説明

ビニルエーテル共重合体及び樹脂組成物

【課題】耐水性と防汚性の両方に優れるビニルエーテル共重合体、及び当該ビニルエーテル共重合体を含み、成膜性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ビニルエーテル共重合体は、下記一般式(1)で示される構成単位と、下記一般式(2)で示される構成単位とを含む。また樹脂組成物は、前記ビニルエーテル共重合体と有機溶剤とを含む。



(式(1)中、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルエーテル共重合体及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエーテル重合体は、透明性、温度応答性、及び成型性に優れ、皮膚刺激性も低いことから、インク、塗料、コーティング、シート、フィルム、粘着剤、接着剤等の用途で研究が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。またビニルエーテルモノマーと無水マレイン酸は共重合性を有することが知られている。代表例として挙げられるメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体は人体に対する無毒性、長期にわたる安定性、粘着性、凝集性、保水性、剥離性などが優れている。そのため、貼付剤、接着剤、ヘアスタイリング剤として幅広い分野で応用されている。また当該共重合体のアルコール溶液をコーティング剤に適用することが開示されている(例えば、特許文献4参照)。また当該共重合体の無水マレイン酸部分の加水分解率を制御する方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0003】
一方、防汚コーティング剤として、フッ素樹脂等の砂やほこりをはじく疎水性コーティング剤、及び油や煙をはじく親水性コーティング剤が、種々実用化されている。また防汚コーティングされる基材として用いられるプラスチックは、一般的に熱に弱いものが多い。そのため、防汚処理に加熱を要する水系コーティング剤やフッ素樹脂コーティング剤は基材として用いられるプラスチックを変形させる虞がある。これに対してエタノールなどの低沸点アルコール溶剤を防汚コーティング剤の溶媒として使用すると、基材を加熱処理することなく防汚処理が可能である。また低沸点アルコールは一般にプラスチックに対する溶解性が低いため、多種のプラスチックに適用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−102501号公報
【特許文献2】特開平01−102502号公報
【特許文献3】特開2006−131805号公報
【特許文献4】特開2006−199831号公報
【特許文献5】特開2006−161003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の防汚コーティング剤では、疎水性汚れと親水性汚れの一方の汚れに対しては効果が得られるものの、疎水性汚れと親水性汚れの両方に対する効果を得ることは困難であった。また従来のビニルエーテル共重合体は粘性体のものが多く、膜の形成が困難であった。このように、低沸点アルコールに可溶し、成膜性、耐水性、親水性と疎水性の両方の防汚性に優れたビニルエーテル共重合体の報告例はほとんどない。
例えば特許文献3には、成膜性を有する脂環式のビニルエーテルポリマーが提案されているが、疎水性汚れに対する防汚性、低沸点アルコールへの溶解性の点で課題を有している。また特許文献4、5に記載のビニルエーテル共重合体は、耐水性又は防汚性の点で課題を有している。
本発明の目的は、耐水性と防汚性の両方に優れるビニルエーテル共重合体、及び当該ビニルエーテル共重合体を含み、成膜性に優れる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記一般式(1)で示される構成単位及び一般式(2)で示される構成単位を含むビニルエーテル共重合体が、耐水性と防汚性の両方に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0007】
<1> 下記一般式(1)で示される構成単位と、下記一般式(2)で示される構成単位とを含むビニルエーテル共重合体である。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)中、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0010】
<2> 重量平均分子量が250〜3,000,000である前記<1>に記載のビニルエーテル共重合体である。
【0011】
<3> 前記一般式(1)で示される構成単位の前記一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比が40/60〜60/40である前記<1>又は<2>に記載のビニルエーテル共重合体である。
【0012】
<4> 前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のビニルエーテル共重合体と、有機溶剤とを含む樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐水性と防汚性の両方に優れるビニルエーテル共重合体、及び当該ビニルエーテル共重合体を含み、成膜性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
<ビニルエーテル共重合体>
本発明のビニルエーテル共重合体(以下、「特定共重合体」ともいう)は、下記一般式(1)で示される構成単位の少なくとも1種と、下記一般式(2)で示される構成単位の少なくとも1種とを含む。また必要に応じて下記一般式(1)で示される構成単位及び一般式(2)で示される構成単位以外のその他の構成単位を更に含んでいてもよい。
前記特定共重合体は、下記一般式(1)で示される構成単位と、下記一般式(2)で示される構成単位とを含むことで、防汚性と耐水性の両方に優れた特性を示す。さらに低沸点アルコールに対する溶解性に優れ、被膜形成時の成膜性に優れる。特に防汚性については、疎水性汚れと親水性汚れの両方に対して優れた防汚性を示す。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(1)中、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0018】
一般式(1)におけるAOとしては、エチレンオキシ基、及びプロピレンオキシ基を挙げることができる。中でも防汚性と耐水性の観点から、エチレンオキシ基であることが好ましい。また一般式(1)が複数のAOを含む場合、それぞれのAOは同一であっても異なっていてもよい。
iは、防汚性と耐水性の観点から、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0019】
一般式(1)におけるRで表される炭素数1〜3のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。またRで表される炭素数1〜3のアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基等を挙げることができる。中でも、防汚性、耐水性、成膜性及び溶解性の観点から、Rは炭素数1〜3の無置換のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2の無置換のアルキル基がより好ましい。
