説明

フィルム切れ警報機構

【課題】 マルチフィルムを確実に検出できると共にマルチフィルムロールにおいてマルチフィルムが無くなる前にその旨を作業者に報知でき、ひいてはマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができるフィルム切れ警報機構を提供する。
【解決手段】 マルチフィルムロール140から繰り出されたフィルムFによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置100に適用されるフィルム切れ警報機構200は、被検出部材210と付勢部材220とセンサー部材230と警報部材240とを備え、被検出部材210は、ロール径dが所定値d’以上の場合には当接姿勢をとり、ロール径dが所定値d’を下回ると解除姿勢をとるように構成されており、警報部材240は、センサー部材230による前記解除姿勢の検出に基づき、警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール芯に長尺のマルチフィルムが巻き回されてなるマルチフィルムロールから前記マルチフィルムを繰り出し、該繰り出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ警報機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール芯に長尺のマルチフィルムが巻き回されてなるマルチフィルムロールから前記マルチフィルムを繰り出し、該繰り出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置においては、従来、フィルム切れ警報機構によってマルチフィルムの有無を検出し、該検出結果に基づき警報部材(例えば、警報ブザー等)を作動させることによって、マルチフィルム被覆作業中にマルチフィルムが無くなったか否かを作業者に報知することがなされている。
【0003】
このマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ警報機構として、例えば、検出スイッチに設けた作動片がマルチフィルムの上面に接触しているときにその押圧力により検出スイッチが開設するように、また、作動片へのマルチフィルムの接触が無くなると閉成するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実公昭60−24128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したようなフィルム切れ検出機構では、次のような問題がある。即ち、(i)各畦ごとのマルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合、或いは、作業中に作業機が蛇行した場合などにおいて、マルチフィルムが弛むと、マルチフィルムと検出スイッチの作動片との接触が解除された状態となり、マルチフィルムが存在しているにもかかわらず、検出スイッチは、マルチフィルムが存在していないものと誤検出してしまうことがある。(ii)また、風や作業機の振動等により、マルチフィルムと検出スイッチの作動片との接触が解除された状態となり、前記と同様に、マルチフィルムが存在しているにもかかわらず、検出スイッチは、マルチフィルムが存在していないものと誤検出してしまうことがある。いずれにしても、検出スイッチによって、警報装置が作動すると、作業者がその都度作業を中断して、マルチフィルムを確認しなければならず、マルチフィルム被覆作業の作業効率が低下しやすい。
【0005】
また、前記した従来のフィルム切れ警報機構では、マルチフィルムロールにおいてマルチフィルムが無くなったときに、その旨を作業者に報知するので、作業者がマルチフィルム被覆装置の被覆作業をすぐに停止しても、作業を施した土壌においてマルチフィルムが被覆されていない箇所ができてしまうことがある。この場合、通常は手作業による被覆作業にて該被覆されていない箇所の手直しを行っており、マルチフィルム被覆作業に手間がかかっているのが実情である。
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、マルチフィルムを確実に検出できると共にマルチフィルムロールにおいてマルチフィルムが無くなる前にその旨を作業者に報知でき、これによりマルチフィルムの確認作業や手直し作業等の手間を省くことができ、ひいてはマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができるフィルム切れ警報機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、ロール芯に長尺のマルチフィルムが巻き回されてなるマルチフィルムロールから前記マルチフィルムを繰り出し、該繰り出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ警報機構であって、前記マルチフィルムロールの軸線方向一方側の第1側端面に対向配置される当接部を有する被検出部材と、前記当接部が前記マルチフィルムロールの前記第1側端面に当接するように、前記被検出部材を付勢する付勢部材と、前記被検出部材の姿勢を検出するセンサー部材と、フィルム切れ警報を発する警報部材とを備え、前記被検出部材は、前記マルチフィルムロールのロール径が所定値以上の場合には前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面に当接する当接姿勢をとり、且つ、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値を下回ると前記付勢部材の付勢力によって前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面を越えて移動する解除姿勢をとるように構成されており、前記警報部材は、前記センサー部材による前記解除姿勢の検出に基づき、警報を発するように構成されていることを特徴とするフィルム切れ警報機構を提供する。
