説明

ビソクラミス属に属する菌類の検出方法

【課題】飲食品汚染の主な原因菌の1つであるビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類を種レベルでかつ迅速に検出できる方法を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの同定を行う工程を含む、ビソクラミス属に属する菌類の検出方法。ビソクラミス属に属する菌類がビソクラミスファルバ(Byssochlamysfulva)、ビソクラミスニベア(Byssochlamysnivea)、ビソクラミスラガンクラリエ(Byssochlamyslagunculariae)及びビソクラミスゾレルニア(Byssochlamyszollernia)等のビソクラミス(Byssochlamys)属に属する耐熱性菌類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の菌類(真菌類)は自然界に広く分布し、野菜、果物等の農作物で繁殖し、これらの農作物を原材料とした飲食品を汚染する。しかも、耐熱性の菌類は通常の他の菌類に比べて高い耐熱性を有する子嚢胞子を生活環の中で形成する。例えば酸性飲料の加熱殺菌処理を行ったとしても耐熱性菌類が生存、増殖し、カビの発生原因となることがある。
加熱殺菌処理後の飲食品からも検出されることがある汚染事故の原因菌の主な耐熱性菌類の1つとして、ビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)、ビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)、ビソクラミス ラガンクラリエ(Byssochlamys lagunculariae)及びビソクラミス ゾレルニア(Byssochlamys zollernia)等のビソクラミス(Byssochlamys)属に属する耐熱性菌類が知られている。飲食品及びこれらの原材料中の耐熱性菌類による事故防止のためには、ビソクラミス属に属する耐熱性菌類の検出が重要である。また、ビソクラミス属の菌種は他のカビよりも酸素要求性が低く、飲料などの低酸素分圧下でも増殖が可能であり、さらにはペクチン分解酵素を合成して食品の物性変化を引き起こす。このため、ビソクラミス属の菌種は食品業界で重要危害菌として警戒されている。
【0003】
従来の耐熱性の菌類を検出する方法としては、菌体培養の後、形態学的特徴を観察することにより行われている。しかし、この方法では形態学的な特徴が発生するまで培養を続ける必要があるため、最短でも約14日間以上の長期間を必要とする。また、形態学的な同定には極めて高い専門性を必要とするため、判定者によって同定結果が異なる危険性が否定できない。さらには加熱や薬剤などによる損傷菌体等は形態形成能を失うケースが存在し、それら菌体は長期間培養を行っても特徴的な形態を形成しないことから同定結果の信頼性に問題があった。このように耐熱性菌類の検出に長期間を要することは飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるものではない。そのため、迅速性及び信頼性の問題を解決した検出・同定方法の確立が求められている。
【0004】
ビソクラミス属に属する耐熱性菌類の迅速かつ信頼性の高い検出方法としては、遺伝子の特定の塩基配列を標的とした増幅法(たとえばPCR法やLAMP法)が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、これらの方法はビソクラミス属に属する菌類を属レベルで同定するものであり、これらの方法で検出される菌類はビソクラミススピーシーズ(Byssochlamys sp.)としか同定することができず、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで同定するにはさらなる検討が必要である。
そのため、迅速かつ信頼性の高いビソクラミス属に属する耐熱性菌類の検出が求められる飲食品の衛生管理の現場においては、ビソクラミス属に属する菌類を迅速に種レベルで検出することが求められている。さらには、ビソクラミス属に属する菌類は菌種によってカビ毒の生産能に差があり、例えば、真菌によって産生されるカビ毒の一種であるパツリンはビソクラミス ニベアのみが生産することが知られている(非特許文献1等参照)。このため、ビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの同定が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−284832号公報
【特許文献2】特開2010−004876号公報
【特許文献3】特開2010−004880号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Samson et al.,Persoonia 22,2009,p.14-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、飲食品汚染の主な原因菌の1つであるビソクラミス属に属する菌類を種レベルでかつ迅速に検出しうる方法を提供することを課題とする。また、本発明はこの方法に適用可能なオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明者等は、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで特異的に検出・識別する方法について鋭意検討を行った。その結果、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子にハイブリダイズすることができる特定のオリゴヌクレオチドを用いることで、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで特異的にかつ迅速に検出できることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
本発明は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの同定を行う工程を含むことを特徴とするビソクラミス属に属する菌類の検出方法に関する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0010】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認することを特徴とするビソクラミス属に属する菌類の検出方法に関する。
(i)配列番号9に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(j)配列番号9に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(k)配列番号10に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号10に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ラガンクラリエ(Byssochlamys lagunculariae)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ゾレルニア(Byssochlamys zollernia)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0011】
また、本発明は、前記(a)〜(h)のいずれかのオリゴヌクレオチドであって、ビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる、ビソクラミス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチドに関する。
【0012】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、又は前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対で示されるビソクラミス属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対に関する。
【0013】
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド対を含むビソクラミス属に属する菌類検出キットに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検出方法は、飲食品の汚染事故の主な原因菌の1つであるビソクラミス属に属する菌類を種レベルでかつ迅速に検出することができる。また、本発明オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットは、前記方法に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ビソクラミス属に属する菌類及びその他の耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列、及びビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における本発明のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図2】ビソクラミス属に属する菌類及びその他の耐熱性菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列、及びビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における本発明のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である(図1の続き)。
