説明

ピペットチップ

【構成】 ピペットチップは、上端部、下端部およびその2つの端部間に延びる側壁を有する本体を含む。孔が上下端部間において本体を通して軸方向に延びる。下端部は中心開口を形成した底部表面を有し、その中心開口は軸方向孔と連通してそこを通って液体が通過するのを許容する。底部表面には少なくとも1つの溝が形成されていて、その溝は中心開口周りに同心円状に配置されあるいは螺旋状に配置される。少なくとも1つの溝は、中心開口を通って通過する液体が中心開口からピペットチップの本体の上端部へ向かって側壁の外側表面に沿って少なくとも部分的に流れるのを抑制するように作用する。
【効果】 正確な量の液体の分配が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を分配することができるピペットチップ(pipette tip)に関し、特に、湿式および乾式の化学分析器において使用されて微小量の液体を正確に分配することができる、ピペットチップに関する。
【0002】
なお、この出願は2006(平成18)年11月16日付で出願された「ピペットチップ」という名称のアメリカ仮出願(Provisional Application)第60/859,308号に関連すると共に、ドミニク・ペリティア(Dominic Pelletier)、ジェフリー・フェルプス(Jeffrey Phelps)、ジェイソン・アギア(Jason Aguiar)、ジェレミー・ハモンド(Jeremy Hammond)、ウィリアム・ジェイ・トレイグル(William J. Traigle)、およびチャンドラー・ジー・シネット(Chandler G. Sinnett)という名前の発明者を有し、2007(平成19)年11月15日付で速達郵便番号EB799735463USで出願されたが願番が未だ付与されていない「ピペットチップ」という名称のアメリカ実用特許出願(utility patent application)に関連し、この出願はこれらの各々の開示を参照によって取り入れる。この出願は、アメリカ特許法第119条および/または120条の下で、上記関連する仮出願および実用出願の優先権の利益を請求する。
【背景技術】
【0003】
図1、図2および図3は、メイン州ウェストブルック市のアイデックス・ラボラトリーズ・インク(IDEX Laboratories, Inc:本件出願人)によって市場に出されているVet Test(ヴェットテスト:商品名)という獣医学上の血液分析器に組み込まれる従来のピペット2の種々の図解である。従来のピペットは、そこを通って軸方向に延びる中心孔6を有する本体4と分配チップ8とを含む。分配チップ8は、末端のチップ端部9、反対側の基端部11および側壁13を有し、さらに、ピペット本体4の中心孔6へ至るチップ端部9の底部表面に形成された円形開口10を有する。液体は、空気の力によって、中心孔6から円形開口10の外へ分配される。このピペットの構造および動作は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3において、より完全に説明されている。特許文献の各々はトーマス・ハイド等(Tohmas Heidt et al.)へ発行されていて、ここでは、それらの開示を参照によって取り入れる。
【0004】
ヴェットテスト(商品名)システムは、表面上に化学的なまたは生物学的な試薬を有する試験スライド上に、体液たとえば、尿(urine)、血清(serum)および/または血漿(plasma)を塗布するために使用される。従来のピペット2は、各々が異なる試薬の被覆を持っていてもよい複数の試験スライド上に、或る量の液体を自動的に分配する。ヴェットテスト(商品名)装置での軽微な懸念は、時折現場での失敗(すなわち、スライドへの血清/血漿の不適当な塗布)があることである。このごく稀な失敗は、液体のむらの有る量あるいは試験スライド上へ液体が付着されていないことから、結果的に生じる。稀な失敗は、少なくとも部分的には、ピペットチップの設計やピペットの分配チップ8が好ましくはそれによって作られる材料(すなわち、ポリプロピレン)であることを突き止められている。
【特許文献1】USP5,089,229
【特許文献2】USP5,250,262
【特許文献3】USP5,336,467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のピペット2の分配チップ8から特定量の液体が分配されるとき、流体力学によって、円形開口10においてほぼ球状の小滴を形成させる。その小滴が所望の量に近づくと、スライドの化学的に被覆された膜部分へその小滴がちょうど接触するまで、ピペット2がスライドに向かって下降され、それに応じて、小滴は、それに作用する毛管引力、表面張力および重力のために、ピペット2の分配チップ8から引き出される。残念なことに、試験スライド上へ分配される液体の正確な量を制御する能力は困難であり、時々、少量の小滴が分配チップ8の端部9の外側表面上で止まる。これは、少なくとも部分的には、ピペットチップの外側表面上へ液体を「ぬらす(wet)」または引き付けるポリプロピレンピペットチップ8の性質によるものである。外側表面をぬらすことは、不正確な体積量の液体が試験スライド上へ付着され、あるいは液体が全く付着されないという事態を招来する。
