説明

ビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法

【課題】ハードカプセルに内包されるビフィズス菌が胃及び小腸で溶出することなく、大腸で速やかに溶出し、かつ、胃及び小腸でのハードカプセル内への水分の侵入を抑え、ビフィズス菌の失活を抑えることができるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルであって、動物性タンパク質を使用せずに十分な強度を有し、強度を増大させるためのコーティングが不要であり、更にコーティング量を抑え、有利な製造コストで製造できるビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法の提供。
【解決手段】ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を含み、前記カプセルの嵌合部にバンドシールを有し、前記カプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に有してなるビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフィズス菌を充填したハードカプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを有してなるビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有用生菌剤及び有用生菌を医薬品又は食品に作用させて得られた医薬品製剤、保健食品、健康補助食品などが服用され、食されてきた。このような有用生菌の1種として、ビフィズス菌は、腸内において悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を改善し、ひいては便性を改善するなどの整腸作用を有することが知られている。そのため、ビフィズス菌の生菌を含む医薬品及び食品をさまざまな形態で摂取することによって、整腸作用などの医療効果乃至保健効果を得ようとする試みがなされてきた。
しかしながら、ビフィズス菌が消化管下部、特に大腸まで到達するには強い殺菌作用をもつ胃酸を通過する必要があり、ビフィズス菌は、胃酸などの低pH環境では生存できないことが知られている。したがって、ビフィズス菌をそのまま服用した場合には、生菌のままその活躍の場である大腸まで到達させることは困難であり、十分な医療効果乃至保健効果が得られないという問題があった。
【0003】
この問題を解決するための手段としては、大腸内において特異的に分解され、内包物を溶出する大腸ドラッグデリバリーシステムを用いることが考えられる。
【0004】
大腸ドラッグデリバリーシステムとしては、例えば、生理活性物質(活性成分)を賦形剤と共に成形した固形製剤を、キトサンコーティング液でコーティングする大腸ドラッグデリバリーシステム製剤が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。しかしながら、前記固形製剤のキトサンコーティングでは、コーティング皮膜に細孔が存在し、そこから腸液が侵入して活性成分の一部が溶出してしまうことがあり、大腸内のみで速やかに溶出させる効果は十分とはいえない。また、キトサンコーティング皮膜の細孔から侵入した腸液及び水分により、大腸内に到達する前にビフィズス菌が失活してしまうという問題もある。
【0005】
そこで、前記固形製剤ではなく、ハードカプセルを用い、これにビフィズス菌を封入して、ビフィズス菌を大腸まで失活させずに届ける大腸デリバリーカプセルを用いることが考えられる。
【0006】
前記ハードカプセルとしては、例えば、キトサンを含有するハードカプセルが提案されている(特許文献3参照)。前記ハードカプセルを用いる場合には、前述の固形製剤の場合と比較して活性成分以外の添加物を少なくできるため、活性成分の配合率を高くすることができ、また、製造工程において加熱、加圧、乾燥などの工程が必要ないため、活性成分が製造工程で劣化しないという利点がある。
しかしながら、前記提案においては、キトサンカプセルが脆いため、PTP(press through package)シート(包装)から取り出す際にカプセルが破損するという問題がある。この問題を解決するためにカプセル皮膜を厚くすることが考えられるが、製造に手間がかかり、コスト的にも不利である。また、前記カプセルの厚みが増すことによって嵌合部の段差が大きくなり、腸溶性基材のコーティングでその段差を埋めることが困難となる。更に、カプセル皮膜が厚くなると、大腸内での崩壊に時間がかかってしまうなどの問題がある。
また、他の解決方法としては、キトサンカプセルの強度を増すためにコーティングを行うことが考えられる。しかしながら、この方法には、コーティング層が増え、製造に手間がかかり、コスト的に不利であるという問題がある。
【0007】
したがって、ハードカプセルに内包されるビフィズス菌が胃及び小腸で溶出することなく、大腸で速やかに溶出し、かつ、胃及び小腸でのハードカプセル内への水分の侵入を抑え、ビフィズス菌の失活を抑えることができるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルであって、十分な強度を有し、強度を増大させるためのコーティングが不要であり、更にコーティング量を抑え、有利な製造コストで製造できるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルの開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平08−013748号公報