【0008】
本発明に係るフィルム切れ警報機構では、適用される前記マルチフィルム被覆装置において前記マルチフィルムの被覆作業が行われるにあたり、前記被検出部材は、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が所定の残量値)以上の場合には、前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面に当接する当接姿勢をとり、また、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値)を下回ると、前記付勢部材の付勢力によって前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面を越えて移動する解除姿勢をとる。このとき、前記センサー部材が前記被検出部材の姿勢(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値を下回るか否か)を検出し、前記警報部材が、前記センサー部材による前記解除姿勢の検出(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値を下回る際の検出)に基づき、警報を発する。
【0009】
このように本発明に係るフィルム切れ警報機構によれば、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値以上の状態での前記被検出部材の前記当接姿勢と、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値を下回る状態での前記被検出部材の前記解除姿勢とを前記センサー部材にて検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムを確実に検出することができるので、前記マルチフィルムの確認作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、前記センサー部材が前記被検出部材の姿勢(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値を下回るか否か)を検出し、前記警報部材が、前記センサー部材による前記解除姿勢の検出(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値を下回る際の検出)に基づき、警報を発するので、前記マルチフィルムロールにおいて前記マルチフィルムが残り少ないことを作業者に報知することができ、従って、前記マルチフィルムロールにおいて前記マルチフィルムが無くなる前にその旨を作業者に報知することができる。この報知後、作業者が適宜マルチフィルムの交換作業を行うと、作業を施した土壌においてマルチフィルムが被覆されていない箇所をなくすことができるので、前記マルチフィルムの手直し作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業を軽減させることができる。
【0011】
本発明に係るフィルム切れ警報機構において、前記マルチフィルムロールは、軸線方向が本機の車輌幅方向に沿うように配設されている場合を例示できる。また、前記被検出部材は、本機への取付位置が変更可能とされていて、本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるように構成されていることが好ましい。こうすることで、前記被検出部材の本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるので、前記センサー部材が前記解除姿勢を検出する際に(換言すれば、前記マルチフィルムの残量が前記所定残量値を下回る際に)前記警報部材が警報を発する警報タイミングを所定の条件(例えば、圃場の大きさや作業者の好み等)に応じて任意に設定することができる。
【0012】
また、前記の構成の具体的態様として次のものを例示できる。即ち、前記当接部は、前記マルチフィルムロールの軸線に近接する側のエッジが、該マルチフィルムロールの軸線方向に沿って視た際に、前記マルチフィルムロールの軸線位置を通る仮想水平面に対して傾斜されていて、前記被検出部材を本機の車輌前後方向に沿って位置変更させることにより、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径を変更させ得るように構成されている態様である。こうすることで、前記被検出部材の本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるようにする構成を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0013】
本発明に係るフィルム切れ警報機構において、前記被検出部材が、本機に取り付けられる取付部と、該取付部から車輌前後方向一方側に延びる前記当接部とを有していて、該当接部が、前記マルチフィルムロールのロール芯を挟む二股状とされていてもよい。また、前記被検出部材の本機への取付態様としては、例えば、垂直方向に延びる枢支軸回り揺動自在に本機に支持されている場合を挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係るフィルム切れ警報機構によると、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値以上の状態での前記被検出部材の前記当接姿勢と、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値を下回る状態での前記被検出部材の前記解除姿勢とを前記センサー部材にて検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムを確実に検出することができるので、前記マルチフィルムの確認作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0015】