【0020】
又はRで表される炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。またR又はRで表される炭素数1〜8のアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基等を挙げることができる。R又はRで表される炭素数1〜8のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、メトシキエチル基、エトキシエチル基等を挙げることができる。
【0021】
中でも、防汚性、耐水性、成膜性及び溶解性の観点から、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、及びメトシキエチル基からなる群より選ばれることが特に好ましい。
またR及びRの一方が水素原子であって、他方が置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基であることもまた好ましい。
【0022】
前記特定共重合体における一般式(1)で示される構成単位と一般式(2)で示される構成単位との結合態様は特に制限されず、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。前記ビニルエーテル共重合体は、交互共重合体又はランダム共重合体であることが好ましく、交互共重合体であることがより好ましい。
【0023】
前記特定共重合体における一般式(1)で表される構成単位及び一般式(2)で表される構成単位の含有比率は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば一般式(1)で表される構成単位の一般式(2)で表される構成単位に対する含有比率(一般式(1)/一般式(2))はモル基準で、40/60〜60/40とすることができる。
なお、一般式(1)で表される構成単位と一般式(2)で表される構成単位の含有比率は、特定共重合体のHNMRを測定することで求めることができる。
【0024】
前記特定共重合体は、一般式(1)で表される構成単位及び一般式(2)で表される構成単位以外のその他の構成単位を更に含んでいてもよい。その他の構成単位としては、一般式(1)で表される構成単位及び一般式(2)で表される構成単位と共に共重合体を構成可能であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の構成単位を形成し得るその他のモノマーとして具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n―ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2―エチルヘキシルビニルエーテル等の炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0025】
前記特定共重合体がその他の構成単位を更に含む場合、前記特定共重合体におけるその他の構成単位の含有率は特に制限されない。前記特定共重合体におけるその他の構成単位の含有率は例えば、25質量%以下とすることができる。中でも、防汚性、耐水性、成膜性、及び溶解性の観点から、20質量%以下であることが好ましい。
【0026】
前記特定共重合体の分子量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。前記特定共重合体の分子量は例えば、重量平均分子量(Mw)として250〜3,000,000とすることができる。中でも、耐水性、成膜性、及び溶解性の観点から、5,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。
なお、特定共重合体の重量平均分子量は、GPCを用いた標準ポリスチレン換算法により測定することができる。
【0027】
以下に、前記特定共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記化学式中、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
前記特定共重合体は、防汚性、耐水性、成膜性、及び溶解性の観点から、一般式(1)におけるRが無置換の炭素数1〜3のアルキル基であって、AOがエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であって、一般式(2)におけるR及びRがそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基であって、一般式(1)/一般式(2)が、40/60〜60/40であることが好ましい。
前記特定共重合体のより好ましい態様は、一般式(1)におけるRが無置換の炭素数1〜3のアルキル基であって、AOがエチレンオキシ基であって、一般式(2)におけるR及びRがそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であって、一般式(1)/一般式(2)がモル基準で、40/60〜60/40であることである。
前記特定共重合体のさらに好ましい態様は、一般式(1)におけるRが無置換の炭素数1〜2のアルキル基であって、AOがエチレンオキシ基であって、一般式(2)におけるR及びRの一方が水素原子であって、他方が炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であって、一般式(1)/一般式(2)がモル基準で、40/60〜60/40であることである。
前記特定共重合体の特に好ましい態様は、一般式(1)におけるRが無置換の炭素数1〜2のアルキル基であって、AOがエチレンオキシ基であって、一般式(2)におけるR及びRの一方が水素原子であって、他方が炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であって、一般式(1)/一般式(2)がモル基準で、40/60〜60/40であって、重量平均分子量が250〜3,000,000であることである。
【0034】
前記特定共重合体は、一般式(1)で示される構成単位を形成し得るビニルエーテルモノマーと、一般式(2)で示される構成単位を形成し得るブテン二酸誘導体モノマーと、さらに必要に応じてその他の構成単位を形成し得るその他のモノマーとを共重合することで製造することができる。
また前記特定共重合体は、一般式(1)で示される構成単位を形成し得るビニルエーテルモノマーと、無水マレイン酸モノマーと、さらに必要に応じてその他の構成単位を形成し得るその他のモノマーとを、共重合してビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体を得た後、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸に由来する構成単位の酸無水物構造を、アルコールによって開環することで製造することもできる。
【0035】
一般式(1)で示される構成単位を形成し得るビニルエーテルモノマーとしては、下記一般式(3)で示される化合物を挙げることができる。下記一般式(3)中、R、AO及びiは、一般式(1)におけるR、AO及びiと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0036】
【化8】