【特許文献2】国際公開第2008/075448号パンフレット
【特許文献3】特許第2555520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ハードカプセルに内包されるビフィズス菌が胃及び小腸で溶出することなく、大腸で速やかに溶出し、かつ、胃及び小腸でのハードカプセル内への水分の侵入を抑え、ビフィズス菌の失活を抑えることができるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルであって、十分な強度を有し、強度を増大させるためのコーティングが不要であり、更にコーティング量を抑え、有利な製造コストで製造できるビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、大腸デリバリーカプセルが、ビフィズス菌を充填したゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするカプセルの嵌合部にバンドシールを施し、次いでカプセルの表面が、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とにより、この順で被覆されることにより、薄いキトサン含有皮膜で、有効な大腸での溶出性を有するという知見である。
【0011】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を含み、前記カプセルの嵌合部にバンドシールを有し、前記カプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に有してなることを特徴とするビフィズス菌大腸デリバリーカプセルである。
<2> セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである前記<1>に記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルである。
<3> キトサン含有層が、キトサン含有コーティング液をカプセル表面にコーティングして形成されたものである前記<1>から<2>のいずれかに記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルである。
<4> キトサン含有コーティング液が、揮発性有機酸水溶液にキトサンを溶解してなる前記<3>に記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルである。
<5> ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を充填し、前記カプセルのボディ部とキャップ部とを嵌合し、前記嵌合部を、バンドシールで封緘し、前記カプセルの表面にキトサン含有コーティング液を塗布又は噴霧してキトサン含有層を形成し、前記キトサン含有層上に腸溶性基材含有コーティング液を塗布又は噴霧して腸溶性基材含有層を形成することを特徴とするビフィズス菌大腸デリバリーカプセルの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ハードカプセルに内包されるビフィズス菌が胃及び小腸で溶出することなく、大腸で速やかに溶出し、かつ、胃及び小腸でのハードカプセル内への水分の侵入を抑え、ビフィズス菌の失活を抑えることができるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルであって、十分な強度を有し、強度を増大させるためのコーティングが不要であり、更にコーティング量を抑え、有利な製造コストで製造できるビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法)
本発明のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルは、少なくとも、ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を含み、前記カプセルの嵌合部にバンドシールを有し、前記カプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に有してなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。
本発明のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルの製造方法は、少なくとも、ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を充填し、前記カプセルのボディ部とキャップ部とを嵌合し、該嵌合部を、バンドシールで封緘し、前記カプセルの表面にキトサン含有コーティング液を塗布してキトサン含有層を形成し、前記キトサン含有層上に腸溶性基材含有コーティング液を塗布して腸溶性基材含有層を形成する工程を含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0014】
<ハードカプセル>
本発明に用いるハードカプセルは、ゼラチン又は植物由来のセルロースを変性させたセルロース誘導体を基材とする。
また、前記ハードカプセルは、ボディ部とキャップ部とからなり、該ボディ部に該キャップ部を被せて両者を嵌合させることによりカプセル化することができる。
【0015】
