説明

ビニルシート張設器、およびそれを用いたハウス用ビニルシートの張設方法、ならびにビニルシート端部仮着構造

【課題】 シート押えとして張設する多数本のマイカ線をそのまま撤去せず、しかも高所での危険な作業を一切不要とし、効率的且つ簡単、迅速なパイプハウスへのビニルシートの張設作業を可能とするビニルシート張設器を提供する。
【解決手段】 概ね楔状とし先鋭端夫々に牽引紐17を連結した一対の摺抜けカム15,15適所間に、シート保護板11と軌道案内アーム14,14とを吊下してなるものとし、牽引紐17の操作によって桁行きフレーム等にも引っ掛かることなくシートの張設を可能になるものとしたビニルシート張設器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビニルハウスへのビニルシートの張設に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであって、ビニルハウスおよびそれを組み立てる部品、ならびに組立て用器具類を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野、その他現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着眼点)
我が国は、南北に細長い国土を有し、その地形も内陸や内海、島、山地、平地、盆地、傾斜地等のように複雑である上、周囲を海に囲まれ、各種の海流や夏季に勢力を強める太平洋高気圧、および冬季にシベリアから張り出す寒気団等の影響を強く受ける等、各地で気象条件が大きく異なるという独特の気候風土を有しており、そうした厳しい自然環境を克服して安定した農業を維持するため、その土地々々に応じた様々な栽培形態が発達してきているが、太陽エネルギーを有効利用するようにした簡易施設としてのビニルハウスも、そうした目的で創出されたものの一例といえる。
【0003】
このビニルハウスは、作物を適温に保つと共に、風雨の影響から作物を守り、灌水、施肥管理、病虫害対策等、栽培期間中の作物の育成、管理に有利である上、年間を通じ、同じ作物を栽培する周年栽培を実現することができる等、露地栽培に比較して有利な点が多く、しかも簡易な施設であって経済的な負担も比較的少なくて済み、導入し易いという特徴も手伝って、広い農地を有さず、四季を通じて大きく気候を変化させる自然環境の中で、良質な農作物を安定生産したいとする我が国の農業事情にうまく適合したことから、トンネル栽培用の小型のものをはじめ、花卉類や野菜類栽培用の中形のもの、そして桜桃等果樹栽培用の大型のもの等、様々な用途、サイズのものとして全国的に広く普及、利用され、施設型農業の隆盛を見るに至っている。
【0004】
このように広く普及しているビニルハウス、特に中型、大型のビニルハウスは、一般的に,その多くが複数本のパイプフレームを、桁行き方向に所定間隔を隔てるようにして配置させ、丸屋根式、片屋根式、両屋根式、または二重勾配式等のパイプハウスを形成し、その外側表面に塩化ビニル等のプラスチックシートを張設した構造となっているが、この構造において欠かせないビニルシートは、単年または数年に渡って使用している中に、風雨や日光および寒暖の差を繰り返し受け、次第に劣化して透光性が低下し、太陽光の取り込みを充分に行えなくなる上、弾力を失って強風や降雨、雹、積雪等の外力によって容易に破けてしまうという事態を招来してしまうといった不都合がある外、桜桃を栽培する農家にあっては、梅雨期が桜桃果実の成熟期に重なることに起因する裂果の発生を防止するために、同時季には高所におけるビニルシートの張着作業が不可欠となり、また、降雪地帯等では、農閑期となる冬期間の雪害や風害等から施設を守らなければならないという切実な問題があり、必要に応じてその都度パイプハウスから取り外し、再び張設し直す等の危険な高所での作業が必ず伴うことになる。
【0005】
(従来の技術)
ところが、このパイプハウスに対するビニルシートの張設作業は、その目的上、ビニルシートがシームレスの大幅で長尺のものでなければならず、しかもそれ程頑丈ではないパイプフレームの最も高いところから左右に振り分けて桁行き方向全体に添設状としなければならないことから、作業が極めて大掛かりな上、かなり煩雑且つ危険性を伴うものとなるため、ビニルハウスを導入して施設型農業を営む農家にとって大きな作業負担を強いられることとなっており、こうした負担を少しでも軽減しようと、これまでにも、例えば特開平7−289092号公報に開示された熊本県発明「ハウスのシート張設装置」のように、ハウスの長手方向に配設した移動案内部に沿って、シート案内部を移動可能に設け、該シート案内部にシートの先端部を係止し、屋根面に沿って自動的に移動させながらシートを張掛けできるよう構成してなるものや、特開平8−214710号公報の早川発明「ビニルハウスにおける屋根シート展張方法及び屋根シート展張用補助具」に示されている、ハウス骨格の屋根上に、桁行き方向に移動可能な走行部を有する補助具と、屋根のアーチ形状に沿って棟と略直交するシート載置架台とを備え、ジグザグ状に折り畳まれたシートを、該シート載置架台上に搭載し、走行部を桁行き方向に移動させながら、シートを展開状に張設してゆくようにしたもの等によって代表されるような、ビニルハウスを設営するための各種技術についての開発、提案がなされている。
【特許文献1】(1)特開平7−289092号公報 (2)特開平8−214710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
しかしながら、このような従前からのシート張架設装置や屋根シート展張用補助具等は、その施設が比較的大型を対象としていて、設置に際して大掛かりな取付け工事と、それに伴って発生する多額の費用とを要する上、ビニルハウス設営後の撤去作業にも多くの労力を費やさざるを得ないものであり、その上、ビニルハウスに張設したシートを外側から抑え込むために、桁行き方向所定間隔置きであって、骨格体梁間方向全体に掛け渡されている多数本のマイカ線が張られたままでのビニルシートの張設作業が不可能であり、ビニルシートを張り替える際には、全てのマイカ線を一度撤去してしまい、ビニルシートを張設した後に、再び全てのマイカ線を掛け直す必要があり、今度はハウスの屋根に多数本のマイカ線を掛け渡す作業のために多くの時間と手間とを費やさざるを得なくなる上、その間にも荒天で強風や風雨雪等が吹き付けられるとシートがバタつき、マイカ線を掛け渡す作業が非常に困難なものとなってしまう等、張り替え作業の負担を簡単に軽減することができるものではなかった。
【0007】
(発明の目的)
この発明は、以上のような状況に鑑み、複数本のマイカ線を撤去することなく、高所での危険な作業を一切不要とし、効率的且つ簡単。迅速なパイプハウスへのビニルシートの張設作業を可能とすることはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造のビニルシート張設器、およびそれを用いた新規なハウス用ビニルシートの張設方法、ならびに新規なビニルシート端部仮着構造を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述していくこととする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明に包含されるビニルシート張設器は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした一対の摺抜けカムを、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを超える間隔を置いて配した上、牽引紐の二股に分岐した各端部にそれら摺抜けカムの夫々の先鋭端を連結すると共に、それら摺抜けカム所定箇所間にはシート保護板を揺動自在に吊下する一方、各摺抜けカムまたはシート保護板に一体的にか、もしくは各摺抜けカムの側近にかの何れかに軌道案内機構を設けてなるものとした構成を要旨としたビニルシート張設器である。
