説明

フィスカルユニット、フィスカルユニットの製造方法およびプリンタ

【課題】破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができるフィスカルユニット、フィスカルユニットの製造方法およびプリンタを提供する。
【解決手段】フィスカルユニット20は、フィスカルメモリ基板10を挿入して保持するための保持部410と、保持部410内に配置されてフィスカルメモリ基板10を保持部410内に固定するための封止剤560を備え、フィスカルメモリ基板10に対面する保持部410の内面には、突起部450が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィスカルユニットおよびフィスカルユニットを有するプリンタに関し、特にフィスカルメモリを有しておりフィスカルメモリの改ざんを防止することができるフィスカルユニット、フィスカルユニットの製造方法およびフィスカルユニットを有するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
小売業などで用いられる会計用のプリンタは、フィスカルメモリ基板を有しており、フィスカルメモリ基板には、フィスカルメモリが実装されている。このフィスカルメモリに記憶されているフィスカルデータが改ざんできないようにするために、フィスカルメモリを実装しているフィスカルメモリ基板がフィスカルユニットのカバー部材から簡単に取り外しできない構成とすることが、法律(フィスカル法)で要求されている。このため、フィスカルメモリは樹脂で覆って固定することが要求されている。
【0003】
従来、電子部品が基板の一方の面に実装されており、電子部品と基板の一方の面が蓋体で封止されており、蓋体は基板の一方の面に対して樹脂を用いて固定されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−15163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、フィスカルメモリ基板を樹脂により封止するために、特許文献1に開示されている基板の封止構造を採用すると、フィスカルメモリ基板上のフィスカルメモリは、蓋体を外せば簡単に露出させることできる。
【0005】
このため、フィスカルメモリに記憶されているフィスカルデータの改ざんを、破損の痕跡を残さずに行うことが容易にできるおそれがあり、フィスカルデータの改ざんを防止することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができるフィスカルユニット、フィスカルユニットの製造方法およびプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するために、本発明の態様にかかるフィスカルユニットは、フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットであって、
前記フィスカルメモリ基板を挿入して保持するための保持部と、
前記保持部内に配置されて前記フィスカルメモリ基板を前記保持部内に固定するための封止剤と、を備え、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面には、突起部が形成されていることを特徴とする。この態様によると、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリ基板が簡単には取り出せなくなり、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができる。
【0008】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、好ましくは前記突起部は前記封止剤である樹脂により覆われていることを特徴とする。この態様によると、樹脂は突起部により固定されるので、樹脂やフィスカルメモリ基板に対して破損した痕跡を残さずには、フィスカルユニットからフィスカルメモリを取り出すことができない。
【0009】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、好ましくは前記保持部は、前記フィスカルメモリ基板を収容して保持する金属製のポケット部であり、前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の少なくとも一方の内面には、前記突起部が形成されていることを特徴とする。この態様によると、簡単な構成でありながら、封止剤やフィスカルメモリ基板に対して破損した痕跡を残さずには、フィスカルユニットからフィスカルメモリを取り出すことができない。
