたヒートポンプ式給湯機150は、設置後に給水管路40から貯湯タンク20に給水し、該貯湯タンク20、貯湯用循環管路50、タンク側循環管路80、および給湯管路110のエア抜きを行ってから使用に供されて、沸上げ運転、湯張り運転、追焚き運転、および給湯運転を適宜行う。
【0031】
例えばユーザがリモートコントローラ140から入力した沸上げ開始時刻になると、制御装置130による制御の下にヒートポンプユニット10および貯湯用送水ポンプ43が起動されて沸上げ運転が開始され、貯湯タンク20に設けられたタンク温度センサ(図示せず)の検出値から所定温度の湯が貯湯タンク20に所定量貯えられたと判断されるまで継続される。この間、貯湯タンク20の下部から貯湯用循環管路50の往き管50aに水が流入し、ヒートポンプユニット10で湯に沸き上げられた後、戻り管50bを通って貯湯タンク20に戻される。
【0032】
また、ユーザがリモートコントローラ140から湯張り開始指令を入力すると、湯張り運転が開始される。この湯張り運転では、制御装置130による制御の下に第1混合弁101aの弁開度が調整されると共に注水電磁弁103が開弁して、第1混合弁101aにより所定の湯張り温度に調整された湯が第2給湯管部110bからふろ側循環管路80に流入し、さらには該ふろ側循環管路90の往き管90aと戻り管90bとを流れて浴槽170に流入する。第1混合弁101aの弁開度は、ふろ給湯用温度センサ105の検出値に基づいてフィードバック制御される。浴槽170への湯張り湯量は、水位センサ83の検出値とふろ給湯用流量センサ104の検出値とに基づいて制御装置130により調整され、リモートコントローラ140からユーザが予め入力した湯張り湯量に達したと判断されると、注水電磁弁103を閉弁して湯張り運転が終了する。
【0033】
ユーザがシャワー180の給湯栓(図示せず)を開けると、一般給湯用流量センサ107により所定値以上の流量が検出されて給湯運転が開始される。この給湯運転では、制御装置130による制御の下に第2混合弁101bの弁開度が調整されて、所定の給湯温度に調整された湯がシャワー180から出湯する。第2混合弁101bの弁開度は、一般給湯用温度センサ108の検出値に基づいてフィードバック制御される。
【0034】
上述したヒートポンプ式給湯機150は、貯湯用循環管路50の戻り管50bの形態、および貯湯タンク20内のバッフル部23の構造に特徴を有しているので、以下、図2を参照して戻り管50bの形態およびバッフル部23の構造の各々を詳述する。
【0035】
図2は、図1に示したヒートポンプ式給湯機での貯湯用循環管路の戻り管と貯湯タンクとの接続箇所およびその周辺を拡大して概略的に示す断面図である。同図に示すように、貯湯用循環管路50の戻り管50bは、少なくとも貯湯タンク20の上部側では、貯湯タンク20の周囲に配置された断熱材27に近接して貯湯タンク20の側方に配置されている。そして、貯湯タンク20の頂部よりも下方で貯湯タンク20側に水平に向きを変えて貯湯タンク20の上部、具体的にはドーム状に成形されている部分に接続されている。
【0036】
バッフル部23は、バッフルプレート23aと計2つの側壁23b,23b(図2においては1つの側壁23bのみが現れている)とを備えており、貯湯タンク20と戻り管50bとの接続箇所を覆うようにして貯湯タンク20内に取り付けられている。バッフルプレート23aは、戻り管50bとの接続箇所近傍での貯湯タンク20の内周面ISと略平行に湾曲したバッフル面BSを有し、戻り管50bから貯湯タンク20に流入した湯の流れ方向を貯湯タンク20の頂部側に規制する。また、側壁23b、23bは、バッフルプレート23aの左右方向両端に連設されて例えば溶接により貯湯タンク20に固定され、貯湯タンク20の内周面ISから所定の間隔をあけてバッフルプレート23aを保持すると共に、戻り管50bから貯湯タンク20に流入した湯の横方向への流動を制限する。バッフル部23での上端側および下端側は、それぞれ開放されている。
【0037】
上述のようにして貯湯タンク20に接続されている戻り管50bでは、貯湯タンク20との接続箇所の手前で当該戻り管50bに設けられる水平区間HS(図2参照)の長さが短いので、湯から析出したスケールが当該水平区間HSに堆積し難い。また、湯の沸上げにより発生した気泡も当該水平区間HSに溜まり難く、スケールの析出が気泡によって加速されることも水平区間HSでは起こり難い。これらの理由から、戻り管50bではスケールの堆積が抑えられる。
【0038】
