説明

フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品

【課題】 高い飽和磁気密度Bsを維持することができ、かつ安価であるフェライト組成物と、該フェライト組成物で構成してあるフェライトコアと、該フェライトコアを有する電子部品とを、提供すること。
【解決手段】 主成分が、酸化鉄をFe換算で47.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で18.0〜26.0モル%、酸化ニッケルをNiO換算で13.0〜20.0モル%、酸化マグネシウムをMgO換算で4.0〜8.0モル%含有し、残部が酸化銅で構成されており、前記主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ジルコニウムをZrO換算で50〜4000ppm、二酸化ケイ素をSiO換算で100〜800ppm、酸化タングステンをWO換算で0.05〜0.25重量%含有することを特徴とするフェライト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト組成物と、該フェライト組成物から構成されるフェライトコアと、該フェライトコアを有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の各種電子機器の小型・軽量化が急速に進み、それに対応すべく、各種電子機器の電気回路に用いられる電子部品の小型化・高効率化・高周波数化への要求が急速に高まっている。
【0003】
たとえば液晶バックライト用トランスなどは、ディスプレーの薄型化に伴い、より小さく、より薄い形状で、従来のものと同等以上の特性を持つことが要求されている。このようなトランスに用いられるコアに要求される特性としては、たとえば、使用周波数領域および使用温度領域での電力損失が小さいこと、飽和磁束密度Bsが高いこと、比抵抗が高いことが挙げられる。従来、このようなトランスに用いられるコアの材料としては、電力損失の小さいMn−Zn系フェライトが多く使用されてきた。
【0004】
しかしながら、Mn―Zn系フェライトは、比抵抗が低く、直巻線ができず、コアにボビンを介して巻線を行う必要があり、小型化・薄型化には限界があった。また、使用周波数が高周波数になるほど、渦電流損失が増加するため、高周波数領域、たとえば、MHz領域における使用には適していないという問題があった。
【0005】
これに対し、Ni−Cu−Zn系フェライトは、上記のMn−Zn系フェライトに比べて電力損失は大きいものの、比抵抗が高く、直巻線が可能である。しかし、主原料であるNiOの原料費が高価であり、工業的にはNi−Cu−Zn系フェライトの材料コストを下げることが大きな課題とされていた。
【0006】
このような課題を解決するべく、材料コストを下げることを目的として、NiOよりも安価なMgO、Mg(OH)またはMgCOを用いたMg−Cu−Znフェライトが注目され、種々の改良がなされている。
【0007】
例えば、特許文献1においては、低損失酸化物磁気材料として、Ni−Zn−Cu−Mg系フェライトが開示されている。この特許文献1では、電力損失を低減できると共に、比抵抗率が高く、ボビンが不要であり、電源の小型化、軽量化、および低コスト化の効果が期待できるフェライト組成物を提供することを目的とする。
【0008】
しかしながら、この特許文献1では、低コスト化を図るためNiの含有量を低減するに従い、飽和磁束密度Bsが悪化する傾向があり、磁気特性に問題があった。特に、NiOの含有量が20モル%(特許文献1の比較品18)以下の場合には、飽和磁束密度Bsは384mT程度と、十分な値ではなかった。
【0009】
さらに、このような特許文献1では、400mT以上の高い飽和磁束密度Bs得るためには、NiOの含有量を21モル%以上とする必要があり(特許文献1の発明品16)、十分な材料コストの低減が図れていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−306719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高い飽和磁束密度Bsを維持することができ、かつ低コスト化が可能なフェライト組成物と、該フェライト組成物で構成してあるフェライトコアと、該フェライトコアを有する電子部品とを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るフェライト組成物は、主成分が、酸化鉄をFe換算で47.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で18.0〜26.0モル%、酸化ニッケルをNiO換算で13.0〜20.0モル%、酸化マグネシウムをMgO換算で4.0〜8.0モル%含有し、残部が酸化銅で構成されており、前記主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ジルコニウムをZrO換算で50〜4000ppm、二酸化ケイ素をSiO換算で100〜800ppm、酸化タングステンをWO換算で0.05〜0.25重量%含有することを特徴とする。
【0013】
主成分を構成する酸化物の含有量を上記の範囲とし、さらに副成分として酸化ジルコニウム、酸化ケイ素および酸化タングステンを上記の範囲で含有させることにより、高い飽和磁束密度Bsを維持することができ、かつ低コスト化を図ることができる。
【0014】
このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、主成分と共に、副成分である酸化ジルコニウム、酸化ケイ素および酸化タングステンを上記の範囲で共存させることで得られる複合的な効果が大きく影響していると考えられる。このような複合効果は、フェライト組成物中において、Niの含有量の低減を可能とし、主成分100モル%中のNiOの含有量が20モル%以下の場合であっても、高い飽和磁束密度Bsを維持することが可能となると考えられる。
