説明

フィット性を感じる掛布団

【課題】 就寝者が身体に対してフィット性を感じるが、身体の自由度は制限されず、快眠に不可欠な寝返りを行うことが容易な掛布団を提供すること。
【解決手段】 表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、下記の(1)ないし(3)の3種類のキルティングが施されているフィット性を感じる掛布団。(1)掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティング。(2)上記(1)の更に内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティング。(3)2つの(2)の正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛布団に関し、特に掛布団の中に身体を潜り込ませたときに身体とのフィット性を感じる掛布団に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の掛布団は、その中に身体を潜り込ませたときには、全体的に膨らんだような状態となる。掛布団の襟元部から足元部にかけて若干の高低はあるものの中央部が盛り上がり、側部が引っ張られて突っ張った空洞の中に身を置いた状態となる。身体と掛布団との間に空間ができるのでフィット性が悪いという欠点があった。この身体と掛布団との間に空間ができたときに掛布団の端が開口すると、この開口と前記の空間とがつながって折角暖められた暖気が掛布団の外部へ流出して外部の冷気が掛布団内に流入するので、掛布団を掛けていても就寝中に寒さを感じて安眠できないという欠点があった。従来、寒い季節の就寝時には、厚手の掛布団を用いたり、掛布団の枚数を増やすなどして保温効果を増大させている。掛布団が厚手になると就寝者の肩や襟元への掛布団の密着性が低下して、肩や襟元の部分に大きな隙間が形成され、そこから冷気が進入して温かく快適に眠ることができない。
【0003】
就寝時における寒さを防ぐために、掛布団に関するさまざまな工夫がなされている。近年の掛布団は、中綿の動きを押えるキルティングが格子状に施されており、そのため必然的に多数の凹凸部が形成されるので、身体と布団との一体化は必然的に阻害される。例えば、特許文献1には、充填材を充填してなる掛布団において、掛布団の長手方向の中心線又は幅方向の中心線に向かって膨らむ曲線状であって、前記の中心線にて線対称の対をなす仕切線を施したことフィット性を向上させた掛布団が開示されている。しかしながら、上記掛布団は、肩口周辺からの外気の進入は防止できるが、この身体と掛布団との間に空間ができたときに掛布団の端が開口し、温かく快適に睡眠できるという目的には不満足であった。また、特許文献2には、両側部と下部に中央に向けて山形の互いに交叉しないアーチ状キルティングを形成した掛布団とを具備した身体に密着して熱を逃さないようにすることにより保温性を高めた掛布団が開示されている。しかし、掛布団の身体に対する密着性が向上すればするほど、布団内への外気の侵入を減らすことができるが、これとは反対に布団内における身体の自由度は制限され、快眠に不可欠な寝返りを行い難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−339501
【特許文献2】特開2004−160063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、掛布団内における身体の自由度を確保した上で、掛布団で身体に十分密着し得るようにして、保温性を向上させ、温かく且つ快適に就寝できる掛布団を提供することを目的とする。掛布団の中に身体を潜り込ませた場合に掛布団が膨らまず、しぼんだ状態になるように仕切線の入れ方を工夫することにより、就寝者が身体に対してフィット性を感じるが、布団内における身体の自由度を確保しているため布団内における身体の自由度は制限されず、快眠に不可欠な寝返りを行うことが容易な掛布団を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、下記の(1)ないし(3)の3種類のキルティングが施されているフィット性を感じる掛布団を要旨としている。
ただし、(1)、(2)及び(3のキルティングの相互間は接続していない。