前記ゼラチンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、牛皮、豚皮、牛骨等に含まれる動物性コラーゲンに由来するもの、魚由来のゼラチンなどが挙げられる。これらの中でも、牛以外の動物由来のゼラチンが、狂牛病感染の恐れがない点で、好ましい。
【0016】
前記セルロ−ス誘導体としては、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース等)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、具体的には、HPMCが、カプセルとしての強度に優れる点及びキトサン含有層溶解後の大腸内で速やかに溶解する点で、特に好ましい。
【0017】
前記ハードカプセルは、例えば、前記ゼラチン又はセルロース誘導体を水溶液とし、その溶液内に金属製のピンを浸し、引き上げ、形状を確保した後、乾燥させることによって製造することができる。
前記セルロース誘導体の水溶液は、通常セルロース誘導体約5質量%〜25質量%、水約74質量%〜94質量%、ゲル化剤約0.01質量%〜0.5質量%、ゲル化補助剤約0.01質量%〜0.5質量%、更に必要に応じて着色剤(例えば、酸化チタン、ベンガラ、青色2号、黄色5号等)、不透明化剤(例えば、酸化チタン等)、香料などを適宜配合して調製することができる。
【0018】
前記ハードカプセルのサイズとしては、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号などがあるが、本発明ではいずれのサイズのハードカプセルも使用することができる。
【0019】
<ビフィズス菌>
前記ビフィズス菌としては、人に対して有用な作用をもたらすものである限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)が、食品として利用される点で、好ましい。
【0020】
前記ビフィズス菌は、生きたまま前記ハードカプセルに充填されることが好ましい。また、前記ビフィズス菌は、カプセル内に封緘した後、カプセル内で更に増殖させてもよい。
前記ビフィズス菌の形状としては、前記カプセル内に充填できる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適切な培地に懸濁した液状物、硬化油脂等と混合した固形物、乾燥粉末などが挙げられる。
【0021】
前記ビフィズス菌が乾燥粉末の場合、カプセルに充填する際のビフィズス菌濃度としては、1×10cfu/g以上が好ましく、1×10cfu/g以上がより好ましい。なお、cfuは、コロニー形成単位を表す。
前記ビフィズス菌が液状物の場合、液状物中のビフィズス菌の濃度が高すぎると、前記液状物の粘度が高くなり、カプセル化しにくくなるため、適切な培地とともにカプセル化した後、更に増殖させることが好ましい。前記液状物中のビフィズス菌濃度としては、1×10cfu/g以上が好ましく、1×10cfu/g〜1×1012cfu/gがより好ましい。
【0022】
前記ビフィズス菌とともに前記ハードカプセル内に充填してもよいその他の成分としては、前述のビフィズス菌を液状物とする場合に懸濁させる培地、ビフィズス菌を固形物とする場合に用いる硬化油脂、ビフィズス菌を乾燥粉末として使用する場合に用いる乳糖、乾燥馬鈴薯でんぷん等の倍散剤、乳酸菌、粉糖、オリゴ糖、セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水分活性を低下させるもの又は水分活性が低いものが好ましく、具体的には乾燥馬鈴薯でんぷんが好ましい。
【0023】
前記ビフィズス菌のカプセル内の含有量としては、ビフィズス菌の形状、カプセルの容量などにより一義的には決められないが、カプセルに内包される組成物全量に対して、3質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜60質量%がより好ましい。前記含有量が、3質量%未満であるとビフィズス菌による整腸効果などを得るために多量のカプセル服用する必要性が生じ、90質量%を超えると、腸内細菌叢のバランスに影響が出ることも憂慮される。
【0024】
−ビフィズス菌のハードカプセルへの充填及びカプセルの嵌合−
ビフィズス菌の充填は、前記ハードカプセルのボディ部に前記ビフィズス菌を充填して行うが、たとえば、ビフィズス菌が液状物の場合には注入、滴下する方法、ビフィズス菌が乾燥粉末の場合にはフィーダーを振動させながら落し込む方法などによって行うことができる。
次いで、前述の方法によりビフィズス菌が充填されたカプセルのボディ部にカプセルのキャップ部を被せて両者を嵌合させてボディ部とキャップ部を接合させることにより、ビフィズス菌内包カプセルを作製することができる。
【0025】
前記ビフィズス菌のハードカプセル内への充填及びカプセルの嵌合は、それ自体公知のカプセル充填機、例えば、全自動カプセル充填機(クオリカプス株式会社社製、LIQFIL super 100型)、カプセル充填シール機(クオリカプス株式会社製、LIQFIL super FS型)などを用いて実施することができる。
【0026】
<バンドシール>
前記バンドシールは、ハードカプセルに内容物を充填した後、そのカプセルのボディ部とキャップ部との嵌合部の封緘に用いられるシール剤(封緘剤)である。
前記バンドシールにより、キトサンコーティング液を用いてキトサン含有層を形成する際に、嵌合部からキトサンコーティング液がカプセル内部に侵入することがなく、更に、嵌合部が平滑化されることにより、薄く均一なキトサン含有層を形成することができる。
【0027】
前記バンドシールの材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