【0010】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、前記突起部は、前記フィスカルメモリ基板を挿入するための前記保持部の開口部に近い位置に形成されていることを特徴とする。この態様によると、開口部付近の突起部の存在により、フィスカルメモリ基板が保持部内から抜き出されるのを防止できる。
【0011】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、好ましくは前記フィスカルメモリ基板に配置されて、前記基板が前記保持部に挿入された状態で、前記フィスカルメモリ基板が前記保持部に接触するのを防止して電気絶縁性を確保する接触防止部を備え、前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板に搭載されて回路上機能する部品であることを特徴とする。この態様によると、電気絶縁性の部品を別途用意しなくても、フィスカルメモリ基板の部品が金属製の保持部に接触するのを確実に防止できる。
【0012】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、好ましくは前記フィスカルメモリ基板に配置されて、前記基板が前記保持部に挿入された状態で、前記フィスカルメモリ基板が前記保持部に接触するのを防止して電気絶縁性を確保する接触防止部を備え、前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板に搭載されて回路上機能しないダミーの部品であることを特徴とする。この態様によると、電気絶縁性の部品を別途用意しなくても、フィスカルメモリ基板の部品が金属製の保持部に接触するのを確実に防止できる。
【0013】
本発明の他の態様にかかるフィスカルユニットは、好ましくは前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板の少なくとも一方の面に配置されていることを特徴とする。この態様によると、フィスカルメモリ基板の一方の面だけに導電物が配置されている場合に、接触防止部は一方の面だけに配置すればよく、フィスカルユニットとフィスカルメモリ基板の構造を簡単化できる。
【0014】
本発明の態様にかかるフィスカルユニットの製造方法によれば、フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットの製造方法であって、
前記フィスカルユニットの保持部内に封止剤を入れて、
前記保持部内に前記フィスカル基板を挿入して前記封止剤により前記フィスカル基板を固定し、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面に形成されている突起部を前記封止剤により覆うことを特徴とする。この態様によると、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができるフィスカルユニットが得られる。
【0015】
本発明の態様にかかるフィスカルユニットを有するプリンタによれば、フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットを有するプリンタであって、
前記フィスカルユニットは、
前記フィスカル基板を挿入して保持するための保持部と、
前記保持部内に配置されて前記フィスカル基板を前記保持部内に固定するための封止剤と、を備え、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面には、突起部が形成されていることを特徴とする。この態様によると、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフィスカルユニットによれば、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができる。
【0017】
本発明のフィスカルユニットの製造方法によれば、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができるフィスカルユニットが得られる。
【0018】
本発明のフィスカルユニットを有するプリンタによれば、破損の痕跡を残さずにはフィスカルユニットからフィスカルメモリ基板を取り出すことができないようにして、フィスカルメモリの改ざんを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明のフィスカルユニットおよびフィスカルユニットを有するプリンタの好ましい実施形態を示す分解斜視図である。図2は、本発明のフィスカルユニットおよびフィスカルユニットを有するプリンタの好ましい実施形態を別示す斜視図である。
【0021】
図1と図2に示すプリンタ1は、フィスカルユニット20を有している。フィスカルユニット20は、フィスカルメモリ基板10を備えており、図2に示すように、フィスカルメモリ基板10はフィスカルメモリ100を実装している。このプリンタ1は、フィスカルプリンタとも呼ばれ、販売取引の際には販売取引に関するフィスカルデータ(フィスカル情報ともいう)をモニタリングして記憶するために使用される。フィスカルメモリ基板10はフィスカル基板ともいう。
