説明

ピラゾロン誘導体を用いた有機色素

【課題】 特に、いわゆる青色レーザー用の波長に対応した吸収帯を有する有機色素及び製膜が容易な新規有機化合物を提供すること。
【解決手段】 有機色素の新規化合物として、下記一般式(A)の4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体を用いる。


【効果】 これら誘導体はいずれも300〜450nmにおいて極大吸収波長を示し、特に400nm付近において大きな吸収を示すものである。この吸収特性はいわゆる青色レーザーの波長に対応するものであり、媒体などへの応用が可能である。また、なかでも(A)式中、Rを2−エチルヘキシルエステル基とした化合物は、これを有機色素として用いて塗膜化する場合でも、アルコール、ケトンなどへの溶解性が良く、結晶化し難い特性があるため、物理的特性としても良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青〜紫色領域を吸収し、自身は黄〜朱色であるピラゾロン誘導体を用いた有機色素の化合物に関し、また新規な4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体化合物に関する。より詳しくは、いわゆる青色レーザーの波長領域に適した有機色素及び新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW、MOなどへの媒体の書き込み、読み取りには、いわゆる赤色レーザーが普及している。これに使用する媒体には、当該赤色レーザーの波長に対応した波長を吸収する色素が表面にコーティングされている。色素には無機色素と有機色素が存在するが、応答速度が速いなどの利点から有機色素が一般に用いられる。
【0003】
一方最近、更なる高密度の記録を可能にすべく、いわゆる青色レーザーを用いた機器の開発が進んでいる。青色レーザー用の媒体に用いる色素は、レーザーの波長に対応すべく、405nm付近の波長を効率的に吸収する色素でなければならない。かかる色素として、現在いくつかの無機色素が実用化に向けて開発されている。
【0004】
しかし、レーザーによる高速度の記録に対応できるものとするためには、媒体に用いる色素として、無機色素ではなく応答の速い有機色素が好ましい。このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜4に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系有機色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献3記載の合成化合物の吸収曲線チャートで見られるように、λmaxは350〜380nmにあり、405nm付近での吸収強度が小さく、必ずしも青色レーザー光に対して適応しているとはいえない。
【0006】
また、上記のような媒体に適用するため、有機色素を媒体上に塗布する際においては、なんらかの有機溶媒に有機色素を溶解させてからスピンコートするのが一般的である。しかし、上記有機色素をスピンコートするには、溶媒としてトルエン、キシレン、セロソルブ系の有機溶媒を用いざるを得なかったが、かかる有機溶媒は、媒体の材質を傷めたり、環境上の問題があるなどの理由で使用が敬遠されているものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、下記(化1)に示した一般式(A)で示される4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体のうち、(A)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるピラゾロン誘導体を含有する化合物を有機色素として用いることを主要な解決手段とする。ただし下記(A)式中、Phはフェニル基である(以下同じ)。
【化1】

〜Rは、水素原子、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基のうち、いずれかの官能基または原子であり、
は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基のうち、いずれかの官能基または原子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機色素は、390〜430nmの範囲において大きな吸収を持ち、更に400nm付近の波長領域に極大吸収領域を持つため、405nm付近の波長を持つ青色レーザーの波長に対応する吸収帯を持つ色素である。
【0009】
なかでも、下記(化6, 化9,化10)の化合物(a),(b)及び(c)のような、Rが2−エチルヘキシルエステルである化合物は、イソプロピルアルコール他、種々の溶媒に対する溶解性に優れており、かつ基盤上に塗膜して乾燥させた後も結晶化しにくいという優れた特性を持つため、下記の化合物(a)〜(c)を用いた有機色素では、容易に薄い塗膜の状態にすることができる。
化合物(a)
【化6】

化合物(b)
【化9】

化合物(c)
【化10】

【0010】
また、上記化合物(a)〜(c)の他、本発明の化合物のうち、下記化合物(d)〜(h)については、青色レーザー用として適当な吸収帯を有する有機色素化合物であることが実験的にも明確となった。
化合物(d)
【化3】

化合物(e)
【化4】

化合物(f)
【化5】

化合物(g)
【化7】

化合物(h)
【化8】

【0011】
さらに、本発明の有機色素は、湿式塗布以外にも蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に成膜させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、有機色素として、下記一般式(A)によって示される有機化合物を用いたものである。以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0013】
【化1】