また、戻り管50bから貯湯タンク20には湯と一緒にスケールや気泡が流入するが、バッフル部23の上端側および下端側がそれぞれ開放されていることから、比重の重いスケールはバッフル部23の下端側から貯湯タンク20の底部に沈降し、比重の軽い気泡はバッフル部23の上端側から貯湯タンク20の頂部に浮上する。このため、当該バッフル部23においてもスケールの堆積が抑えられる。図2には、戻り管50bから貯湯タンク20に流入した湯および気泡の流れ方向を実線の矢印Fで示し、スケールの流れ方向を破線の矢印Gで示してある。
【0039】
このように、ヒートポンプ式給湯機150(図1参照)では、戻り管50bおよびバッフル部23の各々でスケールの堆積が抑えられるので、戻り管50bでのスケールの堆積により貯湯用循環管路50での湯の流通が阻害されたり、バッフル部23でのスケールの堆積により貯湯タンク20内に温度成層を形成し難くなったりする等の不具合の発生が抑えられる。結果として、当該ヒートポンプ式給湯機150では、その装置寿命を延ばし易い。また、貯湯用循環管路50の往き管50a(図1参照)、戻り管50bを細径化してヒートポンプでの熱交換効率の向上を図ることが容易になるので、エネルギー消費量の削減を図ることも容易になる。
【0040】
以上、本発明のヒートポンプ式給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上記の形態に限定されるものではない。例えば、貯湯用循環管路の戻り管は、少なくとも貯湯タンクの上部側では貯湯タンク周囲の断熱材に近接して貯湯タンクの側方に配置され、貯湯タンクの頂部よりも下方で該貯湯タンク側に斜め上向きに向きを変えて貯湯タンクの上部に接続されていてもよい。このように構成すれば、気泡は自然と貯湯タンク20の上方側へ移動(図2中の矢印F参照)する。なお、本発明でいう「貯湯用循環管路の戻り管を断熱材に近接して貯湯タンクの側方に敷設する」とは、貯湯用循環管路の戻り管を断熱材に隣接させて貯湯タンクの側方に敷設する場合を含むものとする。
【0041】
バッフル部23(図2参照)でのスケールの堆積を抑えるか否かは、適宜選定可能であるが、ヒートポンプ式給湯機でのスケールの堆積に起因する不具合の発生を抑えるという観点からは、当該バッフル部23でのスケールの堆積を抑えた方が好ましい。そのためには、実施の形態で説明したように、当該バッフル部23として上端側および下端側がそれぞれ開放されているものを用いることが好ましい。また、貯湯タンク内の温度成層が乱れてしまうのを防止するという観点からは、バッフルプレートのバッフル面が上記戻り管との接続箇所近傍での貯湯タンク内周面と略平行に成形されているバッフル部を用いることが好ましい。また、内周面ISとバッフルプレート23aの間隔を例えばスケールの流れる矢印G(図2参照)方向と湯等の流れる矢印F方向とで異ならせてもよい。例えば矢印G方向側を狭く構成しスケール以外の湯等の流入を抑えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ヒートポンプユニット
20 貯湯タンク
22,23,25 バッフル部
23a バッフルプレート
23b 側壁
27 断熱材
50 貯湯用循環管路
50a 往き管
50b 戻り管
80 タンク側循環管路
120 給湯機本体
150 ヒートポンプ式給湯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材が周囲に配置されている貯湯タンクの下部から貯湯用循環管路の往き管に取り出した水をヒートポンプで湯に沸上げ、該湯を前記貯湯用循環管路の戻り管により前記貯湯タンクの上部から該貯湯タンクに戻して貯えるヒートポンプ式給湯機であって、
前記貯湯用循環管路の戻り管は、少なくとも前記貯湯タンクの上部側では前記断熱材に近接して前記貯湯タンクの側方に配置され、前記貯湯タンクの頂部よりも下方で該貯湯タンク側に水平または斜め上向きに向きを変えて前記貯湯タンクの上部に接続されていることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記貯湯タンクの内部に取り付けられて前記戻り管から前記貯湯タンクに流入した湯の流れ方向を規制するバッフル部を更に具備し、
該バッフル部は、
前記貯湯タンクと前記戻り管との接続箇所近傍での貯湯タンク内周面と略平行に成形されたバッフル面を有するバッフルプレートと、
該バッフルプレートの左右方向両端に連設されて前記貯湯タンクに固定された側壁と、
を備え、上端側および下端側がそれぞれ開放されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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