【図3】実施例における、本発明の(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図4】実施例における、本発明の(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図5】実施例における、本発明の(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図6】実施例における、本発明の(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図7】実施例における、本発明の(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図8】実施例における、本発明の(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の特定の部分塩基配列、すなわちビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子配列中に存在するビソクラミス属に属する菌類の各菌種にそれぞれ特異的な領域(可変領域)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを用いてビソクラミス属に属する菌類の同定を行い、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで特異的に識別・検出する方法である。ここで、「可変領域」とは、β−チューブリン遺伝子中で塩基変異が蓄積しやすい領域であり、この領域の塩基配列は他の真菌の種間で大きく異なる。「β−チューブリン」とは微小管を構成する蛋白質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。また、ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0017】
本発明における「ビソクラミス属に属する菌類」とは、マユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する不整子嚢菌類を意味する。ビソクラミス属に属する菌類は、75℃、30分間の加熱処理後であっても生存可能な子のう胞子を形成する耐熱性菌類である。ビソクラミス属に属する菌類の例として、ビソクラミス ファルバ、ビソクラミス ニベア、ビソクラミス ラガンクラリエ及びビソクラミス ゾレルニアが挙げられる。
【0018】
本発明の検出方法は、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子中の特定(可変)領域の塩基配列に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、図1〜2に示すように、ビソクラミス属を含めた種々の真菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定し、真菌種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法により各真菌のβチューブリン遺伝子の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、β−チューブリン遺伝子中に同一の種内では保存性が高いが異なる種間で塩基配列の保存性が低く、種によって固有の塩基配列を有する領域(可変領域)を見い出した。この可変領域においてビソクラミス属に属する菌類は種固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はビソクラミス属に属する菌類を種レベルで識別・同定するための遺伝学的な指標として有用である。
【0019】
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0020】
ビソクラミス属に属する菌類のうち、ビソクラミス ファルバのβ−チューブリン遺伝子の可変領域を図1〜2及び配列番号9に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号9に記載の塩基配列は、ビソクラミス ファルバCBS146.48株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.fulva1Fともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.fulva1Rともいう)はそれぞれ、図1〜2に示すように、配列番号9に記載の塩基配列のうち116位〜135位までの領域及び330位〜348位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は真菌種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ビソクラミス ファルバとその他の真菌種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はビソクラミス ファルバが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ビソクラミス ファルバを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればビソクラミス ファルバに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR反応による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ビソクラミス ファルバと特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりビソクラミス ファルバを同定することが可能となる。
【0021】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(i)又は(j)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変領域)の存在を確認することが好ましい。
(i)配列番号9に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(j)配列番号9に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ファルバの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0022】
ビソクラミス属に属する菌類のうち、ビソクラミス ニベアのβ−チューブリン遺伝子の可変領域を図1〜2及び配列番号10に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号10に記載の塩基配列は、ビソクラミス ニベアCBS100.11株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。
前記(c)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.nivea1Fともいう)及び前記(d)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.nivea1Rともいう)はそれぞれ、図1〜2に示すように、配列番号10に記載の塩基配列のうち43位〜62位までの領域及び343位〜362位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は真菌種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ビソクラミス ニベアとその他の真菌種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はビソクラミス ニベアが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、ビソクラミス ニベアを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればビソクラミス ニベアに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR反応による同定が可能となる。また、また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ビソクラミス ニベアと特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりビソクラミス ニベアを同定することが可能となる。
【0023】
本発明において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(k)又は(l)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変領域)の存在を確認することが好ましい。
(k)配列番号10に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号10に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ニベアの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0024】
ビソクラミス属に属する菌類のうち、ビソクラミス ラガンクラリエのβ−チューブリン遺伝子の可変領域を図1〜2及び配列番号11に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号11に記載の塩基配列は、ビソクラミス ラガンクラリエCBS373.70株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。