【0009】
この発明のビニルシート張設器を、換言すれば、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムまたはシート保護板に一体的にか、もしくは各摺抜けカムの側近にかの何れかに軌道案内機構を設ける一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を牽引紐の二股に分岐した各端部に連結してなるものとしたビニルシート張設器となる。
【0010】
上記のとおりの基本的な構成からなるこの発明のビニルシート張設器を、より具体的なものとして示すと、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした一対の摺抜けカムを、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを超える間隔を置いて配した上、牽引紐の二股に分岐した各端部にそれら摺抜けカムの夫々の先鋭端を連結すると共に、それら摺抜けカム所定箇所間にはシート保護板を揺動自在に吊下する一方、各摺抜けカムの側近の外側または内側には夫々軌道案内アームが揺動自在に吊下してなるものとしたビニルシート張設器ということができる。
【0011】
これを換言すると、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を牽引紐の二股に分岐した各端部に連結してなるものとしたビニルシート張設器であるということもできる。
【0012】
上記までの構成によるこの発明のビニルシート張設器には、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁を、その横長寸法を越える水平棒に吊着し、該水平棒の左右端夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を牽引紐の二股に分岐した各端部に連結してなるビニルシート張設器を包含する。
【0013】
同様に、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってパイプフレーム内側の地上付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延伸され、二股に分岐した各端部に連結してなるビニルシート張設器も包含されている。
【0014】
また、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぎ、桁行き方向両端がさらに約30cm程度ずつの余裕幅を確保可能な横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってパイプフレーム内側の地上付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延伸され、二股に分岐した各端部に、連結してなるビニルシート張設器も同様に包含される。
【0015】
さらに、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぎ、桁行き方向両端がさらに約30cm程度ずつの余裕幅を確保可能な横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、シート保護板の縦寸法を越える長さとした概略L字形状もしくは概略三角形状の軌道案内アームを夫々揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってパイプフレーム内側の地上付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延伸され、二股に分岐した各端部に連結してなるものとした構成のビニルシート張設器も包含している。
【0016】
(関連する発明1)
上記した構成によるビニルシート張設器に関連し、この発明には、それを用いたハウス用ビニルシートの張設方法も包含しており、その基本的な構成は、以下に示すとおりのものである。
即ち、桁行き方向に適宜間隔を隔て、ハウス桁行き方向に直交する複数本のパイプフレーム端側に配置した複数個のビニルシート張設器の、各シート保護板外側面にビニルシート束を適宜括り着け、パイプフレームの上側に掛け回し、反対側となるパイプフレーム端側もしくは隣接するハウスフレームとの谷部分付近から、パイプフレームの下側地上付近に達する牽引紐を、適宜牽引操作することにより、桁行き方向何れか一端側配置のビニルシート張設器の左右摺抜けカムを、垂れ下がり状態の複数本のマイカ線および錘棒の内側に進入させると共に、シート保護板が、パイプフレームの外側を通るものとし、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームに跨り、摺動移動させて桁行きフレームを次々に乗り越えるよう上昇させ、引き上げの途中に軌道案内機構が桁行きフレームの上側周面に自動的に接地して上昇位置を維持するものとし、ビニルシート束の一端縁を、張設開始側のパイプフレーム端側に配置させて次第に展開状としながら、桁行き方向に連なり配置された他の各ビニルシート張設器を、隣接するものから順次、同様に牽引、操作を繰り返して棟付近を乗り越え、反対のパイプフレーム端側もしくは隣接するハウスフレームとの谷部分付近まで、各々到達させるよう牽引操作する過程で、各シート保護板のビニルシート束を、複数本のマイカ線および錘棒の下側となるハウスフレーム上面に沿って展開した後、錘棒をパイプフレームの張設開始端側の適所に仮固定して各マイカ線を緊張させ、ビニルシートを張設するようにした構成を要旨とする、前記何れかに記載のビニルシート張設器を用いたハウス用ビニルシートの張設方法である。
【0017】
これをより具体的な構成によって示すならば、桁行き方向に適宜間隔を隔て、ハウス桁行き方向に直交する複数本の軒先状フレーム端よりも下方に配置した複数個のビニルシート張設器の、各シート保護板外側面にビニルシート束を適宜括り着け、パイプフレームの上側に掛け回し、反対側となる軒先状フレーム端側もしくは隣接するハウスフレームとの谷部分付近から、パイプフレームの下側地上付近を通り戻る無端状の牽引紐を、適宜牽引操作することにより、桁行き方向何れか一端側配置のビニルシート張設器の左右摺抜けカムを、垂れ下がり状態の複数本のマイカ線および錘棒の内側に進入させると共に、シート保護板が、軒先状パイプフレーム端の外側を通るものとし、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームに跨り、摺動移動させて桁行きフレームを次々に乗り越えるよう上昇させ、引き上げの途中に軌道案内機構が桁行きフレームの上側周面に自動的に接地して上昇位置を維持するものとし、ビニルシート束の一端縁を、軒先状パイプフレーム端付近に配置させて次第に展開状としながら、桁行き方向に連なり配置された他の各ビニルシート張設器を、隣接するものから順次、同様に牽引、操作を繰り返して棟付近を乗り越え、反対側の軒先状パイプフレーム端もしくは隣接するハウスフレームとの谷部分付近まで、各々到達させるよう牽引操作する過程で、各シート保護板のビニルシート束を、複数本のマイカ線および錘棒の下側となるハウスフレーム上面に沿って展開した後、錘棒を軒先状パイプフレーム端付近に仮固定して各マイカ線を緊張させ、ビニルシートを張設するようにしたハウス用ビニルシートの張設方法ということができる。
【0018】
(関連する発明2)