【0037】
前記一般式(3)で示される化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキレングリコールモノビニルエーテル、ジアルキレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシ基を有するアルキルビニルエーテル化合物をアシル化することで調製することができる。また市販の化合物を用いてもよい。
【0038】
ヒドロキシ基を有するアルキルビニルエーテル化合物のアシル化方法は特に制限されず、通常用いられるアシル化反応から適宜選択することができる。アシル化反応としては例えば、ヒドロキシ基を有するアルキルビニルエーテル化合物と、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物等のアシル化試薬を塩基の存在下に反応させる方法、ヒドロキシ基を有するアルキルビニルエーテル化合物を、カルボン酸とカルボジイミダゾール等の縮合剤とを用いてアシル化する方法などを挙げることができる。またアシル化反応においては、必要に応じてジメチルアミノピリジン等の触媒をさらに用いてもよい。
【0039】
アシル化反応は溶媒の存在下で行なってもよい。溶媒としてはアシル化反応を著しく阻害するものでなければ特に制限されず、通常用いられる溶媒から適宜選択することができる。また反応温度、反応圧力、反応雰囲気等の反応条件は特に制限されず、アシル化試薬等に応じて適宜選択することができる。
【0040】
また一般式(2)で示される構成単位を形成し得るブテン二酸誘導体モノマーとしては、下記一般式(4)で示される化合物を挙げることができる。下記一般式(4)中、R及びRは、一般式(2)におけるR及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0041】
【化9】