前記(e)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.lag1Fともいう)及び前記(f)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.lag1Rともいう)はそれぞれ、図1〜2に示すように、配列番号11に記載の塩基配列のうち90位〜109位までの領域及び468位〜487位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は真菌種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ビソクラミス ラガンクラリエとその他の真菌種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はビソクラミス ラガンクラリエが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、ビソクラミス ラガンクラリエを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればビソクラミス ラガンクラリエに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR反応による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ビソクラミス ラガンクラリエと特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりビソクラミス ラガンクラリエを同定することが可能となる。
【0025】
本発明において、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(m)又は(n)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変領域)の存在を確認することが好ましい。
(m)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号11記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ラガンクラリエの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0026】
ビソクラミス属に属する菌類のうち、ビソクラミス ゾレルニアのβ−チューブリン遺伝子の可変領域を図1〜2及び配列番号12に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号12に記載の塩基配列は、ビソクラミス ゾレルニアCBS345.70株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。
前記(g)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.zol1Fともいう)及び前記(h)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、B.zol1Rともいう)はそれぞれ、図1〜2に示すように、配列番号12に記載の塩基配列のうち36位〜55位までの領域及び319位〜338位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は真菌種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ビソクラミス ゾレルニアとその他の真菌種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はビソクラミス ゾレルニアが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて、ビソクラミス ゾレルニアを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればビソクラミス ゾレルニアに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR反応による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ビソクラミス ゾレルニアと特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりビソクラミス ゾレルニアを同定することが可能となる。
【0027】
本発明において、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(o)又は(p)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変領域)の存在を確認することが好ましい。
(o)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号12記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ゾレルニアの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0028】
本発明の検出方法に用いる前記オリゴヌクレオチド(a)〜(h)は、配列番号1〜8のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、配列番号1〜8のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがより好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜8のいずれかに記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個)の塩基の欠失、置換、挿入又は付加されており、かつビソクラミス属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチドであってもよい。また、前記オリゴヌクレオチド(a)〜(h)に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0029】
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0030】
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、ビソクラミス属に属する菌類の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0031】
前記オリゴヌクレオチド対を用いてビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の存在を確認し、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで同定する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0032】
本発明の検出方法に用いる前記オリゴヌクレオチド(a)〜(h)は、核酸プライマー及び核酸プローブとして用いることができる。
【0033】
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。該核酸プローブはビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域の一部と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のビソクラミス属に属する菌類を迅速かつ簡便に検出することができる。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでビソクラミス属に属する菌類を検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標的核酸を標識して捕捉することもできる。
【0034】
本発明の検出方法において、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。ビソクラミス ファルバを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ビソクラミス ニベアを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ビソクラミス ラガンクラリエを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ビソクラミス ゾレルニアを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。
【0035】
被検体中のビソクラミス属に属する菌類を種レベルで検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出法により検出すればよい。上記核酸プローブはビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の可変領域と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のビソクラミス属に属する菌類を迅速かつ簡便に種レベルで検出することができる。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0036】
本発明の検出方法において、ビソクラミス属に属する菌類の検出/同定を行うため、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが迅速性及び簡便性の観点から好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いビソクラミス属に属する菌類の検出を行う場合について説明する。
【0037】