更に、この発明の骨幹を成しているビニルシート張設器とそれを用いたハウス用ビニルシートの張設方法とに関連し、この発明にはビニルシート端部仮着構造も含んでいて、その構成は以下のとおりのものである。
即ち、連棟式ビニルハウスの隣接する屋根間谷部分に沿って設置された雨樋の底面略中央に、桁行き方向に平行状となる直立状姿勢で、桁行き方向に適宜間隔を隔てて点在する複数個の環状金具の両側に、繋着棒の1本ずつ計2本を平行状に配置させ、各環状金具には夫々、2本の繋着棒に跨る断面略コ字状の鞍型に形成され、その中央一側縁に環状金具のリング状内周面に係合可能となる係合溝を刻設したものとしてなる鈎金具を装着し、仮固定状とし、該繋着棒中途複数適所の夫々に一端を繋着し、各他端がパイプフレーム棟上側を回り、反対側のパイプフレーム他端側適所に達するよう延伸された複数本のマイカ線、および各マイカ線の他端に、略水平状に吊下げ連繋された錘棒とを設けてなるものとした構成からなるビニルシート端部仮着構造である。
【0019】
そして、より具体的には、連棟式ビニルハウスの桁行き方向に直交するパイプフレームの一方端側適所に、桁行き方向に渡って平行状に設置された繋着棒と、該繋着棒中途複数適所の夫々に一端を繋着し、各他端がパイプフレーム上側を回り、反対側のパイプフレーム他端側適所に達するよう延伸された複数本のマイカ線、および各マイカ線の他端に、略水平状に吊下げ連繋された錘棒とを設け、該錘棒が、軒先状に形成されたパイプフレーム端を乗り越え、その近傍の桁行き方向のパイプフレームに平行状となるよう配置された際に、同パイプフレームおよび錘棒に対し、共に外側から嵌着し仮固定状とする概略断面C字状の嵌着金具の複数を、添設可能としてなるものとしたビニルシート端部仮着構造ということができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、この発明のビニルシート張設器によれば、牽引紐によって上昇された左右摺抜けカム夫々の先鋭端が、マイカ線および錘棒の内側と、パイプフレーム外側との間に進入し、シート保護板の外側面に括り着けたビニルシート束を、桁行き方向に隣接する少なくとも2フレームに跨った状態で上昇させると、軌道案内機構または軌道案内アームが、2フレームに係合状となって軌道から逸脱するのを阻止するものとなる上、上昇の途中で牽引紐から手を放し、牽引操作を中止した場合に、直下のパイプフレーム上に乗り上げ状となって上昇位置を確保するものとなるので、従前までであれば、複数人の作業員もしくはウインチや農業用車両による牽引等の補助が不可欠とされてきたハウスフレームへのビニルシートの張設作業が、一人の作業員であっても地上における作業によって確実且つ比較的容易にビニルシート束をパイプフレーム棟近傍まで上昇させ、さらに棟を越えて反対側のパイプフレーム端側まで誘導し安全で、速やかにビニルシートを張設することができるようになるという秀れた特徴が得られるものである。
【0021】
また、この発明のハウス用ビニルシートの張設方法によれば、複数のビニルシート張設器をビニルハウスの桁行き方向に沿って配置したものとすることにより、ビニルシート束を桁行き方向に沿って隣接する各ビニルシート張設器に括り着け状として、桁行き方向の何れか一方端側のビニルシート張設器から、桁行き方向反対端側のビニルシート張設器までの各牽引紐を順次、牽引操作して、パイプフレーム外側にビニルシートを展開状に張設することができるものとなる上、ビニルシートをパイプフレームの反対端側まで牽引した後の各ビニルシート張設器は、パイプフレームとビニルシートとの間に配置された状態のまま各マイカ線を締め付けるか、パイプフレーム間から一時的に取り外してマイカ線を締め付けてビニルシートを張設することができる上、長期に渡る使用でビニルシートが老朽化した際には、ビニルシートを引き摺り降ろして、再度各ビニルシート張設器を、パイプフレームの張設開始端側に牽引移動させるか、あるいはパイプフレームの張設開始端側に再装着して、ビニルシートの張設作業を実施可能とすることができ、一人の作業員であっても、従来までには不可能であった程度に迅速にビニルシートの張設作業を実行できるものとなる上、梯子やパイプフレーム上に登っての高所作業を不要として安全性を格段に高めることができるという大きな効果を発揮するものである。
【0022】
さらに、この発明のビニルシート端部仮着構造によれば、連棟式ビニルハウスの屋根間谷部分に沿って設置された雨樋上に、2本の繋着棒を仮固定状とすることができるので、1本のみの繋着棒を設けた場合に比較して複数本のマイカ線を繋着した際の耐久強度を約2倍に高めることができ、より確実なビニルシートの締め付けが可能となり、強風や豪雪等の荒天に見舞わられたときにも、より高い強度を得ることができるものとなり、また、中途複数箇所にマイカ線を繋着し、垂下状とされた錘棒が、軒先状をなすパイプフレーム端を乗り越え、その近傍の桁行きフレームに平行状となった際に、これら錘棒およびパイプフレームの双方に跨り、嵌着する複数の嵌着金具を添設可能とした結果、ビニルシートの仮着作業を簡便且つ効率的に行うことができるようになり、作業効率を一段と向上させることができるという顕著な効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
摺抜けカムは、シート保護板の左右端あるいは水平棒の左右端を、牽引紐の二股に分岐された端部に連結して吊上げ、牽引操作可能とすると共に、その先鋭端形状と牽引紐との連結構造によってビニルハウスのパイプフレームを下側に、マイカ線およびそれに連結された錘棒を上側に、自動的に選り分け可能とすると共に、その漸次巾を増して概ね楔状とした側面形によってシート保護板(水平棒)が、軒先状に突設されたパイプフレーム端を、自動的に乗り越えるよう案内可能とする複合的な機能を有するものであり、しかも左右摺抜けカム間に、パイプフーム桁行き方向に直交状となる少なくとも隣接する2フレームに跨り状配置となって軌道案内機構の一部を構成するものとなり得るので鉛直平板型の駒状に形成されたものとするのが望ましいが、概略楔状の側断面形状を含む、その外の立体形状物とすることも可能であり、パイプフレームに接触する外周面に補強や摩擦低減用の硬質樹脂プレートや金属プレート等を貼着したものとすることができる。
【0024】
牽引紐は、左右摺抜けカム、シート保護板(水平棒)および軌道案内機構を含むビニルシート張設器の本体部分を、ビニルハウス内外側の地上付近からの人力による牽引操作により、ビニルハウスパイプフレーム上側面の桁行き方向に直交する向きに牽引し、横断状に移動可能とする機能を果たすものであり、ビニルシート束を括り着けたビニルシート張設器の本体部分を牽引操作するに十分な強度を有するものとしなければならず、接触によってパイプフレームに不用意に損傷を与えない素材を選択すべきであり、ビニルハウスパイプフレームの桁行き方向に直交する方向の一方端に配置されたビニルシート張設器に一方端側を連結し、他端側を、パイプフレームの上側に掛け回してビニルハウスの他方端から垂下したものとすることができる外、ビニルハウスパイプフレームの桁行き方向に直交する方向に、上下側を一周する無端状のものとし、その中途適所から延伸し、二股に分岐した端部をビニルシート張設器の左右摺抜けカムの各先鋭端に連結したものとすることができる。
【0025】
シート保護板は、その外側面にビニルシート束を括り着けて、ビニルハウス桁行き方向に直交するパイプフレームの少なくとも隣接する2本に跨り、これらパイプフレームに沿って摺動移動する過程でビニルシート束を展開させ、パイプフレーム上側にビニルシートを張設可能とする機能を果たすものであり、ビニルシート束を搭載しても容易に変形しない程度に十分な強度を有し、あるいは変形し易い場合等、必要に応じて水平棒を設ける等して、ビニルハウス桁行き方向に直交するパイプフレームの少なくとも隣接する2フレーム間の距離を僅かに越える程度の幅寸法を有し、ビニルシート束を添着できる程度の縦寸法に設定した略矩形平板状に形成したものとすべきであり、比較的軽快な牽引操作性を確保できる程度の重量に制限されたものとするのが望ましく、例えば合成樹脂板や合板、木板製等とするのが良い。