【0006】
この発明の目的は、正確な量の液体を分配することができる、ピペットを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、正確な量の液体を、試薬を有する試験スライド上へもしくは化学試薬を入れた薬びん中へ分配することができる、ピペットを提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、試料液体の不適当な量の分配をなくすかもしくは少なくとも最小にする、ピペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の1つの形態によれば、化学的な試薬を有する試験スライド上にもしくは化学的な試薬を入れた薬びん中へ液体試料を付与するためのピペットチップは、そこを通って試料液体が選択的に流れる中心孔を有する、拡大された底部表面を含む。増加された表面積は、液体がピペットの外側面まで到達しかつ/または伝わるのを抑制する。この発明の他の形態においては、中心開口周りに同心円的にあるいは螺旋状に配置される1つまたは複数の溝が底部表面に形成される。溝は、たとえば断面がV形状もしくは矩形の、任意の寸法のものであってよく、試料液体の小滴が底部表面に沿って流れ、そしてそれゆえにピペットチップの側壁の外側表面まで伝わるのを抑制し、そのために、化学的な試薬を有する試験スライド上へのまたは化学的な試薬を入れた薬びん中への不適当な量の試料液体の分配を最小にする。明らかに、この付加された液体制御は、化学試薬を有するスライドの塗布(spotting)の分野のほかに、たとえば、湿式および乾式化学、遺伝子試験、商業化プロセスなどを含む微生物学応用へも適用できる。
【0010】
この発明の、これらのおよび他の目的、特徴および利点は添付図面に関連して読まれる、この発明の例示的な実施例の以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は化学分析器において用いられる従来の液体計量ピペットチップのチップ部の底面図である。
【図2】図2は化学試薬を有する試験スライド上へもしくは化学試薬を入れた薬びん中へ血清あるいは血漿を付与するために使用される従来のピペットの斜視図である。
【図3】図3は図2に示すピペットの先端部の詳細な長手方向断面図である。
【図3A】図3Aは1つの溝を有するこの発明のピペットチップの底面図である。
【図3B】図3Bは拡大された底部表面を有するこの発明の別のピペットチップの底面図である。
【図4】図4はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図5】図5は図4に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図6】図6はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図7】図7は図6に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図8】図8はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図9】図9は図8に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図10】図10はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図11】図11は図10に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図12】図12はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図13】図13は図12に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図14】図14はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図15】図15は図14に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図16】図16はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図17】図17は図16に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図18】図18はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図19】図19は図18に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図20】図20はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図21】図21は図20に