本発明において、ビソクラミス ファルバを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いるのが好ましく、前記配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがより好ましい。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対は、ビソクラミス属に属する菌類(具体的には、ビソクラミス ファルバ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0038】
本発明において、ビソクラミス ニベアを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いるのが好ましく、前記配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがより好ましい。
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対は、ビソクラミス属に属する菌類(具体的には、ビソクラミス ニベア)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0039】
本発明において、ビソクラミス ラガンクラリエを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いるのが好ましく、前記配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがより好ましい。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対は、ビソクラミス属に属する菌類(具体的には、ビソクラミス ラガンクラリエ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0040】
本発明において、ビソクラミス ゾレルニアを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いるのが好ましく、前記配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いるのがより好ましい。
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対は、ビソクラミス属に属する菌類(具体的には、ビソクラミス ゾレルニア)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0041】
PCR反応の条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
PCRの反応条件の好ましい一例としては、例えば、前記(a)及び(b)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(c)及び(d)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜60℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(e)及び(f)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(g)及び(h)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で10〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50〜63℃で約60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0042】
検体にビソクラミス属に属する菌類が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCR反応を行い、得られたPCR反応産物について電気泳動を行うと、特定のサイズを有するDNA断片の増幅が認められる。
具体的には、検体にビソクラミス ファルバが含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR反応を行うと、約250bpのDNA断片が増幅される。検体にビソクラミス ニベアが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR反応を行うと、約320bpのDNA断片が増幅される。検体にビソクラミス ラガンクラリエが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR反応を行うと、場合は約390bpのDNA断片が増幅される。検体にビソクラミス ゾレルニアが含まれる場合、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR反応を行うと、約300bpのDNA断片が増幅される。
このような操作を行うことにより、検体にビソクラミス属に属する菌類が含まれているかを確認することができる。
【0043】
本発明において、遺伝子断片の増幅の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込まさせる方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
【0044】
本発明において、ビソクラミス属に属する菌類の同定を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を決定し、該遺伝子の部分塩基配列が前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列に含まれるか否かを確認することで、前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しビソクラミス属に属する菌類を種レベルで検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しビソクラミス属に属する菌類の種レベルの同定を行うものである。例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い、得られる増幅産物の塩基配列と前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列とを比較する。増幅産物の塩基配列が、前記(i)又は(j)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をビソクラミス ファルバと同定することができ、前記(k)又は(l)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をビソクラミス ニベアと同定することができ、前記(m)又は(n)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をビソクラミス ラガンクラリエと同定することができ、前記(o)又は(p)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をビソクラミス ゾレルニアと同定することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0045】
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
【0046】
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
検体からDNAを調製する方法としては、ビソクラミス属に属する菌類の検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、未精製の状態でも使用できるが、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルム抽出を行って精製したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0047】
本発明のビソクラミス属に属する菌類の検出方法によれば、被検体の調製工程から菌類の検出工程までを約5〜12時間という短時間で行うことが可能である。
【0048】
本発明のビソクラミス属に属する菌類検出用キットは、前記本発明の検出用オリゴヌクレオチドを核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。このキットは、ビソクラミス属に属する菌類の検出方法に用いることができる。本発明のキットは、前記核酸プローブ又は核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明の検出用オリゴヌクレオチドによって検出反応が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
(1)ビソクラミス属に属する菌類に特異的な塩基配列の解析
下記の方法により、ビソクラミス属各種のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。
ポテトデキストロース寒天斜面培地にて30℃、7日間、暗所培養したビソクラミス属に属する菌類及び各種菌類の菌体からGenとるくんTM(タカラバイオ(株)社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD製)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号13)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号14)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G−50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver. 1.1(商品名:Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー“ATGC Ver.4”(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したビソクラミス属各種や各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、DNA解析ソフトウエア(商品名:Clustal W(DNA Data bank of Japan)、http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ビソクラミス属に属する菌類各種に特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定領域を決定した。