【0022】
フィスカルメモリ100に記憶されているフィスカルデータが改ざんできないようにするために、フィスカルメモリ100はフィスカルユニット20から簡単に取り外しできない構成とすることが、法律(フィスカル法)で要求されている。会計上のフィスカル法(フィスカルデータ、フィスカル情報)の内容は、国によって異なっている。
【0023】
まず、図1〜図3を参照して、プリンタ1の構造について説明する。図3は、本体2の後部5の下部にフィスカルユニット20が装着されている状態を示すプリンタ1の側面図である。
【0024】
図1と図2に示すプリンタ1は、本体2と下部カバー3を有している。プリンタ1は、例えば顧客に渡すフィスカルレシートや、小売業者用のレシートの控えであるジャーナルを印刷して排出したり、1日毎の合計を記憶したり、レシートの商品品目毎に合計額を加算する。
【0025】
図1に示す本体2の前部4は、例えばフィスカルレシートやジャーナルを排出する。本体2の後部5の下部には、長方形状の開口部6が設けられている。
【0026】
図3に示すように、フィスカルユニット20が、後部5の開口部6に対応して本体2に対して着脱可能に装着されるようになっている。このフィスカルユニット20はフィスカルモジュールと呼ぶこともできる。
【0027】
図2に示すように、このフィスカルユニット20は、第1基板としてのフィスカルメモリ基板10と、第2基板であるインターフェース基板200と、金属製のカバー部材300を有している。フィスカルメモリ基板10とインターフェース基板200は、カバー部材300によりY方向に沿って平行に保持されている。図2に示す例では、フィスカルメモリ基板10とインターフェース基板200は共に長方形あるいは正方形の回路基板である。図示例では、インターフェース基板200側に実装される部品数がフィスカルメモリ基板10に実装される部品数に比べて多いことから、インターフェース基板200がフィスカルメモリ基板10に比べて大きい。
【0028】
次に、図4と図5を参照して、フィスカルユニット20のフィスカルメモリ基板10とインターフェース基板200と金属製のカバー部材300の構造について、詳しく説明する。
【0029】
図4は、カバー部材300とフィスカルメモリ基板10を第1方向から示す斜視図であり、図5は、カバー部材300とフィスカルメモリ基板10を第1方向とは反対の第2方向から示す斜視図である。カバー部材300は、基板のホルダーとも呼ぶことができる。
【0030】
まず、カバー部材300について説明する。図4と図5に示すように、カバー部材300は、例えば鉄板などの金属板を折り曲げることにより箱形に形成されており、側面部301,302,303,304と、底面部305を有している。
【0031】
側面部301,302,303,304は、底面部305の4辺から90度立ち上げて形成されている。側面部301と側面部302は対向して配置され、側面部303と側面部304は対向して配置されている。側面部301と側面部302の面積は、側面部303と側面部304の面積に比べて大きい。
【0032】
図4に示すように、4つの側面部301,302,303,304と底面部305は、収容空間320を形成している。この収容空間320の開口部321には、図2に示すインターフェース基板200の挿入端部側が挿入して保持されるようになっている。
【0033】
カバー部材300の収容空間320内には、保持部410が、フィスカルメモリ基板10を挿入して保持するために設けられている。
【0034】
側面部303は取り付け片部306を有し、側面部304は取り付け片部307を有している。取り付け片部306,307は、側面部303と側面部304からそれぞれ90度外側に向けて折り曲げて形成されている。取り付け片部306,307は、それぞれボルトを挿入するための穴308を有している。
【0035】
図2に示すように、このフィスカルユニット20のカバー部材300は、ボルト310を穴308に通してボルト310を本体2の雌ネジ311にねじ込むことで、本体310の開口部6に対応して後部5に対して着脱可能に固定することができる。図4に示すカバー部材300の開口部321の大きさは、例えば図2に示す本体2の開口部6の大きさに対応している。
【0036】
このようにしてフィスカルユニット20が本体2に対して固定された状態では、図3に示すように、フィスカルメモリ基板10の一部分とインターフェース基板200の一部分が、本体2内に位置決めされる。
【0037】
次に、図4と図5に示すフィスカルメモリ基板10を保持するための保持部410について説明する。
【0038】