前記ゼラチン及びセルロース誘導体としては、前記ハードカプセルの材料と同じものを使用することが好ましい。
【0028】
なお、前記バンドシールは、本発明の効果を妨げない限り、上記成分に加えて、更に必要に応じて、着色剤(例えば、酸化チタン、ベンガラ、タール系色素等)、不透明化剤、香料など、ハードカプセルの製造に通常使用される添加剤を配合することができる。バンドシールに対する前記添加剤の配合割合としては、通常0.1質量%〜7質量%であり、この範囲からバンドシール性を考慮して適宜選択することができる。
【0029】
前記バンドシールは、一般に、前記バンドシール材料を水溶液(バンドシール調製液)として、前記ハードカプセルのボディ部とキャップ部の嵌合部に塗布し、乾燥させて形成することができる。
前記バンドシール調製液は、上記のバンドシール材料を、水、親水性溶媒又は水と親水性溶媒との混合液に、室温又は加温下で溶解することによって調製することができる。
前記親水性溶媒としては、水と相溶性のある有機溶媒を挙げることができ、具体的には、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜6の低級アルコールが挙げられる。これらの中でも、エタノールが好ましい。なお、前記親水性溶媒は、水との混合液として使用することが好ましい。
前記バンドシール調製液の調製に水と親水性溶媒との混合液を用いる場合、当該混合液100質量%中の親水性溶媒の割合としては、通常5質量%〜80質量%であり、8質量%〜65質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましい。
【0030】
前記バンドシール調製液としては、調製液の最終粘度が、通常100mPa・s〜5,000mPa・sであり、125mPa・s〜4,700mPa・sが好ましく、150mPa・s〜4,500mPa・sがより好ましい。前記粘度が100mPa・s未満であると、ハードカプセルの嵌合部表面にバンドシール調製液を液だれしないで塗布することが困難であり、封緘力に優れたバンドシールが形成できない可能性がある。また、前記粘度が5,000mPa・sを超えると、粘度が高すぎて機械でバンドシールを形成できない可能性がある。一方、前記粘度が前記好ましい範囲内であると、ハードカプセル剤のボディ部とキャップ部の嵌合部にシール力(封緘力)の大きい強固なバンドシールを形成することができ、しかも製造時における糸曳きがなく、製造における取り扱いも容易である。なお、前記粘度は、回転型粘度計(例えば、英弘精機株式会社製VT550型)を用いて、20℃、測定時間2分間の条件で測定した場合の粘度を意味する。
【0031】
−バンドシールによるカプセルの封緘−
前記バンドシールは、前述の方法により作製されたビフィズス菌内包カプセルに対して、そのキャップ部の端縁部を中心とした一定幅でボディ部の表面とキャップ部の表面にボディ部とキャップ部との円周方向に前記バンドシール調製液を1回〜複数回、好ましくは1回〜2回塗布することにより嵌合部を封緘する。この場合において、後述するようにシール剤の温度が一定の温度範囲に制御されていることが好ましい。
【0032】
前記ハードカプセルのボディ部とキャップ部の両者を嵌合させる際に、ボディ部の外周とキャップ部の内周とが重なっている嵌合巾としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カプセルの軸線方向の距離として、3号カプセルで約4.5mm〜6.5mm、4号カプセルで約4.0mm〜6.0mmが好ましい。また、封緘(シール)巾としては、3号カプセルで約1.5mm〜4.0mm、4号カプセルで約1.5mm〜2.8mmが好ましい。
【0033】
前記バンドシール調製液は、一般に室温乃至加温下で使用することができ、その温度としては、14℃〜28℃が好ましく、15℃〜25℃がより好ましく、16℃〜22℃が特に好ましい。前記温度が前記好ましい範囲内にあると、ハードカプセルの内容物の漏れ防止効果を付与できる。前記調製液の温度調節としては、特に制限はなく、パネルヒーター、温水ヒーター等のそれ自体公知の方法で実施することができるが、例えば、循環式温水ヒーター、前記一体型カプセル充填シール機のシールパンユニットを循環式温水ヒーター型に改造したものなどを用いることが、温度幅を微妙に調節できる点で好ましい。なお、バンドシール調製液中のアルコール(例えば、エタノール)は、温度条件によっては揮発することがあるので、バンドシール調製液の組成が一定するように適宜補充することが好ましい。
【0034】
前記バンドシールによるハードカプセルの封緘は、それ自体公知のカプセル充填シール機、例えば、前記カプセル充填シール機(クオリカプス株式会社製、LIQFIL super FS型)、カプセルシール機(クオリカプス株式会社社製、HICAPSEAL 100型)を用いて実施することができる。
【0035】
<キトサン含有層(キトサン皮膜)>
前記キトサン含有層は、少なくともキトサンを含有し、必要に応じて更にその他の成分を含んでなる。
前記キトサン含有層は、前記ハードカプセルの表面に少なくともキトサンを含有するキトサンコーティング液を、塗布したり、噴霧したりすることにより、形成される。
【0036】
−キトサンコーティング液−
前記キトサンコーティング液は、少なくともキトサンを含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0037】
−−キトサン−−