また、前記センサー部材が前記被検出部材の姿勢を検出し、前記警報部材が、前記センサー部材による前記解除姿勢の検出に基づき、警報を発するので、前記マルチフィルムロールにおいて前記マルチフィルムが残り少ないことを作業者に報知することができ、従って、前記マルチフィルムロールにおいて前記マルチフィルムが無くなる前にその旨を作業者に報知することができる。この報知後、作業者が適宜マルチフィルムの交換作業を行うと、作業を施した土壌においてマルチフィルムが被覆されていない箇所をなくすことができるので、前記マルチフィルムの手直し作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業を軽減させることができる。
【0016】
また、前記マルチフィルムロールは、軸線方向が本機の車輌幅方向に沿うように配設され、前記被検出部材は、本機への取付位置が変更可能とされていて、本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるように構成されている場合には、前記被検出部材の本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるので、前記センサー部材が前記解除姿勢を検出する際に前記警報部材が警報を発する警報タイミングを所定の条件(例えば、圃場の大きさや作業者の好み等)に応じて任意に設定することができる。
【0017】
また、この場合、前記当接部は、前記マルチフィルムロールの軸線に近接する側のエッジが、該マルチフィルムロールの軸線方向に沿って視た際に、前記マルチフィルムロールの軸線位置を通る仮想水平面に対して傾斜されていて、前記被検出部材を本機の車輌前後方向に沿って位置変更させることにより、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径を変更させ得るように構成されていると、前記被検出部材の本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるようにする構成を比較的簡単な構成で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るフィルム切れ警報機構の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施に係るフィルム切れ警報機構200が適用されたマルチフィルム被覆装置100が作業車輌の本機Aに付設されている状態を該作業車輌の後方から視た斜視図であり、図2は図1のマルチフィルム被覆装置100及びフィルム切れ警報機構200部分を中心に示した側面図である。
【0019】
図1に示すように、作業車輌の本機の一例であるトラクターA後部には、畝立て装置Bが装着されており、さらに車輌後方にはマルチフィルム被覆装置100が設けられている。
【0020】
前記畝立て装置Bは、図2に示すように、スパイラルローター11、該スパイラルローター11を覆うローターカバー12及び蒲鉾型の畝成形部13により構成されている。斯かる構成によって、畝の成形にあたり、前記スパイラルローター11にて土壌が耕耘されつつ車輌幅方向中央部に集められ、該中央部に集められた土壌が前記ローターカバー12及び前記畝成形部13により案内されて、前記畝成形部13を抜け出ることで、車輌幅方向中央で高くなった蒲鉾型の畝Cに成形される。
【0021】
前記マルチフィルム被覆装置100は、こうして成形された畝Cを両裾部から頂上にかけてマルチフィルムFによって被覆するものであり、車輌幅方向両端部に設けられた左右一対のメインフレーム110を備えていて、該一対のメインフレーム110がそれぞれ畝立て装置Bから後方に向けて突出している。
【0022】
前記一対のメインフレーム110には、左右一対のフィルムロール支持杆120がそれぞれ設けられており、該一対のフィルムロール支持杆120の車輌後方には、下端部で車輌幅方向外方に延出した延出部161を有するロール支持杆160が設けられている。
【0023】
前記一対のフィルムロール支持杆120は、それぞれ、車輌斜め下後方に突出し、途中で車輌後方に屈曲した屈曲部121を有していて、該屈曲部121には、後端部において車輌幅方向内方に向けて突出する左右一対のロール枢支軸122がそれぞれ設けられており、該一対のロール枢支軸122間でマルチフィルムロール140を回転自在に支持している。なお、前記マルチフィルムロール140は、ロール芯に長尺の前記マルチフィルムFが巻き回されてなるものであり、本実施形態では、軸線方向が本機100の車輌幅方向に沿うように配設されている。
【0024】
前記ロール支持杆160は、前記延出部161でU字型ロール162を支持している。これにより、前記マルチフィルムFが蒲鉾型の畝Cに隙間なく密着するように上から抑えることができる。また、前記延出部161の車輌幅方向中央部には、車輌前方に向けて突出する鎮圧ガイドロール支持杆163が設けられており、該鎮圧ガイドロール支持杆163が鎮圧ガイドロール164を回転自在に支持している。
【0025】