カバー部材300の保持部410は、収容空間であるスペース441を有しており、フィスカルメモリ基板10がスペース441内に挿入される。カバー部材300の保持部410は、フィスカルメモリ基板10とフィスカルメモリ100および回路上機能する部品を保護するための保護装置である。
【0039】
この保持部410は、ケースあるいはポケット部とも言うことができ、保持部410は、カバー部材300の収容空間320内において、側面部302の内面330側に設けられている。
【0040】
保持部410は、側面部302の内面330と、側面部411と、側面部412,413と、底面部414により形成されている薄型の容器である。側面部302の内面330と側面部411と側面部412,413は、長方形状の開口部440を形成している。
【0041】
図6は、保持部410を示す平面図である。図4と図6に示す開口部440の長さLは、フィスカルメモリ基板100の長さMよりもやや大きく、開口部440の幅Dは、フィスカルメモリ基板100の厚みNよりも大きく設定されている。
【0042】
図4と図6に示すように、側面部302の内面330と側面部411の内面491には、それぞれ複数の突起部450が突出して形成されている。内面330の各突起部450と内面491の各突起部450は、例えば互いに対面する位置に形成されている。
【0043】
内面330の各突起部450は、好ましくは内面330において開口部440側に近い位置において間隔を空けて並べて形成されている。内面491の突起部450は、好ましくは内面491において開口部440側に近い位置において間隔を空けて並べて形成されている。つまり、各突起部450は、好ましくは保持部410の開口部440に近い位置であって、底面部414からは離れた位置に形成されている。各突起部450は図示例では例えば円形断面を有する。
【0044】
次に、図2に示すフィスカルメモリ基板10の形状例と、インターフェース基板200の形状例について説明する。
【0045】
図2に示すように、フィスカルメモリ基板10とインターフェース基板200は、フィスカルユニット20のカバー部材300に対して挿入して保持される。
【0046】
フィスカルメモリ基板10は、図4と図5に示すように保持部410内のスペース441内に挿入して保持される。インターフェース基板200は、図2と図3に示すようにカバー部材300の収容空間320内に挿入して保持される。フィスカルメモリ基板10はインターフェース基板200に対して平行になるように保持されている。
【0047】
図4と図5に示すように、フィスカルメモリ基板10は、第1面10Aと第2面10Bを有している。
【0048】
図4に例示するように、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aには、CPLD11と、例えばその他の回路上機能する部品100M、100Nなどが実装されている。
【0049】
図5に例示するように、フィスカルメモリ100とその他の回路上機能する電子部品100Hとコネクタ100Tが実装されている。
【0050】
図4に示すCPLD11は、図2のインターフェース基板200に実装されたメインCPUと、図5に示すフィスカルメモリ100に電気的に接続されている。このCPLD11は、プログラム可能な論理回路を書き込んだデバイスであり、フィスカルメモリ100への書き込み/読み出しを制御する。また、CPLD11はデータの改ざんの防止の機能を持っている。
【0051】
フィスカルメモリ100は、売り上げに対する税金のデータを記録して、改ざん防止のために、ワンタイムROMと呼ばれる1つのアドレスに1度しか書き込みできないタイプのメモリを使用する。
【0052】
図5に示すコネクタ100Tは、フレキシブルフラットケーブル100Fの一端部側に電気的に接続され、別のコネクタ100Gは、フレキシブルフラットケーブル100Fの他端部側に電気的に接続されている。コネクタ100Gは、図2に示すようにインターフェース基板200側に対して電気的かつ機械的に接続される。これにより、フィスカルメモリ基板10の回路とインターフェース基板200の回路は、フレキシブルフラットケーブル100Fを通じて電気的に接続されている。
【0053】
図7は、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aと第2面10Bを示しており、特に第1面10Aと第2面10Bにおける接触防止部150,160の配置例を示している。
【0054】
図7に示すように、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aには、ほぼ四隅の位置に電気絶縁性を有する接触防止部150が搭載されている。これらの4つの接触防止部150は、図4に示すフィスカルメモリ基板10の第1面10Aと側面部411の内面491との間に電気絶縁用の空間を確保することで、第1面10AのCPLD11とその他の回路上機能する部品100M、100Nなどと側面部411の内面491との電気的な接触を無くして電気絶縁性を確保する。