前記キトサンの脱アセチル化度、分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記キトサンの脱アセチル化度としては、70モル%以上が、酸への溶解性及びコーティング法への適性の点で、好ましい。
【0038】
前記キトサン含有層の厚みとしては、カプセルの形状、大きさ、質量などに応じて適宜選択することができるが、カプセルの質量に対して、キトサンの質量が、0.5質量%〜6.0質量%に相当する厚みが好ましく、0.8質量%〜5.0質量%に相当する厚みがより好ましく、0.8質量%〜3.0質量%に相当する厚みが特に好ましい。前記厚みが、0.5質量%に相当する厚み未満であると、キトサン含有層が十分な厚みとなっていないため、小腸内において腸溶性基材含有層が崩壊した後に、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルが大腸へ送達される前にキトサン含有層が崩壊してしまう場合があり、6.0質量%に相当する厚みを超えると、カプセルの表面にキトサン含有層を形成するためにコーティングを行う際、コーティング時間が長期化する恐れがある。一方、前記厚みが前記のより好ましい範囲内であると、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルの大腸への送達が確実に可能となり、必要なキトサン含有層を得るためのコーティング時間の短縮が図れる点で、有利である。
【0039】
前記キトサン含有層におけるキトサンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜95質量%が好ましい。前記キトサンの含有量が、30質量%未満であると、得られるキトサン皮膜の強度が十分でなく、実用的でなく、95質量%を超えると、有機酸残存量の低下が十分でなかったり、キトサン皮膜の耐水性が低くなったりすることがある。一方、前記キトサンの含有量が前記の好ましい範囲内であると、キトサン含有層の厚みを薄くすることができる点で、有利である。
【0040】
−−酸−−
前記キトサンは、水及び有機溶媒に不溶であるため、酸を共存させて水に溶解する。
前記酸としては、無機酸及び有機酸が挙げられるが、無機酸はキトサンとの相互作用が強く適さないため、有機酸が好ましい。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、常圧において十分な揮発性を有する点で、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸が好ましい。これらの中でも、安価であり、取り扱い易く、かつ、キトサン含有層に残留しても人体への影響が少ない点で、酢酸がより好ましい。
前記有機酸の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キトサンのアミノ基当たり0.8モル当量〜2.0モル当量が好ましい。前記有機酸の使用量が、0.8モル当量未満であると、キトサンの溶解性が低く、2.0モル当量を超えると、酸の除去が効率良く行えず、耐水性を示すキトサン皮膜(キトサン含有層)を得ることが困難となることがある。
【0041】
前記キトサンコーティング液は、前記有機酸を効率良く除去することができる点で、グリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
前記グリセリン脂肪酸エステルとは、脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンのエステル及びその誘導体を含む。前記グリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、などが挙げられる。
前記グリセリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
【0042】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル中のグリセリンの重合数としては、単量体から20量体の範囲であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンなどが挙げられる。脂肪酸単体では、水への溶解が困難となることがあり、21量体以上のものは、製造に掛かるコストが高くなる。
前記脂肪酸の置換度としては、前記グリセリン脂肪酸エステルが水に溶解又は分散可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、モノエステルからトリエステルの範囲が好ましい。
【0043】
前記キトサン皮膜におけるグリセリン脂肪酸エステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キトサンの質量に対して、5質量%〜200質量%が、有機酸の残存量を低下させることができる点で、好ましい。前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量が、5質量%未満であると、有機酸残存量の低下が十分でなく、キトサン皮膜の耐水性が低くなることがあり、200質量%を超えると、得られるキトサン皮膜の強度が十分ではなく、実用的でない。
【0044】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィラー、可塑剤などが挙げられる。