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図22】図22はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図23】図23は図22に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図24】図24はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図25】図25は図24に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図26】図26はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図27】図27は図26に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図28】図28はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図29】図29は図28に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【図30】図30はこの発明の別の形態に従って構成された液体計量ピペットのチップ部の長手方向断面図である。
【図31】図31は図30に示すこの発明のピペットチップの底面図である。
【実施例】
【0012】
この発明は先に述べた特許文献1、特許文献2および特許文献3において説明されているヴェットテスト(商品名)という獣医学上の血液分析器において使用される従来のピペットチップ8に対する改良であり、これら特許文献の開示をここで参照によって取り入れる。
【0013】
図3A‐図31を参照して、この発明はディスポーザブル(disposable:使い捨てできる)ピペットチップ14を含み、このピペットチップ14は従来のピペット2の端部上に取り付けられる。ピペットチップ14は本体を有し、その本体は上端部18、反対側の下端部20、外側表面を有し上下端部18、20間へ延びる側壁16および本体を通って軸方向に延びる中心孔22を含む。チップ14は上端部18から下端部20へ向かって径方向内方に収束し、直径では、下端部20が上端部18より小さい。下端部20は中心開口24が形成されている底部表面23を有し、この中心開口24はそれを通って試料液体が通過することができるように軸孔22へ連通する。下端部20に対向する上端部18は、先の特許文献中に記述されている従来のピペットチップにおけるように、複数の径方向外方に延びる支持フィン(図示せず)を含んでもよい。
【0014】
この発明に従って、ピペットチップ14の底部表面23は、拡大されているかかつ/またはそこに形成された1つもしくは複数の溝あるいは切欠き(cut)を含む。溝あるいは切欠きは、成形(molding)、フライス加工(milling)、プレス加工(stamping)、切削加工(cutting)あるいは他の同様の手段によって形成され得る。溝は、深さ、形状および寸法において可変であり、また、底部表面23において中心開口24と同心であってよくまたは底部表面23上に螺旋状に配置されてもよい。さらに、溝は、中心開口24周りに周方向に連続的でよく、あるいは、中心開口24周りに互いに周方向に間隔を隔てられた間欠的なアーチ形状のセグメントであってよい。また、ピペットの底部表面は、図3A‐図29に示すようにほぼ平坦であるか、図30‐図31に示すように断面において凸状にされ得て、さらには、1つまたは複数の溝あるいは中心開口24からの径方向の液体の流れを抑制するための他の手段を備えていてもよく備えなくてもよい。
【0015】
たとえば、図3Aに示すように、ピペットチップ14は好ましくは、先行技術のチップと同じ内/外寸法を有する(たとえば図1において、開口径はおよそ0.030インチ(0.030 x 25.4 = 0.762 mm)であり、チップ外径は0.0685インチ(= 1.7399 mm)である)が、溝28をさらに含む。図3Bにおけるピペットチップ14は溝を持っていないが、拡大された外径を有し、それによって、開口24と下端部20の外側との間の液体の流れを抑制し、阻害し、さもなければ減じるようにしている。好ましい実施例において、図3Bにおける開口24の内径はおよそ0.030インチ(= 0.762 mm)であり、チップの外径はおよそ0.069インチ(= 1.7526 mm)からおよそ0.115インチ(= 2.921 mm)の間である。
【0016】
図4および図5に進んで、この発明の1つの実施例に従えば、ピペットチップの下端部20の底部表面23は、中心開口24周りに同心円的に配置された(または螺旋状に配置された)、底部表面23中に形成された、1つまたは複数の同じような寸法の3角形もしくはV形状(断面で見たとき)の溝28を持ってもよい。1つまたは複数の3角形溝28は、底部表面23において好ましくはおよそ0.0080インチ(= 0.2032 mm)の開口32を形成するように、溝の頂点から分かれる好ましくはおよそ65度の角度で隔てられる2つの対向する側壁30を有する。3角形溝28は、底部表面23中に多様な深さに形成されてもよいが、好ましくは、およそ0.0063インチ(= 1.6002 mm)の深さに形成される。もし、1つの溝28が用いられるとすると、図4および図5に示すように、底部表面23に形成された溝開口32の径方向の内縁は、好ましくは、ピペットチップ14の中心からおよそ0.0355インチ(= 0.9017 mm)の半径にある。