【0055】
この接触防止部150は、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aに搭載されて回路上機能する部品、例えばコンデンサやダイオードなどであっても良いし、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aに搭載されて回路上機能しないダミー部品であっても良い。
【0056】
また、図5と図7に示すように、フィスカルメモリ基板10の第2面10Bには、ほぼ四隅の位置に電気絶縁性を有する接触防止部160が搭載されている。これらの4つの接触防止部160は、図5に示すフィスカルメモリ基板10の第2面10Bと内面330との間に電気絶縁用の空間を確保することで、第2面10Bのフィスカルメモリ100などと内面330の内面との間の電気的な接触を無くして電気絶縁性を確保する。
【0057】
この接触防止部160は、フィスカルメモリ基板10の第2面10Bに搭載されて回路上機能する部品、例えばコンデンサやダイオードなどであっても良いし、フィスカルメモリ基板10の第2面10Bに搭載されて回路上機能しないダミー部品であっても良い。接触防止部150,160は、図示例では互いに対応する位置に位置決めされている。
【0058】
このように、接触防止部150,160は、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aと第2面10Bと、保持部410の内面330,491との間に機械的な間隔を設定することで電気的絶縁を確保できる。
【0059】
接触防止部150の第1面10Aにおける実装高さ(搭載高さ)は、フィスカルメモリ基板10に実装されているCPLD11と、例えばその他の回路上機能する部品100M、100Nなどの第1面10Aにおける実装高さ(搭載高さ)よりも大きく設定されている。これにより、各部品が側面部411の内面491に対して電気的に接触するのを確実に防げる。
【0060】
接触防止部160の第2面10Bにおける実装高さ(搭載高さ)は、フィスカルメモリ基板10に実装されているフィスカルメモリ100や他の部品100Hなどの第2面10Bにおける実装高さ(搭載高さ)よりも大きく設定されている。これにより、各部品が保持部410の側面部330に対して電気的に接触するのを確実に防げる。
【0061】
図2に示すインターフェース基板200は、コネクタC1,C2,C3とメインCPU(中央処理装置)とメモリなどを実装している。インターフェース基板200のコネクタC3は、プリンタ1の本体2内に配置されているメイン基板500に対して電気的かつ機械的に接続することができる。また、インターフェース基板200は、コネクタC1,C2を用いてホストコンピュータ(HOST)700に対して電気的に接続される。
【0062】
次に、フィスカルメモリ基板10が、カバー部材300の保持部410のスペース441内に挿入して保持されてしかも固定されるフィスカルユニットの製造方法を説明する。
【0063】
図8に示すように、カバー部材300の保持部410のスペース441内には、封止剤560が、封止剤供給部550からシリンジ551を通じて供給される。これにより、図9と図10に示すように、所定量の封止剤560が保持部410のスペース441内に充填される。この際に、保持部410内には複数の突起部450があるが、封止剤560の充填には支障がない。封止剤560としては、例えばエポキシ樹脂のような樹脂を採用することができる。
【0064】
次に、図9に示すように、フィスカルメモリ基板10が、E方向に沿って保持部410のスペース441内に挿入される。図11と図12に示すように、フィスカルメモリ基板10は、その一部分を除いて保持部410のスペース441内に収容して保持される。図12に示すように、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aの各部品と第2面10Bの各部品は封止剤560により覆われることで封止される。
【0065】
これにより、図12(B)に示すように、第1面10A側のCLPD11と第2面10B側のフィスカルメモリ100は、封止剤560により覆われることで確実に封止される。保持部410のスペース441内に充填される封止剤560の量としては、封止剤560が、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aの各部品と第2面10Bの各部品および各突起部450を覆うことができ、しかも第1面10Aと第2面10Bと保持部410の間を充填できる量である。
【0066】