【0014】
(A)式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表し、任意の置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR〜Rはフッ素、塩素、臭素等のハロゲン;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシ基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基。モノn-プロピルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のカルボン酸エステル基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。
【0015】
該任意の置換基の例としてRはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基。モノn-プロピルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキルアミノ基、モノアセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。
【0016】
なかでも今回新たに合成したRが2−エチルヘキシルエステル基である化合物は、種々の溶媒に対する溶解性に優れており、かつ基盤上に塗膜して乾燥させた後も結晶化しにくいという優れた特性を持つことが分かった。これは置換基として、嵩高い2−エチルヘキシル基等を導入した効果と思われる。このような特に良好な特性を有する化合物の具体例としては、上記の化合物(a),(b)及び(c)が挙げられる。
【0017】
一般式(A)で示される本発明化合物は、たとえば下記(化11)に示した反応式を経て合成することができる。
【化11】

【0018】
等モルの1‐フェニル−5−ピラゾロンまたはそれから誘導される化合物とベンズアルデヒドまたはベンズアルデヒドより誘導される化合物とトルエンを混ぜ合わせ、酢酸アンモニウムと酢酸の存在下において、100〜120℃の還流脱水下で反応させる。析出した結晶を濾過し取り、トルエンで充分に洗浄し、高純度の4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール-5-オン誘導体である化合物が得られる。反応の溶媒としてはトルエン以外に例えばベンゼン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素等が挙げられる。再結晶溶媒としてはメチルイソブチルケトン以外に例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の低級エステル類等が挙げられる。
【0019】
本発明の有機色素を製膜して用いる方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0020】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基盤を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。一般的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが良い。その他の塗布溶媒としては、例えばジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0021】
しかし、最近になって毒性のある溶媒や地球環境に影響を及ぼすおそれのあるこれらの溶媒は敬遠される傾向にあって、より安全性の高い低級アルコールなどに溶解しやすい化合物が求められるようになってきた。低級アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。この中でメタノールは毒性が比較的強く、1−ブタノール、2−ブタノールは、沸点が高くて揮発性が悪い等の問題がある。またエタノールはコスト的に不利があるので、最も望ましい低級アルコールとしては低コストであり、毒性が低く、揮発性の良い、イソプロピルアルコール(IPA)が挙げられる。
【0022】
本発明の化合物(a),(b)及び(c)はイソプロピルアルコールに対して比較的溶解性が良く、かつ前述のように基盤上に塗布して乾燥させた後も結晶化しにくいという優れた性質を持つ。
【実施例】
【0023】
〔化合物の合成〕
以下に本発明で実施した本発明の有機色素に用いる化合物の合成法を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
化合物(d);4‐(4‐ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化3】

【0025】
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン8.7g(0.05mol)、バニリン7.6g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸7mL(7.3g,0.12mol)、トルエン75mL(64.5g,0.7mol)を混合し100〜120℃にて水分を分離しながら3〜4時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、トルエンで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を13.1g得た。得られた化合物の収率は、85%、融点は、171〜172℃であった。
【0026】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定装置>
酸素循環燃焼・TCD検出方式 NCH定量装置
スミグラフ NCH−21型(住化分析センター製)
<測定結果>
C18H16N2O3としての計算値
C(%)70.12;H(%)5.23;N(%)9.09
実測値 C(%)70.9 ;H(%)4.99;N(%)9.15
なお、実施例2以降のC,H,Nの測定も同じ測定装置を用いて行った。
【0027】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODSA−212 5μm 6mm×15cm
カラム温度:40℃
移動層:メタノ−ル:水=9:1
流速:0.7mL/min
<測定結果>
HPLC面百純度99.4%
【0028】
(実施例2)
化合物(e);4‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル-1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化4】

【0029】
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル-5-ピラゾロン8.7g(0.05mol)、2,4‐ジヒドロキシベンズアルデヒド6.9g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸5mL(5.2g,0.09mol)、2-プロパノール50mL(39.3g,0.65mol)を混合して70〜90℃にて2〜3時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて、明橙色の目的の固体を4.6g得た。得られた化合物の収率は、31%、融点は、181〜182℃、HPLC面百純度99.3%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0030】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C17H14N2O3としての計算値
C(%)69.38;H(%)4.79;N(%)9.52
実測値 C(%)66.9 ;H(%)4.70;N(%)9.68
【0031】
(実施例3)
化合物(f);4‐カルボメトキシベンジリデン‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化5】