【0017】
この発明の他の実施例においては、図6および図7に示すように、ピペットチップの下端部20の底部表面23はその底部表面23に形成された1つまたは複数の方形(断面で見たときの)の溝34を有してもよく、1つまたは複数の溝34は、中心開口24周りに同心円状に配置される(もしくは螺旋状に配置される)。1つまたは複数の方形溝34は、底部表面23中において、凹状上壁36、2つの横側壁38および開口40を含んでよい。2つの側壁38は好ましくは、およそ0.0080インチ(= 0.2032 mm)の寸法で隔てられる。図4および図5に示すこの発明の先の実施例と同様に、方形溝34は底部表面23中において多様な深さで形成され得るが、好ましくは、およそ0.0060インチ(= 0.1524 mm)の深さにされる。図6および図7に示すようにもし1つの溝34が用いられる場合、底部表面23に形成される溝開口40における径方向内縁は、ピペットチップ14の中心から好ましくは、およそ0.0355インチ(= 0.9017 mm)の半径にある。
【0018】
図8および図9に示すように、この発明の他の形態では、底部表面23が複数の、好ましくは2つの、異なる寸法の3角形またはV形状の溝を有し、これらの溝は中心開口24周りに同心円状に、ピペットチップの底部表面23に形成される。径方向において外側の3角形溝42は、底部表面23において好ましくはおよそ0.0076インチ(= 0.19304 mm)の開口46を形成するように、溝42の頂点から分かれる好ましくはおよそ65度の角度で隔てられた2つの対向する側壁44を有する。外側3角形溝42は底部表面23中に多様な深さに形成され得るが、好ましくは、およそ0.0060インチ(= 0.1524 mm)の深さに形成される。径方向において内側の3角形溝48は、底部表面23において好ましくはおよそ0.0062インチ(= 0.15748 mm)の開口52を形成するように、溝48の頂点から分かれる好ましくはおよそ65度の角度で隔てられる2つの対向する側壁50を有する。内側3角形溝48は、底部表面23中において多様な深さに形成され得るが、好ましくは、およそ0.0048インチ(= 0.12192 mm)の深さに形成される。底部表面23に形成される外側溝の開口46の径方向内縁はピペットチップ14の中心からおよそ0.0361インチ(= 0.91694 mm)の半径にあり、底部表面23に形成されている内側溝の開口52の径方向内縁は、好ましくは、ピペットチップ14の中心から測っておよそ0.0232インチ(= 0.58928 mm)の半径にある。
【0019】
上で説明しかつ図4‐図9に示したこの発明の実施例の各々において、下端部20およびそれの底部表面23は、1つまたは複数の溝を持つために拡大されていて、好ましくは、およそ0.0970インチ(= 2.4638 mm)の外径を有する。中心開口24は好ましくは、およそ0.0310インチ(= 0.7874 mm)の直径を有する。しかしながら、図3Aに示すように、底部表面23の拡大は必要ではない。
【0020】
この発明のさらに別の形態が図面の図10および図11に図解される。この実施例において、底部表面23は、底部表面23に形成され、中心開口24周りに同心円的に配置された1つまたは複数の同じような寸法を有する3角形またはV形状(断面で見たとき)の溝28を含む。この実施例は、底部表面23、中心開口24およびV形状の溝の寸法が異なることを除いて、図4および図5に示す実施例と同様である。
【0021】
詳しく言うと、3角形溝28は、底部表面23において好ましくはおよそ0.0100インチ(= 0.254mm)の開口32を形成するように、溝の頂点から分かれる好ましくはおよそ90度の角度によって隔てられる2つの対向する側壁30を有する。3角形溝28はおよそ0.0050インチ(= 0.127 mm)の深さで底部表面23に形成される。
【0022】
図10および図11に示すこの発明の実施例において、チップ開口24の半径は好ましくはおよそ0.0150インチ(= 0.381 mm)であり、底部表面23の外周はおよそ0.0525インチ(= 1.3335 mm)の半径を有する。最内溝の開口32の内縁は好ましくは、およそ0.0225インチ(= 0.5715 mm)の半径を有し、最外溝の開口32の内縁は好ましくは、およそ0.0350インチ(= 0.889 mm)の半径を有する。
【0023】
図12および図13はこの発明のピペットチップの他の実施例を示し、この実施例は、多くの局面において、図10および図11に示すピペットチップの実施例に類似するが、図12および図13に示す実施例の寸法は図10および図11に示す実施例の寸法とは異なる。
【0024】