前記フィラー、可塑剤を用いることにより、よりカプセル内への水分の浸入を防ぐことができ、大腸到達前の崩壊及びビフィズス菌の溶出をより抑制することができる。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、ベントナイト、炭素数10以上の有機酸の金属塩などが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。これらの中でも、医薬品分野で用いるため、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0045】
−キトサン含有層の形成−
前記キトサン含有層は、前記カプセルの表面に少なくともキトサンを含有するキトサンコーティング液を、塗布したり、噴霧したりすることにより、形成される。
例えば、流動層造粒コーティング装置(フローコーター、フロイント産業株式会社製)、遠心転動造粒コーティング装置(CFグラニュレーター、グラニュレックス、フロイント産業株式会社製)、複合型造粒コーティング装置(スパイラフロー、フロイント産業株式会社製)、糖衣フィルムコーティング装置(ハイコーター、アクアコーター;フロイント産業株式会社製)などの各種コーティング装置を用いて、カプセルを装置内で流動させ、乾燥空気を給気させつつ、スプレーなどを用いてカプセル表面に前記キトサンコーティング液を噴霧し、コーティングする方法が挙げられる。
【0046】
前記キトサンコーティング液の粘度、キトサン濃度としては、コーティング装置に適したものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記キトサンコーティング液の粘度としては、溶液温度23℃において、10mPa・s〜1,000mPa・sが好ましい。
前記キトサンコーティング液のキトサン濃度としては、0.1質量%〜20質量%が好ましい。
【0047】
前記キトサン含有層の形成(コーティング)における給気温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜95℃が好ましい。前記給気温度が、40℃未満であると、有機酸の除去が十分ではないため、キトサン皮膜に耐水性が付与できず、100℃を超えると、キトサン皮膜に着色、変形などの外観上の問題が生じるため、好ましくない。また、水系のコーティングで給気温度が100℃を超えることは一般的ではなく、コーティング装置にかかる負担も大きくなるため、現実的ではない。
前記キトサン含有層の形成(コーティング)における排気温度としては、30℃〜90℃であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
<腸溶性基材含有層>
前記腸溶性基材含有層は、少なくとも腸溶性基材を含有し、必要に応じて更にその他の成分を含んでなる。
前記腸溶性基材含有層は、前記キトサン含有層表面に少なくとも腸溶性基材を含有する腸溶性基材コーティング液を、塗布したり、噴霧したりすることにより、形成される。
【0049】
−腸溶性基材コーティング液−
前記腸溶性基材コーティング液は、少なくとも腸溶性基材を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0050】
−−腸溶性基材−−
前記腸溶性基材は、胃及び小腸で溶解せず、大腸で溶解する皮膜を形成する成分である。
前記腸溶性基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、メタクリル酸コポリマー、ヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、アルコールセラック、水性セラックなどが挙げられる。これらの中でも、CMEC、HPMCP、アルコールセラック又は水性セラックが、カプセル内部への水の浸入を最も防ぐことができる点で、好ましい。
【0051】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前述したグリセリン脂肪酸エステル又は水不溶性の添加剤を含有することが好ましい。
本発明のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルは、大腸内で腸溶性基材含有層が溶解した後、キトサン含有層を経由してカプセル内に水分が浸入するが、腸溶性基材含有層が溶解する前でも、ある程度の水分は腸溶性基材含有層を経由してキトサン含有層に浸入してくる。よって、腸溶性基材含有層をより疎水化したり、水不溶性成分を含有させたりすることにより、腸溶性基材含有層を経由してくる水分量を抑えることができるため、キトサン含有層を経由したビフィズス菌大腸デリバリーカプセルへの水の浸入を抑制することができる。
前記水不溶性の添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、ベントナイト、炭素数10以上の有機酸の金属塩などが挙げられる。これらの中でも、ベントナイトが、前記コーティング液への分散が容易であるという点で、好ましい。
【0052】
前記腸溶性基材含有層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カプセルの質量に対して、腸溶性基材の質量が、0.8質量%〜9.0質量%に相当する厚みが好ましく、1.0質量%〜6.0質量%に相当する厚みがより好ましく、1.1質量%〜3.5質量%に相当する厚みが特に好ましい。前記厚みが、0.8質量%に相当する厚み未満であると、腸溶性基材含有層が十分な厚みとなっていないため、小腸内において腸溶性基材含有層の崩壊が速く、ビフィズス菌内包カプセルが大腸へ送達される前にキトサン含有層が崩壊してしまう場合があり、9.0質量%に相当する厚みを超えると、カプセルの表面に腸溶性基材含有層を形成するためにコーティングを行う際、コーティング時間が長期化する恐れがある。