【0026】
軌道案内機構は、ビニルシート張設器が、ビニルハウスパイプフレームに沿って上昇して行く過程で、常時垂れ下がり状となって桁行き方向に直交する少なくとも隣接した2フレームから逸脱するのを阻止して軌道の確保を可能とし、牽引紐への牽引入力を中止した際に、パイプフレームの桁行き方向に向けて配設された複数本のパイプフレームの水平状をなす外周壁面に自動的に係合して、脱落を阻止するものとなってビニルシート張設器の牽引上昇位置を確保可能とする機能を果たすものであり、ビニルシート張設器を上昇させる際に、桁行き方向に向けて配設された複数本のパイプフレームに干渉したときには、揺動状に待避して自動的に係合を免れる構造としなければならず、例えば、水平棒の左右端側に揺動自在に吊着された概略L字型もしくは概略三角形状の枠状部材からなる軌道案内アームとすることができる外、摺抜けカムの下端もしくはシート保護板の下端に、同様の機能を果たす鈎状部材を一体的に形成したものとすることが可能である。
【0027】
水平棒は、シート保護板を、左右の摺抜けカムに追従可能とするよう吊下げ、連結すると共に、各摺抜けカム間に設定された距離、およびシート保護板の横巾を確保、維持する機能を果たすものであり、ビニルシート束を括り付けたシート保護板を吊下げ、ビニルハウスのパイプフレームに沿って引き上げるに十分な強度を有する棒状体から形成されたものとすべきであるが、シート保護板の縦方向端縁に一体化されたものとするか、もしくはシート保護板の縦方向端縁の左右端から摺抜けカムや係止脚を連結するための同心状軸部を左右水平状に突出、形成したものとすることが可能であり、ビニルハウス桁行き方向に直交するパイプフレームの少なくとも隣接する2本に跨る長さとすべきである。
【0028】
ハウス用ビニルの張設方法は、ビニルハウスの丸屋根型や両屋根型等の形式や単棟式や連棟式等の種類に拘らず、略同様の作業工程に従ってビニルシートの張設作業を進めることが可能であり、例えば、野菜や草花等の栽培に適するドーム型のビニルハウスであっても、さらに、桜桃や葡萄、無花果等の果樹用に設置された背の高いビニルハウス等にも新設ハウスか、既存ハウスかに拘らず好適に実施することが可能であり、複数のビニルシート張設器を桁行き方向に沿って配置させて、1人または小人数の作業員により、ビニルシートを括り着けた各ビニルシート張設器を適宜、牽引操作することにより、安全且つ簡便にビニルシートを展開、張設することを可能とするものであるが、各ビニルシート張設器の牽引操作手順は、その都度適宜判断して行うことが可能であり、ビニルシートの展開作業は、桁行き方向に渡り、略均一な度合いで進展させ、ビニルシートに不要な負担が掛からないよう牽引操作すれば足りるものであって、各ビニルシート張設器の牽引順序を厳密に制限する必要はないが、桁行き方向の何れか一方端側に配置されたビニルシート張設器から、反対方向端側に隣接するビニルシート張設器に、順次牽引操作を加えるのが、好ましいものであるということができる。また、張設作業に携わる作業員数にも特段の制限を受けるものではなく、1人であっても迅速且つ安全に作業を進めることが可能であり、また、作業員数を増加すれば、それに応じて短時間の中に張設作業を完了することが可能となる。
【0029】
マイカ線は、ビニルハウスパイプフレーム上側に展開されたビニルシート等を皺や弛みが発生しなよう抑え込み張り付けるものであって、丸屋根型の場合には、一端を桁行き方向に直交するパイプフレームの一方端側の適所、屋根型の場合には軒先状のパイプフレーム端付近、また連棟型の場合には、谷部分に設置された雨樋付近に繋着し、パイプフレームの桁行き方向に直交する方向に掛け回され、反対側となるパイプフレーム端側に垂下された他端には、水平状の錘棒を繋着可能とする機能を果たすものであり、ビニルシートを張着するに十分な強度を有すると共に、ビニルシートに対して不用意に損傷を与えない形状、素材製のものとしなければならない。
【0030】
繋着棒は、複数本のマイカ線の各一端を、ビニルハウスの桁行き方向に直交する複数のパイプフレームの一方端側適所に、仮固定可能とするか、または連棟式ビニルハウスの隣接する屋根との谷部分に設置された桁行き方向に沿う雨樋底面上に、仮固定可能とする機能を果たすものであり、各マイカ線からの引張入力に耐える強度を有するものとしなければならず、雨樋底面の桁行き方向に沿う複数箇所に立設された環状金具に、1本を桁行き方向から挿し通して仮固定したものとすることができる外、雨樋底面の略中央に桁行き方向に平行状となる直立状姿勢で、桁行き方向に適宜間隔を隔てて点在する複数個の環状金具の両側に1本ずつ計2本平行状に配置され、各環状金具には夫々、2本の繋着棒に跨る断面略コ字状の鞍型に形成され、その中央一側縁に環状金具のリング状内周面に係合可能となる係合溝を刻設したものとしてなる鈎金具を装着し、仮固定状としたものとすることができる。
【0031】
環状金具は、雨樋の底面適所に、ビニルハウス桁行き方向に平行状とした繋着棒の中途複数箇所を、夫々仮固定可能とする機能を果たすものであり、繋着棒を挿し通し可能なリング状開口部分を有して、雨樋に強固に固着されたものとしなければならず、マイカ線の配置箇所に重ならないよう、桁行き方向に沿って点在状に配置されたものとすべきであり、リング状開口部分を、ビニルハウス桁行き方向に略直交する方向に向けて、その左右側に繋着棒を1本ずつ平行状に装着可能なものとするのが望ましい。
【0032】
鈎金具は、環状金具に脱着容易に装着され、環状金具の両側に平行状に配置された2本の繋着棒の双方に跨り係合して、各繋着棒の中途複数箇所を桁行き方向に渡って夫々雨樋底面に仮固定可能とする機能を果たし、工具類を必要とせずに脱着できるものとすべきであり、概略コ字状の鞍型に形成され、その中央一側縁に環状金具のリング状内周面に係合可能な係合溝を刻設したものとするのが望ましい。
【0033】
錘棒は、一端を繋着棒に繋着した複数本のマイカ線の各他端を、繋着棒とは棟を越えて反対側となるパイプフレーム端部側適所に仮固定状とすることにより、パイプフレーム上面にビニルシートを張り付け可能とする機能を果たすものであって、繋着棒と同様に各マイカ線からの引張入力に耐える強度を有するものとしなければならず、各マイカ線を垂れ下げ状に緊張可能な程度の重量を桁行き方向に渡り、略均質に確保できるものとすべきであり、屋根型のビニルハウスの場合には、軒先状のパイプフレーム端を乗り越え、その近傍の桁行き方向のパイプフレームに平行状となるよう配置された際に、同パイプフレームおよび錘棒に対し、共に外側から嵌着状となって仮固定状とする概略断面C字状の嵌着金具の複数を、添設可能としてなるものとすることができる。
【0034】
嵌着金具は、錘棒が、桁行き方向のパイプフレームに平行状となった際に、これら錘棒および桁行きフレームの複数適所を、夫々仮固定状に連結してしまう機能を果たすものであり、工具類を使用せずとも比較的簡便に脱着可能なものとしなければならず、間にビニルシートの縁部分を挟み込み状とした錘棒と桁行きフレームとに対し、共に外側から嵌着して仮固定可能とする概略断面C字状の部品とするのが望ましく、バネ性に秀れた金属板や金属棒を、適宜成型することによって形成されたものとすることができる。
【0035】