詳しく説明すると、図12および図13を参照して、ピペットチップは好ましくは、図10および図11に示す実施例におけるようにおよそ0.0150インチ(= 0.381 mm)の好ましい半径を有するそれの底部表面23に中心開口24が形成されるが、ピペットチップの底部表面23の外径が図10および図11に示すものの外径とは異なり、底部表面23は好ましくは、およそ0.0575インチ(= 1.4605 mm)の外径を有する。また、ピペットチップの底部表面23に同心円的に形成されたV形状または3角形溝28の寸法は図10および図11に図解した実施例のそれらと実質的には同じであるが、最内溝の底部表面23に規定されている開口32の内縁は好ましくはおよそ0.0250インチ(= 0.635 mm)の半径を有し、最外溝によって底部表面23中に規定される開口32の内縁は好ましくは、およそ0.0375インチ(= 0.9525 mm)の半径を有する。
【0025】
図14および図15はこの発明のピペットチップの他の実施例を示し、そこでは、好ましくは断面3角形状またはV形状の1つまたは複数の深い溝28がピペットチップの底部表面23に形成され、中心開口23に対して同心円状に配置される。すなわち、3角形溝28は、底部表面23において好ましくはおよそ0.008インチ(= 0.2032 mm)の開口32を形成するように溝の頂点から分かれる好ましくはおよそ23度の角度で隔てられた2つの対向する側壁30を有する。3角形溝28は好ましくは、底部表面23中においておよそ0.020インチ(= 0.508 mm)の深さに形成される。
【0026】
図14および図15に示すこの発明の実施例において、チップ開口24の直径は好ましくはおよそ0.030インチ(= 0.762 mm)であり、底部表面23の外周はおよそ0.105インチ(= 2.667 mm)の直径を有する。最内溝の開口32の内縁はおよそ0.024インチ(= 0.635 mm)の半径を有し、最外溝の開口32の内縁は好ましくは、およそ0.036インチ(= 0.9144 mm)の半径を有する。
【0027】
図16および図17はこの発明のピペットチップの他の実施例を示し、この実施例は図14および図15に示すピペットチップの実施例と多くの局面において類似する。底部表面23の外径は好ましくはおよそ0.115インチ(= 2.921 mm)であり、チップ開口24の直径は好ましくはおよそ0.030インチ(= 0.762 mm)である。再び、1つまたは複数の3角形溝28(断面から見たとき)が底部表面23に形成され、中心開口24周りに同心円的に配置される。3角形溝28は、底部表面23において好ましくはおよそ0.008インチ(= 0.2032 mm)の開口32を形成するように、溝の頂点から分かれる好ましくはおよそ23度の角度で隔てられる2つの対向する側壁30を有する。3角形溝28は好ましくは、およそ0.020インチ(= 0.508 mm)の深さに底部表面23に形成される。
【0028】
図16および図17に示す実施例において、最内溝の開口32の内縁は好ましくはおよそ0.026インチ(= 0.6604 mm)の半径を有し、最外溝の開口32の内縁は好ましくはおよそ0.038インチ(= 0.9652 mm)の半径を有する。
【0029】
図18および図19はこの発明に従って形成されたピペットチップの別の実施例を示す。この実施例において、ディップエッジ(dip edge)70が含まれ、このディップエッジ70は底部表面23の周囲を取り囲み、そこから軸方向外方に延びる。好ましくは、ディップエッジ70はおよそ0.0100インチ(= 0.254 mm)の半径幅を有し、ピペットチップの底部表面23からおよそ0.0050インチ(= 0127 mm)の距離延びる。
【0030】
図18および図19に示す実施例において、3角形状またはV形状溝28が底部表面23に形成され、中心開口24周りに同心円状に配置される。3角形溝28は、底部表面23において好ましくは0.0100インチ(= 0.254 mm)の開口32を形成するために、溝の頂点から分かれる好ましくはおよそ90度の角度で隔てられた2つの対向する側壁30を有する。3角形溝28は好ましくは、底部表面23中においておよそ0.0050インチ(= 0.127 mm)の深さに形成される。
【0031】
図18および図19に示すピペットチップの実施例において、チップ開口24の半径は好ましくはおよそ0.0150インチ(= 0.381 mm)であり、底部表面23の外径はおよそ0.1050インチ(= 2.667 mm)である。溝28の開口32の内縁は好ましくはおよそ0.0250インチ(=0.635 mm)の半径を有し、ディップエッジ70の径方向内縁は好ましくはおよそ0.0425インチ(= 1.0795 mm)の半径を有する。溝28およびディップエッジ70は中心開口24と底部表面23の外縁との間におけるピペットチップの底部表面23の有効表面積を増加し、ピペットチップの中心開口24を通って底部表面23の外縁へ向かって通過する液体の流れを抑制し、それによってピペットチップの側壁の外側表面にまで液体が伝わる可能性を最小にする。
【0032】