【0015】
さらに、本発明のフェライト組成物は、初期透磁率μiを所定以上の値(例えば270以上)に制御することができる。そのため、上記のいずれかに記載のフェライト組成物から構成される本発明に係るフェライトコアは、高周波領域、例えばMHz領域での使用に適する点で優れている。
【0016】
本発明に係る電子部品は、上記のフェライトコアを有する電子部品である。
【0017】
本発明に係る電子部品としては、特に制限されないが、コイル部品、トランス部品、磁気ヘッド部品などが挙げられる。本発明に係る電子部品は高いインダクタンスとキュリー点を有しているため、DC−DCコンバータ、インダクタやチョークコイル等のコイル部品として好適である。また、スイッチング用、インバータ用等の電源トランス等のトランス部品にも好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高い飽和磁束密度Bs(例えば400mT以上)を維持しつつ、所定以上の初期透磁率μi(例えば270以上)を実現することができ、かつ低コスト化を図ることができるフェライト組成物を得ることができる。
【0019】
このようなフェライト組成物を、フェライトコアおよび電子部品に適用することで、小型化、高効率化、高周波数化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るトランス用フェライトコアである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0022】
本実施形態に係るトランス用フェライトコアとしては、図1に示したトロイダル型のほか、FT型、ET型、EI型、UU型、EE型、EER型、UI型、ドラム型、ポット型、カップ型等を例示することができる。このトランス用フェライトコアの周囲に巻き線を所定巻数だけ巻回することにより所望のトランスを得る。
【0023】
本実施形態に係るトランス用フェライトコアは、本実施形態に係るフェライト組成物で構成してある。
【0024】
本発明の出願人等は、鋭意研究の結果、主成分100モル%中、NiOの含有量が20モル以下では従来得られなかった、高い飽和磁束密度Bs(例えば400mT以上)を維持することができ、さらに所定以上の初期透磁率μi(例えば270以上)を実現することができるフェライト組成物を見出した。
【0025】
本実施形態に係るフェライト組成物は、Zn−Ni−Cu−Mg系フェライトであり、主成分として、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅および酸化マグネシウムを含有している。
【0026】
主成分100モル%中、酸化鉄の含有量は、Fe換算で、47.0〜49.7モル%、好ましくは48.0〜49.7モル%である。酸化鉄の含有量が少なすぎても多すぎても、飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。
【0027】
主成分100モル%中、酸化マグネシウムの含有量は、MgO換算で、4.0〜8.0モル%、好ましくは5.0〜8.0モル%である。酸化マグネシウムの含有量が少なすぎると、原料費の低コスト化が十分に図れず、多すぎると飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。
【0028】
主成分100モル%中、酸化ニッケルの含有量は、NiO換算で、13.0〜20.0モル%、好ましくは15.0〜19.0モル%である。酸化ニッケルの含有量が少なすぎると、飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。また、酸化ニッケルは高価な原料であるため、多すぎると、コストの低減が困難となる。
【0029】
主成分100モル%中、酸化亜鉛の含有量は、ZnO換算で、18.0〜26.0モル%、好ましくは18.0〜25.0モル%であり、より好ましくは20.0〜24.0モル%である。酸化亜鉛の含有量が少なすぎると、初期透磁率μiが低下する傾向にあり、多すぎると、飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。また、酸化亜鉛は、酸化ニッケルや酸化銅ほどではないが、酸化マグネシウムに比べ原料が高価であるため、多すぎると原料費のコストが上昇する傾向にある。
【0030】
さらに、主成分100モル%中、残部は酸化銅で構成され、CuO換算で、好ましくは9.0モル%以下、より好ましくは7.0モル%以下である。酸化銅の含有量が多すぎると、比抵抗が高くなる傾向にある。また、酸化銅は、酸化ニッケルに次いで高価な原料であるため、酸化銅の含有量が増すほど、原料費のコストが上昇する傾向にある。なお、下限は、特に限定されないが、CuO換算で、好ましくは3.0モル%以上であり、酸化銅が含有されることにより初期透磁率μiが高くなる。
【0031】
本実施形態に係るフェライト組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素および酸化タングステンを含有している。
【0032】
酸化ジルコニウムの含有量は、主成分100重量%に対して、ZrO換算で、50〜4000ppm、好ましくは50〜400ppmである。酸化ジルコニウムの含有量が少なすぎても多すぎても、飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。
【0033】
酸化ケイ素の含有量は、主成分100重量%に対して、SiO換算で、100〜800ppm、好ましくは100〜500ppmである。酸化ケイ素の含有量が少なすぎても多すぎても、飽和磁束密度Bsが低下する傾向にある。