ところで、図12(A)と図12(B)に示すように、フィスカルメモリ基板10の第1面10Aには、ほぼ四隅の位置に接触防止部150が搭載され、フィスカルメモリ基板10の第2面10Bには、ほぼ四隅の位置に接触防止部160が搭載されている。このことから、4つの接触防止部150は、図12に示すフィスカルメモリ基板10の第1面10Aと側面部411の内面491との間の電気的な接触を無くして電気絶縁性を確保すると共に、フィスカルメモリ基板10の第2面10Bと内面330との間の電気的な接触を無くして電気絶縁性を確保できる。
【0067】
また、図12(A)と図12(B)に示すように、保持部410内には複数の突起部450が予め設けられているが、封止剤560が各突起部450を覆うようにして保持部410内に充填されている。これにより、封止剤560が固まって、フィスカルメモリ基板10が保持部410内で固定された後に、仮にフィスカルメモリ100内のフィスカルデータを改ざんしようとする者が、フィスカルメモリ基板10を図11のZ方向に持ち上げて保持部410内から引き抜こうとしても、複数の突起部450は封止剤560が持ち上がるのを防ぐストッパーの役目を果たす。従って、フィスカルメモリ基板10自体やフィスカルメモリ基板10を覆っている封止剤560に痕跡を残さずには、フィスカルユニット20の保持部410内からフィスカルメモリ基板10を取り出すことができない。このため、フィスカルメモリ100の改ざんを確実に防止することができる。
【0068】
以上のように、フィスカルメモリ基板10は、フィスカルユニット20のカバー部材300の保持部410から容易に抜くことができないので、フィスカルメモリ基板10のフィスカルメモリ100に記憶されているフィスカルデータの改ざんを、確実に防止することができる。
【0069】
フィスカルメモリ基板10は封止剤560により固定されしかも突起部450により抜き出し難くしていることから、仮に、フィスカルメモリ基板10が、カバー部材300の保持部410から無理やり抜き取れたとしても、フィスカルメモリ基板10のフィスカルメモリ100と覆っている封止剤560には破損の痕跡が残ることから、この場合には、例えばフィスカルメモリ100のフィスカルデータを改ざんしたものとみなすことができる。
【0070】
上述した例では、図9に示すように先に封止剤560が保持部410内に注入されて、その後保持部410内にフィスカルメモリ基板10が挿入されるようにしている。このように先に封止剤560を保持部410内に入れた後に、保持部410内にフィスカルメモリ基板10を挿入するので、封止剤560は保持部410の内面とフィスカルメモリ基板10の各部品の間に確実に充填でき、封止剤560はフィスカルメモリ基板10の各部品と突起部450を確実に覆うことができる。逆に、保持部410内にフィスカルメモリ基板10を挿入した後に、封止剤560を保持部410内に注入してもよいが、この場合には保持部410の内面とフィスカルメモリ基板10の間に封止剤560をゆっくりと注入しなければならないので、封止剤560の注入に時間がかかってしまう。
【0071】
また、フィスカルメモリ基板10は接触防止部150,160を有しており、フィスカルメモリ基板10をカバー部材300内に挿入して固定する際に、フィスカルメモリ基板10をカバー部材300に対して別途電気絶縁するための別部品を作成する必要がない。このことから、フィスカルユニット20の構造を簡単化でき、保持部410をできる限りフィスカルメモリ基板10の厚みに近づけることができるので、フィスカルユニット20の薄型化が図れる。
【0072】
接触防止部150,160をフィスカルメモリ基板10に対して実装する工程だけを追加的に行えば済むので、基板の絶縁処理のための余分な製造工程が不要となる。
【0073】
接触防止部150,160がフィスカルメモリ基板10に実装されていることにより、フィスカルメモリ基板10と保持部410の間には、確実に空間が形成でき、この空間に樹脂などの封止剤を容易にしかも確実に充填することができる。
【0074】
フィスカルメモリ基板10の第1面と第2面には、それぞれ高さのある部品がバランス良く配置されており、フィスカルメモリ基板10は狭いスペースの保持部410内に挿入されても、フィスカルメモリ基板10の各部品と金属製の保持部410との間の電気絶縁性を確保できる。
【0075】
本発明の実施形態では、フィスカルユニット20は、フィスカルメモリ100を搭載しているフィスカルメモリ基板10を保持する。フィスカルユニット20は、
フィスカルメモリ基板10を挿入して保持するための保持部410と、保持部410内に配置されてフィスカルメモリ基板10を保持部410内に固定するための封止剤560を備える。フィスカルメモリ基板10に対面する保持部410の内面には、突起部450が形成されている。これにより、封止剤560とフィスカルメモリ基板10に対して痕跡を残さずには、フィスカルユニット20の保持部410内からフィスカルメモリ基板10を簡単には取り出すことができない。従って、フィスカルメモリ100の改ざんを確実に防止することができる。
【0076】