(1)掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティング。
(2)上記(1)の更に内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティング。
(3)2つの(2)の正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティング。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、布団内における身体の自由度を確保した上で、掛布団と敷布団とで身体に十分密着し得るように挟持して、保温性を向上させ、温かく且つ快適に就寝できる布団を提供することができる。掛布団の中に身体を潜り込ませた場合に掛布団が膨らまず、しぼんだ状態になるように仕切線の入れ方を工夫することにより、就寝者が身体に対してフィット性を感じるが、布団内における身体の自由度を確保しているため布団内における身体の自由度は制限されず、快眠に不可欠な寝返りを行うことが容易な掛布団を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のキルティングの形態を説明する図面であって、一実施の態様の掛布団の概略平面図である。
【図2】掛け布団の製造工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[掛布団の構成]
敷布団は、表地(上面側)と裏地(下面側)とからなる袋体に中綿を充填して構成されている。掛布団としては、通常中綿としてコットン綿や合成繊維綿を製綿したものを用い、表裏に同一の生地または異なる生地を用いて袋状に縫製し、その中に中綿を収納し、口縫いをし、さらにキルティングを施し中綿を固定して製造する。掛け布団の製造工程は図2に示す通りである。
【0010】
[表地と裏地とからなる袋体]
本発明において、表地(上面側)と裏地(下面側)として用いることのできる生地として、織物、編物、不織布を挙げることができる。比較的通気性の大きい編物や不織布は、本発明の通気性の大きい生地として用いることができる。もちろん表裏の両方に織物を用いることができる。それらの生地には、フッ素系撥水性樹脂やシリコン系撥水樹脂を用いた撥水加工が施されていてもよい。撥水加工が施されている生地を用いると湿気や汗等によって中綿が水分を含むことを防止することができ、布団の保温作用の低下を抑制できる。上面側及び下面側に普通の木綿布を用いて袋体に縫製し、袋体で1.5〜2.5kgの中綿を包み、掛布団を製作する態様が好ましい。本発明の掛布団においては、表地(上面側)と裏地(下面側)の色や柄を変えておき、使用する際にどちら側であるかを分かりやすくしておくのが好ましい。また、表裏の生地として通気性の異なる生地を用いて縫製した袋体でもって、中綿を覆うことによっても得ることができる。体温で温められた空気は、内側の通気性の大きい裏地を容易に通過して中綿部分に留まり、外側の通気性の小さい表地が温かい空気の外に逃げていくのを防止し、外側の空気が侵入してくるのを抑えることができる。また、前記表地と裏地は、それらの間に中綿を挟んで、合わせ縁を縫製糸で縫製して中綿を収納することができる。針穴と縫製糸との隙間からダニが侵入することを防止する等の利点がある。
中綿を覆う袋体の生地の特性は、中綿を構成している繊維が飛び出さないことが重要な要件である。使用に際してはさらに掛布団カバーでもって覆って使用しているのが普通である。この掛布団カバーの役割は、肌触りをよくする.表面に汚れが付着した際に交換して清潔に保つといった点にある。
【0011】
[布団綿]
本発明の掛布団に用いる中綿は、通常に布団綿に用いられるコットン綿、羊毛綿や、ポリエステル綿等の合成繊維綿を製綿したもの、あるいはこれらを混綿して製綿したものであればよい。また、これらに低融点合成繊維綿を混綿して製綿し熱処理して綿同士を接着して単繊維が分離・飛散しにくくした中綿であるのも好ましい。本発明の布団を構成する中綿は、易滑風合いが良好で、易滑風合いの洗濯耐久性が良好なポリエステル繊維が好ましいものとして例示される。ポリエステル繊維を用いることで、羽毛のような動物アレルギ−を起こさず、綿のように埃による喘息にもなりにくく、かつ、易滑風合いの洗濯耐久性が良好なため、洗濯ができるので、常に清潔を保つことができる。本発明におけるポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、及びその共重合ポリエステル等が例示できる。上記の通常の布団綿に親水性に改質されたポリアクリレート系繊維などを混合することができる。
【0012】
[キルティングの施し方]
本発明の掛布団においては、表地と裏地とからなる袋体で覆った状態でキルティング加工や和綴じ加工等の綿止め加工を施す。このキルティングの施し方として表地(上面側)と裏地(下面側)同士を直接縫合して形成する。仕切片を介在させ、その上下をそれぞれ表裏の側地に縫着して形成してもよい。キルティング加工を施す場合には、表裏の使用糸の色の異なるものとするのも通気性の異なる面の識別の助けになるので好ましい。
表地と裏地とからなる袋体周囲の縫着線の内側に一定の巾をもってこの縫着線に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティングをすることで、袋体内で中綿が片寄ることがなく、フィット性を向上させるために効果的であるので望ましい。また、布団特有の埃、すなわち短繊維が側地から抜け出て生ずる埃が発生しない。また、さらに、中綿が合成繊維であるため、水洗いでき、速乾性があるので、家庭での洗濯が可能となる。
【0013】
[3種類のキルティングの機能]
において、下記の(1)ないし(3)の3種類のキルティングが施されているフィット性を感じる掛布団。
ただし、(1)、(2)及び(3)のキルティングの相互間は接続していない。

(1)掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティング。
(2)上記(1)の更に内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティング。
(3)2つの(2)の正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティング。
【0014】
(1)の波形のラインの機能
上記のように構成した掛布団1には、図1に示すように、表地と裏地とからなる袋体に中綿を充填してなる掛布団において、掛布団外側輪郭よりも一定の巾を置いた内側に、該輪郭に沿ってロの字のキルティングを山形をなす波線(1)が施されている。掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティングが額縁状に形成されるため、掛布団内において身体の自由度が確保された密閉した空間が形成され、使用者は布団内においてスムーズに身体を回転させることができ、快眠に不可欠な寝返りを阻害されない。
【0015】
(2)の内側に凸出した2つの弓形のキルティンの機能
上記のロ路の字のキルティングよりも内側の両側部に中央に向けて山形の互いに交叉しないアーチ状キルティングを形成している。額縁状に形成され枠の内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティングで、掛布団と身体との間に隙間が生じ難く、外気の侵入が防止される。
【0016】
(3)略直線の形状であるが波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティングの機能。
相対峙した山の頂上部分に掛布団の長さ方向の中心線をキルティングで形成している。前記の2つの2つのせつ円形状(弓形)のキルティングの正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティングにより、当該構成の掛布団の中に身体を潜り込ませると、中央部が盛り上がって掛布団の側部が中央に引っ張られても、2つのせつ円形状(弓形)がもっと接近するところに形成されているため、当該箇所が掛布団の重みによる沈み安定して身体に沿ってフィットする役目を果たすことができる。また、弓形の上下部分が空いているので、その分綿切れが起きやすく、センター部のキルトを少し長くすると、洗濯時に綿切れがし難くなるという機能を発揮する。
【0017】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
以下図面に示す実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
上面側には柄模様の普通の木綿布を用い下面側には無地の木綿布を用いて袋体に縫製し、袋体で1.5kgの中綿を包み、掛布団(150cm×210cm)を製作した。図1は本発明のキルティングの形態を説明する図面であって、一実施の態様の掛布団の概略平面図であり、図より明らかなように掛布団1の外観は、布団綿を収容する、上面がキルティングした布団カバーの表地(上面側)2が見えている。
キルティングの形態は下記の(1)ないし(3)の3種類のキルティングである。図面より分かるように、(1)、(2)及び(3)のキルティングの相互間は接続していない。