【0034】
酸化タングステンの含有量は、主成分100重量%に対して、WO換算で、0.05〜0.25重量%、好ましくは0.10〜0.20重量%である。酸化タングステンの含有量が少なすぎると、飽和磁束密度Bsおよび初期透磁率μiが低下する傾向にあり、含有量が多すぎても、初期透磁率μiが低下する傾向にある。
【0035】
本実施形態に係るフェライト組成物においては、主成分の組成範囲を上記の範囲に制御されていることに加え、副成分として、上記の酸化ジルコニウム、酸化ケイ素および酸化タングステンが含有されている。その結果、主成分100モル%中のNiOの含有量が20モル%以下の場合であっても、高い飽和磁束密度Bs(例えば400mT以上)を維持することができ、さらに所定以上の初期透磁率μi(例えば270以上)を実現することができる。
【0036】
なお、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素または酸化タングステンの何れか1つでも含まれていない場合には上記の効果は十分に得られない。すなわち、上記の効果は、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化タングステンが同時に特定量含有された場合に初めて得られる複合的な効果であると考えられる。
【0037】
また、本実施形態に係るフェライト組成物には、マンガン以外の不可避的不純物元素の酸化物が含まれ得る。
【0038】
具体的には、B、C、S、Cl、As、Se、Br、Te、Iや、Li、Na、Al、K、Ca、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Pb、Bi等の典型金属元素や、Sc、Ti、V、Cr、Co、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素が挙げられる。
【0039】
次に、本実施形態に係るフェライト組成物の製造方法の一例を説明する。
【0040】
まず、出発原料(主成分の原料および副成分の原料)を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。なお、平均粒径が0.1〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
【0041】
主成分の原料としては、酸化鉄(α−Fe)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マグネシウム(MgO)、あるいは複合酸化物などを用いることができる。さらに、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物等を用いることができる。焼成により上記した酸化物になるものとしては、たとえば、金属単体、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、有機金属化合物等が挙げられる。
【0042】
副成分の原料としては、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化タングステン(WO)を用いることができる。さらに、主成分の原料の場合と同様に、酸化物だけではなく複合酸化物や焼成後に酸化物となる化合物等を用いることができる。
【0043】
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を起こさせ、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800〜1100℃の温度で、通常1〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、主成分の原料と副成分の原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼き後に行なってもよい。
【0044】
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、仮焼き材料の平均粒径が、好ましくは1〜2μm程度となるまで行う。
【0045】
次に、粉砕材料の造粒(顆粒)を行い、造粒物を得る。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、たとえば、加圧造粒法やスプレードライ法などが挙げられる。スプレードライ法は、粉砕材料に、ポリビニルアルコールなどの通常用いられる結合剤を加えた後、スプレードライヤー中で霧化し、低温乾燥する方法である。
【0046】
次に、造粒物を所定形状に成形し、成形体を得る。造粒物の成形としては、たとえば、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。乾式成形法は、造粒物を、金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより行う成形法である。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態ではトロイダル型形状とされる。
【0047】
次に、成形体の本焼成を行い、焼結体(本実施形態のフェライト組成物)を得る。本焼成は、多くの空隙を含んでいる成形体の粉体粒子間に、融点以下の温度で粉体が凝着する焼結を起こさせ、緻密な焼結体を得るために行われる。こうした本焼成は、好ましくは900〜1300℃の温度で、通常2〜5時間程度行う。本焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。
【0048】