【0042】
前記一般式(4)で示される化合物は、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸にR又はRに対応するアルコール又は水を反応させることで調製することができる。また市販の化合物を用いてもよい。
無水マレイン酸とR又はRに対応するアルコールとの反応条件は特に制限されず、用いるアルコールに応じて適宜選択することができる。例えば、常温又は加熱条件下に、無水マレイン酸をアルコール中で処理することで、所望の一般式(4)で示される化合物を調製することができる。マレイン酸又はフマル酸にR又はRに対応するアルコールを反応させる反応条件は特に制限されず、用いるアルコールに応じて適宜選択することができる。例えば、通常用いられるカルボン酸のエステル化条件を適用することができる。
【0043】
前記特定共重合体及びビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(以下、総称して単に「共重合体」ともいう)を製造するための共重合条件は特に制限されず、通常用いられるモノマーの重合方法から、目的に応じて適宜選択することができる。モノマーの重合方法としては例えば、溶液重合法、沈澱重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等を挙げることができる。また重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合反応の開始方法としては、重合開始剤を用いる方法、光又は活性放射線を照射する方法等がある。
これらの重合方法のうち、重合開始剤を用いる沈殿重合法又は溶液重合法が好ましい。
【0044】
前記共重合体の製造に使用する溶剤は、重合反応を著しく阻害しないものであれば特に制限されない。重合方法に応じて適宜選択することが好ましい。例えば沈殿重合法の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶剤、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶剤などを挙げることができる。また溶液重合法では、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤を挙げることができる。これらの溶剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
重合反応に使用する重合開始剤は特に制限されず、通常用いられる重合開始剤から適宜選択することができる。重合開始剤として具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2, 2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物などを挙げることができる。重合開始剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
重合反応は、常圧下又は加圧下で行うことができる。また重合反応における雰囲気は空気中であっても、窒素や希ガス等の不活性雰囲気であってもよい。
反応温度は特に制限されず、溶剤や重合開始剤等に応じて適宜選択することができる。重合反応は常温で行なってもよく、例えば30℃〜120℃、好ましくは50℃〜90℃の加温下で行ってもよい。
【0047】
前記共重合体は、重合反応後の反応生成物を精製したものであってもよい。反応生成物の精製方法は特に制限されず、濾過、洗浄、再沈殿、乾燥等の通常用いられる精製方法から、重合方法等に応じて適宜選択することができる。精製方法は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の製造方法については、例えば、特開2003−40913号公報等を参照することもできる。
【0048】
上記で得られるビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体に、炭素数1〜8のアルコールを反応させて無水マレイン酸に由来する構成単位を開環することで、本発明のビニルエーテル共重合体を製造することができる。
使用されるアルコールとしては、炭素数1〜8のアルコールを挙げることができる。炭素数1〜8のアルコールは、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。炭素数1〜8のアルコールは置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基等を挙げることができる。炭素数1〜8のアルキル基として具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メトシキエタノール、エトキシエタノール等を挙げることができる。
【0049】
中でも、防汚性、耐水性、成膜性及び溶解性の観点から、前記アルコールは、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコールであることが好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜6のアルコールであることがより好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基を有してもよい炭素数1〜4のアルコールであることがさらに好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、及びメトシキエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0050】
ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体とアルコールとの反応条件は特に制限されず、用いるアルコール等に応じて適宜選択することができる。例えば、常温又は加熱条件下に、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体をアルコール中で処理することで、本発明の特定共重合体を調製することができる。
前記加熱条件としては、例えば、用いるアルコールの沸点以下とすることができ、20℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
【0051】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、前記特定共重合体の少なくとも1種と、有機溶剤の少なくとも1種とを含む。前記樹脂組成物は、目的に応じてビニルエーテル共重合体及び有機溶剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記ビニルエーテル共重合体の少なくとも1種と、有機溶剤の少なくとも1種とを含むことで、耐水性、防汚性、及び成膜性優れる樹脂組成物を構成できる。
樹脂組成物中の特定共重合体は、有機溶剤に溶解した状態であっても分散した状態であってもよいが、成膜性の観点から、溶解した状態であることが好ましい。
【0052】
樹脂組成物に含まれる有機溶剤としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。有機溶剤としては例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも前記有機溶剤は、溶解性等の観点から、エステル溶剤、ケトン溶剤及びアルコール溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルコール溶剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルコールであることがさらに好ましい。