(1)掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティング。
(2)上記(1)の更に内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティング。
(3)2つの(2)の正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティング。
【0019】
(1)の波形のラインの機能
掛布団1には、図1に示す実施の形態においては、掛布団外側輪郭よりも一定の巾(30cm)を置いた内側に、該輪郭に沿ってロの字のキルティングとして山形をなす波線(1)が施されている。波線(1)の高さ(巾)は3cmあり、約33cm巾の額縁が形成されており、額縁の中は84cm×144cmの広さがある。上記の波線の高さ(巾)、額縁の巾、額縁の中の広さは上記のものに限定されるものではなく、好ましいものとしての例示である。上記の波線の高さ(巾)は2.5cm〜5cm、額縁の巾は28cm〜38cmの範囲で、適宜決められる。それゆえ、額縁の中の広さもそれに応じて変化することになる。
掛布団外側輪郭よりも一定の巾を置くことで、また、直線でなく波形のラインで構成されたキルティングであることで縫い目の部分に波の高さの巾が出て、当該キルティングは、例えば掛布団内で寝返りをうった際などに、キルティング(2)、(2)のいずれかの部分が持ち上がったときでもそれ以上の左右の外方側が持ち上がらないように掛布団外側輪郭よりも一定の巾部分が接地するように作用する。左右外方側が持ち上がらないように作用し、しぼんだ状態となる
例えば、図においてキルティング(2)、(2)のいずれか一方側に寝返りをうったとすると、キルティングの当該外方側は持ち上がるが、キルティングの外方側の掛布団外側輪郭よりも一定の巾部分が接地したままで引き寄せられ、該輪郭に沿ったロの字のキルティング部分で掛布団が屈曲するため、キルティングの外方側が持ち上がるようなことがない。このように、掛布団の左右の側部において、身体と掛布団との間に空間ができないので、身体に対する掛布団のフィット性が向上し、保温性が保持できる。
【0020】
(2)の内側に凸出した2つの弓形のキルティンの機能
上記の好ましい例の額縁の中は84cm×144cmの広さの部分に形成された内側に凸出した2つの弓形のキルティングが施されると、布団は仕切線(キルティング線)のところで屈曲しやすくなるため、当該構成の掛布団の中に身体を潜り込ませると、中央部が盛り上がって掛布団の側部が中央に引っ張られても前記の内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティングの箇所で掛布団が屈曲できるので、掛布団の側部が突っ張らずに身体側に引き寄せられてしぼんだ状態となり、掛布団が身体の側面に沿ってフィットする。
【0021】
(3)略直線の形状であるが波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティングの機能。
当該箇所が掛布団の重みによる沈み安定して身体に沿ってフィットする役目を果たすことができる。また、弓形の上下部分が空いているにもかかわらず、センター部のキルトの存在で、洗濯時に綿切れがし難くなるという機能を発揮する。その両端に設けられた2つの小円形のキルティングはキルティング線を安定に維持する。
【符号の説明】
【0022】
1 掛布団
2 上面がキルティングした布団カバーの表地(上面側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地とからなる袋体に充填材を充填してなる掛布団において、下記の(1)ないし(3)の3種類のキルティングが施されているフィット性を感じる掛布団。
ただし、(1)、(2)及び(3のキルティングの相互間は接続していない。

(1)掛け布団の外周の内側に一定の巾をもって外周に沿うように位置し、略四角の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成されたキルティング。
(2)上記(1)の更に内側に位置し、掛布団の長さ方向の相対向する2つの側のみに設けられた、内側に凸出した2つのせつ円形状(弓形)のキルティング。
(3)2つの(2)の正中間に位置し、略直線の形状であるが(直線でなく)波形のラインで構成され、その両端に設けられた2つの小円形のキルティング。























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−10824(P2012−10824A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148501(P2010−148501)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(398020219)四国繊維販売株式会社 (4)
【Fターム(参考)】