図20および図21はこの発明のピペットチップの他の実施例を示し、ここでは、1つまたは複数の半円形(断面において)溝72がピペットチップの底部表面23内に形成される。再び、半円形溝72は中心開口24周りに同心円状に配置されてもよく、あるいは中心開口周りに非同心的に配置されもしくは螺旋状に配置されてもよい。
【0033】
図22および図23はこの発明のピペットチップの1つの形態を示し、そこでは、溝28がピペットチップの底部表面23に形成され、中心開口24周りに螺旋状に配置される。
【0034】
図24および図25はこの発明の他の形態に従って形成されたピペットチップを示し、そこでは、溝28がチップの底部表面23に形成され、中心開口24周りにその部分がピペットチップの底部表面上において部分的に径方向内方および外方へ延びる曲がりくねった方向に配置される。このような曲がりくねった溝28の目的は、先に説明しかつ図4‐図23に示したピペットチップの底部表面23に形成された溝を設けた目的と同様であるが、ピペットチップの底部表面23の有効面積を増加させ、試料液体がピペットチップの側壁の外側表面にまで伝わる機会を最小にするために、血漿/血清の液体の流れが中心開口24からそれに沿ってピペットチップの外側表面に向かう流れを抑制する。
【0035】
この発明に従って構成されたピペットチップの別の形態が図26および図27に図解される。ここでは、ピペットチップの底部表面23に形成された1つまたは複数の溝28が中心開口24から底部表面23の外縁へ径方向に延びる。再び、径方向溝28がピペットチップの底部表面23の全表面積を増加し、中心開口から底部表面の外縁への試料液体の、さもなければピペットチップの側壁の外側表面まで伝わってしまって試薬を有する試験スライド上に分配される液体の量の正確さに影響を与える可能性のある、流れを抑制する。
【0036】
ここまで、溝がピペットチップの底部表面23に形成されているように説明した。しかしながら、底部表面23の有効表面積を増加しそしてそれゆえに中心開口24からピペットチップの底部表面23の外縁への試料液体の流れを抑制する、他の形状や特徴を取り得る。たとえば、図28および図29に示すように、断面形状が3角形、矩形あるいは半円形であり得る1つまたは複数の凸部74がピペットチップの底部表面23上に形成されかつそこから外方へ延びる。そのような凸部74は、ピペットチップに形成された中心開口24周りに底部表面23上に、螺旋状に配置されるか、同心円状に配置されるかあるいは非同心円状に配置され得る。凸部74はピペットチップの有効表面積を増加し、そしてそれゆえに、中心開口24から底部表面23の外縁への試料液体の流れを抑制する。
【0037】
さらに、この発明のピペットチップの底部表面23は、溝があってもなくてもよいが、図30および図31に図解するように、ピペットチップの下面から軸方向外方へ延びるような凸形状であってもよい。ピペットチップの底部表面23の凸形状は、ピペットチップの底部表面23の全体の表面積を増加し、それゆえに、中心開口24から底部表面23の外縁への試料液体の流れを抑制し、液体が底部表面23の外縁へ到達したり、ピペットチップの側壁の外側表面にまで伝わる可能性を最小にする。この凸形状チップはまた、ピペットチップに付着したままの液体の量を減じるように働く。たとえば、それの上に液体が分配されている試験スライドが液体をはじく傾向を持っているとすると、凸形状は、塗布後にピペットチップ上に不所望な量の液体が残るという、可能性を減じる。
【0038】
この発明のピペットチップの底部表面23に形成された溝や凸部の付加、もしくは底部表面の全体の表面積を増加することは、溝や凸部あるいは増加された表面積が小滴が開口24を通ってピペットチップ14の側壁の外側表面に向かって流れたりピペットチップ外側表面にまで伝わったりするのを抑制するので、従来のピペットの設計において不正確な量の試料の分配が起きることに起因する現場での失敗という稀な問題を減じる。血清や血漿のような液体に対して親和性を有する好ましい材料、ポリプロピレンからこの発明のピペットチップが作られたとしても、化学試薬を有する試験スライド上への(または化学試薬を入れた薬びん中への)液体のより一層正確な計量がこの発明のピペットチップによって実現される。
【0039】
この発明の例示の実施例が添付図面を参照して説明されたが、発明は実施例に限定されるものではなく、種々の他の変形や修正が特許請求の範囲から離れることなく当業者によってもたらされる、ということを理解すべきである。さらに、好ましい実施例は血液化学分析器に関連するように主として説明したが、液体分配の当業者は明らかに、この発明がこの分野以外の応用ないし適用を有するということを正しく理解するであろう。
【符号の説明】
【0040】
14…ピペットチップ
16…側壁
18…上端部
20…下端部
22…中心孔
23…底部表面
24…中心開口
28,34,42,48,72…溝
30,38,44,50…側壁
32,40,46,52…溝の開口
36…上壁
70…ディップエッジ
74…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部、その上端部に軸方向に対向して配置される下端部および上端部と下端部との間に延びる側壁を有する本体を備え、