【0053】
前記樹脂組成物中の前記特定共重合体の含有率は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば樹脂組成物中に0.1質量%〜99質量%とすることができ、0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0054】
前記樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、充填剤としてシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機充填剤類、添加剤として沈降防止剤、分散剤、レべリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合禁止剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0055】
前記樹脂組成物は、有機溶剤に特定共重合体を溶解又は分散することで調製することができる。具体的には例えば、特定共重合体と有機溶剤とを攪拌等の通常用いられる混合方法で混合することで樹脂組成物を調製することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0057】
なお、「重量平均分子量(以下Mwと略す)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出するものである。GPC分析システム装置は、HLC−8220 GPC(東ソー(株)製)、カラムは、TSKgel SuperMultiporeHZ−H(東ソー(株)製)を直列に2本接続し、検出器には示差屈折率計(RI)(東ソー(株)製 HLC−8220装置組込)、移動相にテトラヒドロフラン(流速0.35mL/分)、カラム温度40℃の条件にて測定を行った。
またHNMR測定においては、測定溶媒としてCDCl又はDMSO−dを用いた。さらにテトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、これを0.0ppmとした。
【0058】
(合成例1)
アセトキシエチルビニルエーテル(AcO−EVE)の合成
撹拌機、温度計を備え付けたガラス製三口フラスコに、0℃下で無水酢酸729.3g(7.14mol)、ジメチルアミノピリジン20.8g(0.17mol)、ピリジン13.4g(0.17mol)、ヒドロキエチルビニルエーテル(日本カーバイド工業株式会社製、HEVE)600g(6.81mol)を順に仕込み反応を開始した。その後、15時間攪拌した後、反応液を水による分液洗浄処理、減圧蒸留精製を行って目的物であるアセトキシエチルビニルエーテル(以下、「AcO−EVE」とも記す)を521.2g(収率58.8%)で得た。
【0059】
(合成例2)
AcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラス製フラスコに、窒素気流下にて、無水マレイン酸26.3g(0.27mol)、アセトキシエチルビニルエーテル(AcO−EVE)34.9g(0.27mol)、テトラヒドロフラン(以下、「THF」とも記す)61.3g(0.85mol)と、重合開始剤として2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル0.17g(1.04mmol)とを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60 ℃になるまで昇温させた後、5時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後冷却し、その反応液にTHF61.3gを入れて希釈し、大量のヘキサン溶媒に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物を洗浄・濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、白色固体として共重合体55.7gを得た。
得られた白色固体のHNMR(測定溶媒CDCl)を測定したところ、AcO−EVE及び無水マレイン酸のビニル基由来のピークが消失しており、モノマーが消費されていることが確認された。また、GPC測定により重量平均分子量(Mw)が17,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であることが確認された。
【0060】
(合成例3)
アセトキシジエチレングリコールモノビニルエーテル(AcO−DEGMVE)の合成
撹拌機、温度計を備え付けたガラス製三口フラスコに、0℃下で無水酢酸729.3g(7.14mol)、ジメチルアミノピリジン20.8g(0.17mol)、ピリジン13.4g(0.17mol)ジエチレングリコールモノビニルエーテル (日本カーバイド工業株式会社製、DEGMVE)900g(6.81mol)を順に仕込み反応を開始した。その後、15時間攪拌した後、反応液を水による分液洗浄処理、減圧蒸留精製を行って目的物であるアセトキシジエチレングリコールモノビニルエーテル(以下、「AcO−DEGMVE」とも記す)を583.1g(収率64.8%)で得た。
【0061】
(合成例4)
AcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに、窒素気流下にて、無水マレイン酸26.3g(0.27mol)、アセトキシジエチレングリコールモノビニルエーテル(AcO−DEGMVE)47.3g(0.27mol)、テトラヒドロフラン(THF)61.3g(0.85mol)と、重合開始剤として2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル0.17g(1.04mmol)とを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、5時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後冷却し、その反応液にTHF61.3gを入れて希釈した後、大量のヘキサン溶媒に滴下して重合物を沈殿させた。沈殿物を洗浄・濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、白色固体として共重合体62.3gを得た。
得られた白色固体のHNMR(測定溶媒CDCl)を測定したところ、AcO−DEGMVE及び無水マレイン酸のビニル基由来のピークが消失しており、モノマーが消費されていることが確認された。また、GPC測定により重量平均分子量が14,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であることが確認された。
【0062】
(実施例1)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノメチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと乾燥メタノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とメタノールのモノメチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体50.7g(収率79.8%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノメチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は19,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0063】
【化10】