【0032】
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン8.7g(0.05mol)、4‐ホルミル安息香酸メチル8.2g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸5mL(5.2g,0.09mol)、トルエン50mL(43g,0.47mol)を混合し混合し100〜120℃にて水分を分離しながら3〜4時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、トルエンで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体を16.0g得た。
得られた化合物の収率は、収率80%、融点は、149〜150℃であった。
【0033】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C19H16N2O3としての計算値
C(%)71.24;H(%)5.03;N(%)8.74
実測値 C(%)72.8 ;H(%)4.98;N(%)8.98
【0034】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:Develosil ph‐7 4mmφ×25cm
カラム温度:40℃
移動層:アセトニトリル:水:0.3%リン酸水溶液=6:3:1
流速:0.5mm/min
<測定結果>
HPLC面百純度99.7%
【0035】
(実施例4)
化合物(a);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化6】

【0036】
(a) 4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドの合成
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、バニリン7.6g(0.05mol)、2‐エチルヘキシルブロマイド14.5g(0.075mol)、炭酸ナトリウム5.3g(0.05mol)、DMF2.0g、ヨウ化カリウム1.5g(0.009mol)、4‐メチル‐2‐ペンタノン10mL(7.9g,0.079mol)を混合し120〜140℃にて水分を分離しながら5〜6時間撹拌した。濾過後、油層を水洗して、溶剤を蒸留して、20mmHg150℃にて4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドを蒸留して、淡黄色透明オイルを収率66%で8.7g得た。HPLC面百純は96%であった。
【0037】
(b) 4‐(4‐(2-エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン3.5g(0.02mol)、4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド5.3g(0.02mol)、酢酸アンモニウム0.4g(0.005mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、トルエン30mL(25.8g,0.28mol)を混合し混合し100〜120℃にて水分を分離しながら4〜5時間撹拌した。油層を水洗して、溶剤を蒸留した後2‐プロパノール50mL(39.3g,0.65mol)で再結晶化させた。冷却後固体を濾過し取り目的の橙色の固体を7.3g得た。得られた化合物の収率は、87%、融点は、69-70℃、HPLC面百純度は98.9%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0038】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C26H32N2O3しての計算値
C(%)74.26;H(%)7.67;N(%)6.66
実測値 C(%)75.8 ;H(%)7.53;N(%)6.77
【0039】
(実施例5)
化合物(g);4‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化7】

(a) 3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロンの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3-アミノ-1-フェニル-5-ピラゾロン5.3g(0.03mol)、無水酢酸30.6g(0.3mol)を混合して60〜80℃にて2〜3時間撹拌すると溶解した。その後50℃程度に冷却した。300mLの四つ口フラスコに同様の装置を取り付け、水を200mL入れて撹拌しながら冷却し、前述の無水酢酸溶液をゆっくり混合した。1〜2時間撹拌して固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロンを6.2g得た。収率は95%、HPLC面百純度99%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、下記に示す。
(b) 4‐(4−ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン4.3g(0.02mol)、バニリン3.3g(0.022mol)、酢酸アンモニウム0.7g(0.01mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、2‐プロパノール30mL(23.6g,0.39mol)を混合して70〜90℃にて2時間撹拌し、その後1時間毎に酢酸アンモニウムを0.4g(0.005mol)を2回追加した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体を収率5.3g得た。得られた化合物の収率は、75%、融点は、223〜224℃、HPLC面百純度99%であった。
【0040】
HPLC分析の条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:Develosil ph‐7 4mmφ×25cm
カラム温度:40℃
移動層:アセトニトリル:水:0.3%リン酸水溶液=5:4:1
流速:1.0mm/min
【0041】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C19H17N3O4としての計算値
C(%)64.95;H(%)4.88;N(%)11.96
実測値 C(%)64.2 ;H(%)4.85;N(%)11.9
【0042】
(実施例6)
化合物(h);4‐(4‐ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)‐3‐アミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化8】

100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、実施例5で合成した化合物(g),4‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン4.7g(0.013mol)、試薬特級塩酸13.6g(0.13mol)、水60mLを混合して、80〜100℃で6時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を3.8g得た。得られた化合物の収率は、95%、融点は、225〜226℃、HPLC面百純度99%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0043】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C17H15N3O3としての計算値
C(%)66.01;H(%)4.89;N(%)13.58
実測値 C(%)72.0 ;H(%)4.73;N(%)16.0
【0044】
(実施例7)
化合物(b);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ-1-フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化9】