本発明の実施形態では、突起部450は封止剤560としての樹脂により覆われている。これにより、樹脂は突起部450により固定されるので、樹脂やフィスカルメモリ基板10に対して破損した痕跡を残さずには、フィスカルユニット20からフィスカルメモリ100を取り出すことができない。
【0077】
本発明の実施形態では、保持部410は、フィスカルメモリ基板10を収容して保持する金属製のポケット部であり、フィスカルメモリ基板10に対面する保持部410の少なくとも一方の内面330,491には、突起部450が形成されている。これにより、簡単な構成でありながら、封止剤560やフィスカルメモリ基板10に対して破損した痕跡を残さずには、フィスカルユニット20からフィスカルメモリ100を取り出すことができない。
【0078】
本発明の実施形態では、突起部450は、フィスカルメモリ基板10を挿入するための保持部410の開口部に近い位置に形成されている。これにより、開口部付近の突起部450の存在により、フィスカルメモリ基板10が保持部410内から抜き出されるのを防止できる。仮に、フィスカルメモリ基板10が保持部410内から抜き出せたとしても、封止剤560やフィスカルメモリ基板10に対して破損した痕跡を確実に残すことができる。
【0079】
本発明の実施形態では、接触防止部150,160がフィスカルメモリ基板10に配置されており、フィスカルメモリ基板10が保持部410に挿入された状態で、フィスカルメモリ基板10の部品が金属製の保持部410に接触するのを防止して電気絶縁性を確保できる。接触防止部150,160は、フィスカルメモリ基板10に搭載されて回路上機能する部品である。これにより、電気絶縁性の部品を別途用意しなくても、フィスカルメモリ基板10の部品が金属製の保持部410に接触するのを確実に防止できる。
【0080】
本発明の実施形態では、接触防止部150,160がフィスカルメモリ基板10に配置されており、フィスカルメモリ基板10が保持部410に挿入された状態で、フィスカルメモリ基板10が金属製の保持部410に接触するのを防止して電気絶縁性を確保できる。接触防止部150,160は、フィスカルメモリ基板10に搭載されて回路上機能しないダミーの部品である。これにより、電気絶縁性の部品を別途用意しなくても、フィスカルメモリ基板10の部品が金属製の保持部410に接触するのを確実に防止できる。
【0081】
本発明の実施形態では、接触防止部は、フィスカルメモリ基板10の少なくとも一方の面に配置されている。これにより、フィスカルメモリ基板10の一方の面だけに導電物が配置されている場合に、接触防止部は一方の面だけに配置すればよく、フィスカルユニットとフィスカルメモリ基板の構造を簡単化できる。
【0082】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
【0083】
封止剤560は例えばエポキシ樹脂などの樹脂以外の電気絶縁性を有する材料を使用することも可能である。
【0084】
突起部450は、内面330と側面部411においてそれぞれ例えば4つ点状に形成されているが、突起部450の形成個数や形状に特に限定されるものではない。例えば図13に示すように、突起部450Tは、開口部440に沿って線状に形成されている。
【0085】
突起部が形成されているのは、開口部440側に近い位置であるが、これに限らず他の位置であっても良い。
【0086】
また、接触防止部150,160は、例えば回路上機能する部品や、回路上機能しないダミー部品を使用できるが、この他に電気絶縁性を有する他の種類の部品あるいは突起を設けることができる。
【0087】
接触防止部は、フィスカルメモリ基板の両面に設けている。しかし、フィスカルメモリやその他の回路上機能する部品がフィスカルメモリ基板の一方の面に設けられており、他方の面には部品と回路配線パターンなどの導電物が形成されていない場合には、例えば接触防止部が、少なくともその一方の面に配置する。すなわち、接触防止部はフィスカルメモリ基板の片面だけに設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のフィスカルユニットおよびフィスカルユニットを有するプリンタの好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のフィスカルユニットおよびフィスカルユニットを有するプリンタの好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図3】本体の後部の下部にフィスカルユニットが装着されている状態を示すプリンタの側面図である。
【図4】金属製のカバー部材とフィスカルメモリ基板を第1方向から示す斜視図である。
【図5】金属製のカバー部材とフィスカルメモリ基板を第2方向から示す斜視図である。
【図6】封止剤が充填される前の保持部を示す平面図である。