【0064】
a=1.5〜2.1ppm
b=3.2〜3.9ppm
c=3.2〜3.9ppm
d=3.9〜4.3ppm
e=1.5〜2.1ppm
f=2.5〜3.1ppm
g=2.5〜3.1ppm
h=12.0〜13.0ppm
i=3.2〜3.9ppm
【0065】
(実施例2)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノエチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと乾燥エタノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とエタノールのモノエチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体53.2g(収率79.4%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノエチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は20,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0066】
【化11】

【0067】
a=1.5〜2.3ppm
b=3.5〜3.9ppm
c=3.5〜3.9ppm
d=3.9〜4.4ppm
e=1.5〜2.3ppm
f=2.7〜3.1ppm
g=2.7〜3.1ppm
h=12.0〜13.0ppm
i=3.9〜4.4ppm
j=1.1〜1.3ppm
【0068】
(実施例3)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノプロピルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと、乾燥1−プロパノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物と1−プロパノールのモノプロピルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体55.2g(収率78.4%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノプロピルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は21,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0069】
【化12】

【0070】
a=1.6〜2.2ppm
b=2.6〜3.1ppm
c=3.1〜4.2ppm
d=3.1〜4.2ppm
e=1.6〜2.2ppm
f=2.6〜3.1ppm
g=2.6〜3.1ppm
h=12.1〜12.7ppm
i=3.1〜4.2ppm
j=1.5〜1.6ppm
k=0.8〜0.9ppm
【0071】
(実施例4)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノイソプロピルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと、乾燥2−プロパノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物と2−プロパノールのモノイソプロピルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体53.2g(収率75.6%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノイソプロピルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は21,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0072】
【化13】

【0073】
a=1.5〜2.4ppm
b=3.1〜3.9ppm
c=3.1〜3.9ppm
d=3.9〜4.3ppm
e=1.5〜2.4ppm
f=2.6〜3.1ppm
g=2.6〜3.1ppm
h=12.2〜12.8ppm
i=3.9〜4.3ppm
j=1.1〜1.3ppm
k=1.1〜1.3ppm
【0074】
(実施例5)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノブチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと、乾燥1-ブタノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物と1-ブタノールのモノブチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体59.7g(収率80.9%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノブチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は23,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0075】
【化14】

【0076】
a=1.6〜2.2ppm
b=3.1〜4.2ppm
c=3.1〜4.2ppm
d=3.1〜4.2ppm
e=1.6〜2.2ppm
f=2.6〜3.1ppm
g=2.6〜3.1ppm
h=12.1〜12.6ppm
i=3.1〜4.2ppm
j=1.4〜1.6ppm
k=1.2〜1.4ppm
l=0.8〜0.9ppm
【0077】
(実施例6)
AcO−EVE/無水マレイン酸モノメトキシエチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−EVEと無水マレイン酸の共重合体55.7gと、乾燥メトキシエタノール111.4gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とメトキシエタノールのモノメトキシエチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体50.5g(収率68.0%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−EVEとマレイン酸モノメトキシエチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は23,000、多分散度(Mw/Mn)3.1であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0078】
【化15】

【0079】
a=1.5〜2.4ppm
b=3.1〜3.9ppm
c=3.1〜3.9ppm
d=3.9〜4.3ppm
e=1.5〜2.4ppm
f=2.6〜3.1ppm
g=2.6〜3.1ppm
h=12.1〜12.7ppm
i=3.9〜4.3ppm
j=3.1〜3.9ppm
k=3.1〜3.9ppm
【0080】
(実施例7)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノメチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例4で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥メタノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とメタノールのモノメチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体54.2g(収率87.1%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノメチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は16,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0081】
【化16】

【0082】
a=1.4〜2.2ppm
b=3.2〜3.9ppm
c=3.2〜3.9ppm
d=3.2〜3.9ppm
e=3.2〜3.9ppm
f=3.9〜4.3ppm
g=1.4〜2.2ppm
h=2.5〜3.1ppm
i=2.5〜3.1ppm
j=12.0〜13.0ppm
k=3.2〜3.9ppm
【0083】
(実施例8)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノエチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例4で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥エタノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60 ℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とエタノールのモノエチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体52.1g(収率80.0%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノエチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は16,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0084】
【化17】

【0085】
a=1.5〜2.3ppm
b=3.1〜3.9ppm
c=3.1〜3.9ppm
d=3.2〜3.9ppm
e=3.2〜3.9ppm
f=3.9〜4.3ppm
g=1.5〜2.3ppm
h=2.6〜3.1ppm
i=2.6〜3.1ppm
j=12.1〜12.7ppm
k=3.9〜4.3ppm
l=1.1〜1.3ppm
【0086】
(実施例9)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノプロピルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例4で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥1−プロパノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とプロパノールのモノプロピルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体57.1g(収率84.0%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノプロピルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は17,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0087】
【化18】

【0088】
a=1.5〜2.2 ppm
b=3.1〜3.8ppm
c=3.1〜3.8ppm
d=3.1〜3.8ppm
e=3.1〜3.8ppm
f=3.8〜4.2ppm
g=1.5〜2.2ppm
h=2.6〜3.1ppm
i=2.6〜3.1ppm
j=12.1〜12.7ppm
k=3.8〜4.2ppm
l=1.5〜1.6ppm
m=0.8〜0.9ppm
【0089】
(実施例10)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノイソプロピルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例4で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥2−プロパノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物と2−プロパノールのモノイソプロピルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体52.2g(収率76.8%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノイソプロピルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は17,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0090】
【化19】