ハウスフレームは、農業用栽培施設、簡易倉庫、車庫を形成可能とする骨格部分を形成する機能を果たすものであり、丸屋根単棟式、丸屋根連棟式、片屋根式、スリークォーター式、両屋根式、両屋根連棟式、二重勾配式、および果樹用の高屋根式等の代表的な形式を含む何れかの構造に組立てられたパイプフレームからなり、外側の特に屋根に相当する範囲の上側に渡り、ビニルシートを張着可能なものであれば良く、連棟式の場合には互いに隣接する屋根間に形成される谷部分に沿って雨樋を装着し、桁行き方向に隣接するパイプフレーム間の夫々に、桁行き方向に直交するマイカ線を掛け渡し、一端を一方のパイプフレーム端側に結着し、これとは反対側のパイプフレーム端側に延伸された他端を、桁行き方向に向けられたパイプフレーム適所に仮固定可能とした錘棒の対応適所に夫々結着したものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例】
【0036】
図1のビニルシート張設器の斜視図、図2のビニルシート張設器の正面図、図3のビニルシート張設器の側面図、図4のビニルシート張設器を用いたビニルハウスの斜視図、図5の1本の繋着棒を装着した雨樋の斜視図、および図6の2本の繋着棒を装着した雨樋の斜視図に示される事例は、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした一対の摺抜けカム15,15を、ビニルハウス2桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレーム21,21,……の少なくとも隣接する2フレーム21,21を超える間隔を置いて配した上、牽引紐17の二股に分岐した各端部にそれら摺抜けカム15,15の夫々の先鋭端を連結すると共に、それら摺抜けカム15,15所定箇所間にはシート保護板11を揺動自在に吊下する一方、各摺抜けカム15,15の側近の内側には夫々軌道案内アーム14,14が揺動自在に吊下さられてなるものとしたこの発明に包含されるビニルシート張設器1における代表的な実施例を示すものである。
【0037】
当該ビニルシート張設器1は、図2中に示すように、ビニルハウス2の桁行き方向に直交するパイプフレーム21の隣接する2本のフレーム21,21に跨る横寸法A(約60cm)に、桁行き方向外側に夫々横寸法B(約30cm)を加えた、横巾寸法C(120cm)、および所定縦寸法に設定された矩形平板状のシート保護板11を有し、該シート保護板11の上端縁には、横巾寸法Cを僅かに越える長さに設定された水平棒12が、複数の吊下げ金具13,13,……を介して連結されたものとなっている。これを換言すると、該水平棒12の中途適所にシート保護板11の上端縁を、その板厚方向に揺動自在とするよう垂れ下げ、連結している。
【0038】
水平棒12のシート保護板11左右巾端直近となる両端付近には、夫々、金属棒をシート保護板11の縦寸法を越える高さ寸法の側面形状略二等辺三角形状に折曲し、頂角部分に連結用の環を一体形成した軌道案内アーム(軌道案内機構)14,14が、その環部分をシート保護板11と同方向に揺動自在とするよう連結、垂下された上、さらに、各軌道案内アーム14,14の左右外側となる水平棒12両端には、先鋭端16から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形状を概ね平板楔状とした夫々摺抜けカム15,15の巾広部分が、その肉厚方向に貫通され、揺動自在に連結されてなるものとしてある。
【0039】
該摺抜けカム15,15双方の先鋭端には、図4中に示すように、果樹用に設営された丸屋根型のビニルハウス2の屋根部分のパイプフレーム21の上側を通り、軒先状のパイプフレーム21端部を通り、ビニルハウス2内側背丈辺りを通過して戻る無端状の牽引紐17の中途適所から延伸、分岐された牽引紐17端が繋着されており、各摺抜けカム15,15は互いに同形状であって、図3中に示すように、先鋭端16から、巾広部分の水平棒12連結部分までの水平距離寸法Wが、ビニルハウス2の桁行き方向に直交状となる屋根部分のパイプフレーム21の軒先状となる端部から、最も軒先側の桁行きフレーム22がクロスジョイントによって連結された部分までの水平距離寸法Dよりも大きく、より具体的には、該寸法Wは、寸法Dの約1.5倍に設定(摺抜けの際の干渉をより確実に防ぐために、寸法Wは、寸法Dの1.5倍を越える大きさとするのが望ましい。)し、しかも、先鋭端16から水平棒12連結部分までの垂直距離寸法Lが、屋根部分のパイプフレーム21の軒先状となる端部から最も軒先側の桁行きフレーム22をクロスジョイントによって連結する辺りまでの垂直距離寸法Hよりも大きく設定してある。
【0040】
各摺抜けカム15,15について表現を変えて示すと、同図3中に示すように、ビニルハウス2の桁行き方向に直交状となる屋根部分のパイプフレーム21の軒先状となる端部から、最も軒先側の桁行きフレーム22がクロスジョイントによって連結される辺りまでの水平距離寸法Dは、摺抜けカム15先鋭端16から、巾広部分の水平棒12連結部分までの水平距離寸法Wよりも小さく設定したもの、より具体的には寸法Dを、W/1.5に設定(摺抜けの際の干渉をより確実に防ぐようにするため、寸法Dは寸法W/1.5よりも小さくするのが望ましい。)したものとしてあり、さらに、同じく干渉を防ぐという目的のために、屋根部分のパイプフレーム21の軒先状となる端部から、最も軒先側の桁行きフレーム22がクロスジョイントによって連結されるようにした部分までの垂直距離寸法Hを、先鋭端16から水平棒12連結部分までの垂直距離寸法Lよりも小さく設定してある。
【0041】
このように形成されたビニルシート張設器1を装着するビニルハウス2は、図4中に示すように丸屋根連棟式のものであり、隣接する屋根間の谷部分には、桁行き方向に沿って雨樋3が装着されており、図5の1本の繋着棒を装着した雨樋の斜視図に示すように、該雨樋3の底面中央には、桁行き方向に所定間隔を隔てて点在状となる箇所の夫々に、環状金具32,32,……の座金部分を有する雄ネジ部33,33,の夫々を底面板厚方向に穿孔された鉛直貫通孔31,31,……に、上方から下方に向けて装着し、底面下からナット34,34,……を螺着し、各環状金具32,32,……のリング状開口を桁行き方向に向けて固定し、それら環状金具32,32,……に桁行き方向から繋着棒35を装着したものとすることにより、隣接するビニルハウス2双方の雨樋3側に延伸されたマイカ線4,4,……の端部側を1本の繋着棒35に結着可能としてある。
【0042】
また、図6の2本の繋着棒を装着した雨樋の斜視図に示すように、雨樋3底面上に点在された各環状金具32,32,……のリング状開口を、桁行き方向に対して直交する方向に向け、その両側に1本ずつ合計2本の繋着棒35,35を配置させた上、コ字状の鞍型に形成され、中央の一側縁に環状金具32のリング状内周面に係合可能な係合溝37を刻設してなる鈎金具36を、同図6中に白抜き矢印で示すように、一端側から挿し通して一旦、両端上向きの姿勢とした上、実線矢印で示すように両端下向きの姿勢として、2本の繋着棒35,35に鞍跨り状となって仮固定したものとし、隣接するビニルハウス2双方の雨樋3側に延伸されたマイカ線4,4,……の端部側を2本の繋着棒35に、夫々結着できるようにしてある。
【0043】
このように2本の繋着棒35,35に適宜結着したマイカ線4,4,……の夫々は、連棟の端部に配置したビニルハウス2の場合、桁行き方向に配列された丸屋根型のパイプフレーム21,21,……間の略中央付近を通り、軒先状となるパイプフレーム21,21,……端部側に延伸され、それら各マイカ線4,4,……の端部は、図4中に示すように、ビニルハウス2桁行き方向に渡る長さに設定してある錘棒41の対応する中途適所に夫々繋着されており、該錘棒41によって各々のマイカ線4,4,……には常時適度の張力が加えられたものとなるようにしている。
【0044】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明のビニルシート張設器1は、この発明に包含されるビニルシート端部仮着構造を用いたビニルハウス2によって、この発明に包含されるハウス用ビニルの張設方法を実施可能とするものであり、以下ではそのビニルシートの張設作業の手順に従い、その作用について述べて行くこととする。