【0053】
−腸溶性基材含有層の形成−
前記腸溶性基材含有層は、前記キトサン含有層表面に少なくとも腸溶性基材を含有する腸溶性基材コーティング液を、塗布したり、噴霧したりすることにより、形成される。
例えば、流動層造粒コーティング装置(フローコーター、フロイント産業株式会社製)、遠心転動造粒コーティング装置(CFグラニュレーター、グラニュレックス;フロイント産業株式会社製)、複合型造粒コーティング装置(スパイラフロー、フロイント産業株式会社製)、糖衣フィルムコーティング装置(ハイコーター、アクアコーター;フロイント産業株式会社製)などの各種コーティング装置を用いて、カプセルを装置内で流動させ、乾燥空気を給気させつつスプレーなどを用いてキトサン含有層表面に前記腸溶性基材コーティング液を噴霧し、コーティングする方法が挙げられる。
【0054】
前記腸溶性基材コーティング液の粘度、腸溶性基材濃度としては、コーティング装置に適したものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記腸溶性基材コーティング液の粘度としては、溶液温度23℃において、10mPa・s〜1,000mPa・sが好ましい。
前記腸溶性基材コーティング液の腸溶性基材濃度としては、0.1質量%〜20質量%が好ましい。
【0055】
前記腸溶性基材含有層の形成(コーティング)における給気温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜95℃が好ましい。前記給気温度が、30℃未満であると、乾燥効率が低いことから送液速度を低く抑えなければならず、コーティング時間が長期化することがある。
前記腸溶性基材含有層の形成(コーティング)における排気温度としては、30℃〜90℃であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
<その他の層>
本発明のビフィズス菌大腸デリバリーカプセルは、上述したハードカプセル、ビフィズス菌、バンドシール、キトサン含有層、及び腸溶性基材含有層に加えて、更に蜜蝋、カルナウバロウなどを基材とする被覆層を有していてもよい。
前記被覆層は、例えば、前記腸溶性基材含有層表面に少なくとも蜜蝋を含有する被覆液を、塗布したり、噴霧したりすることにより、形成される。
前記被覆液の調製は、例えば、エタノールなどの有機溶媒に蜜蝋を溶解して行うことができる。
なお、前記被覆液の塗布又は噴霧には、例えば、キトサン含有層又は腸溶性基材含有層の形成に用いることができる前述の装置と同様の装置を用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
<ハードカプセルへのビフィズス菌の充填>
ビフィズス菌の生菌粉末(森永乳業株式会社製、森永ビフィズス菌末)100gを乾燥馬鈴薯でんぷん1,400gと混合して倍散し、温度25℃、湿度60%で十分に攪拌し、カプセル充填用の粉末とした。前記粉末のビフィズス菌濃度は、1×1010cfu/gであった。
得られた粉末を充填するハードカプセルとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル(クオリカプス株式会社製、クオリ−V(R)−N、3号、カプセル質量:51mg)を用い、カプセル充填機(クオリカプス株式会社製、LIQFIL super 100型)に、前記ビフィズス菌の粉末と前記ハードカプセルとをセットし、ハードカプセル内にビフィズス菌粉末を220mg充填した。
【0059】
<バンドシールによる封緘>
バンドシールに用いる調製液として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)16gを水34mL及び無水エタノール50mLの混合液に溶解し、バンドシール調製液を調製した。前記調製液を用いて、得られたビフィズス菌充填カプセルの嵌合部にバンドシール機(クオリカプス株式会社製、HICAPSEAL 100型)により、バンドシールを施した。なお、バンドシールの条件としては、以下の通りである。
−バンドシール条件−
塗布幅:3mm
塗布回数:2回
調製液の温度:20℃〜22℃
【0060】
<キトサン含有層の形成>
脱アセチル化度が80モル%以上であるキトサン(片倉チッカリン株式会社製)に、キトサンのアミノ基に対して酢酸が0.9モル当量になるように加え、更にキトサン濃度が2質量%になるように水に溶解し、十分に撹伴してキトサンコーティング液とした。調製したキトサンコーティング液を、フィルムコーティング装置ハイコーターHC−LABO 20型パン(フロイント産業株式会社製)を用いて、バンドシールにより封緘したビフィズス菌内包カプセルにフィルムコーティングし、キトサンの質量がカプセルの質量に対して、1.5質量%に相当する厚みのカプセルを得た。
【0061】
<腸溶性基材含有層の形成>
次いで、脱色シェラック(株式会社岐阜セラック製造所製、PEARL−N10)10質量部と、グリセリン脂肪酸エステル(イーストマン・ケミカル・カンパニー(eastman chemical campany)社製、マイバセット9−45)0.5質量部とを8質量%エタノール水溶液54mLに溶解し、腸溶性基材コーティング液を調製した。前記腸溶性基材コーティング液を用い、シェラックの質量がカプセル質量に対して1.5質量%となるようにカプセルにコーティングした。なお、コーティングには、フィルムコーティング装置ハイコーターHC−LABO 20型パン(フロイント産業株式会社製)を用いた。
【0062】