【0091】
a=1.5〜2.4ppm
b=3.1〜3.9ppm
c=3.1〜3.9ppm
d=3.1〜3.9ppm
e=3.1〜3.9ppm
f=3.9〜4.2ppm
g=1.6〜2.4ppm
h=2.6〜3.1ppm
i=2.6〜3.1ppm
j=12.1〜12.8ppm
k=3.9〜4.2ppm
l=1.1〜1.3ppm
m=1.1〜1.3ppm
【0092】
(実施例11)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノブチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例2で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥1−ブタノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60 ℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物と1−ブタノールのモノブチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体59.1g(収率86.9%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノブチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は18,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0093】
【化20】

【0094】
a=1.6〜2.2ppm
b=3.1〜4.2ppm
c=3.1〜4.2ppm
d=3.1〜4.2ppm
e=3.1〜4.2ppm
f=3.1〜4.2ppm
g=1.6〜2.2ppm
h=2.5〜3.1ppm
i=2.5〜3.1ppm
j=12.1〜12.6ppm
k=3.1〜4.2ppm
l=1.4〜1.6ppm
m=1.2〜1.4ppm
n=0.8〜0.9ppm
【0095】
(実施例12)
AcO−DEGMVE/無水マレイン酸モノメトキシエチルエステル共重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコに合成例4で得られたAcO−DEGMVEと無水マレイン酸の共重合体62.3gと、乾燥メトキシエタノール124.6gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とメトキシエタノールのモノメトキシエチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体59.1g(収率86.9%)を得た。
得られた共重合体のHNMR(測定溶媒DMSO−d)測定を行った結果、以下のように帰属されるシグナルが得られたことから目的物であるAcO−DEGMVEとマレイン酸モノメトキシエチルエステル共重合体が生成されていることを確認した。
また得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は18,000、多分散度(Mw/Mn)2.9であり、一般式(1)で示される構成単位の一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比は50/50であった。
【0096】
【化21】