【0045】
ビニルハウス2の桁行き方向に1本のフレーム21を隔てる毎に隣接する2フレーム21,21の夫々に、図4中に示すように、ビニルシート張設器1,1を装着し、雨樋3に固定された2本の繋着棒35,35に、各一端を繋着して各桁行き方向に直交状配置となるパイプフレーム21,21,……間に夫々1本ずつ配された複数本のマイカ線4,4,……およびそれらの各他端に繋着された錘棒41が、雨樋3が装着されたのとは反対側となる軒先状パイプフレーム21,21,……端側に垂れ下がり状となって、各ビニルシート張設器1,1の無端状牽引紐17,17の上側から被さる状態となっており、従って屋根型のパイプフレーム21,21,……と、マイカ線4,4,……およびその錘棒41との間に、無端状牽引紐17,17が装着されている。
【0046】
各無端状牽引紐17,17の二股に分岐された端部に吊り下げられたビニルシー張設器1,1は、ビニルシート5張設作業の初期段階において屋根型のパイプフレーム21,21,……の軒先状端部の下方であって地上付近の高さ位置に吊り下げられており、この初期状態のとき、ビニルハウス2の屋根に装着するために、進行方向への展開容易とするよう、ハウス桁行き方向に直交する方向に幾重かに折り畳んでなるビニルシート束5を、図7のビニルシート束を装着したビニルシート張設器を示す斜視図中に示してあるように、各シート保護板11,11の縦方向上側縁に添わせ、複数個のパッカー18,18,……によって挾着、仮固定状とした上、ビニルハウス2のパイプフレーム21,21,……の内側、地上付近に垂れ下がり状となっている各無端状の牽引紐17,17の中、桁行き方向の一方の端部側に位置する一個のビニルシート張設器1の牽引紐17を、同図7中の白抜き矢印方向に牽引操作すると、その牽引操作を受けたビニルシート張設器1は、図8の上昇を開始するビニルシート張設器の側面図中に示すように、桁行き方向のパイプフレーム22,22の上方外側に掛け回された無端状牽引紐17によって牽引、上昇していくことになる。
【0047】
そして、図9の錘棒を潜り抜けようとするビニルシート張設器の側面図中に示すように、左右摺抜けカム15,15の各先鋭端16,16が、その下側面を桁行きフレーム22の周面に接触させ、またその上側面が、錘棒41の周面に接触するようにして屋根部分のパイプフレーム21,21,……とマイカ線4,4,……との間に円滑に潜り込み、上昇を継続するものとなり、図10の軌道案内アームを桁行きフレームに係合したビニルシート張設器の側面図中に示すように、各摺抜けカム15,15が、最初の桁行きフレーム22を乗り越えてさらに上昇し、これに続く水平棒12およびビニルシート束5を括り着けたシート保護板11が、最初の桁行きフレーム22を乗り越えた後に、軌道案内アーム14,14が、同桁行きフレーム22への不要な干渉を回避するよう、略二等辺三角形の傾斜辺部分を摺動接触させて外側に揺動、待避しながら上昇し、略二等辺三角形の底面が該桁行きフレーム22を乗り越えたときに、障害物となっていた最初の桁行きフレーム22から外れ、解放状となった各軌道案内アーム14,14が重力によって垂れ下がり状となり、実質的にビニルハウス2内側に自動的に揺動して該桁行きフレーム22周面上に載置状となって係合し、ビニルシート張設器1を同図10中に示した高さ位置に係止するものとなり、この状態では、作業員が、牽引紐17を手放したとしても降下することもなくなり、その上昇位置を維持する。
【0048】
このようにして1個目のビニルシート張設器1の上昇位置を確保した後、隣接する2個目のビニルシート張設器1の牽引紐17を、図7中に示す白抜き矢印の方向に牽引操作することにより、1個目のビニルシート張設器1と同様に、図8ないし図10に示すよう上昇させ、桁行きフレーム22上に係止させた後、3個目以降のビニルシート張設器1がある場合には、順次同様の牽引操作を繰り返すこととなり、各ビニルシート張設器1,1,……の最初の上昇操作を終えた後に、各シート保護板11,11,……に括り着けられているビニルシート束5の一部端縁側を展開させてパイプフレーム21,21,……の軒先状の端部付近に張設状とし、錘棒41および各マイカ線4,4,……で借り抑えの状態とした上で、再度1個目のビニルシート張設器1の牽引操作を開始して、第二の桁行きフレーム22を乗り越えさせて同様に上昇位置を確保した後、順次2個目以降のビニルシート張設器1を上昇させ、第二の桁行きフレーム22周面上に係止状態とし、各ビニルシート張設器1,1,……の上昇に伴い、ビニルシート束5を上昇分ずつ展開させて行くようにする。
【0049】
このような作業を桁行き方向に沿って繰り返し、図11のビニルシートを張設するビニルシート張設器の斜視図中に示すように、各ビニルシート張設器1,1,……が、パイプフレーム21,21,……の棟付近に近づくと、各軌道案内アーム14,14,……が垂れ下がり状となって桁行き方向のパイプフレーム22,22,……への係止が不可能となってしまうが、錘棒41およびこれに繋着された各マイカ線4,4,……による抑え込みと、展開されたビニルシート5による摩擦力とにより、各ビニルシート張設器1,1,……の上昇位置を保持可能となるので前述と同様に、桁行き方向に隣接する各ビニルシート張設器1,1,……毎の個別の牽引作業が可能であり、さらに、ビニルハウス2の棟付近を乗り越えた後にも、各牽引紐17,17,……を個別に牽引操作して、パイプフレーム21,21,……の反対側となる軒先状の端部側へ次第に以降させていくことができ、最終的に各ビニルシート張設器1,1,……が、同図11中の雨樋3まで達したところで停止させ、各シート保護板11,11,……に括り着けられていたビニルシート5をビニルハウス2の屋根部分に渡って展開させるようにする。
【0050】
ビニルシート5は、雨樋3に対応する縁部を、各ビニルシート張設器1,1,……の上側を乗り越えて雨樋3底面上まで延伸させるか、あるいは各ビニルシート張設器1,1,……をパイプフレーム21,21,……から降ろし、雨樋3に対応するビニルシート5縁部を雨樋3底面上まで延伸させるかして、パイプハウス2に降り注いだ雨水を雨樋3に誘導可能とし、ビニルシート5のこれとは反対側となる縁部は、図12の係合操作を受ける錘棒の側面図中に白抜き矢印で示すよう、錘棒41をパイプフレーム21,21,……の軒先状の端部外側から回り込ませる操作に伴い、パイプフレーム21,21,……軒先状端の近傍にある桁行きフレーム22との間に挟み込まれ、それと同時に錘棒41に繋着されている各マイカ線4,4,……が、図13の張設されたビニルシート要部の側面図中に示すように、張力を発揮し、ビニルシート5をパイプフレーム21,21,……の外側に張設状とするものとなり、同図13中に白抜き矢印で示すように、側断面形状が概略C字型に形成された複数個の嵌着金具42,42,……を、平行状配置となった桁行きフレーム22と錘棒41とに桁行き方向複数適所の外側から嵌着し、図14の桁行き方向のパイプフレームと錘棒に装着した嵌着金具の斜視図中に示すように、錘棒41を桁行きフレーム22に対して仮固定したものとし、ビニルハウス2の屋根部分へのビニルシート5の張り着け作業を完了する。
【0051】
このようにして張設されたビニルシート5が、数年に渡り荒天や紫外線に曝されて老朽化し、交換しなければならなくなったときには、各嵌着金具42,42,……を外し、錘棒41を図12の白抜き矢印とは逆方向に離脱させ、古いビニルシート5を引き摺り降ろして撤去した後に、各ビニルシート張設器1,1,……がパイプフレーム21,21,……上に残されている場合には、各牽引紐17,17,……を、ビニルシート5の張設のときとは逆向きに牽引操作して図4中に示す初期状態に戻し、また、各ビニルシート張設器1,1,……を取り外した場合には、同図4に示すように、再度各ビニルシート張設器1,1,……を設置してから、前述と同様の張設作業を開始することとなる。