このような工程を経て、本実施形態に係るフェライト組成物は製造される。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0050】
たとえば、上述した実施形態では、トロイダル型形状とするために、本焼成前に該形状に成形しているが、本焼成後に該形状に成形(加工)してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0052】
まず、主成分の原料として、Fe、NiO、CuO、ZnO、MgOを準備した。副成分の原料として、ZrO、SiOおよびWOを準備した。なお、出発原料の平均粒径は0.1〜3μmであった。
【0053】
次に、準備した主成分および副成分の原料の粉末を秤量した後、ボールミルで5時間湿式混合して原料混合物を得た。
【0054】
次に、得られた原料混合物を、空気中において900℃で2時間仮焼して仮焼き材料とした後、ボールミルで20時間湿式粉砕して粉砕材料を得た。
【0055】
次に、この粉砕材料を乾燥した後、該粉砕材料100重量部に、バインダーとしてのポリビニルアルコールを1.0重量部添加して造粒し、20メッシュの篩で整粒して顆粒とした。この顆粒を、100kPaの圧力で加圧成形して、トロイダル形状(寸法=外径18mm×内径10mm×高さ5mm)の成形体と、ディスク形状(寸法=直径25mm×厚さ5mm)の成形体を得た。
【0056】
次に、これら各成形体を、空気中において、1000〜1250℃で2時間焼成して、焼結体としてのトロイダルコアサンプルおよびディスクコアサンプルを得た。得られたサンプルについて、蛍光X線分析を行い、フェライトコアの組成を測定した。結果を表1および2に示す。さらにサンプルに対し以下の特性評価を行った。
【0057】
飽和磁束密度Bs
得られたトロイダルコアサンプルに、巻線を60回巻回した後、B−Hカーブトレーサー(理研電子株式会社製Model BHS40)を用いて4kA/mの磁場を印加したときの飽和磁束密度Bsを23℃において測定した(単位:mT)。4kA/mにおけるBsは400mT以上を良好とし、より好ましくは405mT以上である。結果を表1および2に示す。
【0058】
初期透磁率μi
得られたトロイダルコアサンプルに、銅線ワイヤを10ターン巻きつけ、LCRメーター(ヒューレットパッカード 4284A)を使用して、初期透磁率μiを測定した。測定条件としては、測定周波数100kHz、測定温度23℃、測定レベル0.4A/mとした。100kHzにおける初期透磁率μiは270以上を良好とし、より好ましくは280以上である。結果を表1および2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1より、主成分の含有量が本発明の範囲内である場合であっても、副成分であるZrO、SiOおよびWOが含有されていない場合(比較例1)には、主成分100モル中のNiOの含有量が20モル%以下では、高い飽和磁束密度Bsを維持しつつ、所定以上の初期透磁率μiを実現することができないことが確認された。
【0062】
これに対し、副成分であるZrO、SiOおよびWOが同時に含有され、かつ主成分の含有量が本発明の範囲内である場合(実施例1〜16)では、主成分100モル中のNiOの含有量が20モル%以下であっても、高い飽和磁束密度Bsを維持することができ、さらに所定以上の初期透磁率μiを実現することができることが確認された。
【0063】
また、Fe、ZnO、NiOおよびMgOの含有量が、何れか1つでも本発明の範囲外である場合(比較例2〜7)では、飽和磁束密度Bsあるいは初期透磁率μiの何れか一方が悪化する傾向にあり、高い飽和磁束密度Bsの維持しつつ、所定以上の初期透磁率μiを実現することができないことが確認された。
【0064】
表2より、主成分の含有量が本発明の範囲内であり、かつ副成分であるZrO、SiOおよびWOの含有量も本発明の範囲内にある場合(実施例17〜23)では、主成分100モル中のNiOの含有量が20モル%以下であっても、高い飽和磁束密度Bsを維持することができ、さらに所定以上の初期透磁率μiを実現することができることが確認された。
【0065】
これに対し、ZrO、SiOおよびWOの含有量が、何れか1つでも本発明の範囲外である場合(比較例8〜13)では、主成分100モル中のNiOの含有量が20モル%以下では、飽和磁束密度Bsおよび初期透磁率μiの何れか一方または両方が悪化する傾向にあり、高い飽和磁束密度Bsの維持しつつ、所定以上の初期透磁率μiを実現することができないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が、酸化鉄をFe換算で47.0〜49.7モル%、酸化亜鉛をZnO換算で18.0〜26.0モル%、酸化ニッケルをNiO換算で13.0〜20.0モル%、酸化マグネシウムをMgO換算で4.0〜8.0モル%含有し、残部が酸化銅で構成されており、前記主成分100重量%に対して、副成分として、酸化ジルコニウムをZrO換算で50〜4000ppm、二酸化ケイ素をSiO換算で100〜800ppm、酸化タングステンをWO換算で0.05〜0.25重量%含有することを特徴とするフェライト組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフェライト組成物から構成されるフェライトコア。
【請求項3】
請求項2に記載のフェライトコアを有する電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−87010(P2013−87010A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228160(P2011−228160)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】