【0097】
a=1.5〜2.4 ppm
b=3.1〜3.9ppm
c=3.1〜3.9ppm
d=3.1〜3.9ppm
e=3.1〜3.9ppm
f=3.1〜3.9ppm
g=1.5〜2.4ppm
h=2.6〜3.1ppm
i=2.6〜3.1ppm
j=12.1〜12.7ppm
k=3.9〜4.3ppm
l=3.1〜3.9ppm
m=3.9〜4.3ppm
【0098】
(比較例1)
メチルビニルエーテル(MVE)とマレイン酸モノメチルエステル重合体の合成
撹拌子と温度計を備えたガラスフラスコにメチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体(「GANTREZ AN−119」、アイエスピー・ジャパン(株)製)50.0gと、乾燥メタノール100gとを投入した。次に、ガラスフラスコをオイルバスに収容し、フラスコ内の温度が60℃になるまで昇温させた後、6時間加熱撹拌して反応させた。環状酸無水物とメタノールのモノメチルエステル化反応の終了後、反応物を濾過し、真空ポンプにて減圧乾燥して、目的の共重合体54.0g(収率89.6%)を得た。
【0099】
(比較例2)
エチルビニルエーテル(EVE)重合体の合成
十分乾燥し窒素置換を行った重合管に、エチルビニルエーテル7.13g(0.099mol)を仕込み、その後、トルエン45mLを仕込み、0℃に冷却した。20分後、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体47mg(0.331mmol)を添加して重合を開始した。18時間後、メタノール1.0mLを添加し重合停止反応を行った。反応終了後、反応液をトルエンで希釈して、脱イオン水で3回洗浄し、溶媒の減圧除去を行ったところエチルビニルエーテル重合体が6.31g得られた。
得られたエチルビニルエーテル重合体は、GPC測定により、Mw=11,900であることが確認された。このエチルビニルエーテル重合体のHNMR(測定溶媒CDCl)を測定したところ、原料であるエチルビニルエーテルに由来するビニル基のピークは消失しており、モノマーが消費されていることを確認した。
【0100】
(比較例3)
アセトキシエチルビニルエーテル(AcO−EVE)重合体の合成
十分乾燥し窒素置換を行った重合管に、アセトキシエチルビニルエーテル13.0g(0.099mol)を仕込み、その後、トルエン45mLを仕込み、0℃に冷却した。20分後、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体47mg(0.331mmol)を添加して重合を開始した。180時間後、メタノール1.0mLを添加して重合停止反応を行った。反応終了後、反応液をトルエンで希釈して、脱イオン水で3回洗浄し、溶媒の減圧除去を行ったところ、アセトキシエチルビニルエーテル重合体が10.2g得られた。
得られたアセトキシエチルビニルエーテル重合体は、GPC測定により、Mw=13,200であることが確認された。このアセトキシエチルビニルエーテル重合体の1HNMRを測定したところ、原料であるアセトキシエチルビニルエーテルに由来するビニル基のピークは消失しており、モノマーが消費されていることを確認した。
【0101】
実施例1〜3、5、8、10および比較例1〜3で作製した重合体について、以下の評価試験を行った。それらの結果を表1に示す。
(1)溶解性試験
上記で得られた各種重合体30部をエタノール70部に150rpmの撹拌下で加え、40℃で2時間加熱攪拌を行った。その後、エタノールに溶解したものを○とし、しないものを×として評価した。
【0102】
(2)成膜性試験
溶解性試験で得られた重合体のエタノール溶液(樹脂組成物)を、ポリエチレン(PE)基板上に、乾燥後の膜厚が9.0μmになるように塗布し、室温で3分間乾燥することでコーティング膜を作製した。乾燥後、室温環境下で流動性のない膜が形成されたものを○とし、流動性のない膜が形成しないものを×として評価した。
【0103】
(3)防汚性試験
親水性汚れとしてJIS関東ローム粉塵を選択し、コーティング膜にまんべんなく散布させてから、風量25m/minのエアーで20秒間吹き飛ばし、コーティング膜への付着量を以下のようにして評価した。また、疎水性汚れとしてカーボンブラックを選択し、親水性汚れの場合と同様の評価を行った。
評価方法は測色計(「CM−3600d」、コニカミノルタ(株)製)を用い、汚れ付着前のコーティング膜と汚れ付着後にエアーで粉塵を飛ばしたコーティング膜の色差ΔEを測定した。色差は数値で表現しており値が小さいほど、汚れが少なく防汚性が高いことを意味している。評価基準は以下の通りとする。なお、評価C以上が実用上問題のないレベルである。
評価基準
A:色差が0.3未満
B:色差が0.3以上1.0未満
C:色差が1.0以上3.0未満
D:色差が3.0以上6.0未満
E:色差が6.0以上
尚、前記成膜性試験で「×」であった比較例2及び3については、防汚性試験を実施しなかった。
【0104】
(4)耐水性試験
コーティング膜を15時間脱イオン水に室温下にて浸漬し、乾燥後、コーティング膜の重量減少率を算出し、下記評価基準に従って、コーティング膜の耐水性を評価した。なお、評価C以上が実用上問題のないレベルである
評価基準
A:重量減少率が20%未満
B:重量減少率が20%以上40%未満
C:重量減少率が40%以上60%未満
D:重量減少率が60%以上80%未満
E:重量減少率が80%以上
尚、前記成膜性試験で「×」であった比較例2及び3については、耐水性試験を実施しなかった。
【0105】
【表1】

【0106】
表1から、本発明のビニルエーテル共重合体は、低沸点アルコールへの溶解性に優れることが分かる。また本発明のビニルエーテル共重合体と有機溶剤を含む樹脂組成物は成膜性に優れ、形成された樹脂膜は防汚性と耐水性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される構成単位と、下記一般式(2)で示される構成単位とを含むビニルエーテル共重合体。
【化1】


(一般式(1)中、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項2】
重量平均分子量が250〜3,000,000である請求項1に記載のビニルエーテル共重合体。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される構成単位の前記一般式(2)で示される構成単位に対する含有量のモル比が40/60〜60/40である請求項1又は請求項2に記載のビニルエーテル共重合体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のビニルエーテル共重合体と、有機溶剤とを含む樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−180506(P2012−180506A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7473(P2012−7473)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】