【0052】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例のビニルシート張設器1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図1中に示した、摺抜けカム15,15の内側であってシート保護板11の左右外側に吊着された軌道案内アーム14,14が、図3および図4中に示すように、ビニルハウス2の桁行き方向に直交するパイプフレーム21,21の隣接する2本に沿って逸脱しないよう案内するものとなり、しかも上昇開始の段階で、図10中に示したように、乗り越えた桁行き方向のパイプフレーム22外周面上に乗り上げて係止状となるので、上昇位置を確実に維持するものとなり、一人の作業員であっても複数の牽引紐17,17,……を個別に牽引操作し、他の操作していない牽引紐17,17,……を手放すことができ、効率的にビニルシート5を張設することができるという効果を発揮するものとなる。
【0053】
また、各ビニルシート張設器1,1,……の夫々に、無端状の牽引紐17,17,……を装着し、各牽引紐17,17,……を、図4中に示したように、ビニルハウス2の屋根部分を桁行き方向に直交する方向に掛け回し、各牽引紐17,17,……の一部が、ビニルハウス2内の人丈辺りに垂れ下がり状となるよう設定したものとしてあり、地上付近の作業員が、検索紐17を一方向に牽引操作して各ビニルシート張設器1,1,……を前進させることにより、1人の作業員では到底持ち上げることの不可能な重量のビニルシート5を軽々と上昇させることができ、またそれとは反対方向に牽引することによって後退させることもできるので、従前までであれば、思いどおりにビニルシート5を張設しようとすれば危険な高所作業を覚悟しなければならなかったものが、このような作業を無くして安全に作業を進めることが可能となる。
【0054】
さらにまた、シート保護板11の巾寸法を、図2中に示したように、隣接する2本のパイプフレーム21,21間の距離に、片側30cmずつ合計60cm拡大した寸法に設定したものとし、牽引操作中にビニルシート張設器1,1,……が多少傾いてしまったようなときにあっても、円滑な操作性を確保して張設作業を効率的に進めることが可能となり、しかも個々のビニルシート張設器1,1,……は、各軌道案内アーム14,14によって個別の軌道からの逸脱を確実に防止されるため、軌道修正のために要する作業負担を格段に軽減することができることから、1人の作業員であっても軽快に作業を進めることができる上、複数人の作業員を動員すれば短時間の中に張設作業を完了することができるものになるという利点が得られる。
【0055】
そして、この発明のハウス用ビニル張設方法を実施してビニルハウス2に対して複数のビニルシート張設器1,1,……を一度装着してしまえば、ビニルシート5を張設する際には何時でも高所に登ること無く、速やかに張設作業を開始して目的を達成することが可能となり、数年間に渡り使用してビニルシート5が老朽化してしまった場合にも、錘棒41の仮固定を解除して各マイカ線4,4,……を緩めるだけで劣化、破損したビニルシート5を迅速に取り外すことができる上、牽引紐17,17,……を牽引操作して各ビニルシート張設器1,1,……を牽引開始の際の初期位置に移動させることにより、即座にビニルシート5の張設作業を実施することができるという秀れた特徴を有し、従前までの繁雑で危険なビニルハウス2の管理作業に比較して作業性と安全性を格段に高めることができるものとなる。
【0056】
しかも、このビニルシート張設器1,1,……を用いた連棟式のビニルハウス2は、隣接する屋根間谷部分に設置された雨樋3底面上に、桁行き方向に平行状に配置された2本の繋着棒35,35に、複数の鈎金具36,36,……を工具類を用いることなく装着して仮固定状とするようにしたことから、各繋着棒35,35に繋着されるマイカ線4,4,……の本数を低減して耐久強度を大幅に向上させることができるものとなる上、各マイカ線4,4,……の他端側を1本の錘棒41に繋着するようにし、該錘棒41をパイプフレーム21,21,……の軒先状の端部側付近にある桁行きフレーム22に対して、複数の嵌着金具42,42,……を用いて仮固定するようにしたことから、各マイカ線4,4,……の引き締めによるビニルシート5の張設と、該ビニルシート5の軒先側となる端縁の仮固定作業とを、工具類を用いずに簡便に遂行させることができ、しかも各嵌着金具42,42,……を取り外し、錘棒41を仮固定状態から離脱させると、ビニルシート5を容易に緩めることができ、ビニルシート5の弛みやズレを修正する作業を非常に簡単、迅速に行うことを可能にするという利点が得られることになる。
【0057】
(結 び)
叙述の如く、この発明のビニルシート張設器、およびそれを用いたハウス用シートの張設方法、ならびにビニルシート端部仮着構造は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのビニルシート張設装置に比較して大幅に軽量且つ低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、ビニルシートの張設作業性を大幅に改善し得るものとなることから、人手不足に悩む農家は勿論のこと、農業資材を取り扱う農機具業界全体にとっても、ビニルハウスを農業以外の倉庫や車庫等の目的に利用しようとする一般企業や一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図面は、この発明のビニルシート張設器、およびそれを用いたハウス用シートの張設方法、ならびにビニルシート端部仮着構造の技術的思想を具現化した代表的な実施例を示すものである。
【図1】ビニルシート張設器を示す斜視図である。
【図2】ビニルシート張設器を示す正面図である。
【図3】ビニルシート張設器を示す側面図である。
【図4】ビニルシート張設器を装着したビニルハウスを示す斜視図である。
【図5】雨樋付近を示す斜視図である。
【図6】2本の繋着棒を仮固定する雨樋付近を示す斜視図である。
【図7】ビニルシート束を装着したビニルシート張設器を示す斜視図である。
【図8】ビニルシート張設器の牽引開始状態を示す側面図である。
【図9】ビニルシート張設器の牽引状態を示す側面図である。
【図10】ビニルシート張設器が上昇位置を維持した状態を示す側面図である。
【図11】ビニルシートを展開するビニルシート張設器を示す斜視図である。
【図12】錘棒の係合操作を示す側面図である。
【図13】嵌着金具の装着作業を示す側面図である。
【図14】嵌着金具の装着状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ビニルシート張設器
11 同 シート保護板
12 同 水平棒
13 同 吊下げ金具
14 同 軌道案内アーム
15 同 摺抜けカム
16 同 先鋭端
17 同 牽引紐
18 同 パッカー
2 ビニルハウス
21 同 パイプフレーム
22 同 桁行きフレーム
3 雨樋
31 同 鉛直貫通孔
32 同 環状金具
33 同 雄ネジ部
34 同 ナット
35 同 繋着棒
36 同 鈎金具
37 同 係合溝
4 マイカ線
41 同 錘棒
42 同 嵌着金具