100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン4.3g(0.02mol)、4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド4.9g(0.02mol)、酢酸アンモニウム0.7g(0.01mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、2‐プロパノール30mL(23.6g,0.39mol)を混合して70〜90℃にて2時間撹拌し、その後酢酸アンモニウムを0.7g(0.01mol)を追加して、1時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体5.3gを得た。得られた化合物の3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル-5-ピラゾロンを基準とした収率は、70%、融点は、188.6〜189.0℃、HPLC面百純度99.2%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例6と同じである。
【0045】
(実施例8)
化合物(c);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
【化10】

300mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、実施例7で合成した化合物(b),4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン4.0g(0.0086mol)、試薬特級塩酸8.7g(0.086mol)、水150mLを混合して、80〜100℃で10時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を3.4g得た。得られた化合物の収率は、収率93%、融点242.4℃(融け終わり)、HPLC面百純度85.9%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0046】
〔評価〕
実施例1〜8で得られた化合物(a)〜(h)につき、紫外線〜可視光吸収スペクトル、赤外線吸収スペクトル、イソプロピルアルコール(IPA)への溶解度を測定した。試験条件は以下の通りである。
【0047】
(紫外線〜可視光吸収スペクトル)
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
検体
試料濃度:10ppm/クロロホルム
(化合物1〜5、8)
10ppm/メタノ−ル
(化合物6、7)
上記条件で測定した化合物(a)〜(h)のスペクトルを図1〜8に示す。
【0048】
(赤外線吸収スペクトル)
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
上記条件で測定した化合物(a)〜(h)の赤外線吸収スペクトルを図10〜17に示す。
【0049】
(塗布膜としたときの評価)
化合物(a)〜(h)をメチルセロソルブに対して2wt%になるよう調整する。次にこの溶液を回転数500〜600rpmで回転している透明なポリカーボネート円盤(直径12cm厚さ約1.2mm)の上に落とし、円盤上に塗布する。溶液を乾燥させると、化合物(a)〜(h)が膜化して付着しているポリカーボネート板を得ることができる。実施例4の化合物(a)については、塗膜状態の紫外線〜可視光吸収スペクトルを図9に示す。
【0050】
上記方法により、円盤上に膜化した化合物(a)〜(h)の結晶性を目視で調べ、また膜化したときの紫外線〜可視光吸収スペクトルについて調べた。測定装置、測定波長は上記紫外線〜可視光吸収スペクトルの条件と同じである。ただし、検体は、化合物(a)〜(h)が膜化して付着しているポリカーボネート板自体とした。
【0051】
これらの評価の結果をまとめて表1に示す。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の有機色素は、一般の色材としても使用できるものであるが、最大吸収の波長が青色レーザーの波長である410nm程度に存在するため、当該レーザーを吸収するための色素として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】化合物(d)(実施例1)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(e)(実施例2)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図3】化合物(f)(実施例3)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図4】化合物(a)(実施例4)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(g)(実施例5)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図6】化合物(h)(実施例6)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図7】化合物(b)(実施例7)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図8】化合物(c)(実施例8)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図9】化合物(a)(実施例4)の塗膜状態の紫外吸収スペクトルである。
【図10】化合物(d)(実施例1)の赤外吸収スペクトルである。
【図11】化合物(e)(実施例2)の赤外吸収スペクトルである。
【図12】化合物(f)(実施例3)の赤外吸収スペクトルである。
【図13】化合物(a)(実施例4)の赤外吸収スペクトルである。
【図14】化合物(g)(実施例5)の赤外吸収スペクトルである。
【図15】化合物(h)(実施例6)の赤外吸収スペクトルである。
【図16】化合物(b)(実施例7)の赤外吸収スペクトルである。
【図17】化合物(c)(実施例8)の赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(A)で示される4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体のうち、
(1)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるピラゾロン誘導体を含有する有機色素。(ただし下記(A)式中、Phはフェニル基である)
【化1】

〜R=水素原子、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基
=水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基
【請求項2】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(a)〜(c)の記載の組み合わせのうち、いずれかの組み合わせである4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体化合物。
(a) R=H、 R=OCH、 R=CH
【化2】

(b) R=H、 R=OCH、 R=NHCOCH
【化2】

(c) R=H、 R=OCH、 R=NH
【化2】

【請求項3】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(f)〜(k)の記載の組み合わせうち、いずれかの組み合わせである4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体化合物。
(d) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=CH
(e) R,R=OH、 R=H、 R=CH
(f) R,R=H R=COOCH、 R=CH
(g) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=NHCOCH
(h) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=NH

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−70433(P2007−70433A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257678(P2005−257678)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】