更に、飽和溶解量の蜜蝋(三木化学工業株式会社製)を溶解させた無水エタノール溶液2gをカプセルにコーティングし、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得た。なお、コーティングには、フィルムコーティング装置ハイコーターHC−LABO 20型パン(フロイント産業株式会社製)を用いた。
以上により、前記ビフィズス菌内包カプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に被覆してなるビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得た。
【0063】
<評価:崩壊試験>
得られたカプセルについて、日本薬局方の崩壊試験装置及び振とう器を用いて、崩壊試験を行った。試験手順の概略としては、前記カプセルを、補助盤無しの条件で崩壊試験第1液へ1時間浸漬し、次いで、補助盤無しの条件で崩壊試験第2液へ2時間浸漬し、その後、50mLの大腸想定液を入れた100mLの三角フラスコに移し、100往復/minで2時間往復振とうさせた。前記大腸想定液には、pH3.5の酢酸緩衝液(Michaelisの緩衝液)を使用した。また、前記試験は、前記カプセル6個を1組として行った。
各液で処理した後のカプセルについて膨潤及び変形の有無、並びに内容物の放出の有無を目視で観察した。結果を表1に示す。なお、前記第1液及び前記第2液で処理した後のカプセルについては、下記評価基準に従い、4段階で判定した。
−評価基準−
◎:6個すべてが形状を保持し、膨潤乃至変形が認められなかった。
○:6個中1個以上で若干膨潤乃至変形が認められた。
△:6個中1個以上で著しい膨潤乃至変形が認められたが、内容物を保持した。
×:6個中1個以上で内容物が溶出された。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、脱色シェラックの質量をカプセル質量に対して、1.5質量%から1.7質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例1において、ハードカプセルをHPMCカプセルからゼラチンカプセル(クオリカプス株式会社製、食品用ゼラチンカプセル、3号、カプセル質量:48mg)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、ハードカプセルをHPMCカプセルからキトサンカプセル(アイセロ化学株式会社製)に変更し、脱色シェラックの質量をカプセル質量に対して1.5質量%から1.9質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
実施例2において、バンドシールによる封緘を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、ビフィズス菌大腸デリバリーカプセルを得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のビフィズス菌大腸デリバリーカプセル及びその製造方法は、ハードカプセルに内包されるビフィズス菌が胃及び小腸で溶出することなく、大腸で速やかに溶出し、かつ、胃及び小腸でのハードカプセル内への水分の侵入を抑え、ビフィズス菌の失活を抑えることができること、並びに十分な強度を有し、強度を増大させるためのコーティングが不要であり、更にコーティング量を抑え、有利な製造コストで製造できることから、ビフィズス菌を用いた整腸剤等の医薬品、保健食品、健康補助食品及びそれらの製造方法などに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を含み、
前記カプセルの嵌合部にバンドシールを有し、
前記カプセルの表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に有してなることを特徴とするビフィズス菌大腸デリバリーカプセル。
【請求項2】
セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1に記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセル。
【請求項3】
キトサン含有層が、キトサン含有コーティング液をカプセル表面にコーティングして形成されたものである請求項1から2のいずれかに記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセル。
【請求項4】
キトサン含有コーティング液が、揮発性有機酸水溶液にキトサンを溶解してなる請求項3に記載のビフィズス菌大腸デリバリーカプセル。
【請求項5】
ゼラチン又はセルロース誘導体を基材とするハードカプセル内にビフィズス菌を充填し、
前記カプセルのボディ部とキャップ部とを嵌合し、
前記嵌合部を、バンドシールで封緘し、
前記カプセルの表面にキトサン含有コーティング液を塗布又は噴霧してキトサン含有層を形成し、
前記キトサン含有層上に腸溶性基材含有コーティング液を塗布又は噴霧して腸溶性基材含有層を形成することを特徴とするビフィズス菌大腸デリバリーカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2012−149032(P2012−149032A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250418(P2011−250418)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】