【0051】
(2)プライマーの設計
上記で得られたビソクラミス属に属する菌類各種に特異的な塩基配列領域を基に、配列番号1の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.fulva1Fプライマー)、配列番号2の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.fulva1Rプライマー)、配列番号3の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.nivea1Fプライマー)、配列番号4の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.nivea1Rプライマー)、配列番号5の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.lag1Fプライマー)、配列番号6の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.lag1Rプライマー)、配列番号7の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.zol1Fプライマー)、及び配列番号8の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.zol1Rプライマー)を設計し、シグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
前記の各プライマーは、図1〜2に示すように、ビソクラミス ファルバ、ビソクラミス ニベア、ビソクラミス ラガンクラリエ及びビソクラミス ゾレルニアのβ−チューブリン遺伝子の各特定領域の塩基配列に基づき設計したものである。
【0052】
(3)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちビソクラミス属とその他の耐熱性カビ及び一般カビとしては表1〜3に記載した菌株を使用した。これらの菌類に関しては、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターが管理しIAMナンバーで管理された株、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターが管理しJCMナンバーで管理された株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株を入手し、使用した。
各菌体を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて至適温度、すなわち一般カビは25℃、耐熱性カビは30℃で7日間培養した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
(4)ゲノムDNAの調製
各菌体を寒天培地から白金耳を用いて回収し、ポテトデキストロース寒天培地(組成:培地1000L当り馬鈴薯抽出液200g、ブドウ糖20g及び寒天15g、栄研化学株式会社)に播種した。25〜30℃の培養条件下で2〜5日間培養し、1白金耳量の菌糸を回収した。
ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、回収した菌体からゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0057】
(5)ビソクラミス ファルバの検出
DNAテンプレートとして、前記(4)で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL、無菌蒸留水10μLを混合し、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.fulva1Fプライマー、20pmol/μL)0.5μL及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.fulva1Rプライマー、20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0058】
PCR反応後、PCR反応液から5μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(100V45分間、又は135V25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図3及び図4に示す。なお、図3は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図(100V45分間)を示し、図4は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図(135V25分間)を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ Load TM 100bp(商品名、BIO RAD社)を用いた。
【0059】
その結果、ビソクラミス ファルバのゲノムDNAを含む試料では、約250bpの遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス ファルバ以外のビソクラミス属、及びその他食品の製造環境に広く分布する真菌類のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス ファルバを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0060】
(6)ビソクラミス ニベアの検出
DNAテンプレートとして、前記(4)で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL、無菌蒸留水10μLを混合し、配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.nivea1Fプライマー、20pmol/μL)0.5μL及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.nivea1Rプライマー、20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分秒間の熱変性反応、(ii)55℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0061】
PCR反応後、PCR反応液から5μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(100V45分間、又は135V25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図5及び図6に示す。なお、図5は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図(100V45分間)を示し、図6は表3に示す菌類の試料についての電気泳動図(135V25分間)を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ Load TM 100bp(商品名、BIO RAD社)を用いた。
【0062】
その結果、ビソクラミス ニベアのゲノムDNAを含む試料では、約320bpの遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス ニベア以外のビソクラミス属、及びその他食品の製造環境に広く分布する真菌類のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス ニベアを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0063】
(7)ビソクラミス ラガンクラリエの検出
DNAテンプレートとして、前記(4)で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL、無菌蒸留水10μLを混合し、配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.lag1Fプライマー、20pmol/μL)0.5μL及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.lag1Rプライマー、20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0064】
PCR反応後、PCR反応液から5μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(100V45分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図7に示す。なお、図7は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ Load TM 100bp(商品名、BIO RAD社)を用いた。
【0065】
その結果、ビソクラミス ラガンクラリエのゲノムDNAを含む試料では、約390bpの遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス ラガンクラリエ以外のビソクラミス属、及びその他食品の製造環境に広く分布する真菌類のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス ラガンクラリエを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0066】