また、前記一対のメインフレーム110の車輌後端部には、左右一対の土寄せ輪支持杆111がそれぞれ延設されている。この一対の土寄せ輪支持杆111は、それぞれ、下方に突出し、且つ、途中で斜め下後方に屈曲しており、該屈曲部で支持部材111aを介して左右一対のフィルム抑え輪112を、下端部で左右一対の土寄せ輪113を支持している。なお、前記一対のフィルム抑え輪112は、畝Cに被覆された前記マルチフィルムFの裾部を抑えるものである。これにより、特に畝Cの裾部における隙間部分を抑えて、該隙間部分をなくすことができる。前記一対の土寄せ輪113は、圃場内の土壌を前記マルチフィルムFの裾部に載置すべく、該裾部に寄せ集めるものである。これにより、前記マルチフィルムFの裾部が風等によりめくれたり、舞い上がったりすることのないようにすることができる。
【0026】
前記マルチフィルム被覆装置100において、前記一対のフィルムロール支持杆120を基準にして車輌前方には、左右一対のガイド輪支持杆150がそれぞれ設けられており、該一対のガイド輪支持杆150が、下端部で左右一対のガイド輪151をそれぞれ支持している。これにより、前記畝立て装置Bに対する前記マルチフィルム被覆装置100全体の高さを調節することができる。
【0027】
次に前記フィルム切れ警報機構200について、図3及び図4を参照しながら以下に説明する。図3は図1及び図2のフィルム切れ警報機構200について前記マルチフィルムロール140のロール径dが所定値d’以上の状態での動作を説明するための図であって、図3(A)は該動作状態を示す一部断面を含む概略平面図であり、図3(B)は該動作状態を示す概略側面図である。また、図4は図1及び図2のフィルム切れ警報機構200について前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値d’を下回る状態での動作を説明するための図であって、図4(A)は該動作状態を示す一部断面を含む概略平面図であり、図4(B)は該動作状態を示す概略側面図である。なお、図3(B)及び図4(B)において、前記屈曲部121は図示を省略してある。
【0028】
図3及び図4に示すように、前記フィルム切れ警報機構200は、被検出部材210と付勢部材220とセンサー部材230と警報部材240とを備えている。
【0029】
前記被検出部材210は、前記マルチフィルムロール140の軸線方向一方側の第1側端面141に対向配置される当接部211を有するものであり、前記マルチフィルムロール140のロール径dが所定値(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が所定の残量値)d’以上の場合には前記当接部211が該マルチフィルムロール140の前記第1側端面141に当接する当接姿勢(図3参照)をとり、また前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値)d’を下回ると前記付勢部材220の付勢力によって前記当接部211が該マルチフィルムロール140の前記第1側端面141を越えて移動する解除姿勢(図4参照)をとるように構成されている。
【0030】
さらに説明すると、前記被検出部材210は、本実施形態では、本機100への取付位置が変更可能とされていて、本機100への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dが異なるように構成されている。具体的には、前記当接部211は、前記マルチフィルムロール140の軸線に近接する側のエッジ211a(図3(B)及び図4(B)参照)が、該マルチフィルムロール140の軸線方向に沿って視た際に、前記マルチフィルムロール140の軸線位置を通る仮想水平面に対して傾斜されていて、前記被検出部材210を本機100の車輌前後方向(図3(B)及び図4(B)中X方向)に沿って位置変更させることにより、図5に示すように、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dを変更させ得るように構成されている。なお、図5は前記被検出部材210が本機100への取付位置によって前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dが異なる状態を説明するための概略平面図であって、図5(A)は前記被検出部材210が車輌前後方向X方向一方側X1に位置変更された状態を示す図であり、図5(B)は前記被検出部材210が車輌前後方向X方向他方側X2に位置変更された状態を示す図である。
【0031】
さらに具体的に言えば、前記被検出部材210は、本機100に取り付けられる取付部212と、該取付部212から車輌前後方向X一方側X1に延びる前記当接部211とを有している。前記取付部212は車輌前後方向Xに沿って長くなった長孔212aを有しており、この長孔212aを貫通するビスb1によって前記当接部211を支持している。これにより、前記取付部212は前記当接部211を車輌前後方向Xに沿って位置調整可能に取り付けることができる。また、前記取付部212は垂直方向に延びる枢支軸P回り揺動自在に本機100に支持されており、前記当接部211は前記マルチフィルムロール140のロール芯140aを挟む二股状とされている。
【0032】
なお、前記被検出部材210において前記当接部211は前記マルチフィルムロール140の軸線方向一方側の第1側端面141に対向配置されるように構成したが、他方側の第2側端面142に対向配置されるように構成してもよい。
【0033】
前記付勢部材220は、前記当接部211が前記マルチフィルムロール140の前記第1側端面141に当接するように、前記被検出部材210を付勢するものであり、本実施形態では、一端部で本機100の支持部材Qに接続されていると共に他端が前記取付部212に接続された巻きバネとされている。
【0034】
前記センサー部材230は、前記被検出部材210の姿勢を検出するものであり、本実施形態では、前記被検出部材210が前記マルチフィルムロール140の前記第1側端面141に当接する側とは反対側に当接するように配設されていて、該被検出部材210が前記当接姿勢(図3参照)をとるときは該被検出部材210に接触した作動状態となり、該被検出部材210が前記解除姿勢(図4参照)をとるときは該被検出部材210とは非接触の非作動状態となる接触式センサーとしている。