【図7】フィスカルメモリ基板の第1面と第2面における接触防止部の配置例を示す図である。
【図8】封止剤が充填される状態を示す斜視図である。
【図9】封止剤が充填された後の保持部を示す斜視図である。
【図10】封止剤が充填された後の保持部を示す図である。
【図11】フィスカルメモリ基板が保持部に挿入して保持された状態を示す斜視図である。
【図12】フィスカルメモリ基板が保持部に挿入して保持された状態を示す図である。
【図13】本発明の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 プリンタ 2 プリンタの本体
10 フィスカルメモリ基板(第1基板)
10A フィスカルメモリ基板の第1面
10B フィスカルメモリ基板の第2面 20 フィスカルユニット
100 フィスカルメモリ 150 接触防止部
160 接触防止部
200 インターフェース基板(第2基板) 300 カバー部材
410 保持部 441 保持部のスペース
560 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットであって、
前記フィスカルメモリ基板を挿入して保持するための保持部と、
前記保持部内に配置されて前記フィスカルメモリ基板を前記保持部内に固定するための封止剤と、を備え、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面には、突起部が形成されていることを特徴とするフィスカルユニット。
【請求項2】
前記突起部は前記封止剤である樹脂により覆われていることを特徴とする請求項1に記載のフィスカルユニット。
【請求項3】
前記保持部は、前記フィスカルメモリ基板を収容して保持する金属製のポケット部であり、前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の少なくとも一方の内面には、前記突起部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフィスカルユニット。
【請求項4】
前記突起部は、前記フィスカルメモリ基板を挿入するための前記保持部の開口部に近い位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフィスカルユニット。
【請求項5】
前記フィスカルメモリ基板に配置されて、前記基板が前記保持部に挿入された状態で、前記フィスカルメモリ基板が前記保持部に接触するのを防止して電気絶縁性を確保する接触防止部を備え、前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板に搭載されて回路上機能する部品であることを特徴とする請求項1に記載のフィスカルユニット。
【請求項6】
前記フィスカルメモリ基板に配置されて、前記基板が前記保持部に挿入された状態で、前記フィスカルメモリ基板が前記保持部に接触するのを防止して電気絶縁性を確保する接触防止部を備え、前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板に搭載されて回路上機能しないダミーの部品であることを特徴とする請求項1に記載のフィスカルユニット。
【請求項7】
前記接触防止部は、前記フィスカルメモリ基板の少なくとも一方の面に配置されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のフィスカルユニット。
【請求項8】
フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットの製造方法であって、
前記フィスカルユニットの保持部内に封止剤を入れて、
前記保持部内に前記フィスカル基板を挿入して前記封止剤により前記フィスカル基板を固定し、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面に形成されている突起部を前記封止剤により覆うことを特徴とするフィスカルユニットの製造方法。
【請求項9】
フィスカルメモリを搭載しているフィスカルメモリ基板を保持するフィスカルユニットを有するプリンタであって、
前記フィスカルユニットは、
前記フィスカル基板を挿入して保持するための保持部と、
前記保持部内に配置されて前記フィスカル基板を前記保持部内に固定するための封止剤と、を備え、
前記フィスカルメモリ基板に対面する前記保持部の内面には、突起部が形成されていることを特徴とするフィスカルユニットを有するプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−46953(P2008−46953A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223026(P2006−223026)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】