5 ビニルシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした一対の摺抜けカムを、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを超える間隔を置いて配した上、牽引紐の二股に分岐した各端部にそれら摺抜けカムの夫々の先鋭端を連結すると共に、それら摺抜けカム所定箇所間にはシート保護板を揺動自在に吊下する一方、各摺抜けカムまたはシート保護板に一体的にか、もしくは各摺抜けカムの側近にかの何れかに軌道案内機構を設けてなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項2】
ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムまたはシート保護板に一体的にか、もしくは各摺抜けカムの側近にかの何れかに軌道案内機構を設ける一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を牽引紐の二股に分岐した各端部に連結してなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項3】
先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした一対の摺抜けカムを、ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを超える間隔を置いて配した上、牽引紐の二股に分岐した各端部にそれら摺抜けカムの夫々の先鋭端を連結すると共に、それら摺抜けカム所定箇所間にはシート保護板を揺動自在に吊下する一方、各摺抜けカムの側近の外側または内側には夫々軌道案内アームが揺動自在に吊下さられてなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項4】
ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁を、その横長寸法を越える水平棒に吊着し、該水平棒の左右端夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を牽引紐の二股に分岐した各端部に連結してなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項5】
ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぐ横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってハウス内人丈付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延びる二股分岐紐の各端部に連結してなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項6】
ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぎ、桁行き方向両端がさらに約30cm程度ずつの余裕幅を確保可能な横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、夫々軌道案内アームを揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってハウス内人丈付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延びる二股分岐紐の各端部に連結してなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項7】
ビニルハウス桁行き方向に所定間隔置きに並設されているパイプフレームの少なくとも隣接する2フレームを跨ぎ、桁行き方向両端がさらに約30cm程度ずつの余裕幅を確保可能な横長寸法としたシート保護板の上端縁左右夫々を、先鋭端から後端側に掛けて漸次巾を増して側面形を概ね楔状とした摺抜けカム所定箇所に揺動自在に連結、吊下すると共に、各摺抜けカムの側近の外側または内側には、シート保護板の縦寸法を越える長さとした概略L字形状もしくは概略三角形状の軌道案内アームを夫々揺動自在に吊下する一方、それら摺抜けカムの各先鋭端を、パイプフレーム上側の桁行き方向に直交する向きに横断状に掛け回し可能であってハウス内人丈付近を通る環状長さ寸法に設定した無端状の牽引紐の中途箇所から延びる二股分岐紐の各端部に連結してなるものとしたことを特徴とするビニルシート張設器。
【請求項8】
桁行き方向に所定間隔置に並設したパイプフレームの要所要所に配置した複数個のビニルシート張設器の、各シート保護板外側面にビニルシート束を夫々括り着けた上、それらの中、先ず桁行き方向何れか一端側配置のビニルシート張設器から、その牽引紐を掛け回し操作して上昇させ、当該張設器の左右摺抜けカムを、架け渡したまま端部を共通の錘棒に括り付けてある複数本のマイカ線の内側に進入させると共に、同シート保護板が軌道案内機構の案内でパイプフレームの外側沿いに位置して少なくとも隣接する2フレームに跨ったまま引き摺られ、その過程で桁行きフレームを次々に乗り越えて上昇移動するようにしながら、ビニルシート束の一端縁を、張設開始端側から中途まで展開状とした後、引き続き隣接するビニルシート張設器を、同様に牽引紐を引き回し操作してビニルシート束の一端縁を中途まで展開状とするという操作を、順次繰り替えして桁行き方向全体のビニルシート展開状況が平均化するようにして棟付近を乗り越えさせ、反対のパイプフレーム端側もしくは隣接するハウスフレームとの谷部分付近まで到達させるようにし、各シート保護板のビニルシート束を、架け渡したままとなっているマイカ線を潜らせてハウスフレーム外側面に沿う所要範囲の展開を終えた後、錘棒をパイプフレームの張設開始端側の適所に仮固定して各マイカ線を緊張させてビニルシートを緊張、張設するようにした、請求項1ないし7何れか一項記載のビニルシート張設器を用いたハウス用ビニルシートの張設方法。
【請求項9】
連棟式ビニルハウスの隣接する屋根間谷部分に沿って設置された雨樋の底面略中央に、桁行き方向に平行状となる直立状姿勢で、桁行き方向に適宜間隔を隔てて点在する複数個の環状金具の両側に、繋着棒の1本ずつ計2本を平行状に配置させ、各環状金具には夫々、2本の繋着棒に跨る断面略コ字状の鞍型に形成され、その中央一側縁に環状金具のリング状内周面に係合可能となる係合溝を刻設したものとしてなる鈎金具を装着し、仮固定状とし、該繋着棒中途複数適所の夫々に一端を繋着し、各他端がパイプフレーム棟上側を回り、反対側のパイプフレーム他端側適所に達するよう延伸された複数本のマイカ線、および各マイカ線の他端に、略水平状に吊下げ連繋された錘棒とを設けてなるものとしたことを特徴とするビニルシート端部仮着構造。
【請求項10】
連棟式ビニルハウスの桁行き方向に直交するパイプフレームの一方端側適所に、桁行き方向に渡って平行状に設置された繋着棒と、該繋着棒中途複数適所の夫々に一端を繋着し、各他端がパイプフレーム上側を回り、反対側のパイプフレーム他端側適所に達するよう延伸された複数本のマイカ線、および各マイカ線の他端に、略水平状に吊下げ連繋された錘棒とを設け、該錘棒が、軒先状に形成されたパイプフレーム端を乗り越え、その近傍の桁行き方向のパイプフレームに平行状となるよう配置された際に、同パイプフレームおよび錘棒に対し、共に外側から嵌着し仮固定状とする概略断面C字状の嵌着金具の複数を添設可能にしてなるものとしたことを特徴とするビニルシート端部仮着構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−25674(P2006−25674A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207879(P2004−207879)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(504080803)
【Fターム(参考)】