【0035】
また、前記警報部材240は、フィルム切れ警報を発するもの(例えば、警報ブザー等)であり、前記接触センサー230による前記解除姿勢の検出(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回る際の検出)に基づき、警報を発するように構成されている。
【0036】
以上説明したフィルム切れ警報機構200では、適用される前記マルチフィルム被覆装置100において前記マルチフィルムFの被覆作業が行われるにあたり、前記被検出部材210は、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が所定の残量値)d’以上の場合には、前記当接部211が該マルチフィルムロール140の前記第1側端面141に当接する当接姿勢(図3参照)をとり、また、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値)d’を下回ると、前記付勢部材220の付勢力によって前記当接部211が該マルチフィルムロール140の前記第1側端面141を越えて移動する解除姿勢(図4参照)をとる。このとき、前記センサー部材230が前記被検出部材210の姿勢(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回るか否か)を検出し、前記警報部材240が、前記センサー部材230による前記解除姿勢の検出(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値を下回る際の検出)に基づき、警報を発する。
【0037】
このように前記フィルム切れ警報機構200によれば、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値d’以上の状態での前記被検出部材210の前記当接姿勢と、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値d’を下回る状態での前記被検出部材210の前記解除姿勢とを前記センサー部材230にて検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材230を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムFを確実に検出することができるので、前記マルチフィルムFの確認作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0038】
また、前記センサー部材230が前記被検出部材210の姿勢(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回るか否か)を検出し、前記警報部材240が、前記センサー部材230による前記解除姿勢の検出(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回る際の検出)に基づき、警報を発するので、前記マルチフィルムロール140において前記マルチフィルムFが残り少ないことを作業者に報知することができ、従って、前記マルチフィルムロール140において前記マルチフィルムFが無くなる前にその旨を作業者に報知することができる。報知後、作業者が適宜マルチフィルムの交換を行うと、作業を施した畝CにおいてマルチフィルムFが被覆されていない箇所をなくすことができるので、前記マルチフィルムFの手直し作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業を軽減させることができる。
【0039】
また、前記マルチフィルムロール140は、軸線方向が本機100の車輌幅方向に沿うように配設され、前記被検出部材210は、本機100への取付位置が変更可能とされていて、本機100への取付位置によって、図5に示すように、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dが異なるように構成されており、前記被検出部材210の本機100への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dが異なるので、前記センサー部材230が前記解除姿勢を検出する際に(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回る際に)前記警報部材240が警報を発する警報タイミングを所定の条件(例えば、圃場の大きさや作業者の好み等)に応じて任意に設定することができる。
【0040】
また、前記当接部211は、前記マルチフィルムロール140の軸線に近接する側のエッジ211aが、該マルチフィルムロール140の軸線方向に沿って視た際に、前記マルチフィルムロール140の軸線位置を通る仮想水平面に対して傾斜されていて、前記被検出部材211を本機100の車輌前後方向Xに沿って位置変更させることにより、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dを変更させ得るように構成されているので、前記被検出部材211の本機100への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径dが異なるようにする構成を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0041】
次に、前記したフィルム切れ警報機構200とは異なる構成であるが、マルチフィルムのフィルム切れを事前に警報するフィルム切れ警報機構について、以下に例示しておく。
【0042】