本体には上端部と下端部との間においてその本体を通して軸方向に延びる孔が形成されていて、
下端部は底部表面を有し、
その底部表面は、それの厚みを通して形成されて前記軸方向の孔に連通してそこを通っての液体の通過を許容する開口を有し、
底部表面はさらに、そこに形成された少なくとも1つの溝を有し、その1つの溝は開口を通過する液体が外側表面に向かって流れるのを抑制する、ピペットチップ。
【請求項2】
少なくとも1つの溝は断面がV形状である、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項3】
少なくとも1つの溝は断面矩形である、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項4】
少なくとも1つの溝は断面半円形である、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項5】
少なくとも1つの溝は本体の底部表面の中心開口周りに同心円状に配置される、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項6】
少なくとも1つの溝は本体の底部表面の中心開口周りに螺旋状に配置される、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項7】
少なくとも1つの溝は本体の底部表面における中心開口に関して径方向に配置される、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項8】
少なくとも1つの溝は中心開口周りに曲がりくねった形状で本体の底部表面上に配置される、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項9】
少なくとも1つの溝は本体の底部表面に形成された複数の溝を含む、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項10】
少なくとも1つの溝は、本体の底部表面に形成された少なくとも第1溝および第2溝を含み、第1溝および第2溝は断面において類似の形状を有する、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項11】
第1溝および第2溝は中心開口周りに同心円状に配置される、請求項10記載のピペットチップ。
【請求項12】
第1溝および第2溝は中心開口周りに螺旋状に配置される、請求項10記載のピペットチップ。
【請求項13】
少なくとも1つの溝は本体の底部表面に形成された少なくとも第1溝および第2溝を含み、第1溝は底部表面上において第2溝の径方向内方に位置を定められ、第1溝は第1断面寸法を有し、第2溝は第2断面寸法を有し、第1溝の第1断面寸法は第2溝の第2断面寸法とは異なる、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項14】
第1溝および第2溝は中心開口周りに同心円状に配置される、請求項13記載のピペットチップ。
【請求項15】
第1溝の第1断面寸法は第2溝の第2断面寸法より小さい、請求項13記載のピペットチップ。
【請求項16】
上端部、その上端部に軸方向に対向して配置される下端部および上端部と下端部との間に延びる側壁を有する本体を備え、
本体には上端部と下端部との間においてその本体を通して軸方向に延びる孔が形成されていて、
下端部は底部表面を有し、
その底部表面は、それの厚みを通して形成されて前記軸方向の孔に連通してそこを通っての液体の通過を許容する開口を有し、
底部表面はさらに、開口を通して通過する液体が外側表面へ向かって流れるのを抑制するための手段を有する、ピペットチップ。
【請求項17】
抑制手段は底部表面に形成された少なくとも1つの溝を含む、請求項16記載のピペットチップ。
【請求項18】
溝は連続した円形である、請求項17記載のピペットチップ。
【請求項19】
抑制手段は開口と外側表面との間の材料における増加を含む、請求項16記載のピペットチップ。
【請求項20】
底部表面は少なくとも1つの平坦および凸部を含む、請求項16記載のピペットチップ。
【請求項21】
抑制手段は底部表面上に位置を定められそこから外方へ延びる少なくとも1つの凸部を含む、請求項16記載のピペットチップ。
【請求項22】
少なくとも1つの凸部は連続した円形である、請求項21記載のピペットチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2010−510488(P2010−510488A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537214(P2009−537214)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/024035
【国際公開番号】WO2008/063544
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】