(8)ビソクラミス ゾレルニアの検出
DNAテンプレートとして、前記(4)で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL、無菌蒸留水10μLを混合し、配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.zol1Fプライマー、20pmol/μL)0.5μL及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(B.zol1Rプライマー、20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR反応液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分秒間の熱変性反応、(ii)59℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0067】
PCR反応後、PCR反応液から5μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(100V45分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図8に示す。なお、図8は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ Load TM 100bp(商品名、BIO RAD社)を用いた。
【0068】
その結果、ビソクラミス ゾレルニアのゲノムDNAを含む試料では、約300bpの遺伝子断片の増幅が確認された。一方、ビソクラミス ゾレルニア以外のビソクラミス属、及びその他食品の製造環境に広く分布する真菌類のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片の増幅は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス ゾレルニアを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0069】
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の存在を確認することができ、ビソクラミス属に属する菌類を種レベルで特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、簡便、迅速かつ特異的にビソクラミス属に属する菌類を検出することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの同定を行う工程を含むことを特徴とするビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項2】
同定を行うために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、ビソクラミス属に属する菌類のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅し、増幅産物の有無を確認することを特徴とする請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3記載の検出方法。
【請求項5】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3記載の検出方法。
【請求項6】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ビソクラミス ラガンクラリエ(Byssochlamys lagunculariae)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3記載の検出方法。
【請求項7】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ビソクラミス ゾレルニア(Byssochlamys zollernia)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3記載の検出方法。
【請求項8】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認することを特徴とするビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(j)配列番号9に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(k)配列番号10に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号10に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ラガンクラリエ(Byssochlamys lagunculariae)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ゾレルニア(Byssochlamys zollernia)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項9】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、並びに前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、前記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認することを特徴とする請求項8記載の検出方法。
【請求項10】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う請求項9記載の検出方法。
【請求項11】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(i)又は(j)の塩基配列の一部を増幅する、請求項10記載の検出方法。
【請求項12】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(k)又は(l)の塩基配列の一部を増幅する、請求項10記載の検出方法。
【請求項13】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(m)又は(n)の塩基配列の一部を増幅する、請求項10記載の検出方法。
【請求項14】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(o)又は(p)の塩基配列の一部を増幅する、請求項10記載の検出方法。
【請求項15】
下記(a)〜(h)のいずれかのオリゴヌクレオチドであって、ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出用オリゴヌクレオチドとして使用できる、ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項16】
下記(i)〜(p)のいずれかの塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る請求項15記載の検出用オリゴヌクレオチド。
(i)配列番号9に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(j)配列番号9に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ファルバ(Byssochlamys fulva)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(k)配列番号10に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号10に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ニベア(Byssochlamys nivea)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ラガンクラリエ(Byssochlamys lagunculariae)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつビソクラミス ゾレルニア(Byssochlamys zollernia)の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーであることを特徴とする、請求項15又は16記載の検出用オリゴヌクレオチド。
【請求項18】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対、又は下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対で示されるビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類検出用オリゴヌクレオチド対。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項19】
請求項18記載のオリゴヌクレオチド対を含むビソクラミス(Byssochlamys)属に属する菌類検出キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250746(P2011−250746A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127649(P2010−127649)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】