図6は前記フィルム切れ警報機構200とは異なる構成のフィルム切れ警報機構の一例300の概略構成を示す図であって、図6(A)は該フィルム切れ警報機構300の概略平面であり、図6(B)は該フィルム切れ警報機構300においてマルチフィルムロールのロール径が所定値以上の状態を示す概略側面図であり、図6(C)は該フィルム切れ警報機構300においてマルチフィルムロールのロール径が所定値を下回る状態を示す概略側面図である。
【0043】
図6に示すフィルム切れ警報機構300は、前記マルチフィルムロール140の外周面140bに対向配置される被検出部材310と、前記被検出部材310の姿勢を検出するセンサー部材330と、フィルム切れ警報を発する警報部材340とを備えている。
【0044】
前記被検出部材310は、前記マルチフィルムロール140の外周面140bに向けて付勢力を付与するようにように構成されており、本実施形態では、自重により前記マルチフィルムロール140の外周面140bに当接するように、前記マルチフィルムロール140の軸線方向に延びる枢支軸Q回り揺動自在に本機100に支持されていて、前記マルチフィルムロール140の外周面140bの上面に載置されている。
【0045】
また、前記被検出部材310は、揺動端部311が屈曲した平面視「L」字形状に形成されており、この揺動端部311が前記センサー部材330に当接するように構成されている。なお、前記被検出部材310が前記マルチフィルムロール140の外周面140bに当接するように、前記被検出部材310を付勢する付勢部材(例えば、巻きバネ等)が設けられていてもよい。
【0046】
前記センサー部材330は、前記被検出部材310の前記揺動端部311に当接する位置であって、前記枢支軸Qを通り、且つ、前記マルチフィルムロール140のロール径dが所定値(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が所定の残量値)d’の状態での前記マルチフィルムロール140の前記被検出部材310当接側の接線に沿う位置にセンサー支持部材331によって支持されていて、該被検出部材310が離間しているときは非作動状態となり、該被検出部材310が当接すると作動状態となる接触式センサーとしている。また、前記センサー支持部材331は、前記センサー部材330の取り付け部において、図6(A)に示すように、車輌前後方向(図中X方向)に沿って延びる長孔331aが形成されており、該長孔331aによって前記センサー部材330を車輌前後方向Xに沿って位置調整できるように構成されている。
【0047】
前記警報部材340は、フィルム切れ警報を発するもの(例えば、警報ブザー等)であり、前記接触センサー330による前記被検出部材310の検出(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回る際の検出)に基づき、警報を発するように構成されている。
【0048】
図6に示すフィルム切れ警報機構300によれば、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値d’以上の状態での前記被検出部材310と、前記マルチフィルムロール140のロール径dが前記所定値d’を下回る状態での前記被検出部材210とを前記センサー部材330にて検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材330を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムFを確実に検出することができるので、前記マルチフィルムFの確認作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0049】
また、前記センサー部材330が、前記被検出部材310を検出し、前記警報部材340が、前記センサー部材330による前記被検出部材310の検出(換言すれば、前記マルチフィルムFの残量が前記所定残量値d’を下回る際の検出)に基づき、警報を発するので、前記マルチフィルムロール140において前記マルチフィルムFが残り少ないことを作業者に報知することができ、従って、前記マルチフィルムロール140において前記マルチフィルムFが無くなる前にその旨を作業者に報知することができる。報知後、作業者が適宜マルチフィルムの交換を行うと、作業を施した畝CにおいてマルチフィルムFが被覆されていない箇所をなくすことができるので、前記マルチフィルムFの手直し作業等を省くことができ、それだけマルチフィルム被覆作業を軽減させることができる。
【0050】
また、前記センサー支持部材331は、前記センサー部材330の取付位置を調整可能に構成されているので、前記警報部材340が警報を発する警報タイミングを所定の条件(例えば、圃場の大きさや作業者の好み等)に応じて任意に設定することができる。
【0051】
なお、図7に示すように、前記マルチフィルムロール140のロール芯140aを金属材料等の中空のものとし、該中空のロール芯140aに、内径が後述する金属球等の鳴動部材410の外径より小さい孔部140a’を設けておき、該孔部140a’に、前記ロール芯140aの内側から、糸等のひも状の支持部材411の一端に接続された前記鳴動部材410の該支持部材441を通して、該支持部材411の他端を前記マルチフィルムロール140における前記マルチフィルムFの所定残量値d’の位置に挟んでおき、前記マルチフィルムFが所定残量値d’を下回ると該鳴動部材410がロール芯140a内に落下し、該金属球等の鳴動部材410が該金属等のロール芯140a内で転がることで音を発し、これにより、警報を発するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施に係るフィルム切れ警報機構が適用されたマルチフィルム被覆装置が作業車輌の本機に付設されている状態を該作業車輌の後方から視た斜視図である。
【図2】図2は、図1のマルチフィルム被覆装置及びフィルム切れ警報機構部分を中心に示した側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2のフィルム切れ警報機構についてマルチフィルムロールのロール径が所定値以上の状態での動作を説明するための図であって、図3(A)は、該動作状態を示す一部断面を含む概略平面図であり、図3(B)は、該動作状態を示す概略側面図である。
【図4】図4は、図1及び図2のフィルム切れ警報機構についてマルチフィルムロールのロール径が前記所定値を下回る状態での動作を説明するための図であって、図4(A)は、該動作状態を示す一部断面を含む概略平面図であり、図4(B)は、該動作状態を示す概略側面図である。
【図5】図5は、被検出部材が本機への取付位置によって当接姿勢から解除姿勢へ移行する際のロール径が異なる状態を説明するための概略平面図であって、図5(A)は、被検出部材が車輌前後方向方向一方側に位置変更された状態を示す図であり、図5(B)は、被検出部材が車輌前後方向方向他方側に位置変更された状態を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係るフィルム切れ警報機構とは異なる構成のフィルム切れ警報機構の一例の概略構成を示す図であって、図6(A)は、該フィルム切れ警報機構の概略平面であり、図6(B)は、該フィルム切れ警報機構においてマルチフィルムロールのロール径が所定値以上の状態を示す概略側面図であり、図6(C)は該フィルム切れ警報機構においてマルチフィルムロールのロール径が所定値を下回る状態を示す概略側面図である。
【図7】図7は、本発明に係るフィルム切れ警報機構とは異なる構成のフィルム切れ警報機構の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0053】
100…マルチフィルム被覆装置 140…マルチフィルムロール
140a…ロール芯 141…マルチフィルムロールの第1側端面
200…フィルム切れ警報機構 210…被検出部材 211…被検出部材の当接部
211a…当接部のエッジ 212…被検出部材の取付部 220…付勢部材
230…センサー部材 240…警報部材 d…マルチフィルムロールのロール径
d’…ロール径の所定値 F…マルチフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール芯に長尺のマルチフィルムが巻き回されてなるマルチフィルムロールから前記マルチフィルムを繰り出し、該繰り出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ警報機構であって、
前記マルチフィルムロールの軸線方向一方側の第1側端面に対向配置される当接部を有する被検出部材と、
前記当接部が前記マルチフィルムロールの前記第1側端面に当接するように、前記被検出部材を付勢する付勢部材と、
前記被検出部材の姿勢を検出するセンサー部材と、
フィルム切れ警報を発する警報部材とを備え、
前記被検出部材は、前記マルチフィルムロールのロール径が所定値以上の場合には前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面に当接する当接姿勢をとり、且つ、前記マルチフィルムロールのロール径が前記所定値を下回ると前記付勢部材の付勢力によって前記当接部が該マルチフィルムロールの前記第1側端面を越えて移動する解除姿勢をとるように構成されており、
前記警報部材は、前記センサー部材による前記解除姿勢の検出に基づき、警報を発するように構成されていることを特徴とするフィルム切れ警報機構。
【請求項2】
前記マルチフィルムロールは、軸線方向が本機の車輌幅方向に沿うように配設され、
前記被検出部材は、本機への取付位置が変更可能とされており、本機への取付位置によって、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径が異なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム切れ警報機構。
【請求項3】
前記当接部は、前記マルチフィルムロールの軸線に近接する側のエッジが、該マルチフィルムロールの軸線方向に沿って視た際に、前記マルチフィルムロールの軸線位置を通る仮想水平面に対して傾斜されており、
前記被検出部材を本機の車輌前後方向に沿って位置変更させることにより、前記当接姿勢から前記解除姿勢へ移行する際の前記ロール径を変更させ得るように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルム切れ警報機構。
【請求項4】
前記被検出部材は、本機に取り付けられる取付部と、該取付部から車輌前後方向一方側に延びる前記当接部とを有しており、
前記当接部は、前記マルチフィルムロールのロール芯を挟む二股状とされていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のフィルム切れ警報機構。
【請求項5】
前記被検出部材は、垂直方向に延びる枢支軸回り揺動自在に本機に支持されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフィルム切れ警報機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−204166(P2006−204166A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19665(P2005−19665)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】